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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/30 20060101AFI20220419BHJP
【FI】
B60N2/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017126985
(22)【出願日】2017-06-29
(65)【公開番号】P2019010896
(43)【公開日】2019-01-24
【審査請求日】2020-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003425
【氏名又は名称】株式会社東洋クオリティワン
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】藤森 正次
(72)【発明者】
【氏名】茂木 学
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-081518(JP,A)
【文献】特開2010-047229(JP,A)
【文献】特開2000-272473(JP,A)
【文献】実開平3-121951(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
B60R 22/00-48
A47C 7/00-74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、前記シートクッションに重なるシートバックと、重なった前記シートバックに当たる突出部と、を備え、
前記シートバックは、幅方向の中央に位置するメイン部と、前記メイン部の幅方向の両側に位置するサイド部と、を備え、
前記サイド部は、所定の圧縮残留ひずみをもつ第1部と、前記第1部の圧縮残留ひずみより小さい圧縮残留ひずみをもつ第2部と、前記第1部と前記第2部との間の溝と、を備え、
前記突出部は、前記溝に隣接する前記第2部に当たる乗物用シート。
【請求項2】
シートクッションと、前記シートクッションに重なるシートバックと、重なった前記シートバックに当たる突出部と、を備え、
前記シートバックは、幅方向の中央に位置するメイン部と、前記メイン部の幅方向の両側に位置するサイド部と、を備え、
前記サイド部は、所定の圧縮残留ひずみをもつ第1部と、前記第1部の圧縮残留ひずみより小さい圧縮残留ひずみをもつ第2部と、を備え、
前記第1部は、前記メイン部よりも硬く、
前記第2部は、前記シートバックが起立した状態において前記第1部の下側に位置し、
前記突出部は、前記第2部に当たる乗物用シート。
【請求項3】
シートクッションと、前記シートクッションに重なるシートバックと、重なった前記シートバックに当たる突出部と、を備え、
前記シートバックは、幅方向の中央に位置するメイン部と、前記メイン部の幅方向の両側に位置するサイド部と、を備え、
前記サイド部は、所定の圧縮残留ひずみをもつ第1部と、前記第1部の圧縮残留ひずみより小さい圧縮残留ひずみをもつ第2部と、を備え、
前記第1部は、前記サイド部の厚さ方向の全長に亘って形成され、
前記突出部は、前記第2部に当たる乗物用シート。
【請求項4】
前記第1部と前記第2部との間に溝が形成され、
前記突出部は、前記溝に隣接する前記第2部に当たる請求項2又は3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
シートクッションと、表皮材にパッドが覆われ前記シートクッションに重なるシートバックと、重なった前記シートバックに当たる突出部と、を備え、
前記シートバックは、幅方向の中央に位置するメイン部と、前記メイン部の幅方向の両側に位置するサイド部と、を備え、
前記サイド部には溝が形成され、
前記突出部は、一部が前記溝に入り、一部が前記表皮材を介して前記サイド部のうち前記溝に隣接する部分に当たる乗物用シート。
【請求項6】
シートクッションと、前記シートクッションに重なるシートバックと、重なった前記シートバックに当たる突出部と、を備え、
前記シートバックは、幅方向の中央に位置するメイン部と、前記メイン部の幅方向の両側に位置するサイド部と、を備え、
前記サイド部には溝が形成され、
前記溝に充填された充填材を備え、
前記充填材の圧縮残留ひずみは、前記サイド部の圧縮残留ひずみより小さく、
前記突出部は、前記充填材に当たる乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗物用シートに関し、特に折り畳むことができる乗物用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等に配置される乗物用シートにおいて、乗物用シートを折り畳んで室内のスペースを広くするために、シートバックを倒してシートクッションの上に重ねたり、シートクッションを跳ね上げてシートバックに重ねたりできるものが知られている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-55703号公報
