(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】無人化施工システムおよびブルドーザ
(51)【国際特許分類】
E02F 3/84 20060101AFI20220419BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20220419BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20220419BHJP
【FI】
E02F3/84 A
E02F9/20 N
G05D1/02 J
(21)【出願番号】P 2018090953
(22)【出願日】2018-05-09
【審査請求日】2021-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】進藤 彰久
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和茂
(72)【発明者】
【氏名】八尋 英恵
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-303620(JP,A)
【文献】特開平03-039525(JP,A)
【文献】特開2008-008183(JP,A)
【文献】特開昭58-026130(JP,A)
【文献】特開昭63-130832(JP,A)
【文献】特開2016-132912(JP,A)
【文献】特開平09-003939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/84
E02F 9/20
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方および後方の地形高さを計測することが可能な地形高さ検出手段を有するブルドーザと、
前記ブルドーザの位置を取得する位置取得手段と、
ブレードの位置を計測するブレード位置検出手段と、
取得した前記ブルドーザの位置に基づいて、予め設定したエリア内において前記ブルドーザを自律走行させる自律走行制御手段と、を備え、
前記自律走行制御手段は、
前記ブルドーザが前記エリア内を走行している最中に前記地形高さ検出手段によって計測した地形高さに基づいて、切土または盛土を行う場所を決定して前記ブルドーザを走行させる押土モード用制御手段、を有
し、
前記ブレード位置検出手段は、走査型の光波距離計であり、
前記押土モード用制御手段は、前記ブレード位置検出手段によって計測したブレードの位置に基づいて、前記ブレードの制御を行う、
ことを特徴とする無人化施工システム。
【請求項2】
前記エリアには複数の出来形確認点が設定されており、
前記押土モード用制御手段は、
各々の前記出来形確認点において前記地形高さが目標高さになっているか否かを判定し、前記地形高さが前記目標高さより高い場合は前記ブルドーザに切土させ、前記地形高さが前記目標高さより低い場合は前記ブルドーザに盛土させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の無人化施工システム。
【請求項3】
前記自律走行制御手段は、
現地盤の地形高さを計測するために前記ブルドーザを走行させる測量モード制御手段、を有する、
ことを特徴とする請求項1
または請求項2に記載の無人化施工システム。
【請求項4】
予め設定したエリア内を自律走行する無人化施工用のブルドーザであって、
前方および後方の地形高さを計測することが可能な地形高さ検出手段と、
前記ブルドーザの位置を取得する位置取得手段と、
ブレードの位置を計測するブレード位置検出手段と、
取得した前記ブルドーザの位置を用いて前記エリア内を自律走行させる自律走行制御手段と、を備え、
前記自律走行制御手段は、
前記ブルドーザが前記エリア内を走行している最中に前記地形高さ検出手段によって計測した地形高さに基づいて、切土または盛土を行う場所を決定して走行させる押土モード用制御手段、を有
し、
前記ブレード位置検出手段は、走査型の光波距離計であり、
前記押土モード用制御手段は、前記ブレード位置検出手段によって計測したブレードの位置に基づいて、前記ブレードの制御を行う、
