(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】耐震補強方法および炭素繊維パネル
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20220419BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20220419BHJP
E01D 19/02 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
E04G23/02 F
E01D22/00 B
E01D19/02
(21)【出願番号】P 2017225599
(22)【出願日】2017-11-24
【審査請求日】2020-09-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)株式会社オフィス・スペースにより平成29年8月22日に発行された「土木施工,第58巻、第9号」にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹野 友規
(72)【発明者】
【氏名】岐部 圭輔
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-343744(JP,A)
【文献】特開平11-124955(JP,A)
【文献】特開平11-124954(JP,A)
【文献】特開2000-054646(JP,A)
【文献】特開2002-227427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/00-23/08
E01D 22/00
E01D 19/02
E04C 5/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の部材に近接した円柱状の既設コンクリート躯体の耐震補強方法であって、
前記既設コンクリート躯体の外面形状に応じた形状に形成された型枠の外面に炭素繊維シートを積層して前記既設コンクリート躯体の外面に合わせて湾曲させた炭素繊維パネルを形成するパネル形成工程と、
前記他の部材と前記既設コンクリート躯体との隙間に前記炭素繊維パネルを挿入するとともに、当該炭素繊維パネルを前記既設コンクリート躯体の外面に密着させた状態で貼設するパネル貼設工程と、を備えることを特徴とする、耐震補強方法。
【請求項2】
前記パネル貼設工程は、
前記既設コンクリート躯体の周方向の一部を前記炭素繊維パネルで覆う作業と、
炭素繊維シートを、前記既設コンクリート躯体の周方向の残部に積層するとともに前記炭素繊維パネルと連結する作業と、
を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の耐震補強方法。
【請求項3】
円柱状の既設コンクリート躯体の外面に密着させた状態で貼設される炭素繊維パネルであって、
前記既設コンクリート躯体の外周の長さの半分以下の長さの部分が、複数の炭素繊維シートが積層された状態で一体に接着されており、
かつ、前記既設コンクリート躯体の外面に密着できるように当該既設コンクリート躯体の外面形状に合わせて湾曲していることを特徴とする、炭素繊維パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐震補強方法および炭素繊維パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
1995年兵庫県南部地震以前に設計及び施工された鉄筋コンクリート躯体は、レベル2地震動に対する耐力が不足しているおそれがある。このような鉄筋コンクリート躯体に対しては、速やかに耐震補強を行う必要性があると指摘されている。
