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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】漏斗及びサイフォン雨樋システム
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/08 20060101AFI20220419BHJP
   E04D 13/068 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
E04D13/08 B
E04D13/068 503A
E04D13/068 504A
E04D13/068 503Z
E04D13/068 504C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018023579
(22)【出願日】2018-02-13
(65)【公開番号】P2019138090
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】元 隆明
(72)【発明者】
【氏名】寺地 信治
(72)【発明者】
【氏名】田中 将成
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-248619(JP,A)
【文献】実開昭49-047918(JP,U)
【文献】特開2016-176330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/04-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軒樋と竪樋とを接続する漏斗であって、
上方が開口した凹部が水平面に沿って延び、水平面に沿う方向の両端部が前記軒樋に連結される本体部と、
前記本体部の底壁部に形成された落し口に連なり、下方に向かうに従い漸次内径が小さくなる第1縮径部と、
前記第1縮径部の下端部に連なり、下方に向かって延びる大径筒部と、
前記大径筒部の下端部に連なり、下方に向かうに従い漸次内径が小さくなる第2縮径部と、
前記第2縮径部の下端部に連なり、下方に向かって延びて前記大径筒部よりも外径が小さく形成された小径筒部と、
備え、
前記大径筒部の軸線を含む断面において、前記第1縮径部と前記大径筒部との接続部分の内周面は、内側に向かって凸となるように、10mm以上60mm以下の曲率半径で湾曲し、
前記断面において、前記大径筒部と前記第2縮径部との接続部分の内周面は、外側に向かって凹むように、5mm以上40mm以下の曲率半径で湾曲し、
前記断面において、前記第2縮径部と前記小径筒部との接続部分の内周面は、内側に向かって凸となるように、5mm以上40mm以下の曲率半径で湾曲している漏斗。
【請求項2】
前記軒樋と、
前記本体部が前記軒樋に接続された請求項1に記載の漏斗と、
前記小径筒部に接続された第1エルボ継手と、
前記第1エルボ継手に接続され、水平方向の長さが1.5mm以下の呼び樋と、
前記呼び樋に接続された第2エルボ継手と、
前記第2エルボ継手に接続され、長さが3m以上の前記竪樋と、
を備えるサイフォン雨樋システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏斗及びサイフォン雨樋システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建築物には、屋根から流れ落ちる雨水を受け止め、地上へと流し込むための雨樋が設けられる。雨樋は、軒樋、漏斗(じょうご、集水器)、呼び樋、竪樋、連結管、エルボ継手、チーズ継手等の部材が複数組みあわされて構成される。近年、雨樋の排水能力を高めるために、竪樋の内部を満水状態にすることによって、水の吸引作用(いわゆる、サイフォン現象)を発生させ、排水量を飛躍的に増大させるサイフォン雨樋システムが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されたサイフォン式雨水排水装置では、軒先に取付けられた軒樋の底部に、サイフォン管の上端が接続される。このサイフォン管は、家屋の外壁材に沿って上下方向に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-308399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のサイフォン式雨水排水装置では、排水装置の内部を流れる雨水が流れる速度が低下すると、サイフォン現象による充分な排水能力を発揮することが困難になる。