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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】巻取り機
(51)【国際特許分類】
   B65H 54/547 20060101AFI20220419BHJP
   B65H 54/44 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
B65H54/547
B65H54/44 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017548458
(86)(22)【出願日】2016-03-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2016055084
(87)【国際公開番号】W WO2016146464
(87)【国際公開日】2016-09-22
【審査請求日】2018-12-07
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】102015003268.2
(32)【優先日】2015-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ ヴァルターマン
(72)【発明者】
【氏名】クラウス シェーファー
【合議体】
【審判長】吉村 尚
【審判官】藤本 義仁
【審判官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-255899(JP,A)
【文献】特開2000-2194130(JP,A)
【文献】特開2001-63917(JP,A)
【文献】国際公開第2013/171073(WO,A1)
【文献】英国特許出願公告第553760(GB,A)
【文献】米国特許第2244197(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 54/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの糸群を複数のパッケージに巻き取る巻取り機であって、複数の巻管(7)を収容する長く突出するチャック(12)を備えた少なくとも1つの巻取りスピンドル(3.1,3.2)が設けられており、前記チャック(12)は、中空支持体(20)内に支持された、前側の軸受軸(16.1)と後ろ側の軸受軸(16.2)とを有する複数部分から成る駆動軸(16)によって駆動可能であり、前記後ろ側の軸受軸(16.2)がスピンドル駆動装置(5.1,5.2)に連結されており、前記後ろ側の軸受軸(16.2)に結合された前記前側の軸受軸(16.1)は、前記チャック(12)に連結されており、前記前側の軸受軸(16.1)を支持する支持部(17.1)が、前記中空支持体(20)に対して複数の緩衝エレメント(25.1,25.2)によって緩衝されており、前記支持部(17.1)は2つのころがり軸受ユニット(26.1,26.2)を有しており、該ころがり軸受ユニット(26.1,26.2)は、前記複数の緩衝エレメント(25.1,25.2)によって前記中空支持体(20)に対して支持された軸受ブシュ(21.1)内に配置されている、巻取り機において、前記前側の軸受軸(16.1)と前記中空支持体(20)との間に、軸方向に前記支持部(17.1)の外側にらされて配置された追加的な緩衝手段(22)が設けられていることを特徴とする、巻取り機。
【請求項2】
前記緩衝手段(22)は、前記支持部(17.1)と、前記前側の軸受軸(16.1)の、前記チャック(12)に結合された端部との間における軸部分に配置されている、請求項1記載の巻取り機。
【請求項3】
前記緩衝手段(22)は、前記前側の軸受軸(16.1)の周囲に保持された緩衝軸受(23)によって形成されている、請求項1または2記載の巻取り機。
【請求項4】
前記緩衝軸受(23)は少なくとも、1つのころがり軸受(23.1)と、該ころがり軸受(23.1)の外レースに支持された1つの別の緩衝エレメント(23.2)とから形成されている、請求項3記載の巻取り機。