ことを特徴とするブルドーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人化施工システムおよびブルドーザに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブルドーザのブレードの制御に関する技術が開発されている(特許文献1参照)。この技術は、トランスミッションが前進状態とは異なる状態から前進状態に切り替えられた後に、下降指示信号と保持指示信号が順に入力されたとき、ブレードを所定位置(例えば、地面や設計面)まで下降させるものである。そのため、例えば、前後進が繰り返されるドージング作業において、オペレータのブレード操作の負荷を軽減できるものでありながら、オペレータの意図としないブレードの制御とならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建設業界では施工の自動化が進められており、ブルドーザの自律走行についてもその要望が多くある。つまり、オペレータの操縦なしでブルドーザを自律走行させて、切盛りや整地などを行うシステムの開発が望まれている。
【0005】
このような観点から、本発明は、オペレータの操縦なしでブルドーザを自律走行させて、切盛りや整地などを行うことができる無人化施工システムおよびブルドーザを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る無人化施工システムは、ブルドーザと、前記ブルドーザの位置を取得する位置取得手段と、ブレードの位置を計測するブレード位置検出手段と、取得した前記ブルドーザの位置に基づいて、予め設定したエリア内において前記ブルドーザを自律走行させる自律走行制御手段と、を備える。
前記ブルドーザは、前方および後方の地形高さを計測することが可能な地形高さ検出手段を有する。前記自律走行制御手段は、前記ブルドーザが前記エリア内を走行している最中に前記地形高さ検出手段によって計測した地形高さに基づいて、切土または盛土を行う場所を決定して前記ブルドーザを走行させる押土モード用制御手段を有する。前記ブレード位置検出手段は、走査型の光波距離計であり、前記押土モード用制御手段は、前記ブレード位置検出手段によって計測したブレードの位置に基づいて、前記ブレードの制御を行う。
【0007】
また、本発明に係るブルドーザは、予め設定したエリア内を自律走行する無人化施工用のブルドーザである。
このブルドーザは、前方および後方の地形高さを計測することが可能な地形高さ検出手段と、前記ブルドーザの位置を取得する位置取得手段と、ブレードの位置を計測するブレード位置検出手段と、取得した前記ブルドーザの位置を用いて前記エリア内を自律走行させる自律走行制御手段と、を備える。
前記自律走行制御手段は、前記ブルドーザが前記エリア内を走行している最中に前記地形高さ検出手段によって計測した地形高さに基づいて、切土または盛土を行う場所を決定して走行させる押土モード用制御手段を有する。前記ブレード位置検出手段は、走査型の光波距離計であり、前記押土モード用制御手段は、前記ブレード位置検出手段によって計測したブレードの位置に基づいて、前記ブレードの制御を行う。
【0008】
本発明に係る無人化施工システムおよびブルドーザにおいては、ブルドーザが走行したことによる地形変化をリアルタイムに検出することができる。そのため、時々刻々と変化する現地盤の切土または盛土を行う場所を特定することが可能であり、効率的な走行ルートを選択して作業を行うことができる。また、作業の内容に則したブレードの制御が可能である。
【0009】
前記エリアには複数の出来形確認点が設定されているのがよい。前記押土モード用制御手段は、各々の前記出来形確認点において前記地形高さが目標高さになっているか否かを判定し、前記地形高さが前記目標高さより高い場合は前記ブルドーザに切土させ、前記地形高さが前記目標高さより低い場合は前記ブルドーザに盛土させる。
【0011】
また、前記自律走行制御手段は、現地盤の地形高さを計測するために前記ブルドーザを走行させる測量モード制御手段を有するのがよい。
このようにすると、エリア内の地形高さを計測することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、オペレータの操縦なしでブルドーザを自律走行させて、切盛りや整地などを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る無人化施工システムの全体図である。
