(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】サイフォン雨樋システム
(51)【国際特許分類】
E04D 13/08 20060101AFI20220419BHJP
E04D 13/068 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
E04D13/08 B
E04D13/068 503A
E04D13/068 504A
E04D13/068 504C
E04D13/068 503Z
(21)【出願番号】P 2018023365
(22)【出願日】2018-02-13
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】元 隆明
(72)【発明者】
【氏名】寺地 信治
(72)【発明者】
【氏名】田中 将成
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第202248580(CN,U)
【文献】特開2010-013843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/04-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軒樋と、
前記軒樋の端部が連結された漏斗と、
前記漏斗に固定された第1エルボ継手と、
前記第1エルボ継手に固定された呼び樋と、
前記呼び樋に固定された第2エルボ継手と、
前記第2エルボ継手に固定された竪樋と、を備えるサイフォン雨樋システムであって、
一の前記軒樋の両端部に2つの前記漏斗が連結され、
2つの前記漏斗の間の一の前記軒樋の長さは30m以下であり、
前記呼び樋の水平方向の距離は1.5m以下であり、
前記竪樋の上下方向の長さは3m以上であり、
前記漏斗は、
水平方向に延び端部が
前記軒樋に連結される本体部と、
前記本体部の底壁部に形成された落し口から下方に延びる垂下筒部と、
前記本体部の平面視において前記落し口に重なる網部材と、を備え、
前記垂下筒部は、
前記底壁部における前記落し口の開口周縁部に連なる大径部と、
前記大径部の下端部に連なり、下方に向かうに従い縮径する縮径部と、
前記縮径部の下端部に連なる小径部と、
前記大径部と前記縮径部とを接続する第1接続部と、
前記縮径部と前記小径部とを接続する第2接続部と、を備え、
前記垂下筒部の軸線を含む縦断面において、前記第2接続部が、前記垂下筒部の径方向の内側に向けて凸をなす曲線状に形成され、
前記網部材の前記平面視における開口率は、50%以上99%以下である
サイフォン雨樋システム。
【請求項2】
軒樋と、
前記軒樋の端部が連結された漏斗と、
前記漏斗に固定された第1エルボ継手と、
前記第1エルボ継手に固定された呼び樋と、
前記呼び樋に固定された第2エルボ継手と、
前記第2エルボ継手に固定された竪樋と、を備えるサイフォン雨樋システムであって、
一の前記軒樋の一方の端部に前記漏斗が連結され、他方の端部に前記漏斗が連結されておらず、
一の前記軒樋の他方の端部から前記漏斗までの距離が15m以下であり、
前記呼び樋の水平方向の距離は1.5m以下であり、
前記竪樋の上下方向の長さは3m以上であり、
前記漏斗は、
水平方向に延び端部が
前記軒樋に連結される本体部と、
前記本体部の底壁部に形成された落し口から下方に延びる垂下筒部と、
前記本体部の平面視において前記落し口に重なる網部材と、を備え、
前記垂下筒部は、
前記底壁部における前記落し口の開口周縁部に連なる大径部と、
前記大径部の下端部に連なり、下方に向かうに従い縮径する縮径部と、
前記縮径部の下端部に連なる小径部と、
前記大径部と前記縮径部とを接続する第1接続部と、
前記縮径部と前記小径部とを接続する第2接続部と、を備え、
前記垂下筒部の軸線を含む縦断面において、前記第2接続部が、前記垂下筒部の径方向の内側に向けて凸をなす曲線状に形成され、
前記網部材の前記平面視における開口率は、50%以上99%以下である
