(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】地盤改良装置、地盤改良システム、及び地盤改良方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20220419BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
E02D3/12 102
G01C15/00 101
(21)【出願番号】P 2018026717
(22)【出願日】2018-02-19
【審査請求日】2020-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋本 哲平
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】上野 一彦
(72)【発明者】
【氏名】グエン タング タン ビン
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-219318(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0186035(US,A1)
【文献】特開2005-073585(JP,A)
【文献】特開昭50-125514(JP,A)
【文献】特開昭62-153412(JP,A)
【文献】特開昭60-055118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底地盤の上面から所定の距離だけ高い位置から落下され、前記水底地盤に貫入する際の抵抗値を計測する計測部と、
水中に吊り下げられ、ホースにより供給される地盤改良材を噴出する噴出口
と、を備え、前記噴出口から噴出する地盤改良材により
前記水底地盤を切削し、該噴出口の少なくともいずれかが所定の軸を中心とした側面の周方向に沿って前記地盤改良材を噴出することで該地盤改良材から受ける推進力により該軸周りに回転移動しながら自重により前記水底地盤に貫入する地盤改良装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の地盤改良装置と、
前記地盤改良装置の位置を特定する測位システムと、
を備える地盤改良システム。
【請求項3】
ホースにより供給される地盤改良材を噴出する噴出口を備える地盤改良装置を水中に吊り下ろし、水底地盤の上面に着底させる工程と、
前記上面から所定の距離だけ高い位置から前記地盤改良装置を落下させ、前記地盤改良装置を前記水底地盤に貫入させる工程と、
前記貫入させる工程において前記地盤改良装置が前記水底地盤に貫入する際の抵抗値を計測する工程と、
前記計測する工程において計測した前記抵抗値に基づき、前記水底地盤の強度を特定する工程と、
前記上面に着底した前記地盤改良装置に前記地盤改良材を供給し、前記噴出口から前記地盤改良材を噴出させる工程と、
を備え、
前記地盤改良材を噴出させる工程において、噴出された前記地盤改良材により切削される前記水底地盤に前記地盤改良装置を、前記地盤改良材のうち、所定の軸を中心とした側面の周方向に沿って噴出された地盤改良材から受ける推進力により該軸周りに回転移動させながら、自重により貫入させる
地盤改良方法。
【請求項4】
前記上面に着底させる工程において前記地盤改良装置が前記上面に着底した際に、基準となる面から前記上面までの深さを計測する工程、
を備える請求項
3に記載の地盤改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良装置、地盤改良システム、及び地盤改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本近海の深海には、メタンハイドレート、レアアース、熱水鉱床等の深海資源が存在している。深海資源の採取方法は様々あり、例えば海底面に設置した掘削機により海底地盤を掘削して地盤中の資源を採取する方法もある。
【0003】
しかし深海底の地盤には、せん断強度が2乃至10キロパスカル程度の超軟弱地盤もあり、掘削機の設置及び走行には適していないことがある。超軟弱地盤において掘削機を用いる場合、掘削機の運搬性や支持力・安定性を確保しなければならず、掘削機を設置する地盤の改良が必要となる。
【0004】