【
図2A】本発明の実施形態に係るブルドーザの側面図である。
【
図2B】本発明の実施形態に係るブルドーザの平面図である。
【
図2C】本発明の実施形態に係るブルドーザの正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るブルドーザが備える制御装置のブロック図である。
【
図4】測量モード用制御手段による制御を説明するための図である。
【
図5】押土モード用制御手段による制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0015】
≪実施形態に係る無人化施工システムの構成≫
実施形態に係る無人化施工システムMの全体図を
図1に示す。
図1に示す無人化施工システムMは、ブルドーザ1をオペレータによる操縦なしで走行させて、切盛りや整地などの施工を行う次世代型の無人化施工システムである。無人化施工システムMは、主に、施工現場を自律走行するブルドーザ1と、施工現場から離れた場所にある管理室内に設置された管理用パソコン(PC:Personal Computer)2と、を備えて構成されている。
【0016】
ブルドーザ1および管理用パソコン2は、無線通信を用いて通信可能である。また、ブルドーザ1は、測位用衛星3から発信される電波(測位用信号)を受信可能である。なお、無人化施工システムMの構成はここで示すものに限定されず、例えば、ブルドーザ1が管理用パソコン2の機能を有していてもよい(つまり、管理用パソコン2を含めてブルドーザ1であってもよい)。
【0017】
<測位用衛星>
測位用衛星3は、全球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)で使用される衛星であって、自身の位置情報(軌道位置情報)や時刻情報を、ブルドーザ1に対して周期的に送信する。測位用衛星3は、例えば、GPS(Global Positioning System)衛星、GLONASS(Global Navigation Satellite System)衛星、Galileo衛星、準天頂衛星などであってよい。測位用衛星3から送信される情報は、ブルドーザ1において、例えば、位置(緯度、経度、標高)の制御に使用される。
【0018】
<管理用パソコン>
管理用パソコン2は、施工管理者により操作されるものである。施工管理者は、管理用パソコン2に、ブルドーザ1の制御に必要な情報を登録する。例えば、施工管理者は、管理用パソコン2に、施工を行う施工エリアAに関する施工エリア情報(例えば、施工エリアAの境界を特定する座標など)や施工条件に関する施工条件情報(例えば、設計地盤面の情報)などを予め登録する。
【0019】
施工エリアAには、ブルドーザ1の制御に使用されるローカル座標系xyzが設定されており、xy平面上にx軸に平行な複数の基準線Axおよびy軸に平行な複数の基準線Ayが所定間隔で設定されている。xy平面は、例えば水平面に平行であり、z軸は鉛直方向を指している。その結果、施工エリアAには、基準線Ax,Ayによってxy平面上に仮想的なメッシュ形状が形成されている。基準線Ax,Ayの間隔は任意であってよく、基準線Axが設定される間隔と基準線Ayが設定される間隔とは異なっていてよい。基準線Ax,Ayの間隔を短くするにつれてブルドーザ1の制御をより精密に行うことができる。基準線Ax,Ayの交点は、出来形の確認を行う出来形確認点Pとして用いられる。全ての出来形確認点Pのz座標値は同じであり、ここでは「0(ゼロ)」である。なお、ローカル座標系xyzを用いずにグローバル座標系XYZを用いてブルドーザ1の制御を行ってもよい。グローバル座標系XYZにおいて、X座標値は緯度であり、Y座標値は経度であり、Z座標値は高度である。
【0020】
施工管理者は、管理用パソコン2に施工条件を登録した後に、施工開始の指示を入力する。これにより、ブルドーザ1による無人化施工が開始される。無人化施工が行われている期間、管理用パソコン2は、施工進捗情報やブルドーザ1の機体情報をブルドーザ1から周期的に受信し、これらの情報を画面に表示する。