【請求項5】
前記緩衝エレメントは、内側スリーブ(31)と、該内側スリーブ(31)を間隔をおいて取り囲む外側スリーブ(30)とを備えた個々の緩衝リング(23.2,25.1,25.2)によって形成されており、前記内側スリーブ(31)と前記外側スリーブ(30)とは、ゴムエレメント(32)によって互いに弾性的に結合されている、請求項4記載の巻取り機。
【請求項6】
前記緩衝リング(23.2,25.1,25.2)は、前記内側スリーブ(31)の幅(b)が前記外側スリーブ(30)の幅(b)よりも小さい、または大きいように形成されている、請求項5記載の巻取り機。
【請求項7】
前記ころがり軸受(23.1)は、背面組合せで互いに並んで前記前側の軸受軸(16.1)に保持された2つのスピンドル軸受(33.1,33.2)によって形成されている、請求項4から6までのいずれか1項記載の巻取り機。
【請求項8】
前記前側の軸受軸(16.1)の前記支持部(17.1)は、互いに間隔をおいて配置された2つのころがり軸受ユニット(26.1,26.2)によって形成されており、該ころがり軸受ユニット(26.1,26.2)は、1つの軸受ブシュ(21.1)の内部に配置されており、かつ該軸受ブシュ(21.1)は、前記緩衝リングのうちの複数の前記緩衝リング(25.1,25.2)を介して前記中空支持体(20)の内部において保持されている、請求項5または6記載の巻取り機。
【請求項9】
前記後ろ側の軸受軸(16.2)を支持する1つの支持部(17.2)が、数の別の緩衝リング(28.1,28.2)を介して前記中空支持体(20)に対して緩衝されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の巻取り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載した、1つの糸群を複数のパッケージに巻き取る巻取り機に関する。
【0002】
溶融紡糸プロセスにおいて合成糸を製造する場合、1つの紡糸位置の複数の糸は一緒に並行にパッケージに巻き取られる。そのために、糸毎にそれぞれ1つの巻成ユニットを有する公知の巻取り機が使用され、このとき巻成ユニットは、巻取りスピンドルに沿って互いに平行に延びている。巻取りスピンドルは、突出するようにスピンドル保持体に配置されており、これによって、巻取りスピンドルの周囲に巻成されたパッケージは、完成後に自由端部において取外し可能である。今日、1つの紡糸位置において可能な限り多くの糸を互いに並行に形成するという望みがあり、その結果、多くのパッケージを互いに並行に巻取り機の内部において巻成する必要があり、かつ特に長く突出する巻取りスピンドルが必要である。
【0003】
しかしながらこのような巻取りスピンドルの設計時には、巻取り時に2000~6000m/分の極めて高い糸走行速度を実現する必要があるということを考慮しなくてはならない。さらに注意すべきことは、このような巻取りスピンドルは、その複雑な構造に基づいて複数の臨界固有振動を有していて、これらの臨界固有振動は、励起振動と重なって共振を発生させることがあるということである。このようないわゆる臨界巻取り速度は、許容可能な共振過剰上昇に関連して、スピンドルの運転範囲の終端を決定することができる。したがって運転範囲に影響を及ぼすためおよび運転範囲を拡大するために、巻取りスピンドルの速度特性を特別な処置によって低減すること、もしくは巻取りスピンドルの振動を緩衝することが一般的である。
【0004】
独国特許出願公開第19548142号明細書(DE 195 48 142 A1)から、巻取りスピンドルを備えた同様な形式の巻取り機が公知である。巻取りスピンドルは、チャックを有しており、このチャックの周囲に、巻管を収容するクランプ装置が配置されている。チャックは、駆動側において中空円筒形に形成されていて、ハブを介して駆動軸に結合されている。駆動軸は複数部分から形成されていて、後ろ側の軸受軸と前側の軸受軸とによって形成されている。後ろ側の軸受軸は自由端部が、駆動装置に連結可能に構成されている。前側の軸受軸は自由端部が、チャックのハブに結合されている。駆動軸を支持するために、中空支持体はチャックの開放端部に進入しており、このとき中空支持体の内部には、前側の軸受軸の支持部が形成されている。前側の軸受軸の支持部は、2つのころがり軸受を有しており、両ころがり軸受は、軸受軸と内側の軸受スリーブとの間に配置されている。内側の軸受スリーブは、外側の軸受スリーブ内に差し込まれており、このとき両軸受スリーブの間には、緩衝のために複数のゴムエレメントが設けられている。さらに別の緩衝エレメントが、外側の軸受スリーブと中空支持体との間に配置されている。緩衝エレメントとしては、このときOリングが使用される。