サイフォン雨樋システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏斗及びサイフォン雨樋システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建築物には、屋根から流れ落ちる雨水を受け止め、地上へと流し込むための雨樋が設けられる。雨樋は、軒樋、漏斗(じょうご、集水器)、呼び樋、竪樋、連結管、エルボ継手、チーズ継手等の部材が複数組みあわされて構成される。近年、雨樋の排水能力を高めるために、竪樋の内部を満水状態にすることによって、水の吸引作用(いわゆる、サイフォン現象)を発生させ、排水量を飛躍的に増大させるサイフォン雨樋システムが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されたサイフォン式雨水排水装置では、軒先に取付けられた軒樋の底部に、サイフォン管の上端が接続される。このサイフォン管は、家屋の外壁材に沿って上下方向に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のサイフォン式雨水排水装置では、排水装置の内部を流れる雨水が流れる速度が低下すると、サイフォン現象による充分な排水能力を発揮することが困難になる。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、サイフォン現象による充分な排水能力を発揮しやすくした漏斗、及びこの漏斗を備えるサイフォン式雨水排水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の一態様に係る漏斗は、水平方向に延び端部が軒樋に連結される本体部と、前記本体部の底壁部に形成された落し口から下方に延びる垂下筒部と、前記本体部の平面視において前記落し口に重なる網部材と、を備え、前記垂下筒部は、前記底壁部における前記落し口の開口周縁部に連なる大径部と、前記大径部の下端部に連なり、下方に向かうに従い縮径する縮径部と、前記縮径部の下端部に連なる小径部と、前記大径部と前記縮径部とを接続する第1接続部と、前記縮径部と前記小径部とを接続する第2接続部と、を備え、前記垂下筒部の軸線を含む縦断面において、前記第2接続部が、前記垂下筒部の径方向の内側に向けて凸をなす曲線状に形成され、前記網部材の前記平面視における開口率は、50%以上99%以下である。
【0008】
漏斗の本体部から落し口を通して垂下筒部内に流れ込んだ雨水は、大径部、第1接続部、縮径部および第2接続部を通して小径部に流れ込む。この漏斗では、第2接続部が、前記縦断面において、径方向の内側に向けて凸をなす曲線状に形成されている。そのため、例えば、第2接続部が、前記縦断面において、径方向の内側に向けて凸をなす角形状に形成されている場合などに比べて、第2接続部内を流れる雨水の流れの変化が緩やかになる。このため、例えば、第2接続部内を流れる雨水に圧力損失が生じることが抑えられ、第2接続部内を流れる雨水の速度が低下しにくくなる。従って、サイフォン現象による充分な排水能力を漏斗が発揮しやすくすることができる。
ところで、サイフォン現象による排水能力が発揮されると、例えば、本体部内の異物(例えば、落ち葉など)が、雨水とともに落し口から垂下筒部内に流入し、垂下筒部を通過するおそれがある。この漏斗では、網部材が、前記平面視において落し口に重なる。これにより、異物が垂下筒部を通過することを網部材によって規制することができる。
しかもこの漏斗では、網部材の前記平面視における開口率が50%以上99%以下である。したがって、異物が垂下筒部を通過することを確実に規制しつつ、サイフォン現象による排水能力も確実に発揮させることができる。すなわち、前記開口率が50%より小さいと、網部材の前記平面視における開口面積が小さくなりすぎ、サイフォン現象による排水能力が発揮し難くなるおそれがある。一方、前記開口率が99%より大きいと、網部材の前記平面視における開口面積が大きくなりすぎ、異物が垂下筒部を通過することを規制し難くなるおそれがある。
【0009】
前記縦断面において、前記第1接続部が、前記径方向の外側に向けて凸をなす曲線状に形成されていてもよい。
【0010】
前記縦断面において、第1接続部が、径方向の外側に向けて凸をなす曲線状に形成されている。したがって、例えば、第1接続部が、前記縦断面において、径方向の内側に向けて凸をなす角形状に形成されている場合などに比べて、第1接続部内を流れる雨水の流れの変化が緩やかになり、第1接続部内に渦等が生じにくくなる。これにより、例えば、第1接続部内を流れる雨水に圧力損失が生じるのが抑えられ、漏斗が、サイフォン現象による充分な排水能力をさらに発揮させやすくすることができる。
また、前記縦断面において、第1接続部が、径方向の外側に向けて凸をなす曲線状に形成されていることで、漏斗が外力を受けても第1接続部に応力が集中しにくくなり、この第1接続部が破断し難くなる。
【0011】