施工進捗情報は、ブルドーザ1が施工中に取得した施工エリアAに関する情報であればよく、例えば、施工中の施工エリアAの現況の地形高さ等であってよい。機体情報は、ブルドーザ1の状態を確認できるものであればよく、例えば、ブルドーザ1の進行方向(前後左右方向を含む)、速度等であってよい。
施工管理者は、管理用パソコン2に表示される施工進捗情報やブルドーザ1の機体情報を確認することで、施工の進捗やブルドーザ1の状況を把握することが可能である。なお、施工管理者は、施工開始の指示を行った後は、原則としてブルドーザ1に対して指示を行わない。
【0021】
<ブルドーザ>
図2A~
図2Cを参照して、ブルドーザ1の構成について説明する。ブルドーザ1は、主に、車体10と、走行装置20と、ブレード30と、制御装置40(
図2A参照)と、を備える。なお、ここで示すブルドーザ1の構成はあくまで例示である。
【0022】
走行装置20は、ブルドーザ1を走行させるための機構であり、
図2Aに示すように、車体10の下部に設置される。ここでの走行装置20は、各々が対をなす履帯20a、スプロケット20b及びアイドラ20cによって構成される(
図2Aでは片側のみ表示)。履帯20aは、環状(無端状)を呈し、スプロケット20b及びアイドラ20cを囲む。スプロケット20bは、動力軸に繋がっている歯車状の車輪であり、履帯20aと噛みあって動力を伝達する。アイドラ20cは、スプロケット20bの反対側の端に位置する車輪である。ブルドーザ1は、スプロケット20bの駆動に応じて履帯20aが回転することによって走行する。
【0023】
ブレード30は、前方向に土砂を押し出すためのものであり、軸D1を中心として回動(昇降)可能な状態で車体10の前部に取り付けられている。ブレード30の下端部には、整地作業において地面に挿入される刃先30aが形成されている。
図2Bに示すように、ブレード30は、平面視で略U字状のリフトフレーム31によって中央部を支持されており、リフトシリンダ32が伸縮することによって、軸D1を中心として上下に回動(昇降)する。また、ブルドーザ1は、上下左右からなる鉛直面に対してブレード30の左右端部を前後方向に傾斜させるアングル機構(例えば、アングルシリンダ33)と、前後左右からなる水平面に対してブレード30の左右端部を上下方向に傾斜させるチルト機構(図示せず)とを備える。
【0024】
車体10には、図示しないエンジンやトランスミッションの他に、
図2Aに示す測位装置12および慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)13が収納されている。また、車体10の上部中央には、通信アンテナ11が設置されている。なお、測位装置12および慣性計測装置13は、まとめて一つの装置であってもよい。
【0025】
通信アンテナ11は、管理用パソコン2(
図1参照)との通信を行うものである。具体的には、ブルドーザ1の制御装置40は、通信アンテナ11を介して管理用パソコン2からブルドーザ1の制御に必要な情報を受信する。また、制御装置40は、通信アンテナ11を介して管理用パソコン2に対して、施工進捗情報やブルドーザ1の機体情報を送信する。
【0026】
測位装置12は、ブルドーザ1の位置を算出する装置であり、位置算出手段の一例である。測位装置12は、測位用衛星3(
図1参照)から発信される電波(測位用信号)を図示しないアンテナを介して受信する。測位装置12は、例えば測位用衛星3から軌道位置情報や時刻情報などを受信する。そして、測位装置12は、測位用衛星3から受信した軌道位置情報や時刻情報を用いてブルドーザ1の位置を計算する。算出されたブルドーザ1の位置は、制御装置40に送られる。
【0027】
慣性計測装置13は、ブルドーザ1の姿勢や方向を算出する装置であり、姿勢算出手段の一例である。慣性計測装置13は、例えば3軸のジャイロセンサおよび3方向の加速度計を備え、3次元の角速度と加速度を算出する。算出されたブルドーザ1の姿勢や向きは、制御装置40に送られる。
【0028】
車体10の前端上部には、三つの測域センサS1,S2,S3が設置されており、さらに、車体10の後端上部には、測域センサS4が設置されている。測域センサS1~S4は、走査型の光波距離計(いわゆる、レーザースキャナ)である。ここでの測域センサS1~S4は、光学系を一つの回転軸で回転させることで走査を行う1軸走査型のものであり、二次元の空間データを得る二次元スキャナである。
