(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】オイルフィルタ締結構造、中間締結部材、及び樹脂ケーシング
(51)【国際特許分類】
F01M 11/03 20060101AFI20220419BHJP
F16L 41/14 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
F01M11/03 E
F16L41/14
(21)【出願番号】P 2018186571
(22)【出願日】2018-10-01
【審査請求日】2021-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000151209
【氏名又は名称】株式会社マーレ フィルターシステムズ
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】野中 敦
(72)【発明者】
【氏名】石神 新太郎
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-310607(JP,A)
【文献】特開2010-112360(JP,A)
【文献】特開2012-184847(JP,A)
【文献】特開2013-256962(JP,A)
【文献】実開昭60-6806(JP,U)
【文献】実開昭60-24319(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0328730(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 1/10
F01M 11/03
F16B 35/04
F16B 39/02
F16L 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂ケーシングと、
前記樹脂ケーシングとオイルフィルタとの間に介在すべき中間締結部材と、
を備え、
前記樹脂ケーシング及び前記中間締結部材は、
前記樹脂ケーシングの内部と前記オイルフィルタとを連通するオイル用の連通路の周囲に設けられ、前記中間締結部材が前記樹脂ケーシングにねじ込まれることにより前記樹脂ケーシングと前記中間締結部材とを結合するねじ機構と、
前記ねじ機構を介して漏洩するオイルを遮蔽するシール機構と、
前記中間締結部材が前記樹脂ケーシングにねじ込まれる過程において前記中間締結部材の逆回りをロックする逆転ロック機構と、
を協働して構成することを特徴とする、オイルフィルタ締結構造。
【請求項2】
前記逆転ロック機構は、前記樹脂ケーシング及び前記中間締結部材の一方に設けられた突起と、他方に設けられた係止部と、を有し、
前記係止部は、前記中間締結部材が前記樹脂ケーシングにねじ込まれるときには前記突起に接触しても前記突起を乗り越え可能だが、前記突起を乗り越えた後は、前記中間締結部材が逆回りしても前記突起を乗り越え不能に構成されていることを特徴とする請求項1記載のオイルフィルタ締結構造。
【請求項3】
前記係止部は、爪部と、前記爪部に結合されたアーム部と、を有し、
前記爪部または前記突起は、前記中間締結部材が前記樹脂ケーシングにねじ込まれるときに、前記突起を乗り越える方向に前記爪部を案内する傾斜部を有し、
前記アーム部は、前記爪部が前記突起を乗り越えられるように弾性変形可能に形成されていることを特徴とする請求項2記載のオイルフィルタ締結構造。
【請求項4】
前記アーム部は、前記中間締結部材が前記樹脂ケーシングにねじ込まれるときの前記中間締結部材の回転運動の中心軸を中心とする円弧状に形成されていることを特徴とする請求項3記載のオイルフィルタ締結構造。
【請求項5】
前記中間締結部材は、前記連通路の周囲に設けられたオイルフィルタ用ねじ部であって、前記オイルフィルタが前記中間締結部材にねじ込まれたときに前記オイルフィルタのねじ部と螺合するオイルフィルタ用ねじ部をさらに有し、
前記中間締結部材が前記樹脂ケーシングにねじ込まれるときの前記中間締結部材の回転運動の中心軸は、前記オイルフィルタが前記中間締結部材にねじ込まれるときの前記オイルフィルタの回転運動の中心軸と同軸であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項記載のオイルフィルタ締結構造。
【請求項6】
樹脂ケーシングとオイルフィルタとの間に介在すべき中間締結部材であって、
