IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テラパワー, エルエルシーの特許一覧

<>
  • 特許-溶融塩原子炉および核分裂反応制御方法 図1
  • 特許-溶融塩原子炉および核分裂反応制御方法 図2
  • 特許-溶融塩原子炉および核分裂反応制御方法 図3
  • 特許-溶融塩原子炉および核分裂反応制御方法 図4
  • 特許-溶融塩原子炉および核分裂反応制御方法 図5
  • 特許-溶融塩原子炉および核分裂反応制御方法 図6
  • 特許-溶融塩原子炉および核分裂反応制御方法 図7
  • 特許-溶融塩原子炉および核分裂反応制御方法 図8
  • 特許-溶融塩原子炉および核分裂反応制御方法 図9
  • 特許-溶融塩原子炉および核分裂反応制御方法 図10
  • 特許-溶融塩原子炉および核分裂反応制御方法 図11
  • 特許-溶融塩原子炉および核分裂反応制御方法 図12
  • 特許-溶融塩原子炉および核分裂反応制御方法 図13
  • 特許-溶融塩原子炉および核分裂反応制御方法 図14
  • 特許-溶融塩原子炉および核分裂反応制御方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】溶融塩原子炉および核分裂反応制御方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 5/00 20060101AFI20220419BHJP
   G21C 1/22 20060101ALI20220419BHJP
   G21C 7/30 20060101ALI20220419BHJP
   G21C 19/18 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
G21C5/00 B GDM
G21C1/22
G21C7/30
G21C19/18
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2017553054
(86)(22)【出願日】2015-12-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-03-01
(86)【国際出願番号】 US2015067923
(87)【国際公開番号】W WO2016109579
(87)【国際公開日】2016-07-07
【審査請求日】2018-11-06
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】62/097,235
(32)【優先日】2014-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/098,984
(32)【優先日】2014-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/234,889
(32)【優先日】2015-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513313945
【氏名又は名称】テラパワー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】チータム,ジェッシ,アール.,ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】シスネロス,アンセルモ,ティー.,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ラトコフスキー,ジェフリー,エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルマー,ジェームズ,エム.
(72)【発明者】
【氏名】ジョンズ,クリストファー ジェイ.
【合議体】
【審判長】瀬川 勝久
【審判官】山村 浩
【審判官】野村 伸雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0083878(US,A1)
【文献】英国特許出願公開第2508537(GB,A)
【文献】国際公開第2013/180029(WO,A1)
【文献】特公昭35-13995(JP,B1)
【文献】米国特許第3216901(US,A)
【文献】特開2014-119429(JP,A)
【文献】特開2001-133572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 1/00-1/32,5/00-5/22,7/00-7/36,19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融塩原子炉であって、
溶融燃料塩によって燃料を供給される核分裂反応を含むよう構成された非減速の原子炉心と、
上記原子炉心に接続された溶融燃料塩制御システムであって、選択された体積の上記溶融燃料塩を上記原子炉心から除去して、上記溶融塩原子炉の反応度を示すパラメータを、ノミナルの反応度の選択された範囲内に保つよう構成された溶融燃料塩制御システムと、を備え、
上記溶融燃料塩制御システムは溶融燃料塩交換システムを有しており、上記溶融燃料塩交換システムは、上記原子炉心と流体的に接続されており、選択された体積の上記溶融燃料塩を、選択された親物質と担体塩との混合物を含む選択された体積の供給物質と交換するよう構成され、
上記供給物質は、濃縮燃料物質を含まず、
上記供給物質の体積および組成を表わす供給燃料塩ベクトルは、上記溶融塩原子炉内の目標とする目標燃料塩の体積および組成を表わす目標燃料塩ベクトルから、上記選択された体積の上記溶融燃料塩を除去したあとに上記溶融塩原子炉に残っている上記溶融燃料塩の体積および組成を表わす調整済燃料塩ベクトルが減じられて得られ
前記核分裂反応が高速スペクトル中性子を生成する、
溶融塩原子炉。
【請求項2】
上記溶融燃料塩交換システムは、上記供給物質を上記原子炉心内に送る供給燃料補給ユニットを有している、請求項1に記載の溶融塩原子炉。
【請求項3】
上記溶融燃料塩交換システムは、選択された体積の上記供給物質を上記原子炉心内に送る供給燃料補給ユニットを有している、請求項1に記載の溶融塩原子炉。
【請求項4】
上記溶融燃料塩交換システムは、選択された組成の上記供給物質を上記原子炉心内に送る供給燃料補給ユニットを有している、請求項1に記載の溶融塩原子炉。
【請求項5】
上記溶融燃料塩交換システムは、上記選択された体積の上記溶融燃料塩を使用済燃料として原子炉心から運ぶ使用済燃料運搬ユニットを有している、請求項1に記載の溶融塩原子炉。
【請求項6】
上記溶融燃料塩交換システムは、上記選択された体積の上記溶融燃料塩を上記原子炉心から移すのと、上記供給物質を上記原子炉心へ移すのを同時に行う、請求項1に記載の溶融塩原子炉。
【請求項7】
上記溶融燃料塩交換システムは、上記原子炉心内で、上記供給物質を上記選択された体積の上記溶融燃料塩と交換することにより、上記核分裂反応の反応度を制御する、請求項1に記載の溶融塩原子炉。
【請求項8】
上記溶融燃料塩交換システムは、上記原子炉心内で、上記供給物質を上記選択された体積の上記溶融燃料塩と交換することにより、上記核分裂反応における上記溶融燃料塩の組成を制御する、請求項1に記載の溶融塩原子炉。
【請求項9】
上記溶融塩原子炉は高速スペクトル核分裂原子炉であり、上記溶融燃料塩は塩化物を含む、請求項1に記載の溶融塩原子炉。
【請求項10】
上記溶融燃料塩交換システムは、上記原子炉心内で、上記供給物質を上記選択された体積の上記溶融燃料塩と交換することにより、上記高速スペクトル核分裂原子炉におけるUCl-UCl-NaClの組成を制御する、請求項9に記載の溶融塩原子炉。
【請求項11】
上記溶融燃料塩交換システムは、選択された体積の上記溶融燃料塩を、選択された体積の上記供給物質と繰り返し交換して、上記溶融塩原子炉の反応度を示す上記パラメータを、ノミナルの反応度の選択された範囲内に長期にわたって保つよう構成されている、請求項1に記載の溶融塩原子炉。
【請求項12】
上記原子炉心に近接して配置された反応度パラメータセンサであって、上記原子炉心の反応度を示す一つまたは複数のパラメータをモニタするよう構成された反応度パラメータセンサと、
上記反応度パラメータセンサと通信可能に接続されて、上記原子炉心の反応度を示す上記一つまたは複数のパラメータを受け取るコントローラであって、上記選択された体積の上記溶融燃料塩と、選択された親物質と担体塩の混合物を含む上記選択された体積の供給物質との交換を、上記一つまたは複数のパラメータに基づいて制御するよう構成されたコントローラと、をさらに備える、請求項1に記載の溶融塩原子炉。
【請求項13】
上記溶融燃料塩制御システムは体積押しのけ制御システムをさらに有し、上記体積押しのけ制御システムは、上記原子炉心に挿入可能な一つまたは複数の体積押しのけアセンブリを有し、各体積押しのけアセンブリは、上記原子炉心に挿入されると、上記原子炉心から、選択された体積の溶融燃料塩を体積的に押しのけるよう構成されている、請求項1に記載の溶融塩原子炉。
【請求項14】
上記溶融燃料塩制御システムは体積押しのけ制御システムをさらに有し、上記体積押しのけ制御システムは、上記原子炉心に挿入可能な一つまたは複数の体積押しのけ本体を有し、各体積押しのけ本体は、上記原子炉心に挿入されると、上記原子炉心から、選択された体積の溶融燃料塩を体積的に押しのけるよう構成されている、請求項1に記載の溶融塩原子炉。
【請求項15】
溶融燃料塩によって燃料を供給される核分裂反応を含むよう構成された原子炉心と、
上記原子炉心に接続された溶融燃料塩制御システムであって、選択された体積の上記溶融燃料塩を上記原子炉心から除去して、溶融塩原子炉の反応度を示すパラメータを、ノミナルの反応度の選択された範囲内に保つよう構成された溶融燃料塩制御システムと、を備え、
上記溶融燃料塩制御システムは体積押しのけ制御システムをさらに有し、上記体積押しのけ制御システムは、上記原子炉心に挿入可能な一つまたは複数の体積押しのけ本体を有し、各体積押しのけ本体は、上記原子炉心に挿入されると、上記原子炉心から、選択された体積の溶融燃料塩を体積的に押しのけるよう構成され、上記体積押しのけ制御システムは、溶融燃料塩溢出システムをさらに有し、上記溶融燃料塩溢出システムは、上記体積押しのけ本体によって上記原子炉心の許容充填水平面より上に押しのけられた溶融燃料塩を運ぶよう構成されている、溶融塩原子炉。
【請求項16】
上記溶融燃料塩制御システムは体積押しのけ制御システムをさらに有し、上記体積押しのけ制御システムは、上記原子炉心に挿入可能な一つまたは複数の体積押しのけ本体を有し、各体積押しのけ本体は、上記原子炉心に挿入されると、上記原子炉心から、選択された体積の溶融燃料塩を体積的に押しのけるよう構成され、上記体積押しのけ制御システムは複数の挿入深度で上記原子炉心に挿入されることで、上記溶融塩原子炉の反応度を示す上記パラメータを、ノミナルの反応度の選択された範囲内に長期にわたって保つことができる、請求項1に記載の溶融塩原子炉。
【請求項17】
非減速の原子炉心内で溶融燃料塩によって燃料を供給される核分裂反応を維持する工程と、
溶融塩原子炉の反応度を示すパラメータをノミナルの反応度の選択された範囲内に保つように、選択された体積の上記溶融燃料塩を上記原子炉心から除去する工程と、
上記選択された体積の上記溶融燃料塩を、選択された親物質と担体塩の混合物を含む選択された体積の供給物質と交換する工程と、を含み、
上記供給物質は、濃縮燃料物質を含まず、
上記供給物質の体積および組成を表わす供給燃料塩ベクトルは、上記溶融塩原子炉内の目標とする目標燃料塩の体積および組成を表わす目標燃料塩ベクトルから、上記選択された体積の上記溶融燃料塩を除去したあとに上記溶融塩原子炉に残っている上記溶融燃料塩の体積および組成を表わす調整済燃料塩ベクトルが減じられて得られ
前記核分裂反応が高速スペクトル中性子を生成する、方法。
【請求項18】
上記交換する工程は、上記供給物質を上記原子炉心内に運ぶ工程を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記交換する工程は、選択された体積の上記供給物質を上記原子炉心内に運ぶ工程を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
上記交換する工程は、選択された組成の上記供給物質を上記原子炉心内に運ぶ工程を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
上記交換する工程は、上記選択された体積の上記供給物質に基づいて、上記原子炉心の上記反応度を制御する工程を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
上記交換する工程は、選択された組成の上記供給物質に基づいて、上記原子炉心内で上記核分裂反応に燃料を供給する上記溶融燃料塩の組成を制御する工程を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
上記交換する工程は、選択された組成の上記供給物質に基づいて、上記原子炉心内で上記核分裂反応に燃料を供給するUCl-UCl-NaClの組成を制御する工程を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
上記溶融燃料塩の交換条件が満たされたことをモニタする工程と、
上記選択された体積の上記溶融燃料塩と、選択された親物質と担体塩の混合物を含む上記選択された体積の供給物質との交換を、上記交換条件が満たされたことに応じて制御する工程と、をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
上記原子炉心の反応度を示す一つまたは複数の反応度パラメータをモニタする工程と、
上記選択された体積の上記溶融燃料塩と、選択された親物質と担体塩の混合物を含む上記選択された体積の供給物質との交換を、上記一つまたは複数の反応度パラメータに基づいて制御する工程と、をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
上記原子炉心の上記溶融燃料塩の組成を示す一つまたは複数の組成パラメータをモニタする工程と、
上記選択された体積の上記溶融燃料塩と、選択された親物質と担体塩の混合物を含む上記選択された体積の供給物質との交換を、上記一つまたは複数の組成パラメータに基づいて制御する工程と、をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
上記除去する工程は、一つまたは複数の体積押しのけ本体を上記原子炉心内の溶融燃料塩に挿入することで上記選択された体積の溶融燃料塩を上記原子炉心から体積的に押しのける工程を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
原子炉心内で溶融燃料塩によって燃料を供給される核分裂反応を維持する工程と、
溶融塩原子炉の反応度を示すパラメータをノミナルの反応度の選択された範囲内に保つように、選択された体積の上記溶融燃料塩を上記原子炉心から除去する工程と、を含み、
上記除去する工程は、
一つまたは複数の体積押しのけ本体を上記原子炉心内の溶融燃料塩に挿入することで上記選択された体積の溶融燃料塩を上記原子炉心から体積的に押しのける工程と、
上記体積的に押しのけられた体積の溶融燃料塩が上記体積押しのけ本体によって上記原子炉心の許容充填水平面より上に押しのけられたとき、上記体積的に押しのけられた体積の溶融燃料塩を、上記原子炉心から、溶融燃料塩溢出システムを介して運ぶ工程と、を含む、方法。
【請求項29】
各体積押しのけ本体は、上記原子炉心に挿入されると、上記原子炉心から、選択された体積の溶融燃料塩を体積的に押しのけるよう構成され、体積押しのけ制御システムは複数の挿入深度で上記原子炉心に挿入されることで、上記溶融塩原子炉の反応度を示す上記パラメータを、ノミナルの反応度の選択された範囲内に長期にわたって保つことができる、
請求項27に記載の方法。
【請求項30】
溶融塩原子炉であって、
溶融燃料塩によって燃料を供給される核分裂反応を維持するよう構成された非減速の原子炉心と、
選択された体積の上記溶融燃料塩を、選択された親物質と担体塩の混合物を含む選択された体積の供給物質と交換する手段と、を備え、
上記供給物質は、濃縮燃料物質を含まず、
上記供給物質の体積および組成を表わす供給燃料塩ベクトルは、上記溶融塩原子炉内の目標とする目標燃料塩の体積および組成を表わす目標燃料塩ベクトルから、上記選択された体積の上記溶融燃料塩を除去したあとに上記溶融塩原子炉に残っている上記溶融燃料塩の体積および組成を表わす調整済燃料塩ベクトルが減じられて得られ
前記核分裂反応が高速スペクトル中性子を生成する、溶融塩原子炉。
【請求項31】
溶融塩原子炉であって、
溶融燃料塩によって燃料を供給される核分裂反応を維持するよう構成された非減速の原子炉心と、
選択された体積の上記溶融燃料塩を上記原子炉心から除去して、上記溶融塩原子炉の反応度を示すパラメータを、ノミナルの反応度の選択された範囲内に保つ手段と、を備え、
上記保つ手段は、上記原子炉心と流体的に接続されており、選択された体積の上記溶融燃料塩を、選択された親物質と担体塩との混合物を含む選択された体積の供給物質と交換するよう構成され、
上記供給物質は、濃縮燃料物質を含まず、
上記供給物質の体積および組成を表わす供給燃料塩ベクトルは、上記溶融塩原子炉内の目標とする目標燃料塩の体積および組成を表わす目標燃料塩ベクトルから、上記選択された体積の上記溶融燃料塩を除去したあとに上記溶融塩原子炉に残っている上記溶融燃料塩の体積および組成を表わす調整済燃料塩ベクトルが減じられて得られ
前記核分裂反応が高速スペクトル中性子を生成する、溶融塩原子炉。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、2014年12月31日に出願されたUS仮特許出願番号62/098,984「溶融塩原子炉およびその制御方法」、および2015年9月30日に出願されたUS仮特許出願番号62/234,889「溶融塩化物高速原子炉および燃料」に基づいて優先権主張するものであり、両出願が開示および教示する内容すべてが、本明細書に具体的に含まれる。
【0002】
本出願はまた、2014年12月29日に出願されたUS仮特許出願番号62/097,235「目標設定結合分離(Targetry Coupled Separations)」に基づいて優先権主張するものであり、同出願が開示および教示する内容すべてが、本明細書に具体的に含まれる。
【0003】
本出願はまた、2015年12月28日に出願されたUS特許出願番号14/981,512「溶融核燃料塩および関連するシステムおよび方法」に関連するものであり、同出願が開示および教示する内容すべてが、本明細書に具体的に含まれる。
【0004】
〔技術分野〕
本発明は概して、核分裂原子炉に関する。
【0005】
〔背景技術〕
溶融塩原子炉(MSR)は核分裂原子炉の一種であり、その中において、燃料および冷却材が、ウランまたは他の核分裂可能な元素のような固体または溶解核燃料を含む溶融塩混合物の状態にある。MSRの一種に、溶融塩化物高速原子炉(MCFR)があり、塩化物ベースの燃料塩混合物を用いている。塩化物ベースの燃料塩混合物は高いウラン/超ウラン溶融性を持つため、他の種類のMSRよりもコンパクトなシステム設計が可能になる。MCFRの設計および運転パラメータ(例えば、コンパクトな設計、低圧力、高温、高出力密度)は、ゼロカーボンエネルギーに向けた、費用効果の高い、地球規模の解決の可能性をもたらす。
【0006】
〔発明の概要〕
記載された技術によって提供されるのは、溶融燃料塩によって燃料を供給される核分裂反応を含むよう構成された原子炉心を備える溶融塩原子炉である。上記原子炉心に接続された溶融燃料塩制御システムが、選択された体積の上記溶融燃料塩を上記原子炉心から除去して、上記溶融塩原子炉の反応度を示すパラメータを、ノミナルの反応度の選択された範囲内に保つよう構成されている。
一つの実施では、溶融塩原子炉は、溶融燃料塩によって燃料を供給される核分裂反応を維持するよう構成された原子炉心を備える。上記溶融燃料塩制御システムは溶融燃料塩交換システムを有しており、上記溶融燃料塩交換システムは、上記原子炉心と流体的に接続されており、選択された体積の上記溶融燃料塩を、選択された親物質と担体塩の混合物を含む選択された体積の供給物質と交換するよう構成されている。他の実施では、上記溶融燃料塩制御システムは体積押しのけ制御システムをさらに有し、上記体積押しのけ制御システムは、上記原子炉心に挿入可能な一つまたは複数の体積押しのけ本体を有する。各体積押しのけ本体は、上記原子炉心に挿入されると、上記原子炉心から、選択された体積の溶融燃料塩を体積的に押しのけるよう構成されている。一つの実施では、上記体積押しのけ本体は、上記選択された体積の溶融燃料塩を上記原子炉心から、例えば溢出システムを介して除去する。
【0007】
この概要は、以下の発明を実施するための形態においてさらに記載される概念を選択して簡略に述べたものを紹介するために設けられている。この概要は、請求項に記載された構成の中心特徴または主要特徴を特定することを意図するものではなく、また、請求項に記載された構成の範囲を限定するために用いられることを意図するものでもない。
【0008】
他の諸実施もまた、本明細書で説明および記載される。
【0009】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、MCFR親炉とMCFR子炉を有する溶融塩化物高速原子炉(MCFR)燃料サイクルの一例を示す概略図である。
【0010】
図2は、溶融燃料塩から溶融燃料を周期的に除去して溶融親燃料供給物と交換すること(溶融燃料塩交換と称する)に由来するMCFR反応度制御の一例を示す。
【0011】
図3は、溶融燃料塩交換アセンブリを備えたMCFRシステムの一例を示す。
【0012】
図4は、原子炉の溶融燃料塩を親燃料塩と周期的に交換することで制御される溶融塩原子炉において、炉心のモデル化されたkeff値と重金属(HM)燃料の燃焼度の総パーセントの、時間に対するグラフを示す。
【0013】
図5は、原子炉燃焼速度に合う速度で劣化ウランが供給されるモデル化溶融塩原子炉における、keff対時間のグラフを示す。
【0014】
図6は、供給物質を加えずランタニドを除去しない溶融塩原子炉における、keffを時間の関数として記したグラフを示す。
【0015】
図7は、溶融燃料塩交換アセンブリを備えたMCFRシステムの代替例を示す。
【0016】
図8は、UCl-UCl-NaCl(モル%)の例示的な三元状態図を示す。
【0017】
図9は、溶融燃料塩交換プロセスの例示的な動作を示す。
【0018】
図10は、押しのけ素子アセンブリを備えた溶融塩原子炉を示す。
【0019】
図11は、押しのけ素子アセンブリと溶融燃料塩溢出システムを備え、押しのけ素子が溶融燃料塩の中に沈んでいない状態にある、溶融塩原子炉を示す。
【0020】
図12は、押しのけ素子アセンブリと溶融燃料塩溢出システムを備え、押しのけ素子が溶融燃料塩の中に沈んでいる状態にある、溶融塩原子炉を示す。
【0021】
図13は、燃料押しのけサイクルのさまざまな例示的なステージを示す。
【0022】
図14は、燃料押しのけサイクルの二つの例示的なステージを示す。
【0023】
図15は、溶融燃料塩押しのけプロセスの例示的な動作を示す。
【0024】
〔発明を実施するための形態〕
溶融塩高速原子炉システムは、高速中性子スペクトル核分裂原子炉において溶融燃料塩を用いる。ある種類の溶融塩原子炉は、核分裂性燃料の担体塩としてフッ化塩を含む。他の種類の溶融塩原子炉は、核分裂性燃料の担体塩として塩化物を含む溶融塩化物高速原子炉(MCFR)である。以下では溶融塩化物原子炉について記載するが、本明細書の記載、諸要素、諸方法はいかなる溶融燃料塩原子炉にも適用できるものと理解されたい。
【0025】
MCFRシステムでは、塩化物が提供する高速中性子スペクトルにより、ウラン・プルトニウム燃料サイクルを用いた良好な増殖および燃焼動作を可能にする。高速中性子スペクトルはまた、核分裂生成物毒作用を和らげ、オンライン再処理およびそれに伴う核拡散の危険性なしに特別に優れた性能を提供する。MCFRシステムの運転中、溶融燃料塩制御システムは、燃料反応度および/または燃料組成を所望の運転上の範囲内に保つことを可能にする。一つの実施では、溶融燃料塩制御システムは溶融燃料塩交換システムを備え、これは溶融燃料塩を原子炉心から取り除いて、例えば反応度を示すパラメータを、ノミナルの反応度の選択範囲内に保つ。追加のまたは代替の実施では、溶融燃料塩制御システムは、体積押しのけ制御アセンブリ(volumetric displacement control assembly)を備え、溶融燃料塩を原子炉から取り除いて、MCFRシステム内の核分裂反応を制御する(例えば、反応度を示すパラメータを、反応度のノミナルの選択範囲内に保つ)。体積押しのけ制御アセンブリは、非中性子吸収物質、中性子吸収物質、および/または減速材を含んでもよいし、それらから作られてもよい。
【0026】
図1は、MCFR親炉102とMCFR子炉104を有する、例示的な溶融塩化物高速原子炉(MCFR)燃料サイクル100を示す概略図である。「増殖燃焼」高速炉と呼ばれる特定の種類の高速原子炉は、消費するより多くの核分裂性核燃料を生成できる原子炉である。例えば、中性子経済が十分に高いので、親核分裂性核燃料(例えば、ウラン238)から、燃焼するより多くの核分裂性核燃料(例えば、プルトニウム239)を増殖することができる。「燃焼」は「燃焼度」または「燃料利用率」と称され、どれほどのエネルギーが核燃料から抽出されたかを示す尺度である。通常、燃焼度が高いほど、核分裂反応終了後に残る核廃棄物の量が減る。
【0027】