【0029】
測域センサS1,S2は、ブレード30の位置を検出するものであり、ブレード位置検出手段の一例である。ブルドーザ1が水平面に平行な地面にある状態において、測域センサS1,S2の回転軸C1,C2は、水平面に平行であって左右方向に対して傾いている。その結果、測域センサS1,S2の検出領域K1,K2は、ブルドーザ1が水平面に平行な地面にある状態では、水平面に対して直交している。
【0030】
測域センサS1の設置角度は、ブレード30の左端部(近傍を含む)を検出領域K1に含むように調整されており、ブレード30の左端上部の位置を検出する。測域センサS1の走査角度θ1は、ブレード30の移動範囲に対応しており、ブレード30が最下部および最上部にある場合でも検出可能である。また、測域センサS2の設置角度は、ブレード30の右端部(近傍を含む)を検出領域K2に含むように調整されており、ブレード30の右端上部の位置を検出する。測域センサS2の走査角度θ2は、ブレード30の移動範囲に対応しており、ブレード30が最下部および最上部にある場合でも検出可能である。
【0031】
図2Aに示すように、ブレード30の上端位置Uは、測域センサS1,S2が検出した距離が大きくなった位置(測域センサS1,S2の距離が急変する位置)である。ブルドーザ1が傾いた状態の場合、測域センサS1,S2の検出結果をブルドーザ1の傾きで補正し、ブレード30の上端位置Uを算出するのがよい。なお、測域センサS1,S2により検出されるブレード30の位置は、基準位置(例えば、ブレード30が最下部にある状態)に対する相対的なものであってもよい。
【0032】
測域センサS3は、ブルドーザ1の前方の地形高さを検出するためのものであり、地形高さ検出手段の一例である。また、測域センサS3は、前進時において、進行方向における障害物の検出に使用される。ブルドーザ1が水平面に平行な地面にある状態において、測域センサS3の回転軸C3は、鉛直面に平行であって上下方向に対して傾いている。その結果、測域センサS3の検出領域K3は、ブルドーザ1が水平面に平行な地面にある状態では、鉛直面に対して直交している。測域センサS3は、図示しないジンバル機構(水平保持装置)に搭載されており、ブルドーザ1が水平面に対して傾斜した場合であっても、ブルドーザ1が水平面にある状態を維持する。
【0033】
測域センサS3を設置する角度は、ブルドーザ1の前方の所定距離L3において、検出領域K3が地面に交差するように調整されており、ブルドーザ1が前後方向に移動することによってブルドーザ1の前方の地形高さを検出する。測域センサS3の走査角度θ3および所定距離L3は任意であってよく、特に限定されない。なお、測域センサS3の走査角度θ3を大きくすることで、ブルドーザ1の左右の領域が測域センサS3の検出領域K3に含まれる場合、ブルドーザ1の左右両側の障害物検出に使用できる。
【0034】
測域センサS4は、ブルドーザ1の後方の地形高さを検出するためのものであり、地形高さ検出手段の一例である。また、測域センサS4は、後進時において、進行方向における障害物の検出に使用される。ブルドーザ1が水平面に平行な地面にある状態において、測域センサS4の回転軸C4は、鉛直面に平行であって上下方向に対して傾いている。その結果、測域センサS4の検出領域K4は、ブルドーザ1が水平面に平行な地面にある状態では、鉛直面に対して直交している。測域センサS4は、図示しないジンバル機構(水平保持装置)に搭載されており、ブルドーザ1が水平面に対して傾斜した場合であっても、ブルドーザ1が水平面にある状態を維持する。
【0035】
測域センサS4を設置する角度は、ブルドーザ1の後方の所定距離L4において、検出領域K4が地面に交差するように調整されており、ブルドーザ1が前後方向に移動することによってブルドーザ1の後方の地形高さを検出する。測域センサS4の走査角度θ4および所定距離L4は任意であってよく、特に限定されない。なお、測域センサS4の走査角度θ4を大きくすることで、ブルドーザ1の左右の領域が測域センサS4の検出領域K4に含まれる場合、ブルドーザ1の左右両側の障害物検出に使用できる。
【0036】