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、サイフォン現象による充分な排水能力を発揮しやすくした漏斗、及びこの漏斗を備えるサイフォン式雨水排水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の漏斗は、軒樋と竪樋とを接続する漏斗であって、上方が開口した凹部が水平面に沿って延び、水平面に沿う方向の両端部が前記軒樋に連結される本体部と、前記本体部の底壁部に形成された落し口に連なり、下方に向かうに従い漸次内径が小さくなる第1縮径部と、前記第1縮径部の下端部に連なり、下方に向かって延びる大径筒部と、前記大径筒部の下端部に連なり、下方に向かうに従い漸次内径が小さくなる第2縮径部と、前記第2縮径部の下端部に連なり、下方に向かって延びて前記大径筒部よりも外径が小さく形成された小径筒部と、備え、前記大径筒部の軸線を含む断面において、前記第1縮径部と前記大径筒部との接続部分の内周面は、内側に向かって凸となるように、10mm以上60mm以下の曲率半径で湾曲し、前記断面において、前記大径筒部と前記第2縮径部との接続部分の内周面は、外側に向かって凹むように、5mm以上40mm以下の曲率半径で湾曲し、前記断面において、前記第2縮径部と前記小径筒部との接続部分の内周面は、内側に向かって凸となるように、5mm以上40mm以下の曲率半径で湾曲していることを特徴としている。
【0008】
この発明によれば、軒樋、及び漏斗の本体部を介して第1縮径部内に流れ込んだ雨水は、第1縮径部と大径筒部との接続部分内を通して、大径筒部内に流れ込む。このとき、接続部分の内周面が、内側に向かって凸となるように湾曲しているため、接続部分の内周面に内側に向かって凸となる角部が形成されている場合等に比べて、接続部分内を流れる雨水の流れの変化が緩やかになる。このため、接続部分内を流れる雨水に圧力損失が生じるのが抑えられ、接続部分内を流れる雨水の速度が低下しにくくなる。従って、サイフォン現象による充分な排水能力を漏斗が発揮しやすくすることができる。
【0009】
また、漏斗に接続するエルボ継手や竪樋等を、大径筒部に対応する内径の大きいものと、小径筒部に対応する内径の小さいものとで、選択して用いることができる。漏斗にエルボ継手等を接続する際に、内径の小さいエルボ継手等を接続する場合には、漏斗をそのまま用いてもよい。内径の大きいエルボ継手等を接続する場合には、漏斗から第2縮径部及び小径筒部を切り離して用いてもよい。
また、接続部分の内周面に内側に向かって凸となる角部が形成されている場合等に比べて、第2縮径部と小径筒部との接続部分内を流れる雨水の流れの変化が緩やかになって圧力損失が生じるのが抑えられる。従って、漏斗が、サイフォン現象による充分な排水能力をさらに発揮しやすくすることができる。
また、接続部分の内周面が角部が形成されるように凹んでいる場合等に比べて、大径筒部と第2縮径部との接続部分内を流れる雨水の流れの変化が緩やかになり、接続部分内に渦等が生じにくくなる。これにより、接続部分内を流れる雨水に圧力損失が生じるのが抑えられ、漏斗が、サイフォン現象による充分な排水能力をさらに発揮させやすくすることができる。また、この接続部分の内周面が角部が形成されるように凹んでいる場合等に比べて、漏斗に作用する外力を受けても接続部分に応力が集中しにくくなり、この接続部分が破断し難くなる。
【0012】
また、本発明のサイフォン雨樋システムは、前記軒樋と、前記本体部が前記軒樋に接続された請求項1に記載の漏斗と、前記小径筒部に接続された第1エルボ継手と、前記第1エルボ継手に接続され、水平方向の長さが1.5mm以下の呼び樋と、前記呼び樋に接続された第2エルボ継手と、前記第2エルボ継手に接続され、長さが3m以上の前記竪樋と、を備えることを特徴としている。
この発明によれば、サイフォン現象による充分な排水能力を発揮しやすくした漏斗を用いてサイフォン雨樋システムを構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の漏斗及びサイフォン式雨水排水装置によれば、サイフォン現象による充分な排水能力を発揮しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態のサイフォン式雨水排水装置を一部を破断して側面視した図である。
図2図1中の切断線A1-A1の断面図である。
図3】一実施形態の漏斗に、内径がより大きい第1エルボを固定する場合について説明する側面視した断面図である。
図4】同漏斗の縦断面図である。
図5】本発明の実施形態の変形例におけるサイフォン式雨水排水装置の縦断面図である。
図6】変形例の漏斗に、内径がより大きい第1エルボを固定する場合について説明する側面視した断面図である。