前記樹脂ケーシングの内部と前記オイルフィルタとを連通するオイル用の連通路の周囲に設けられ、前記中間締結部材が前記樹脂ケーシングにねじ込まれたときに前記樹脂ケーシングのねじ部に螺合することにより、前記樹脂ケーシングと前記中間締結部材とを結合するねじ部と、
前記中間締結部材が前記樹脂ケーシングにねじ込まれたときに前記樹脂ケーシングの所定箇所に接触して、前記樹脂ケーシングのねじ部と前記中間締結部材のねじ部とが螺合する箇所を介して漏洩するオイルを遮蔽するシールと、
前記中間締結部材が前記樹脂ケーシングにねじ込まれる過程において前記中間締結部材の逆回りをロックする係止部と、
を有し、
前記係止部は、前記中間締結部材が前記樹脂ケーシングにねじ込まれるときには前記樹脂ケーシングの突起に接触しても前記突起を乗り越え可能だが、前記突起を乗り越えた後は、前記中間締結部材が逆回りしても前記突起を乗り越え不能に構成されていることを特徴とする、中間締結部材。
【請求項7】
オイルフィルタによって濾過されるべきオイルが収容される樹脂ケーシングであって、
前記樹脂ケーシングの内部と前記オイルフィルタとを連通するオイル用の連通路の周囲に設けられたねじ部であって、前記樹脂ケーシングとオイルフィルタとの間に介在すべき中間締結部材が前記樹脂ケーシングにねじ込まれたときに前記中間締結部材のねじ部に螺合することにより、前記樹脂ケーシングと前記中間締結部材とを結合するねじ部と、
前記中間締結部材が前記樹脂ケーシングにねじ込まれたときに前記中間締結部材のシールと接触して、前記樹脂ケーシングのねじ部と前記中間締結部材のねじ部とが螺合する箇所を介して漏洩するオイルを遮蔽する遮蔽部と、
前記中間締結部材が前記樹脂ケーシングにねじ込まれる過程において前記中間締結部材の係止部と協働して前記中間締結部材の逆回りをロックする突起と、
を有し、
前記係止部は、前記中間締結部材が前記樹脂ケーシングにねじ込まれるときには前記突起に接触しても前記突起を乗り越え可能だが、前記突起を乗り越えた後は、前記中間締結部材が逆回りしても前記突起を乗り越え不能に構成されていることを特徴とする、樹脂ケーシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルフィルタ締結構造に関し、特に、交換可能なカートリッジ式のオイルフィルタの締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の内部では、潤滑のためのエンジンオイルが循環されている。内燃機関の稼働により、エンジンオイルに金属粉やゴムなどの異物が含められる可能性がある。このような異物を濾過するため、エンジンオイルを循環させる油路にオイルフィルタが設けられている。オイルフィルタは、濾過性能を維持するため通常は交換可能になっている。
【0003】
ここで、鉄製のスタッドボルトを使ってアルミニウム製のオイルクーラーにオイルフィルタを締結する技術が提案されている(特許文献1参照)。油路にオイルフィルタが取り付けられるため、ねじ部の緩みが問題となるが、特許文献1に係る技術では、スタッドボルトの外周の一部に非円形の異形部を設け、この異形部と係合するアルミニウム製の回り止め部材を、オイルクーラーにろう付けして、ねじ部の緩みを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、軽量化やコスト低減などの目的のため、金属部品の樹脂化が進められている。上述の特許文献1に記載された技術では、オイルクーラーは金属で形成されているため、ろう付けという手段を用いることが可能であった。しかしながら、例えばオイルフィルタを取り付けるべき部材が樹脂であった場合、ろう付けを行うことはできない。また、ねじ結合部からのオイルの漏れを回避するためにスタッドボルトを強いトルクで締め付けると、金属部品よりも変形しやすいため樹脂部品のねじ部の強度が問題となる。
【0006】
そこで本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、樹脂ケーシングにオイルフィルタを適切に締結することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るオイルフィルタ締結構造は、樹脂ケーシングと、樹脂ケーシングとオイルフィルタとの間に介在すべき中間締結部材と、を備える。樹脂ケーシング及び中間締結部材は、樹脂ケーシングの内部とオイルフィルタとを連通するオイル用の連通路の周囲に設けられ、中間締結部材が樹脂ケーシングにねじ込まれることにより樹脂ケーシングと中間締結部材とを結合するねじ機構と、ねじ機構を介して漏洩するオイルを遮蔽するシール機構と、中間締結部材が樹脂ケーシングにねじ込まれる過程において中間締結部材の逆回りをロックする逆転ロック機構と、を協働して構成する。
