(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】自動綾巻きワインダの作業ユニットのための糸スプライシング装置
(51)【国際特許分類】
B65H 69/06 20060101AFI20220419BHJP
【FI】
B65H69/06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018031763
(22)【出願日】2018-02-26
【審査請求日】2020-11-04
(31)【優先権主張番号】10 2017 104 105.2
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513209338
【氏名又は名称】ザウラー ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Saurer Germany GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエラ ヴォルフ
(72)【発明者】
【氏名】ズィークフリート シャットン
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-078042(JP,A)
【文献】特開昭57-057164(JP,A)
【文献】特開平03-152066(JP,A)
【文献】実開昭61-151961(JP,U)
【文献】特開昭57-156976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 69/00-69/08
D01H 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの糸端部を結節部なしに糸継ぎする、自動綾巻きワインダ(1)の作業ユニット(2)のための糸スプライシング装置(10)であって、スプライシング角柱体(23)を備えており、該スプライシング角柱体(23)は、スプライシング工程中に上方に向かって開放していて空気力供給可能なスプライシング通路(27)を有していて、該スプライシング通路(27)内において前記糸端部は、前記スプライシング工程中に位置決めされている、糸スプライシング装置(10)において、
前記スプライシング角柱体(23)は、定置の空気分配体(17)上に移動調節可能に支持されていて、前記スプライシング角柱体(23)の前記スプライシング通路(27)の中心軸線(34)の角度位置が、前記作業ユニット(2)の
巻取りプロセス中に生じている糸走行路(30)の角度位置に対して、調節可能であるようになって
おり、
前記スプライシング通路(27)の前記中心軸線(34)と前記作業ユニット(2)の前記糸走行路(30)との間における角度(α)は、30°未満であるようになっている
ことを特徴とする、糸スプライシング装置(10)。
【請求項2】
前記スプライシング角柱体(23)は、スプライシング中心(57)を中心にして制限されて回転可能に支持されている、請求項1記載の糸スプライシング装置(10)。
【請求項3】
前記スプライシング角柱体(23)は、回転可能に支持された軸受装置(26)上に固定されていて、該軸受装置(26)は、係止エレメント(35)を有しており、該係止エレメント(35)は、前記空気分配体(17)内に配置された相応の係止凹部(38)と共働して、前記スプライシング角柱体(23)の前記スプライシング通路(27)の前記角度位置の確定された段階的な調節を可能にする、請求項1または2記載の糸スプライシング装置(10)。
【請求項4】
前記軸受装置(26)は、前記空気分配体(17)におけるねじ山に対応する固定ねじ(37)によって貫通される切欠き(36)を有している、請求項3記載の糸スプライシング装置(10)。
【請求項5】
前記スプライシング通路(27)の前記角度位置の無段階式の調節を可能にする調節ゲージが設けられている、請求項1または2記載の糸スプライシング装置(10)。
【請求項6】
調節可能な前記角度(α)は、当該糸スプライシング装置(10)の作動状態において糸材料に関連して、0°~20°である、請求項
1から5までのいずれか1項記載の糸スプライシング装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの糸端部を結節部なしに糸継ぎする、自動綾巻きワインダの作業ユニットのための糸スプライシング装置であって、スプライシング角柱体を備えており、該スプライシング角柱体は、スプライシング工程中に上方に向かって開放していて空気力供給可能なスプライシング通路を有していて、該スプライシング通路内において糸端部は、スプライシング工程中に位置決めされている、糸スプライシング装置に関する。
【0002】