図7】同漏斗の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るサイフォン雨樋システムの一実施形態を、図1から図7を参照しながら説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態のサイフォン雨樋システム1は、軒樋11と、本実施形態の漏斗16と、第1エルボ継手36と、呼び樋41と、第2エルボ継手46と、竪樋51と、を備えている。なお、図2では、説明の便宜のために、漏斗16に対して第1エルボ継手36及び呼び樋41が取付けられる向きを、上下方向D1に沿う軸線周りに90°回転させて示している。
【0016】
軒樋11は、図示しない建築物の屋根の軒下に固定されている。軒樋11は、上方に向かって開口している。軒樋11は、ほぼ水平面に沿って配置されている。軒樋11は、漏斗16に連結される端部が漏斗16に連結されない端部よりも下方に位置し、軒樋11が水勾配(例えば、1/300)程度傾くように配置されている。
なお、サイフォン雨樋システム1に漏斗16が複数設けられる場合には、漏斗16の間の軒樋11の長さは30m以下とされる。また、サイフォン雨樋システム1に漏斗16が1つ設けられる場合には、軒樋11の端部(止り)から漏斗16までの距離が15m以下とされる。
【0017】
漏斗16は、軒樋11と竪樋51とを、第1エルボ継手36、呼び樋41、及び第2エルボ継手46を介して接続している。漏斗16は、本体部17と、第1縮径部18と、大径筒部19と、第2縮径部20と、小径筒部21と、を備えている。
本体部17は、底壁部24と、側壁部25,26と、を備えている。底壁部24は、厚さ方向が上下方向D1に沿うように配置されている。底壁部24は、屋根の外縁部に沿う延在方向D2に沿って延びている。延在方向D2は、水平面に沿う方向である。
上下方向D1に沿った平面視における底壁部24の中央部には、底壁部24を上下方向D1に貫通する貫通孔である落し口24aが形成されている。落し口24aは、平面視において円形状又は楕円形状等である。しかし、平面視における落し口24aの形状はこれらの形状に限られず、四角形や長方形等であってもよい。
【0018】
側壁部25,26は、底壁部24における、上下方向D1及び延在方向D2にそれぞれ直交する幅方向D3の端部にそれぞれ立設している。側壁部25,26は、底壁部24の延在方向D2の全長にわたって形成されている。側壁部25,26間の距離は、上方に向かうに従い漸次大きくなる。
底壁部24及び側壁部25,26により、本体部17に上方が開口した凹部17aが形成されている。凹部17aは、延在方向D2に延びるように形成されている。
図2に示すように、本体部17の延在方向D2の両端部内には、軒樋11が配置されている。本体部17の端部内に軒樋11が配置されていることにより、本体部17と軒樋11とが連結されている。この例では、軒樋11は本体部17に固定されていない。このため、軒樋11の伸縮等により、本体部17に対して軒樋11が延在方向D2に移動できる。
【0019】
図1及び図2に示すように、本実施形態では、第1縮径部18及び第2縮径部20はそれぞれ円環状に形成され、大径筒部19及び小径筒部21はそれぞれ円筒状に形成されている。縮径部18,20及び筒部19,21の軸線は、共通軸と同軸に配置されている。以下、この共通軸を軸線Oと言う。軸線Oは、上下方向D1に沿って配置されている。
第1縮径部18は、下方に向かうに従い漸次、内径及び外径がそれぞれ小さくなるように形成されている。軸線Oを含む断面S1において、第1縮径部18の内周面及び外周面は、それぞれ直線状に形成されている。第1縮径部18の上端部は、底壁部24における落し口24aの開口周縁部に連なっている。
【0020】
大径筒部19の上端部は第1縮径部18の下端部に連なり、大径筒部19は第1縮径部18から下方に向かって延びている。大径筒部19の軸線Oと平行な方向の長さは30mm以上120mm以下が好ましく、35mm以上100mm以下がより好ましく、40mm以上80mm以下がさらに好ましい。
大径筒部19の長さを上記下限値以上とすることにより、後述する第1接続部28の内周面における曲率半径を大きくしつつ、第1エルボ継手36の受け口38と漏斗16との接着しろを確保することができる。大径筒部19の長さを上記上限値以下とすることにより、漏斗16の製造コストを低くすることができる。
【0021】
図2に示すように、断面S1において、第1縮径部18と大径筒部19との接続部分である第1接続部28の内周面は、内側(軸線O側)に向かって凸となるように湾曲している。断面S1において、第1接続部28の外周面は、内側に向かって凹むように湾曲している。第1接続部28の内周面及び外周面は、軸線O周りの全周にわたってこのように形成されている。後述する第2接続部29及び第3接続部30も同様である。