このような耐震補強方法として、例えば、増厚工法、鋼板巻き立て工法、リブバー耐震補強工法、炭素繊維巻き立て工法等がある。増厚工法は、鉄筋コンクリート躯体の表面に沿って主筋及び配力筋を配筋してコンクリートを打設するものである。鋼板巻き立て工法は、鉄筋コンクリート躯体の周囲に鋼板を巻き立て、鉄筋コンクリート躯体と鋼板との隙間に充填材を充填するものである。リブバー耐震補強工法は、矩形断面の鉄筋コンクリート躯体の周囲に補強鋼材を配置し、これらの補強鋼材を隅角部で固定するものである。炭素繊維巻き立て工法は、エポキシ樹脂等の接着剤により鉄筋コンクリート構造物の周囲に炭素繊維シートを巻き立てるものである。
【0003】
耐震補強の対象となる既存の鉄筋コンクリート躯体の中には、壁等の他の躯体や設備等(以下、単に「他の部材」という)に近接(例えば、隙間が数cm以下)しているものがある。このような鉄筋コンクリート躯体に対して耐震補強を行う場合には、鉄筋コンクリート躯体と他の部材との間に形成された隙間を利用して補強を行う必要がある。ところが、増厚工法は、鉄筋コンクリート躯体と他の部材との隙間が小さい場合には施工することができない。また、鋼板巻き立て工法は、鋼板等の搬入や設置に大掛かりな揚重機械を必要とするため、作業スペースが限られた場所での工事では施工が困難であった。また、リブバー耐震補強工法も、鉄筋コンクリート躯体と他の部材との隙間が小さい場合には施工することができない。さらに、炭素繊維巻き立て工法は、複数の炭素繊維シートを鉄筋コンクリート躯体の外面に一体化させる必要があるが、小さい隙間には含浸材塗布用のローラーを挿入することができず、施工できない場合があった。
そのため、特許文献1には、他の部材に近接したコンクリート柱の補強方法として、炭素繊維シートにより形成されたベルト状補強材を利用する補強方法が開示されている。この補強方法では、ベルト状補強材の中間部に予め樹脂が含浸された硬化部分が形成されていて、この硬化部分の内側面に接着剤を塗布した状態で、当該硬化部分をコンクリート柱と他の部材との隙間に挿入してコンクリート柱の側面に接着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の補強方法は、断面矩形の柱等、側面が平坦なコンクリート躯体に対しては、硬化部分を側面に密着させることができるので、高品質に施工することができる。一方、断面円形の柱等のように側面が平坦ではないコンクリート躯体に対して特許文献1の補強方法を採用する場合には、コンクリート躯体の側面に硬化部分を密着させることが難しかった。
このような観点から、本発明は、他の部材に近接した円柱状の既設コンクリート躯体に対して簡易かつ高品質に耐震補強工事を施工することを可能とした耐震補強方法および炭素繊維パネルを提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の耐震補強方法は、他の部材に近接した円柱状の既設コンクリート躯体の補強を行うものであって、前記既設コンクリート躯体の外面形状に応じた形状に形成された型枠の外面に炭素繊維シートを積層して前記既設コンクリート躯体の外面に合わせて湾曲させた炭素繊維パネルを形成するパネル形成工程と、前記他の部材と前記既設コンクリート躯体との隙間に前記炭素繊維パネルを挿入するとともに、当該炭素繊維パネルを前記既設コンクリート躯体の外面に密着させた状態で貼設するパネル貼設工程とを備えている。
かかる耐震補強方法によれば、炭素繊維パネルが、既設コンクリート躯体の外面形状に応じた形状に形成されているため、既設コンクリート躯体に密着させた状態で接着することができ、ひいては、高品質に施工することができる。また、炭素繊維シートが予め積層された炭素繊維パネルを使用するため、工期短縮を図ることができる。また、炭素繊維パネルは、予め所定の形状に形成されているため、狭隘な空間における施工も可能である。
【0007】
なお、前記パネル貼設工程では、前記既設コンクリート躯体の周方向の一部を前記炭素繊維パネルで覆ってもよい。この場合には、樹脂を含浸させた炭素繊維シートを、前記既設コンクリート躯体の周方向の残部に積層するとともに前記炭素繊維パネルと連結する。
【0008】
