(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20220419BHJP
C08G 59/20 20060101ALI20220419BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220419BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20220419BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20220419BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220419BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
C08L63/00 A
C08G59/20
C08K3/013
C08L15/00
C08L33/14
H05K1/03 610J
H05K1/03 610L
H05K1/03 610R
H05K3/46 T
(21)【出願番号】P 2018160815
(22)【出願日】2018-08-29
(62)【分割の表示】P 2014120839の分割
【原出願日】2014-06-11
【審査請求日】2018-09-27
【審判番号】
【審判請求日】2020-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2013123979
(32)【優先日】2013-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 亮
(72)【発明者】
【氏名】松山 幹
(72)【発明者】
【氏名】中村 茂雄
【合議体】
【審判長】佐藤 健史
【審判官】大島 祥吾
【審判官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/047411(WO,A1)
【文献】特開平10-321769(JP,A)
【文献】特開2010-229295(JP,A)
【文献】特開2013-35879(JP,A)
【文献】特開2011-88966(JP,A)
【文献】特開2003-292803(JP,A)
【文献】特開2011-157411(JP,A)
【文献】国際公開第2011/125665(WO,A1)
【文献】特開2011-52188(JP,A)
【文献】特開2009-74036(JP,A)
【文献】特開2012-211269(JP,A)
【文献】特開2002-60468(JP,A)
【文献】特開2008-198774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/
C08G 59/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)25℃で固形のエポキシ樹脂、
(B)無機充填剤、
(C)25℃で液状の官能基含有飽和ブタジエン樹脂、25℃で液状の官能基含有不飽和ブタジエン樹脂、並びに、ガラス転移点が25℃以下の官能基含有アクリル樹脂、からなる群から選択される1種以上の樹脂
、並びに、
硬化剤
を含む樹脂組成物であって、
(A)成分が、2官能以上のナフタレン骨格エポキシ樹脂であり、
(C)成分が、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基からなる群から選択される1種以上の官能基を有し、
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、(B)成分が40質量%以上であり、
樹脂成分を100質量%とした場合、(C)成分が10~40質量%であ
り、
(C)成分の含有量が、(A)成分の質量を100質量%とした場合、15質量%~80質量%であり、
硬化体のガラス転移温度が170℃以上である、
樹脂組成物。
【請求項2】
(C)成分が
、フェノール性水酸基、エポキシ基、
及びイソシアネート
基からなる群から選択される1種以上の官能基を有する、請求項1
に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(A)成分が、2官能以上のナフタレン骨格エポキシ樹脂
の2種以上である、請求項1
又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
部品埋め込み用樹脂組成物である、請求項1~
3のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項5】
無機充填剤の平均粒径が10μm以下であり、かつ分級により20μm以上の粒子が除去されている、請求項1~
4のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項記載の樹脂組成物を硬化させた硬化体。
【請求項7】
ガラス転移温度が170℃以上である、請求項
6記載の硬化体。
【請求項8】
線熱膨張係数(α)と弾性率(E:GPa)との積α×Eが150以下である、請求項
6又は7記載の硬化体。
【請求項9】
線熱膨張係数(α)が25ppm/℃以下であり、かつ線熱膨張係数(α:ppm/℃)と弾性率(E:GPa)との積α×Eが150以下である、請求項
6又は7記載の硬化体。
【請求項10】
請求項
6~9のいずれか1項記載の硬化体を用いてなる部品内蔵基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な樹脂組成物に関する。より詳細には、本発明は、多層プリント配線板の絶縁層に用いるのに適した樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多層プリント配線板の製造技術としては、コア基板上に絶縁層と導体層を交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。ビルドアップ方式による製造方法において、一般に、絶縁層は樹脂組成物を硬化させて形成される。かかる樹脂組成物として、エポキシ樹脂組成物を使用することが知られている(特許文献1)。
【0003】
近年、多層プリント配線板を製造するに際して、絶縁層と導体層との熱膨張の差に起因するクラックや回路歪みを防止するために、樹脂組成物にシリカ粒子等の無機充填剤を高配合する傾向にある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-254709号公報
【文献】特開2010-202865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多層プリント配線板のさらなる薄型化が望まれる中、コア基板の厚さは次第に薄くなる傾向にある。しかしながら、薄いコア基板を使用すると、コア基板の剛性不足に起因して、樹脂組成物層をコア基板の片面にのみ積層し硬化させた際に積層基板全体が反る問題(以下、「反りの問題」ともいう。)が生じる場合がある。
【0006】
かかる反りの問題に関しては、絶縁層の熱膨張率を低下させると共に弾性率を低く抑えることで緩和し得ることが期待される。すなわち、絶縁層の熱膨張自体を抑制すると共に、熱膨張により生じた応力を緩和することで反りの問題は軽減されることが期待される。ここで、無機充填剤含有量の高い樹脂組成物を使用する近年の傾向によれば、得られる絶縁層の熱膨張率は概して低いものの、弾性率が非常に高いため、反りの問題は何ら軽減されず、対策が望まれている。絶縁層の弾性率を低下させるべく柔軟な成分を樹脂組成物に添加することも考えられるが、その場合には絶縁層の熱膨張率が上昇して、やはり反りの問題を軽減させることはできないことが推察される。
【0007】