【0005】
互いに入れ子式に配置された2つの軸受スリーブを使用することによって、公知の巻取りスピンドルは高められた所要スペースを必要とするので、比較的大きな長さは比較的大きなチャック直径の場合にしか実現することができない。また他方において、緩衝エレメントとして使用されるOリングには、緩衝横断面が比較的大まかな許容誤差を有しているという欠点がある。これにより、不都合な非圧縮性を回避するために、軸受スリーブにおける収容溝は、相応に大きな許容範囲を有することが必要である。しかしながらこのことは、ゴムエレメントの緩衝特性に対して不都合な影響を及ぼす。さらに収容溝は、巻取りスピンドルの部材の強度にも影響を与える。
【0006】
独国特許出願公開第10037201号明細書(DE 100 37 201 A1)に基づいて公知の、巻取りスピンドルを備えた巻取り機では、チャックは1つの部分から成る駆動軸によって駆動され、この駆動軸は、中空支持体の内部において、複数回支持されている。この公知の巻取り機では、緩衝手段として、中空支持体の外径部または内径部に配置されたスリーブパックが設けられている。スリーブは、内部摩擦による中空支持体の振動に対して抵抗するために、スリーブ積層体の内部において相対的に可動である。このような振動減衰機は、同様に大きな追加的な取付け空間を必要とし、このような取付け空間は、強度に対して負荷を加える、またはチャックの大きな直径の負荷を加えることになる。しかしながらまたチャックの直径は、巻管に基づいて予め規定されており、自由に選択することができない。
【0007】
ゆえに本発明の課題は、巻取りスピンドルを備えたこのような形式の巻取り機を改良して、制限された外径にもかかわらず、高い巻取り速度のための極めて長く突出するチャックを有する巻取り機を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、複数の臨界回転数にわたって使用可能なチャックを有する、巻取りスピンドルを備えた巻取り機を形成することにある。
【0009】
この課題は、本発明によれば、前側の軸受軸と中空支持体との間に、支持部の外側において軸方向にずらされて配置された追加的な緩衝手段が設けられていることによって解決される。
【0010】
本発明の好適な発展形態は、それぞれの従属請求項の特徴および特徴の組合せによって定義されている。
【0011】
本発明は、緩衝手段に対して作用する枢着点が互いに相対運動を実施し得る箇所においてのみ、緩衝は特に有効であり得るということに基づいている。したがって前側の軸受軸と中空支持体との間における取付け空間が直に、チャックに連結された前側の軸受軸の振動を緩衝するために使用される。本発明の別の利点は、緩衝手段を軸受軸と中空支持体との間に組み込むために、実質的に追加的な取付け空間を必要としないということにある。追加的な半径方向における取付け空間は不要である。
【0012】
可能な限り高い効果的な緩衝作用を得るために、本発明の特に好適な発展形態では、緩衝手段は、支持部と、前側の軸受軸の、チャックに結合された端部との間における軸部分に配置されている。このときチャックに対する結合箇所の近くにおける緩衝手段の位置決めは、下側範囲における臨界巻取り速度においても、上側範囲における臨界巻取り速度においても、高い緩衝作用を示す。
【0013】
大きな摩擦損失なしに駆動軸によるチャックの駆動を可能にするために、本発明の好適な発展形態では、緩衝手段は、前側の軸受軸の周囲に保持された緩衝軸受によって形成されている。このとき緩衝軸受が、自重およびチャックの重量によって荷重をほぼ掛けられないことが重要である。共振の発生時にだけ、緩衝軸受は活性化する。