また、本発明の炭素繊維パネルは、円柱状の既設コンクリート躯体の外面に密着させた状態で貼設されるものであって、前記既設コンクリート躯体の外周の長さの半分以下の長さの部分が、複数の炭素繊維シートが積層された状態で一体に接着されており、かつ、前記既設コンクリート躯体の外面に密着できるように当該既設コンクリート躯体の外面形状に合わせて湾曲している。かかる炭素繊維パネルによれば、既設コンクリート躯体の外面形状に応じた形状を呈しているため、簡易に既設コンクリート躯体の外面に密着させることができる。
なお、炭素繊維パネルを構成する炭素繊維シートは、既設コンクリート躯体の周方向両端部以外の部分が他の前記炭素繊維シートと一体に接着されていて、周方向両端部が他の炭素繊維シートと接着されていない。このとき、前記炭素繊維シート同士が一体に接着されている部分の長さは、前記既設コンクリート躯体の外周の長さの半分以下である。この炭素繊維パネルによれば、既設コンクリート躯体の外面に設置した後、現地において炭素繊維シートの端部同士あるいは他の炭素繊維シートと接着することで、既設コンクリート躯体の外面に炭素繊維を周設した状態にすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の耐震補強方法および炭素繊維パネルによれば、他の部材に近接した円柱状の既設コンクリート躯体の耐震補強工事を簡易かつ高品質に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る橋脚を示す図であって、(a)は正面図、(b)は断面図である。
【
図3】本実施形態の耐震補強方法のパネル形成工程を示す斜視図である。
【
図4】本実施形態の耐震補強方法のパネル貼設工程を示す断面図である。
【
図5】
図4に続くパネル貼設工程の図であって、(a)は炭素繊維パネルの設置状況を示す断面図、(b)はガイドの取付状況を示す斜視図、(c)は(a)に続く炭素繊維パネルの設置状況を示す断面図である。
【
図6】
図5に続くパネル貼設工程の図であって、(a)はガイド撤去後を示す断面図、(c)は残部への残部用シートの設置状況を示す断面図、(c)は炭素繊維パネルの設置後を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態では、
図1(a)および(b)に示すように、鉄骨柱(他の部材)2に近接する既存の橋脚(既設コンクリート躯体)1に対して炭素繊維シートを巻き付けることで耐震補強する場合について説明する。橋脚1は円柱状を呈していて、橋脚1と鉄骨柱2との隙間Sは30mm(3cm)である。橋脚1と鉄骨柱2との隙間Sには、含浸剤塗布用のローラーを挿入することができないため、従前の繊維シート巻き立て工法では炭素繊維シートを橋脚1の外面に貼設(積層)することができない。そのため、本実施形態では、複数の炭素繊維シート(パネル用シート4)が一体に積層された炭素繊維パネル3(
図2参照)を橋脚1と鉄骨柱2との隙間Sを含む部分に貼設する。なお、橋脚1と鉄骨柱2との隙間Sの大きさは限定されるものではない。また、橋脚1の外径は限定されるものではない。さらに、円柱状の橋脚1の断面形状は、必ずしも真円である必要はない。
【0012】
本実施形態の耐震補強方法は、パネル形成工程と、パネル貼設工程とを備えている。
パネル形成工程では、円柱状の橋脚1の外面に貼設される炭素繊維パネル3を形成する。炭素繊維パネル3は、
図2に示すように、積層された複数(本実施形態では3枚)の炭素繊維シート(パネル用シート4)からなる。複数のパネル用シート4は、一体に接着されている。炭素繊維パネル3は、橋脚1の外面形状に沿って湾曲している。
本実施形態では、
図3に示すように、橋脚1の外面形状に応じた形状に形成された型枠7を利用して、橋脚1の外面に合わせて湾曲した炭素繊維パネル3を形成する。炭素繊維パネル3を製造するには、まず、型枠7の外面にパネル用シート4を添設するとともに、このパネル用シート4の外面から含浸剤塗布用ローラーを利用して含浸剤(ウレタン樹脂等)を含浸させる。含浸剤に所定の強度が発現したら、内側のパネル用シート4に外側のパネル用シート4を添設するとともに含浸剤を含浸させる作業を繰り返すことにより、所定枚数のパネル用シート4を積層して、炭素繊維パネル3を形成する。なお、型枠7の外面に予め剥離剤を予め塗布しておくことで、炭素繊維パネル3が型枠7に接着されることを防止する。また、含浸剤を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等を使用すればよい。