【文献】特開2016-97916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来の技術では、乗物用シートを折り畳んでシートバックとシートクッションとを重ねた状態にすると、バックル等の突出部がシートバックのサイド部に当たって、サイド部の一部をへこませる。そのため、乗物用シートを使用状態にしたときに、サイド部の一部がへこんだままになるという問題点がある。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、サイド部にへこみを生じ難くできる乗物用シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の乗物用シートは、シートクッションと、シートクッションに重なるシートバックと、重なったシートバックに当たる突出部と、を備え、シートバックは、幅方向の中央に位置するメイン部と、メイン部の幅方向の両側に位置するサイド部と、を備え、サイド部は、所定の圧縮残留ひずみをもつ第1部と、第1部の圧縮残留ひずみより小さい圧縮残留ひずみをもつ第2部と、第1部と第2部との間の溝と、を備え、突出部は溝に隣接する第2部に当たる。
また、本発明の乗物用シートは、シートクッションと、シートクッションに重なるシートバックと、重なったシートバックに当たる突出部と、を備え、シートバックは、幅方向の中央に位置するメイン部と、メイン部の幅方向の両側に位置するサイド部と、を備え、サイド部は、所定の圧縮残留ひずみをもつ第1部と、前記第1部の圧縮残留ひずみより小さい圧縮残留ひずみをもつ第2部と、を備え、第1部はメイン部よりも硬く、第2部はシートバックが起立した状態において第1部の下側に位置し、突出部は第2部に当たる。
また、本発明の乗物用シートは、シートクッションと、シートクッションに重なるシートバックと、重なったシートバックに当たる突出部と、を備え、シートバックは、幅方向の中央に位置するメイン部と、メイン部の幅方向の両側に位置するサイド部と、を備え、サイド部は、所定の圧縮残留ひずみをもつ第1部と、第1部の圧縮残留ひずみより小さい圧縮残留ひずみをもつ第2部と、を備え、第1部はサイド部の厚さ方向の全長に亘って形成され、突出部は第2部に当たる。
【0007】
また、本発明の乗物用シートは、シートクッションと、表皮材にパッドが覆われシートクッションに重なるシートバックと、重なったシートバックに当たる突出部と、を備え、シートバックは、幅方向の中央に位置するメイン部と、メイン部の幅方向の両側に位置するサイド部と、を備え、サイド部には溝が形成され、突出部は一部が溝に入り、一部が表皮材を介してサイド部に当たる。
【0008】
また、本発明の乗物用シートは、シートクッションと、シートクッションに重なるシートバックと、重なったシートバックに当たる突出部と、を備え、シートバックは、幅方向の中央に位置するメイン部と、メイン部の幅方向の両側に位置するサイド部と、を備え、サイド部には溝が形成され、溝に充填された充填材を備えている。充填材の圧縮残留ひずみは、サイド部の圧縮残留ひずみより小さく、突出部は充填材に当たる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の乗物用シートによれば、サイド部は、所定の圧縮残留ひずみをもつ第1部と、第1部の圧縮残留ひずみより小さい圧縮残留ひずみをもつ第2部と、第1部と第2部との間の溝と、を備え、突出部は溝に隣接する第2部に当たるので、溝の分だけへこみを小さくしてサイド部にへこみを生じ難くできる。
【0010】
請求項2記載の乗物用シートによれば、第1部はメイン部よりも硬く、第2部は、シートバックが起立した状態において第1部の下側に位置する。サイド部の下側は乗員のサポート性にほとんど影響を与えないので、第1部により乗員のサポート性を確保できる。
【0011】
請求項3記載の乗物用シートによれば、第1部がサイド部の厚さ方向の全長に亘って形成されるので、シートバックの製造を容易にできる。
【0012】
請求項4記載の乗物用シートによれば、第1部と第2部との間に溝が形成され、突出部は溝に隣接する第2部に当たるので、請求項2又は3の効果に加え、溝の分だけへこみを小さくできる。
【0013】
請求項5記載の乗物用シートによれば、シートクッションと、表皮材にパッドが覆われシートクッションに重なるシートバックと、重なったシートバックに当たる突出部と、を備え、シートバックは、幅方向の中央に位置するメイン部と、メイン部の幅方向の両側に位置するサイド部と、を備えている。サイド部には溝が形成され、突出部は一部が溝に入り、一部が表皮材を介してサイド部に当たるので、溝の分だけサイド部にへこみを生じ難くできる。
【0014】
請求項6記載の乗物用シートによれば、シートクッションと、シートクッションに重なるシートバックと、重なったシートバックに当たる突出部と、を備え、シートバックは、幅方向の中央に位置するメイン部と、メイン部の幅方向の両側に位置するサイド部と、を備えている。サイド部には溝が形成され、溝に充填材が充填されている。充填材の圧縮残留ひずみはサイド部の圧縮残留ひずみより小さく、突出部は充填材に当たるので、サイド部にへこみを生じ難くできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施の形態における乗物用シートの斜視図である。
図2】折り畳まれた乗物用シートの斜視図である。
図3】シートバックの正面図である。
図4図3のIV-IV線におけるシートバックの断面図である。
