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特許7060359金属サイディングパネル及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】金属サイディングパネル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/12 20060101AFI20220419BHJP
【FI】
E04F13/12 101F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017211232
(22)【出願日】2017-10-31
(65)【公開番号】P2019082087
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-08-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】305003542
【氏名又は名称】旭トステム外装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 士郎
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-235423(JP,A)
【文献】特開2011-111782(JP,A)
【文献】特開平11-240294(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0139080(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/12
E04F 13/08
E04F 15/06
B21D 31/00
B21D 22/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁に複数並べて取り付けられる矩形状の金属サイディングパネルの製造方法であって、
周方向に延びる凹凸形状が表面に形成された円筒状の一対のエンボスロール間に、金属板を通過させることで表面に柄付けを行うエンボス工程を含み、
前記エンボス工程では、
前記金属サイディングパネルの本体を構成し、前記金属サイディングパネルの長手方向に延びる複数の凹凸形状を有する本柄部と、
前記本柄部の長手方向の両側部に配置され、前記本柄部よりも最大深さが浅い複数の凹凸形状を有する捨柄部と、
前記本柄部と前記捨柄部との間に、前記本柄部側から順に、前記本柄部の前記凹凸形状の最大深さよりも浅い位置に配置される第1段差部と、前記本柄部の前記凹凸形状の最大深さ以上の位置に配置される第2段差部と、を形成する金属サイディングパネルの製造方法。
【請求項2】
前記捨柄部を屈曲させることで、前記本柄部の長手方向の両側部に配置され、隣接する前記金属サイディングパネル間で互いに嵌合可能な嵌合部を形成する嵌合部形成工程をさらに有する請求項1に記載の金属サイディングパネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属サイディングパネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外壁等に使用されるサイディングパネルとして、金属製の板に凹凸形状を形成し、複数枚並べて隣接する端部を互いに嵌合させる金属サイディングパネルが知られている。金属サイディングパネルは、成形時、一対のエンボスロールの間に金属板を通過させて凹凸形状を形成する。この際、金属板にねじれやシワ等が形成されることを防止するため、幅方向中央側に凹凸形状の柄部を形成するのみならず、幅方向両外側に配置する嵌合部にもエンボス加工による凹凸形状を形成することが知られている。
【0003】
ところで、近年、金属サイディングパネルには、さらなる高級感が求められ、模様となる凹凸形状を深く形成することで意匠性を向上させることが求められている。凹凸形状を深くすると、金属板にねじれやシワ等が形成されやすくなる。そこで、金属サイディングパネルを製造する際、柄部と嵌合部の間に溝を形成することで、凹凸形状を深く形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-173247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、金属板に形成する凹凸形状をさらに深くし、意匠性を向上させるためには、柄部と嵌合部の間に単に溝を形成するだけでは十分ではなく、ねじれやシワ等の形成が避けられなかった。
【0006】