【0014】
緩衝軸受は、好ましくは1つのころがり軸受と、該ころがり軸受の外レースに支持された1つの緩衝エレメントとから形成されている。このように構成されていると、ころがり軸受は、回転する軸受軸から延びる、緩衝エレメントのための枢着点を形成する。
【0015】
緩衝エレメントとしては、好ましくは、内側スリーブと、該内側スリーブを間隔をおいて取り囲む外側スリーブとを備えた緩衝リングが形成され、このとき内側スリーブと外側スリーブとは、ゴムエレメントによって互いに弾性的に結合されている。このように構成されていると、取付け空間は、それぞれのゴムエレメントとは無関係であり、内側スリーブおよび外側スリーブの直径だけに関連している。したがって内側スリーブと外側スリーブとの間におけるゴムエレメントのばね特性を、既に取付け前に、予め規定された緩衝特性をもって形成することができる。
【0016】
取付け状況に応じて緩衝リングは、内側スリーブの幅が外側スリーブの幅よりも小さい、該幅と同じ、または大きいように形成されていてよい。これによって特に、スリーブ相互の可動性に影響を及ぼすことができる。
【0017】
前側の軸受軸に対する、中空支持体の内部における緩衝エレメントの確実な案内を得るために、ころがり軸受は、背面組合せで互いに並んで前側の軸受軸に保持された2つのスピンドル軸受によって形成されている。このように構成されていると、緩衝軸受は、前側の軸受軸の隣接する支持部に対して影響を及ぼさない。
【0018】
駆動軸の各位置において可能な限り予め規定された緩衝作用を得るために、さらに、前側の軸受軸の支持部は、互いに間隔をおいて配置された2つのころがり軸受ユニットによって形成されており、該ころがり軸受ユニットは、1つの軸受ブシュの内部に配置されており、かつ該軸受ブシュは、緩衝リングのうちの複数の緩衝リングを介して中空支持体の内部において保持されている。このように構成されていると、緩衝軸受に対して合わせられた追加的な緩衝が可能になり、このような追加的な緩衝によって、巻取り速度の範囲全体にわたって比較的大きな運転範囲を得ることができる。
【0019】
さらに別の実施形態では、後ろ側の軸受軸の1つの支持部が、緩衝リングのうちの複数の緩衝リングを介して中空支持体に対して緩衝されるように構成されている。このように構成されていると、駆動側および被動側から好適に発生する振動荷重を、パワートレーンにおいて緩衝することができる。
【0020】
次に添付の図面を参照しながら、幾つかの実施形態について、本発明に係る巻取り機を詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】巻取り機の1実施形態を概略的に示す側面図である。
図2図1に示した実施形態の巻取りスピンドルのうちの1つの巻取りスピンドルを概略的に示す断面図である。
図3】緩衝リングを概略的に示す断面図である。
図4】緩衝リングの別の実施形態を概略的に示す断面図である。
図5】緩衝軸受の別の実施形態を概略的に示す断面図である。
図6】動的な特性値の特性線経過を、L/D比と巻取り速度との関係で示す線図である。
【0022】
図1には、本発明に係る巻取り機の1実施形態が概略的に示されている。巻取り機は、長く突出する2つの巻取りスピンドル3.1,3.2を有しており、両巻取りスピンドル3.1,3.2は、機械フレーム1に回転可能に支持された巻取りタレット2に配置されている。巻取りスピンドル3.1,3.2に沿って、4つの巻成ユニット4.1~4.4が延びており、これらの巻成ユニット4.1~4.4において4つのパッケージ6が互いに並行に巻成される。そのために巻取りスピンドル3.1,3.2はそれぞれ、スピンドルモータ5.1,5.2に連結されている。
【0023】
巻成ユニットの数は、一例である。基本的にこのような巻取り機は、パッケージを同時に巻成するために、複数の巻成ユニットを有している。
【0024】
巻成ユニット4.1~4.4には、圧着ローラ9および綾振り装置8が対応配置されており、このとき綾振り装置8は、各巻成ユニット4.1~4.4に対してそれぞれ、複数の糸のうちの1つを往復案内する糸案内手段を有している。圧着ローラ9は、可動のローラ支持体11に保持されている。糸の走入は、巻成ユニット4.1~4.4の走入部を形成する各1つのヘッド糸ガイド10を介して案内される。