上記の例示的なMCFR燃料サイクル100は、溶融塩を原子炉(または複数の原子炉)における核分裂性燃料の担体として用いるよう設計されている。一例では、この担体塩は、ナトリウム塩、塩化物、フッ化塩、または核分裂性燃料に炉心を通過させる他の任意の適当な溶融流体のうち一つまたは複数を含んでよい。一例では、上記溶融塩化物は三成分塩化物燃料塩(ternary chloride fuel salt)を含むが、当該三成分塩化物の代わりに、あるいは追加して、他の塩化物を用いてもよい。そうした他の塩化物としては、ウランの二成分塩化物燃料塩、三成分塩化物燃料塩、四成分塩化物燃料塩やさまざまな核分裂可能な物質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。高いアクチニド濃度および得られる原子炉のサイズのコンパクトさに焦点を置いて、さまざまな組成がモデリングおよび実験によって調べられてきた。例えば、増殖したプルトニウムはMCFR燃料サイクル100内でPuCl3 として存在でき、親供給物質として用いられる塩化物の酸化状態の比率を調整することで、還元酸化制御を維持することができる。
【0028】
上記の例示的なMCFR燃料サイクル100は、オープン増殖燃焼燃料サイクル(例えば、平衡、準平衡、および/または非平衡増殖燃焼反応を示す)を可能にする。上記オープン増殖燃焼燃料サイクルは、ウラン・プルトニウム燃料サイクルを採用し、従来のオープン燃料サイクルに比べて廃棄物の体積がかなり少ない。上記技術のさまざまな実施により、四塩化ウラン(UCl4)含有レベルがモル分率で5%を超える溶融燃料塩が提供され、それが、溶融燃料塩の重金属含有量を高くするのに役立つ(例えば、約61重量%)。四塩化ウランの実施は、UCl4と三塩化ウラン(UCl3)および/または追加の金属塩化物(例えば、NaCl)を、所望の重金属含有レベルおよび溶融温度(例えば、330から800℃)が達成されるように組み合わせることで行ってもよい。
【0029】
一つの実施では、MCFR親炉102は、炉心部としての溶融燃料塩と、一つまたは複数の熱交換器と、制御システムなどを備えるよう設計された原子炉容器を有している。一つの実施では、原子炉容器は、垂直軸またはZ軸に沿って切断すると円形断面を有してもよい(すなわち、XY面で円形断面を示す)。ただし、楕円断面および多角形断面を含むがこれらに限定されるものではない他の断面形状も考えられる。MCFR親炉102は、原子炉容器に初期溶融燃料106を濃縮燃料装荷して始動する。上記初期溶融燃料106の例としては、出発物質としてのウラン235(例えば、UClおよび/またはUClの形態)と担体塩(例えば、NaCl)との使用が挙げられる。一つの例では、初期溶融燃料106混合物は、濃縮ウランを12.5重量%含んでいるが、他の組成を用いてもよい。初期溶融燃料106は、MCFR親炉102の原子炉容器内の炉心部を循環する。MCFR親炉102の一実施では、溶融燃料塩は、内部の中心炉心部内の核分裂反応により熱せられると上向き方向に流れ、冷めると原子炉容器の内側周辺を下向き方向に流れる。熱した流体と重力の対流、および/または弁、ポンプなどを通る補助装置を使った流体の流れを用いるよう設計された、他の追加の、あるいは代替の溶融燃料の流れ(例えば、図3の一次冷却材ループ313)を用いてもよい。溶融燃料の構成要素は、高速燃料循環流(例えば、一秒ごとに完全に一巡)によってよく混ぜられる。一つの実施では、一つまたは複数の熱交換器を原子炉容器の内側周辺に配置して溶融燃料流から熱を引き出し、下向きの流れをさらに冷やす。ただし、熱交換器は、原子炉容器の外側に追加で、あるいは代替的に配置してもよい。
【0030】
初期始動のあと、MCFR親炉102は核分裂の臨界に達し、初期の核分裂性燃料(例えば、濃縮ウラン)は、親燃料を核分裂性燃料に転換する(増殖)。濃縮ウランを含む初期核分裂性燃料の例では、この核分裂性濃縮ウランは、劣化ウランおよび/または天然ウランを増殖して他の核分裂性燃料、例えばプルトニウムにすることができる。この増殖および燃焼サイクルは、十分な量のプルトニウム239核分裂性核燃料(例えば、PuCl3の形態)を増殖して、数十年も運転できるだけでなく、MCFR子炉104および他の子炉や孫炉に燃料を供給することができる。他の子炉および/または孫炉は図示されていないが、親炉102から除去した使用済燃料を一つまたは複数の子炉に供給し、一つまたは複数の子炉が、そのあと出発物質を一つまたは複数の孫炉に供給し、そしてこのような処理が続くことにより、複数の原子炉に燃料を供給できる。一つの実施では、MCFR親炉102は1000MWで運転する。これは、自然燃料循環点設計に対応する。ただし、異なる作動条件(より高い熱出力レベルを達成するための強制燃料循環を含む)のもとでは他の運転出力が達成可能である。他の親燃料としては、使用済核燃料またはトリウムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
先に示唆したように、通常運転中、MCFR親炉102は、徐々に増大する反応度を支えるのに十分な効率で増殖する。溶融燃料塩108(これは核分裂性燃料、親燃料、担体塩、および/または核分裂生成物を含んでもよい)をMCFR親炉102から除去して、除去されたた溶融燃料塩108を親燃料塩と低速で交換することにより、MCFR親炉102を臨界(例えば、ぎりぎり臨界)に保つことができる。このように、原子炉容器内を循環する完全に混合された溶融燃料塩のある量を周期的に除去し(除去された溶融燃料108と記載)、除去された溶融燃料108を劣化塩化ウラン(溶融親燃料供給物110と記載)と周期的に交換することにより、反応度を制御することができる。他の親燃料としては、天然ウラン、使用済核燃料、またはトリウムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
一つの実施では、除去された溶融燃料108を廃棄物として処理する準備をしてもよいし、新たなMCFRプラント(例えば、MCFR子炉104)を開始するのに十分な物質が利用可能になるまで保存してもよい。いくつかの場合では、除去された溶融燃料108を用いて、除去された溶融燃料108を再処理することなしにMCFR子プラントを開始または起動してもよい。後者のシナリオでは、ほとんどすべてのアクチニドが追加の燃焼のために次のMCFRプラントに移ることができ、これにより、核廃棄物に伴う拡散リスクを避けることができる。さらに、溶融燃料塩は、大きな負の温度係数、非常に低い過剰反応度、受動的な崩壊熱除去を示し、これらが組み合わさって核分裂反応を安定させる。
【0033】
MCFR親炉102は、ある廃棄物要素(廃棄物112として図示)を出力する。一つの実施では、廃棄物112はアクチニドを含まない。その代わりに、廃棄物112は、気体状かつ、おそらく揮発性の核分裂生成物塩化物114と、貴金属のような固体核分裂生成物116とを含む。MCFR親炉102の運転中、機械的フィルタリングおよび/または軽ガススパージングまたは他の任意の適切な技術を用いて、廃棄物112を溶融燃料塩から濾過することで、廃棄物112を得ることができる。あるいは、除去された溶融燃料108を分離し、処理し、原子炉へ再導入してもよい。機械的フィルタリングにより、溶融燃料塩により溶けにくい固体核分裂生成物116および他の粒子が得られる。同様に、核分裂生成物である希ガスが捕えられ、貯蔵タンクで崩壊させられる。不溶性で寿命がより長い固体核分裂生成物116を含むフィルタが、廃棄物の流れの一部を形成する。一つの実施では、廃棄物112は臨界の懸念も減らすかなくする。廃棄物112は燃料塩から分離した核分裂性アイソトープを含まないからである。
【0034】
廃棄物112要素は、核分裂の変換生成物の任意の一つまたは複数、またはその崩壊生成物、燃料塩と他の核分裂生成物との化学反応生成物、腐食生成物などの任意の一つを含んでもよい。廃棄物112(本明細書では核分裂生成物とも称する)の元素の構成要素は、燃料塩、担体塩、構成要素、コーティングなどの元素の構成要素に基づく。溶融塩化物に対して、核分裂生成物は、希ガスおよび/または他の気体のうち任意の一つまたは複数を含んでよい。上記希ガスおよび/または他の気体としては、ヨウ素、セシウム、ストロンチウム、ハロゲン類、トリチウム、煙霧状の貴金属および準貴金属などが挙げられる。固体廃棄物核分裂生成物としては、貴金属、準貴金属、アルカリ元素、アルカリ土元素、希土類元素などや、それらの分子結合が挙げられる。
【0035】
図2は、溶融燃料塩から溶融燃料を周期的に除去して溶融親燃料供給物と交換すること(溶融燃料塩交換と称する)に由来するMCFR反応度制御の一例を示す。溶融燃料塩交換システムは、溶融燃料塩制御システムの一種類である。X軸200は定格負荷相当年数における時間を示し、Y軸はモデル化されたk-effective202の観点からの反応度を示す。パラメータであるk-effective(中性子実効増倍率)は増倍率を表わす。これは、核分裂連鎖反応の連続したサイクルのあいだの核分裂イベントの総数を示す。中性子実効増倍率における各下落(例えば、下落204、206、208)は、溶融燃料塩交換イベントを示す。原子炉内の増殖した溶融燃料塩または核分裂性溶融燃料塩を溶融親燃料供給物と取り換えることにより、MCFRをノミナルの反応度の閾値レベル内に保つことができる。いくつかの例では、ノミナルの反応度は、過剰反応度がほぼゼロでの運転状態の平均(average near-zero excess reactivity operating condition)であり、その上限閾値は、溶融燃料交換のきっかけとなる燃料サイクルの最大反応度を規定し、その下限閾値は、上記溶融燃料交換のあとで達するべき最小反応度を規定する。ノミナルの上限閾値反応度レベルおよび/または下限閾値反応度レベルは同じであり続けてもよいし、設計、運転、および/または安全パラメータに基づいてMCFRの使用期間中に変わってもよい。反応度を示すこれらのパラメータとしては、原子炉で生成されることが望まれている熱エネルギーや、安全レベルや、部品設計や使用期間の拘束や、維持要件などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の反応度制御技術を溶融燃料塩交換と組み合わせて用いてもよい。こうした他の反応度制御技術としては、体積押しのけアセンブリ、中性子吸収制御アセンブリなどの使用が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、他の溶融塩原子炉も、同様の溶融燃料交換の構成を用いてよい。
【0036】
図2に示すように、溶融燃料塩を溶融親燃料供給物と周期的に交換することで、反応度を制限し、原子炉内で進行中の増殖燃焼反応を維持してよい。時間を追って説明すると、溶融燃料塩および溶融親燃料塩の最初の濃縮燃料充填が増殖することができ、それによって原子炉内の反応度を高める。原子炉が増殖したあと、核分裂性物質を周期的に除去することで、原子炉の反応度を周期的に(時間の経過に対して均一な周期でも不均一な周期でも)減少または制御することになり、溶融燃料塩の反応度を、許容範囲内の、事前に選択した閾値レベルに戻す。当該閾値レベルは、過剰反応度がほぼゼロでの運転状態の平均に近似した、溶融燃料塩交換動作ごとの臨界状態210(例えば、ぎりぎりの臨界状態)であってよい。この交換動作は長時間にわたって繰り返すことができ、図2のMCFR反応度制御グラフに示すような「鋸歯」反応度カーブとなる。いくつかの実施では、周期的な交換動作により、追加の濃縮燃料物質を加えることなしに、原子炉を無制限に運転させることができる。溶融燃料塩交換を周期的と記載したが、そのような交換はバッチ式、連続式、半連続式(例えば、滴下)などで行ってもよいことを理解されたい。交換の頻度を上げること(これは、除去する増殖燃料の体積を減らすことと組み合わせてもよい)により、MCFRの制御が合わせられるノミナルの反応度の制御または閾値を強化することが可能になることを理解されたい。
【0037】
図3は、溶融燃料塩交換アセンブリ301を備えた例示的なMCFRシステム300を示す。一つの実施では、MCFRシステム300は炉心部302を有する。炉心部302(「原子炉容器」と称してもよい)は、溶融燃料塩入口304と溶融燃料塩出口306を有する。溶融燃料塩入口304と溶融燃料塩出口306は、運転中、溶融燃料塩308の流れが、それぞれ集中ノズルと拡散ノズルとして機能する円錐部を形成するか含むように配置されてもよい。その際、溶融燃料塩308は、炉心部302の体積(volume)を通って溶融燃料塩入口304から溶融燃料塩出口306へと流体的に運ばれる。
【0038】
炉心部302は、炉心部302内の溶融燃料塩308内で臨界を達成するのに適した任意の形状でよい。図3に示すように、炉心部302は細長い炉心部の形状でよく、垂直軸またはZ軸に沿って切断されると円形の断面(すなわち、XY平面における円形の断面)を有してもよい。ただし、楕円断面や多角形断面などの他の断面形状も考えられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
炉心部の寸法は、溶融燃料塩308が炉心部302を通って流れるときに溶融燃料塩308内で臨界を達成するように選択される。臨界とは、核燃料が核分裂連鎖反応を維持する動作の状態、すなわち、当該燃料における中性子の生成速度が、中性子が消費される(あるいは失われる)速度と少なくとも等しい状態を指す。例えば、細長い炉心部の場合、当該細長い炉心部の長さおよび断面積は、炉心部302内で臨界を達成するために選択してよい。臨界を達成するのに必要な具体的な寸法は、例示的なMCFRシステム300内に含まれる核分裂性物質、親物質、および/または担体塩の種類の少なくとも関数である。
【0040】
原子炉始動動作の一部として、例示的なMCFRシステム300は、溶融燃料塩の初期濃縮燃料を装荷される。原子炉始動動作は、増殖燃焼燃料サイクルを有する核分裂反応を開始させる。例示的なMCFRシステム300の核分裂反応の反応度は、時間とともに増加する(図2参照)。反応度が許容範囲内の反応度条件を満たさない場合(例えば、k-effectiveが閾値、図2の例ならば上限閾値1.005、を満たすか超える)(この条件は、「交換条件」または「制御条件」とも称される)、選択された体積の溶融燃料塩308が炉心部302から除去され、選択された体積と組成の溶融親燃料供給物310(例えば、劣化ウランおよび/または天然ウラン、使用済核燃料、またはトリウムのような親物質を装荷した塩)を、除去された溶融燃料塩308の代わりに炉心部302に装荷する。除去された溶融燃料塩308としては、ランタニド、他の核分裂生成物、核分裂性物質、親物質、および/または担体塩の一つまたは複数が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ランタニドを非特異的に除去することで炉心部302の核分裂生成物の総量が減り、関連する毒作用が減るだけでなく、核分裂性物質のいくらかが炉心部302から除去される。
【0041】
図3において、溶融燃料塩交換アセンブリ301は、炉心部302(あるいは、例示的なMCFRシステム300の他の部分)に動作可能に接続されており、選択された体積の溶融燃料塩308を選択された体積と組成の供給物質310と周期的に交換するよう構成されている。その際、溶融燃料塩交換アセンブリ301は、例示的なMCFRシステム300内の溶融燃料塩308の反応度および/または組成を制御することができる。溶融燃料塩308の組成が、溶融燃料塩308の酸化状態に影響する。一つの実施では、炉心部302から除去された溶融燃料塩308(除去済溶融燃料312として図示)は少なくともいくらかの核分裂性物質を含み、一方、供給物質310は少なくともいくらかの親物質を含む。他の実施では、除去済溶融燃料312は一つまたは複数の核分裂生成物を含む。例えば、除去済溶融燃料312は、溶融燃料塩308内で核分裂により生成された一つまたは複数のランタニドを含んでよいが、これらに限定されるものではない。さらに他の実施では、除去済溶融燃料312は、核分裂可能物質(例えば、UCl)、一つまたは複数の核分裂生成物(例えば、一つまたは複数のランタニド)および/または担体塩(例えば、NaCl)の混合物を含んでよいが、これらに限定されるものではない。溶融燃料塩交換を周期的と記載したが、そのような交換はバッチ式、連続式、半連続式(例えば、滴下)などで行ってもよいことを理解されたい。
【0042】
炉心部302内の溶融燃料塩308が増殖し、親物質が核分裂性物質へ変換されると、溶融燃料塩交換アセンブリ301は、溶融燃料塩308のいくらかを除去して、除去済溶融燃料312(いくらかの体積の核分裂性物質を含んでいる)とし、除去済溶融燃料312を供給物質310(少なくともいくらかの親物質を含んでいる)と交換する。他の実施では、除去済溶融燃料312は、一つまたは複数の核分裂生成物を含んでいる。したがって、溶融燃料塩交換アセンブリ301は、例示的なMCFRシステム300内の反応度を制御する機構として機能してよく、溶融燃料塩308の反応度を臨界状態(例えば、ぎりぎり臨界状態)に戻す役割を果たしてよい。このように、一つの実施では、例示的なMCFRシステム300の溶融燃料塩交換アセンブリ301は、さらなる濃縮を加えることなしに、例示的なMCFRシステム300を無制限に運転させることができる。
【0043】
供給物質310の溶融燃料塩は、一つまたは複数の親燃料塩、例えば、劣化ウラン、天然ウラン、トリウム、または使用済核燃料の少なくとも一つを含む塩であってよいが、これらに限定されるものではない。例えば、塩化物ベースの燃料の場合、一つまたは複数の親燃料塩は、劣化ウラン、天然ウラン、トリウム、または使用済核燃料の少なくとも一つを含む塩化物を含んでよい。いくつかの場合では、供給物質310は、例示的なMCFRシステム300に対して、初期の体積(例えば、12.5%)を下回る速度または分子体積で供給できる核分裂性燃料(例えば濃縮ウラン)を含んでよい。供給燃料に核分裂性燃料を含ませることは、例示的なMCFRシステム300の使用期間のあいだずっと行ってよい。あるいは、供給燃料に核分裂性燃料を含ませることをときおり行って、例示的なMCFRシステム300内の溶融燃料塩の速度を増すか濃縮し、将来の溶融燃料塩交換において子炉に配置するためにあとで除去する燃料を増してもよい。さらに、供給物質310の溶融燃料塩は、一つまたは複数の核分裂性燃料塩および/または親燃料塩を、担体塩と混合して含んでよいが、これらに限定されるものではない。上記担体の例としてはNaClが挙げられるが、他の担体塩も用いてよい。
【0044】
炉心部302は、溶融塩原子炉に用いるのに適した任意の材料から作ってよい。例えば、炉心部302の大部分は、一つまたは複数のモリブデン合金、一つまたは複数のジルコニウム合金(例えば、ジルカロイ)、一つまたは複数のニオビウム合金、一つまたは複数のニッケル合金(例えば、ハステロイN)、セラミック、耐熱鋼、および/または他の適当な材料から作られてよい。炉心部302の内面を一つまたは複数の追加の材料で覆うか、メッキするか、裏打ちするかして、腐食および/または放射線損傷に対する抵抗を与えてもよい。一つの例では、炉心部302は耐腐食性および/または耐放射線性の材料のみから、あるいは実質的に耐腐食性および/または耐放射線性の材料から、作られてよい。
【0045】
一つの実施では、炉心部302は一次冷却材システム311を備える。当該一次冷却材システム311は、パイプ315からできた一つまたは複数の一次冷却材ループ313を備えてよい。一次冷却材システム311は、溶融燃料塩の状況における実施に適した任意の一次冷却材システムを含んでよい。図示された実施では、一次冷却材システム311は、一つまたは複数の一次冷却材ループ313の一つまたは複数のパイプ315および/または流体運搬アセンブリを通して、溶融燃料塩308を循環させ、炉心部302で発生した熱を、一つまたは複数の熱交換器354を介して、下流にある熱によって駆動する発電機器およびシステム、または他の蓄熱器および/または使用に向けて運んでよい。例示的なMCFRシステム300の一実施は、複数の平行な一次冷却材ループ(例えば、2から5の平行ループ)を備え、それぞれのループが一次冷却材システム311を通して、溶融燃料塩の総量のうち選択された体積分を運んでもよい。
【0046】
図3に示す実施では、溶融燃料塩308が一次冷却材として用いられる。冷却は、進行中の連鎖反応で熱せられた溶融燃料塩308を炉心部302から流し、温度の下がった溶融燃料塩308を炉心部302へ流すことで行われる。その際の流れの速度は、炉心部302の温度をその運転範囲内に維持する速度である。この実施では、一次冷却材システム311は、溶融燃料塩308が炉心部302の外にあるときは、溶融燃料塩308を臨界未満の状態に保つようになっている。
【0047】
図3では描かれていないが、例示的なMCFRシステム300は、任意の数の追加または中間加熱/冷却材システムおよび/または熱運搬回路を備えてよい。そのような追加の加熱/冷却材システムは、炉心部302をその運転温度範囲内に保つ他に、さまざまな目的のために配置してよい。例えば、第三の加熱システムを炉心部302と一次冷却材システム311とに配置して、固体化した燃料塩を含む冷たい炉が、塩が融けて流動性を有する運転温度まで熱せられるようにしてよい。
【0048】
他の補助的な部品を一次冷却材ループ313で用いてよい。そのような補助的な部品としては、運転中に一次冷却材が沈殿してできた粒子を除去する一つまたは複数のフィルタまたはドロップアウトボックス(drop out boxes)が挙げられる。望ましくない液体を一次冷却材から除去するため、補助的な部品は任意の適当な液液抽出システムを備えてよい。その例としては、一つまたは複数の並流または向流ミキサ/沈殿槽ステージ、イオン交換技術、または気体吸収システムが挙げられる。気体除去のために、補助的な部品は、フラッシュ蒸発チャンバ、蒸留システム、またはガスストリッパのような任意の適当な気液抽出技術を備えてよい。補助的な部品のうちいくつかの追加的な実施は、以下でより詳細に論じられる。
【0049】
例示的なMCFRシステム300において、金属塩化物のようなさまざまな金属塩を用いることで、時間とともに腐食および/または放射線劣化が生じるかもしれない。燃料塩またはその放射線と直接または間接に接触する例示的なMCFRシステム300のさまざまな塩と面する部品(例えば、炉心部302、一次冷却パイプ315、熱交換器354など)の完全性に対する腐食および/または放射線劣化の影響を和らげるために、さまざまな手段を用いてよい。
【0050】
一つの実施では、例示的なMCFRシステム300の一つまたは複数の部品を通る燃料の流れの速度は、選択された燃料塩速度に限られている。例えば、一つまたは複数のポンプ350が、溶融燃料塩308を、例示的なMCFRシステム300の一次冷却材ループ313を通して、選択された燃料塩速度で流してもよい。いくつかの例では、一定のレベルを下回る流速は、増殖プロセスおよび原子炉制御を含む原子炉の性能に悪影響をもたらしうる。非限定的な例として、一次ループ313(および一次冷却材システム311の他の部分)における全燃料塩は、速度の下限値に関して望ましいレベルを超えてよい。これは、一次ループ313を通る適切な流量を維持するために、流速が減少すると一次ループ313の対応する管の断面積が大きくなるからである。そのため、速度の下限値を非常に低くすると(例えば、1m/秒)、炉心外にある燃料塩の体積が大きくなり、例示的なMCFRシステム300の増殖プロセスおよび原子炉制御に対してマイナスの影響を与えうる。さらに、一定レベルを超える流速は、一次ループ313および/または炉心部302の内側表面の腐食および/または浸食により、原子炉の性能および寿命に有害な影響を与えうる。そのため、運転中の燃料塩速度を適切にすることで、腐食/浸食を最小限にするための速度限界と、炉心外にある燃料塩の総量(out-of-core fuel salt inventory)を管理するための速度限界とのバランスをとることができる。例えば、溶融塩化物燃料塩の場合は、燃料塩速度は、2から20m/秒のあいだ(例えば7m/秒だが、これに限定されない)に制御してよい。
【0051】
図3に示す例示的な実施では、溶融燃料塩交換アセンブリ301(「溶融燃料塩交換システム」)は、使用済燃料運搬ユニット316および供給燃料補給ユニット314を備える。一つの実施では、使用済燃料供給ユニット316は、MCFRシステム300の一つまたは複数の部分から使用済燃料312(例えば、燃焼済燃料)を受け取って保存する貯蔵部318を有する。先に述べたように、貯蔵部318に運ばれ保存された使用済燃料312は、MCFRシステム300内の核分裂反応においてすでに用いられた溶融燃料塩混合物308の一部であり、初期核分裂性物質、増殖核分裂性物質、親物質、および/またはランタニドのような核分裂生成物を含んでよい。
【0052】
他の実施では、使用済燃料供給ユニット316は、溶融燃料塩308をMCFRシステム300の一つまたは複数の部分から貯蔵部318へ運ぶ一つまたは複数の流体運搬素子を備えている。使用済燃料運搬ユニット316は、溶融塩運搬に適した任意の流体運搬素子または装置を備えてよい。非限定的な例として、使用済燃料運搬ユニット316は、一本または複数本のパイプ320、一つまたは複数の弁322、一つまたは複数のポンプ(図示せず)などを含む。他の実施では、使用済燃料供給ユニット316は、炉心部302と流体的に接続されているMCFRシステム300の任意の部分から、溶融燃料塩308を運搬してもよい。非限定的な例として、使用済燃料供給ユニット316は、主回路(primary circuit)の任意の部分(例えば、炉心部302、一次冷却材システム311(例えば、一次冷却材ループ313)などが挙げられるが、これらに限定されない)から貯蔵部318へ、溶融燃料塩308を移動させてもよい。
【0053】