図5】シートクッションに重ねたシートバックの模式的な断面図である。
図6】第2実施の形態における乗物用シートのシートバックの正面図である。
図7】第3実施の形態における乗物用シートのシートバックの正面図である。
図8】第4実施の形態における乗物用シートのシートバックの正面図である。
図9】第5実施の形態における乗物用シートのシートバックの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は第1実施の形態における乗物用シート10の斜視図であり、図2は折り畳まれた乗物用シート10の斜視図である。図1の矢印U-D,L-R,F-Bは、乗物30(本実施の形態では自動車)の前方を向いて乗物用シート10に着座した乗員から見た上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。以下、乗物用シート10として、乗物30の右側の3列目シートを例に挙げて説明する。乗物用シート10の左側には、乗物用シート10を左右反転したシート(左側の3列目シート)が配置されている。
【0017】
図1に示すように乗物用シート10は、シートクッション11及びシートバック12を備えている。シートバック12は、左右の幅方向の中央に位置するメイン部13と、メイン部13の幅方向の両側に位置するサイド部14,15と、を備えている。シートクッション11及びシートバック12は、例えば軟質ポリウレタンフォーム等の合成樹脂の発泡体(軟質フォーム)からなるパッドをフレームが支持する構造である。パッドは表皮材で覆われている。
【0018】
シートバック12のメイン部13は、乗員の胴や肩などを弾性的に支持する部位であり、サイド部14,15は、メイン部13による乗員の支持をサポートする部位である。シートバック12は、ヒンジを有するリクライニング機構20によって、シートクッション11の後部に取り付けられている。レバー21を操作してリクライニング機構20を解除すると、図2に示すように、シートバック12を前方に倒してシートクッション11の上に重ねることができる。
【0019】
乗物30は、乗物用シート10に乗員を拘束するシートベルト22が設けられている。シートベルト22は、ウエビング23と、ウエビング23に設けられたタング24と、ウエビング23の端および中央付近を乗物30にそれぞれ固定するアンカレッジ25,26と、を備えている。ウエビング23の余剰部分はリトラクタ27によって巻き取られる。乗物30のシートクッション11側のリクライニング機構20付近に、タング24が差し込まれるバックル28が設けられている。バックル28は、シートクッション11の内部のフレーム(図示せず)に固定されている。但し、バックル28は乗物30に固定されていても良い。
【0020】
バックル28(突出部)は、シートクッション11の左側面の後部に配置されており、シートクッション11の上面よりも上方に突出している。シートバック12を前方に倒してシートクッション11の上に重ねると、バックル28は、シートバック12の左側のサイド部15に当たり、サイド部15をへこませる。
【0021】
図3はシートバック12の正面図である。図3では、シートバック12のうち表皮材を取り除いたパッドの部分が図示されている(図4から図9においても同じ)。図3に示すようにシートバック12は、メイン部13とサイド部14,15との間に縦(上下方向)に延びる第1溝16がそれぞれ形成されている。サイド部15は、第1溝16に連なる第2溝19が形成されている。第2溝19は第1溝16に対して略垂直に設けられている。
【0022】
サイド部15は、シートバック12が起立した状態において、第2溝19の上側に第1部17、及び、第2溝19の下側に第2部18が配置されている。シートバック12の正面視において、第1部17の面積は第2部18の面積より広く設定されている。
【0023】
第2部18の圧縮残留ひずみ(%)は、第1部17の圧縮残留ひずみ(%)より小さい。なお、圧縮残留ひずみは、JIS K6400-4:2004のA法に準拠して測定される値であり、元の厚さに対する低下率である。例えば、第1部17の圧縮残留ひずみは8~10%の範囲にあり、第2部18の圧縮残留ひずみは5~8%の範囲にある。また、第1部17の湿熱圧縮残留ひずみは20~23%の範囲にあり、第2部18の湿熱圧縮残留ひずみは15~18%の範囲にある。湿熱圧縮残留ひずみは、JIS K6400-4:2004に準拠して測定される値である。
【0024】
第1部17はサイド部14と同じ材料(軟質フォーム)で作られており、第2部18はメイン部13と同じ材料(軟質フォーム)で作られている。第2部18の密度(スキン層を除く)は第1部17の密度(スキン層を除く)より低い。サイド部14及び第1部17は、メイン部13よりも硬い。この硬さは、JIS K6400-2:2012のD法に準拠して測定される25%硬さのことをいう。
【0025】
図4図3のIV-IV線におけるシートバック12の断面図である。図4に示すように、シートバック12は第2溝19を境に第1部17及び第2部18が分けられている。第1部17及び第2部18は、それぞれシートバック12の厚さ方向の全長に亘って形成されており、第2溝19の溝底よりも深い部分で、第1部17と第2部18とは互いに接触している。
【0026】