【0008】
この態様によれば、まず、ねじ機構を強いトルクで締め付けなくても、ねじ機構を介して漏洩するオイルをシール機構で遮蔽することができる。さらに、ねじ機構の緩みは、逆転ロック機構によって回避することができる。したがって、樹脂ケーシングにオイルフィルタを適切に締結することができる。
【0009】
逆転ロック機構は、樹脂ケーシング及び中間締結部材の一方に設けられた突起と、他方に設けられた係止部と、を有していてもよい。係止部は、中間締結部材が樹脂ケーシングにねじ込まれるときには突起に接触しても突起を乗り越え可能だが、突起を乗り越えた後は、中間締結部材が逆回りしても突起を乗り越え不能に構成されていてもよい。この態様によれば、簡易な構成で逆転ロック機構を構成することができる。
【0010】
係止部は、爪部と、爪部に結合されたアーム部と、を有していてもよい。爪部または突起は、中間締結部材が樹脂ケーシングにねじ込まれるときに、突起を乗り越える方向に爪部を案内する傾斜部を有し、アーム部は、爪部が突起を乗り越えられるように弾性変形可能に形成されていてもよい。この態様によれば、簡易な構成で適切に中間締結部材の逆回りを回避することができる。
【0011】
なお、アーム部は、中間締結部材が樹脂ケーシングにねじ込まれるときの中間締結部材の回転運動の中心軸を中心とする円弧状に形成されていてもよい。
【0012】
中間締結部材は、連通路の周囲に設けられたオイルフィルタ用ねじ部であって、オイルフィルタが中間締結部材にねじ込まれたときにオイルフィルタのねじ部と螺合するオイルフィルタ用ねじ部をさらに有していてもよい。中間締結部材が樹脂ケーシングにねじ込まれるときの中間締結部材の回転運動の中心軸は、オイルフィルタが中間締結部材にねじ込まれるときのオイルフィルタの回転運動の中心軸と同軸であってもよい。この場合、オイルフィルタが中間締結部材にねじ込まれるとき、または交換のためオイルフィルタが中間締結部材から取り外されるときに、中間締結部材に逆回りのトルクが与えられる可能性がある。この態様によれば、このような場合であっても中間締結部材の逆回りを回避することができる。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る中間締結部材は、樹脂ケーシングとオイルフィルタとの間に介在すべき中間締結部材であって、樹脂ケーシングの内部とオイルフィルタとを連通するオイル用の連通路の周囲に設けられ、中間締結部材が樹脂ケーシングにねじ込まれたときに樹脂ケーシングのねじ部に螺合することにより、樹脂ケーシングと中間締結部材とを結合するねじ部と、中間締結部材が樹脂ケーシングにねじ込まれたときに樹脂ケーシングの所定箇所に接触して、樹脂ケーシングのねじ部と中間締結部材のねじ部とが螺合する箇所を介して漏洩するオイルを遮蔽するシールと、中間締結部材が樹脂ケーシングにねじ込まれる過程において中間締結部材の逆回りをロックする係止部と、を有していてもよい。係止部は、中間締結部材が樹脂ケーシングにねじ込まれるときには樹脂ケーシングの突起に接触しても突起を乗り越え可能だが、突起を乗り越えた後は、中間締結部材が逆回りしても突起を乗り越え不能に構成されていてもよい。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る樹脂ケーシングは、オイルフィルタによって濾過されるべきオイルが収容される樹脂ケーシングであって、樹脂ケーシングの内部とオイルフィルタとを連通するオイル用の連通路の周囲に設けられたねじ部であって、樹脂ケーシングとオイルフィルタとの間に介在すべき中間締結部材が樹脂ケーシングにねじ込まれたときに中間締結部材のねじ部に螺合することにより、樹脂ケーシングと中間締結部材とを結合するねじ部と、中間締結部材が樹脂ケーシングにねじ込まれたときに中間締結部材のシールと接触して、樹脂ケーシングのねじ部と中間締結部材のねじ部とが螺合する箇所を介して漏洩するオイルを遮蔽する遮蔽部と、中間締結部材が樹脂ケーシングにねじ込まれる過程において中間締結部材の係止部と協働して中間締結部材の逆回りをロックする突起と、を有し、係止部は、中間締結部材が樹脂ケーシングにねじ込まれるときには突起に接触しても突起を乗り越え可能だが、突起を乗り越えた後は、中間締結部材が逆回りしても突起を乗り越え不能に構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、樹脂ケーシングにオイルフィルタを適切に締結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施形態に係るオイルフィルタ締結構造を示す斜視図である。