本発明は、凹凸形状をより深く形成し、意匠性をさらに向上させた金属サイディングパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明は、建物の外壁に複数並べて取り付けられる矩形状の金属サイディングパネル(例えば、後述の金属サイディングパネル1)であって、前記金属サイディングパネルの本体(例えば、後述の本体10)を構成し、前記金属サイディングパネルの長手方向に延びる複数の凹凸形状を有する本柄部(例えば、後述の本柄部11)と、前記本柄部の長手方向の両側部に配置され、隣接する前記金属サイディングパネル間で互いに嵌合可能な嵌合部(例えば、後述の嵌合部20)と、を有し、前記本柄部と前記嵌合部との間には、前記本柄部の前記凹凸形状の最大深さよりも浅い位置に配置される第1段差部(例えば、後述の第1段差部31)と、前記本柄部の前記凹凸形状の最大深さ以上の位置に配置される第2段差部(例えば、後述の第2段差部32)と、が形成される金属サイディングパネル。
【0008】
前記嵌合部は、前記本柄部よりも最大深さが浅い複数の凹凸形状を有する捨柄部(例えば、後述の捨柄部12)を有することが好ましい。
【0009】
前記本柄部の長手方向の一方の側部における前記第1段差部と前記第2段差部との間に配置され、前記金属サイディングパネルの面方向に延びる平面部(例えば、後述の平面部33)を有することが好ましい。
【0010】
また、本発明は、建物の外壁に複数並べて取り付けられる矩形状の金属サイディングパネルの製造方法であって、周方向に延びる凹凸形状が表面に形成された円筒状の一対のエンボスロール(例えば、後述のエンボスロール4)間に、金属板(例えば、後述の金属板101)を通過させることで表面に柄付けを行うエンボス工程(例えば、後述のエンボス工程S2)を含み、前記エンボス工程では、前記金属サイディングパネルの本体を構成し、前記金属サイディングパネルの長手方向に延びる複数の凹凸形状を有する本柄部と、前記本柄部の長手方向の両側部に配置され、前記本柄部よりも最大深さが浅い複数の凹凸形状を有する捨柄部と、前記本柄部と前記捨柄部との間に、前記本柄部側から順に、前記本柄部の前記凹凸形状の最大深さよりも浅い位置に配置される第1段差部と、前記本柄部の前記凹凸形状の最大深さ以上の位置に配置される第2段差部と、を形成する金属サイディングパネルの製造方法を提供する。
【0011】
前記捨柄部を屈曲させることで、前記本柄部の長手方向の両側部に配置され、隣接する前記金属サイディングパネル間で互いに嵌合可能な嵌合部を形成する嵌合部形成工程(例えば、後述の嵌合部形成工程S3)をさらに有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、凹凸形状をより深く形成し、意匠性をさらに向上させた金属サイディングパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の金属サイディングパネルを示す正面図である。
図2】本実施形態の金属サイディングパネルの断面図である。
図3】本実施形態の金属サイディングパネルの嵌合部の断面図である。
図4】本実施形態の金属板を示し、(a)図は、金属板の部分正面図、(b)図は、金属板を形成するエンボスロールの表面形状を平面に展開した図を示す。
図5】本実施形態の金属サイディングパネルと展開されたエンボスロールの表面形状との対応を示す図であり、(a)図は幅方向の一方の端部、(b)図は他方の端部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の金属サイディングパネル1を示す正面図である。図1に示すように、金属サイディングパネル1は、建物の外壁等に複数並べて取り付けられる。金属サイディングパネル1は、矩形状のパネルであり、本体10と、嵌合部20と、第1段差部31と、第2段差部32と、平面部33(図2参照)と、を有する。
【0015】
本体10は、金属サイディングパネル1の外部から視認される表面10aと、外壁側に対面する裏面10bとを有する長方形の板状の部分である。本体10の表面10aには、複数のブロックを積み重ねたかのような、金属サイディングパネル1の長手方向に延びる複数の凹凸形状が形成されている。この凹凸形状が形成されている部分が、後述する本柄部11である。本実施形態では、例えば、本柄部11の凹凸形状の深さは、最大深さD1(図2参照)が3.6mm~5.0mm、好ましくは3.8mm~4.2mm程度となっている。本体10は、表面10aが極低炭素鋼の上にめっき加工を施したアルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板(ガルバリウム鋼板(登録商標))であり、裏面10bが紙等のシート状部材であり、表面10aと裏面10bの間にウレタン発泡材等の充填材10cが配置されている。
【0016】
図2は、金属サイディングパネル1の断面図である。