シートバック12は、例えば、第1溝16及び第2溝19を形成するための仕切りが形成された第1型(図示せず)と、第1型に重なる第2型(図示せず)と、を用いて製造される。第1型の仕切りの間に、メイン部13及び第2部18を形成する軟質フォーム原液と、サイド部14及び第1部17を形成する軟質フォーム原液と、を注入した後、第1型と第2型とを密閉する。軟質フォーム原液が発泡して第1型と第2型との間に充填されると、軟質フォームからなるシートバック12のパッドが成形される。第2溝19を形成するための仕切りが第1型に設けられているので、シートバック12に第1部17と第2部18とを正確に区画できる。
【0027】
図5はシートクッション11に重ねたシートバック12の模式的な断面図である。シートバック12は、シートクッション11にシートバック12を重ねたときにバックル28が第2部18に当たるように、第2部18の大きさ及び第2溝19の位置が設定されている。第2部18の圧縮残留ひずみは第1部17の圧縮残留ひずみより小さいので、乗物用シート10を使用状態にしたときに、バックル28が押し付けられてできた第2部18のへこみを復元させ易くできる。これにより、サイド部15にへこみ(バックル28が押し付けられた跡)を生じ難くできる。
【0028】
特にバックル28は、第1部17と第2部18との間に形成された第2溝19に隣接する第2部18に当たるので、第2溝19によってバックル28が当たる面積を小さくできる。その結果、第2溝19の分だけへこみを小さくできる。
【0029】
第1部17はメイン部13よりも硬く、第2部18は、シートバック12が起立した状態において第1部17の下側に位置する。第1部17は、着座した乗員の肩や肩甲骨などの上胴の側方に位置する。第2部18は、着座した乗員の腰部付近の側方に位置する。第1部17によって、乗員の肩や肩甲骨などのサポート性を確保できる。一方、サイド部15の下側は乗員のサポート性にほとんど影響を与えないので、サイド部15に第2部18が形成されていても、第1部17により乗員のサポート性を確保できる。
【0030】
メイン部13はサイド部14及び第1部17よりも軟らかいので、乗員の圧迫感を抑制できる。また、メイン部13よりも硬いサイド部14及び第1部17によって表皮材の張りを確保できるので、表皮材にシワを生じ難くできる。また、正面視において、第1部17の面積は第2部18の面積より広く設定されているので、第1部17によりサイド部14,15の間で表皮材の張りを確保できる。
【0031】
第2部18の密度は第1部17の密度より低いので、第1部17の密度と第2部18の密度との差分だけサイド部15の質量を小さくできる。よって、第2部18を設けることによりシートバック12の軽量化に寄与できる。
【0032】
第2部18はメイン部13と同じ材料で作られており、第1部17はサイド部14と同じ材料で作られているので、メイン部13及びサイド部14を成形する材料(軟質フォーム原液)以外に新たな材料(軟質フォーム原液)を採用することなく、シートバック12のパッドを一体に成形できる。よって、シートバック12の製造を容易にできる。
【0033】
次に図6を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、第1部17と第2部18とを区画する第2溝19が、第1溝16に交わる場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、第1部41と第2部42とを区画する第2溝43が、第1溝16に交わらないで並ぶ場合について説明する。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0034】
図6は第2実施の形態における乗物用シートのシートバック40の正面図である。シートバック40は、リクライニング機構20(図1参照)を介してシートクッション11に取り付けられる部材である。
【0035】
シートバック40は、サイド部15に第2溝43が設けられている。第2溝43は、第1部41と第2部42とを区画する部位である。第2溝43は、第1溝16に交わらないで、第1溝16と間隔をあけて形成されている。第2溝43は、第1溝16に対して略垂直に配置されている。サイド部15は、シートバック40が起立した状態において、垂直部44の上側に第1部41、及び、垂直部44の下側に第2部42が配置されている。シートクッション11(図1参照)に重ねたシートバック40の第2部42に、シートクッション11側に配置されたバックル28が当たる。
【0036】
第2部42の圧縮残留ひずみ(%)は、第1部41の圧縮残留ひずみ(%)より小さい。第1部41はサイド部14と同じ材料(軟質フォーム)で作られており、第2部42はメイン部13と同じ材料(軟質フォーム)で作られている。第2部42の密度(スキン層を除く)は第1部41の密度(スキン層を除く)より低い。サイド部14及び第1部41は、メイン部13よりも硬い。これにより、第1実施の形態と同様の作用効果を実現できる。シートバック40は、第2溝43が第1溝16と間隔をあけて設けられているので、第2溝43が開き過ぎないようにすることができ、第2溝43が段差状にならないようにできる。よって、第2溝43による違和感を抑制できる。
【0037】