一つの実施では、供給燃料補給ユニット314は、供給物質310(例えば、親物質と担体塩の混合物)を保存する供給物質源317を有する。一つの実施では、供給物質310は、選択された親物質(例えば、劣化ウラン、天然ウラン、使用済核燃料、トリウムなど)と担体塩(例えば、NaCl)の混合物を含んでよい。上記混合物は、溶融供給物質の濃度が、MCFRシステム300の主回路に残っている溶融燃料塩308と合う親物質の濃度を有するように、混合されている。他の実施では、親物質として、塩化ウラン、塩化トリウムなどのような、核分裂アイソトープに転換可能な塩(fertile salt)が挙げられる。この点で、MCFRシステム300に含まれている溶融燃料塩308の化学量論および/または化学的性質(例えば、化学組成および/または反応度)を少なくともおおよそ維持または調整するために、供給物質の特定の要素を選択してよい。
【0054】
一つの実施では、溶融燃料塩交換アセンブリ301は、使用済燃料312をMCFRシステム300の一つまたは複数の部分から運び出し、それと同時にまたはそれに続いて、供給物質(例えば、選択された親物質と担体塩との混合物が挙げられる)をMCFRシステム300の一つまたは複数の部分へ運び入れることができる。他の実施では、運搬は同期的、あるいは非同期的に行われる。
【0055】
他の実施では、供給燃料補給ユニット314は、供給物質源317からMCFRシステム300の一つまたは複数の部分へと供給物質310を運搬する一つまたは複数の流体運搬素子を有する。供給燃料補給ユニット314は、任意の流体運搬素子または装置を有してよい。非限定的な例として、供給燃料運搬ユニット314は、一本または複数本のパイプ324、一つまたは複数の弁326、一つまたは複数のポンプ(図示せず)などを有する。他の実施では、供給燃料補給ユニット314は、供給物質源317から、炉心部302と流体的に接続されているMCFRシステム300の任意の部分へ、供給物質310を運搬してよい。非限定的な例として、供給燃料補給ユニット314は、供給物質源317から、主回路の任意の部分(例えば、炉心部302、一次冷却材システム311(例えば、一次冷却材ループ315)などが挙げられるが、これらに限定されない)へ、供給物質310を運搬してよい。
【0056】
一つの実施では、供給物質310は、供給燃料補給ユニット314によって、炉心部302へ連続して運ばれる。非限定的な例では、供給物質310は、供給燃料補給ユニット314によって、炉心部302へ、選択された流速で連続して送られる。溶融燃料塩を除去する方法は、連続的でも、半連続的でも、バッチ式でもよく、燃料交換の方法またはタイミングと同じでも異なっていてもよい。
【0057】
他の実施では、供給物質310は、供給燃料補給ユニット314によって、炉心部302へ、バッチ式で(つまり、個々の体積単位で)運ばれる。非限定的な例として、供給物質310は、炉心部302へ、選択された頻度で(あるいは、非規則的な時間間隔で)、選択された運搬体積サイズで、バッチ運搬ごとに選択された組成で、運ばれる。選択された頻度、運搬体積サイズ、および組成は時間とともに変わりうる。
【0058】
他の実施では、供給物質310は、供給補給ユニット314によって、炉心部302へ、半連続的なやり方で運ばれる。非限定的な例として、供給物質310は炉心部302へ滴下で運ばれる。物質をそのように半連続的に供給することで(そして、同時に、炉心部302から使用済燃料を除去することで)、反応度の揺れ(reactivity swings)を100pcm(ミリパーセントまたは0.001未満のkeff(中性子実効増倍率)の変化)内に限定することができる。
【0059】
他の実施では、供給燃料補給ユニット314は、複数の供給物質源および関連する流体運搬素子(例えば、弁およびパイプ)を有して、複数種類の供給物質の交換を可能にし、それによって炉心部302の酸化状態を維持してよい。例えば、個々の供給物質源(それぞれがUCl、UCl、またはNaClの一つを含んでいる)を用いて、溶融燃料塩308の化学組成を選択的に調整してよい。UCl-UCl-NaCl(モル%)の三元フェーズダイアグラムの説明は、図8を参照のこと。図8では、溶融燃料塩308の酸化状態および化学量論を、選択された体積のUCl、UCl、またはNaClを加えることで制御してよい。
【0060】
一つの実施では、貯蔵部318は、溶融燃料塩を炉心部302から受け取って保存するのに適した一つまたは複数の保存貯蔵部を有する。貯蔵部318は、使用済燃料塩312の反応度を制限し、それによって反応度を臨界未満に減少または制限するよう、大きさを決めかつ/または設計を行ってもよい。貯蔵部318は、中性子吸収材、減速物質、熱運搬装置などのうち任意の一つまたは複数を有し、それによって、使用済燃料塩312内で進行中の任意の核分裂反応が設計および/または安全の何らかの特定の閾値を超えないようにしてよい。他の実施では、貯蔵部318は、第二世代(「子」)高速スペクトル溶融塩原子炉を有してよい。
【0061】
使用済燃料の除去および供給物質の補給は、炉心部302内の溶融燃料塩308の反応度および/または組成を維持するよう調整されている。したがって、一つの実施では、溶融燃料塩交換アセンブリ301は交換コントローラ328を有している。一つの実施では、交換コントローラ328は、一つまたは複数の能動的な流体制御素子を制御し、供給物質310が供給物質源317から貯蔵部318へ流れ、使用済燃料塩312が炉心部302から貯蔵部318へ流れるのを制御してよい。一つの実施では、弁322および326は、交換コントローラ328からの電子信号を介して制御可能な能動的な弁である。非限定的な例として、弁322および326として、電子的に制御された双方向弁が挙げられるが、これに限定されるものではない。この点に関して、交換コントローラ328は制御信号を弁322および326(または他の能動的な流れ制御機構)に送り、供給物質源317から貯蔵部318への供給物質310の流れと、炉心部302から貯蔵部318への使用済燃料塩312の流れを制御してよい。ここで、本実施は図3に示す電子的に制御された弁に限定されないことに留意されたい。図3の電子的に制御された弁は、例示目的のためだけに示されたものである。供給物質源317から貯蔵部318への供給物質310の流れと、炉心部302から貯蔵部318への使用済燃料塩312の流れを制御するのに実施してよい溶融塩運搬に適用可能な流れ制御装置や構成は多数ある。
【0062】
一つの実施では、溶融燃料塩交換アセンブリ301は、上記したように、一つまたは複数の反応度パラメータセンサ330を有している。先に述べたように、上記一つまたは複数の反応度パラメータセンサ330は、炉心部302の溶融塩308の反応度または反応度の変化を示す一つまたは複数のパラメータを測定またはモニタする任意の一つまたは複数のセンサを有する。反応度パラメータセンサ330としては、中性子フルエンス、中性子束、中性子核分裂、核分裂生成物、放射性崩壊イベント、温度、圧力、出力、アイソトープ、燃焼度および/または中性子スペクトルのうち一つまたは複数を検知および/またはモニタすることができる任意の一つまたは複数のセンサが挙げられるが、これらに限定されるものではない。非限定的な例として、上記したように、上記一つまたは複数の反応度パラメータセンサ330として、核分裂検出器(例えば、マイクロポケット核分裂検出器)、中性子束モニタ(例えば、核分裂チャンバまたはイオンチャンバ)、中性子フルエンスセンサ(例えば、統合ダイアモンドセンサ(integrating diamond sensor))、核分裂生成物センサ(例えば、気体検出器、β検出器、またはγ検出器)、または核分裂生成物気体中のアイソトープの種類の比を測定するよう構成された核分裂生成物検出器が挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の非限定的な例として、上記したように、上記一つまたは複数の反応度パラメータセンサ330として、温度センサ、圧力センサ、または出力センサ(例えば、出力範囲核計測器)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
他の実施では、反応度は、測定された反応度パラメータ(上述)のうち一つまたは複数を用いて決定される。一つの実施では、炉心部302の反応度は、ルックアップテーブルを用いてコントローラ328によって決められる。他の実施では、炉心部302の反応度は、一つまたは複数のモデルを用いてコントローラ328によって決められる。他の実施では、反応度パラメータは、オペレータによって決められ、オペレータインタフェースを介してコントローラ328に直接入力されてよい。ここで、反応度パラメータセンサ330はMCFRシステム300の炉心部302内の燃料塩308内に位置すると記載したが、この構成は、先に述べたように、本実施を限定するものではない。一つの実施では、決定された反応度パラメータ(測定値またはモデル値)または反応度を示すパラメータが、あらかじめ定められた反応度閾値と比べられる。決定された反応度パラメータまたは反応度を示すパラメータが制御条件を満たすならば(例えば、上限閾値を上回るか下限閾値を下回る)、制御システム(例えば、溶融燃料塩交換システム、体積押しのけシステム、および/または他の制御システム)を作動させて炉心部302の反応度を調節して、ノミナルの反応度範囲に戻るようにしてよい。
【0063】
他の実施では、上記一つまたは複数の反応度パラメータセンサ330は、交換コントローラ328と通信可能に接続されている。上記一つまたは複数の反応度パラメータセンサ330は、交換コントローラ328と通信可能に接続されている。例えば、上記一つまたは複数の反応度パラメータセンサ330は、有線接続(例えば、電気ケーブルまたは光ファイバ)または無線接続(例えば、RF送信または光送信)を介して交換コントローラ328と通信可能に接続されてよい。
【0064】
一つの実施では、交換コントローラ328は一つまたは複数のプロセッサとメモリを有している。一つの実施では、メモリは、溶融燃料塩交換アセンブリ301の一つまたは複数の動作ステップを実行するよう構成された一組または複数組のプログラム命令を保持する。
【0065】
一つの実施では、決定された反応度パラメータが反応度の上限閾値を上回ると、交換コントローラ328は、交換コントローラ328の一つまたは複数のプログラム命令に従って、溶融燃料塩交換アセンブリ301に命じて、MCFRシステム300の選択され決定された体積の溶融燃料塩308を、選択され決定された体積および組成の供給物質310と交換させ、それによって炉心部302内の溶融燃料塩308の反応度および/または組成を制御してよい。
【0066】
他の実施では、一つまたは複数のプログラム命令は、炉心部302の溶融燃料塩308の決定された反応度を、炉心部302の測定された過剰反応度を補償する選択された交換体積および組成と関連付けるとともに、他の溶融燃料塩組成についての考慮事項とも関連付けるよう構成されている。非限定的な例として、反応度パラメータセンサ330は、炉心部302(またはMCFRシステム300の他の部分)内の溶融燃料塩308と関連した反応度パラメータを取得してよい。反応度パラメータが、選択された上限閾値より大きな反応度を示している場合、交換コントローラ328は、上昇した反応度を補償する交換体積および組成を決定し、溶融燃料塩交換アセンブリ301に命じて、決定された体積の溶融燃料塩308を炉心部302から(例えば、使用済燃料運搬ユニット316によって)除去し、除去した燃料塩をほぼ同体積の供給物質310と(例えば、供給燃料補給ユニット314によって)交換する。
【0067】
炉心部302から除去すべき使用済燃料312の量は、炉心部302の決定された反応度(測定値またはモデル値)、核分裂性燃料および/または親燃料の決定された量(測定値またはモデル値)、溶融燃料塩308中の廃棄物(核分裂生成物および他に生じうる中性子吸収材を含む)などに基づいて決定してよい。決定された炉心の反応度(上限閾値を超えている)を、下限閾値と比較して、炉心の反応度を選択されたノミナルの反応度の範囲内に保つのに必要な反応度の変化量を決定してよい。この反応度の必要な変化量を、続いて、現在の燃料とともに用いることで、炉心の反応度を反応度の上限および下限閾値内に保つために除去すべき使用済燃料312の量を決定できる。例えば、除去される使用済燃料312の決定された体積の価値を、現在の燃料組成から(核分裂性燃料の燃焼度、利用可能な核分裂性燃料、残存親燃料、および他の要素、例えば核分裂生成物や担体塩に基づいて)決定し、炉心の反応度を下限閾値まで減ずるのに十分かどうか比較してよい。決定された燃料除去後炉心反応度に基づいて、燃料の連続増殖のための反応度やシステムのための燃料体積要件を維持し、燃料全体の化学量論を維持または調整するように、供給燃料の価値、体積、構成要素が決定される。これらの決定は、反応度および反応の計算モデルや、実験データおよび/またはモデルデータに基づくルックアップテーブルに基づいて、行うことができる。先に述べたように、ノミナルの反応度レベル、反応度レベルの上限閾値、および/または反応度の下限閾値の任意の一つまたは複数(またはそれらの組み合わせ)は、さまざまな運転上および/または安全上の理由により、原子炉の使用期間中に動的に変化させてよい。
【0068】
別の実施では、溶融燃料塩308を供給物質310と交換する頻度、体積、組成があらかじめ定められている場合、交換コントローラ328は、あらかじめタイミングが定められた交換プロセスを、溶融燃料塩交換アセンブリ301の能動素子(例えば、弁322および326、ポンプなど)の制御を介して、前回の交換サイクルからの経過時間および/またはここで記載した炉心部302の決定された反応度に基づいて、実行してよい。代替的な実施では、反応度パラメータセンサ330および他のセンサ、モニタリング技術、計算からの結果に基づいて、動的に決定した頻度および/または体積で、交換を行ってよい。
【0069】
一つの実施では、炉心部302に加えられる供給物質の選択された体積および/または組成は、あらかじめ定められた「価値」を有し、当該「価値」は、炉心部302から除去される選択された体積の使用済燃料に基づく対象の反応度の除去量(target reactivity removal)に合うように体積および/または組成の大小を調整することができる。
【0070】
別の実施では、交換コントローラ328は溶融燃料塩交換アセンブリ301に命じて、溶融燃料塩308を供給物質310と連続的に交換させ、選択された速度(例えば、0.1~10リットル/日)で、供給物質310が炉心部302へ連続的に供給されるとともに使用済燃料312が炉心部302から連続的に除去されるようにしてよい。別の実施では、交換コントローラ328は溶融燃料塩交換アセンブリ301に命じて、溶融燃料塩308を供給物質310と半連続的に交換(例えば、滴下)させてよい。例として、交換コントローラ328は溶融燃料塩交換アセンブリ301に命じて、溶融燃料塩308を供給物質310と滴下で交換させ、供給物質310は炉心部302に滴下で供給され、個々の量の使用済燃料312が炉心部302から同時に除去されてよい。別の実施では、交換コントローラ328が溶融燃料塩交換アセンブリ301に命じて、溶融燃料塩308を供給物質310とバッチ式に交換させてよい。例として、交換コントローラ328が溶融燃料塩交換アセンブリ301に命じて、溶融燃料塩308を供給物質310と個々に、またはバッチ式に交換する一連の工程を行わせ、個々の量の供給物質310が炉心部302に供給され、個々の量(体積は供給物質と同じ)の使用済燃料310が炉心部302から、並行して、または順次に、選択された時間間隔で除去されてよい。他の非限定的な例として、交換コントローラ328が溶融燃料塩交換アセンブリ301に命じて、溶融燃料塩308を供給物質310と別個に、またはバッチ式に交換する工程を一回行わせ、個々の量の供給物質310が炉心部302に供給され、同じ量の使用済燃料312が炉心部302から、並行して、または順次に、選択された時間に除去されてよい。
【0071】
別の実施では、MCFRシステム300は、一つまたは複数のガス散布ユニットを備える。一つまたは複数のガス散布ユニットは炉心部302と動作可能に接続されており、一種または複数種の廃ガス(例えば、希ガスのようなガス状核分裂生成物)を炉心部302の溶融燃料塩308から絶えず除去するよう構成されている。非限定的な例として、一つまたは複数のガス散布ユニットは、ヘリウムおよび/または水素ガス散布ユニットを備えている。なお、上記希ガスとして、He、Ne、Ar、KrおよびXeが挙げられる。また、溶融燃料塩308に吸収されたガス状廃棄物は、炉心部302の溶融燃料塩308から放散され、関連するガスポンプで原子炉から排気されてよい。
【0072】
別の実施では、原子炉は一つまたは複数のフィルタリングユニットを備えている。一つまたは複数のフィルタリングユニットは炉心部302と動作可能に接続されており、一つまたは複数の固体廃棄物、例えば、貴金属および/または準貴金属や他の粒子状廃棄物のような固体核分裂生成物を、絶えず除去するよう構成されている。非限定的な例として、一つまたは複数のフィルタリングユニットは、炉心部302のバイパスフローに位置する一つまたは複数のフィルタを有してよい。上記一つまたは複数のフィルタは、溶融燃料塩308から(設計構成にもよるが)沈殿し、かつ/またはプレートアウトした固体廃棄物の一つまたは複数の要素を集めるよう配置されている。なお、貴金属および準貴金属としては、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、SbおよびTeが挙げられる。
【0073】
別の実施では、一次冷却材システム311は一つまたは複数のポンプ350を備えている。例えば、一つまたは複数のポンプ350は一次冷却材システム311に流体的に接続され、一つまたは複数のポンプ350が、一次冷却材/炉心部回路を通して溶融燃料塩308を流すようになっていてよい。一つまたは複数のポンプ350は、溶融燃料塩308に適用可能な任意の冷却材/燃料ポンプを含んでよい。例えば、一つまたは複数のポンプ350として、一次冷却材ループ313に流体的に接続された一つまたは複数の機械的ポンプが挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の例として、一つまたは複数のポンプ350として、一次冷却材ループ313に流体的に接続された一つまたは複数の電磁的(EM)および/または機械的ポンプが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
別の実施では、MCFRシステム300は、一次冷却材システム311と一つまたは複数の熱交換器354を介して熱的に接続された二次冷却材システム352を備えている。二次冷却材システム352は、パイプ358からできた一つまたは複数の二次冷却材ループ356を有してよい。二次冷却材システム352は、溶融燃料塩の状況における実施に適した任意の二次冷却材システム構成を有してよい。二次冷却材システム352は、一つまたは複数の二次冷却材ループ356の一つまたは複数のパイプ358および/または流体運搬アセンブリを通して二次冷却材を循環させ、それによって、炉心部302で発生し一次熱交換器354を介して受け取った熱を、下流にある熱駆動電気発生装置およびシステムへと運んでよい。単純化のため、図3には、二次冷却材ループ360を一つだけ示す。しかしながら、二次冷却材システム352は複数の並行二次冷却材ループ(例えば、2~5個の並行ループ)を有してよく、ループのそれぞれが、二次冷却材回路を通して、二次冷却材の選ばれた部分を運んでよい。なお、二次冷却材としては、溶融燃料塩の状況における実施に適した任意の二次冷却材が挙げられる。例として、二次冷却材として液体ナトリウムが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、図3には示していないが、MCFRシステム300は任意の数の補助または中間冷却材システムおよび/または熱運搬回路を備えてよい。
【0075】
MCFRシステム300において、金属塩化物のようなさまざまな金属塩を用いることで、時間とともに腐食および/または放射線劣化が生じるかもしれない。MCFRシステム300の塩と面するさまざまな部品(例えば、炉心部302、一次冷却パイプ315、熱交換器354など)の完全性に対する腐食および/または放射線劣化の影響を和らげるために、さまざまな手段を用いてよい。一つの実施では、塩と面するさまざまな部品の被覆として貴金属を用いることで、そのような部品に対する腐食の影響を和らげることができる。一つの実施では、ナトリウムに露出した表面にモリブデンの被覆を用いることで、そのような表面に対する腐食の影響を和らげることができる。別の実施では、溶融燃料塩を、腐食性が低い酸化還元(化学的還元酸化)状態に(例えば、溶融燃料塩交換によって)保ってよい。ある種の添加物を用いて、そのような部品に対する溶融燃料塩の腐食的影響を和らげてもよい。
【0076】
図4は、原子炉の溶融燃料塩を親燃料塩と周期的に交換することで制御される溶融塩原子炉において、炉心のモデル化されたkeff値(曲線402)と重金属(HM)燃料の燃焼度の総パーセント(曲線404)の、時間に対するグラフ400を示す。図2に関連して記載したように、原子炉の溶融燃料塩を親燃料塩と周期的に交換することで、溶融塩原子炉において反応度を制限し、進行中の増殖燃焼反応を維持してよい。別の実施では、溶融燃料塩交換アセンブリが、溶融塩原子炉に、親物質(例えば、劣化ウラン)を装荷した塩を、核分裂性物質が溶融塩原子炉で燃焼する速度に合う速度で供給してよい。これは、図5に関連して論じられる。または、核分裂性燃料が除去されるときとは違う速度および/または時間で、親物質を添加してよい。
【0077】
図5は、原子炉燃焼速度に合う速度で劣化ウランが供給されるモデル化溶融塩原子炉における、keff(曲線502)対時間のグラフ500を示す。この実施では、交換アセンブリは、溶融塩原子炉からの除去対象としてランタニドを特に対象とはせず、あるいは特に対象とする必要はなく、むしろ、溶融塩原子炉内の溶融燃料塩を大量に除去することでランタニドを除去している。除去された物質としては、ランタニド、他の核分裂生成物、核分裂性物質、親物質、および/または担体塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。図5に示すように、溶融塩原子炉は、増殖し、かつ約10年から15年でkeffのピークである約1.03に到達する。その後、アクチニドのインベントリ(核分裂性物質を含む)としての反応度が減少する一方、核分裂生成物のインベントリが増大するにつれて、溶融塩原子炉は反応度を失う。そのような構成により、20年以上にわたる運転が可能になり、最初に原子炉に装荷されその後、溶融塩原子炉の使用期間のあいだ当該溶融塩原子炉に供給される重金属燃料の36%超が燃焼しうる。用いうるkeffの範囲の例として、下限閾値1.0、上限閾値1.035により定まるノミナルの反応度範囲の一例が挙げられるが、これに限定されるものではない。keffの範囲の他の例として、下限閾値1.001、上限閾値1.005により定まるノミナルの反応度範囲の他の例が挙げられるが、これに限定されるものではない。ノミナルの反応度範囲のさらに他の例は、1.0のすぐ上から約1.01までの範囲である。他のノミナルの範囲および閾値を用いてもよい。さらに、他の制御システムを用いてもよく、その例として、制御棒、制御ドラム、減速材などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
図6は、供給物質を加えずランタニドを除去しない溶融塩原子炉における、keffを時間の関数として記したグラフ600を示す。曲線602は、希ガスや貴金属/準貴金属のような廃棄物核分裂生成物が炉心部302から除去された場合におけるkeffを示す。そのような曲線602から分かることは、計算によれば、達成可能な燃焼度が30%であり、耐用年数が約9年である。曲線604は、炉心部302から何も除去されない場合におけるkeffを示す。そのような曲線604から分かることは、計算によれば、達成可能な燃焼度が10%であり、耐用年数が約3年である。
【0079】
図7は、溶融燃料塩交換アセンブリ701を備えた代替例のMCFRシステム700を示す。一次冷却材システムは、一次冷却材740が、炉心部702(例えば、主容器の中心)の原子炉容器742内を循環する溶融燃料塩を含むよう構成されている。この点で、溶融燃料塩は一次冷却材回路の一部として炉心部702から流出するのではなく、むしろ、溶融燃料塩が一次冷却材として炉心部702を通って流れる。この実施では、MCFRシステム700は、炉心部702用の一時冷却材回路内に一つまたは複数の熱交換器746を備えてよく、溶融燃料塩が一次冷却材740として一つまたは複数の熱交換器746を通って流れ、炉心部702を通って流れ、炉心部702からは流出することなく、一つまたは複数の熱交換器746を通って、一次冷却材回路の一部として戻るようになっている。したがって、炉心部702からの熱は、溶融燃料塩から一つまたは複数の熱交換器746を通って二次冷却材システム(図示せず)へ運ばれる。
【0080】