水中の軟弱土を改良する技術としては、特許文献1、2に記載の技術が挙げられる。特許文献1に記載の技術は、含水軟弱土に固化材を添加する際に、回転する撹拌翼が含水軟弱土を上下するため、含水軟弱土が舞い上がり水を汚濁する、という問題を解決するためのものである。特許文献1には、船体から下降させる枠体の下端に逆有底筒状シェルを設け、この逆有底筒状シェル内に撹拌翼を配置し、着底の後、撹拌翼を含水軟弱土に貫入させる、という方法が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、船体上に設けられた櫓からワイヤにより水中に吊り下げられている地盤改良機の傾き角及び位置を一定に保持するために、地盤改良機を伸縮式クランプ装置により拘束し、船体の傾き及び位置の変化に応じて、伸縮式クランプ装置のストロークを制御する、という技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭61-1718号公報
【文献】特開昭60-233223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1、2の技術は、いずれも地盤改良装置を水底地盤に向けて押し込む構成を必要とするので、水深が例えば300メートル以上の深い水底地盤の改良に適用することが難しい。
【0008】
本願の発明の目的の一つは、水底地盤に向けて押し込む構成を必要とせずに、水底地盤を改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る地盤改良装置は、水底地盤の上面から所定の距離だけ高い位置から落下され、前記水底地盤に貫入する際の抵抗値を計測する計測部と、水中に吊り下げられ、ホースにより供給される地盤改良材を噴出する噴出口と、を備え、前記噴出口から噴出する地盤改良材により前記水底地盤を切削し、該噴出口の少なくともいずれかが所定の軸を中心とした側面の周方向に沿って前記地盤改良材を噴出することで該地盤改良材から受ける推進力により該軸周りに回転移動しながら自重により前記水底地盤に貫入する地盤改良装置である。
【0010】
本発明の請求項2に係る地盤改良装置は、請求項1に記載の態様において、前記水底地盤の上面から所定の距離だけ高い位置から落下され、前記水底地盤に貫入する際の抵抗値を計測する計測部を備える地盤改良装置である。
【0012】
本発明の請求項2に係る地盤改良システムは、請求項1に記載の地盤改良装置と、前記地盤改良装置の位置を特定する測位システムと、を備える地盤改良システムである。
【0013】
本発明の請求項3に係る地盤改良方法は、ホースにより供給される地盤改良材を噴出する噴出口を備える地盤改良装置を水中に吊り下ろし、水底地盤の上面に着底させる工程と、前記上面から所定の距離だけ高い位置から前記地盤改良装置を落下させ、前記地盤改良装置を前記水底地盤に貫入させる工程と、前記貫入させる工程において前記地盤改良装置が前記水底地盤に貫入する際の抵抗値を計測する工程と、前記計測する工程において計測した前記抵抗値に基づき、前記水底地盤の強度を特定する工程と、前記上面に着底した前記地盤改良装置に前記地盤改良材を供給し、前記噴出口から前記地盤改良材を噴出させる工程と、を備え、前記地盤改良材を噴出させる工程において、噴出された前記地盤改良材により切削される前記水底地盤に前記地盤改良装置を、前記地盤改良材のうち、所定の軸を中心とした側面の周方向に沿って噴出された地盤改良材から受ける推進力により該軸周りに回転移動させながら、自重により貫入させる地盤改良方法である。
【0017】
本発明の請求項4に係る地盤改良方法は、請求項3に記載の態様において、前記上面に着底させる工程において前記地盤改良装置が前記上面に着底した際に、基準となる面から前記上面までの深さを計測する工程、を備える地盤改良方法である。
【発明の効果】
【0018】
本願に係る発明によれば、水底地盤に向けて押し込む構成を必要とせずに、水底地盤を改良することできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】地盤改良装置1を水底地盤4に貫入させる動作を示した図。
【
図3】計測部15を設けた地盤改良装置1の例を示す図。
【
図4】変形例1における地盤改良装置1の動作を示した図。
【
図5】変形例4に係る地盤改良装置1の構成を示す図。
【
図6】変形例5における地盤改良システム9の構成を示す図。
【
図7】地盤改良システム9による位置の特定を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態>
<地盤改良装置の構成>
図1は、地盤改良装置1の構成を示す図である。
図1に示す地盤改良装置1は、円筒状の重錘であり、軸を重力方向に沿って配置した姿勢で用いられる。地盤改良装置1は、側面10に側面噴出口11を有し、底面14に底面噴出口12を有する。側面噴出口11及び底面噴出口12は、いずれも外部に地盤改良材を噴出させる噴出口である。