第1接続部28の内周面は、第1縮径部18の内周面、及び大径筒部19の内周面にそれぞれ滑らかに連なっていることが好ましい。断面S1において、第1接続部28の内周面における曲率半径は、10mm以上60mm以下であることが好ましく、15mm以上50mm以下であることがより好ましく、20mm以上40mm以下であることがさらに好ましい。
【0022】
第2縮径部20は、下方に向かうに従い漸次、内径及び外径がそれぞれ小さくなるように形成されている。第2縮径部20の上端部は、大径筒部19の下端部に連なっている。
断面S1において、大径筒部19と第2縮径部20との接続部分である第2接続部29の内周面は、外側(軸線Oとは反対側)に向かって凹むように湾曲している。断面S1において、第2接続部29の外周面は、外側に向かって凸となるように湾曲している。第2接続部29の内周面は、大径筒部19の内周面、及び第2縮径部20の内周面にそれぞれ滑らかに連なっていることが好ましい。断面S1において、第2接続部29の内周面における曲率半径は、5mm以上40mm以下であることが好ましく、10mm以上30mm以下であることがより好ましい。
なお、第2接続部29は、図2中に二点鎖線Lで示すように厚く形成されてもよい。
【0023】
小径筒部21の外径、内径は、大径筒部19の外径、内径よりもそれぞれ小さく形成されている。小径筒部21の上端部は第2縮径部20の下端部に連なり、小径筒部21は第2縮径部20から下方に向かって延びている。小径筒部21内の軸線Oに直交する断面積は、5cm~300cmであり、好ましくは13cm~190cmであり、より好ましくは20cm~140cmである。
小径筒部21の軸線Oと平行な方向の長さは15mm以上100mm以下が好ましく、25mm以上80mm以下がより好ましく、30mm以上60mm以下がさらに好ましい。小径筒部21の長さを上記下限値以上とすることにより、後述する第2接続部29及び第3接続部30の内周面における曲率半径を大きくしつつ、第1エルボ継手36の受け口38と漏斗16との接着しろを確保することができる。小径筒部21の長さを上記上限値以下とすることにより、漏斗16の製造コストを低くすることができる。
【0024】
断面S1において、第2縮径部20と小径筒部21との接続部分である第3接続部30の内周面は、内側に向かって凸となるように湾曲している。断面S1において、第3接続部30の外周面は、内側に向かって凹むように湾曲している。第3接続部30の内周面は、第2縮径部20の内周面、及び小径筒部21の内周面にそれぞれ滑らかに連なっていることが好ましい。断面S1において、第3接続部30の内周面における曲率半径は、5mm以上40mm以下であることが好ましく、10mm以上30mm以下であることがより好ましい。
【0025】
第1エルボ継手36は、曲管部37と、曲管部37の両端部に設けられた受け口38,39と、を備えている。曲管部37は、側面視で中心角がほぼ90°になるように湾曲している。受け口38は曲管部37の第1端部に連なり、受け口39は曲管部37の第2端部に連なっている。
受け口38の内径は、曲管部37の内径及び小径筒部21の外径よりも大きく、大径筒部19の外径よりも小さい。受け口39は、受け口38と同様に構成されている。
受け口38内には漏斗16の小径筒部21が挿入され、受け口38と小径筒部21とは図示しない接着剤等により固定されている。
【0026】
図1に示すように、呼び樋41は、直管状に形成されている。呼び樋41は、幅方向D3に沿って延びるか、第1エルボ継手36から離間するに従い漸次、水勾配程度にわずかに下方に傾いている。呼び樋41の第1端部は、第1エルボ継手36の受け口39内に挿入され、受け口39と呼び樋41とは図示しない接着剤等により固定されている。
第2エルボ継手46は、第1エルボ継手36の曲管部37、受け口38,39と同様に構成された、曲管部47、受け口48,49を備えている。受け口48内には呼び樋41の第2端部が挿入され、受け口48と呼び樋41とは図示しない接着剤等により固定されている。
【0027】
竪樋51は、直管状に形成され、上下方向D1に沿って延びている。竪樋51の第1端部は、第2エルボ継手46の受け口49内に挿入され、受け口49と竪樋51とは図示しない接着剤等により固定されている。
竪樋51の上下方向D1の長さは2m以上とし、3m以上であることが好ましい。ここで、竪樋51の長さとは、サイフォン雨樋システム1が呼び樋41を備える場合には、第2エルボ継手46より下流側に位置する竪樋51の上下方向の距離を指す。また、サイフォン雨樋システム1が呼び樋41を備えない場合には、竪樋51における漏斗16との接続部分までの上下方向の距離を指す。
【0028】