【0013】
パネル用シート4は、
図2に示すように、橋脚1の周方向両端部以外の部分(パネル本体部31)が他のパネル用シート4と一体に接着されている。すなわち、炭素繊維パネル3の両端部(パネル端部32)では、パネル用シート4同士が接着されていない。また、外側に設けられたパネル用シート4の橋脚1の周方向における長さは、内側に隣接する他のパネル用シート4よりも長い。したがって、パネル端部32では、外側に向かうに従ってパネル用シート4のパネル本体部31からの突出長が大きい。
本実施形態の炭素繊維パネル3におけるパネル本体部31の長さは、橋脚1の外周の1/3程度である。なお、パネル本体部31の長さは限定されるものではないが、橋脚1の外周の長さの半分以下にするのが望ましい。
【0014】
パネル貼設工程では、炭素繊維パネル3を橋脚1の外面に貼設する。炭素繊維パネル3は、橋脚1と鉄骨柱2との隙間Sに挿入した状態で貼設する。
炭素繊維パネル3の貼設作業は、
図4に示すように、まず、橋脚1の外面に接着剤8として、ウレタン樹脂を付着させる。本実施形態では、接着剤8として、炭素繊維パネル3を製造する際に使用した含浸剤と同じ材料を使用する。なお、接着剤8は、ウレタン樹脂に限定されるものではない。接着剤8は、例えば、ローラーを利用して塗布すればよい。なお、接着剤8を橋脚1の外面に付着させる方法は限定されるものではない。例えば、刷毛やブラシ等を利用してもよいし、吹き付けてもよい。
【0015】
次に、
図5(a)に示すように、橋脚1の外面(接着面)と炭素繊維パネル3の内面(接着面)との間にガイド材5を介設した状態で、炭素繊維パネル3を橋脚1の外面に添設する。ガイド材5は、橋脚1と鉄骨柱2との隙間Sの大きさから炭素繊維パネル3の厚さを差し引いた値よりも小さな厚さを有した部材であって、橋脚1の外面と同等に湾曲した弧状部材である。
図5(b)に示すように、ガイド材5は、炭素繊維パネル3の上端部と下端部にそれぞれ設けておく。
【0016】
次に、
図5(a)および(c)に示すように、炭素繊維パネル3をガイド材5とともに橋脚1の外面に沿ってスライドさせることで、橋脚1と鉄骨柱2との隙間Sに炭素繊維パネル3を挿入し、位置決めを行う。炭素繊維パネル3を所定の位置に配置したら、
図6(a)に示すように、ガイド材5を撤去して、炭素繊維パネル3を橋脚1の外面に密着させる。こうすることで、橋脚1の周方向の一部が炭素繊維パネル3で覆われた状態となる。
そして、橋脚1の外面に塗布した接着剤8が硬化するまで養生する。本実施形態では、自然乾燥により接着剤8の養生(例えば、1日程度)を行う。なお、接着剤8の養生をする際に、必要に応じて加熱したり、送風したりしてもよい。
【0017】
続いて、橋脚1の周方向の残部(炭素繊維パネル3で覆われていない部分)に複数(本実施形態では3枚)の炭素繊維シート(残部用シート6)を積層する。残部用シート6の貼設作業は、
図6(b)に示すように、1枚ずつ行うものとし、橋脚1の外面に残部用シート6を添設した後、含浸剤塗布用ローラーを利用して含浸剤(例えばウレタン樹脂)を残部用シート6の外面から含浸させることにより行う。含浸剤を養生し、所定の強度が発現したら、同様の作業を行うことで、外側の残部用シート6を貼設する。なお、一層目の残部用シート6は、炭素繊維パネル3を橋脚1の外面に貼設した直後(接着剤8の養生中)に貼設してもよい。本実施形態では、残部用シート6の含浸剤として、炭素繊維パネル3の製造時に使用した含浸剤と同じ材料を使用する。なお、含浸剤を構成する材料は限定されない。また、炭素繊維パネル3の含浸剤と残部用シート6の含浸剤には、それぞれ異なる材料を使用してもよい。
【0018】
残部用シート6を貼設する際には、残部用シート6の端部をパネル用シート4の端部と重ね合わせる。一層目(最も橋脚1側の層)の残部用シート6は、炭素繊維パネル3の一層目のパネル用シート4の端部の外面に重ねる。同様に、二層目の残部用シート6は、二層目のパネル用シート4の外面、三層目の残部用シート6は、三層目のパネル用シート4の外面に重ねる(