綾巻きパッケージを製造する繊維機械、特に自動綾巻きワインダの作業ユニットの運転との関連において、糸を空気力によって糸継ぎする糸スプライシング装置の使用は、以前から公知であり、多くの特許明細書に詳しく記載されている。
【0003】
このような糸スプライシング装置を用いて、例えば糸切れ後またはコントロールされた糸クリアリング切断後のような巻取り中断後に発生する2つの糸端部を、本来の糸にほぼ等しい糸継ぎ箇所が得られるように、空気力によって再び糸継ぎすることができる。
【0004】
そのために、巻取り中断後に、作業ユニットのパッケージフレームにおいて保持された綾巻きパッケージの表面に巻き上げられている、いわゆる上糸は、作業ユニット固有の吸込みノズルを用いて収容され、かつ糸スプライシング装置のスプライシング角柱体のスプライシング通路内に挿通される。
【0005】
ほぼ同時に、さらにまたグリッパ管によって、いわゆる下糸も、繰出し箇所に位置決めされた繰出しボビンから呼び出され、同様にスプライシング角柱体のスプライシング通路内に挿通され、このスプライシング通路内において上糸と下糸とは最終的に空気力によって糸継ぎされる。
【0006】
このとき発生する糸継ぎ部が、本来の糸とほぼ等しい外観およびほぼ等しい糸強度をも有するようにするために、しかしながら両方の糸端部は、予め正確に所定長さに切断され、整然と準備され、かつ空気力によって綺麗にスプライシングされねばならない。このことは、このような糸スプライシング装置が、糸クランプ兼糸切断装置および空気力供給可能な保持兼解撚管を有しているのみならず、空気力供給可能なスプライシング通路を備えたスプライシング角柱体をも有していることを意味している。
【0007】
空気力作動式のこのような糸スプライシング装置の運転時には、しかしながらスプライシング工程中にしばしば様々な問題が発生することがある。
【0008】
接線方向に配置されたスプライシング空気ノズルを介して、スプライシング角柱体のスプライシング通路内に吹き込まれるスプライシング空気は、例えば、糸端部を渦動させて糸継ぎ部を形成する回転流のみならず、軸方向の流れ成分をも有しており、この軸方向の流れ成分は、糸端部を軸方向でスプライシング通路出口に向かって移動させようとし、このことは、種々様々な糸材料において糸スプライシングに対して不都合な影響を及ぼすことがある。
【0009】
回転流によってもまた、種々様々な糸材料において、しばしば困難が生ぜしめられる。それというのは、スプライシングすべき糸端部は、スプライシング工程中に回転流によって、糸継ぎ部の形成のためにだけ渦動されるのではなく、回転流は、スプライシング角柱体のスプライシング通路から外に振れ出る比較的大きな糸バルーンをも形成し、このことも、スプライシング工程に対して同様に極めて不都合な影響を及ぼす。
【0010】
糸スプライシング装置を可能な限り良好に糸材料に対して適合させるために、したがって、スプライシング角柱体の幅に関しておよび/またはスプライシング角柱体のスプライシング通路の角度位置に関して異なっている糸スプライシング装置が、既に開発されている。
【0011】
自動綾巻きワインダの作業ユニットにおいては公知のように、時間の経過において相前後してまたは同時に種々異なった糸材料が処理され、これらの糸材料は、上において示唆したように、その準備に関しておよびスプライシングプロセスに関して、しばしば本当に種々様々な要求を課すので、自動綾巻きワインダの作業ユニットとの関連において、通常、それぞれ1つの糸材料に対して適合可能な種々異なった糸スプライシング装置を準備することはよくある。
【0012】
これら公知の糸スプライシング装置では、通常、スプライシング角柱体がスプライシングヘッド内にもしくはスプライシングヘッドに交換可能に取り付けられている。
【0013】
それぞれ使用されるスプライシング角柱体は、このとき、既に上において示唆したように、処理すべき糸材料に関連して、多くの場合その幅に関しておよびそのスプライシング通路の角度位置に関して、互いに異なっている。
【0014】
実地においては例えばしばしば、作業ユニットの通常の糸走行路に関して20°の角度を成して延びているスプライシング通路を有しかつ13mmの幅を有する、スプライシング角柱体が使用される。しかしながら、16.5°の角度を成して配置されたスプライシング通路を有しかつ16mmの幅を有する、スプライシング角柱体も使用される。さらに、13.5°の角度を成して配置されたスプライシング通路を有しかつ20mmの幅を有する、スプライシング角柱体が公知である。
【0015】
処理すべき糸材料に相応して構成可能なこのような糸スプライシング装置は、日々の運転において良好であることが判明しているが、しかしながら、それぞれ新しい糸群において常に整然とした糸継ぎ部を保証できるようにするためには、種々様々なスプライシング角柱体を極めて大量にストックすることが必要であるという大きな欠点を有している。