本発明の一態様に係るサイフォン雨樋システムは、前記漏斗を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サイフォン現象による充分な排水能力を発揮しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態のサイフォン式雨水排水装置を、その一部を破断して側面視した図である。
【
図3】
図1における本体部のうち網部材を含む部分の平面図である。
【
図5】検証試験に利用する試験装置を説明する側面図である。
【
図6】検証試験における条件および結果を示す表およびグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るサイフォン雨樋システムの一実施形態を、
図1から
図7を参照しながら説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態のサイフォン雨樋システム1は、軒樋11と、本実施形態の漏斗16と、第1エルボ継手36と、呼び樋41と、第2エルボ継手46と、竪樋56と、を備えている。なお、
図2では、説明の便宜のために、漏斗16に対して第1エルボ継手36及び呼び樋41が取付けられる向きを、上下方向D1に沿う軸線周りに90°回転させて示している。
【0015】
軒樋11は、図示しない建築物の屋根の軒下に固定されている。軒樋11は、上方に向かって開口している。軒樋11は、ほぼ水平面に沿って配置されている。軒樋11は、漏斗16に連結される端部が漏斗16に連結されない端部よりも下方に位置し、軒樋11が水勾配(例えば、1/300)程度傾くように配置されている。なお、サイフォン雨樋システム1に漏斗16が複数設けられる場合には、漏斗16の間の軒樋11の長さは30m以下とされる。また、サイフォン雨樋システム1に漏斗16が1つ設けられる場合には、軒樋11の端部(止り)から漏斗16までの距離が15m以下とされる。
漏斗16は、軒樋11と竪樋56とを、第1エルボ継手36、呼び樋41、及び第2エルボ継手46を介して接続している。漏斗16は、本体部17と、垂下筒部18と、網部材50と、を備えている。
本体部17は、水平方向(後述する延在方向D2)に延び端部が軒樋11に連結される。本体部17は、底壁部24と、側壁部25,26と、を備えている。底壁部24は、厚さ方向が上下方向D1に沿うように配置されている。底壁部24は、屋根の外縁部に沿う延在方向D2に沿って延びている。延在方向D2は、水平面に沿う方向である。
底壁部24の中央部には、底壁部24を上下方向D1に貫通する貫通孔である落し口24aが形成されている。落し口24aは、平面視において円形状や楕円形状に限られるものではなく、例えば、四角形状(例えば、正方形状や長方形状)等であってもよい。
【0016】
側壁部25,26は、底壁部24における、上下方向D1及び延在方向D2にそれぞれ直交する幅方向D3の端部にそれぞれ立設している。側壁部25,26は、底壁部24の延在方向D2の全長にわたって形成されている。側壁部25,26間の距離は、上方に向かうに従い漸次大きくなる。
底壁部24及び側壁部25,26により、本体部17に上方が開口した凹部17aが形成されている。凹部17aは、延在方向D2に延びるように形成されている。
図2に示すように、本体部17の延在方向D2の両端部内には、軒樋11が配置されている。本体部17の端部内に軒樋11が配置されていることにより、本体部17と軒樋11とが連結されている。この例では、軒樋11は本体部17に固定されていない。このため、軒樋11の伸縮等により、本体部17に対して軒樋11が延在方向D2に移動できる。
【0017】
図2に示すように、垂下筒部18は、落し口24aから下方に延びる。垂下筒部18は、大径筒部19(大径部)と、縮径部20と、小径筒部21(小径部)と、第1接続部29と、第2接続部30と、を備えている。
本実施形態では、縮径部20は円環状に形成され、大径筒部19及び小径筒部21はそれぞれ円筒状に形成されている。縮径部20及び筒部19,21の軸線は、共通軸と同軸に配置されている。以下、この共通軸を軸線O(垂下筒部18の軸線)と言う。軸線O方向から見た平面視において、軸線Oに直交する方向を径方向といい、軸線O周りに周回する方向を周方向という。
【0018】
大径筒部19の上端部は、底壁部24における落し口24aの開口周縁部に連なっている。大径筒部19は、本体部17から下方に向かって延びている。
縮径部20は、大径筒部19の下端部に連なり、下方に向かうに従い縮径する。縮径部20は、下方に向かうに従い漸次、内径及び外径がそれぞれ小さくなるように形成されている。縮径部20の上端部は、大径筒部19の下端部に連なり、縮径部20は、大径筒部19から下方に向かって延びている。