図6(c)参照)。なお、残部用シート6の端部は、パネル用シート4の内側(橋脚1側)に重ねてもよい。
なお、残部用シート6の橋脚1の周方向における長さは、
図6(c)に示すように、内側(橋脚1側)に設けられた残部用シート6の方が外側に設けられた残部用シート6よりも長い。本実施形態では、一層目(最も橋脚1側の層)の残部用シート6の長さが、橋脚1の外周長からパネル本体部31の長さを差し引いた長さとなるように設定されている。また、二層目の残部用シート6の長さは、橋脚1の外周長から一層目のパネル用シート4の長さを差し引いた長さとした。さらに、三層目の残部用シート6の長さは、橋脚1の外周長から二層目のパネル用シート4の長さを差し引いた長さとした。このようにすると、層毎で異なる位置において、残部用シート6とパネル用シート4とを重ねることができる。
【0019】
本実施形態の耐震補強方法によれば、橋脚1の外面形状に応じた形状に予め形成された炭素繊維パネル3を使用しているため、橋脚1の外面に密着させることができる。そのため、含浸剤塗布用のローラーを挿入することができない隙間S(狭隘部)においても、高品質に施工することができる。また、炭素繊維シート(パネル用シート4)が予め積層された炭素繊維パネル3を使用するため、工期短縮を図ることができる。また、既設部材の移設等を省略することが可能となり、施工性に優れている。
炭素繊維パネル3は、パネル本体部31の長さが橋脚1の外周の長さの1/3(半分以下)であるため、変形させる(炭素繊維パネル3を広げた状態で取り付ける)ことなく橋脚1に直接押し当てることで橋脚1の外面に密着させることができる。そのため、施工が容易である。
また、炭素繊維パネル3は、ガイド材5を介してスライドさせるため、橋脚1と炭素繊維パネル3との間に隙間を有した状態で、位置決めを行うことができる。ガイド材5を利用すると、炭素繊維パネル3の位置決めの際に炭素繊維パネル3が橋脚1の外面に接着されて移動不能となることがないので、施工性に優れている。
炭素繊維シート同士を重ねる位置を層毎にずらしているため、補強構造の厚さを最小限に抑えることができる。また、炭素繊維シート同士の接合部が一か所に集中すると弱部になるおそれがあるが、炭素繊維シート同士を重ねる位置を層毎にずらしているため、弱部が形成されることがない。
【0020】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、橋脚1を補強する場合について説明したが、補強の対象となる既設コンクリート躯体は、円柱状であれば橋脚1に限定されるものではない。
また、前記実施形態では、橋脚1が鉄骨柱2に隣接している場合について説明したが、既設コンクリート躯体に隣接している他の部材は鉄骨柱2に限定されるものではなく、例えば、コンクリート柱や、壁等であってもよい。
また、前記実施形態では、炭素繊維パネル3を構成する複数のパネル用シート4の長さのうち、外側に積層されたパネル用シート4が、内側のパネル用シート4よりも長い場合について説明したが、パネル用シート4の長さは限定されるものではない。例えば、内側のパネル用シート4が外側のパネル用シート4よりも長くてもよいし、全てのパネル用シート4の長さが同一であってもよい。また、炭素繊維パネル3は、同じ長さのパネル用シート4の端部をずらして積層されたものであってもよい。
また、前記実施形態では、橋脚1の一部を炭素繊維パネル3で覆い、残りの部分を現地にて炭素繊維シート(残部用シート6)を積層するものとしたが、橋脚1は、複数の炭素繊維パネル3により周設してもよい。また、橋脚1は、一部を炭素繊維パネル3のパネル本体部31で覆い、残部に対してはパネル端部32の炭素繊維シート(パネル用シート4)を接着してもよい。
なお、ガイド材5は必要に応じて使用すればよい。
【符号の説明】
【0021】
1 橋脚(既設コンクリート躯体)
2 鉄骨柱(他の部材)
3 炭素繊維パネル
31 パネル本体部
32 パネル端部
4 パネル用シート(炭素繊維シート)
5 ガイド材
6 残部用シート
7 型枠
8 接着剤
S 隙間