【0016】
さらにこのような糸スプライシング装置では、改造処置の際にうっかりと誤った部材が取り付けられるまたは部材が不適切に取り付けられるという、おそれも常に存在する。両方の場合において、次いで形成することができる糸継ぎ部のための結果は、極めて不都合なものになる。
【0017】
ゆえに本発明の課題は、上に記載した形式の糸スプライシング装置を出発点として、糸材料変化時に迅速かつ比較的容易に新しい糸材料に対応することができる、糸スプライシング装置を開発することである。すなわち新しい糸材料の必要性に対して簡単に適合することができる糸スプライシング装置を提供することが望まれている。
【0018】
この課題を解決するために本発明の構成では、スプライシング角柱体が移動調節可能に支持されていて、スプライシング角柱体のスプライシング通路の中心軸線の角度位置が、作業ユニットの通常の糸走行路の角度位置に関して、調節可能であるようになっている。
【0019】
本発明の好適な実施形態は、従属請求項の対象である。
【0020】
糸スプライシング装置の本発明に係る構成は、特に、このように構成された糸スプライシング装置が常に迅速かつ問題なく、糸材料変化時に生じ得るすべての必要性に対応することができる、という利点を有している。すなわち本発明に係る糸スプライシング装置の使用時には、糸材料変化時に、比較的手間のかかる改造が不要となり、かつ種々異なって作業する糸スプライシング装置を準備できるようにするために、種々異なったスプライシング角柱体を大量にストックする必要もなくなる。
【0021】
糸材料変化時に生じる種々様々な要求を最適にカバーできるようにするためには、単に、比較的簡単でかつ複雑でない幾つかの調節作業しか必要なく、このような調節作業は、あまり熟練していない操作員によっても実施することができる。
【0022】
すなわち、スプライシング角柱体が、定置の空気分配体上に移動調節可能に支持されていて、スプライシング角柱体のスプライシング通路の中心軸線の角度位置が、作業ユニットの通常の糸走行路の角度位置に関して、調節可能であるようになっている糸スプライシング装置では、糸材料変化時に糸スプライシング装置の最適な適合のために必要な時間は比較的短い。相応に、糸材料変化時に不可避の、自動綾巻きワインダの機械停止時間も最短である。
【0023】
結果として本発明に係る糸スプライシング装置によって、常に最適な作業結果を簡単に保証することができ、しかも、糸材料変化時に、従来通常のように、比較的大規模でかつ時間がかかる改造作業が必要ない。
【0024】
好適な実施形態では、さらに、スプライシング角柱体は、スプライシング中心を中心にして回転可能に支持されている。
【0025】
このような構成によって、スプライシング角柱体を糸材料変化に応じて常に回転させ、そのスプライシング通路の角度位置をその都度存在する糸材料に最適に合わせられることが、操作員にとってあまり大きな負担にならないことが保証される。
【0026】
すなわち、一方では常に整然とした糸継ぎ部が形成されることが保証され、かつ他方ではしかしながらまた、糸端部およびスプライシングされた糸の問題のない取扱いが保証されている。
【0027】
スプライシング通路の、糸材料に関連して調節される如何なる角度位置においても、スプライシングすべき糸端部の問題のない挿通と、スプライシングされた糸の問題のない取出しとが保証されている。
【0028】
好適な実施形態では、例えば、スプライシング角柱体は、回転可能に支持された軸受装置上に固定されていて、該軸受装置は、係止エレメントを有しており、該係止エレメントは、空気分配体内に配置された相応の係止凹部と共働して、スプライシング角柱体のスプライシング通路の角度位置の確定された歩進的な調節を可能にする。
【0029】
係止エレメントはこのとき例えば、軸受装置内に配置された孔によって形成されることができ、これらの孔内には、ばねエレメントによって押圧されている押圧ボールが設けられている。所属の係止凹部は、部分円形状に配置されていて、空気分配体内に加工されている。
【0030】
すなわち、スプライシング角柱体のスプライシング通路を確定された角度位置において位置決めするためには、単に、スプライシング角柱体が配置されている軸受装置を、押圧ボールが空気分配体における係止凹部内に係止するまで回転させるだけでよく、このとき係止凹部によってスプライシング通路の所望の角度位置が、正確に予め設定されている。
【0031】
択一的な実施形態では、しかしながらスプライシング角柱体のスプライシング通路の角度位置の調節時に、調節ゲージを、つまりスプライシング通路の角度位置の無段階式の調節を可能にする器具を、使用することも可能である。
【0032】