本発明の課題は、薄いコア基板を使用する場合であっても反りの問題を生じない樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、下記特定の樹脂組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の内容を含む。
【0010】
〔1〕 (A)25℃で固形のエポキシ樹脂、
(B)無機充填剤、
(C)25℃で液状の官能基含有飽和ブタジエン樹脂、25℃で液状の官能基含有不飽和ブタジエン樹脂、ガラス転移温度が25℃以下の官能基含有アクリル樹脂、からなる群から選択される1種以上の樹脂、
を含む樹脂組成物であって、
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、(B)成分が40質量%以上であり、
樹脂成分を100質量%とした場合、(C)成分が10~40質量%である、樹脂組成物。
〔2〕 (C)成分が、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基からなる群から選択される1種以上の官能基を有する、上記〔1〕記載の樹脂組成物。
〔3〕 (A)成分が、2官能以上のナフタレン骨格エポキシ樹脂である、上記〔1〕又は〔2〕記載の樹脂組成物。
〔4〕 硬化剤を更に含む、上記〔1〕~〔3〕のいずれか記載の樹脂組成物。
〔5〕 部品埋め込み用樹脂組成物である、上記〔1〕~〔4〕のいずれか記載の樹脂組成物。
〔6〕 無機充填剤の平均粒径が10μm以下であり、かつ分級により20μm以上の粒子が除去されている、上記〔1〕~〔5〕のいずれか記載の樹脂組成物。
〔7〕 上記〔1〕~〔6〕のいずれか記載の樹脂組成物を硬化させた硬化体。
〔8〕 ガラス転移温度が170℃以上である、上記〔7〕記載の硬化体。
〔9〕 線熱膨張係数(α)と弾性率(E:GPa)との積α×Eが150以下である、上記〔7〕又は〔8〕記載の硬化体。
〔10〕 線熱膨張係数(α)が25ppm以下であり、かつ線熱膨張係数(α)と弾性率(E:GPa)との積α×Eが150以下である、上記〔7〕又は〔8〕記載の硬化体。
〔11〕 上記〔7〕~〔10〕のいずれか記載の硬化体を用いてなる部品内蔵基板。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、薄いコア基板を使用する場合であっても反りの問題を生じない樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0013】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A)25℃で固形のエポキシ樹脂、(B)無機充填剤、(C)25℃で液状の官能基含有飽和ブタジエン樹脂、25℃で液状の官能基含有不飽和ブタジエン樹脂、ガラス転移温度が25℃以下の官能基含有アクリル樹脂、からなる群から選択される1種以上の樹脂を含み、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、(B)成分が40質量%以上であり、樹脂成分を100質量%とした場合、(C)成分が10~40質量%であることを特徴とする。
【0014】
本発明者らは、上記特定の(A)乃至(C)成分を上記特定の量比にて含む樹脂組成物を多層プリント配線板の絶縁層に使用することによって、反りの問題を解決し得ることを見出したものである。
【0015】
ここで、2層が積層してなる複合材の反りの指標として、下記ターナーの式により求められる複合材全体の熱膨張係数(αcom)が挙げられる。複合材の反りは、該αcomの値が低いほど抑えられる。なお、ターナーの式に関しては、例えば、特許第3260340号、特開2008-186905号公報にも記載される。
【0016】
【0017】
例えば、第1層が絶縁層であり、第2層がコア基板であると仮定する。この場合、α2、E2は、多層プリント配線板の製造に使用するコア基板に固有の値である。よって、絶縁層及びコア基板の膜厚が決定されれば、上記αcomは、実質的にα1及びE1の関数として取り扱うことができる。また、絶縁層の弾性率に比しコア基板の弾性率は概して十分に高いことから(E2>>E1)、α1及びE1の関数としてみた場合の分母の寄与は限定的であり、上記αcomは専らα1E1の積によって左右されることとなる。
【0018】
詳しくは後述することとするが、本発明の樹脂組成物は、その硬化物(絶縁層)の熱膨張率(α1)と弾性率(E1)が共に低く、α1E1の積は極めて低い。従来の技術常識によれば、(C)成分のような柔軟な成分を添加すると熱膨張率が上昇してしまい所期の効果は達成されないはずであり、本発明者らが見出したかかる知見は従来の技術常識からは予測し得なかったものである。
【0019】
以下、本発明の樹脂組成物に含まれる、(A)乃至(C)成分について説明する。
【0020】
<(A)成分>
(A)成分は、25℃で固形のエポキシ樹脂(以下、「固形のエポキシ樹脂」ともいう。)である。
【0021】
固形のエポキシ樹脂としては、これらに限定されるわけではないが、ナフタレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、ナフトールノボラックエポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂が挙げられ、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、又はナフチレンエーテル型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましく、2官能以上のナフタレン骨格エポキシ樹脂がさらに好ましい。固形のエポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP-4700」、「HP-4710」、「EXA-7311G4S」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA7311」、「EXA7311-G3」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬(株)製の「EPPN-502H」(トリスフェノールエポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラックエポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、新日鐵化学(株)製の「ESN475」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらの物質は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、2官能以上のナフタレン型エポキシ樹脂を2種以上組み合わせて用いるのが好ましい。
【0022】
(A)成分のエポキシ当量は、好ましくは50~3000、より好ましくは80~2000、さらに好ましくは110~1000である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
【0023】
(A)成分の25℃で固形のエポキシ樹脂の数平均分子量(Mn)は、好ましくは100~5000であり、より好ましくは250~3000であり、さらに好ましくは400~2000である。ここで、樹脂の数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を使用して測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0024】
樹脂組成物中の(A)成分の含有量は、5質量%~50質量%が好ましく、10質量%~40質量%がより好ましく、15質量%~30質量%がさらに好ましい。