嵌合部20は、本体10(本柄部11)の幅方向の一方及び他方の端部で、長手方向の両側部に沿って配置されている。嵌合部20は、金属サイディングパネル1を複数並べて配置する際に、隣接する金属サイディングパネル1間で互いに嵌合可能に構成されている。
【0017】
嵌合部20は、本体10の短手方向の一方と他方の端部で形状が異なる。なお、嵌合部20は、その一方及び他方の端部が、金属サイディングパネル1を複数並べた状態で上端側又は下端側に配置される。嵌合部20は、本体10から連続する表面10aの金属板101が延長して形成され、嵌合凹部21及び嵌合凸部22を有する。また、後述するように、金属板101の嵌合部20を形成する部分には、本体10の本柄部11の凹凸形状よりも最大深さD2が浅く、複数の凹凸形状を有する捨柄部12が形成されている(図5(a)、図5(b)参照)。
【0018】
図3は、金属サイディングパネル1の嵌合部20の断面図であり、上下方向に隣接する金属サイディングパネル1の一方の嵌合凹部21と他方の嵌合凸部22とが、互いに嵌合した状態を示している。
【0019】
嵌合凹部21は、本体10の裏面10b側に屈曲し、本体10から連続する表面10aの金属板101が、本体10の内側に向かって所定長さ延び、そこで屈曲して本体10の端部側に戻るように形成されている。
【0020】
嵌合凸部22は、突起部221と、延出部222と、延出部溝223とを有する。
突起部221は、本体10を構成する表面10aの金属板が外側に向かって延び、本体10の厚さ方向の中央部で外側に向かって突出するように折り畳まれて形成される。
延出部222は、突起部221の本体10に近い基端側からさらに外側に延出するように延びる面状の部分であり、本体10の裏面10bと同一面上に延びる。
延出部溝223は、突起部221の下端と延出部222の基端との間に形成されるU字状の凹みである。
【0021】
第1段差部31(嵌合凹部21が形成される側に設けられる第1段差部31a、及び嵌合凸部22が形成される側に設けられる第1段差部31bを総称して、以下、第1段差部31と言う)及び第2段差部32(嵌合凹部21に形成される第2段差部32a、及び嵌合凸部22に形成される第2段差部32bを総称して、以下、第2段差部32と言う)は、図2に示すように、本体10と嵌合部20との間に、本体10の表面10aから連続する金属板101が折り曲げられて形成されている。
【0022】
第1段差部31は、図2に示すように、本体10の本柄部11に形成されている凹凸形状の最大深さD1よりも浅い位置に配置され、すなわち本柄部11の凹凸形状の最も高い外側の部分と、最も低い内側の部分の間で、本体10の外側に延びている。
【0023】
図3は、金属サイディングパネル1の嵌合部20の断面図である。図3に示すように、嵌合凹部21が形成される側に設けられる第1段差部31aは、本柄部11の最大深さD1の中間部で本体10の端部から外側に延出し、遠位端で折り返されて裏面10b側に屈曲し、本体10の内側へ向かっている。
嵌合凸部22が形成される側に設けられる第1段差部31bは、本体10の端部から外側に向かって延出した後、さらに本体10の厚さ方向中心側に向かって屈曲する。
このように、嵌合凹部21と嵌合凸部22は形状が異なっているが、図2及び図3に示すように第1段差部31a、31bはいずれも、表面10aの凹凸形状の最大深さD1よりも浅い位置で、本体10から外側に延出している。図3に示すように、金属サイディングパネル1の一方の嵌合凹部21と他方の嵌合凸部22とが、互いに嵌合した状態では、嵌合凹部21の第1段差部31a及び嵌合凸部22の第1段差部31bの遠位端が当接する。
【0024】
第2段差部32は、第1段差部31の遠位端から、嵌合部20側に向かって連続する部分である。第2段差部32は、第1段差部31側から、表面10aの凹凸形状の最大深さD1に到達するように延出する。
嵌合凹部21に形成される第2段差部32aは、折り返された第1段差部31aからさらに本体10の内側へ、本柄部11の最大深さD1まで傾斜して延出する。
嵌合凸部22に形成される第2段差部32bは、嵌合凸部22に形成される第1段差部31b側から本柄部11の最大深さD1まで傾斜して延出し、そのままさらに本体10の厚さ方向の中心側に向かって最大深さD1以上の位置まで傾斜する。
このように、嵌合凹部21に形成される第2段差部32aと嵌合凸部22に形成される第2段差部32bは形状が異なっているが、第1段差部31a、31b側から凹凸形状の最大深さD1に向かって延出するという点で共通している。図3に示すように、金属サイディングパネル1の一方の嵌合凹部21と他方の嵌合凸部22とが、互いに嵌合した状態では、嵌合凸部22側の第2段差部32bが、嵌合凹部21側の第2段差部32aの裏面10b側に位置するように位置し、第2段差部32aよりも大きな傾斜角度で本体10の厚さ方向の中心側へ延出する。