【0021】
なお、地盤改良装置1は、どのような形状であってもよいが水流の影響を抑えるため、円筒状又は球形が望ましい。
図1において、側面噴出口11及び底面噴出口12は、いずれも地盤改良装置1の表面から突出しているがこの形状に限られず、地盤改良材を噴出させる穴があればよい。
【0022】
<地盤改良装置の動作>
図2は、地盤改良装置1を水底地盤4に貫入させる動作を示した図である。
図2において水及び水面を省く。
【0023】
図2(a)に示す通り、地盤改良装置1は、その天面13にワイヤ2が接続されており、船(図示せず)からこのワイヤ2で水中に吊り下げられる。地盤改良装置1は、周囲の水または海水に比べて比重が大きいため、船からワイヤ2を巻下げることで自重により水中を下降する。
【0024】
図2(b)に示す通り地盤改良装置1が着底すると、地盤改良装置1の底面14が水底地盤4の上面40に接触し、この上面40から垂直抗力を受けるため、ワイヤ2にかかる張力が変化する。船にいる操作者は、例えばこの張力の変化を観察することで地盤改良装置1が着底したことを認識する。
【0025】
ホース3は、地盤改良装置1の内部に地盤改良材を供給するための管であり、地盤改良装置1の天面13に接続されている。ホース3から供給された地盤改良材は、地盤改良装置1の内部の流路を通って側面噴出口11又は底面噴出口12から外部に噴出される。すなわち、側面噴出口11及び底面噴出口12は、いずれもホース3により供給される地盤改良材を噴出する噴出口である。
【0026】
操作者は、地盤改良装置1が着底したことを認識すると、ホース3を通して船から地盤改良装置1へ地盤改良材を供給する。これにより、側面噴出口11又は底面噴出口12から地盤改良材が外部に噴出され、噴出した地盤改良材により水底地盤4が切削される。そして、
図2(c)に示す通り地盤改良装置1は水底地盤4を切削しながら自重により水底地盤4に貫入する。すなわち、地盤改良装置1は、側面噴出口11又は底面噴出口12(噴出口)から噴出する地盤改良材により水底地盤4を切削しながら自重により水底地盤4に貫入する地盤改良装置である。噴出された地盤改良材は、水底地盤4と混合して強度が改良された改良地盤5となる。
【0027】
なお、上述した地盤改良装置1の動作は、ホース3により供給される地盤改良材を噴出する噴出口(側面噴出口11又は底面噴出口12)を備える地盤改良装置1を水中に吊り下ろし、水底地盤4の上面40に着底させる工程と、上面40に着底した地盤改良装置1に地盤改良材を供給し、噴出口から地盤改良材を噴出させる工程と、を備える地盤改良方法として認識し得る。そして、この地盤改良方法では、地盤改良材を噴出させる工程において、噴出された地盤改良材により切削される水底地盤4に地盤改良装置1を自重により貫入させている。
【0028】
また、地盤改良装置1が着底したことを認識し、地盤改良装置1へ地盤改良材を供給する上述した操作者は、制御部、記憶部、ワイヤ2の張力を検知する検知部、及びワイヤ2の巻上げ・巻下げを行う駆動部等を備える情報処理装置であってもよい。この場合、情報処理装置が備える制御部は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有し、CPUがROM及び記憶部に記憶されているコンピュータプログラム(以下、単にプログラムという)を読み出して実行することにより、上述した検知部及び駆動部等を制御する。
【0029】
また、地盤改良材が水中に拡散することが懸念される場合には、水底地盤4の表面を切削するために、地盤改良装置1へは、地盤改良材の前に水や海水等が供給されてもよい。例えば、操作者は、地盤改良装置1が着底したことを認識すると、ホース3を通して船から地盤改良装置1へ水を供給する。そして、ワイヤ2を巻下げた長さに基づいて、水底地盤4の表面が決められた深さ(例えば0.5メートル乃至1メートル以上)まで切削されたことを認識すると、操作者は、地盤改良装置1へ供給する流体を水から地盤改良材に切り替えてもよい。この切り替えは、1回で行われてもよいし、複数回にわたって地盤改良材の濃度を上げることで行われてもよい。水や海水等で水底地盤4の表面が切削され、地盤改良装置1が水底地盤4に或る深さを超えて埋まった状態になれば、地盤改良材を噴出口から噴出させても、その地盤改良材が水中に流出・拡散する懸念がない。
【0030】