【0025】
<(B)成分>
(B)成分は、無機充填剤である。
【0026】
無機充填剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、及びジルコン酸カルシウム等が挙げられる。これらの中でも無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ、球形シリカ等のシリカが好ましく、球形シリカが特に好ましい。無機充填剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましい球形シリカとして、(株)アドマテックス製「SO-C2」、電気化学工業(株)製「FB-5SDC」が挙げられる。
【0027】
無機充填剤の平均粒径は、流動性及び回路埋め込み性の観点から、無機充填剤の平均粒径は好ましくは10μm以下、より好ましくは9μm以下、さらに好ましくは8μm以下、さらにより好ましくは7μm以下、特に好ましくは6μm以下又は5μm以下である。無機充填剤の平均粒径の下限は特に限定されないが、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上である。また、無機充填剤に関しては、分級により20μm以上の粒子が除去されていることが好ましく、15μm以上の粒子が除去されていることがより好ましい。これにより、多層プリント配線板として部品内蔵回路板を製造する場合に、コア基板のキャビティ充填性及び部品の埋め込み性が良好となる。好適な実施形態において、無機充填剤は、平均粒子径が10μm以下であり、かつ分級により20μm以上の粒子が除去されている。無機充填剤の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、無機充填剤の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填剤を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製LA-500等を使用することができる。
【0028】
無機充填剤は、耐湿性及び分散性を高める観点から、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤などの1種以上の表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)等が挙げられる。
【0029】
無機充填剤の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填剤の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上が更に好ましい。一方、熱硬化性樹脂組成物層の溶融粘度の上昇を防止する観点から、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下が更に好ましい。
【0030】
表面処理剤で表面処理された無機充填剤は、溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に、無機充填剤の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填剤に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填剤の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、(株)堀場製作所製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0031】
本発明の樹脂組成物中の(B)成分の含有量は、得られる硬化物(絶縁層)の熱膨張率を十分に低下させる観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、40質量%以上であり、好ましくは45質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上である。本発明においては、反りの問題を抑えつつ、(B)成分の含有量を更に高めることができる。例えば、樹脂組成物中の(B)成分の含有量は55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、又は75質量%以上にまで高めてよい。
【0032】
樹脂組成物中の(B)成分の含有量の上限は、得られる硬化物(絶縁層)の機械強度の観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
【0033】
<(C)成分>
(C)成分は、25℃で液状の官能基含有飽和及び/又は不飽和ブタジエン樹脂、ガラス転移温度が25℃以下の官能基含有アクリル樹脂、からなる群から選択される1種以上の樹脂である。
【0034】
(C)成分のガラス転移温度(Tg)は25℃以下である。官能基含有飽和及び/又は不飽和ブタジエン樹脂のTgを測定することは困難であるが、25℃で液状であることからも把握されるとおり、25℃で液状であれば、官能基含有飽和及び/又は不飽和ブタジエン樹脂のTgも当然にして25℃以下と考えられる。かかるガラス転移温度の低い樹脂に関しては、多層プリント配線板の絶縁層に使用する場合、(C)成分の弾性率の低さに起因して、絶縁層の弾性率を低下させる傾向にある。その一方で、かかるガラス転移温度の低い樹脂は、通常、絶縁層の熱膨張率を上昇させることが知られている。本発明者らは、Tgが25℃以下又は25℃で液状であり且つ官能基を有する特定の樹脂が、絶縁層の弾性率を低下させるという効果はそのままに、絶縁層の熱膨張率を上昇させないばかりか、却って絶縁層の熱膨張率を低下させる効果を奏することを見出し、本発明に至ったものである。
【0035】
(C)成分の樹脂が有する官能基としては、(A)成分と反応し得る官能基が好ましい。好適な一実施形態において、(C)成分の樹脂が有する官能基は、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基からなる群から選択される1種以上の官能基である。中でも、当該官能基としては、エポキシ基、フェノール性水酸基が好ましく、エポキシ基がより好ましい。
【0036】
(C)成分のガラス転移温度(Tg)は、弾性率の低い絶縁層を得る観点から、25℃以下であり、好ましくは20℃以下、より好ましくは15℃以下である。(C)成分のガラス転移温度の下限は特に限定されないが、通常-15℃以上とし得る。
【0037】
(25℃で液状の官能基含有飽和及び/又は不飽和ブタジエン樹脂)
25℃で液状の官能基含有飽和及び/又は不飽和ブタジエン樹脂としては、25℃で液状の酸無水物基含有飽和及び/又はブタジエン樹脂、25℃で液状のフェノール性水酸基含有飽和及び/又はブタジエン樹脂、25℃で液状のエポキシ基含有飽和及び/又はブタジエン樹脂、25℃で液状のイソシアネート基含有飽和及び/又はブタジエン樹脂、及び25℃で液状のウレタン基含有飽和及び/又はブタジエン樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂が好ましい。ここで、「飽和及び/又は不飽和ブタジエン樹脂」とは、飽和ブタジエン骨格及び/又は不飽和ブタジエン骨格を含有する樹脂をいい、これらの樹脂において飽和ブタジエン骨格及び/又は不飽和ブタジエン骨格は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。
【0038】
