(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】ロータ、リラクタンス機、およびロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 19/10 20060101AFI20220419BHJP
H02K 1/22 20060101ALI20220419BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20220419BHJP
H02K 17/16 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
H02K19/10 A
H02K1/22 Z
H02K15/02 J
H02K17/16 A
(21)【出願番号】P 2017505795
(86)(22)【出願日】2015-08-04
(86)【国際出願番号】 EP2015067908
(87)【国際公開番号】W WO2016020363
(87)【国際公開日】2016-02-11
【審査請求日】2018-03-08
【審判番号】
【審判請求日】2020-03-19
(31)【優先権主張番号】102014215304.2
(32)【優先日】2014-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591040649
【氏名又は名称】カーエスベー ソシエタス ヨーロピア ウント コンパニー コマンディート ゲゼルシャフト アウフ アクチェン
【氏名又は名称原語表記】KSB SE & Co. KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(72)【発明者】
【氏名】ゴンターマン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ヤニッチ,ボリス
(72)【発明者】
【氏名】ケーネン,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】シャープ,ヨッヘン
(72)【発明者】
【氏名】シュンク,アクセル
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】関口 哲生
【審判官】熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第2975310(US,A)
【文献】特開2000-197325(JP,A)
【文献】米国特許第7282829(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラックスバリアを形成するための切欠きを備えた円筒状の軟磁性素子を有し、
1つ以上の前記フラックスバリアは、少なくとも部分的に充填材が充填され、
前記フラックスバリアの前記充填材は、ロータ周縁に達し、前記ロータ周縁の一部分を形成しているリラクタンス機用のロータにおいて、
前記ロータの前記フラックスバリアは、非充填フラックスバリアを備える内側ロータ領域と、充填フラックスバリアを備える外側領域とが形成されるように、少なくとも部分的に充填されており、
1つ以上の前記フラックスバリアは、内側ウェブを備えており、
前記内側ウェブは、前記内側ロータ領域と前記外側領域とを、分割するように延びており、
前記外側領域は、前記充填材が充填される充填領域を含み、
前記外側領域の一方の端部は前記ロータ周縁に位置し、他方の端部は前記内側ウェブを介して前記内側ロータ領域の端部に対向配置され、
前記内側ウェブの径方向外側部のうちの少なくともいくつかは、前記フラックスバリアと隣接する円弧状に湾曲したエッジ、を備え、
前記フラックスバリアの前記充填領域に隣接する少なくとも1つの湾曲したエッジは、前記フラックスバリアの前記充填領域に向かって径方向外側に膨らむように湾曲しており、
前記外側領域にある前記フラックスバリアの前記充填材は、導電特性を備えており、前記ロータの始動用かごを形成する役割を担っていることを特徴とすることを特徴とするロータ。
【請求項2】
前記外側領域にある前記フラックスバリア、の前記充填材は、非磁性を備えていることを特徴とする請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記外側領域にある前記フラックスバリア、の前記充填材は、導電性で、非磁性の材料であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロータ。
【請求項4】
前記充填材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項5】