【0025】
平面部33は、本柄部11の長手方向の一方の側部、すなわち嵌合凸部22が形成される方の本体10の端部において、第1段差部31bと、第2段差部32bとの間に配置される。図3に示すように、平面部33は、嵌合凸部22の第1段差部31bにおける第2段差部32b側の端部と、第2段差部32bにおける第1段差部31b側の端部の間で、本体10の面方向に沿って延びる。平面部33は、嵌合凹部21と嵌合凸部22とが嵌合した状態で、嵌合凹部21側に設けられた第1段差部31aの裏側に延びる。
【0026】
図4(a)は、金属サイディングパネル1を形成する前の、金属板101の部分正面図である。図4(b)は、図4(a)に示すような凹凸形状を金属板101に形成する円筒状のエンボスロール4の表面形状を、平面に展開した図を示す。図5(a)は、金属サイディングパネル1及び展開されたエンボスロール4の一方の端部、図5(b)は他方の端部を示す。図4(a)~図5(b)を参照して、本実施形態の金属サイディングパネル1の製造方法について説明する。
【0027】
金属サイディングパネル1は、図4(a)及び図4(b)に示すように、周方向に延びる凹凸形状が表面に形成された円筒状のエンボスロール4に金属板101が圧接されることで、エンボスロール4の表面形状と対称な凹凸形状を有する本柄部11及び捨柄部12が形成される。
【0028】
まず、金属サイディングパネル1の本体10における表面10a及び嵌合部20を形成する金属板101が、ロール状に巻かれた状態で提供される(提供工程S1)。提供工程では、帯状の金属板101が、製造ラインに取り付けられて加工の進行方向に移動する。
【0029】
製造ラインには、金属サイディングパネル1の柄が形成された一対のエンボスロール4が設けられている。一対のエンボスロール4は、上方に配置する上型エンボスロールと下方に位置する下型エンボスロールを有する(図示せず)。金属板101は、上型エンボスロールと下型エンボスロールとの間を通過するように供給される(エンボス工程S2)。金属板101は、一対のエンボスロール間を通過することで、表面に柄付けが行われる。
【0030】
ここで、エンボスロール4には、円筒の幅方向中央部に形成されるロール本柄部41と、円筒の両外側部に形成されるロール捨柄部42との凹凸形状が異なっている。また、ロール本柄部41とロール捨柄部42の凹凸形状が形成された部分の間に、凹凸形状が形成されないロール溝部43が形成されている。
【0031】
ロール本柄部41は、金属板101の幅方向中央部に当接し、金属板101の対応する部分に本柄部11を形成する。ロール本柄部41の凹凸形状は、例えば3.6mm~5.0mm、好ましくは3.8mm~4.2mm程度の最大深さD1(高低差)があり、本柄部11に同様の凹凸形状が形成される。なお、ロール本柄部41によって形成される金属板101の本柄部11は、完成時に金属サイディングパネル1の本体10の表面10aを構成する。
【0032】
ロール捨柄部42は、金属板101の両外側部に当接し、金属板101の対応する部分に捨柄部12を形成する。ロール捨柄部42は、ロール本柄部41の凹凸形状よりも最大深さD2が浅く、よって、捨柄部12は、本柄部11より浅い最大深さD2を有する。なお、捨柄部12は、完成時に金属サイディングパネル1の嵌合部20を構成する。
【0033】
ロール溝部43は、金属板101の本柄部11と捨柄部12の間に当接し、金属板101の対応する部分に溝部13を形成する(図4(a)参照)。図5(a)及び図5(b)に示すように、ロール溝部43には、段差が形成されており、ロール溝部43は、ロール本柄部41側の第1ロール段差部431と、ロール捨柄部42側の第2ロール段差部432とを有する。第1ロール段差部431は、ロール本柄部41の最大深さD1よりも浅い位置でロール捨柄部42側に延出する。第2ロール段差部432は、ロール本柄部41の最大深さD1の位置で第1ロール段差部431のロール捨柄部42側の端部からロール捨柄部42に向かって延出する。
【0034】
以上のように、エンボス工程S2において、ロール本柄部41、ロール捨柄部42及びロール溝部43が形成された一対のエンボスロール4の間に金属板101を挟み込んで通過させることで、金属板101に本柄部11、捨柄部12、溝部13がそれぞれ形成される。
【0035】
一対のエンボスロール4の間に金属板101を挟み込んで通過させる際、金属板101の本柄部11に形成する凹凸形状の深さが深すぎると、相対する一対のエンボスロール4の凸部によって金属板101の側縁側の部分が幅方向中央部側に引き込まれ、金属板101にねじれやシワが形成されやすくなる。ここで、金属板101の溝部13の最大深さを本柄部11の最大深さD1に一致させるようにすると、本柄部11の捨柄部12側に深い部分が位置することで、金属板101の本柄部11の全幅が均一に巻き込まれるため、本柄部11の周縁にねじれやシワが形成されにくくなる。