図7において、溶融燃料塩交換アセンブリ701は炉心部702(または例示的なMCFRシステム700の他の部分)と動作可能に接続されており、選択された体積の溶融燃料塩708を選択された体積および組成の供給物質710と周期的に交換するよう構成されている。この点において、溶融燃料塩交換アセンブリ701は、例示的なMCFRシステム700内の溶融燃料塩708の反応度および/または組成を制御できる。一つの実施では、炉心部702から除去された溶融燃料塩708(貯蔵部718内の除去済溶融燃料712として図示)は少なくともいくらかの核分裂性物質を含み、一方、供給物質710は少なくともいくらかの親物質を含む。別の実施では、除去済溶融燃料712は、一つまたは複数の核分裂生成物を含みうる廃棄物を含む。例えば、除去済溶融燃料712は、溶融燃料塩708内での核分裂により発生した一つまたは複数のランタニドを含んでよいが、これらに限定されない。さらに別の実施では、除去済溶融燃料712は、核分裂可能な物質(例えば、UCl)や一つまたは複数の核分裂生成物(例えば、一つまたは複数のランタニドおよび/または担体塩(例えば、NaCl))を含んでよいが、これらに限定されない。溶融燃料塩交換は周期的と記載したが、そのような交換はバッチ式でも、連続式でも、あるいは半連続式(例えば、滴下)でも行ってよく、周期的でも、散発的でも、あるいはある燃料交換と次回の燃料交換とでタイミングを変えてもよい。
【0081】
図7に示す例示的な実施では、溶融燃料塩交換アセンブリ701(「溶融燃料塩交換システム」)は、使用済燃料運搬ユニット716と供給燃料補給ユニット714を備えている。溶融燃料塩交換アセンブリ701は、図3の溶融燃料塩交換アセンブリ301と同じまたは類似の要素を備え、図3の溶融燃料塩交換アセンブリ301と同じくまたは同様に動作してよい。ただし、代替的な構造や動作も用いてよい。図7に示すように、交換コントローラ728は一つまたは複数の能動的な流体制御素子を制御して、供給物質源717から貯蔵部718への供給物質310の流れと、炉心部702から貯蔵部718への使用済燃料塩712の流れを制御してよい。
【0082】
炉心部702内の溶融燃料塩708が増殖し、親物質が核分裂性物質へ変換されると、溶融燃料塩交換アセンブリ701は、溶融燃料塩708のいくらかを除去して、供給物質源717内の除去済溶融燃料712とし、除去済溶融燃料712を少なくともいくらかの親物質を含む供給物質710と交換する。別の実施では、除去済溶融燃料712は、一つまたは複数の核分裂生成物を含む。したがって、溶融燃料塩交換アセンブリ701は、核分裂性燃料だけでなくランタニドおよび他の中性子吸収材も除去し、例示的なMCFRシステム700内の溶融燃料塩708の反応度の制御機構として機能し、当該溶融燃料塩の寿命を延ばす装置として機能してよい。燃料交換の制御面での利点により、溶融燃料塩708の反応度を臨界状態(例えば、ぎりぎりの臨界状態)に戻すことができ、また、中性子吸収材および/または減速材を除去することで原子炉の効率性を上げることもできる。このように、一つの実施では、例示的なMCFRシステム700の溶融燃料塩交換アセンブリ701は、さらなる濃縮を加えることなしに、例示的なMCFRシステム700の無制限な運転を可能にする。なお、溶融燃料塩交換は、原子炉の運転中および/またはメンテナンス停止期間中に行われてよい。
【0083】
供給物質710の溶融燃料塩としては、劣化ウラン、天然ウラン、トリウム、あるいは使用済核燃料の少なくとも一つを含む塩のような、一つまたは複数の親燃料塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、塩化物ベースの燃料の場合、一つまたは複数の親燃料塩は、劣化ウラン、天然ウラン、トリウム、あるいは使用済核燃料の少なくとも一つを含む塩化物を含んでよい。さらに、供給物質710の溶融燃料塩として、担体塩(例えば、NaCl。ただし、他の担体塩を用いてもよい)と混合した一つまたは複数の親燃料塩が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0084】
図8は、UCl-UCl-NaCl(モル%)の例示的な三元状態図800を示す。一つの実施では、MCFRシステムは、モデル化されたように、さまざまな塩化ナトリウムおよび塩化ウラン要素からなる塩混合物を用いる。そのような組成の一例は、図8の三元状態図800に示すように、NACL、UCL、および/またはUCLの一つまたは複数の要素を含んでよい。影付き領域802は、500℃の融点のエンベロープの広がりを示す。多数の燃料塩組成が検討され、純増殖燃焼反応(net breed and burn behavior)が可能なことが示されてきた。最終的な組成の選択は、酸化状態/腐食、溶融性、粘着性、原子炉のサイズを含むさまざまな要素に応じてなされる。
【0085】
モデル化により、三元状態図800中で、MCFRの実施に用いるのに適した融点を持つ、異なる特定の塩を調べた。そうした特定の塩としては、82UCl-18UCl、17UCl-71UCl-12NaCl、50UCl-50NaClが挙げられるが、これらに限定されるものではない。モデル化の結果は、そのような燃料塩の実施は増殖および燃焼動作を維持し、ここに記載する原子炉の実施に用いることができることを示している。
【0086】
上記したように、三元状態図800は、UCl3-UCl4-NaClの任意の混合物の予想される融点を示す。とりわけ興味深いのは、約500℃未満の溶融温度を持つ混合物である。こうした混合物を、三元状態図800の影付き領域802に示す。共融点804は、338℃の溶融温度と、17UCl3-40.5UCl4-42.5NaCl(つまり、17モル%UCL3、40.5モル%UCL4、および42.5モル%NaCl)の組成を有する。影付き領域802は、500℃の融点エンベロープを示す。この影付き領域802の右端に移動すると、例示的な実施806である17UCl3-71UCl4-12NaClが得られる。しかし、影付き領域802の融点エンベロープ内では、500℃未満の融点を有するさまざまな燃料塩混合物として、多くの組成が可能であることを理解されたい。さらに、溶融温度制限を508℃までわずかに拡張する場合、34UCl3-66NaClの組成がUCl4のない選択肢を与える。同様に、三元状態図800により、具体的なUCl3-UCl4-NaCl燃料塩の実施の範囲を、約800℃から338℃のあいだの任意の融点限界について特定することができる。例えば、融点が300から550℃のあいだ、338から500℃のあいだ、338から450℃のあいだの三成分塩を容易に特定できる。組成の変化を検知する方法としては、以下の方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
1)酸化還元(化学的還元酸化)の測定
2)オンラインでのサンプルのグロー放電質量分析
3)炉心の反応度の変化
4)GDMS(glass discharge mass spectroscopy)を含むオフラインでのサンプル分析
5)ガンマ分光法
上記混合物の具体的な組成は、UCl4、UCl3、またはNaClの二つまたはそれ以上を含む任意の組成であり、それにより生じるウラン含有レベルおよび溶融温度が所望のレベルを達成するようにしてよい。非限定的な例として、対応する溶融温度が330から800℃のあいだになるように具体的な組成を選択してよい。他の非限定的な例として、全体のウラン含有レベルが61重量%以上であるように具体的な組成を選択してよい。全体のウラン含有レベルを選択するのに加えて、選択された量の核分裂ウラン(親ウランとは反対に)を満たすよう、燃料組成を決定してもよい。例えば、溶融燃料塩の具体的な組成を、溶融燃料塩のU-235含有量が20%未満になるように選択してよい。
【0087】
以下の説明では、特定の実施について述べるが、以下の説明は、クレームされた発明の範囲を以下に記載する実施のみに限定するものではなく、むしろ、NaCl以外の金属塩化物を有する任意の実施と同様、図8から特定しうる任意の実施が検討される。追加の、非核分裂性金属塩化物の例としては、NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、PuCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrClおよび/またはNdClが挙げられる。
【0088】
液体燃料は、固体燃料に比べて、熱が燃料冷却材内部で「生まれる」点で固有の利点を有している。固体燃料は、(1)燃料素子の外表面に熱を導き、(2)被覆を通して熱を導き(物理的な間隔を越えさせたり接着物質を通したりすることを含む)、(3)被覆表面から一次冷却材へ熱を対流伝達させ、(4)炉心の外へ熱を移流させる。これに比べて、液体燃料は、ステップ(4)において好ましい熱移動を示し、燃料塩/一次冷却材を炉心から一次熱交換器へと運び出す。さらに、検討中の液体塩は、同様の温度での液体ナトリウムの二倍近くの体積熱容量を有する。
【0089】
溶融燃料塩によって提供される他の主要な利点は、強い負の温度係数である(熱い塩は冷たい塩よりも反応度が低い)。その結果、過熱に至る過渡事象(例えば、ヒートシンクの消失)は、燃料塩が広まることにより重大度に歯止めがかかる。例えば、溶融塩化物高速原子炉(MCFR)では、選択された塩化物組成が600℃から800℃へ熱せられると、その密度は12%より大きく下がり、ドップラー効果によって提供されるよりも約50倍(50×)という強い負の反応度フィードバックを提供する。
【0090】
一塩化物、三塩化物、四塩化物の数について同様の比率を有する燃料塩も、同様なふるまいを見せる。溶融塩化物高速原子炉の炉心部内の酸化状態は、例えば、付着している塩素分子の数によって分類される分子の比として定義してよい。炉心部の酸化状態は、炉心部内の選択された量の燃料塩を同様の量の補給塩(makeup salt)または供給物質と交換することで制御でき、供給物質の組成は、炉心部の酸化状態を目標とする酸化状態に向かわせるように設計されている。一つの実施では、供給物質は選択された親物質と担体塩の混合物を含む。
【0091】
一つの実施では、炉心部内の燃料塩は初期には酸化状態にあり、大部分は一塩化物、三塩化物、および四塩化物からなっている。この初期の燃料塩組成(選択された体積の燃料塩を除去し供給物質を添加する前)は、初期燃料塩ベクトル(f)で表現され、下付き文字xが燃料塩の各分子に存在する塩化物イオンの数を表わす。2個、5個、および6個の塩化物原子を有する分子は、炉心部内にごく少量しか存在しえないので、無視しうる。溶融塩化物燃料のバルク特性は、一塩化物、三塩化物、および四塩化物によって決定される(式(1)を参照のこと。式(1)は、溶融塩化物燃料が一塩化物(f)、三塩化物(f)、および四塩化物(f)によって決定される単純な燃料塩ベクトルを示す)。したがって、目標とする塩混合物がPbCl-UCl-UCl(またはPuCl-UCl-UCl)である場合、二塩化物、三塩化物、四塩化物を調節する。註解であるが、上記燃料塩ベクトルは、他の塩化物やフッ化塩に一般化してもよい。したがって、同様の制御手法をフッ化塩に適用してよい。その場合、下付き文字xは、燃料塩の各分子中のフッ化物イオンの数を表わす。
【0092】
【数1】
【0093】
したがって、初期燃料塩ベクトル(f)を、方程式(1)で与えられる単純化燃料塩ベクトルで表してよい。
【0094】
選択された体積(r)の初期燃料塩を一定時間かけて(一回の大容量のバッチとして、あるいは一組のまたは一連の小さなバッチとして、あるいは連続したまたは部分的に連続した流れとして)除去することにより、方程式(2)に示す調整燃料塩ベクトル(f’)が生じる。これは、選択された体積の初期燃料塩を除去したあと、原子炉内に残っている燃料塩を表わしている。なお、上記選択された体積は、上記一定時間の始点で原子炉内に存在する初期燃料塩の量に正規化されている(例えば、特定のMCFRシステムに対して年約1%)。
【0095】
【数2】
【0096】
目標燃料塩ベクトル(t)によって表わされる原子炉内の目標燃料塩組成を、選択された体積および組成の供給物質(供給燃料塩ベクトル(m)によって表わされる)を加えることにより、調整済燃料組成(調整済燃料組成(f’))から特定の酸化状態および/または化学量論を達成するよう設定してよい。この関係は、方程式(3)および(4)で表され、上記式において(r)~C*(f)である。
【0097】
【数3】
【0098】
【数4】
【0099】
代替的な表記法として、この関係は方程式(5)と(6)によって表わされる。
【0100】
【数5】
【0101】
【数6】
【0102】
方程式(3)~(6)を与えられると、目標の酸化状態および/または化学量論を達成するために原子炉に加えるべき供給物質の体積および組成を決定しうる(例えば、(m))。各分子の種類ごとに、補給燃料塩ベクトル(m)を方程式(7)で表してよい。式中、下付き文字xは燃料塩の各分子中のフッ化物イオンの数を表し、Cは所与の期間内に除去された正規化量を表わす。
【0103】
【数7】
【0104】
核分裂原子炉は、一定の出力で運転するために、過剰反応度がゼロ、またはほとんどゼロで運転する。上記の溶融塩原子炉の諸実施の反応度は、原子炉内の溶融燃料塩の酸化状態を制御することに加えて、燃料塩を供給物質とその場で交換することによっても調整できる。
【0105】
燃焼溶融塩原子炉では、核分裂性物質が燃焼するので、反応度は時間とともに減少する傾向にある。したがって、供給物質は、濃縮ウランまたは再処理超ウランのような、核分裂性物質が豊富な高反応度燃料塩をかなりの量、含むよう設計されている。増殖溶融塩原子炉では、核分裂性物質は、核分裂反応によって消費されるよりも早く、生成される。そのため、反応度は時間とともに増大する傾向にある。したがって、供給物質は、天然ウラン、劣化ウラン、使用済核燃料、またはトリウムのような、親物質が豊富な低反応度燃料塩を含むよう設計されている。供給物質が原子炉心に導入される速度は、反応度を一定の設計範囲内に保つように選択される。そのような一定の設計範囲とは、例えば、ノミナルの反応度(例えば、1に等しい、または1よりわずかに大きいkeff、反応度の上限閾値、および/または反応度の下限閾値)である。
【0106】
図9は、溶融燃料塩交換プロセスの例示的な諸動作900を示す。システム提供動作(system provisioning operation)902は、溶融塩化物高速原子炉(これは溶融塩原子炉の一例である)に溶融燃料塩交換システムを提供する。モニタリング動作904は、溶融燃料塩の交換状態をモニタする。例えば、一つまたは複数の反応度パラメータセンサが、溶融塩化物高速原子炉内の反応度をモニタしてよく、および/または化学組成センサ(例えばラマン分光法)が溶融塩化物高速原子炉内の溶融燃料塩の組成をモニタしてよい。一つの実施では、モニタリングはラマン分光法を用いてリアルタイムで行ってよい。ラマン分光法は、サンプルの特定および定量化に用いることのできる分子振動に関する情報を提供する。この技術は、サンプルを単色光源(例えば、レーザ)で照らし、散乱光を検出する工程を含む。いくらかの量の燃料を原子炉心から(例えば側流を介して)除去し、モニタリングセルを通過させてよい。モニタリングセルは、分光法を実行する「窓」を備えている。ラマン窓物質の例としては、石英ガラス、溶融シリカ、サファイア、ダイアモンド、およびある種のガラスが挙げられる。原子炉およびモニタリングシステムの運転パラメータを満たす限り、任意の物質を用いてよい。モニタされた反応度、組成、または他の何らかの運転パラメータが溶融燃料塩交換イベントをトリガするように交換条件を設定してよい。
【0107】
交換条件が満たされなかった場合、決定動作906は、処理をモニタリング動作904に戻す。交換条件が満たされた場合、決定動作906は処理を除去動作908へ進める。除去動作908は、選択された体積の溶融燃料塩を溶融塩化物高速原子炉から除去する。交換動作910は、除去された体積の溶融燃料塩と交換に、選択された体積および/または組成の供給物質を、溶融塩化物高速原子炉へ入れる。処理はモニタリング動作904へ戻る。
【0108】
図10は、体積押しのけ素子アセンブリ1002を備える溶融塩原子炉1000を示す。体積押しのけシステムは、溶融燃料塩制御システムの一種を表わす。一つの実施では、体積押しのけアセンブリ1002は、溶融燃料塩1006を含む炉心部1004と動作可能に接続されている。体積押しのけアセンブリ1002は、ある量の溶融燃料塩1006を選択的に押しのけるよう構成されている。この点で、体積押しのけアセンブリ1002は、溶融燃料塩1006内の反応度を制御するためにある量の燃料塩108を押しのけてよい。体積押しのけ素子アセンブリ1002は、溶融燃料塩1006の体積を制御し、この制御によって炉心部1004(例えば炉心部の中央領域)で押しのけられた核分裂性物質の体積を制御することで、溶融塩原子炉1000の反応度を制御してよい。非限定的な例として、炉心部1004が過剰反応度を有する場合、十分な体積(例えば、0.1から10.0m)の溶融燃料塩1006を体積押しのけアセンブリ1002で押しのけて、反応度が反応度下限閾値(例えば、臨界レベルまたは半臨界レベル)に低下するようにしてよい。なお、溶融塩原子炉1000において、複数の体積押しのけアセンブリをさまざまな構成で用いてよいと理解されたい。
【0109】
一つの実施では、体積押しのけアセンブリ1002は、体積押しのけ素子1010、アクチュエータ1012、アクチュエータコントローラ206を備える。一つの実施では、体積押しのけ素子1010は、非中性子吸収物質からできている。この点に関して、体積押しのけ素子1010は、中性子吸収プロセスによってではなく、溶融燃料塩1006(および核分裂性物質)の体積測定流体押しのけによって、溶融塩原子炉1000の反応度を制御する。なお、非中性子吸収物質を用いることは、溶融塩原子炉1000においてとりわけ有利である。これは、炉心部1004に中性子吸収物質を用いることで生じるかもしれない、反応度への大きな影響を、非中性子吸収物質を用いることで避けることができるからである。溶融塩の体積測定流体押しのけに基づいて動作する非中性子吸収体積押しのけ素子は、中性子吸収制御素子に比べて、より繊細な反応度制御を行うことができる。
【0110】
しかしながら、体積押しのけ素子1010(例えば押しのけ棒)は、任意の非中性子吸収物質から作ってよい。ただし、そのような素子において、中性子吸収および/または減速物質を追加的あるいは代替的に用いてもよい。したがって、体積押しのけ素子1010は、中性子透過物質または中性子反射物質を代わりに含んでもよい。例えば、体積押しのけ素子1010は、ジルコニウム、鋼、鉄、黒鉛、ベリリウム、モリブデン、鉛、タングステン、ホウ素、カドミウム、一つまたは複数のモリブデン合金(例えばTZM合金)、一つまたは複数のタングステン合金(例えばタングステンカーバイド)、一つまたは複数のタンタル合金、一つまたは複数のニオビウム合金、一つまたは複数のレニウム合金、一つまたは複数のニッケル合金、炭化珪素などから作られてよいが、必ずしもそうである必要はない。そのような実施では、体積押しのけ素子1010は、燃料の体積測定流体押しのけおよび中性子の吸収を通して、反応度を制限してよい。
【0111】
一つの実施では、体積押しのけ素子1010は、図10に示すように棒1016を有している。例えば、体積押しのけ素子1010は、非中空棒または中空棒を有している。ここで、押しのけ棒1016は、任意の種類の棒形状であってよい。例えば、体積押しのけアセンブリ1002の押しのけ棒は、円筒形状、正四角柱または四角柱形状、三角柱形状、多角柱形状などであってよい。別の実施では、体積押しのけ素子1010は一組の棒を有してよい(図示せず)。例えば、一組の棒は一列に配置してもよいし、スポーク形状に配置してもよい。
【0112】
一つの実施では、アクチュエータ1012が体積押しのけ素子1010に動作可能に接続され、それによってアクチュエータ1012は体積押しのけ素子1012を選択的に平行移動させてよい。アクチュエータ1012は任意の作動装置であってよい。例えば、アクチュエータ1012としては、押しのけ棒駆動機構が挙げられるが、これに限定されるものではない。一つの実施では、アクチュエータ1012は、体積押しのけ素子1010を二方向に駆動するよう構成されている。この点に関して、アクチュエータ1012は、求めに応じて、体積押しのけ素子1010を炉心部1004に入れたり炉心部1004から出したりするよう駆動してよい。別の実施では、アクチュエータ1012は、第一停止地点と第二停止地点のあいだの一つまたは複数の中間地点で体積押しのけ素子1010の駆動を停止するよう構成されている。この点に関して、アクチュエータ1012は体積押しのけ素子1010を選択された方向(例えば軸方向)に沿って平行移動させ、体積押しのけ素子1010を選択された量だけ炉心部1004の溶融燃料塩1006内に挿入してよい。例えば、棒形状の体積押しのけ素子1010の場合は、アクチュエータ1012は、溶融燃料塩1006に挿入される棒形状の体積押しのけ素子1010の長さLを制御することにより、体積押しのけ素子1010を選択された体積だけ挿入させてよい。
【0113】
体積押しのけアセンブリ1002は、炉心部1004内の溶融燃料塩1006の反応度を求められただけ減少させるのに必要な、炉心部1004内の任意の体積の溶融燃料塩1006を押しのけてよい。非限定的な例として、炉心部1004内の溶融燃料塩1006の体積は、特定の燃料設計(fuel formulation)および溶融塩原子炉1000の運転の状況に応じて、10から100mの範囲内であってよい。この設定では、一立方メートルのほんの一部の押しのけ体積だけで、炉心部1004内の反応度を大きく減少させるのに十分な体積測定塩押しのけとなり得て、いくつかの場合では、原子炉を停止しうる。例えば、境界制御(marginal control)または非停止運転では、体積押しのけ素子1010によって与えられる押しのけ体積としては、0.1から10mのあいだの押しのけ体積が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0114】
一つの実施では、図10に示すように、体積押しのけアセンブリ1002は、体積押しのけ素子1010を、炉心部1004の中央領域に挿入してよい。その際、アクチュエータ1012は、図10に示すように、体積押しのけ素子1010を炉心部1004の軸方向に沿って平行移動させてよい。図10に示すような回転対称の炉心部だと、体積押しのけ素子1010に関連させる価値のある最大の反応度は、体積押しのけ素子1010を炉心部1004の断面中央に位置させることで実現できる。中央に位置した体積押しのけ素子1010は、本開示の溶融塩原子炉1000を限定するものではなく、例示的な目的のためにのみ示されている。さらに、図10では押しのけ素子1010は単独の素子として示されているが、押しのけ素子は複数の挿入可能な素子を含んでよい。これら複数の素子は、炉心部内へ一列になって出入りさせることで、あるいは個別に動かしたり制御したりすることで、反応度、燃料流、局所温度などを管理してよい。
【0115】
別の実施では、アクチュエータコントローラ1014は、選択的にアクチュエータ1012に命じて、選択された体積の体積押しのけ素子1010を、選択された距離だけ、炉心部1004内に含まれる、ある量の溶融燃料塩1006の中へ挿入するよう構成されている。例えば、アクチュエータコントローラ1014は、アクチュエータ1012に命じて、体積押しのけ素子1010が部分的にまたは完全に溶融燃料塩1006の中に沈むよう、体積押しのけ素子1010を平行移動させてよい。アクチュエータコントローラ1014は、アクチュエータ1012に通信可能に接続されている。例えば、アクチュエータコントローラ1014は、有線接続(例えば電気ケーブルまたは光ファイバ)あるいは無線接続(例えばRF送信または光送信)で、アクチュエータ1012と通信可能に接続されてよい。
【0116】
一つの実施では、アクチュエータコントローラ1014は、オペレータから体積押しのけ作動命令を受け取るよう構成されたオペレータインタフェースを備えている。この点に関して、オペレータは体積押しのけ素子1010の作動状態の制御を選択的に命じてよい。別の実施では、アクチュエーションコントローラ1014は、以下に記載するように、溶融塩原子炉1000の一つまたは複数の検知されたあるいはモニタされたパラメータに応じて、体積押しのけ素子1010の作動を自動的に命じてよい。
【0117】
別の実施では、溶融塩原子炉1000は反応度パラメータセンサ1030を備える。反応度パラメータセンサ1030は、溶融塩原子炉1000の溶融燃料塩1006の反応度または反応度の変化を示す一つまたは複数のパラメータを測定またはモニタできる任意の一つまたは複数のセンサを含む。例えば、反応度パラメータセンサ1030としては、中性子フルエンス、中性子束、中性子核分裂、核分裂生成物、放射性崩壊イベント、温度、圧力、出力、アイソトープ濃度、燃焼度および/または中性子スペクトルの一つまたは複数を検知および/またはモニタできる任意の一つまたは複数のセンサを挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
一つの実施では、反応度パラメータセンサ1030は、核分裂検出器を含む。例えば、反応度パラメータセンサ1030としてマイクロポケット核分裂検出器が挙げられるが、これに限定されるものではない。別の実施では、反応度パラメータセンサ1030は中性子束モニタを含む。例えば、反応度パラメータセンサ1030として核分裂チャンバまたはイオンチャンバが挙げられるが、これらに限定されるものではない。別の実施では、反応度パラメータセンサ1030は中性子フルエンスセンサを含んでいる。例えば、反応度パラメータセンサ1030として統合ダイアモンドセンサ(integrating diamond sensor)が挙げられるが、これに限定されない。別の実施では、反応度パラメータセンサ1030は核分裂生成物センサを含む。例えば、反応度パラメータセンサ1030として、気体検出器、β検出器、またはγ検出器が挙げられるが、これらに限定されるものではない。別の実施では、反応度パラメータセンサ1030は核分裂生成物気体中のアイソトープの種類の比を測定するよう構成された核分裂生成物検出器を含む。
【0119】