上述した通り従来技術では、地盤を改良するための装置を水底地盤に向けて押し込むために、逆有底筒状シェルや伸縮式クランプ装置等の構成(「押し込み機構」という)が必要であった。本発明に係る地盤改良装置1は、説明した通り噴出口から噴出される地盤改良材により水底地盤4を切削しながら自重により水底地盤4を貫入していくため、上述した押し込み機構を設ける必要がない。
【0031】
<変形例>
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組合せてもよい。
【0032】
<変形例1>
上述した実施形態において、操作者は、地盤改良装置1が着底したことを認識すると、ホース3を通して船から地盤改良装置1へ地盤改良材を供給していたが、地盤改良装置1が着底したことを認識したときに、例えばワイヤ2を巻上げて水底地盤4の上面40から所定の距離だけ高い位置に地盤改良装置1を引き上げてもよい。この場合、操作者は引き上げられた地盤改良装置1を落下させて、水底地盤4に貫入させてもよい。
【0033】
地盤改良装置1には、上面40から所定の距離hだけ高い位置から落下することで地盤改良装置1が水底地盤4に貫入する際の抵抗値を計測する計測部15を設けてもよい。
図3は、計測部15を設けた地盤改良装置1の例を示す図である。計測部15は、例えばばね式、圧電素子式、磁歪式、静電容量型、ジャイロ式、ひずみゲージ式等のロードセルであり、例えば地盤改良装置1の底面14の内側に取り付けられ、底面14が水底地盤4の上面40から垂直抗力を受けたときに、その垂直抗力による抵抗値を計測する。
【0034】
図4は、変形例1における地盤改良装置1の動作を示した図である。船にいる操作者は、例えばワイヤ2にかかる張力の変化により、地盤改良装置1が
図4(a)に示す通り着底したことを認識する。操作者は、
図4(b)に示す通り、地盤改良装置1が水底地盤4の上面40よりも所定の距離hだけ高い位置に上昇するようにワイヤ2を巻上げる。そして操作者は、ワイヤ2を巻下げることで、地盤改良装置1を自由落下させる。
【0035】
これにより、地盤改良装置1は、水底地盤4の上面40よりも距離hだけ高い位置から落下させる条件で、水底地盤4に貫入する。すなわち、この方法は、上面40から所定の距離hだけ高い位置から地盤改良装置1を落下させ、地盤改良装置1を水底地盤4に貫入させる工程を備える地盤改良方法として認識し得る。
【0036】
このとき、計測部15は水底地盤4から受ける抵抗値を計測する。そして計測された抵抗値は、例えば電気信号に変換されて、計測部15から水上に向かって伸びる通信線によって水上に設置された情報処理装置に送信され、水底地盤4の強度の特定に用いられる。すなわち、この方法は、地盤改良装置1を水底地盤4に貫入させる工程において地盤改良装置1が水底地盤4に貫入する際の抵抗値を計測する工程と、抵抗値を計測する工程において計測した抵抗値に基づき、水底地盤4の強度を特定する工程と、を備える地盤改良方法として認識し得る。なお、計測部15は、計測された抵抗値を記憶装置に記憶してもよい。この場合、記憶装置に記憶された抵抗値は、地盤改良装置1が水上に回収されたときに情報処理装置等によって読み出されてもよい。
【0037】
変形例1に係る地盤改良装置1によれば、水底地盤4の上面40から所定の距離hだけ高い位置から落下したときに、地盤改良装置1が水底地盤4に貫入する際の抵抗値が計測されるため、水底地盤4の強度が特定される。地盤改良装置1の利用者は、例えば、特定した強度に基づいて、水底地盤4に供給するべき地盤改良材を選択し、又は、地盤改良装置1の重量を変更してもよい。
【0038】
<変形例2>
上述した実施形態又は変形例1において、操作者は、地盤改良装置1が着底したことを認識したときに、上面40の重力方向の位置を計測しなかったが、これを計測してもよい。
【0039】
例えば、
図4(a)に示す通り、操作者は、地盤改良装置1が着底したことを認識したときに、ワイヤ2の巻下げの状態に基づいて、水面DL(基準となる面の一例)から上面40までの深さd0を計測してもよい。なお、基準となる面は、水面に限られず、平均水面、最高水面、最低水面等であってもよい。また、深さd0は、水圧計を用いて計測した水圧から推定されてもよい。
【0040】
この場合、この地盤改良方法は、地盤改良装置1を上面40に着底させる工程において地盤改良装置1が上面40に着底した際に、基準となる面から上面40までの深さを計測する工程を備える地盤改良方法として認識し得る。
【0041】
変形例2に係る地盤改良装置1によれば、基準となる面から水底地盤4までの深さが計測される。
【0042】
<変形例3>
上述した変形例1において、地盤改良装置1は、上面40から所定の距離hだけ高い位置から落下して水底地盤4に貫入する際の抵抗値を計測する計測部15を備えていたが、水底地盤4に貫入する際の深さを計測する構成を有していてもよい。