【0036】
一方で、溝部13全体の深さを本柄部11の最大深さD1に合わせてしまうと、嵌合部20を形成する際に、捨柄部12を折り込むための必要な厚さが確保できない。すなわち、嵌合部20は、本体10の外側で捨柄部12を厚さ方向に屈曲させて形成するので、本体10の表面10aから裏面10b側に向かう厚さ方向の幅が、嵌合部20を形成するための幅となる。溝部13を深くすると、表面10aと裏面10bとの間の幅が狭くなるので、嵌合部20を形成可能な幅が狭くなる。金属サイディングパネル1の接合強度等の観点から、嵌合部20には所定の幅が必要である。そこで、溝部13を二段構成にし、溝部13の本柄部11側を表面10aの凹凸形状の最大深さD1よりも浅く延出させることで、嵌合部20を形成するために折り曲げる起点を表面10a側に近付けることができる。また、溝部13の捨柄部12側を表面10aの凹凸形状の最大深さD1の位置に延出させることで、本柄部11にシワ等が寄ることを防止できる。
【0037】
エンボス工程S2において、金属板101にエンボスロール4で凹凸形状を形成した後、捨柄部12を屈曲することで、本柄部11の長手方向の両側部に配置される嵌合部20を形成する(嵌合部形成工程S3)。具体的には、本柄部側から順に、溝部13の本柄部11側を第1段差部31とし、溝部13の捨柄部12側を第2段差部32とする。
【0038】
図5(a)に示すように、嵌合凹部21側では、第1段差部31aを表面10aの凹凸形状の最大深さD1よりも浅い位置で、外側に延出させたのち、本体10側に折り曲げる。また、第2段差部32a凹凸形状の最大深さD1の最も低い位置の方に延出させて、捨柄部12を本体10の裏面側に重ね、所定幅で折り畳んで本体10の外側へ屈曲させる。
【0039】
図5(b)に示すように、嵌合凸部22側では、第1段差部31bを表面10aの凹凸形状の最大深さD1よりも浅い位置で、外側に延出させたのち、本体10の厚さ方向の中心側に折り曲げて、平面部33を本体10の面方向に沿って延出させる。さらに、平面部33から第2段差部32aを凹凸形状の最大深さD1の最も低い位置の方に延出させて、捨柄部12を外側に突出するように折り畳んで突起部221を形成する。そして、突起部221の基端から外側に向けて再度折り曲げ、延出部溝223を経て延出部222を形成する。
【0040】
その後、金属板101の裏面に紙等のシート状部材を取り付けて本体10の裏面10bを形成する。また、表面10aと裏面10bの間にウレタン発泡材等の充填材10cを充填する(芯材充填、裏面形成工程S4)。
その後、形状を矯正して切断し(矯正、切断工程S5)、金属サイディングパネル1を得る。
【0041】
以上のように形成された金属サイディングパネル1は、建物の外壁等の形状に合わせて複数並べて配置される。金属サイディングパネル1は、上下方向に隣接する金属サイディングパネル1の一方の嵌合凹部21に、他方の嵌合凸部22の突起部221を嵌合させることで互いに接続される。突起部221と嵌合凹部21の間には、ゴム等の水密材224が配置される。このように嵌合させると、図3に示すように、嵌合凹部21と嵌合凸部22の間で、外側(表面10a側)に、第1段差部31a、31bが延出し、隣接する金属サイディングパネル1同士の目地部が覆い隠される。
【0042】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、建物の外壁に複数並べて取り付けられる矩形状の金属サイディングパネル1を、金属サイディングパネル1の本体10を構成し、金属サイディングパネル1の長手方向に延びる複数の凹凸形状を有する本柄部11と、本柄部11の長手方向の両側部に配置され、隣接する前記金属サイディングパネル1間で互いに嵌合可能な嵌合部20と、を含んで構成した。また、本柄部11と嵌合部20との間に、本柄部11の凹凸形状の最大深さD1よりも浅い位置に配置される第1段差部31と、本柄部11の凹凸形状の最大深さD1以上の位置に配置される第2段差部32と、を形成した。
金属サイディングパネル1の本柄部11と嵌合部20との間に、本柄部11凹凸形状の最大深さD1以上の位置に第2段差部32を設けたことで、金属板101に凹凸形状を形成する際に、金属板101にねじれやシワ等が形成されづらくなる。このため、本柄部11の凹凸形状を深く形成することが可能になり、金属サイディングパネル1の意匠性が向上させることができる。