25℃で液状の官能基含有飽和及び/又は不飽和ブタジエン樹脂の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500~50000、より好ましくは1000~10000であり、さらに好ましくは、2000~10000であり、さらにより好ましくは2300~10000である。ここで、樹脂の数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を使用して測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0039】
25℃で液状の官能基含有飽和及び/又は不飽和ブタジエン樹脂の官能基当量は、好ましくは100~10000、より好ましくは150~5000であり、さらに好ましくは190~3000であり、さらにより好ましくは200~2000である。なお、官能基当量とは、1当量の官能基を含む樹脂の質量である。例えば、樹脂のエポキシ当量は、日本工業規格JIS K7236に従って測定することができる。
【0040】
中でも、絶縁層の熱膨張率及び弾性率をより低下させて反りの問題を一層緩和させる観点から、(C)成分としては、25℃で液状のエポキシ基含有飽和及び/又は不飽和ブタジエン樹脂が好ましい。
【0041】
25℃で液状のエポキシ基含有飽和及び/又は不飽和ブタジエン樹脂としては、25℃で液状の飽和及び/又はブタジエン骨格含有エポキシ樹脂が好ましく、25℃で液状のポリブタジエン骨格含有エポキシ樹脂、25℃で液状の水素化ポリブタジエン骨格含有エポキシ樹脂がより好ましい。ここで、「水素化ポリブタジエン骨格含有エポキシ樹脂」とは、ポリブタジエン骨格の少なくとも一部が水素化されたエポキシ樹脂をいい、必ずしもポリブタジエン骨格が完全に水素化されたエポキシ樹脂である必要はない。25℃で液状のポリブタジエン骨格含有樹脂及び25℃で液状の水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂の具体例としては、ダイセル化学(株)製のPB3600(ポリブタジエン骨格エポキシ樹脂)、ナガセケムテックス(株)製のFCA-061L(水素化ポリブタジエン骨格エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0042】
25℃で液状の酸無水物基含有飽和及び/又は不飽和ブタジエン樹脂としては、25℃で液状の飽和及び/又は不飽和ブタジエン骨格含有酸無水物樹脂が好ましい。
【0043】
25℃で液状のフェノール性水酸基含有飽和及び/又は不飽和ブタジエン樹脂としては、25℃で液状の飽和及び/又は不飽和ブタジエン骨格含有フェノール樹脂が好ましい。
【0044】
25℃で液状のイソシアネート基含有飽和及び/又は不飽和ブタジエン樹脂としては、25℃で液状の飽和及び/又は不飽和ブタジエン骨格含有イソシアネート樹脂が好ましい。
【0045】
25℃で液状のウレタン基含有飽和及び/又は不飽和ブタジエン樹脂としては、25℃で液状の飽和及び/又は不飽和ブタジエン骨格含有ウレタン樹脂が好ましい。
【0046】
(Tgが25℃以下の官能基含有アクリル樹脂)
Tgが25℃以下の官能基含有アクリル樹脂としては、Tgが25℃以下の酸無水物基含有アクリル樹脂、Tgが25℃以下のフェノール性水酸基含有アクリル樹脂、Tgが25℃以下のイソシアネート基含有アクリル樹脂、Tgが25℃以下のウレタン基含有アクリル樹脂、及びTgが25℃以下のエポキシ基含有アクリル樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂が好ましい。
【0047】
Tgが25℃以下の官能基含有アクリル樹脂の数平均分子量(Mn)は、好ましくは10000~1000000、より好ましくは30000~900000、さらに好ましくは300000~900000である。
【0048】
Tgが25℃以下の官能基含有アクリル樹脂の官能基当量は、好ましくは1000~50000、より好ましくは2500~30000である。
【0049】
中でも、絶縁層の熱膨張率及び弾性率をより低下させて反りの問題を一層緩和させる観点から、Tgが25℃以下のエポキシ基含有アクリル樹脂が好ましい。
【0050】
Tgが25℃以下のエポキシ基含有アクリル樹脂としては、Tgが25℃以下のエポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂が好ましく、その具体例としては、ナガセケムテックス(株)製の「SG-80H」(エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂(数平均分子量Mn:350000g/mol、エポキシ価0.07eq/kg、Tg11℃))、ナガセケムテックス(株)製の「SG-P3」(エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂(数平均分子量Mn:850000g/mol、エポキシ価0.21eq/kg、Tg12℃))が挙げられる。
【0051】
Tgが25℃以下の酸無水物基含有アクリル樹脂としては、Tgが25℃以下の酸無水物基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂が好ましい。
【0052】
Tgが25℃以下のフェノール性水酸基含有アクリル樹脂としては、Tgが25℃以下のフェノール性水酸基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂が好ましく、その具体例としては、ナガセケムテックス(株)製の「SG-790」(エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂(数平均分子量Mn:500000g/mol、水酸基価40mgKOH/kg、Tg-32℃))が挙げられる。
【0053】
中でも、(C)成分としては、25℃で液状のポリブタジエン骨格エポキシ樹脂、25℃で液状の水素化ポリブタジエン骨格エポキシ樹脂、Tgが25℃以下のエポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体からなる群から選択される1種以上が好ましい。
【0054】
本発明の樹脂組成物中における(C)成分の含有量は、絶縁層の熱膨張率及び弾性率を低下させて反りの問題を緩和する観点から、樹脂成分を100質量%とした場合、10~40質量%であり、好ましくは12質量%~35質量%、より好ましくは15質量%~32質量%である。ここで、「樹脂成分」とは、樹脂組成物から(B)無機充填剤を除いた成分である。つまり、(A)成分、(C)成分以外にも、後述する硬化剤等として含まれる樹脂も含まれる。
とくに(A)成分の質量を100質量%とした場合、樹脂組成物中における(C)成分の含有量は、好ましくは15質量%~80質量%、より好ましくは20質量%~70質量%である。
【0055】
本発明の樹脂組成物中における(C)成分の含有量は、上記の樹脂成分との相対的な割合を満たす限り特に限定されないが、下限は好ましくは3質量%以上、5質量%以上であり、上限は好ましくは20質量%以下である。
【0056】
本発明の樹脂組成物における、(B)成分と(C)成分との質量比((B)成分/(C)成分)は、絶縁層の熱膨張率及び弾性率を低下させて反りの問題を緩和する観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上である。また、(B)成分/(C)成分の質量比の上限は、反りの問題を緩和する観点から、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下である。
【0057】
本発明の樹脂組成物は、上記(A)乃至(C)成分に加えて、硬化剤を含んでいてもよい。
【0058】