図4に示す制御装置40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。制御装置40は、ブルドーザ1に予め内蔵されたものであってもよいし、後から接続されたもの(例えば、PC(Personal Computer))であってもよい。
【0037】
図3に示すように、制御装置40は、位置姿勢取得手段41と、ブレード位置算出手段42と、地形高さ算出手段43と、自律走行制御手段44と、通信制御手段47とを備える。通信制御手段47は、例えば通信モジュールであり、管理用パソコン2との通信を制御する。また、自律走行制御手段44は、測量モード用制御手段45と、押土モード用制御手段46とを備える。
【0038】
なお、
図3に示す制御装置40の各機能は、説明の便宜上分けたものであり、本発明を限定するものではない。また、ブルドーザ1以外の装置(例えば、管理用パソコン2)が制御装置40の一部の機能を備える構成であってもよい。その場合、管理用パソコン2は、ブルドーザ1から必要な情報を取得し、リアルタイムで計算を行う。そして、無線通信を介してブルドーザ1に対して走行ルートなどを送信する。
【0039】
位置姿勢取得手段41は、測位装置12からブルドーザ1の位置の情報を取得する。また、位置姿勢取得手段41は、慣性計測装置13からブルドーザ1の姿勢や向きの情報を取得する。
【0040】
ブレード位置算出手段42は、ブレード位置検出手段としての測域センサS1,S2から検出結果を受け取り、ブレード30の位置を算出する。ブレード位置算出手段42は、例えば、測域センサS1,S2が検出した距離が大きくなった位置(測域センサS1,S2の距離が急変する位置)をブレード30の上端位置U(
図2A参照)として算出する。
【0041】
地形高さ算出手段43は、地形高さ検出手段としての測域センサS3,S4から検出結果を受け取り、ブルドーザ1の前方および後方の地形高さを算出する。地形高さ算出手段43は、例えば、測域センサS3,S4の取付位置や取付角度に基づき、出来形確認点Pに対応する位置(出来形確認点Pとx座標値およびy座標値が同じ位置か当該位置に最も近接する位置)の地形高さを算出する。
【0042】
自律走行制御手段44は、ブルドーザ1の自律走行を制御する。ここでは、ブルドーザ1を「測量モード」および「押土モード」の二つのモードで制御する。ただし、ここで示すモードはあくまで例示であって、自律走行制御手段44がこの二つのモードを備えていなければならないということではなく、また、自律走行制御手段44がこれ以外のモードを備えていてもよい。
【0043】
測量モード用制御手段45は、測量モードにおけるブルドーザ1の制御を行う。測量モードは、土砂の切盛りを行わず、施工エリアAの全領域の地形高さを計測するようにブルドーザ1を走行させるモードである。測量モードは、例えば、施工エリアAの中で地形高さを計測していない領域がある場合などに使用される。測量モード用制御手段45は、施工エリアAに設定される全ての出来形確認点Pにおける地形高さを計測するようにブルドーザ1を走行させる。測量モードにおける走行ルートは任意であってよく、走行のし易さや効率性などを考えて走行ルートは決定される。
【0044】
測量モードにおけるブルドーザ1の走行ルートEの一例を
図4に示す。走行ルートEは、平行な直線区間E1(ここではx軸方向に平行)と、方向転換のためのカーブ区間E2とからなる。カーブ区間E2の半径は、例えば、隣接する直線区間E1をブルドーザ1が走行した場合に、測域センサS3の検出領域K3の一部が重なる程度であるのがよい。その結果、ブルドーザ1をスタート地点STからゴール地点ENまで走行させることで、施工エリアAの全領域(すべての出来形確認点P)の地形高さを計測する。この際、ブレード30が地面に接触しないように、ブレード30を持ち上げた状態で走行させるとよい。
【0045】
なお、測量モードでは、地形高さを計測していない領域を走行することになるので、測量モード用制御手段45は、検出した前方の地形高さから傾斜角度を算出し、走行可能か否かを判定するようにしてもよい。走行不能な場合には、迂回するなどして走行を続行してもよいし、管理者に走行不能であることを通知してもよい。
【0046】