前記ロータ周縁と直に隣接している前記フラックスバリアは、いずれも、少なくとも周縁領域に前記充填材が充填されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項6】
前記フラックスバリアの
非充填フラックスバリアに隣接する少なくとも1つの湾曲したエッジは、前記フラックスバリアの前記
非充填フラックスバリアの外側に向かって湾曲していることを特徴とする請求項1に記載のロータ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のロータを少なくとも1つ備えるリラクタンス機であって、駆動目的の周波数変換器を有しないことを特徴とするリラクタンス機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックスバリアを形成するための切欠きを有する円筒状の軟磁性素子を含むリラクタンス機用ロータに関する。本発明は、また、対応するロータを有するリラクタンス機と、この種のロータの製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
同期式リラクタンス機のロータは、通常、ロータ軸と同軸に配置された円筒状の軟磁性素子を備えている。少なくとも1つのポール対またはギャップ対を形成するために、軟磁性素子は互いに透磁率の度合いが異なる磁束伝達部と磁束遮断部を有する。周知の通り、導磁率が高い部分はロータのd軸として識別され、導磁率が比較的低い部分はロータのq軸として識別される。リラクタンスモータの最適有効度、したがって、最適なトルク降伏は、d軸が最高可能導磁率を呈し、且つq軸が最低可能導磁率を呈するときにもたらされる。
【0003】
多くの場合、この前提条件は、空気が入った複数の切欠きをq軸に沿って軟磁性要素に形成することによって満足される。このような切欠きを形成することによって軸方向の磁束が妨げられ、その結果、透磁率が減少する。このように構成された軟磁性要素は、次いで、ロータシャフトに取り付けられ、軸方向に固定され、接線方向にも固定される。
【0004】
安定のために、径方向に配向された内側ウェブによって、1つ以上のフラックスバリアが2分割される。このウェブ配置は積層コアの強度を高め、特に、動作時のロータ安定性を最適なものとする。透磁率に対する影響をできる限り小さくしておくためにウェブの幅は狭い。ロータ周縁と磁束バリアを区分するウェブは、ロータ外周上にも延びている。
【0005】
同期式リラクタンスモータは、通常、周波数変換器を介して給電されるので、回転速度を0から動作速度まで上昇させることができ、動作中に回転速度を調整することもできる。特に、モータを始動させるための回転速度を段階的に上げることができる。これに対し、同期式リラクタンスモータをグリッド固定で作動させるの場合は、非同期的に始動できるようにするために始動用かごを使用する必要がある。ロータの回転速度が同期回転速度に近づくとすぐにリラクタンストルクが優勢となり、ロータは回転磁界と同期して回転する。しかし、導電棒と短絡環を備える従来の始動用かごの構造および製造は、今日に至るまで、かなり複雑で高価である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、d軸およびq軸に沿った最適な磁気抵抗率に特徴があり、それでもなお、安定したロータ設計を保証する、既存ものに代わるロータ構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の構成にしたがうロータによって達成される。このロータの有利な限定が従属請求項の主題となっている。
【0008】
ここで、本発明によれば、1つ以上のフラックスバリアの少なくとも一部に適切な充填材が充填されることが規定される。これらのフラックスバリアの充填材は直にロータの外周に達し、それにより、ロータ周縁の一部を形成する。ロータ周縁の従来のウェブによる輪郭をなくすことができ、したがって、ロータ周縁の少なくとも何カ所かが、ロータ周縁に隣接する1つ以上のフラックスバリア内の充填材によって形成される。
【0009】
ウェブは通常はロータの材料、すなわち導磁性の材料、好ましくは積層体または重ね合わせ式積層コア、から形成されているので、q軸の領域内の前記ウェブの設計はq軸に沿った磁気抵抗に悪影響を及ぼす。すなわち、q軸に沿った透磁率の増加を招く。その結果、モータの動作に不利益なq軸とd軸の間の抵抗比の影響を受け入れなくてはならない。本発明のロータの構成、すなわち通常は外周上に設けられるウェブの少なくとも一部を切り欠くこと、によれば、更に高いトルクを達成するためにd軸とq軸の間の抵抗比をロータの動作に合わせて最適化できる。それでもなお、それぞれのフラックスバリアの外側領域に設けられた充填材によって安定したロータ設計が保証される。