硬化剤としては、本発明で使用する樹脂を硬化する機能を有する限り特に限定されないが、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、及びシアネートエステル系硬化剤が挙げられる。硬化剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。中でも、本発明においては、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、及び活性エステル系硬化剤からなる群から選択される1種以上の硬化剤を用いることが好ましく、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、及び活性エステル系硬化剤からなる群から選択される硬化剤を、2種以上併用することがより好ましい。
【0059】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層(回路配線)との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び導体層との密着性(剥離強度)を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂を硬化剤として用いることが好ましい。
【0060】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成(株)製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬(株)製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、東都化成(株)製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN375」、「SN395」、DIC(株)製の「LA7052」、「LA7054」、「LA3018」、「HPC-9500」等が挙げられる。
【0061】
活性エステル系硬化剤としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型のジフェノール化合物(ポリシクロペンタジエン型のジフェノール化合物)、フェノールノボラック等が挙げられる。
【0062】
具体的には、ジシクロペンタジエン型ジフェノール縮合構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール縮合構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。
【0063】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール縮合構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」(DIC(株)製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416-70BK」(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱化学(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱化学(株)製)などが挙げられる。
【0064】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子(株)製の「HFB2006M」、四国化成工業(株)製の「P-d」、「F-a」が挙げられる。
【0065】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン(株)製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0066】
本発明の樹脂組成物中における硬化剤の含有量は、[(A)成分のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率が、好ましくは1:0.2~1:2の範囲、より好ましくは1:0.3~1:1.5の範囲、さらに好ましくは1:0.4~1:1の範囲となるように調整してよい。ここで、硬化剤の反応基とは、活性水酸基、活性エステル基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、(A)成分のエポキシ基の合計数とは、(A)成分として使用する各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、硬化剤の反応基の合計数とは、各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。
【0067】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、硬化促進剤、熱可塑性樹脂、難燃剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0068】
硬化促進剤としては、例えば、有機ホスフィン化合物、イミダゾール化合物、アミンアダクト化合物、及び3級アミン化合物などが挙げられる。硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物中のエポキシ樹脂と硬化剤の不揮発成分の合計を100質量%としたとき、0.05質量%~3質量%の範囲で使用することが好ましい。硬化促進剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0069】
難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。樹脂組成物中の難燃剤の含有量は特に限定はされないが、0.5質量%~10質量%が好ましく、1質量%~9質量%がより好ましく、1質量%~8質量%がさらに好ましい。
【0070】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、及びポリスルホン樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0071】
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は8,000~70,000の範囲が好ましく、10,000~60,000の範囲がより好ましく、20,000~60,000の範囲がさらに好ましい。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。具体的には、熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として(株)島津製作所製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工(株)製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0072】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱化学(株)製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、東都化成(株)製の「FX280」及び「FX293」、三菱化学(株)製の「YL7553」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
【0073】
ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業(株)製の電化ブチラール4000-2、5000-A、6000-C、6000-EP、積水化学工業(株)製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0074】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報記載のもの)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等に記載のもの)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0075】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績(株)製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業(株)製のポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド「KS9100」、「KS9300」等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0076】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学(株)製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0077】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0078】
樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは0.1質量%~10質量%である。
【0079】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、他の添加剤を含んでいてもよい。かかる他の添加剤としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに有機フィラー、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、着色剤等が挙げられる。
【0080】
本発明の樹脂組成物は、シート状繊維基材に含浸してプリプレグとしてもよい。プリプレグは、シート状繊維基材中に本発明の樹脂組成物を含浸させてなるものである。
【0081】
プリプレグに用いるシート状繊維基材は特に限定されず、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。多層プリント配線板の絶縁層の形成に用いる場合には、厚さが50μm以下の薄型のシート状繊維基材が好適に用いられ、特に厚さが10μm~40μmのシート状繊維基材が好ましく、10μm~30μmのシート状繊維基材がより好ましく、10~20μmのシート状繊維基材が更に好ましい。シート状繊維基材として用いられるガラスクロス基材の具体例としては、旭シュエーベル(株)製の「スタイル1027MS」(経糸密度75本/25mm、緯糸密度75本/25mm、布重量20g/m2、厚さ19μm)、旭シュエーベル(株)製の「スタイル1037MS」(経糸密度70本/25mm、緯糸密度73本/25mm、布重量24g/m2、厚さ28μm)、(株)有沢製作所製の「1078」(経糸密度54本/25mm、緯糸密度54本/25mm、布重量48g/m2、厚さ43μm)、(株)有沢製作所製の「1037NS」(経糸密度72本/25mm、緯糸密度69本/25mm、布重量23g/m2、厚さ21μm)、(株)有沢製作所製の「1027NS」(経糸密度75本/25mm、緯糸密度75本/25mm、布重量19.5g/m2、厚さ16μm)、(株)有沢製作所製の「1015NS」(経糸密度95本/25mm、緯糸密度95本/25mm、布重量17.5g/m2、厚さ15μm)、(株)有沢製作所製の「1000NS」(経糸密度85本/25mm、緯糸密度85本/25mm、布重量11g/m2、厚さ10μm)等が挙げられる。また液晶ポリマー不織布の具体例としては、(株)クラレ製の、芳香族ポリエステル不織布のメルトブロー法による「ベクルス」(目付け量6~15g/m2)や「ベクトラン」などが挙げられる。
【0082】
プリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の公知の方法により製造してよい。
【0083】
本発明の樹脂組成物は、多層プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(多層プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物を用いて多層プリント配線板の絶縁層を形成することにより、熱膨張率及び弾性率が共に低い絶縁層を実現することができ反りの問題を顕著に改善し得る。中でも、ビルドアップ方式による多層プリント配線板の製造において、絶縁層を形成するための樹脂組成物(多層プリント配線板のビルドアップ絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができ、その上にメッキにより導体層が形成される絶縁層を形成するための樹脂組成物(メッキにより導体層を形成する多層プリント配線板のビルドアップ絶縁層用樹脂組成物)としてさらに好適に使用することができる。また、本発明の樹脂組成物は、流動性及び部品埋め込み性に優れることから、多層プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも好適に使用することができる。すなわち、本発明の樹脂組成物は、部品内蔵回路板の部品を埋め込むための樹脂組成物(部品埋め込み用樹脂組成物)として好適に使用することができる。部品内蔵回路板の製造に使用されるコア基板に関しては、部品を内蔵するためのキャビティを有し、且つ部品内蔵回路板自体の小型化の要請から該キャビティ密度は高くなる傾向にあり、コア基板の剛性不足に起因した反りの問題はより深刻となる傾向にあるが、本発明の樹脂組成物を部品埋め込み用樹脂組成物として使用することにより、キャビティ密度が高く且つ薄いコア基板を使用する場合であっても反りの問題を顕著に緩和することができる。
【0084】
[接着フィルム]
本発明の樹脂組成物を用いて接着フィルムを形成することができる。
【0085】
一実施形態において、本発明の接着フィルムは、支持体と、該支持体と接合する樹脂組成物層を含み、樹脂組成物層が本発明の樹脂組成物からなる。
【0086】
接着フィルムは、例えば、有機溶剤に本発明の樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーターなどを用いて支持体上に塗布し、樹脂ワニスを乾燥させることによって形成することができる。
【0087】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(以下「MEK」ともいう。)及びシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶媒等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0088】
樹脂ワニスの乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の乾燥方法により実施してよい。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、接着フィルムを形成することができる。
【0089】
接着フィルムの形成に使用される支持体としては、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔(銅箔、アルミニウム箔等)、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルムが好適に用いられる。プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミドなどが挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。好適な一実施形態において、支持体は、ポリエチレンテレフタレートフィルムである。