押土モード用制御手段46は、押土モードにおけるブルドーザ1の制御を行う。押土モードは、切盛りや整地を行うようにブルドーザ1を走行させるモードである。押土モードは、例えば、施工エリアAの全領域の地形高さを計測し終わっている場合に使用される。施工エリアAの全領域における地形高さの計測は、前記した測量モードで行われてもよいし、作業員による測量の結果(例えば、ドローンを使用)が施工管理者によって登録されたものであってもよい。
【0047】
押土モード用制御手段46は、各々の出来形確認点Pにおいて地形高さが設計高さになっているか否かを判定する。なお、現地盤の地形高さと設計高さとの間に所定量の開きがある場合には、複数回に分けて切盛りや整地作業を行うことも想定される。その場合、押土モード用制御手段46は、各々の出来形確認点Pにおいて地形高さが各作業における目標高さになっているか否かを判定する。そのため、目標高さは、設計高さを含む概念である。なお、地形高さが設計高さ(目標高さ)になっている場合とは、設計高さ(目標高さ)の誤差範囲に地形高さが含まれている場合であってよく、例えば、「設計高さ(目標高さ)±所定値」に含まれている場合である。
【0048】
押土モード用制御手段46は、地形高さが設計高さ(目標高さ)よりも高い場合に、その場所をブルドーザ1に切土させる。また、押土モード用制御手段46は、地形高さが設計高さ(目標高さ)よりも低い場合に、その場所をブルドーザ1に盛土させる。ブルドーザ1による切土および盛土の方法は特に限定されるものではなく、種々の条件に基づいて最適な方法を選択するのがよい。切土および盛土の方法には、ブルドーザ1の進入場所、進入速度および進入方向、ならびにブレード30の位置制御などが含まれる。
【0049】
また、押土モード用制御手段46は、各々の出来形確認点Pにおける地形高さと設計高さ(目標高さ)との関係に基づいて切盛りする場所を決定した後で、切盛りを行う順番(つまり、切盛りを行う走行ルート)を算出する。押土モードにおける走行ルートは、効率的なものであるのがよい。
【0050】
押土モードにおけるブルドーザ1の走行ルートFの一例を
図5に示す。
図5に示す施工エリアAには、山部A11,A12および穴部A21が存在する。山部A11,A12は、設計高さよりも高く、穴部A21は、設計高さよりも低いこととする。そのため、押土モード用制御手段46は、山部A11,A12をブルドーザ1に切土させる場所として決定し、穴部A21をブルドーザ1に盛土させる場所として決定する。山部A11は、ブルドーザ1の現在位置に対して近い場所にあり、山部A12は、ブルドーザ1の現在位置に対して遠い場所にある。
【0051】
この場合、押土モード用制御手段46は、ブルドーザ1の現在位置から近い山部A11の土砂を穴部A21に運ぶ走行ルートF1,F2を選択する。山部A12に土砂を取りに行くと、迂回しなければならず、走行距離が長いためである。その結果、ブルドーザ1は、走行ルートF1,F2に従って、山部A11の土砂を穴部A21に運ぶ。この際、押土モード用制御手段46は、地形高さに基づいてブレード30の位置制御を行い、適切な量の土砂を穴部A21に運ぶようにする。例えば、押土を行っている最中(ブレード30に土砂を抱えているとき)は、ブレード30の下端位置を地面(現地盤の地形高さ)に合わせてリアルタイムに上下動させる。そして、穴部A21に近づいたらブレード30を上げて、徐々に土砂を穴部A21に降ろすようにする。なお、一度の運搬で穴部A21の地形高さが設計高さ(目標高さ)にならなかった場合、例えば、ブレード30を持ち上げた状態でブルドーザ1を後進させて山部A11まで移動させ、山部A11の土砂を穴部A21に再び運んでもよい。
【0052】
押土モード用制御手段46は、押土モードにおける切盛り後の地形高さを測域センサS3,S4で検出し、検出結果に基づいて現地盤の地形高さを最新のものに更新する。ブルドーザ1の後部に設置される測域センサS4は、主に、前進走行時における切盛り後の地形高さを検出する。また、ブルドーザ1の前部に設置される測域センサS3は、主に、後進走行時における切盛り後の地形高さを検出する。例えば、山部A11の土砂を穴部A21に運んだことにより、山部A11の地形高さが設計高さ(目標高さ)になった場合に、押土モード用制御手段46は、山部A12の土砂を穴部A21に運ぶ走行ルートF3を選択する。そして、全ての出来形確認点Pにおいて地形高さが設計高さ(目標高さ)になった場合に、押土モードでの作業が終了する。