次に図7を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施の形態および第2実施の形態では、サイド部15に設けられた圧縮残留ひずみの異なる部分を第2溝19,43が区画する場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、圧縮残留ひずみが均一なサイド部51の中に第3溝52が形成される場合について説明する。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0038】
図7は第3実施の形態における乗物用シートのシートバック50の正面図である。シートバック50は、リクライニング機構20(図1参照)を介してシートクッション11に取り付けられる部材である。
【0039】
シートバック50は、サイド部51に第3溝52が設けられている。サイド部51の圧縮残留ひずみは、サイド部14の圧縮残留ひずみと同一に設定されている。第3溝52は、第1溝16に連接されると共に第1溝16に垂直に設けられている。シートクッション11(図1参照)に重ねたシートバック50の第3溝52に、シートクッション11側に配置されたバックル28の一部が入る。バックル28の一部が第3溝52に入るので、第3溝52の分だけサイド部51にへこみを生じ難くできる。
【0040】
シートバック50は、サイド部51の全体(第3溝52を除く)がサイド部14と同じ材料(軟質フォーム)で形成されているので、左右のサイド部14,51によりサポート性を確保できる。
【0041】
次に図8を参照して第4実施の形態について説明する。第3実施の形態では、サイド部51に形成された第3溝52が第1溝16に連接される場合について説明した。これに対し第4実施の形態では、第1溝16と間隔をあけてサイド部51に第3溝61が形成される場合について説明する。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0042】
図8は第4実施の形態における乗物用シートのシートバック60の正面図である。シートバック60は、リクライニング機構20(図1参照)を介してシートクッション11に取り付けられる部材である。
【0043】
シートバック60は、サイド部51に第3溝61が設けられている。第3溝61は、第1溝16と間隔をあけて、第1溝16に垂直に設けられている。シートクッション11(図1参照)に重ねたシートバック60の第3溝61に、シートクッション11側に配置されたバックル28の一部が入るように、第3溝61の位置が設定されている。バックル28の一部が第3溝61に入るので、第3溝61の分だけサイド部51にへこみを生じ難くできる。また、第3溝61は第1溝16と間隔をあけて設けられているので、第3溝61が開き過ぎないようにすることができ、第3溝61が段差状にならないようにできる。よって、第3溝61による違和感を抑制できる。
【0044】
次に図9を参照して第5実施の形態について説明する。第1実施の形態から第4実施の形態では、第2溝19,43及び第3溝52,61が開いた状態のシートバック12,40,50,60について説明した。これに対し第5実施の形態では、第3溝61に充填材71が充填される場合について説明する。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0045】
図9は第5実施の形態における乗物用シートのシートバック70の正面図である。シートバック70は、リクライニング機構20(図1参照)を介してシートクッション11に取り付けられる部材である。
【0046】
シートバック70は、サイド部51に形成された第3溝61に充填材71が充填されている。充填材71は、軟質フォーム製のスラブ材を第3溝61の大きさに合わせて切り取った細片や、パテ等のペースト状の補修材(コーキング材)等が用いられる。充填材71は、第3溝61の全体に充填して第3溝61を埋めたり、第3溝61の一部に充填して第3溝61を浅くしたりすることができる。充填材71の圧縮残留ひずみは、サイド部14,51の圧縮残留ひずみより小さく設定される。
【0047】
シートクッション11(図1参照)に重ねたシートバック70の充填材71に、シートクッション11側に配置されたバックル28が当たるので、充填材71によってサイド部51にへこみを生じ難くできる。また、第3溝61に充填材71が充填されているので、第3溝61が開き過ぎないようにすることができ、第3溝61が段差状にならないようにできる。
【0048】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明はこの実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えばシートクッション11やシートバック12,40,50,60,70の形状、第1溝16、第2溝19,43及び第3溝52,61の形状や大きさ等は一例であり、適宜設定できる。
【0049】
各実施の形態では、乗物30の一例として自動車について説明した。しかし、これに限られるものではなく、各種の乗物、例えば船舶、飛行機、鉄道などであっても構わない。また、各実施の形態では、乗物用シート10が自動車の3列目シートに適用される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、自動車の2列目シートや助手席などであっても構わない。なお、自動車の2列目シートや3列目シートは、乗物用シート10を折り畳んで格納しておく時間が長い場合があるので、特に効果がある。