第1接続部29は、大径筒部19と縮径部20との接続部分である。軸線Oを含む断面S1(縦断面)において、第1接続部29は、径方向の外側に向けて凸をなす曲線状に形成されている。断面S1において、第1接続部29の内周面は、外側(軸線Oとは反対側)に向かって凹むように湾曲している。断面S1において、第1接続部29の外周面は、外側に向かって凸となるように湾曲している。第1接続部29の内周面は、大径筒部19の内周面、及び縮径部20の内周面にそれぞれ滑らかに連なっていることが好ましい。
【0019】
小径筒部21は、縮径部20の下端部に連なる。小径筒部21の外径、内径は、大径筒部19の外径、内径よりもそれぞれ小さく形成されている。小径筒部21の上端部は縮径部20の下端部に連なり、小径筒部21は縮径部20から下方に向かって延びている。
第2接続部30は、縮径部20と小径筒部21との接続部分である。断面S1において、第2接続部30は、径方向の内側に向けて凸をなす曲線状に形成されている。断面S1において、第2接続部30の内周面は、内側(軸線O側)に向かって凸となるように湾曲している。断面S1において、第2接続部30の外周面は、内側に向かって凹むように湾曲している。第2接続部30の内周面は、縮径部20の内周面、及び小径筒部21の内周面にそれぞれ滑らかに連なっていることが好ましい。
【0020】
網部材50は、本体部17内の異物が垂下筒部18内を通過して漏斗16の下流側(竪樋56)に到達することを規制する。
図3に示すように、網部材50は、本体部17の平面視において落し口24aに重なる。ここで、本体部17の平面視は、本体部17を、軸線O方向から見た平面視を意味する。言い換えると、本体部17の平面視は、排水勾配の有無によらず一定の見方であり、本体部17を、底壁部24に対して略直交する方向から見る見方を意味する。
【0021】
本実施形態では、網部材50は、本体部17内に配置され、かつ、本体部17の平面視において落し口24aの全体に重なる。その結果、網部材50は、本体部17内の異物が垂下筒部18内に進入することを規制する。なお網部材50が、垂下筒部18内に配置され、かつ、本体部17の平面視において落し口24aの全体または一部に重なっていてもよい。
【0022】
網部材50は、複数の線状部60によって一体に形成されている。なお複数の線状部60全体(網部材50)は、同一の材料(例えば合成樹脂)により一体成型される。
図2に示すように、網部材50は、全体として有頂筒状に形成されている。網部材50は、軸線Oと同軸に配置されている。網部材50は、頂壁部51と、周壁部52と、を備えている。
【0023】
頂壁部51は、上方に向けて凸をなす球面状に形成されている。
図3に示すように、頂壁部51は、落し口24aよりも大径である。頂壁部51は、複数の線状部60により形成されている。頂壁部51は、線状部60として、第1線状部61aと、第2線状部61bと、第3線状部61cと、を備えている。
【0024】
第1線状部61aは、頂壁部51の外周縁を形成している。第1線状部61aは、円環状に形成されている。
第2線状部61bおよび第3線状部61cは、前記平面視において、第1線状部61aの内側に配置されている。第2線状部61bおよび第3線状部61cは、前記平面視において互いに直交する2方向に延びている。第2線状部61bおよび第3線状部61cは、前記平面視において、第1線状部61aの内側に格子状の網目を形成している。
【0025】
前記平面視において、第1線状部61a、第2線状部61bおよび第3線状部61cの間に位置する部分には、第1開口部61dが形成されている。第1開口部61dは、頂壁部51に形成された開口部である。第1開口部61dは、上下方向D1(軸線O方向)に開口する。前記平面視において、第1開口部61dは、四角形状(矩形状)に形成されている。
【0026】
図2に示すように、周壁部52は、頂壁部51の外周縁(第1線状部61a)から下方に向けて延びる。周壁部52の下端部は、本体部17の底壁部24上に配置される。周壁部52は、複数の線状部60により形成されている。周壁部52は、線状部60として、第4線状部62aを備えている。第4線状部62aは、周方向に間隔をあけて複数配置されている。第4線状部62aは、上下方向D1(軸線O方向)に真直に延びている。第4線状部62aは、第2線状部61bまたは第3線状部61cの端部と周方向に対応する位置に配置されている。
【0027】