【
図2】第1の実施形態に係るオイルフィルタ締結構造の断面図である。
【
図3】(a)は、第1の実施形態に係るスタッドボルトの斜視図である。(b)は、当該スタッドボルトを軸方向から見た図である。(c)は、当該スタッドボルトの側面図である。
【
図4】(a)は、第1の実施形態に係るオイルパンのうち、係止面周辺の部分の斜視図である。(b)は、オイルパンにスタッドボルトが取り付けられた状態を示す斜視図である。
【
図5】(a)は、第2の実施形態に係るスタッドボルトの斜視図である。(b)は、当該スタッドボルトを軸方向から見た図である。(c)は、当該スタッドボルトの側面図である。
【
図6】(a)は、第3の実施形態に係るスタッドボルトの斜視図である。(b)は、当該スタッドボルトを軸方向から見た図である。(c)は、当該スタッドボルトの側面図である。
【
図7】(a)は、第4の実施形態に係るスタッドボルトの斜視図である。(b)は、当該スタッドボルトを軸方向から見た図である。(c)は、当該スタッドボルトの側面図である。
【
図8】(a)は、第5の実施形態に係るスタッドボルトの斜視図である。(b)は、当該スタッドボルトを軸方向から見た図である。(c)は、当該スタッドボルトの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るオイルフィルタ締結構造10を示す斜視図である。オイルフィルタ締結構造10は、交換可能なカートリッジ形のオイルフィルタ16をオイルパン12に締結するための構造である。オイルフィルタ締結構造10は、オイルパン12及びスタッドボルトユニット14を有する。オイルパン12には、内燃機関であるエンジンの内部を循環したオイルが貯留される。第1の実施形態では、オイルパン12は樹脂によって形成されており、樹脂ケーシングとして機能する。なお、樹脂ケーシングはオイルパン12に限定されず、オイルが内部に循環されるケーシングであれば、他の部品であってもよい。スタッドボルトユニット14は、スタッドボルトユニット14をオイルパン12に締結するためにオイルパン12とオイルフィルタ16との間に介在する、中間締結部材として機能する。
【0018】
図2は、第1の実施形態に係るオイルフィルタ締結構造10の断面図である。オイルフィルタ締結構造10は、第1のねじ機構30、シール機構32、及び第2のねじ機構34を有する。第1のねじ機構30は、スタッドボルトユニット14がオイルパン12にねじ込まれることによりオイルパン12とスタッドボルトユニット14とを結合する。シール機構32は、第1のねじ機構30を介して漏洩するオイルを遮蔽する。第2のねじ機構34は、オイルフィルタ16がスタッドボルトユニット14にねじ込まれることにより、スタッドボルトユニット14とオイルフィルタ16とを結合し、その結果、オイルパン12とオイルフィルタ16とを結合する。第1のねじ機構30及び第2のねじ機構34は、オイルパン12の内部とオイルフィルタ16とを連通するオイル用の連通路24の中心軸Xと同軸に、連通路24の周囲に設けられる。
【0019】
以下、第1のねじ機構30、シール機構32、及び第2のねじ機構34の構成について説明する。スタッドボルトユニット14は、スタッドボルト20及びOリング22を有する。スタッドボルト20は、アルミニウム、鉄などの金属で形成されている。なお、スタッドボルト20の材質は金属に限定されず、例えば硬質の樹脂材料であってもよい。スタッドボルト20は、本体部20aを有する。本体部20aは、円筒状に形成されており、内部に軸方向に延びる貫通孔20bが形成されている。この貫通孔20bを介して、オイルが循環する。このため、貫通孔20bが、オイルの連通路24の一部をなし、連通路24の中心軸Xは、貫通孔20bの中心軸と一致している。
【0020】