【0025】
パッケージ6を収容するために、巻取りスピンドル3.1,3.2には、複数の巻管7が互いに並んで緊締されている。そのために各巻取りスピンドル3.1,3.2は各1つのチャックを有しており、このチャックについては、図2を参照しながら後でさらに詳しく説明する。図2には、巻取りスピンドル3.1または3.2の一部が断面されて概略的に示されている。
【0026】
図2の図面から分かるように、巻取りスピンドル3.1のチャック12は、周囲に緊締周壁14を有していて、この緊締周壁14は、クランプ装置13と共働し、これによって緊締周壁14の周囲において、押し嵌められた巻管を緊締することができる。図2の図面において、緊締周壁14の周囲における巻管は示されていない。
【0027】
チャック12は、駆動軸16に回動不能に結合されている。駆動軸16は本実施形態では、前側の軸受軸16.1と後ろ側の軸受軸16.2とによって形成され、両方の軸受軸16.1,16.2は、ねじり剛性のカップリング18を介して互いに結合されている。このカップリング18はこのとき好ましくは、ねじり緩衝手段を有している。
【0028】
前側の軸受軸16.1は、軸ハブ結合部24を介して、チャック12のハブ15に回動不能に結合されている。
【0029】
前側の軸受軸16.1および後ろ側の軸受軸16.2は、それぞれ前側の支持部17.1と後ろ側の支持部17.2とを介して、中空支持体20内において回転可能に支持されている。中空支持体20は、巻取りタレット2に固定されており、かつ突出する端部で、ハブ15の両側において中空円筒形を成すチャック12の内部に進入している。このとき中空支持体20の周囲とチャック12との間には、小さな間隔が形成されている。
【0030】
中空支持体20の、巻取りタレット2に固定された部分には、後ろ側の軸受軸16.2の後ろ側の軸受17.2が形成されている。後ろ側の軸受軸16.2は、2つのころがり軸受27.1,27.2において回転可能に支持されている。ころがり軸受27.1,27.2は、軸受ブシュ21.2の内部に配置されている。この軸受ブシュ21.2は、緩衝リング28.1,28.2として形成された複数の緩衝エレメントを介して、中空支持体20の内部において保持される。
【0031】
後ろ側の支持部17.2は、中空支持体20の1つの端部に形成されている。このとき後ろ側の軸受軸16.2は、駆動端部が中空支持体20の外側に突出しており、このとき駆動端部は、カップリング端部19として形成されている。したがってスピンドル駆動装置5.1または5.2は、カップリング端部19を介して直接駆動軸16に連結されている。
【0032】
中空支持体20の突出している部分の内部には、前側の軸受軸16.1の前側の支持部17.1が形成されている。この実施形態では、前側の支持部17.1は2つのころがり軸受ユニット26.1,26.2を有している。両ころがり軸受ユニット26.1,26.2は、軸受ブシュ21.1の内部に配置されている。この軸受ブシュ21.1は、複数の緩衝リング25.1,25.2として形成された複数の緩衝エレメントを介して、中空支持体20に対して支持されている。
【0033】
中空支持体20の自由端部は、チャック12の内部においてハブ15の直前まで延びている。支持部17.1とハブ15との間における、前側の軸受軸16.1の軸部分において、駆動軸16の周囲には、別の緩衝手段22が、中空支持体20と駆動軸16との間に配置されている。緩衝手段22は、本実施形態では緩衝軸受23によって形成されている。この緩衝軸受23は、前側の軸受軸16.1の周囲に保持されたころがり軸受23.1と、ころがり軸受23.1の外レースと中空支持体20との間に配置された緩衝リング23.2とを有している。ころがり軸受23.1は内レースで、前側の軸受軸の周囲に保持されている。ころがり軸受23.1の外レースは、緩衝リング23.2を支持するために役立つ。これによって緩衝手段22は、駆動軸16の回転を阻止することなしに、前側の軸受軸16.1と位置固定の中空支持体20との間に配置されることになる。