周方向に隣り合う第4線状部62aの間に位置する部分には、第2開口部62dが形成されている。第2開口部62dは、周壁部52に形成された開口部である。第2開口部62dは、径方向に開口する。
なお
図3に示すように、周壁部52の下端部には、フランジ部53が設けられている。フランジ部53は、周壁部52から径方向の外側に向けて突出している。フランジ部53は、本体部17の底壁部24上に配置され、底壁部24に固着されている。
【0028】
そして本実施形態では、網部材50の前記平面視における開口率が、50%以上99%以下である。前記開口率は、好ましくは60%以上90%以下であり、より好ましくは70%以上85%以下である。ここで前記開口率は、前記平面視における頂壁部51の開口率とも言える。言い換えると、前記開口率は、前記平面視における頂壁部51全体の面積Aに対する、前記平面視における第1開口部61dの総面積Bの割合B/Aである。前記面積Aは、前記平面視において第1線状部61aの外周縁よりも内側に位置する部分の面積である。前記総面積Bは、前記面積Aから、線状部60(第1線状部61a、第2線状部61b、第3線状部61c)の総面積を除いた面積である。
【0029】
例えば、前記平面視において、第1開口部61dが全域にわたって正方形状に形成されている場合(
図4参照)、前記開口率εは、下記式で算出される。
【0030】
【0031】
なお上記数式中、dは線径(mm)、Aは目開き(mm)を表す。これらの線径dおよび目開きAの各数値は、線状部60や第1開口部61dを、軸線O(大径筒部19(垂下筒部18)の軸線)と直交する平面(仮想の平面)に投影したときの大きさである。
【0032】
なお網部材50は、前述したように前記平面視において落し口24aに重なっている。そのため、前記開口率が高いと、網部材50の開口部61d、62dのうち前記平面視において落し口24aに重なる部分(
図3にハッチングで示す重複部分55)の面積(開口面積)大きくなる。一方、前記開口率が高いと、前記重複部分55の面積が小さくなる。
【0033】
図2に示すように、第1エルボ継手36は、曲管部37と、曲管部37の両端部に設けられた受け口38,39と、を備えている。曲管部37は、側面視で中心角がほぼ90°になるように湾曲している。受け口38は曲管部37の第1端部に連なり、受け口39は曲管部37の第2端部に連なっている。なお、曲管部37は側面視で中心角が90°以上であってもよく、135°などとしてもよい。
受け口38の内径は、曲管部37の内径及び小径筒部21の外径よりも大きく、大径筒部19の外径よりも小さい。受け口39は、受け口38と同様に構成されている。
受け口38内には漏斗16の小径筒部21が挿入され、受け口38と小径筒部21とは図示しない接着剤等により固定されている。
【0034】
図1に示すように、呼び樋41は、直管状に形成されている。呼び樋41は、幅方向D3に沿って延びるか、第1エルボ継手36から離間するに従い漸次、水勾配程度にわずかに下方に傾いている。呼び樋41の第1端部は、第1エルボ継手36の受け口39内に挿入され、受け口39と呼び樋41とは図示しない接着剤等により固定されている。
第2エルボ継手46は、第1エルボ継手36の曲管部37、受け口38,39と同様に構成された、曲管部47、受け口48,49を備えている。受け口48内には呼び樋41の第2端部が挿入され、受け口48と呼び樋41とは図示しない接着剤等により固定されている。
【0035】
竪樋56は、直管状に形成され、上下方向D1に沿って延びている。竪樋56の第1端部は、第2エルボ継手46の受け口49内に挿入され、受け口49と竪樋56とは図示しない接着剤等により固定されている。竪樋56の上下方向D1の長さは2m以上とし、3m以上であることが好ましい。ここで、竪樋56の長さとは、サイフォン雨樋システム1が呼び樋41を備える場合には、第2エルボ継手46より下流側に位置する竪樋56の上下方向の距離を指す。また、サイフォン雨樋システム1が呼び樋41を備えない場合には、竪樋56における漏斗16との接続部分までの上下方向の距離を指す。
呼び樋41は、軒樋11に設けられた漏斗16から流下した雨水を水平に導水する。呼び樋41の一端側は、第1エルボ継手36によって漏斗16の下端に接続される。呼び樋41の他端側は、第2エルボ継手46によって竪樋56の上端に接続される。呼び樋41の水平方向の距離は1.5m以下とし、1m以下であることが好ましい。ここで、呼び樋41の水平方向の距離とは、漏斗16の小径筒部21の中心(垂下筒部18の軸線O)から竪樋56の中心軸までの、呼び樋41を含む水平方向の距離を指す。