本体部20aの両端には、第1雄ねじ部20c及び第2雄ねじ部20dが形成されている。オイルパン12は、オイル供給路12a及びオイル戻し路12bを有する。第1の実施形態では、オイル供給路12aは垂直に、オイル戻し路12bは水平に延在している。オイル戻し路12bは、連通路24の中心軸Xと同軸に延在しており、連通路24の一部を構成する。
【0021】
オイルパン12には、連通路24の中心軸Xと同軸の雌ねじ部12cが形成されている。スタッドボルトユニット14がオイルパン12にねじ込まれることにより、スタッドボルト20の第1雄ねじ部20cがオイルパン12の雌ねじ部12cに螺合して、スタッドボルトユニット14がオイルパン12に結合される。したがって、第1のねじ機構30は、スタッドボルト20の第1雄ねじ部20c及びオイルパン12の雌ねじ部12cによって構成される。なお、オイルパン12に雄ねじ部が形成されており、スタッドボルト20に雌ねじ部が形成されていてもよい。
【0022】
オイルパン12には、連通路24の中心軸Xと垂直かつ中心軸Xと同軸の円環状に形成された係止面12dを有する。係止面12dは、雌ねじ部12cよりもオイルフィルタ16側に形成されている。スタッドボルト20は、ストッパ部20fをさらに有する。ストッパ部20fは、本体部20aの第1雄ねじ部20c側の端面において、連通路24の中心軸Xと垂直かつ中心軸Xと同軸の円環状に形成されている。スタッドボルト20は、ストッパ部20fがオイルパン12の係止面12dに当てつけられるまでねじ込まれる。
【0023】
オイルフィルタ16は、一方が閉鎖した円筒状に形成されており、フィルタ部16a及び雌ねじ部16bを有する。雌ねじ部16bは、オイルフィルタ16の内周面のうち、オイルフィルタ16の開放している側、すなわちスタッドボルトユニット14側の端部に形成されている。
【0024】
オイルフィルタ16がスタッドボルトユニット14にねじ込まれることにより、オイルフィルタ16の雌ねじ部16bがスタッドボルト20の第2雄ねじ部20dに螺合し、オイルフィルタ16がスタッドボルトユニット14に結合される。したがって、第2のねじ機構34は、オイルフィルタ16の雌ねじ部16b及びスタッドボルト20の第2雄ねじ部20dによって構成される。なお、オイルフィルタ16に雄ねじ部が形成されており、スタッドボルト20に雌ねじ部が形成されていてもよい。
【0025】
オイルパン12には、連通路24の中心軸Xと垂直なストッパ面12eを有する。ストッパ面12eは、中心軸Xと同軸の円環状に形成されている。オイルフィルタ16は、中心軸Xと垂直な取付け面16cを有する。取付け面16cは、中心軸Xと同軸の円環状に形成されている。オイルフィルタ16は、取付け面16cがオイルパン12のストッパ面12eに当てつけられるまでねじ込まれる。こうして、オイルフィルタ16がスタッドボルトユニット14を介してオイルパン12に締結される。このように、スタッドボルトユニット14がオイルパン12にねじ込まれるときのスタッドボルトユニット14の回転運動の中心軸は、オイルフィルタ16がスタッドボルトユニット14にねじ込まれるときのオイルフィルタ16の回転運動の中心軸と同軸である。
【0026】
オイルパン12のオイルフィルタ16側の端面には、ストッパ面12eの内側に円形の開口部が形成されている。この開口部は、オイル供給路12aと連通している。オイルフィルタ16がオイルパン12に取り付けられると、この開口部は、オイルフィルタ16のフィルタ部16aに連通する。フィルタ部16aはさらに連通路24に連通しており、上述のように連通路24はオイルパン12のオイル戻し路12bに連通している。こうして、オイル供給路12aから供給されたオイルは、オイルフィルタ16のフィルタ部16aを通過することにより濾過され、連通路24及びオイルパン12のオイル戻し路12bを介してオイルパン12の内部に戻される。
【0027】
本体部20aには、外周上に一周して延びる溝20eが形成されている。この溝20eに、Oリング22が装着される。オイルパン12には、中心軸Xを中心とする円筒状のシール面12fを有する。シール面12fは、雌ねじ部12cよりも中心軸Xの方向においてオイルフィルタ16側に設けられている。シール面12fは、雌ねじ部12cよりも大きい径を有している。スタッドボルト20がオイルパン12に取り付けられると、Oリング22はオイルパン12のシール面12fに当てつけられ、第1のねじ機構30を介したオイルの漏洩を遮蔽する。したがって、Oリング22、スタッドボルト20の溝20e、及びオイルパン12のシール面12fは、シール機構32として機能する。なお、スタッドボルト20に溝20eが形成されていなくてもよい。この場合、スタッドボルト20の本体部20aの外周にOリング22が直接取り付けられる。