【0010】
本発明の好適な限定では、ロータのフラックスバリアは、充填されていないフラックスバリア領域すなわち非充填フラックスバリア領域を備える内側領域と、充填されたフラックスバリアまたは充填フラックスバリア領域を備える外側領域とが形成されるように、少なくとも複数の領域に充填材料が充填される。例えば、ウェブの配置によって内側領域と外側領域に分割するために1つ以上のウェブを形成し、ロータを径方向に内側ロータ領域と外側ロータ領域に分割する閉線を個々のウェブの輪郭によって構成することが考えられる。最も好ましいのは、外側ロータ領域のすべてのフラックスバリア部が,対応する充填材で充填されていることである。内側ロータ領域のフラックスバリアまたはフラックスバリア領域も、好ましくは非導磁性および/または非導電性の充填材を充填できる。
【0011】
適切な充填材、すなわち導電性の充填剤、の使用により、外側ロータ領域を利用して始動用かごを形成できる。その結果、ロータを使用するリラクタンスモータは、いわゆる「直入れ電動機」として、周波数変換器なしで動作可能である。形成された始動用かごは、一般に、軸方向の端部に固定された短絡環によって短絡される。このようにして得られた始動用かごは、非同期式モータで使用される周知の始動補助原理にしたがって作動する。
【0012】
また、使用される導電性充填材が、特徴として非導磁特性を備えることも考えられる。その結果、フラックスバリア部における透磁率の悪影響が回避される。
【0013】
特に好ましく適切な充填材はアルミニウムまたはアルミニウム合金であるが、これは、この種の材料が上述の特性を備えているからである。しかし、対応する特性に差異が認められる他の材料も考えられる。
【0014】
ロータコアの高度の安定性を達成し、それと同時に、q軸とd軸の間のほぼ最適な抵抗比率を可能とするためにロータ周縁に隣接するフラックスバリアの領域のすべてのウェブセクションを切欠くために、外側ロータ周縁に直に隣接するすべてのフラックスバリアは、少なくともその周縁領域に充填材が充填されることが理想的である。
【0015】
1つ以上のフラックスバリアを1つ以上のウェブによって2以上に分割することも同様に考えられる。既に上で説明されているように、これらのウェブの設計は、各ロータ部の透磁特性に対して悪影響がある。このため、抵抗比率に対する影響を可能な限り制限するために、形成されるウェブの寸法、特に厚さ、を出来る限り小さくしておく必要がある。しかし、使用される充填材、特にアルミニウムまたはアルミニウム合金、を導入するとき、特定の圧力がウェブに作用し、これによって特定環境下でウェブが損傷したり破損したりする可能性がある。そのため、最適なロータ動作のために、ウェブ寸法に合った適当で適切な媒体を見つける必要がある。このような背景に対し、1つ以上のウェブのエッジを湾曲させた形状とすることが特に有利であることが分かった。ウェブを広くせずにエッジを湾曲させると、充填材が圧入されるときのウェブの抵抗が増加し、結果として生じるロータ透磁率に対する影響増大を受け入れなくてはならず、不都合である。エッジの形状は円弧状にすることが特に好ましい。
【0016】
また、フラックスバリアの充填領域に隣接する少なくとも1つの湾曲したエッジは、フラックスバリアの充填領域の内側に向かって湾曲するときに特に有利である。この場合、充填工程中のウェブの抵抗が著しく増加する。なお、フラックスバリアの非充填領域に隣接するエッジの形状はさほど重要ではなく、どのような所望の態様にも設計可能である。しかし、前記エッジが同様に湾曲され、フラックスバリアの非充填領域の外側に向かって湾曲することが好ましい。
【0017】
本発明は、本発明による少なくとも1つのロータを備えるか、または本発明によるロータの有利な限定による少なくとも1つのロータを備えるリラクタンス機、特に同期式リラクタンスモータ、を更に含む。したがって、当該リラクタンス機は、本発明によるロータと同じ利点および特性または本発明によるロータの有利な限定と同じ利点および特性を特徴として備えているので、ここでは説明を繰り返さない。ロータにおける本発明による限定、特に、導入される充填材の位置、の結果としてウェブの数が減少することにより、始動用かごを実現することができ、それと同時に、改善されたロータのトルクを達成できる。
【0018】
リラクタンス機はポンプの駆動に好んで使用される。したがって、本発明は、本発明によるリラクタンスモータまたは同期式リラクタンスモータを備えるポンプも含む。
【0019】