軒樋11、漏斗16、第1エルボ継手36、呼び樋41、第2エルボ継手46、及び竪樋56は、塩化ビニル等の樹脂で形成されていることが好ましく、特に硬質塩化ビニルで形成されていることが好ましい。
【0036】
竪樋56の第2端部は、地面Gに接続され、地中に埋設された公知の集水マス101に接続されている。集水マス101の幅方向D3の長さは、竪樋56の外径よりも長い。
集水マス101は、連結管102を介して、下水管等の排水構造103に接続されている。
【0037】
次に、以上のように構成されたサイフォン雨樋システム1の動作について説明する。
建築物の屋根に雨水が降ると、その雨水は、屋根に沿って流れ落ちてサイフォン雨樋システム1の軒樋11を介して漏斗16内に流れ込む。漏斗16における本体部17に流れ込んだ雨水の一部は、落し口24aを通して垂下筒部18内に流れ込む。
【0038】
このとき雨水は、大径筒部19内を通して第1接続部29内に流れ込む。第1接続部29の内周面が外側に向かって凹むように湾曲しているため、第1接続部29の内周面が、角部が形成されるように凹んでいる場合等に比べて、第1接続部29内を流れる雨水の流れの変化が緩やかになり、第1接続部29内に渦等が生じにくくなる。また、第1接続部29の内周面が、角部が形成されるように凹んでいる場合等に比べて、漏斗16に作用する外力による応力が第1接続部29に集中しにくくなる。なお、ここで言うと角部は、例えば、2本の直線の端部同士が連結されることにより形成される形状のことを意味する。
第1接続部29内を通った雨水は、縮径部20内を通して第2接続部30内に流れ込む。第2接続部30の内周面は内側に向かって凸となるように湾曲しているため、第2接続部30の内周面に内側に向かって凸となる角部が形成されている場合等に比べて、第2接続部30内を流れる雨水の流れの変化が緩やかになる。
【0039】
漏斗16の小径筒部21内から第1エルボ継手36、呼び樋41、第2エルボ継手46、及び竪樋56内を流れる雨水は、集水マス101内に流れ込む。さらにこの雨水は、連結管102を介して排水構造103内に流れ込んで適宜処理される。
このとき、例えば雨水の流量が一定値以上になる等して、サイフォン雨樋システム1内が雨水で満水状態になり、サイフォン現象が発生したとする。この場合において、漏斗16の第1接続部29の内周面、及び第2接続部30の内周面が前述のように形成されているため、漏斗16の接続部28,29,30内を流れる雨水の速度が低下しにくくなる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の漏斗16によれば、漏斗16の本体部17から落し口24aを通して垂下筒部18内に流れ込んだ雨水は、大径筒部19、第1接続部29、縮径部20および第2接続部30を通して小径筒部21に流れ込む。この漏斗16では、第2接続部30が、前記縦断面S1において、径方向の内側に向けて凸をなす曲線状に形成されている。そのため、例えば、第2接続部30が、前記縦断面S1において、径方向の内側に向けて凸をなす角形状に形成されている場合などに比べて、第2接続部30内を流れる雨水の流れの変化が緩やかになる。このため、例えば、第2接続部30内を流れる雨水に圧力損失が生じることが抑えられ、第2接続部30内を流れる雨水の速度が低下しにくくなる。従って、サイフォン現象による充分な排水能力を漏斗16が発揮しやすくすることができる。
【0041】
ところで、サイフォン現象による排水能力が発揮されると、例えば、本体部17内の異物(例えば、落ち葉など)が、雨水とともに落し口24aから垂下筒部18内に流入し、垂下筒部18を通過して竪樋56に到達するおそれがある。この漏斗16では、網部材50が、前記平面視において落し口24aに重なる。これにより、異物が垂下筒部18を通過することを網部材50によって規制することができる。
【0042】
しかもこの漏斗16では、網部材50の前記平面視における開口率が50%以上99%以下である。したがって、異物が垂下筒部18を通過することを確実に規制しつつ、サイフォン現象による排水能力も確実に発揮させることができる。すなわち、前記開口率が50%より小さいと、網部材50の前記平面視における開口面積が小さくなりすぎ、サイフォン現象による排水能力が発揮し難くなるおそれがある。一方、前記開口率が99%より大きいと、網部材50の前記平面視における開口面積が大きくなりすぎ、異物が垂下筒部18を通過することを規制し難くなるおそれがある。
【0043】