このような調節ゲージを使用することによっても、スプライシング角柱体を、そのスプライシング通路が所望の角度位置を正確に占めるように、常に位置決めすることが簡単に可能である。
【0033】
スプライシング角柱体のスプライシング通路を正確に位置決めするために使用される装置とは無関係に、好適な実施形態ではさらに、軸受装置は、空気分配体におけるねじ山に対応する固定ねじによって貫通される切欠きを有している。すなわち、スプライシング角柱体を保持する回動可能に支持された軸受装置は、軸受装置に配置された切欠きを貫通して空気分配体におけるねじ山付孔に対応するねじボルトによって、それぞれ固定することができる。
【0034】
このようなねじ結合装置は、機械構造において良好であることが判明している固定装置であり、この固定装置は、容易に取扱い可能であるのみならず、スプライシング角柱体が、ひいてはスプライシング角柱体のスプライシング通路が、その都度調節された位置において確実に留まることをも、確実に保証する。
【0035】
さらに、スプライシング通路の中心軸線と作業ユニットの通常の糸走行路との間における角度は、30°未満であるようになっている。
【0036】
好適な実施形態では、糸材料に関連して調節可能なこの角度は、0°~20°である。
【0037】
相応の実験において、このような角度位置によってすべての通常の糸材料を十分にカバーできることが証明されている。すなわち粗い糸材料では、15°未満の角度位置、例えば13.5°の角度位置を有するスプライシング通路を備えたスプライシング角柱体が、しばしば利用される。これに対して繊細な糸材料では、スプライシング通路の角度位置は、しばしば16.5°を上回る値、例えば20°である。
【0038】
次に、本発明のさらなる詳細について、図面に示した実施形態を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明のように構成された糸スプライシング装置を備えた自動綾巻きワインダの1つの作業ユニットを示す側面図である。
【
図2】スプライシング角柱体を備えた本発明のように形成された糸スプライシング装置であって、スプライシング角柱体は、移動調節可能に支持された軸受装置を介して、自動綾巻きワインダの作業ユニットの空気分配体に固定されており、このとき軸受装置は、スプライシング角柱体のスプライシング通路が作業ユニットの通常の糸走行路に関して角度α=20°を成して配置されているように位置決めされている、糸スプライシング装置を示す平面図である。
【
図3】スプライシング角柱体のスプライシング通路が作業ユニットの糸走行路に関して角度α=0°を有するように位置決めされた軸受装置を備えた、
図2に示された空気分配体を示す図である。
【0040】
図1には、自動綾巻きワインダ1の実施形態において、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業ユニット2が側面図で概略的に示されている。
【0041】
このような自動綾巻きワインダ1は、実地においてはその両端部フレーム(図示せず)の間に、列を成して互いに並んで配置された、通常は同様に形成された、複数のこのような作業ユニット2を有している。
【0042】
業界においてしばしば巻取りユニットとも呼ばれるこれらの作業ユニット2において、例えばリング精紡機において製造された、比較的僅かな糸材料しか有しない紡績コップ9である繰出しボビンは、大きな体積の綾巻きパッケージ15に巻き返される。
【0043】
綾巻きパッケージ15は、その製造後に、機械長さの綾巻きパッケージ搬送装置21に引き渡され、この綾巻きパッケージ搬送装置21によって、機械端部側に配置されたパッケージチャージステーションに搬送される。
【0044】
実施形態において自動綾巻きワインダ1は、さらに、紡績コップおよび空管搬送システム3として形成された機械固有の補給装置(Logistikeinrichtung)を備えており、この紡績コップおよび空管搬送システム3のうち、
図1には単に、コップ供給区間4、可逆式に駆動可能な貯え区間5、巻取りユニット2に通じる横搬送区間6および巻管戻し区間7が示されている。
【0045】
巻取り運転中、この紡績コップおよび空管搬送システム3においては、紡績コップ9もしくは空管が搬送皿8に鉛直方向に方向付けられて配置されて、循環する。
【0046】
コップ供給区間4を介して供給されて、始めに貯え区間5において中間貯蔵される紡績コップ9は、このとき、それぞれ横搬送区間6の領域において作業ユニット2の高さに位置している繰出し箇所ASに位置決めされ、次いで大きな体積の綾巻きパッケージ15に巻き返され、このとき走行する糸は、巻取りプロセス中に同時に糸欠陥を監視され、このような糸欠陥は、場合によっては直ちにクリアリング除去される。
【0047】
個々の作業ユニット2は、そのために、公知のようにゆえに