別の実施では、反応度パラメータセンサ1030は温度センサを含む。別の実施では、反応度パラメータセンサ1030は圧力センサを含む。他の例では、反応度パラメータセンサ1030は出力センサを含む。例えば、反応度パラメータセンサ1030として出力範囲核計測器が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0120】
別の実施では、反応度は、測定された反応度パラメータ(上述)のうち一つまたは複数を用いて決定される。一つの実施では、炉心部1004の反応度は、ルックアップテーブルを用いてアクチュエータコントローラ1014によって決められる。例えば、温度、圧力、出力レベルなどの測定値を一つまたは複数のルックアップテーブルとともに用いて炉心部1004の反応度を決定してよい。別の実施では、炉心部1004の反応度は、一つまたは複数のモデルを用いてアクチュエータコントローラ1014によって決められる。例えば、一つまたは複数のモデルとして、アクチュエータコントローラ1014の一つまたは複数のプロセッサによって実行されるニュートロニクスモデリングソフトウェアパッケージが挙げられるが、これに限定されるものではない。例えば、適当なニュートロニクスソフトウェアパッケージとして、MCNP、CINDER、REBUSなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。別の実施では、反応度パラメータは、オペレータによって決められ、オペレータインタフェースを介してアクチュエータコントローラ1014に直接入力されてよい。
【0121】
ここで、反応度パラメータセンサ1030は、溶融塩原子炉1000の炉心部1004の溶融燃料塩1006内に位置するものとして述べられたが、この構成は本実施を限定するものではなく、例示目的のため提供されているに過ぎない。むしろ、一つまたは複数の反応度パラメータセンサ1030を、溶融塩原子炉1000のさまざまな場所に位置させてよい。そうした場所としては、炉心部内の場所、炉心部1004の外部の場所(例えば、炉心部1004の外表面の場所)、一次冷却材システムの一本または複数本のパイプの中またはそれに沿った場所、一次熱交換器の中または近くの場所、二次冷却材システムの一本または複数本のパイプの中またはそれに沿った場所などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0122】
別の実施では、一つまたは複数の反応度パラメータセンサ1030は、アクチュエータコントローラ1014と通信可能に接続されている。一つまたは複数の反応度パラメータセンサ1030は、アクチュエータコントローラ1014と通信可能に接続されている。例えば、上記一つまたは複数の反応度パラメータセンサ1030は、有線接続(例えば、電気ケーブルまたは光ファイバ)または無線接続(例えば、RF送信または光送信)を介してアクチュエータコントローラ1014と通信可能に接続されてよい。
【0123】
一つの実施では、アクチュエーションコントローラ1014は、アクチュエータ1012に命じて、測定された反応度パラメータに基づいて、体積押しのけ素子1010の位置(の調節により、溶融燃料塩1006の反応度)を調節させる。
【0124】
一つの実施では、アクチュエーションコントローラ1014は、一つまたは複数のプロセシングユニットとメモリを備える。一つの実施では、メモリは、体積押しのけアセンブリ1002の一つまたは複数の動作ステップを実行するよう構成された一組または複数組のプログラム命令を保存している。一つの実施では、アクチュエーションコントローラ1014の一つまたは複数のプログラム命令により、アクチュエータコントローラ1014が、アクチュエータ1012に命じて、体積押しのけアセンブリ1002を駆動して炉心部1004に入れさせ、炉心部1004内の選択された体積の溶融燃料塩1006を押しのけてよい。
【0125】
別の実施では、一つまたは複数のプログラム命令は、炉心部1004の決定された反応度を、炉心部1004の測定された反応度を補うのに必要な押しのけ量と関連させるよう構成されている。例えば、上記したように、反応度パラメータセンサ1030は、反応度炉心部1004内の溶融燃料塩1006と関連する反応度パラメータを取得してよい。反応度パラメータが選択された許容レベルよりも大きな反応度を示している場合、アクチュエータコントローラ1014は、上昇した反応度を補償する押しのけ量を決定し、アクチュエータ1012に命じて、少なくともこのレベルの体積測定塩押しのけを達成するのに十分なだけ体積押しのけ素子1010を挿入させてよい。別の実施では、原子炉の完全な停止が求められる場合、アクチュエータコントローラ1014は、アクチュエータ1012に命じて、体積押しのけ素子1010全体を炉心部1004に挿入させ、最大の体積測定塩押しのけを行わせてよい。
【0126】
図11は、体積押しのけ素子アセンブリ1102と、溶融燃料塩溢出システム1130とを備え、体積押しのけ素子1110が溶融燃料塩の中に沈んでいない状態にある、溶融塩原子炉1100を示す。一つの実施では、溶融燃料塩溢出システム1130は、一つまたは複数の燃料塩取り込み口1132と一つまたは複数の溢出貯蔵部1134とを備える。いくつかの場合では、体積押しのけ素子1110による溶融燃料塩1106の体積押しのけは、燃料塩の水平面を望ましい水平面より上にあげてしまうかもしれない。一つの実施では、図12に示すように、溶融燃料塩溢出システム1130は、炉心部1104の許容充填水平面上限より上に押しのけられた溶融燃料塩1106を運ぶように構成されている。非限定的な例として、燃料塩取り込み口1132は、ノミナルの燃料塩水平面より約10cm上方に配置してよい。この点に関して、体積押しのけ素子1110が動作しているとき、いくつかの場合では、体積押しのけ素子1110は、溶融燃料塩の水平面を通常の塩の水平面より上に上げるかもしれない。燃料塩取り込み口1132に達した溶融塩は、それから、溢出貯蔵部1134へ運ばれる。溶融塩原子炉1100内部で、複数の体積押しのけアセンブリをさまざまな構成で用いてよい。
【0127】
図12は、体積押しのけ素子アセンブリ1202と、溶融燃料塩溢出システム1230とを備え、体積押しのけ素子1210が溶融燃料塩の中に沈んでいる状態にある、溶融塩原子炉1200を示す。図12に示す溶融燃料塩溢出システム1230は、体積押しのけ素子アセンブリ1202と体積押しのけ素子1210との相互関係で示されているが、これは溶融燃料塩溢出システム1230の要件ではない。この点に関して、本開示の溶融燃料塩溢出システム1230は、体積押しのけアセンブリ1202と体積押しのけ素子1010とを含まない環境で実施してよい。一つの実施では、溶融燃料塩1206の熱膨張を補うために、溶融燃料塩溢出システム1230を実施してよい。非限定的な例として、燃料塩取り込み口1232が通常の塩の水平面の上方10cmに位置している場合、溶融燃料塩1206の温度がわずか50℃上がるだけで、溶融燃料塩1206は燃料塩取り込み口1232に達しうる。他の非限定的な例として、溶融燃料塩1206の温度が約200℃上がると、溶融燃料塩1206は燃料塩取り込み口1232を通って溢出し、1から5m3の燃料塩が一つまたは複数の溢出貯蔵部1234に溢出しうる。溢出した燃料塩1236を、一つまたは複数の溢出貯蔵部1234の中に示す。
【0128】
ここで、溶融燃料塩1206の非常に低い過剰反応度と強い熱的フィードバックとの組み合わせにより、ほとんど受動的な運転が可能になるかもしれない。この意味で、押しのけ素子1210の使用は限定してよい。原子炉プラントのタービン(図示せず)に対する要求が変化すると、一次冷却材ループと関連する温度がわずかに変化する。したがって、今度は、溶融燃料塩1206の温度が変化する。その結果、溶融燃料塩1206は新しい平均温度を有することで、新しい平均密度を有し、溶融燃料塩1206の流体水平面を上げるか下げる。
【0129】
非限定的な例として、電力の要求が増大するときは、タービンの蒸気は低下した温度で流出する。その結果、原子炉システム全体の温度が下がり、溶融燃料塩1206の温度が下がり、密度が上がる。この密度の増加が反応度の上昇を引き起こす。さらに、溶融燃料塩1206の流体水平面が下がる一方、上昇した反応度は溶融塩原子炉1200の出力を上昇させる。これにより、タービンへの増大の要求が満たされる。今度は、出力の上昇により溶融燃料塩1206の温度が上昇し、溶融燃料塩1206の流体水平面がもとの水平面に(あるいはその近くに)戻る。
【0130】
さらに、以下のことが考えられる。ヒートシンクまたはタービントリップが消失した場合、溶融塩原子炉1200全体の温度が上昇する。溶融燃料塩1206の温度が上昇した結果、溶融燃料塩1206の密度が下がり、溶融燃料塩1206の反応度が下がる。密度の低下により流体水平面が上昇し、いくつかの例(例えば、+50℃の温度上昇)では、溶融燃料塩1206の流体水平面は燃料塩取り込み口1232の水平面に達する。そのような流体水平面の上昇により、続いて、いくらかの量の溶融燃料塩1206が一つまたは複数の溢出貯蔵部1234へと溢出しうる。これが、炉心部1204内での反応度をさらに低下させる役割を果たす。その結果、溶融塩原子炉1200は半臨界状態となり、冷却してもその状態を維持しうる。別の実施では、溶融燃料塩溢出システム1230は、戻り経路(例えば、一本または複数本のパイプ、一つまたは複数のポンプ、一つまたは複数の弁)を有してよい。戻り経路において、一つまたは複数の溢出貯蔵部1234に保存された燃料塩は当該一つまたは複数の溢出貯蔵部1234から積極的に排出され、炉心部1204に戻って、臨界状態を再び達成する。
【0131】
別の実施では、通常運転中、押しのけ素子1210を用いて反応度/密度/温度の変化を制御または生じさせるだけでなく、上記プロセスを早めてもよい。また、押しのけ素子1210に対してさまざまな構造面での修正を行って、制御性能を高め、溶融燃料塩の乱流が炉心部1204内の押しのけ素子1210の配置および安定性に対して持つ影響を管理してよいことも理解されたい。そのような構造面での修正としては、押しのけ素子1210の形状やサイズや数を変えることや、動的に形状が変化する特徴を押しのけ素子1210にもたせることや、押しのけ素子1210にバッフルおよび/またはノズルをもたせることや、押しのけ素子1210に他の流れを邪魔しない特徴をもたせることが挙げられるが、これらに限定されるものではない。炉心部1204内部で、複数の体積押しのけアセンブリをさまざまな構成で用いてよい。
【0132】
図13は、燃料押しのけサイクル1300のさまざまな例示的なステージを示す。ステージ1302において、押しのけ素子1301は、棒入口1305を通して挿入された中空または非中空の押しのけ棒1303と、押しのけ棒1303および棒入口1305双方の幅より広い幅wを持つとともに炉心部1311の高さyより低い高さhを持つ押しのけ本体1307とを有している。その結果、押しのけの最大体積は、炉心部1311内で、押しのけ本体1307を、炉心部1311内の溶融燃料塩1309の所望の高さまで上げるまたは下げることによって、垂直に選択/位置決めすることができる。点線1320は、押しのけ素子がまだ溶融燃料塩1309の中まで下げられていなかったときの溶融燃料塩の水平面を示す。
【0133】
押しのけ棒1303および/または押しのけ本体1307は、非中性子吸収物質および中性子吸収物質を含むさまざまな物質から形成されてよいし、あるいはそのような物質で満たされてよい。
【0134】
ステージ1302では、押しのけ素子は溶融燃料塩の中へと部分的に下げられており、その結果、溶融燃料塩の水平面の上昇をもたらしている。それに続くステージ1304、1306、1308、1310、および1312では、押しのけ本体1307を溶融燃料塩1309の中に徐々に深く入れていき、その結果、溶融燃料塩1309の水平面はますます高くなる。ただし、そのような溶融燃料塩1309の水平面の上昇は、溢出システムによって緩和してもよい。ステージ1312は、完全に沈められた押しのけ本体1307を示す。
【0135】
炉心部内部の特定の場所において、ある量の溶融燃料塩1309を押しのけることで、炉心部1311の反応度を制御できる。押しのけ本体1307が溶融燃料塩1309内に完全に沈められたあとでさえ、炉心部1311内の垂直位置は、例示した諸実施において、反応度にさらに影響を与えることができる(例えば、押しのけ本体1307が低いほど、反応度に対する負の影響が増す)。図14および関連する記載を参照されたい。
【0136】
炉心部1311内部で、複数の体積押しのけアセンブリをさまざまな構成で用いてよい。
【0137】
図14は、燃料押しのけサイクル1400の二つの例示的なステージ1402と1404を示す。ステージ1402では、押しのけ素子1401は、中空または非中空の押しのけ棒1403と、炉心部1411内の溶融燃料塩1409内に深く挿入された押しのけ本体1407とを有する。ステージ1404では、押しのけ本体1407は、炉心部1411内の溶融燃料塩1409への挿入深さが浅い。その結果、押しのけの最大体積は、炉心部1411内で、押しのけ本体1407を、炉心部1411内の溶融燃料塩1409の所望の高さまで上げるまたは下げることによって、垂直に選択/位置決めすることができる。押しのけ棒1403および/または押しのけ本体1407は、非中性子吸収物質および中性子吸収物質を含むさまざまな物質から形成されてよく、あるいはそのような物質で満たされてよい。したがって、一つの実施では、反応度の制御は、ステージ1402における方がステージ1404における方よりも負であると特徴付けてよい。これは、押しのけ本体1407が炉心部1411により深く挿入され、炉心部1411の入口領域でより多くの燃料を押し退けるからである。当該入口領域で、溶融燃料塩1409が循環サイクルごとに最初に活性核分裂反応領域に入る。
【0138】
炉心部1411内部で、複数の体積押しのけアセンブリをさまざまな構成で用いてよい。
【0139】
図15は、溶融燃料塩押しのけプロセスの例示的な諸動作1500を示す。システム提供動作(system provisioning operation)1502は、溶融塩化物高速原子炉(これは溶融塩原子炉の一例である)に溶融燃料塩交換システムを提供する。モニタリング動作1504は、溶融燃料塩の制御条件(例えば、k-effectiveが、閾値(例えば、1.005)を満たすか超える)をモニタする。例えば、一つまたは複数の反応度パラメータセンサが、溶融塩化物高速原子炉内の反応度をモニタしてよい。モニタされた反応度または他の何らかの運転パラメータが溶融燃料塩押しのけイベントをトリガするように制御条件を設定してよい。
【0140】
制御条件が満たされなかった場合、決定動作1506は処理をモニタリング動作1504に戻す。制御条件が満たされた場合、決定動作1506は処理を挿入動作1508へ進める。挿入動作1508は、押しのけ本体を炉心部内の溶融燃料塩に挿入する。配置動作1510が溶融塩化物高速原子炉の溶融燃料塩内に押しのけ本体を配置し、炉心部から選択された体積の溶融燃料塩を除去し、溶融塩化物高速原子炉における所望の反応度パラメータを得る。処理はモニタリング動作1504に戻る。
【0141】
一つの実施では、例示的な溶融塩原子炉は、溶融燃料塩によって燃料を供給される核分裂反応を含むよう構成された原子炉心を備える。溶融燃料塩制御システムが上記原子炉心に接続され、選択された体積の上記溶融燃料塩を上記原子炉心から除去して、上記溶融塩原子炉の反応度を示すパラメータを、ノミナルの反応度の選択された範囲内に保つよう構成されている。
【0142】
任意の上記原子炉の他の例示的な溶融塩原子炉は溶融燃料塩制御システムを備え、上記溶融燃料塩制御システムは溶融燃料塩交換システムを有しており、上記溶融燃料塩交換システムは、上記原子炉心と流体的に接続されており、選択された体積の上記溶融燃料塩を、選択された親物質と担体塩の混合物を含む選択された体積の供給物質と交換するよう構成されている。
【0143】
任意の上記原子炉の他の例示的な溶融塩原子炉は溶融燃料塩交換システムを備え、上記溶融燃料塩交換システムは、上記供給物質を上記原子炉心内に送るよう構成された供給燃料補給ユニットを有している。
【0144】
任意の上記原子炉の他の例示的な溶融塩原子炉は溶融燃料塩交換システムを備え、上記溶融燃料塩交換システムは、選択された体積の上記供給物質を上記原子炉心内に送るよう構成された供給燃料補給ユニットを有している。
【0145】
任意の上記原子炉の他の例示的な溶融塩原子炉は溶融燃料塩交換システムを備え、上記溶融燃料塩交換システムは、選択された組成の上記供給物質を上記原子炉心内に送るよう構成された供給燃料補給ユニットを有している。
【0146】
任意の上記原子炉の他の例示的な溶融塩原子炉は溶融燃料塩交換システムを備え、上記溶融燃料塩交換システムは、上記選択された体積の上記溶融燃料塩を使用済燃料として原子炉心から移すよう構成された使用済燃料運搬ユニットを有している。
【0147】
任意の上記原子炉の他の例示的な溶融塩原子炉は溶融燃料塩交換システムを備え、上記溶融燃料塩交換システムは、上記選択された体積の上記溶融燃料塩を上記原子炉心から移すのと、上記供給物質を上記原子炉心へ移すのを同時に行うよう構成されている。
【0148】
任意の上記原子炉の他の例示的な溶融塩原子炉は溶融燃料塩交換システムを備え、上記溶融燃料塩交換システムは、上記原子炉心内で、上記供給物質を上記選択された体積の上記溶融燃料塩と交換することにより、上記核分裂反応の反応度を制御する。
【0149】
任意の上記原子炉の他の例示的な溶融塩原子炉は溶融燃料塩交換システムを備え、上記溶融燃料塩交換システムは、上記原子炉心内で、上記供給物質を上記選択された体積の上記溶融燃料塩と交換することにより、上記核分裂反応における上記溶融燃料塩の組成を制御する。
【0150】
任意の上記原子炉の他の例示的な溶融塩原子炉は高速スペクトル核分裂原子炉を備え、上記溶融燃料塩は塩化物を含む。
【0151】
任意の上記原子炉の他の例示的な溶融塩原子炉は溶融燃料塩交換システムを備え、上記溶融燃料塩交換システムは、上記原子炉心内で、上記供給物質を上記選択された体積の上記溶融燃料塩と交換することにより、上記スペクトル核分裂反応におけるUCl-UCl-NaClの組成を制御する。
【0152】
任意の上記原子炉の他の例示的な溶融塩原子炉は溶融燃料塩交換システムを備え、上記溶融燃料塩交換システムは、選択された体積の上記溶融燃料塩を、選択された体積の上記供給物質と繰り返し交換して、上記溶融塩原子炉の反応度を示す上記パラメータを、ノミナルの反応度の選択された範囲内に長期にわたって保つよう構成されている。
【0153】
任意の上記原子炉の他の例示的な溶融塩原子炉は、上記原子炉心に近接して配置された反応度パラメータセンサをさらに備える。上記核パラメータセンサは、上記原子炉心の反応度を示す一つまたは複数のパラメータをモニタするよう構成されている。コントローラが、上記反応度パラメータセンサと通信可能に接続されて、上記原子炉心の反応度を示す上記一つまたは複数のパラメータを受け取る。上記コントローラは、上記選択された体積の上記溶融燃料塩と、選択された親物質と担体塩の混合物を含む上記選択された体積の供給物質との交換を、上記一つまたは複数のパラメータに基づいて制御するよう構成されている。
【0154】
任意の上記原子炉の他の例示的な溶融塩原子炉において、上記溶融燃料塩制御システムは体積押しのけ制御システム(volumetric displacement control system)をさらに有し、上記体積押しのけ制御システムは、上記原子炉心に挿入可能な一つまたは複数の体積押しのけアセンブリを有している。各体積押しのけアセンブリは、上記原子炉心に挿入されると、上記原子炉心から、選択された体積の溶融燃料塩を体積的に押しのける(volumetrically displace)よう構成されている。
【0155】
任意の上記原子炉の他の例示的な溶融塩原子炉において、上記溶融燃料塩制御システムは体積押しのけ制御システムをさらに有し、上記体積押しのけ制御システムは、上記原子炉心に挿入可能な一つまたは複数の体積押しのけ本体を有し、各体積押しのけ本体は、上記原子炉心に挿入されると、上記原子炉心から、選択された体積の溶融燃料塩を体積的に押しのけるよう構成されている。
【0156】
任意の上記原子炉の他の例示的な溶融塩原子炉において、上記溶融燃料塩制御システムは体積押しのけ制御システムをさらに有し、上記体積押しのけ制御システムは、上記原子炉心に挿入可能な一つまたは複数の体積押しのけ本体を有し、各体積押しのけ本体は、上記原子炉心に挿入されると、上記原子炉心から、選択された体積の溶融燃料塩を体積的に押しのけるよう構成され、上記体積押しのけ制御システムは、溶融燃料塩溢出システムをさらに有し、上記溶融燃料塩溢出システムは、上記体積押しのけ本体によって上記原子炉心の許容充填水平面より上に押しのけられた溶融燃料塩を運ぶよう構成されている。
【0157】
任意の上記原子炉の他の例示的な溶融塩原子炉において、上記溶融燃料塩制御システムは体積押しのけ制御システムをさらに有し、上記体積押しのけ制御システムは、上記原子炉心に挿入可能な一つまたは複数の体積押しのけ本体を有し、各体積押しのけ本体は、上記原子炉心に挿入されると、上記原子炉心から、選択された体積の溶融燃料塩を体積的に押しのけるよう構成され、上記体積押しのけ制御システムは複数の挿入深度で上記原子炉心に挿入されることで、上記溶融塩原子炉の反応度を示す上記パラメータを、ノミナルの反応度の選択された範囲内に長期にわたって保つことができる。
【0158】
他の溶融塩原子炉は、溶融燃料塩によって燃料を供給される核分裂反応を維持するよう構成された原子炉心と、選択された体積の上記溶融燃料塩を、選択された親物質と担体塩の混合物を含む選択された体積の供給物質と交換する手段と、を備える。
【0159】
他の溶融塩原子炉は、溶融燃料塩によって燃料を供給される核分裂反応を維持するよう構成された原子炉心と、選択された体積の上記溶融燃料塩を上記原子炉心から除去して、上記溶融塩原子炉の反応度を示すパラメータを、ノミナルの反応度の選択された範囲内に保つ手段と、を備える。
【0160】
例示的な方法は、原子炉心内で溶融燃料塩によって燃料を供給される核分裂反応を維持する工程と、上記溶融塩原子炉の反応度を示すパラメータをノミナルの反応度の選択された範囲内に保つように、選択された体積の上記溶融燃料塩を上記原子炉心から除去する工程と、を含む。
【0161】
任意の上記方法の他の例示的な方法は、上記選択された体積の上記溶融燃料塩を、選択された親物質と担体塩の混合物を含む選択された体積の供給物質と交換する工程をさらに含む。
【0162】
任意の上記方法の他の例示的な方法において、上記交換する工程は、上記供給物質を上記原子炉心内に運ぶ工程を含む。
【0163】
任意の上記方法の他の例示的な方法において、上記交換する工程は、選択された体積の上記供給物質を上記原子炉心内に運ぶ工程を含む。
【0164】
任意の上記方法の他の例示的な方法において、上記交換する工程は、選択された組成の上記供給物質を上記原子炉心内に運ぶ工程を含む。
【0165】
任意の上記方法の他の例示的な方法において、上記交換する工程は、上記選択された体積の上記供給物質に基づいて、上記原子炉心の上記反応度を制御する工程を含む。
【0166】
任意の上記方法の他の例示的な方法において、上記交換する工程は、上記選択された組成の上記供給物質に基づいて、上記原子炉心内で上記核分裂反応に燃料を供給する上記溶融燃料塩の組成を制御する工程を含む。
【0167】
任意の上記方法の他の例示的な方法において、上記交換する工程は、上記選択された組成の上記供給物質に基づいて、上記原子炉心内で上記核分裂反応に燃料を供給するUCl-UCl-NaClの組成を制御する工程を含む。
【0168】
任意の上記方法の他の例示的な方法において、上記方法は、上記溶融燃料塩の交換条件が満たされたことをモニタする工程と、上記選択された体積の上記溶融燃料塩と、選択された親物質と担体塩の混合物を含む上記選択された体積の供給物質との交換を、上記交換条件が満たされたことに応じて制御する工程と、をさらに含む。
【0169】
任意の上記方法の他の例示的な方法において、上記方法は、上記原子炉心の反応度を示す一つまたは複数の反応度パラメータをモニタする工程と、上記選択された体積の上記溶融燃料塩と、選択された親物質と担体塩の混合物を含む上記選択された体積の供給物質との交換を、上記一つまたは複数の反応度パラメータに基づいて制御する工程と、をさらに含む。
【0170】
任意の上記方法の他の例示的な方法において、上記方法は、上記原子炉心の上記溶融燃料塩の組成を示す一つまたは複数の組成パラメータをモニタする工程と、上記選択された体積の上記溶融燃料塩と、選択された親物質と担体塩の混合物を含む上記選択された体積の供給物質との交換を、上記一つまたは複数の組成パラメータに基づいて制御する工程と、をさらに含む。
【0171】
任意の上記方法の他の例示的な方法において、上記除去する工程は、一つまたは複数の体積押しのけ本体を上記原子炉心内の溶融燃料塩に挿入することで上記選択された体積の溶融燃料塩を上記原子炉心から体積的に押しのける工程を含む。
【0172】
任意の上記方法の他の例示的な方法において、上記除去する工程は、上記体積的に押しのけられた体積の溶融燃料塩が上記体積押しのけ本体によって上記原子炉心の許容充填水平面より上に押しのけられたとき、上記体積的に押しのけられた体積の溶融燃料塩を、上記原子炉心から、溶融燃料塩溢出システムを介して運ぶ工程を含む。
【0173】
任意の上記方法の他の例示的な方法において、各体積押しのけ本体は、上記原子炉心に挿入されると、上記原子炉心から、選択された体積の溶融燃料塩を体積的に押しのけるよう構成され、上記体積押しのけ制御システムは複数の挿入深度で上記原子炉心に挿入されることで、上記溶融塩原子炉の反応度を示す上記パラメータを、ノミナルの反応度の選択された範囲内に長期にわたって保つことができる 。
【0174】