【0043】
例えば、
図4(c)に示す通り、操作者は、地盤改良装置1を水底地盤4に貫入させたときに、ワイヤ2の巻下げの状態に基づいて、水底地盤4の上面40から、貫入させた地盤改良装置1の底面14までの深さdを計測してもよい。この場合、操作者は、計測した深さdに基づいて、水底地盤4の強度を特定してもよい。なお、深さdは、水圧計を用いて計測した水圧から推定されてもよい。
【0044】
この場合、この地盤改良方法は、地盤改良装置1を上面40に貫入させる工程において地盤改良装置1が水底地盤4に貫入した深さを計測する工程と、この深さを計測する工程において計測した深さに基づき、水底地盤4の強度を特定する工程と、を備える地盤改良方法として認識し得る。
【0045】
変形例3に係る地盤改良装置1によれば、例えば、地盤改良装置1を水底地盤4に貫入させたときの抵抗値を計測しなくても、水底地盤4の強度が特定される。
【0046】
<変形例4>
上述した実施形態において、地盤改良装置1は、ホース3により供給される地盤改良材を噴出する側面噴出口11及び底面噴出口12を備えていたが、側面噴出口11又は底面噴出口12を所定の軸周りに回転移動させる回転機構を備えていてもよい。
【0047】
図5は、変形例4に係る地盤改良装置1の構成を示す図である。
図5(a)には、水平方向から地盤改良装置1を見た図が示されている。また
図5(b)には、
図5(a)に示した側面噴出口11を通る断面Fで地盤改良装置1を切断した断面図が示されている。
【0048】
図5(b)に示す通り、地盤改良装置1の内部には、中央供給管110と、この中央供給管110から側面噴出口11に向けて開通された旋回流路111とが設けられている。
【0049】
中央供給管110は、例えばホース3と回転継手等により接続されており、ホース3から供給される地盤改良材を通過させて旋回流路111へ送り込む。旋回流路111は、
図5(b)に示す通り、円筒状の地盤改良装置1の軸を中心とした渦巻状に形成されている。この形状により、旋回流路111に送り込まれた地盤改良材は、
図5(b)に示す通り、軸を中心として反対側の2箇所に設けられた側面噴出口11からそれぞれ逆向きの周方向に沿って噴出されるため、噴出される地盤改良材から受ける推進力により地盤改良装置1は軸を中心として回転する。すなわち、
図5に示す地盤改良装置1は、側面噴出口11及び底面噴出口12を、地盤改良装置1の重力方向に沿った軸周りに回転移動させる回転機構を備える地盤改良装置である。
【0050】
変形例4に係る地盤改良装置1によれば、重力方向に沿った軸周りに回転移動させられるため、側面噴出口11から噴出される地盤改良材は、回転機構を備えない場合に比べて、地盤改良装置1の側面10に沿って均一に噴出され易い。そのため、この地盤改良装置1によれば、水底地盤4が切削され易い。
【0051】
<変形例5>
上述した実施形態又は変形例において、地盤改良装置1の位置を特定する構成について言及していないが、地盤改良装置1は、測位システムによりその位置を特定されてもよい。ここでいう「位置」とは、例えば、緯度及び経度によって特定される地表上の位置であってもよいし、緯度、経度、及び深度によって特定される3次元空間中の位置であってもよい。
【0052】
図6は、変形例5における地盤改良システム9の構成を示す図である。地盤改良システム9は、地盤改良装置1と、ワイヤ2と、ホース3と、音波トランシーバ7と、情報処理装置8と、を備える。
【0053】
図6に示す音波トランシーバ7は、例えば、水底地盤4の上面40に設置される。地盤改良システム9において、音波トランシーバ7が設置された位置及び姿勢が、緯度、経度、深度、方位の基準とされる。音波トランシーバ7の位置のうち緯度及び経度は、例えば設置時のボーリング地点を全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)等により測定することで特定される。音波トランシーバ7の姿勢は、例えば設置時に調整されることで特定される。また、音波トランシーバ7は、例えば水圧を測定する水圧計を備えていてもよい。この場合、音波トランシーバ7の位置のうち深度は、この水圧計によって測定された水圧から推定される。
【0054】
音波トランシーバ7は、超音波等の音波を水中に送波する送波部と、水中に送波された音波を受波する複数の受波部と、を有する。
【0055】
複数の受波部は、いわゆる受波アレイと呼ばれる構成である。
【0056】