【0090】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理を施してあってもよい。
【0091】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。
【0092】
本発明において、離型層付き支持体は、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック(株)製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」などが挙げられる。
【0093】
支持体の厚さは、特に限定されないが、好ましくは5μm~75μm、より好ましくは10μm~60μmである。なお、支持体が離型層付き支持体である場合、離型層付き支持体全体の厚みが上記範囲であることが好ましい。
【0094】
本発明の接着フィルムにおいて、樹脂組成物層の厚さは、特に限定されないが、多層プリント配線板の薄型化の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、さらにより好ましくは50μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、通常、15μm以上である。
【0095】
本発明の接着フィルムにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。接着フィルムは、ロール状に巻きとって保存することが可能であり、多層プリント配線板の製造において絶縁層を形成する際には、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0096】
[硬化体]
本発明の樹脂組成物は、熱硬化することにより硬化体とすることができる。
【0097】
熱硬化の条件は特に限定されず、多層プリント配線板の製造において絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0098】
例えば、熱硬化条件は、樹脂組成物の組成等によっても異なるが、硬化温度は120℃~240℃の範囲(好ましくは150℃~210℃の範囲、より好ましくは170℃~190℃の範囲)、硬化時間は5分間~90分間の範囲(好ましくは10分間~75分間、より好ましくは15分間~60分間)とすることができる。
【0099】
熱硬化させる前に、樹脂組成物を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、熱硬化に先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物を5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間)予備加熱してもよい。
【0100】
熱硬化は、大気圧下(常圧下)にて行うことが好ましい。
【0101】
本発明の硬化体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは170℃以上、より好ましくは180℃以上、さらに好ましくは190℃以上、さらにより好ましくは200℃以上、特に好ましくは210℃以上又は220℃以上である。
【0102】
本発明の硬化体の線熱膨張係数(α)は、好ましくは25ppm以下、より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは15ppm以下、さらにより好ましくは10ppm以下である。線熱膨張係数(α)の下限は特に限定されないが、通常、1ppm以上である。本発明において、硬化体の線熱膨張係数(α)は、熱機械分析(TMA)における引張モードで測定される平面方向の25~150℃の線熱膨張係数(α)である。硬化体の線熱膨張係数(α)の測定に使用し得る熱機械分析装置としては、例えば、(株)リガク製「Thermo Plus TMA8310」が挙げられる。
【0103】
本発明の硬化体の弾性率(E)は、好ましくは14GPa以下、より好ましくは12GPa以下、さらに好ましくは9GPa以下、さらにより好ましくは5GPa以下、特に好ましくは4GPa以下である。弾性率(E)の下限は特に限定されないが、通常、1GPa以上である。本発明において、硬化体の弾性率(E)は、オリエンテック社製万能試験機を使用して室温(20~30℃)において測定された弾性率(E)である。
【0104】
本発明の硬化体の線熱膨張係数(α)と弾性率(E:GPa)との積α×Eの値は、好ましくは150以下、より好ましくは125以下、さらに好ましくは100以下、さらにより好ましくは95以下、特に好ましくは90以下、85以下、80以下、75以下、70以下、65以下、60以下又は55以下である。また、該積の下限は特に限定されないが、通常、10以上である。
【0105】
好適な実施形態において、本発明の硬化体の線熱膨張係数(α)は25ppm以下であり、かつ、線熱膨張係数(α)と弾性率(E:GPa)との積α×Eは150以下である。
【0106】
上記のとおり、上記特定の(A)乃至(C)成分を特定量比にて含有する樹脂組成物を熱硬化させて得られる本発明の硬化体は、熱膨張率(α)と弾性率(E)が共に低く、その積α×Eの値が極めて低い。これによって、本発明の硬化体は、多層プリント配線板や部品内蔵基板の絶縁層として使用した場合に、反りの問題を有利に緩和することができる。
【実施例】
【0107】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明をいかなる意味においても制限するものではない。なお、以下の記載において、「部」は「質量部」を意味する。
【0108】
<測定方法・評価方法>
まず各種測定方法・評価方法について説明する。
【0109】
<反りの評価>
(1)接着フィルムのラミネート
実施例及び比較例で作製した接着フィルムを9.5cm角のサイズに切り出し、バッチ式真空加圧ラミネーター((株)名機製作所製「MVLP-500)を用いて、10cm角に切り取った三井金属鉱業(株)製銅箔(3EC-III、厚さ35μm)の粗化面にラミネートした。
ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、120℃で30秒間、圧力0.74MPaにて圧着させることにより、樹脂組成物層付き金属箔を作成し、その後PETフィルムを剥離した。
【0110】
(2)樹脂組成物層の硬化
上記(1)で得られた樹脂組成物層付き金属箔の四辺を、樹脂組成物層が上面になるように厚さ1mmのSUS板にポリイミドテープで貼りつけ、180℃、30分間の硬化条件で樹脂組成物層を硬化させた。
【0111】
(3)反りの測定
上記(2)で得られた樹脂組成物層付き金属箔の四辺のうち、三辺のポリイミドテープを剥離し、SUS板から最も高い点の高さを求めることにより反りの値を求めた。そして、反りの大きさが1cm未満の場合を「〇」、1cm以上3cm未満の場合を「△」、3cm以上の場合を「×」とした。
【0112】
<線熱膨張係数の測定及び評価>
実施例及び比較例で作製した接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーター((株)名機製作所製「MVLP-500」)を用いて、ポリイミドフィルム(宇部興産(株)製、ユーピレックスS)にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし後、120℃で30秒間、圧力0.74MPaにて圧着させた。その後、PETフィルムを剥離し、190℃、90分間の硬化条件で樹脂組成物を硬化させ、ポリイミドフィルムを剥離することにより硬化物を得た。