本発明の別の態様は、本発明によるロータを製造する方法に関する。前記方法では、ロータは最初に外側ウェブを備えて作製され、軟磁性ロータ素子の、形成されたフラックスバリアに充填材が導入される。この場合、外側ウェブは、軟磁性素子から形成され且つロータ周縁の領域に位置するウェブと理解される。すなわち、フラックスバリアを形成するために軟磁性素子に設けられた切欠きは、ロータ周縁に直に達するのではなく、ウェブによってロータ周縁から間隔をおいて配置されている。したがって、ロータ周縁は完全に軟磁性素子で形成されている。
【0020】
本発明によれば、充填材がフラックスバリアに導入された後はロータの十分な安定度を保証できるので、後から外側ウェブを除去する。ロータの径方向外側に位置するフラックスバリアのこれらの領域の領域内の外側ウェブが取り除かれることによって、すなわち、フラックスバリアの充填材がロータ周縁に直に隣接することによって、充填材がロータ周縁の一部を形成することが理想的である。
【0021】
一般にロータコアは重ね合わせ式積層コアで構成されるが、回転によって作製されることが好ましい。軟磁性素子の材料層は、ロータコアを過剰回転させることによってロータ周縁から取り除くことができ、したがって、ロータ周縁に隣接する外側フラックスバリア部の領域の外側ウェブが取り除かれる。
【0022】
また、これは、使用される充填材がカスティング法、特にダイカスティング法、によってフラックスバリアに導入、特に圧入、されるときに有利である。
【0023】
図に示された例示実施形態に基づいて、本発明の他の利点および特性を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるロータのロータ層板を示す。
【
図2】本発明による製造方法の個々の方法ステップのときの
図1によるロータ層板の図を示す。
【
図3】
図1による本発明にしたがうロータ層板の詳細図である。
【
図4】第1の別形態のロータのロータ層板の図である。
【
図5】第2の別形態のロータのロータ層板の第3の図である。
【
図6】ロータまたはリラクタンス機の面積比と動作挙動の関係を説明するためのグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明によるロータ層板1の平面図を示す。本発明によるロータの構造では、この種の多数の層板1が軸方向に、すなわち回転軸6に沿って、重ね合わされる。図を簡素にするために、ステータは示されていない。ロータ層板1は複数の切欠き2、3、4、5を備えている。これらの切欠きはフラックスバリアの機能を果たす。また、切欠きの配置によって4極ロータが形成され、前記ロータの磁束はフラックスバリア2、3、4、5を備えた領域で阻止される。導磁率が高い領域は一般にd軸と識別され、導磁率がより低い領域はq軸と識別される。組み立てられた積層コアは、図示されていないロータシャフトに取り付けられる。個々のフラックスバリア2、3、4、5の配置は、これについて明示的に引用されている米国特許第5,818,140号明細書の技術的教示事項に基づく。
したがって、ロータ層板には4つのフラックスバリア部があり、これらの領域のフラックスバリアは互いに全く同じ構造のものである。フラックスバリアは、その両端がロータ周縁の方向に湾曲してロータ周縁に達するバナナ状と言える。
【0026】
しかし、示されているロータ構造は、個々のウェブ10の配置によってそれぞれのフラックスバリア2、3、4、5を複数部分に分割するものであるため、「バガーティ(Vagati)」による従来デザインとは異なる。特徴的な構成の1つは、円のそれぞれの扇形の半径方向内側のフラックスバリア2,3,4が2つのウェブ10で3分割され、最も半径方向外側にあるフラックスバリア5が1つのウェブ10だけで2分割されていることである。
【0027】
個々のウェブ10の配置は、ロータ動作中の優れた積層安定性を保証するだけでなく、更にまた、ロータ層板1を内側の部分領域20と外側の部分領域30に分割するものでもある。領域間の分割を図示するために、内側ロータ領域20と外側ロータ領域30の間の境界線を示す輪状の点線40が示されている。領域20内に位置するフラックスバリアの個数は原則として変更可能であり、内側領域20と外側領域30のサイズ比は本発明の主題ではない。
【0028】
外側の磁気フラックスバリア5と、領域30内にあるフラックスバリア2,3,4の部分領域とは、始動用かごを形成するために使用される。この目的のために、ロータの製造時に不図示の短絡環が端面に固定される。短絡環は非同期機の始動用かごによって、例えば変化しない形態とすることができる。その結果、組み込まれることが多い金属ロッドなど、始動用かごのために作られる付属装備を省くことができる。
【0029】
少なくとも外側ロータ領域30のフラックスバリアの領域には、導電性で非導磁性の材料、特にアルミニウムまたはアルミニウム合金から成る充填材、が充填される。
図1および