呼び樋41は、軒樋11に設けられた漏斗16から流下した雨水を水平に導水する。呼び樋41の一端側は、第1エルボ継手36によって漏斗16の下端に接続される。呼び樋41の他端側は、第2エルボ継手46によって竪樋51の上端に接続される。呼び樋41の水平方向の距離は1.5m以下とし、1m以下であることが好ましい。ここで、呼び樋41の水平方向の距離とは、漏斗16の小径筒部21の中心(軸線O)から竪樋51の中心軸までの、呼び樋41を含む水平方向の距離を指す。
軒樋11、漏斗16、第1エルボ継手36、呼び樋41、第2エルボ継手46、及び竪樋51は、塩化ビニル等の樹脂で形成されていることが好ましく、特に硬質塩化ビニルで形成されていることが好ましい。
【0029】
竪樋51の第2端部は、地面Gに接続され、地中に埋設された公知の集水マス101に接続されている。集水マス101の幅方向D3の長さは、竪樋51の外径よりも長い。
集水マス101は、連結管102を介して、下水管等の排水構造103に接続されている。
【0030】
次に、以上のように構成されたサイフォン雨樋システム1の動作について説明する。
建築物の屋根に雨水が降ると、その雨水は、屋根に沿って流れ落ちてサイフォン雨樋システム1の軒樋11を介して漏斗16内に流れ込む。漏斗16における本体部17を介して第1縮径部18内に流れ込んだ雨水の一部は、第1接続部28内を通して、大径筒部19内に流れ込む。このとき、第1接続部28の内周面が、内側に向かって凸となるように湾曲しているため、第1接続部28の内周面に内側に向かって凸となる角部が形成されている場合等に比べて、第1接続部28内を流れる雨水の流れの変化が緩やかになる。なお、ここで言うと角部は、例えば、2本の直線の端部同士が連結されることにより形成される形状のことを意味する。
【0031】
第1接続部28内を通った雨水は、大径筒部19内を通して第2接続部29内に流れ込む。第2接続部29の内周面が外側に向かって凹むように湾曲しているため、第2接続部29の内周面が角部が形成されるように凹んでいる場合等に比べて、第2接続部29内を流れる雨水の流れの変化が緩やかになり、第2接続部29内に渦等が生じにくくなる。また、第2接続部29の内周面が角部が形成されるように凹んでいる場合等に比べて、漏斗16に作用する外力による応力が第2接続部29に集中しにくくなる。
第2接続部29内を通った雨水は、第2縮径部20内を通して第3接続部30内に流れ込む。第3接続部30の内周面は内側に向かって凸となるように湾曲しているため、第3接続部30の内周面に内側に向かって凸となる角部が形成されている場合等に比べて、第3接続部30内を流れる雨水の流れの変化が緩やかになる。
【0032】
漏斗16の小径筒部21内から第1エルボ継手36、呼び樋41、第2エルボ継手46、及び竪樋51内を流れる雨水は、集水マス101内に流れ込む。さらにこの雨水は、連結管102を介して排水構造103内に流れ込んで適宜処理される。
このとき、例えば雨水の流量が一定値以上になる等して、サイフォン雨樋システム1内が雨水で満水状態になり、サイフォン現象が発生したとする。この場合において、漏斗16の第1接続部28の内周面、第2接続部29の内周面、及び第3接続部30の内周面が前述のように形成されているため、漏斗16の接続部28,29,30内を流れる雨水の速度が低下しにくくなる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の漏斗16によれば、軒樋11、及び漏斗16の本体部17を介して第1縮径部18内に流れ込んだ雨水は、第1接続部28内を通して、大径筒部19内に流れ込む。このとき、第1接続部28の内周面が、内側に向かって凸となるように湾曲しているため、第1接続部28の内周面に内側に向かって凸となる角部が形成されている場合等に比べて、第1接続部28内を流れる雨水の流れの変化が緩やかになる。このため、第1接続部28内を流れる雨水に圧力損失が生じるのが抑えられ、第1接続部28内を流れる雨水の速度が低下しにくくなる。従って、漏斗16が、サイフォン現象による充分な排水能力を発揮しやすくすることができる。
また、第1接続部28内に雨水が溜まりにくくなり、第1接続部28における排水性を向上させることができる。
【0034】
第3接続部30の内周面は、内側に向かって凸となるように湾曲している。このため、第3接続部30の内周面に内側に向かって凸となる角部が形成されている場合等に比べて、第3接続部30内を流れる雨水の流れの変化が緩やかになって圧力損失が生じるのが抑えられる。従って、漏斗16が、サイフォン現象による充分な排水能力をさらに発揮しやすくすることができる。