図6に示す地盤改良装置1は、音波トランスポンダ16を備える。音波トランスポンダ16は、音波トランシーバ7から送波される音波を受波したときに、その音波に対応する音波を送波する。音波トランスポンダ16により送波された音波は、音波トランシーバ7の複数の受波部により受波される。このやり取りをすることで、音波トランシーバ7による音波トランスポンダ16の呼出が行われる。
【0057】
図6に示す通り、音波トランシーバ7には、一端が情報処理装置8に接続された通信線20の他端が接続されている。音波トランシーバ7は、音波トランスポンダ16から受波した音波に応じた信号を通信線20により情報処理装置8に送信する。
【0058】
情報処理装置8は、制御部、記憶部、接続部等を有する。情報処理装置8が備える制御部は、CPU、ROM、RAM等を有し、CPUがROM及び記憶部に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、情報処理装置8を制御する。情報処理装置8が備える接続部は、通信線20に接続されており、音波トランシーバ7から送信された信号を受取る。情報処理装置8は、音波トランシーバ7と音波トランスポンダ16との間を音波が伝播するのに要した時間、及び受波部の位相差に基づいて、音波トランシーバ7から音波トランスポンダ16までの距離と受波の角度とを算出し、音波トランスポンダ16の位置、すなわち、地盤改良装置1の位置の情報を特定する演算を行う演算部を有する。この演算部は、演算用のプログラムを情報処理装置8の制御部が実行することで実現されてもよいし、制御部により制御される演算用のプロセッサで実現されてもよい。また、情報処理装置8は、通信線20を介して、音波トランシーバ7による音波トランスポンダ16の呼出に関する制御を行ってもよい。
【0059】
変形例5に係る地盤改良システム9は、音波トランシーバ7、音波トランスポンダ16、通信線20、及び情報処理装置8等から構成される測位システムと、地盤改良装置1とを有するため、地盤改良装置1の位置を特定することができる。
図7は、地盤改良システム9による位置の特定を説明するための図である。
【0060】
なお、変形例5における測位システムは上述した構成に限られない。例えば、音波トランシーバ7は水底地盤4の上面40ではなく、船底や船の下の水中に設置してもよい。この場合、音波トランシーバ7は、例えば船から水中に下ろしたワイヤ等で吊り下げたり、船から水中に伸ばしたロッドの先端等に取り付けられたりすることにより、水中に設置されればよい。
【0061】
また、地盤改良装置1に音波トランシーバ7を設置し、船から水中に下ろしたワイヤ、ロッド、又は水底地盤4の上面40に音波トランスポンダ16を設置してもよい。
また、上述した音波トランシーバ7は複数の受波部を有していたが、異なる位置に配置された複数の音波トランシーバ7が、それぞれ一つずつ受波部を有していてもよい。
【0062】
また、音波トランシーバ7及び音波トランスポンダ16は、いわゆる音響モデム、音響変換器等を有してもよい。この場合、音波トランシーバ7及び音波トランスポンダ16は、音響変換器等を用いて互いにやり取りする情報を、音波に変換して水中に送信し、この音波を受信したときにこの音波から上述した情報を抽出すればよい。また、上述した通信線20は、ワイヤ2やホース3に内蔵されていてもよく、また、これらに沿って敷設されていてもよい。
【0063】
また、変形例5における測位システムは音波を用いた構成に限られない。例えば、ワイヤ2に沿って1つ以上のセンサを配置し、情報処理装置8は、このセンサにより検知された位置に関する情報を基に、地盤改良装置1の位置を特定してもよい。このセンサには、例えば、光ファイバ・ジャイロ等の角速度センサや、ひずみゲージ式、圧電素子式、静電容量式等の加速度センサ等が用いられる。
【0064】
地盤改良システム9は、複数回にわたって地盤改良装置1を水底地盤4の改質対象領域Rに貫入させ、その度に音波トランシーバ7を基準とした、地盤改良装置1の位置を特定する。これにより、地盤改良システム9の情報処理装置8には、
図7に示した、貫入の位置の分布、すなわち、地盤改良材によって改良された改良地盤5の位置の分布が記憶される。この分布を参照することにより、水底地盤4の改質対象領域Rにおいて、どの部分の改質が進んでいるかが把握される。
【符号の説明】
【0065】
1…地盤改良装置、10…側面、11…側面噴出口、110…中央供給管、111…旋回流路、12…底面噴出口、13…天面、14…底面、15…計測部、16…音波トランスポンダ、2…ワイヤ、20…通信線、3…ホース、4…水底地盤、40…上面、5…改良地盤、7…音波トランシーバ、8…情報処理装置、9…地盤改良システム。