例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉は、燃料入口と燃料出口とを有する炉心部を備え、上記燃料入口と上記燃料出口は、溶融塩化物核燃料を上記炉心部を通して流すよう配置されている。上記溶融塩化物核燃料は、UClと追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物の少なくとも一つとの混合物を含み、上記UClと少なくとも一つの追加の金属塩化物との混合物は、UCl含有量がモル分率で5%より大きい。
【0175】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記UClと少なくとも一つの追加の金属塩化物との混合物中のウラン濃度は61重量%より大きい。
【0176】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記追加の塩化ウランはUClを含む。
【0177】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記UClと追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物の少なくとも一つとの混合物は、82UCl-18UClの組成を有している。
【0178】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記UClと追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物の少なくとも一つとの混合物は、17UCl-71UCl-12NaClの組成を有している。
【0179】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記UClと追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物の少なくとも一つとの混合物は、50UCl-50NaClの組成を有している。
【0180】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記追加の金属塩化物はNaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、PuCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrCl、NdClの少なくとも一つを含む。
【0181】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記UClと追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物の少なくとも一つとの混合物は、追加の金属塩化物濃度が、上記追加の塩化物の沈殿濃度以下である。
【0182】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記UClと追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物の少なくとも一つとの混合物は、溶融温度が800℃未満である。
【0183】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記UClと追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物の少なくとも一つとの混合物は、上記選択された溶融温度が330℃を超える。
【0184】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、ウラニウム・プルトニウムサイクルを有する溶融塩化物核燃料内で増殖燃焼反応が行われる。
【0185】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記燃料入口は炉心部の第一側面にあり、上記燃料出口は炉心部の上記燃料入口とは反対側にある第二側面にある。
【0186】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記溶融塩化物核燃料に面する少なくとも一つの表面上に保護層が配置されている。
【0187】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記溶融塩化物核燃料に暴露されている上記少なくとも一つの面は、上記炉心部の内面を含む。
【0188】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記保護層は腐食または放射線の少なくとも一つに対して実質的に抵抗力がある。
【0189】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記保護層は耐熱合金、ニッケル合金、耐熱金属、または炭化ケイ素の少なくとも一つを含む。
【0190】
上述の任意の上記原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉は、上記炉心部から発する中性子の少なくとも一部を上記炉心部内の上記溶融塩化物核燃料へと反射して返す反射アセンブリを備え、上記反射アセンブリは複数の反射モジュールを有し、上記反射モジュールの少なくともいくつかは液体反射物質を含む。
【0191】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記反射モジュールの少なくとも一つはモリブデン合金、ニッケル合金、またはカーバイドからできている。
【0192】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記液体反射物質は、液体鉛または液体鉛ビスマスの少なくとも一つを含む。
【0193】
上述の任意の上記原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉は、上記炉心部と動作可能に接続された押しのけアセンブリを備え、上記押しのけアセンブリは、ある量の上記溶融塩核燃料を選択的に押しのけて上記溶融塩核燃料内の反応度を制御するよう構成されている。
【0194】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記押しのけアセンブリは、ある量の上記溶融塩核燃料を押しのけて上記溶融塩核燃料内の反応度を減少させるよう構成されている。
【0195】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記押しのけアセンブリは、押しのけ素子と、上記押しのけ素子と動作可能に接続されたアクチュエータと、コントローラとを備えている。上記コントローラは、上記アクチュエータに選択的に命じて、上記押しのけ素子の位置を制御させ、それによって上記炉心部に含まれる上記溶融塩核燃料の反応度を制御させるよう構成されている。
【0196】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記押しのけ素子は非中性子を実質的に吸収する物質からできている。
【0197】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉は、溶融塩運搬アセンブリを備える。
【0198】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記溶融塩運搬アセンブリは、上記炉心部と流体的に接続された溶融塩運搬ユニットを有し、上記溶融塩運搬ユニットは、選択された一部の上記溶融塩化物燃料を、上記高速スペクトル溶融塩原子炉の一部から貯蔵部へと運ぶよう構成されている。上記溶融塩運搬ユニットは、少なくともいくらかの親物質を含む供給物質を供給物質補給から上記高速スペクトル溶融塩原子炉の一部へと運ぶようにさらに構成されている。
【0199】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記供給物質の少なくともいくらかの親物質は少なくとも一つの親燃料塩を含む。
【0200】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記少なくとも一つの親燃料塩は、劣化ウラン、天然ウラン、またはトリウムの少なくとも一つを含む塩を含む。
【0201】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記少なくとも一つの親燃料塩は、使用済核燃料に由来する少なくとも一つの金属を含む塩を含む。
【0202】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉は、上記溶融塩化物燃料に由来する少なくとも一つの核分裂生成物を除去するよう構成された核分裂生成物除去ユニットを備える。
【0203】
任意の上記原子炉の他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉は、上記炉心部の上記入口および上記炉心部の上記出口と流体的に接続された一次冷却材ループを備える。
【0204】
上述の任意の原子炉の別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉は、一次熱交換器と、二次冷却材ループとを備え、上記一次冷却材ループおよび上記二次冷却材ループは上記一次熱交換器を介して熱的に接続されている。
【0205】
上述の任意の原子炉の別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉は、少なくとも一つのポンプを備え、上記少なくとも一つのポンプは、上記一次冷却材ループに沿って配置され、上記溶融塩化物核燃料を上記一次冷却材ループを介して循環させる。
【0206】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記少なくとも一つのポンプは、上記溶融塩化物核燃料を、上記一次冷却材ループを介して、選択された流速限界以下で循環させる。
【0207】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉は、一種または複数種の希ガスを上記溶融塩化物核燃料から除去するよう構成されたガス散布ユニットを備える。
【0208】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉は、貴金属または準貴金属の少なくとも一つを上記溶融塩核燃料から除去するよう構成されたフィルタユニットを備える。
【0209】
上述の高速スペクトル溶融塩原子炉に燃料を供給する例示的な方法は、ある量のUClを供給する工程と、追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物のうち少なくとも一つをある量供給する工程と、上記ある量のUClを追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物のうち上記少なくとも一つの上記ある量と混合して、UCl含有量がモル分率で5%より大きい溶融塩化物核燃料を作る工程と、上記UCl含有量がモル分率で5%より大きい溶融塩化物核燃料を上記高速スペクトル溶融塩原子炉の少なくとも一つの炉心部に供給する工程と、を含む。
【0210】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法は、UClのある量を供給することにより、追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物のうち少なくとも一つのある量を供給する工程を含む。
【0211】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法は、NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、PuCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrCl、またはNdClのうち少なくとも一つのある量を供給することにより、追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物のうち少なくとも一つのある量を供給する工程を含む。
【0212】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、上記ある量のUClを追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物のうち上記少なくとも一つの上記ある量と混合して、UCl含有量がモル分率で5%より大きい溶融塩化物核燃料を作る上記工程は、上記ある量のUClを追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物のうち上記少なくとも一つの上記ある量と混合して、UCl含有量がモル分率で5%より大きく溶融温度が330および800℃のあいだの溶融塩化物核燃料を作ることによって行われる。
【0213】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、上記ある量のUClを追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物のうち上記少なくとも一つの上記ある量と混合して、UCl含有量がモル分率で5%より大きい溶融塩化物核燃料を作る上記工程は、上記ある量のUCl4を追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物のうち上記少なくとも一つの上記ある量と混合して、82UCl-18UClの組成を有する溶融塩化物核燃料を作ることによって行われる。
【0214】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、上記ある量のUClを追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物のうち上記少なくとも一つの上記ある量と混合して、UCl含有量がモル分率で5%より大きい溶融塩化物核燃料を作る上記工程は、上記ある量のUClを追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物のうち上記少なくとも一つの上記ある量と混合して、17UCl-71UCl-12NaClの組成を有する溶融塩化物核燃料を作ることによって行われる。
【0215】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、上記ある量のUClを追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物のうち上記少なくとも一つの上記ある量と混合して、UCl含有量がモル分率で5%より大きい溶融塩化物核燃料を作る上記工程は、上記ある量のUClを追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物のうち上記少なくとも一つの上記ある量と混合して、50UCl-50NaClの組成を有する溶融塩化物核燃料を作ることによって行われる。
【0216】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、上記ある量のUClを追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物のうち上記少なくとも一つの上記ある量と混合して、UCl含有量がモル分率で5%より大きい溶融塩化物核燃料を作る上記工程は、上記高速スペクトル溶融塩原子炉の内部で、上記ある量のUClを追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物のうち上記少なくとも一つの上記ある量と混合することにより行われる。
【0217】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、上記ある量のUClを追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物のうち上記少なくとも一つの上記ある量と混合して、UCl含有量がモル分率で5%より大きい溶融塩化物核燃料を作る上記工程は、上記高速スペクトル溶融塩原子炉の外部で、上記ある量のUClを追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物のうち上記少なくとも一つの上記ある量と混合することにより行われる。
【0218】
高速スペクトル溶融塩原子炉で用いられる例示的な溶融塩化物燃料は、ある量のUClを供給する工程と、追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物のうち少なくとも一つをある量供給する工程と、上記ある量のUClを追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物のうち上記少なくとも一つの上記ある量と混合して、UCl含有量がモル分率で5%より大きい溶融塩化物核燃料を作る工程と、を含む方法により調製される。
【0219】
例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉は、燃料入口と燃料出口とを有する炉心部を備える。上記燃料入口と上記燃料出口は、上記高速スペクトル溶融塩原子炉の始動時に、溶融塩核燃料と少なくとも一つのランタニドとの混合物を、上記炉心部を通して流すよう配置されている。
【0220】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記少なくとも一つのランタニドは、La、Ce、PrまたはNdのうち少なくとも一つを含む。
【0221】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、溶融塩核燃料と少なくとも一つのランタニドとの上記混合物は、上記溶融塩核燃料と少なくとも一つのランタニド塩化物とを混合することにより作られた、溶融塩核燃料と少なくとも一つのランタニドとの混合物を含む。
【0222】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記少なくとも一つのランタニド塩化物は、LaCl、CeCl、PrClまたはNdClの少なくとも一つを含む。
【0223】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、溶融塩核燃料と少なくとも一つのランタニドとの上記混合物は、ランタニド濃度が0.1から10重量%のあいだである、溶融塩核燃料と少なくとも一つのランタニドとの混合物を含む。
【0224】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、ランタニド濃度が0.1から10重量%のあいだである、溶融塩核燃料と少なくとも一つのランタニドとの混合物は、ランタニド濃度が4から8重量%のあいだである、溶融塩核燃料と少なくとも一つのランタニドとの混合物を含む。
【0225】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、溶融塩核燃料と少なくとも一つのランタニドとの上記混合物は、上記高速スペクトル溶融塩原子炉の外部で作られる。
【0226】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、溶融塩核燃料と少なくとも一つのランタニドとの上記混合物は、上記高速スペクトル溶融塩原子炉の内部で作られる。
【0227】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記燃料入口と上記燃料出口は、上記高速スペクトル溶融塩原子炉の選択された反応度閾値に達する前に、溶融塩核燃料と少なくとも一つのランタニドとの上記混合物を上記炉心部を通して流すよう配置されている。
【0228】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記燃料入口と上記燃料出口は、上記高速スペクトル溶融塩原子炉の臨界に達する前に、溶融塩核燃料と少なくとも一つのランタニドとの混合物を上記炉心部を通して流すよう配置されている。
【0229】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記燃料入口と上記燃料出口は、上記高速スペクトル溶融塩原子炉で選択された体積のプルトニウムを生成する前に、溶融塩核燃料と少なくとも一つのランタニドとの混合物を上記炉心部を通して流すよう配置されている。
【0230】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記溶融塩核燃料は、第一の塩化ウラン、第二の塩化ウラン、または追加の金属塩化物のうち少なくとも二つからなる混合物を含む。
【0231】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記追加の金属塩化物は、NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、PuClまたはAmClのうち少なくとも一つを含む。
【0232】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記第一の塩化ウランと上記第二の塩化ウランとの少なくとも一つは、UClまたはUClの少なくとも一つを含む。
【0233】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記溶融塩核燃料は82UCl-18UClの組成を有する。
【0234】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記溶融塩核燃料は17UCl-71UCl-12NaClの組成を有する。
【0235】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記溶融塩核燃料は50UCl-50NaClの組成を有する。
【0236】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記溶融塩核燃料は34UCl-66NaClの組成を有する。
【0237】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、少なくとも第一の塩化ウラン、第二の塩化ウラン、および追加の金属塩化物からなる上記混合物は、モル分率が少なくとも5%のUClを含む。
【0238】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、少なくとも第一の塩化ウラン、第二の塩化ウラン、および追加の金属塩化物からなる上記混合物は、ウラン濃度が61重量%より大きい。
【0239】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、少なくとも第一の塩化ウラン、第二の塩化ウラン、および追加の金属塩化物からなる上記混合物は、融点が330℃から800℃のあいだである。
【0240】
高速スペクトル溶融塩原子炉に燃料を供給する例示的な方法は、溶融塩核燃料を供給する工程と、少なくとも一つのランタニドを供給する工程と、を含む。高速スペクトル溶融塩原子炉の始動前に、上記溶融塩核燃料を上記少なくとも一つのランタニドと混合して、ランタニド装荷溶融塩核燃料を生成する。上記ランタニド装荷溶融塩核燃料を上記高速スペクトル溶融塩原子炉の少なくとも炉心部に供給する。
【0241】
任意の上記方法の他の例示的な方法は、溶融塩核燃料の供給を、第一の塩化ウラン、追加の塩化ウラン、および追加の金属塩化物のうち少なくとも二つからなる混合物を供給することにより行う。
【0242】
任意の上記方法の他の例示的な方法は、溶融塩核燃料の供給を、UCl、UCl、および追加の金属塩化物のうち少なくとも二つからなる混合物を供給することにより行う。
【0243】
任意の上記方法の他の例示的な方法では、上記付加的な金属塩化物は、NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、PuClまたはAmClのうち少なくとも一つを含む。
【0244】
任意の上記方法の他の例示的な方法は、溶融塩核燃料の供給を、モル分率で少なくとも5%のUClを含む溶融塩核燃料を供給することにより行う。
【0245】
任意の上記方法の他の例示的な方法は、溶融塩核燃料の供給を、61重量%を超えるウラン濃度を有する溶融塩核燃料を供給することにより行う。
【0246】
任意の上記方法の他の例示的な方法は、溶融塩核燃料の供給を、融点が330℃から800℃である溶融塩核燃料を供給することにより行う。
【0247】
任意の上記方法の他の例示的な方法は、少なくとも一つのランタニドの供給を、La、Ce、PrまたはNdのうち少なくとも一つを供給することにより行う。
【0248】
任意の上記方法の他の例示的な方法は、少なくとも一つのランタニドの供給を、少なくとも一つのランタニドをランタニド塩化物のかたちで供給することにより行う。
【0249】
任意の上記方法の他の例示的な方法は、少なくとも一つのランタニドのランタニド塩化物のかたちでの供給を、LaCl、CeCl、PrClまたはNdClのうち少なくとも一つを供給することにより行う。
【0250】
任意の上記方法の他の例示的な方法は、上記溶融塩核燃料を上記少なくとも一つのランタニドと混合して、ランタニド装荷溶融塩核燃料を生成する工程を、上記溶融塩核燃料を上記少なくとも一つのランタニドと混合して、ランタニド濃度が0.1から10重量%であるランタニド装荷溶融塩核燃料を生成することにより行う。
【0251】