第2接続部29の内周面は、外側に向かって凹むように湾曲している。第2接続部29の内周面が角部が形成されるように凹んでいる場合等に比べて、第2接続部29内を流れる雨水の流れの変化が緩やかになり、第2接続部29内に渦等が生じにくくなる。これにより、第2接続部29内を流れる雨水に圧力損失が生じるのが抑えられ、漏斗16が、サイフォン現象による充分な排水能力をさらに発揮しやすくすることができる。また、漏斗16は、軒樋11及び呼び樋41等の気温差による熱伸縮等により、外力を受ける場合がある。このような場合であっても、第2接続部29の内周面が角部が形成されるように凹んでいる場合等に比べて、第2接続部29に応力が集中しにくくなり、第2接続部29が破断し難くなる。
【0035】
また、本実施形態のサイフォン雨樋システム1によれば、サイフォン現象による充分な排水能力を発揮しやすくした漏斗16を用いてサイフォン雨樋システム1を構成することができる。
【0036】
本実施形態の漏斗16は、以下に説明するようにその構成を様々に変形させることができる。
前述のように構成された漏斗16を、図3に示すように、前述の第1エルボ継手36よりも内径の大きい第1エルボ継手56に固定する場合について説明する。なお、ここで用いられる変形例の漏斗16Aは、本実施形態の漏斗16の各構成に対して、第2縮径部20及び小径筒部21を備えていない。
第1エルボ継手56は、内径、外径以外は第1エルボ継手36の曲管部37、受け口38,39と同様に構成され、曲管部57、受け口58,59を備えている。受け口58の内径は、受け口38の内径、及び漏斗16Aの大径筒部19の外径よりもそれぞれ大きい。
【0037】
図4に示すように、漏斗16Aは、漏斗16を大径筒部19と第2接続部29との間に規定される切断面S3で、漏斗16から第2縮径部20及び小径筒部21を切り離して得られる。漏斗16の切断には、公知のバンドソー等が用いられる。
図3に示すように、第1エルボ継手56の受け口58内には漏斗16Aの大径筒部19が挿入され、受け口58と大径筒部19とは図示しない接着剤等により固定される。
本実施形態の漏斗16によれば、漏斗16に接続するエルボ継手を、大径筒部19に対応する内径の大きい第1エルボ継手56と、小径筒部21に対応する内径の小さい第1エルボ継手36とで、選択して用いることができる。
なお、漏斗16に、エルボ継手に代えて竪樋51等を接続してもよい。
【0038】
図5に示す変形例のサイフォン雨樋システム2は、本実施形態のサイフォン雨樋システム1の漏斗16に代えて、漏斗61を備えている。漏斗61は、本実施形態の漏斗16の本体部17の第1縮径部18に代えて、本体部62の第1縮径部63を備えている。断面S1において、第1縮径部63の内周面は内側に向かって凸となるように湾曲し、第1縮径部63の外周面は内側に向かって凹むように湾曲している。この変形例では、第1接続部28は、第1縮径部63と一体となって互いに滑らかに連なっている。
このように構成された本変形例の漏斗61及びサイフォン雨樋システム2によっても、本実施形態の漏斗16及びサイフォン雨樋システム1と同様の効果を奏することができる。
【0039】
さらにこのように構成された変形例の漏斗61(漏斗61A)を、図6に示すように、前述の第1エルボ継手56に固定する場合について説明する。なお、ここで用いられる変形例の漏斗61Aは、漏斗61の各構成に対して、第2縮径部20及び小径筒部21を備えていない。
【0040】
図7に示すように、漏斗61Aは、漏斗61を大径筒部19と第2接続部29との間に規定される切断面S3で漏斗61から第2縮径部20及び小径筒部21を切り離して得られる。
図6に示すように、第1エルボ継手56の受け口58内には漏斗61Aの大径筒部19が挿入され、受け口58と大径筒部19とは図示しない接着剤等により固定される。
【0041】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。
例えば、前記実施形態では、漏斗16,61は、第2縮径部20及び小径筒部21を備えなくてもよい。
第2接続部29の内周面が外側に向かって凹むように湾曲していなく、角部が形成されるように凹んでいてもよい。第3接続部30の内周面が、内側に向かって凸となるように湾曲していなく、この内周面に内側に向かって凸となる角部が形成されていてもよい。
また、サイフォン雨樋システムが第1エルボ継手36、呼び樋41、及び第2エルボ継手46を備えず、漏斗16と竪樋51とを直接接続してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1,2 サイフォン雨樋システム
11 軒樋
16,16A,61,61A 漏斗
17,62 本体部
17a 凹部
18,63 第1縮径部
19 大径筒部
20 第2縮径部
21 小径筒部
24 底壁部
24a 落し口
28 第1接続部(接続部分)
29 第2接続部(接続部分)
30 第3接続部(接続部分)
51 竪樋
D2 延在方向(水平面に沿う方向)
O 軸線
S1 断面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7