図1には単に略示されているように、これらの作業ユニット2の整然とした作動を保証する種々様々な装置を有している。
【0048】
このような作業ユニット2は、例えばそれぞれ、糸テンショナ、糸切断装置を接続された糸クリアラ、パラフィン処理装置、糸張力センサおよび下糸センサのような、糸処理装置もしくは糸取扱い装置を備えている。
【0049】
このような自動綾巻きワインダ1の作業ユニット2は、さらにそれぞれ吸込みノズル12、グリッパ管25および糸スプライシング装置10を有している。さらにこのような自動綾巻きワインダ1は、通常しばしば、中央制御ユニット11を有しており、この中央制御ユニット11は、例えば機械バス16を介して個々の作業ユニット2の作業ユニットコンピュータ29に接続されている。
【0050】
図1からさらに分かるように、作業ユニット2はさらに綾巻きパッケージ15を巻成するために、それぞれ巻取り装置24を有しており、この巻取り装置24は特にパッケージフレーム28を有しており、このパッケージフレーム28は、旋回軸線22を中心にして可動に支持されていて、綾巻きパッケージ15の巻管を回転可能に保持する装置を備えている。
【0051】
巻取りプロセス中に、パッケージフレーム28において自由回転可能に保持された綾巻きパッケージ15はその表面で、例えばいわゆる駆動可能な糸ガイドドラム14に載置されていて、この糸ガイドドラム14によって摩擦により連行される。
【0052】
このような糸ガイドドラム14は、公知のように、いわゆる糸ガイド溝を有しているので、巻取りプロセス中に巻き上げられる糸は、さらに、巻取りパッケージに巻き上げられた糸が互いに交差する巻成層を形成するように案内される。
【0053】
しかしながら糸ガイドドラムの代わりに、溝なしのパッケージ駆動ローラを使用することも可能であり、このパッケージ駆動ローラは、巻取りプロセス中に綾巻きパッケージを単に摩擦によって回転させるだけである。
【0054】
このような場合には、綾巻きパッケージ15に巻き上げられる糸の綾振りは、例えばフィンガ糸ガイドを備えた別体の糸綾振り装置を用いて行われる。
【0055】
旋回軸線13を中心にして制限されて回転可能に支持された吸込みノズル12は、巻取り中断後に、綾巻きパッケージ15の表面に巻き上げられた、上糸31の糸端部を収容しかつ糸スプライシング装置10に引き渡すことが望まれている場合に、使用される。
【0056】
同様に、旋回軸線20を中心にして制限されて回転可能なグリッパ管25によって、巻取り中断後に、紡績コップ9に接続された下糸32の糸端部が取り扱われる。すなわちグリッパ管25は、通常糸テンショナにおいて固定された下糸32の糸端部を引き受け、この下糸32を同様に糸スプライシング装置10に引き渡す。
【0057】
図2および
図3に示されているように、通常の、つまり巻取りプロセス中に生じている糸走行路30に関して、幾分後退させられて配置されている糸スプライシング装置10は、いわゆる空気分配体17上に配置されており、この空気分配体17は、相応の収容装置(図示せず)を介して、作業ユニット2のハウジング33に接続されている。
【0058】
空気分配体17内にはさらに、
図2および
図3に示されているように、保持兼解撚管18,19が挿入されており、これらの保持兼解撚管18,19内において、上糸31および下糸32の糸端部は、後続のスプライシング工程のために空気力によって準備される。
【0059】
さらに、糸スプライシング装置10の領域には、図面には見易くする理由から図示されていない、糸クランプ装置、糸切断装置および糸寄せ器のような追加的な糸取扱い装置が配置されている。
【0060】
図2および
図3においてそれぞれ正面図で示されていて、カバーエレメントなしに作動する糸スプライシング装置10は、移動調節可能な軸受装置26に配置されたスプライシング角柱体23を有しており、このスプライシング角柱体23は、必要な場合に圧縮空気を供給可能なスプライシング通路27を有している。すなわちスプライシング角柱体23は、軸受装置26上に固定されており、この軸受装置26は、空気分配体17内にもしくは空気分配体17上に旋回運動可能に支持されている。
【0061】
それぞれ相応の装置を介して自動綾巻きワインダ1の作業ユニット2のハウジング33に接続されている空気分配体17は、そのために、スプライシング中心SZ57に配置された、軸受装置26用の軸受孔39を有している。
【0062】
これによって軸受装置26、ひいてはスプライシング角柱体23は、処理すべき糸材料に関連して、種々異なった角度位置に旋回可能である。
【0063】
図2および
図3に示されているように、空気分配体17にはさらに保持兼解撚管18,19が挿入されており、これらの保持兼解撚管18,19によって、上糸31および下糸32の糸端部はスプライシング工程のために準備される。