任意の上記方法の他の例示的な方法は、上記溶融塩核燃料を上記少なくとも一つのランタニドと混合して、ランタニド濃度が0.1から10重量%であるランタニド装荷溶融塩核燃料を生成する工程を、上記溶融塩核燃料を上記少なくとも一つのランタニドと混合して、ランタニド濃度が4から8重量%であるランタニド装荷溶融塩核燃料を生成することにより行う。
【0252】
任意の上記方法の他の例示的な方法は、上記溶融塩核燃料を上記少なくとも一つのランタニドと混合して、ランタニド装荷溶融塩核燃料を生成する工程を、上記高速スペクトル溶融塩原子炉の外部で、上記溶融塩核燃料を上記少なくとも一つのランタニドと混合することにより行う。
【0253】
任意の上記方法の他の例示的な方法は、上記溶融塩核燃料を上記少なくとも一つのランタニドと混合して、ランタニド装荷溶融塩核燃料を生成する工程を、上記高速スペクトル溶融塩原子炉の内部で、上記溶融塩核燃料を上記少なくとも一つのランタニドと混合することにより行う。
【0254】
任意の上記方法の他の例示的な方法は、上記高速スペクトル溶融塩原子炉の始動前に、上記溶融塩核燃料を上記少なくとも一つのランタニドと混合して、ランタニド装荷溶融塩核燃料を生成する工程を、上記高速スペクトル溶融塩原子炉の選択された反応度閾値に達する前に、上記溶融塩核燃料を上記少なくとも一つのランタニドと混合して、ランタニド装荷溶融塩核燃料を生成することにより行う。
【0255】
任意の上記方法の他の例示的な方法は、上記高速スペクトル溶融塩原子炉の始動前に、上記溶融塩核燃料を上記少なくとも一つのランタニドと混合して、ランタニド装荷溶融塩核燃料を生成する工程を、上記高速スペクトル溶融塩原子炉の臨界に達する前に、上記溶融塩核燃料を上記少なくとも一つのランタニドと混合して、ランタニド装荷溶融塩核燃料を生成することにより行う。
【0256】
任意の上記方法の他の例示的な方法は、上記高速スペクトル溶融塩原子炉の始動前に、上記溶融塩核燃料を上記少なくとも一つのランタニドと混合して、ランタニド装荷溶融塩核燃料を生成する工程を、上記高速スペクトル溶融塩原子炉で選択された体積のプルトニウムを生成する前に、上記溶融塩核燃料を上記少なくとも一つのランタニドと混合して、ランタニド装荷溶融塩核燃料を生成することにより行う。
【0257】
高速スペクトル溶融塩原子炉で用いられる例示的な溶融塩燃料は、溶融塩核燃料を供給する工程と、少なくとも一つのランタニドを供給する工程と、上記高速スペクトル溶融塩原子炉の始動前に、上記溶融塩核燃料を上記少なくとも一つのランタニドと混合して、ランタニド装荷溶融塩核燃料を生成する工程と、を含む方法により調製される。
【0258】
例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉は、燃料入口と燃料出口とを有する炉心部を備える。上記燃料入口と上記燃料出口は、溶融塩核燃料を上記炉心部を通して流すよう配置されている。押しのけアセンブリが、上記炉心部に動作可能に接続されており、ある量の上記溶融塩核燃料を選択的に押しのけて上記溶融塩核燃料内部の反応度を制御する。
【0259】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記押しのけアセンブリは、上記炉心部の中心領域である量の上記溶融塩核燃料を選択的に押しのけるよう構成されている。
【0260】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記押しのけアセンブリは、ある量の上記溶融塩核燃料を押しのけて上記溶融塩核燃料の反応度を減少させるよう構成されている。
【0261】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記押しのけアセンブリは、 押しのけ素子と、上記押しのけ素子と動作可能に接続されたアクチュエータと、コントローラとを備える。上記コントローラは、選択的に上記アクチュエータに命じて、上記押しのけ素子の位置を制御させ、それによって上記炉心部に含まれる上記溶融塩核燃料の反応度を制御させるよう構成されている。
【0262】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記押しのけ素子と上記炉心部は、共通の軸を中心としている。
【0263】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記アクチュエータは、上記押しのけ素子を駆動して上記炉心部内に入れ、それによって上記溶融塩核燃料の反応度を制御する。
【0264】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記アクチュエータは、上記押しのけ素子を上記炉心から引っ込め、それによって上記溶融塩核燃料の反応度を上昇させる。
【0265】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉は、上記溶融塩化物核燃料の少なくとも一つの反応度パラメータを検知するよう構成された反応度パラメータセンサを備え、上記反応度パラメータセンサは上記コントローラと通信可能に接続されている。
【0266】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記反応度パラメータセンサは、核分裂検出器、中性子束モニタ、中性子フルエンスセンサ、核分裂生成物センサ、温度センサ、圧力センサ、または出力センサの少なくとも一つを含む。
【0267】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記コントローラは、上記反応度パラメータセンサからの上記溶融塩化物核燃料の少なくとも一つの検知された反応度パラメータに応じて、上記アクチュエータに選択的に命じて、上記炉心部内の上記押しのけ素子の位置を制御させるよう構成されている。
【0268】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記押しのけ素子は一本の押しのけ棒を含む。
【0269】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記押しのけ素子は複数本の押しのけ棒を含む。
【0270】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記押しのけ素子は非中性子を実質的に吸収する物質からできている。
【0271】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記押しのけ素子は、中性子を実質的に透過する物質または中性子を実質的に反射する物質の少なくとも一つからできている。
【0272】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉は、上記炉心部から過剰な溶融塩核燃料を運び出す溢出システムを備える。
【0273】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記溢出システムは燃料塩取り込み口を有する。上記燃料塩取り込み口は、上記反応炉の選択された溶融塩核燃料充填水平面上限より上に位置し、上記炉心部から過剰な溶融塩核燃料を運び出すよう構成されている。少なくとも一つの流体輸送素子と溢出貯蔵部も含まれる。上記少なくとも一つの流体輸送素子は、上記燃料塩取り込み口と上記溢出貯蔵部とを流体的に接続する。上記溢出貯蔵部は、上記少なくとも一つの流体輸送素子から受け取った過剰な溶融塩核燃料を保存するよう構成されている。
【0274】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記溶融塩核燃料は、第一の塩化ウラン、第二の塩化ウラン、または追加の金属塩化物のうち少なくとも二つからなる混合物を含む。
【0275】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記追加の金属塩化物は、NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、PuCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrClまたはNdClのうち少なくとも一つを含む。
【0276】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記第一の塩化ウランと上記第二の塩化ウランとの少なくとも一つは、UClまたはUClの少なくとも一つを含む。
【0277】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記溶融塩核燃料は82UCl-18UClの組成を有する。
【0278】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記溶融塩核燃料は17UCl-71UCl-12NaClの組成を有する。
【0279】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記溶融塩核燃料は50UCl-50NaClの組成を有する。
【0280】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記溶融塩核燃料は34UCl-66NaClの組成を有する。
【0281】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、少なくとも第一塩の化ウラン、第二の塩化ウラン、および追加の金属塩化物からなる上記混合物は、モル分率が少なくとも5%のUClを含む。
【0282】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、少なくとも第一の塩化ウラン、第二の塩化ウラン、および追加の金属塩化物からなる上記混合物は、ウラン濃度が61重量%より大きい。
【0283】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、少なくとも第一の塩化ウラン、第二の塩化ウラン、および追加の金属塩化物からなる上記混合物は、融点が330℃から800℃のあいだである。
【0284】
上記の各クレームの他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記溶融塩核燃料は少なくとも一つのフッ化ウランと追加の金属フッ化物との混合物を含む。
【0285】
例示的な方法は、溶融塩原子炉の溶融塩核燃料の反応度パラメータを決定する工程と、上記溶融塩核燃料の上記反応度パラメータに応じて、選択された体積の上記溶融塩核燃料を少なくとも一つの押しのけ素子で押しのけて、上記溶融塩核燃料の上記反応度を制御する工程と、を含む。
【0286】
任意の上記方法の他の例示的な方法では、上記溶融塩原子炉の溶融塩核燃料の反応度パラメータを決定する工程は、上記溶融塩核燃料の中性子生成速度、中性子吸収速度、中性子束、中性子フルエンス、温度、圧力、出力、または核分裂生成物生成速度のうち少なくとも一つを得て、溶融塩原子炉の上記溶融塩核燃料の反応度パラメータを、中性子生成速度、中性子吸収速度、中性子束、中性子フルエンス、温度、圧力、出力、または核分裂生成物生成速度のうち上記少なくとも一つに基づいて決定することにより行われる。
【0287】
任意の上記方法の他の例示的な方法では、上記溶融核燃料の反応度パラメータに応じて、選択された体積の上記溶融塩核燃料を少なくとも一つの押しのけ素子で押しのけて、上記溶融塩核燃料の上記反応度を調節する工程は、上記溶融塩原子炉の過剰反応度を示す反応度パラメータに応じて、選択された体積の上記溶融塩核燃料を少なくとも一つの押しのけ素子で押しのけて、上記溶融塩原子炉の上記反応度を減少させることにより行われる。
【0288】
任意の上記方法の他の例示的な方法では、選択された体積の上記溶融塩核燃料を少なくとも一つの押しのけ素子で押しのける工程は、少なくとも一つの押しのけ素子の少なくとも一部を駆動して上記溶融塩核燃料の中に入れることにより、選択された体積の上記溶融塩核燃料を押しのけて、上記溶融塩原子炉の上記反応度を減少させることにより行われる。
【0289】
任意の上記方法の他の例示的な方法では、選択された体積の上記溶融塩核燃料を少なくとも一つの押しのけ素子で押しのける工程は、少なくとも一つの押しのけ素子の少なくとも一部を駆動して上記溶融塩核燃料から引っ込めることにより、選択された体積の上記溶融塩核燃料を押しのけて、上記溶融塩原子炉の上記反応性を増大させることにより行われる。
【0290】
任意の上記方法の他の例示的な方法では、少なくとも一つの押しのけ素子の少なくとも一部を駆動して上記溶融塩核燃料の中に入れることにより、選択された体積の上記溶融塩核燃料を押しのける工程は、少なくとも一つの押しのけ素子の選択された量を駆動して上記溶融塩核燃料の中に入れることにより、選択された体積の上記溶融塩核燃料を押しのけることにより行われ、上記選択された量は上記決定された反応度パラメータに基づく。
【0291】
任意の上記方法の他の例示的な方法では、少なくとも一つの押しのけ素子の少なくとも一部を駆動して上記溶融塩核燃料の中に入れることにより、選択された体積の上記溶融塩核燃料を押しのける工程は、上記溶融塩原子炉の炉心部内で、少なくとも一つの押しのけ素子の少なくとも一部を駆動して、ある量の上記溶融塩核燃料に入れることにより、選択された体積の上記溶融塩核燃料を押しのけることにより行われる。
【0292】
任意の上記方法の他の例示的な方法では、上記溶融塩原子炉の炉心部内で、少なくとも一つの押しのけ素子の少なくとも一部を駆動して、ある量の上記溶融塩核燃料に入れることにより、選択された体積の上記溶融塩核燃料を押しのける工程は、少なくとも一つの押しのけ素子の少なくとも一部を駆動して、ある量の上記溶融塩核燃料に、上記溶融塩原子炉の上記炉心部の中央領域において入れることにより、選択された体積の上記溶融塩核燃料を押しのけることにより行われる。
【0293】
任意の上記方法の他の例示的な方法では、選択された体積の上記溶融塩核燃料を少なくとも一つの押しのけ素子で押しのける工程は、選択された体積の上記溶融塩核燃料を少なくとも一本の押しのけ棒で押しのけることにより行われる。
【0294】
任意の上記方法の他の例示的な方法では、選択された体積の上記溶融塩核燃料を少なくとも一本の押しのけ棒で押しのける工程は、選択された体積の上記溶融塩核燃料を少なくとも一本の中空押しのけ棒で押しのけることにより行われる。
【0295】
任意の上記方法の他の例示的な方法では、選択された体積の上記溶融塩核燃料を少なくとも一本の押しのけ棒で押しのける工程は、選択された体積の上記溶融塩核燃料を少なくとも一本の非中空押しのけ棒で押しのけることにより行われる。
【0296】
任意の上記方法の他の例示的な方法では、選択された体積の上記溶融塩核燃料を少なくとも一本の押しのけ棒で押しのける工程は、選択された体積の上記溶融塩核燃料を複数本の押しのけ棒で押しのけることにより行われる。
【0297】
任意の上記方法の他の例示的な方法では、上記少なくとも一本の押しのけ棒は、鉛またはタングステンの少なくとも一つからできている。
【0298】
任意の上記方法の他の例示的な方法では、選択された体積の上記溶融塩核燃料を少なくとも一つの押しのけ素子で押しのける工程は、選択された体積の上記溶融塩核燃料を、非中性子を実質的に吸収する物質からできている少なくとも一本の押しのけ棒で押しのけることにより行われる。
【0299】
任意の上記方法の他の例示的な方法では、選択された体積の上記溶融塩核燃料を少なくとも一つの押しのけ素子で押しのける工程は、0.1から10立方メートルの上記溶融塩核燃料を少なくとも一つの押しのけ素子で押しのけることによって行われる。
【0300】
任意の上記方法の他の例示的な方法では、溶融塩原子炉の溶融塩核燃料の反応度パラメータを決定する工程は、第一の塩化ウラン、追加の塩化ウラン、または追加の金属塩化物のうち少なくとも二つからなる混合物を含む溶融塩核燃料の反応度パラメータを決定することにより行われる。
【0301】
任意の上記方法の他の例示的な方法では、第一の塩化ウラン、追加の塩化ウラン、または追加の金属塩化物のうち少なくとも二つからなる混合物を含む溶融塩核燃料の反応度パラメータを決定する工程は、第一の塩化ウラン、追加の塩化ウラン、または追加の金属塩化物のうち少なくとも二つからなる混合物、UCl、UCl、追加の金属塩化物のうち少なくとも二つからなる混合物を含む溶融塩核燃料の反応度パラメータを決定することにより行われる。
【0302】
任意の上記方法の他の例示的な方法では、上記追加の金属塩化物は、NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、PuCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrClまたはNdClのうち少なくとも一つを含む。
【0303】
任意の上記方法の他の例示的な方法では、溶融塩核燃料の反応度パラメータを決定する工程は、モル分率で少なくとも5%のUClを有する溶融塩核燃料の反応度パラメータを決定することによって行われる。
【0304】
任意の上記方法の他の例示的な方法では、溶融塩核燃料の反応度パラメータを決定する工程は、ウラン濃度が61重量%を超える溶融塩核燃料の反応度パラメータを決定することによって行われる。
【0305】
任意の上記方法の他の例示的な方法では、溶融塩核燃料の反応度パラメータを決定する工程は、融点が330℃から800℃のあいだである溶融塩核燃料の反応度パラメータを決定することによって行われる。
【0306】
例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉は、燃料入口と燃料出口とを有する炉心部を備え、上記燃料入口と上記燃料出口とは、溶融塩核燃料を上記炉心部と溶融燃料塩交換アセンブリを通して流すよう配置されている。上記溶融燃料塩交換アセンブリは、上記炉心部と動作可能に接続され、選択された体積の上記溶融塩核燃料を選択された体積の供給物質と交換して、上記溶融塩原子炉の反応度を制御するよう構成されている。上記溶融塩核燃料は少なくともいくらかの核分裂性物質を含む。上記供給物質は少なくともいくらかの親物質を含む。
【0307】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記選択された体積の供給物質は、上記選択された体積の上記溶融塩核燃料と、体積がほとんど等しい。
【0308】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記交換かつ選択された体積の上記溶融塩核燃料は、少なくともいくらかの核分裂生成物を含む。
【0309】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記少なくともいくらかの核分裂生成物は一つまたは複数のランタニドを含む。
【0310】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記交換かつ選択された体積の上記溶融塩核燃料は担体塩を含む。
【0311】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記溶融燃料塩交換アセンブリは、使用済燃料運搬ユニットと、供給燃料補給ユニットとを備える。上記使用済燃料運搬ユニットは、上記炉心部と流体的に接続されており、選択された体積の上記溶融塩燃料を上記炉心部から貯蔵部へ運ぶよう構成されている。供給燃料補給ユニットは、上記炉心部と流体的に接続されており、少なくともいくらかの親物質を含む選択された体積の供給物質を供給物質源から炉心部へ運ぶように構成されている。
【0312】
任意の上記原子炉の他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉はコントローラを備え、上記コントローラは、上記使用済燃料ユニットに選択的に命じて、選択された体積の上記溶融塩燃料を上記炉心部から貯蔵部へ運ばせ、供給燃料補給ユニットに選択的に命じて、少なくともいくらかの親物質を含む供給物質を供給物質源から上記炉心部の一部へ運ばせるよう構成されている。
【0313】
任意の上記原子炉の他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉は、上記溶融塩核燃料の少なくとも一つの反応度パラメータを検知するよう構成された反応度パラメータセンサを備えており、上記反応度パラメータセンサは上記コントローラと通信可能に接続されている。
【0314】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記コントローラは、上記使用済運搬ユニットに選択的に命じて、選択された体積の上記溶融塩燃料を上記炉心部から貯蔵部へ運ばせるよう構成されている。さらに、上記コントローラは、上記溶融塩核燃料の少なくとも一つの検知された反応度パラメータに応じて、上記供給燃料補給ユニットに選択的に命じて、少なくともいくらかの親物質を含む供給物質を供給物質源から上記炉心部の一部へ運ばせるよう構成されている。
【0315】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記反応度パラメータセンサは、核分裂検出器、中性子束モニタ、中性子フルエンスセンサ、核分裂生成物センサ、温度センサ、圧力センサ、または出力センサのうち少なくとも一つを含む。
【0316】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記貯蔵部は、少なくとも一つの保存貯蔵部を含む。
【0317】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記貯蔵部は、少なくとも一つの第二世代溶融塩原子炉を有する。
【0318】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記供給物質の上記少なくともいくらかの親物質は、少なくとも一つの親燃料塩を含む。
【0319】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記少なくとも一つの親燃料塩は、劣化ウラン、天然ウラン、またはトリウムの少なくとも一つを含む塩を含む。
【0320】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記少なくとも一つの親燃料塩は、使用済核燃料に由来する少なくとも一つの金属を含む塩を含む。
【0321】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記溶融塩核燃料は、少なくとも第一の塩化ウラン、第二の塩化ウラン、および追加の金属塩化物からなる混合物を含む。
【0322】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記追加の金属塩化物は、NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、PuCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrClまたはNdClのうち少なくとも一つを含む。
【0323】
任意の上記原子炉の他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記第一の塩化ウランと上記第二の塩化ウランの少なくとも一つは、UClまたはUClの少なくとも一つを含む。
【0324】
任意の上記原子炉の他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記溶融塩核燃料は82UCl-18UClの組成を有する。
【0325】
任意の上記原子炉の他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記溶融塩核燃料は17UCl-71UCl-12NaClの組成を有する。
【0326】
任意の上記原子炉の他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記溶融塩核燃料は50UCl-50NaClの組成を有する。
【0327】
任意の上記原子炉の他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記溶融塩核燃料は34UCl-66NaClの組成を有する。
【0328】
任意の上記原子炉の他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、少なくとも第一の塩化ウラン、第二の塩化ウラン、および追加の金属塩化物からなる上記混合物は、モル分率が少なくとも5%のUClを含む。
【0329】
任意の上記原子炉の他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、少なくとも第一の塩化ウラン、第二の塩化ウラン、および追加の金属塩化物からなる上記混合物は、ウラン濃度が61重量%より大きい。
【0330】
任意の上記原子炉の他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、少なくとも第一塩の化ウラン、第二の塩化ウラン、および追加の金属塩化物からなる上記混合物は、融点が330℃から800℃のあいだである。
【0331】
任意の上記原子炉の他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉において、上記溶融塩核燃料は少なくとも一つのフッ化ウランと追加の金属フッ化物との混合物を含む。
【0332】
任意の上記原子炉の他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉は、希ガスを上記溶融塩化物核燃料から除去するよう構成されたガス散布ユニットを備える。
【0333】