【0034】
緩衝リング23.2を説明するために、図2のみならず図3も参照する。図3には、緩衝リング23.2が断面図で概略的に示されている。緩衝リング23.2は、外側スリーブ30と内側スリーブ31とによって形成される。内側スリーブ31と外側スリーブ30との間には、ゴムエレメント32が配置されている。このゴムエレメント32は、内側スリーブ31および外側スリーブ30に不動に結合されていて、ゴムばねを形成している。これによって内側スリーブ31と外側スリーブ30とは互いに相対運動することができる。内側スリーブ31および外側スリーブ30は、好ましくは金属から形成されているので、ゴムエレメントは、加硫によって内側スリーブ31と外側スリーブ30との間において固定される。
【0035】
図2に示すように、緩衝リング23.2の内側スリーブ31は、ころがり軸受23.1の周囲に支持されている。緩衝リング23.2の外側スリーブは、中空支持体20の内径部に接触している。
【0036】
緩衝軸受22が駆動軸16とチャック12との間の結合部の直ぐ近くに位置していることによって、糸の巻取り時における全速度範囲にわたって作用する極めて効果的な緩衝作用を実現することができる。基本的に緩衝軸受22の位置は、巻取りスピンドルの設計に関連している。例えば、チャック12はそれ自体に対して平行に下がることが必要である。回転曲げモーメントを可能な限り小さく保つために、駆動軸16とチャック12との間における軸・ハブ結合部は、緩衝軸受22の可能な限り近くに位置決めされる。前側の支持部17.1の領域に対する緩衝軸受22の影響および緩衝リング25.1,25.2の使用は、特に動的な特性値Kによって示すことができる。例えば、空の巻取りスピンドルの始動時に運転範囲が、上側の混合臨界巻取り速度(mischkritische Spulgeschwindigkeit)によって制限されていることが公知である。なぜならば、チャックにおいて発生する共振過剰振動は、既存の緩衝処置によってはもはや抑制することができないからである。巻取りスピンドルの動的な特性値は、簡単化して下記の式によって表される:
K=(vspul,max /10m/min.)x(L/D)
この等式において最大巻取り速度は、vspul,maxで示されており、このとき、従来技術において公知の巻取り機における最大巻取り速度は、臨界巻取り速度vkritischと同じである。符号Dは、実質的に巻管の内径と同一であるチャックの公称直径を示している。符号Lは、巻管を収容するチャックの公称長さを示している。
【0037】
図1および図2には、巻取りスピンドル3.1の例においてチャックのうちの1つのチャックの長さLおよび公称直径Dが示されている。長さLおよび公称直径Dは、巻取りスピンドルを使用するための重要なパラメータを成している。
【0038】
動的な特性値Kは、このとき複合的なロータ動力学的な相関関係の他に、特にチャックの緩衝処置および振動特性を考慮している。このような巻取りスピンドルの今日汎用の設計では、動的な特性値Kは、値8~10の範囲にある。このとき動的な特性値Kは、チャック直径に対するチャック長さの比(L/D)に関連して、巻取り範囲を制限する臨界巻取り速度と同じである最大許容巻取り速度(v)を決定する。
【0039】
図6には、そのために、最大許容巻取り速度とチャックの長さ直径比L/Dとの関係が線図で示されている。この図6には、それぞれの比の値L/Dに対して最大許容巻取り速度が記入されている。したがって、特性値K=9の場合の曲線は、従来技術において公知の巻取りスピンドルの通常の運転範囲を成している。
【0040】