【0064】
スプライシング角柱体23が固定されている軸受装置26は、さらに係止エレメント35を有しており、これらの係止エレメント35は、空気分配体17に配置された相応の係止凹部38と共働して、スプライシング角柱体23のスプライシング通路27の中心軸線34の角度位置αを、作業ユニット2の通常の糸走行路30に対して、確定して段階的に調節することができる。
【0065】
係止エレメント35は、このとき例えば軸受装置26内に配置された孔(図示せず)によって形成されることができ、これらの孔内には、ばねエレメントによって押圧されている押圧ボールが支持されている。
【0066】
ばね圧力下にある押圧ボールは、軸受装置26、ひいてはスプライシング角柱体23の旋回時に、係止凹部38のうちの1つの中に係止し、これらの係止凹部38は、部分円形状に並んだ配置形態で空気分配体17内に配置されている。
【0067】
このときそれぞれの係止凹部38によって、スプライシング通路27の確定された角度位置αが予め設定されている。
【0068】
調節された角度位置は、次いで固定ねじ37の締込みによって固定することができる。
【0069】
図2において平面図で示された糸スプライシング装置10のスプライシング角柱体23は、スプライシング角柱体23のスプライシング通路27の中心軸線34が作業ユニット2の通常の糸走行路30に関して20°の角度を成して配置されている、角度位置において位置決めされている。
【0070】
糸スプライシング装置10のスプライシング角柱体23のこのような比較的大きな角度位置は、好ましくは次のような場合に、すなわち、比較的繊細な糸材料を処理することが必要な場合に、つまり糸継ぎすべき糸端部がスプライシング工程中に、スプライシング角柱体23のスプライシング通路27から外に振れ出る比較的大きな糸バルーンを形成する傾向がある糸材料を、処理することが必要な場合に、使用される。
【0071】
このような大きな糸バルーンは、スプライシング結果に極めて不都合な影響を及ぼすので、このような糸バルーンの形成は、必ず阻止されねばならない。このことは、スプライシング通路27の比較的大きな角度位置に基づいて、糸端部がスプライシング通路出口において比較的強く屈曲され、かつこのときスプライシング通路出口に接触させられることによって達成される。
【0072】
この屈曲、およびスプライシング通路出口への糸端部の接触によって、スプライシング工程中にスプライシング空気によって糸端部に加えられる回転流を、スプライシング通路27の内部において整然とした糸継ぎ部形成のために利用することが保証される。
【0073】
つまり、加えられた糸回転が糸バルーンとしてスプライシング通路27から外に延び、無駄に消失し得ることが、阻止される。
【0074】
図3には、スプライシング角柱体23が出発位置に位置決めされている糸スプライシング装置10が示されている。すなわち、
図3に示された糸スプライシング装置10では、スプライシング角柱体23のスプライシング通路27の中心軸線34は、作業ユニット2の通常の糸走行路30に関して、0°の角度αを成して配置されている。つまりスプライシング角柱体23のスプライシング通路27の中心軸線34は、通常の糸走行路30に対して平行に延びている。
【0075】
実地において、スプライシング角柱体23のスプライシング通路27の角度位置の選択された調節は、処理すべき糸材料に関連して、
図2と
図3とに示された2つの位置の間にある。
【0076】
このとき比較的粗い糸材料を処理する場合には、通常、スプライシング角柱体23のスプライシング通路27内への糸端部の挿通を不必要に困難にしないため、もしくは強く阻止しないために、スプライシング角柱体23の比較的小さな角度位置で処理が行われる。このときまた、粗い糸材料から成る糸端部は、既に比較的小さな屈曲角度においてもスプライシング通路27のスプライシング通路出口に接触しているという事実が利用される。
【0077】
すなわち粗い糸材料を処理する場合には、糸端部をスプライシング通路出口への接触によって幾分屈曲させるためには、ならびに、スプライシング工程中にスプライシング空気によって糸端部に加えられる回転流が、整然とした糸継ぎ部を形成するために利用されること、および糸バルーンとして無効に消失しないことを、保証するためには、スプライシング角柱体23のスプライシング通路27の比較的小さな角度位置で既に十分である。
【0078】
これに対して繊細な糸材料を処理する場合には、スプライシング角柱体23のスプライシング通路27の比較的大きな角度位置が有利である。それというのは、繊細な糸材料では、比較的大きな屈曲角度によってのみ、糸端部がスプライシング通路出口に確実に接触し、かつこれによって糸バルーンの発生が少なくとも強く阻止されることが、保証されるからである。