前記縦断面S1において、第1接続部29が、径方向の外側に向けて凸をなす曲線状に形成されている。したがって、例えば、第1接続部29が、前記縦断面S1において、径方向の内側に向けて凸をなす角形状に形成されている場合などに比べて、第1接続部29内を流れる雨水の流れの変化が緩やかになり、第1接続部29内に渦等が生じにくくなる。これにより、例えば、第1接続部29内を流れる雨水に圧力損失が生じるのが抑えられ、漏斗16が、サイフォン現象による充分な排水能力をさらに発揮させやすくすることができる。
【0044】
また、前記縦断面S1において、第1接続部29が、径方向の外側に向けて凸をなす曲線状に形成されていることで、漏斗16が外力を受けても第1接続部29に応力が集中しにくくなり、この第1接続部29が破断し難くなる。
【0045】
また、本実施形態のサイフォン雨樋システム1によれば、サイフォン現象による充分な排水能力を発揮しやすくした漏斗16を用いてサイフォン雨樋システム1を構成することができる。
【0046】
次に、上記した作用効果を検証した検証試験について説明する。
検証試験では、前記実施形態に係るサイフォン雨樋システム1に対して、網部材50を除いて同様となる
図5に示すような試験装置1Aを採用した。この試験装置1Aでは、網部材50が本体部17や垂下筒部18に対して着脱自在とされている。
この試験装置1Aを利用し、網部材50の形状や位置を変化させた複数の場合それぞれにおいて、内部を雨水で満水状態にしてサイフォン現象を発生させ、このときの本体部17内の水位を測定した。言い換えると、それぞれの場合における排水性能を確認した。
【0047】
本体部17内の水位は、第1地点P1から第3地点P3の3か所で測定した。第1地点P1は、垂下筒部18(の軸線O)から延在方向D2(水平方向)に0.4m離れている。第2地点P2は、垂下筒部18から延在方向D2に4m離れている。第3地点P3は、垂下筒部18から延在方向D2に8m離れている。
【0048】
網部材50に関する条件および結果をまとめた表およびグラフを
図6に示す。
網部材50に関する条件は、条件Aから条件Hとした。
条件Aでは、網部材50を設けていない。
条件Bでは、網部材50を本体部17内に設けた(高さ「高」)。このとき、網部材50によって落し口24aの全体を覆った。前記開口率は、82.6%である。
条件Cでは、網部材50を大径筒部19内に設けた(高さ「低」)。網部材50の外径(網径)は、条件Aと同等である。前記開口率は、80.4%である。
条件Dでは、網部材50を本体部17内に設けた。網部材50の外径は、条件Bよりも小さい。前記開口率は、77%である。
条件Eでは、網部材50を大径筒部19内に設けた。網部材50の外径は、条件Dと同等であり、条件Cよりも小さい。前記開口率は、77%である。
条件Fでは、網部材50の粗さ以外は条件Eと同等である。網部材50の粗さは、条件Eよりも粗く、前記開口率は、条件Eよりも高い。前記開口率は、79%である。
条件Gでは、網部材50を大径筒部19内に設けた。網部材50の外径は、条件Eよりも小さい。前記開口率は、25%である。
条件Hでは、網部材50の粗さ以外は条件Gと同等である。網部材50の粗さは、条件Gよりも粗く、前記開口率は、条件Gよりも高い。前記開口率は、64%である。
【0049】
条件AからHについて、検証試験を実施したところ、結果は
図6に示すグラフのようになった。
条件AからCでは、20L/secの流量であっても、水位が140mm以内に抑えられ、排水性能が十分に確保されていることが確認された。
条件DからF、Hでは、20L/secの流量では水位が140mmを超えるものの、18L/secの流量では水位が140mm以内に抑えられ、排水性能が確保されていることが確認された。
条件Gでは、水位が140mm以内に抑えられる流量の上限が9L/secの流量であり、排水性能が確保しにくいことが確認された。
【0050】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。
例えば、前記実施形態では、第1接続部29の内周面が外側に向かって凹むように湾曲していなく、角部が形成されるように凹んでいてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 サイフォン雨樋システム
11 軒樋
16 漏斗
17 本体部
18 垂下筒部
19 大径筒部(大径部)
20 縮径部
21 小径筒部(小径部)
24 底壁部
24a 落し口
29 第1接続部
30 第2接続部
50 網部材
60 線状部
O 軸線
S1 断面(縦断面)