【0050】
各実施の形態では、乗物用シート10が、シートバック12,40,50,60,70を倒してシートクッション11の上に重ねて折り畳まれる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。これとは反対に、乗物用シート10を、シートクッション11を跳ね上げてシートバック12,40,50,60,70に重ねて折り畳まれるようにすることは当然可能である。また、折り畳まれた乗物用シート10を乗物30の壁に向けて格納できる構造にすることは当然可能である。
【0051】
各実施の形態では、突出部として、シートクッション11側に配置されたバックル28を例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。シートバック12,40,50,60,70とシートクッション11とを重ねたときにシートバック12,40,50,60,70のサイド部15,51に当たる部材は突出部である。例えばリクライニング機構20を解除操作するレバー21(図1参照)が、シートクッション11に重なったシートバック12,40,50,60,70のサイド部15,51に当たる大きさや形状である場合には、レバー21は突出部である。
【0052】
第1実施の形態および第2実施の形態では、シートバック12,40が一体成形される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第2部18,42が配置される部分を除いた発泡体(軟質フォーム)と第2部18,42とを別々に成形した後、発泡体の所定の位置に接着や嵌め込み等によって第2部18,42を設けることは当然可能である。
【0053】
第1実施の形態および第2実施の形態では、メイン部13と同じ材料(軟質フォーム)で第2部18,42が作られる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第2部18,42は、第1部17,41の圧縮残留ひずみより圧縮残留ひずみが小さければ良いので、メイン部13とは異なる材料(軟質フォーム)で第2部18,42を作ることは当然可能である。
【0054】
第1実施の形態および第2実施の形態では、第1部17,41と第2部18,42との間に第2溝19,43が形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第2溝19,43を省略することは当然可能である。例えば、シートバック12,40を一体成形するための第1型(図示せず)の仕切りを省略し、第1部17,41用の軟質フォーム原液および第2部18,42用の軟質フォーム原液の注入量や成形圧(発泡成形時に金型内で到達する最大内圧)を制御することにより、第1部17,41と第2部18,42との間に溝(第2溝19,43)の無いシートバックが得られる。
【0055】
各実施の形態では、縦に延びる第1溝16,16を左右に連結する横溝が省略されたメイン部13を備えるシートバック12,40,50,60,70について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1溝16,16を左右に連結する1乃至複数の横溝をメイン部13に形成することは当然可能である。
【0056】
第1実施の形態および第2実施の形態では、シートクッション11とシートバック12,40とを重ねた場合に、第1部17,41と第2部18,42との間に形成された第2溝19,43に隣接する第2部18,42にバックル28が当たる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第2部18,42のうちバックル28(突出部)が当たる位置は適宜設定できる。第2部18,42の圧縮残留ひずみは第1部17,41の圧縮残留ひずみより小さいので、サイド部15にへこみを生じ難くできる。
【0057】
また、第1部17,41と第2部18,42との間に形成された第2溝19,43の大きさを適宜設定することにより、シートクッション11とシートバック12,40とを重ねた場合に、第2溝19,43にバックル28が入るようにすることは当然可能である。この場合も、第2溝19,43の分だけへこみを小さくできる。
【0058】
第1実施の形態から第3実施の形態では、第2溝19,43や第3溝52が開いた状態のシートバック12,40,50について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第5実施の形態で説明した充填材71を第2溝19,43や第3溝52に充填して、第2溝19,43や第3溝52を埋めたり第2溝19,43や第3溝52を浅くしたりすることは当然可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 乗物用シート
11 シートクッション
12,40,50,60,70 シートバック
13 メイン部
15,51 サイド部
17,41 第1部
18,42 第2部
19,43 第2溝(溝)
28 バックル(突出部)
52,61 第3溝(溝)
71 充填材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9