任意の上記原子炉の他の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉は、貴金属または準貴金属の少なくとも一つを上記溶融塩核燃料から除去するよう構成されたフィルタユニットを備える。
【0334】
例示的な方法は、溶融塩核燃料を含む溶融塩高速スペクトル原子炉を運転させる工程と、選択された体積の上記溶融塩核燃料を選択された体積の供給物質と交換して、上記溶融塩原子炉の反応度を制御する工程と、を含む。上記溶融塩核燃料は、少なくともいくらかの核分裂性物質を含む。上記供給物質は、少なくともいくらかの親物質を含む。
【0335】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、選択された体積の上記溶融塩核燃料を選択された体積の供給物質と交換する工程を、選択された体積の上記溶融塩核燃料を、上記溶融塩核燃料の上記選択された体積と体積が等しい、選択された体積の供給物質と交換することによって行う。
【0336】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、選択された体積の上記溶融塩核燃料を選択された体積の供給物質と交換する工程を、少なくともいくらかの核分裂生成物を含む、選択された体積の上記溶融塩核燃料を選択された体積の供給物質と交換することにより行う。
【0337】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、少なくともいくらかの核分裂生成物を含む、選択された体積の上記溶融塩核燃料を選択された体積の供給物質と交換する工程を、一つまたは複数のランタニドを含む、選択された体積の上記溶融塩核燃料を選択された体積の供給物質と交換することにより行う。
【0338】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、選択された体積の上記溶融塩核燃料を選択された体積の供給物質と交換する工程を、担体塩を含む、選択された体積の上記溶融塩核燃料を選択された体積の供給物質と交換することにより行う。
【0339】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、選択された体積の上記溶融塩核燃料を選択された体積の供給物質と交換して、上記溶融塩原子炉の反応度を制御する工程を、選択された体積の上記溶融塩核燃料を選択された体積の供給物質と交換して、溶融塩原子炉の上記溶融塩核燃料の上記反応度を維持することにより行う。
【0340】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法は、上記溶融塩高速スペクトル原子炉の上記溶融塩核燃料の反応度パラメータを測定する工程を含む。
【0341】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、選択された体積の上記溶融塩核燃料を選択された体積の供給物質と交換して、上記溶融塩原子炉の反応度を制御する工程を、上記溶融塩核燃料の上記測定された反応度パラメータに応じて、選択された体積の上記溶融塩核燃料を選択された体積の供給物質と交換して、上記溶融塩原子炉の上記反応度を制御することにより行う。
【0342】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、上記溶融塩高速スペクトル原子炉の上記溶融塩核燃料の反応度パラメータを測定する工程を、上記溶融塩高速スペクトル原子炉の上記溶融塩核燃料の中性子生成速度、中性子吸収速度、中性子束、中性子フルエンス、温度、圧力、出力、または核分裂生成物生成速度のうち少なくとも一つを測定することで行う。
【0343】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、選択された体積の上記溶融塩核燃料を選択された体積の供給物質と交換して、上記溶融塩原子炉の反応度を制御する工程を、選択された体積の上記溶融塩核燃料を選択された体積の供給物質と絶えず交換して、上記溶融塩原子炉の反応度を制御することにより行う。
【0344】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、選択された体積の上記溶融塩核燃料を選択された体積の供給物質と交換して、上記溶融塩原子炉の反応度を制御する工程を、選択されたバッチ体積の上記溶融塩核燃料を選択された体積の供給物質と繰り返し交換して、上記溶融塩原子炉の反応度を制御することにより行う。
【0345】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、選択された体積の上記溶融塩核燃料を選択された体積の供給物質と交換して、上記溶融塩原子炉の反応度を制御する(上記溶融塩核燃料は少なくともいくらかの核分裂物質を含み、上記供給物質はすくなくともいくらかの親物質を含んでいる)工程を、選択された体積の上記溶融塩核燃料を上記高速スペクトル溶融塩原子炉から除去し(除去かつ選択された体積の溶融塩核燃料は、少なくともいくらかの核分裂物質を含む)、選択された体積の供給物質を上記高速スペクトル溶融塩原子炉に供給する(供給かつ選択された体積の供給物質は、少なくともいくらかの親物質を含む)ことにより行う。
【0346】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、上記選択された体積の供給物質を補給する速度は、親物質を溶融塩原子炉内に添加する速度に合うように選択されるか、あるいは溶融塩原子炉内で核分裂性物質が燃焼する速度に合うように選択される。
【0347】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、上記除去かつ選択された体積の溶融塩核燃料は、核分裂生成物、親物質、または担体塩の少なくとも一つをさらに含む。
【0348】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、上記供給物質の少なくともいくらかの親物質は、少なくとも一つの親燃料塩を含む。
【0349】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、上記少なくとも一つの親燃料塩は、劣化ウラン、天然ウラン、またはトリウムのうち少なくとも一つを含む塩を含む。
【0350】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、上記少なくとも一つの親燃料塩は、使用済核燃料に由来する少なくとも一つの金属を含む塩を含む。
【0351】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、上記少なくとも一つの親燃料塩は、上記溶融塩原子炉燃料の化学的組成を維持している。
【0352】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法は、ガス散布プロセスにより、上記溶融塩核燃料から希ガスを除去する工程を含む。
【0353】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法は、メッキプロセスにより、上記溶融塩核燃料から貴金属または準貴金属の少なくとも一つを除去する工程を含む。
【0354】
例示的なシステムは、溶融塩核燃料を含む少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉と、少なくとも一つの第二世代溶融塩原子炉と、ある量の溶融塩核燃料を上記少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉から上記少なくとも一つの第二世代溶融塩原子炉へと運ぶよう構成されている溶融塩運搬ユニットと、を含む。上記ある量の溶融塩核燃料は、上記少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉で濃縮された少なくともいくらかの核分裂性物質を含む。
【0355】
上述の任意のシステムのうち別の例示的システムでは、上記ある量の溶融塩核燃料は、上記少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉で濃縮された少なくともいくらかの核分裂性物質を含んでおり、それによって上記少なくとも一つの第二世代溶融塩原子炉で臨界に達する。
【0356】
上述の任意のシステムのうち別の例示的システムでは、上記ある量の溶融塩核燃料は、上記少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉で濃縮された少なくともいくらかの核分裂性物質を含んでおり、それによって、上記少なくとも一つの第二世代溶融原子炉のある量の溶融塩核燃料の濃縮なしに、上記少なくとも一つの第二世代溶融原子炉で臨界に達する。
【0357】
上述の任意のシステムのうち別の例示的システムでは、上記少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉は動作して、少なくともいくらかのウランを濃縮し、上記少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉内にPu-239を生成する。
【0358】
上述の任意のシステムのうち別の例示的システムでは、上記少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉から上記少なくとも一つの第二世代溶融塩原子炉へと運ばれる上記ある量の溶融塩核燃料は、上記少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉内で生成されたPu-239を含む。
【0359】
上述の任意のシステムのうち別の例示的システムでは、上記溶融塩運搬ユニットは、上記少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉からの上記ある量の溶融塩核燃料から一つまたは複数の核分裂生成物を除去するよう構成された核分裂生成物除去システムを有する。
【0360】
上述の任意のシステムのうち別の例示的システムでは、上記少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉は、複数の第一世代溶融塩原子炉を含む。
【0361】
上述の任意のシステムのうち別の例示的システムでは、上記少なくとも一つの第二世代溶融塩原子炉は、複数の第二世代溶融塩原子炉を含む。
【0362】
上述の任意のシステムのうち別の例示的システムでは、上記少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉の上記溶融塩核燃料は、第一の塩化ウラン、第二の塩化ウラン、または追加の金属塩化物のうち少なくとも二つからなる混合物を含む。
【0363】
上述の任意のシステムのうち別の例示的システムでは、上記追加の金属塩化物は、NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、PuCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrClまたはNdClのうち少なくとも一つを含む。
【0364】
上述の任意のシステムのうち別の例示的システムでは、上記第一の塩化ウランと上記第二の塩化ウランの少なくとも一つは、UClまたはUClの少なくとも一つを含む。
【0365】
上述の任意のシステムのうち別の例示的システムでは、上記溶融塩核燃料は82UCl-18UClの組成を有する。
【0366】
上述の任意のシステムのうち別の例示的システムでは、上記溶融塩核燃料は17UCl-71UCl-12NaClの組成を有する。
【0367】
上述の任意のシステムのうち別の例示的システムでは、上記溶融塩核燃料は50UCl-50NaClの組成を有する。
【0368】
上述の任意のシステムのうち別の例示的システムでは、上記溶融塩核燃料は34UCl-66NaClの組成を有する。
【0369】
上述の任意のシステムのうち別の例示的システムでは、第一の塩化ウラン、第二の塩化ウラン、または追加の金属塩化物のうち少なくとも二つからなる上記混合物は、モル分率が少なくとも5%のUClを含む。
【0370】
上述の任意のシステムのうち別の例示的システムでは、第一の塩化ウラン、第二の塩化ウラン、または追加の金属塩化物のうち少なくとも二つからなる上記混合物は、ウラン濃度が61重量%より大きい。
【0371】
上述の任意のシステムのうち別の例示的システムでは、第一の塩化ウラン、第二の塩化ウラン、または追加の金属塩化物のうち少なくとも二つからなる上記混合物は、融点が330℃から800℃のあいだである。
【0372】
上述の任意のシステムのうち別の例示的システムでは、上記少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉の上記溶融塩核燃料は、少なくとも一つのフッ化ウランと追加の金属塩化物とからなる混合物を含む。
【0373】
例示的な方法は、少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉の溶融塩核燃料の少なくとも一部を濃縮する工程と、上記少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉からある量の上記濃縮溶融塩核燃料を除去する工程と、上記除去されたある量の溶融塩核燃料の少なくとも一部を、上記少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉から少なくとも一つの第二世代溶融塩原子炉へと供給する工程と、を含む。
【0374】
上述の任意の方法のうち別の例示的な方法では、少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉の溶融塩核燃料の少なくとも一部を濃縮する工程は、上記少なくとも一つの第二世代溶融原子炉の臨界に達するように、少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉の溶融塩核燃料の少なくとも一部を濃縮することによって行う。
【0375】
上述の任意の方法のうち別の例示的な方法では、上記少なくとも一つの第二世代溶融原子炉の臨界に達するように、少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉の溶融塩核燃料の少なくとも一部を濃縮する工程は、上記少なくとも一つの第二世代溶融原子炉の上記ある量の溶融塩核燃料を濃縮することなしに、上記少なくとも一つの第二世代溶融原子炉の臨界に達するように、少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉の溶融塩核燃料の少なくとも一部を濃縮することによって行う。
【0376】
上述の任意の方法のうち別の例示的な方法では、少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉の溶融塩核燃料の少なくとも一部を濃縮する工程は、上記少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉のある量の上記溶融塩核燃料中の少なくともいくらかのウランを濃縮してPu-239を生成することによって行う。
【0377】
上述の任意の方法のうち別の例示的な方法では、上記少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉から除去した上記ある量の溶融塩核燃料の少なくとも一部から、一つまたは複数の核分裂生成物を除去する工程を含む。
【0378】
上述の任意の方法のうち別の例示的な方法では、上記除去されたある量の溶融塩核燃料の少なくとも一部を、上記少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉から少なくとも一つの第二世代溶融塩原子炉へと供給する工程は、上記除去されたある量の溶融塩核燃料の一部を、上記少なくとも一つの第一世代高速スペクトル溶融塩核燃料から少なくとも一つの第二世代溶融塩原子炉へと供給し、上記除去されたある量の溶融塩核燃料の少なくとも一つの別の部分を、上記少なくとも一つの第一世代高速スペクトル溶融塩核燃料から少なくとも一つの別の第二世代溶融塩原子炉へと供給することによって行う。
【0379】
上述の任意の方法のうち別の例示的な方法では、上記少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉からある量の上記濃縮溶融塩核燃料を除去する工程は、少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉からある量の溶融塩核燃料を除去して、上記少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉の反応度を制御することによって行う。
【0380】
上述の任意の方法のうち別の例示的な方法では、上記少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉からある量の上記濃縮溶融塩核燃料を除去する工程は、上記少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉からある量の上記濃縮溶融塩核燃料を絶えず除去することによって行う。
【0381】
上述の任意の方法のうち別の例示的な方法では、上記少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉からある量の上記濃縮溶融塩核燃料を除去する工程は、上記少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉から、ある量の上記濃縮溶融塩核燃料のうち選択されたバッチを繰り返し除去することによって行う。
【0382】
上述の任意の方法のうち別の例示的な方法は、選択された体積の供給物質を上記少なくとも一つの第一世代溶融塩原子炉に供給する工程を含み、上記供給物質は少なくともいくらかの親物質を含む。
【0383】
上述の任意の方法のうち別の例示的な方法では、上記供給物質のうち上記少なくともいくらかの親物質は、少なくとも一つの親燃料塩を含む。
【0384】
上述の任意の方法のうち別の例示的な方法では、上記少なくとも一つの親燃料塩は、劣化ウラン、天然ウラン、またはトリウムのうち少なくとも一つを含む塩を含む。
【0385】
上述の任意の方法のうち別の例示的な方法では、上記少なくとも一つの親燃料塩は、使用済核燃料に由来する少なくとも一つの金属を含む塩を含む。
【0386】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、上記少なくとも一つの親燃料塩は、上記溶融塩原子炉燃料の化学的組成を維持している。上述の任意の方法のうち別の例示的な方法は、選択された体積の供給物質を上記少なくとも一つの第二世代溶融塩原子炉に供給する工程を含み、上記供給物質は少なくともいくらかの親物質を含む。
【0387】
例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉は、燃料入口と燃料出口とを有する炉心部を備える。上記燃料入口と上記燃料出口は、溶融塩化物核燃料を上記炉心部を通して流すよう配置されている。上記溶融塩化物核燃料は、UClと追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物の少なくとも一つの混合物とを含み、上記UClと少なくとも一つの追加の金属塩化物との混合物は、UCl含有量がモル分率で5%より大きい。
【0388】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記UClと少なくとも一つの追加の金属塩化物との混合物中のウラン濃度は61重量%より大きい。
【0389】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記追加の塩化ウランはUClを含む。
【0390】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記UClと追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物の少なくとも一つとの混合物は、82UCl-18UClの組成を有している。
【0391】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記UClと追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物の少なくとも一つとの混合物は、17UCl-71UCl-12NaClの組成を有している。
【0392】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記UClと追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物の少なくとも一つとの混合物は、50UCl-50NaClの組成を有している。
【0393】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記UClと追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物の少なくとも一つとの混合物は、追加の金属塩化物濃度が、上記追加の塩化物の沈殿濃度以下である。
【0394】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記UClと追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物の少なくとも一つとの混合物は、溶融温度が800℃未満である。
【0395】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、上記選択された溶融温度が330℃を超える。
【0396】
上述の任意の原子炉のうち別の例示的な高速スペクトル溶融塩原子炉では、ウラニウム・プルトニウムサイクルを有する溶融塩化物核燃料内で増殖燃焼反応が行われる。
【0397】
高速スペクトル溶融塩原子炉に燃料を供給する例示的な方法は、ある量のUClを供給する工程と、追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物のうち少なくとも一つをある量供給する工程と、上記ある量のUClを追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物のうち上記少なくとも一つの上記ある量と混合して、UCl含有量がモル分率で5%より大きい溶融塩化物核燃料を作る工程と、上記UCl4含有量がモル分率で5%より大きい溶融塩化物核燃料を上記高速スペクトル溶融塩原子炉の少なくとも一つの炉心部に供給する工程と、を含む。
【0398】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法は、UClのある量を供給することにより、追加の塩化ウランまたは追加の金属塩化物のうち少なくとも一つのある量を供給する工程を含む。
【0399】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、上記UCl中の上記塩素は37Clで濃縮されている。
【0400】
上述の任意の方法のうち別の例示的方法では、上記塩中の塩素は少なくとも75%37Clまで濃縮されている。
【0401】
上述の明細書、実施例、データは、本発明の例示的な実施の構造および使用の完全な説明を提供するものである。本発明の多くの実施は本発明の精神および範囲から離れることなしに行うことができるので、本発明は以下に添付する請求項の中にある。さらに、異なる実施の構造的特徴をまとめて、請求項から離れることなしに、さらに別の実施としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0402】
図1】MCFR親炉とMCFR子炉を有する溶融塩化物高速原子炉(MCFR)燃料サイクルの一例を示す概略図である。
図2】溶融燃料塩から溶融燃料を周期的に除去して溶融親燃料供給物と交換すること(溶融燃料塩交換と称する)に由来するMCFR反応度制御の一例を示す。
図3】溶融燃料塩交換アセンブリを備えたMCFRシステムの一例を示す。
図4】原子炉の溶融燃料塩を親燃料塩と周期的に交換することで制御される溶融塩原子炉において、炉心のモデル化されたkeff値と重金属(HM)燃料の燃焼度の総パーセントの、時間に対するグラフを示す。
図5】原子炉燃焼速度に合う速度で劣化ウランが供給されるモデル化溶融塩原子炉における、keff対時間のグラフを示す。
図6】供給物質を加えずランタニドを除去しない溶融塩原子炉における、keffを時間の関数として記したグラフを示す。
図7】溶融燃料塩交換アセンブリを備えたMCFRシステムの代替例を示す。
図8】UCl-UCl-NaCl(モル%)の例示的な三元状態図を示す。
図9】溶融燃料塩交換プロセスの例示的な動作を示す。
図10】押しのけ素子アセンブリを備えた溶融塩原子炉を示す。
図11】押しのけ素子アセンブリと溶融燃料塩溢出システムを備え、押しのけ素子が溶融燃料塩の中に沈んでいない状態にある、溶融塩原子炉を示す。
図12】押しのけ素子アセンブリと溶融燃料塩溢出システムを備え、押しのけ素子が溶融燃料塩の中に沈んでいる状態にある、溶融塩原子炉を示す。
図13】燃料押しのけサイクルのさまざまな例示的なステージを示す。
図14】燃料押しのけサイクルの二つの例示的なステージを示す。
図15】溶融燃料塩押しのけプロセスの例示的な動作を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15