【0053】
以上のように、本発明に係る無人化施工システムMおよびブルドーザ1においては、ブルドーザ1が走行したことによる地形変化をリアルタイムに検出することができる。そのため、時々刻々と変化する現地盤の切土または盛土を行う場所を特定することが可能であり、効率的な走行ルートを選択して作業を行うことができる。
【0054】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を変えない範囲で実施することができる。実施形態の変形例を以下に例示する。
【0055】
本実施形態では、
図2Aに示すように、測域センサS1,S2を用いてブレード30の位置の検出を行っていたが、ブレード30の位置の検出方法はこれに限定されるものではない。例えば、ブレード30に測位用アンテナを設置し、測位用衛星3から受信した信号を用いてブレード30の位置を算出してもよい。また、ブレード30が映る位置にカメラを設置し、カメラが撮影した映像を画像解析することでブレード30の位置を算出してもよい。つまり、ブレード位置検出手段は、測位用アンテナやカメラなどであってもよい。
【0056】
また、本実施形態では、
図2Aに示すように、車体10の前端上部に測域センサS3が設置され、車体10の後端上部に測域センサS4が設置されていた。そして、測域センサS3によってブルドーザ1の前方の地形高さを検出し、測域センサS4によってブルドーザ1の後方の地形高さを検出していた。しかしながら、地形高さの検出方法はこれに限定されるものではない。例えば、走査角度が360°の測域センサ(図示せず)を車体10の上部に設置し、ブルドーザ1の周囲の地形高さを検出してもよい。
【0057】
また、本実施形態では、測域センサS3,S4は、地形高さを検出するとともに、進行方向における障害物の検出に使用されていた。しかしながら、測域センサS3,S4とは別に障害物を検出するセンサをブルドーザ1に設置してもよい。本実施形態では、障害物を検出した後で回避できるように、例えば、ブルドーザ1の前方および後方の所定距離L3,L4として「5~10m」程度を想定していたが、測域センサS3,S4で障害物の検出を行わない場合、より近い距離の地形高さを検出してもよい。
【0058】
また、本実施形態では、測域センサS3,S4を図示しないジンバル機構(水平保持装置)に搭載することで、ブルドーザ1が水平面に対して傾斜した場合であっても、ブルドーザ1が水平面にある状態を維持していた。しかしながら、測域センサS3,S4をジンバル機構に搭載せずにブルドーザ1に設置し、ブルドーザ1の傾きに基づいて測域センサS3,S4によって検出される地形高さを補正してもよい。
【0059】
また、本実施形態では、
図1に示すように、基準線Ax,Ayによってxy平面上に仮想的なメッシュ形状が施工エリアAに形成されており、このメッシュ形状は、平面視で矩形状を呈していた。しかしながら、メッシュ形状の構成はこれに限定されず、平面視で平行四辺形や三角形などであってもよい。つまり、出来形確認点Pの配置は、本実施形態で示すものに限定されず、任意であってよい。
【0060】
また、本実施形態では、ブルドーザ1を「測量モード」および「押土モード」の二つのモードで制御していた。そして、測量モードによって施工エリアAの全領域の地形高さを計測した後で、ブルドーザ1を押土モードで走行させていた。しかしながら、施工エリアAの地形高さの計測が終わっていない状態で、ブルドーザ1を押土モードで走行させてもよい。その場合、例えば、最初は狭いエリアでブルドーザ1を走行させ、この狭いエリアを走行する中で地形高さを計測したエリアを走行可能なエリアとして徐々に広げるようにする。
【符号の説明】
【0061】
1 ブルドーザ
2 管理用パソコン
3 測位用衛星
10 車体
11 通信アンテナ
12 測位装置(位置算出手段)
13 慣性計測装置(姿勢算出手段)
20 走行装置
30 ブレード
40 制御装置
41 位置姿勢取得手段
42 ブレード位置算出手段
43 地形高さ算出手段
44 自律走行制御手段
45 測量モード用制御手段
46 押土モード用制御手段
47 通信制御手段
S1,S2 測域センサ(ブレード位置検出手段)
S3,S4 測域センサ(地形高さ検出手段)
M 無人化施工システム
A 施工エリア
P 出来形確認点