図2に示した追加的な緩衝処置を考慮して、巻取りスピンドルの運転範囲を大幅に拡大することに成功した。例えば、本発明に係る巻取りスピンドルの運転範囲は、例えば値K=23で定義することができる。線図において、運転範囲の拡大は値K=23を有する曲線によって示されている。これによって特に、公称直径Dが変わらない状態で、大幅に長いチャックを運転確実に作動させることができる。例えば、溶融紡糸法において、いわゆるPOY糸を、例えば3000m/分の巻取り速度でパッケージに巻き取ることが公知である。従来の巻取りスピンドルは、長さ直径比に関して値L/D=16で制限されていた。本発明に係る巻取りスピンドルでは、いまやL/D=27までの長さ直径比を有するチャックを使用することができる。したがって同一の公称直径Dにおいて、大幅に長いチャック長さLを実現することができる。例えば6000m/分の比較的高い巻取り速度においても、長さ直径比は同様にさらにL/D=12からL/D=20に高められている。ゆえに本発明に係る巻取り機は、巻取りユニットの数を汎用の巻取り機に対してほぼ倍にすることができるという特別な利点を提供する。巻取りスピンドルの長さ直径比L/Dは、本発明に係る巻取り機では少なくとも60%高められる。駆動軸の支持部の外側における追加的な緩衝手段22の位置決めは、巻取りスピンドルの運転範囲に影響を与えるために、驚くほど重要な作用を示す。このとき特に緩衝軸受23内に組み込まれた緩衝リング23.2は、振動の位置および発生に適合されたばね緩衝特性をもって形成することができる。
【0041】
図2に示した巻取りスピンドルの内部における緩衝エレメントの使用時には、取付け箇所と緩衝のために使用される各枢着点とに関連して、緩衝リング23.2の種々様々な構造形態が可能であることが示された。例えば図3および図4には、例えば緩衝軸受23における緩衝リング23.2として、または軸受ブシュ21.1における緩衝リング25.1,25.2として、または軸受ブシュ21.2における緩衝リング28.1,28.2として使用可能である、緩衝リングの種々様々な構造形態が示されている。図3に示した構造形式では、内側スリーブ31は、外側スリーブ30に比べて小さな幅を備えて形成されている。図3において内側スリーブ31の幅はbで示され、外側スリーブ30の幅はbで示されている。したがってb<bという関係が成り立ち、このときゴムエレメント32は、最大で内側スリーブ31の幅を有している。
【0042】
これに対して図4に示した構造形式は、内側スリーブ31に比べて小さな幅を備えた外側スリーブ30を有している。ここではb>bという関係が成り立ち、このときゴムエレメント32は、最大で外側スリーブ30の幅を有している。これによって、特にスリーブ30,31の間における可動性に、ゴムエレメント32を介した弾性結合を考慮して影響を及ぼすことができる。
【0043】
前側の軸受軸16.1と中空支持体20との間における取付け空間が緩衝軸受のためには不足した取付け高さを有している場合のために、図5には、可能な緩衝軸受23の1実施形態が断面図で概略的に示されている。図5に示した実施形態では、ころがり軸受23.1が前側の軸受軸16.1の周囲に配置されている。ころがり軸受23.1は、本実施形態では、背面組合せで保持されている2つのスピンドル軸受33.1,33.2によって形成されている。これによって前側の軸受軸16.1の支持部17.1は、完全に影響を受けないままになり、かつ緩衝リングの確実な案内および位置決めが保証される。
【0044】
ころがり軸受23.1の外レースには、2つの支持体スリーブ29.1,29.2が支持されており、両支持体スリーブ29.1,29.2は、ころがり軸受23.1の外側における各1つのカラー端部で、各1つの緩衝リング23.2,23.2’を保持している。緩衝リング23.2,23.2’は、シールリングの上に述べた実施形態と同一に構成されている。したがって緩衝軸受23の構造高さを著しく減じることができるので、巻取りスピンドルの内部における駆動軸16の弱化も中空体20の弱化も回避できる。
【0045】
本発明に係る巻取り機は、すべての通常の溶融紡糸プロセスのために、押し出されたばかりの複数の糸を1つの糸群として並行にパッケージに巻き取るのに適している。例えばPOY溶融紡糸プロセス、FDY溶融紡糸プロセスまたはIDY溶融紡糸プロセスにおいて生ぜしめられた合成糸を、複数の糸を備えた1つの糸群において同時にパッケージに巻き取ることができる。しかしながらまた巻取り機は、BCFプロセスのためにも、巻縮された複数の糸をパッケージに巻き取るのに適している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6