図2bの図では、これは灰色の充填材60として示されている。領域20にあるフラックスバリア2,3,4のフラックスバリア領域は、非導磁性材料を充填することもできるし、空気を含むだけとすることもできる。使用される充填材は、非導電性であるか、または導電性に乏しいものであることが好ましい。
【0030】
外側ロータ部30のフラックスバリア領域は、径方向に直にロータの外周に達するため、ロータ周縁は部分的に充填材で形成される。充填材はアルミニウムまたはアルミニウム合金を含む。これまでロータ周縁に設けられていたウェブはもはや存在せず、その結果、フラックスバリア部の磁気抵抗が増え、q軸のd軸の比率が最適化される。ロータ周縁に隣接するフラックスバリアまたはフラックス領域を充填することによって、これまで設けられていたウェブを取り除くことができ、甘受せざるを得なかったロータコアの顕著な安定性損失を初めて無くすことができる。原則として、ロータ周縁の外側および隣接して位置するフラックスバリアまたはフラックス領域の全部を充填する必要はない。本発明の概念では、周縁領域の不都合なウェブを無くすには、周縁領域近傍の1つ以上のフラックスバリアを充填するだけでよい。これにより、d軸とq軸の磁気抵抗の比率が改善され、このことが、ロータを用いる同期式リラクタンスモータの、結果として生じるリラクタンスモータトルクの増加につながる。始動用かごを形成するのに適した充填材の使用およびウェブ10の上記ウェブ配置は、あくまでも任意である。
【0031】
いろいろな方法で充填材をフラックスバリア5とフラックスバリア2、3、4の外側領域とに導入できる。カスティングによる導入も可能である。もちろん、固体状の充填材を切欠き2、3、4、5に挿入することも可能である。
【0032】
ここで、
図2aおよび
図2bを参照して本発明によるロータを製造する方法を説明する。ロータの重ね合わせ式積層コアのロータ層板1は上述のフラックスバリア配置を備えて作製される。積層コアは1枚1枚の層板から作製される。内側ウェブ10、すなわち個々のフラックスバリアを細分する、ロータ周縁の領域にないウェブ、は、ロータを内側領域20と外側領域30に分割する先述の既知の線40を形成する。しかし、ロータ層板1は、初めに
図2aによる図に示されている外側ウェブ50を備えて作製される。
【0033】
次いで、外側ロータ領域30に位置するフラックスバリア部がアルミニウムまたはアルミニウム合金で充填される。ここでは、だいたいにおいて、アルミニウムダイカスティング法が使用される。アルミニウムダイカスティング法では、外側ロータ領域30のフラックスバリア部にアルミニウムまたはアルミニウム合金が圧入され、
図2bの図によるロータ層板ができる。
【0034】
次の方法ステップで、ロータは過剰回転され、その結果、層板の直径が減少し、周縁が収縮する。外側ウェブ50を構成する材料層がなくなり、バナナ状のフラックスバリア2、3、4、5の2つの端部がロータ周縁に直に隣接し、すなわち、アルミニウムまたはアルミニウム合金がロータ周縁に広がってロータ周縁の一部を形成する。その結果は、
図1による図に対応する。この領域の各ウェブ50の消滅により、q軸に沿った透磁率が減少し、そのため、q軸とd軸の間の比率が最適化される。また、外側ロータ領域30の領域にアルミニウムのかごが存在するため、積層ロータコアのこれら外側ウェブ50がなくても機械的強度が達成される。
【0035】
内側ウェブ10もまた、d軸とq軸のあいだの透磁率の比率に不利な影響を及ぼす。そのため、その数量および材料厚を出来る限り小さくしておく必要がある。しかし、内側ウェブ10は、ロータの安定性を保証するために必要である。充填材、すなわちアルミニウムまたはアルミニウム合金、が外側ロータセグメント30のフラックスバリア5またはフラックスバリア部2、3、4に導入または圧入されると、充填されるフラックスバリアのウェブ10に大きな力が作用し、その結果、内側ウェブ10が損傷する場合がある。
【0036】
内側ウェブ10は、ウェブ10の寸法を厚くするのではなく、
図3の詳細な図から明らかように、ここでは円弧状に設計される。前記の図は、
図1のロータ層板の8分の1を示すものである。残りのロータ領域は、
図3の図と対称である。
【0037】
円弧状のリブ10は、アルミニウムダイカスト作業中のロータを安定化する。外側領域30にあるフラックスバリア5およびフラックスバリア2、3、4のフラックスバリア領域に高圧下でアルミニウムが圧入されるが、内側は通常の大気圧にある。その結果、ロータを安定化させる圧縮応力が円弧状のリブに生じる。そのため、ロータのつぶれを効果的に防止できる。
【0038】