得られた硬化物サンプルを、幅5mm、長さ15mmの試験片に切断し、熱機械分析装置((株)リガク製「Thermo Plus TMA8310」)を使用して、引張加重法で熱機械分析を行った。サンプルを前記装置に装着後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における25℃から150℃までの平均の線熱膨張係数(ppm)を算出した。線熱膨張係数の値が、20ppm未満を「○」、20ppm以上25ppm未満を「△」、25ppm以上を「×」と評価した。
【0113】
<弾性率の測定>
上記接着フィルムを180℃で90分間、熱硬化させてシート状の硬化物を得た。次に、PETフィルムを剥離し、日本工業規格(JIS K7127)に準拠し、テンシロン万能試験機((株)エー・アンド・デイ製)により硬化物の引っ張り試験を行い、弾性率を測定した。
【0114】
<ガラス転移温度の測定>
上記の硬化物サンプルを、幅5mm、長さ15mmの試験片に切断し、動的粘弾性測定装置(SIIナノテクノロジー(株)製「EXSTAR6000」)を使用して引張加重法で熱機械分析を行った。サンプルを前記装置に装着後、荷重200mN、昇温速度2℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における寸法変化シグナルの傾きが変化する点からガラス転移温度(℃)を算出した。
【0115】
(実施例1)
<樹脂ワニスの調製>
ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(数平均分子量Mn:700g/mol、エポキシ当量163、DIC(株)製「HP-4710」)25部、ナフタレン型エポキシ樹脂(数平均分子量Mn:490g/mol、エポキシ当量186、DIC(株)製「EXA7311-G4S」)25部、ポリブタジエン骨格含有エポキシ樹脂(数平均分子量Mn:5900g/mol、エポキシ当量190、ダイセル化学(株)製「PB3600」)とをメチルエチルケトン(MEK)15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、トリアジン含有フェノールノボラック樹脂(水酸基当量125、DIC(株)製「LA7054」、窒素含有量約12重量%)の固形分60重量%のMEK溶液15部、ナフトール系硬化剤(水酸基当量153、DIC(株)製「HPC-9500」)の固形分60重量%のMEK溶液25部、球形シリカ(平均粒径4.0μm、比表面積2.4m2/g、電気化学工業(株)製「FB-5SDC」)160部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。
<接着フィルムの作成>
前記樹脂ワニスをアルキッド系離型剤で処理されたPETフィルム(厚さ38μm)の離型処理面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmになるよう、ダイコータにて均一に塗布し、80~120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて、接着フィルムを得た。
【0116】
(実施例2)
ポリブタジエン骨格含有エポキシ樹脂を水素化ポリブタジエン骨格含有エポキシ樹脂(数平均分子量Mn:2650g/mol、エポキシ当量1500、ナガセケムテックス(株)製「FCA-061L」)に置き換えたこと以外は、実施例1と同様にして接着フィルムを作製した。
【0117】
(実施例3)
ポリブタジエン骨格含有エポキシ樹脂25部をエポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体(数平均分子量Mn:850000g/mol、エポキシ価0.21eq/kg、Tg12℃、ナガセケムテックス(株)製「SG-P3」)24.9部に置き換えたこと以外は、実施例1と同様にして接着フィルムを作製した。
【0118】
(実施例4)
球形シリカの含有量を70部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして接着フィルムを作製した。
【0119】
(実施例5)
球形シリカの含有量を350部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして接着フィルムを作製した。
【0120】
(実施例6)
ポリブタジエン骨格含有エポキシ樹脂の含有量を10部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして接着フィルムを作製した。
【0121】
(実施例7)
ポリブタジエン骨格含有エポキシ樹脂の含有量を35部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして接着フィルムを作製した。
【0122】
(実施例8)
球形シリカとして球形シリカ(平均粒径0.5μm、比表面積6.8m2/g、(株)アドマテックス製「SO-C2」、アミノシラン系カップリング剤処理済み)350部を使用したこと以外は実施例1と同様にして接着フィルムを作製した。
【0123】
(実施例9)
樹脂ワニスの調整を下記のとおり行ったこと以外実施例1と同様にして接着フィルムを作成した。
<樹脂ワニスの調製>
ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(数平均分子量Mn:700g/mol、エポキシ当量163、DIC(株)製「HP-4710」)50部、ポリブタジエン骨格含有エポキシ樹脂(数平均分子量Mn:5900g/mol、エポキシ当量190、ダイセル化学(株)製「PB3600」)80重量%のMEK溶液24部をメチルエチルケトン(MEK)15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、トリアジン含有フェノールノボラック樹脂(水酸基当量151、DIC(株)製「LA3018」、窒素含有量約18重量%)の固形分60重量%のMEK溶液18部、活性エステル系硬化剤(官能基当量223、DIC(株)製「HPC-8000-65T」)の固形分65重量%のMEK溶液20部、球形シリカ(平均粒径4.0μm、比表面積2.4m2/g、電気化学工業(株)製「FB-5SDC」)140部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。
【0124】
(比較例1)
ポリブタジエン骨格含有エポキシ樹脂を使用しなかったこと、球形シリカを120部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして接着フィルムを作製した。
【0125】
(比較例2)
ポリブタジエン骨格含有エポキシ樹脂の含有量を5.5部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして接着フィルムを作製した。
【0126】
(比較例3)
球形シリカの充填量を40部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして接着フィルムを作製した。
【0127】
(比較例4)
ポリブタジエン骨格含有エポキシ樹脂を使用しなかった点、及び球形シリカの含有量を300部に変更した点以外は、実施例1と同様にして接着フィルムを作製した。
【0128】
結果を以下の表に示す。
【0129】
【0130】
このように、本発明の樹脂組成物によれば、反りを十分に抑制することができる。