また、第1段差部31を、本柄部11の最大深さD1よりも浅い位置に形成することで、本柄部11の凹凸形状を深く形成しても、嵌合部20を必要な厚さに形成することができるため、隣接する金属サイディングパネル1を好適に嵌合して接続しながら、意匠性を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態では、嵌合部20を、本柄部11よりも最大深さD2が浅い複数の凹凸形状を有する捨柄部12を含んで構成した。嵌合部20を、本柄部11よりも最大深さD2が浅い複数の凹凸形状を有する捨柄部12により形成することで、金属板101に深く凹凸形状を形成することができ、より一層、金属板101にねじれやシワを形成しにくくさせることができる。よって、意匠性を向上させた金属サイディングパネル1の製造が容易になる。
【0044】
また、本実施形態では、本柄部11の嵌合凸部22が形成される側の端部における第1段差部31と第2段差部32との間に配置され、金属サイディングパネル1の面方向に延びる平面部33を含んで構成した。嵌合凸部22の第1段差部31bと第2段差部32bの間に平面部33を形成することで、隣接する金属サイディングパネル1同士を嵌合部20で嵌合させた際、嵌合凹部21側の第1段差部31の裏側に平面部33が延びるように配置させることができる。このため、隣接する金属サイディングパネル1同士の目地部を、嵌合凹部21側の第1段差部31aで覆い隠し、この第1段差部31aを平面部33で支持することができるので、隣接する金属サイディングパネル1同士の目地部の意匠性が向上する。
【0045】
また、本実施形態では、建物の外壁に複数並べて取り付けられる矩形状の金属サイディングパネルの製造方法を、周方向に延びる凹凸形状が表面に形成された円筒状の一対のエンボスロール4間に、金属板101を通過させることで表面に柄付けを行うエンボス工程S2を含んで構成した。また、エンボス工程S2において、金属サイディングパネル1の本体10を構成し、金属サイディングパネル1の長手方向に延びる複数の凹凸形状を有する本柄部11と、本柄部11の長手方向の両側部に配置され、本柄部11よりも最大深さD2が浅い複数の凹凸形状を有する捨柄部12と、本柄部11と捨柄部12との間に、本柄部11側から順に、本柄部11の凹凸形状の最大深さD1よりも浅い位置に配置される第1段差部31と、本柄部11の凹凸形状の最大深さD1以上の位置に配置される第2段差部32と、を形成するように構成した。
これにより、上記と同様の効果を奏することができる。
【0046】
また、本実施形態では、捨柄部12を屈曲させることで、本柄部11の長手方向の両側部に配置され、隣接する金属サイディングパネル1間で互いに嵌合可能な嵌合部20を形成する嵌合部形成工程S3をさらに含んで構成した。これにより、本柄部11にねじれやシワ等が形成されることを防止する一方で、金属サイディングパネル1の設置を容易にする嵌合部20を構成することができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
例えば、上記実施形態では、本柄部11はガルバリウム鋼板(登録商標)により形成されているが、これに限られない。金属サイディングパネル1であれば、材質は限定されず、ガルファン鋼板や、他の鋼板であってもよい。
また、上記実施形態では、金属サイディングパネル1の嵌合凸部22が上端側に、嵌合凹部21が下端側に配置された状態を例示しているが、これに限られない。嵌合凸部と嵌合凹部の位置は逆でもよく、また、金属板101の折り畳み形状についても、凹凸による嵌合構造を形成できれば、説明した形状に限られない。
【0048】
また、上記実施形態では、金属板101の溝部13において、エンボスロール4の表面の第1ロール段差部431で形成される段差の幅が、金属サイディングパネル1の第1段差部31a、31bそれぞれの位置に一致し、溝部13におけるエンボスロール4の表面の第2ロール段差部432で形成される段差の幅が第2段差部32a、32bそれぞれの位置に一致するものとして説明している。しかし、必ずしも嵌合凹部21及び嵌合凸部22の両方側で一致していなくてもよい。少なくとも嵌合凹部21が形成される側(第1段差部31a、第2段差部32a)、又は嵌合凸部22が形成される側(第1段差部31b、第2段差部32b)のいずれかにおいて、エンボスロール4の表面の第1ロール段差部431及び第2ロール段差部432で形成される溝部13内の段差の幅と、第1段差部31、第2段差部32の段差の位置が一致していればよい。
【0049】
また、第1段差部31及び第2段差部32となる溝部13の段差の幅は、嵌合凹部21側と嵌合凸部22側で異なってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 金属サイディングパネル
4 エンボスロール
10 本体
11 本柄部
12 捨柄部
20 嵌合部
31 第1段差部
32 第2段差部
33 平面部
101 金属板
S2 エンボス工程
S3 嵌合部形成工程
図1
図2
図3
図4
図5