特に、円弧状のリブ構造は、充填されたフラックスバリア領域に入り込むように湾曲しているので、アルミニウムダイカストの圧力はこの円弧によって相殺される。そのため、内側リブ10の厚みをさらに薄くすることができ、その結果、内側リブ10は薄いにもかかわらずカスティング中のアルミニウムの高圧に耐えることができるのである。
【0039】
ロータの付加的構成を以下に説明するが、付加的構成は、本発明の構成要件として理解されるべきではない構成である。
図1の例示実施形態において、外側ロータ領域30のフラックスバリアの領域は、導電性で非導磁性の材料、特にアルミニウムまたはアルミニウム合金から成る充填材、が充填される。
図4と
図5に別の変更形態が示されている。
図1、
図4、および
図5の図では、アルミニウムまたはアルミニウム合金が灰色の充填材60として示されている。領域20にあるフラックスバリア2,3,4のフラックスバリア領域は、非導磁性材料を充填することもできるし、空気を含むだけとすることもできる。使用される充填材は、非導電性であるか、または導電性に乏しいものであることが好ましい。
【0040】
同期式リラクタンスモータにおいて、フラックスバリア2、3、4の非充填領域の面積に対するフラックスバリア2、3、4、5の充填領域の面積の比率は、ロータの始動挙動、すなわち回転速度とグリッド周波数との同期、を開始するのに重要である。充填面積が小さすぎると、形成される始動用かごが小さすぎ、負荷をうけるロータは機械的支援なしでは始動不可能である。充填量の設定が大きすぎると、振動質量が不都合に増加し、同様にモータの動作挙動が損なわれる。したがって、特にポンプの駆動モータで使用するためにロータを適用する場合、最適な比率を見つける必要がある。
【0041】
定義のため、層断面に示されている、すべてのフラックスバリア2、3、4、5で使用される充填材の面積を合計し、すべてのフラックスバリア2、3、4の対応する非充填領域の面積に対する比率を求める。
図1、
図4、および
図5の図では、これは、フラックスバリア2、3、4内の灰色以外の背景エリアに対するフラックスバリア2、3、4、5内の灰色で示されている全エリア60の比率に相当する。
【0042】
非充填フラックスバリア2、3、4の領域の面積に対するフラックスバリア2、3、4、内の充填領域の面積の適切な比率は、少なくとも0.2という値であることが分かった。この比率は、好ましくは0.2と3の間の範囲であり、特に好ましくは0.3と3の間の範囲であり、理想的には0.75と1.5の間の範囲である。
【0043】
また、各フラックスバリア2、3、4の充填領域の面積を互いに一致させる、すなわち、同一となるように設定する。ある環境では、最も外側のフラックスバリア5の面積が提供する充填空間が非常に小さいため、最も外側のフラックスバリア5がこの基準を遵守できない場合がある。
【0044】
別の基準は、ロータの径方向内側にあるフラックスバリア2の充填領域と非充填領域の比率を少なくとも0.2、好ましくは0.2~2、特に好ましくは0.35~0.8、理想的には0.35~0.6とすることである。
図4の例示実施形態において、この比率は0.5であるが、
図5の例示実施形態で最も内側のフラックスバリア2は、例えば、約0.3という更に小さい比率が想定されている。
図1の例示実施形態では、0.3~0.5の比率が設定される。
【0045】
やはり径方向外側にある部分的に充填されたフラックスバリア3、4の充填領域の面積は、内側フラックスバリア2の充填領域の面積と同じ大きさである。大きさが一致している、すなわち前記面積とほとんど同じである。
【0046】
同期式リラクタンスロータの同期引入れ境界特性曲線が
図6に示されている。示されたグラフにおいて、軸70はモータの振動質量に対する負荷の比率に対応しており、軸71は定格トルクに対する負荷の比率に対応している。それぞれの曲線a,b,cの下の面積は、直入れ同期式リラクタンスモータが確実に始動する領域、すなわち直入れ同期式リラクタンスモータを同期させることができる領域、を定める。前記グラフにおいて、曲線aは、本発明に含まれないロータの動作挙動の特徴を示すものであり、ロータの層板の形状は
図1および
図4の例示実施形態に対応するが、そのフラックスバリアはいずれもアルミニウムまたはアルミニウム合金で完全に充填されている。
【0047】
曲線bは、最も内側のフラックスバリア2の面積比が0.3である、
図5の本発明によるロータの動作挙動を示す。一番上の特性曲線cは、最も内側のフラックスバリアの面積比が0.5である
図4の典型的な実施形態のロータと関連付けることができる。
【0048】
図6もまた、目標の方法で面積比を最適化することによって、モータが確実に同期される領域のサイズ、すなわち曲線bおよび曲線cの下の面積、を大きくすることにより、直入れリラクタンスモータトルクの始動性の著しい改善が達成されることを示す。