【0028】
上述のように、オイルパン12は樹脂によって形成されている。このため、スタッドボルトユニット14を強いトルクでオイルパン12にねじ込むと、オイルパン12の雌ねじ部12cの強度が問題となる。しかしながら、スタッドボルトユニット14を弱いトルクでオイルパン12にねじ込んだままでは、オイルパン12の雌ねじ部12cとスタッドボルト20の第1雄ねじ部20cの螺合が緩む可能性がある。
【0029】
さらに、上述のように、スタッドボルトユニット14がオイルパン12にねじ込まれるときのスタッドボルトユニット14の回転運動の中心軸は、オイルフィルタ16がスタッドボルトユニット14にねじ込まれるときのオイルフィルタ16の回転運動の中心軸と同軸である。この場合、オイルフィルタ16がスタッドボルトユニット14にねじ込まれるとき、または交換のためオイルフィルタ16がスタッドボルトユニット14から取り外されるときに、スタッドボルトユニット14に逆回りのトルクが与えられる可能性がある。
【0030】
このため、第1の実施形態に係るオイルフィルタ締結構造10は、スタッドボルトユニット14の逆回りをロックする逆転ロック機構を有する。以下、
図3、
図4を用いて逆転ロック機構の構成について説明する。
【0031】
図3(a)は、第1の実施形態に係るスタッドボルト20の斜視図である。
図3(b)は、当該スタッドボルト20を軸方向から見た図である。
図3(c)は、当該スタッドボルト20の側面図である。スタッドボルト20は、ロックアーム20gを有する。第1の実施形態では、ロックアーム20gは2本設けられている。なお、ロックアーム20gが2本に限定されないことはもちろんである。
【0032】
ロックアーム20gは、爪部20hとアーム部20iを有している。アーム部20iは、一端が爪部20hに一体的に結合されており、他端が本体部20aに一体的に結合されている。アーム部20iは、スタッドボルト20の中心軸を中心とする円弧状に形成されている。
【0033】
爪部20hは、傾斜部20j及び係止部20kを有する。傾斜部20jは、スタッドボルトユニット14がオイルパン12にねじ込まれるときに突起12gに接触する部分に形成されている。傾斜部20jは、スタッドボルトユニット14がオイルパン12にねじ込まれるときに突起12gを乗り越える方向に爪部20hを案内する。アーム部20iは、爪部20hが突起12gを乗り越えられるように弾性変形可能に形成されている。これにより、簡易な構成で適切にスタッドボルトユニット14の逆回りを回避することができる。係止部20kは、中心軸Xに平行な面である。
【0034】
なお、貫通孔20bのオイルフィルタ16側の端部には、スタッドボルト20をねじ込むための工具が挿入される工具用孔20mが形成されている。工具用孔20mは、中心軸Xと垂直な断面が正六角形になるよう形成されている。このためスタッドボルトユニット14は、六角形のドライバを使ってオイルパン12にねじ込むことができる。
【0035】
図4(a)は、第1の実施形態に係るオイルパン12のうち、スタッドボルト20が取り付けられる開口部周辺の斜視図である。オイルパン12は、複数の突起12gを有する。突起12gは、その頂部が開口部の端面と面一になるように当該端面に向かって突出する。第1の実施形態では、6つの突起12gが設けられている。なお、突起12gが6つに限定されないことはもちろんである。
【0036】
突起12gは、傾斜部12h及び係止部12iを有する。傾斜部12hは、スタッドボルトユニット14がオイルパン12にねじ込まれるときにスタッドボルト20の爪部20hに接触する部分に形成されている。傾斜部12hは、スタッドボルトユニット14がオイルパン12にねじ込まれるときに、突起12gを乗り越える方向に爪部20hを案内する。
【0037】
図4(b)は、オイルパン12にスタッドボルト20が取り付けられたときの逆転ロック機構36を示す斜視図である。係止部12iは、中心軸Xに平行な面である。スタッドボルト20の爪部20hがオイルパン12の突起12gを一旦乗り越えると、その後にスタッドボルトユニット14が逆回りに回転しようとしても、スタッドボルト20の係止部20kがオイルパン12の係止部12iに係止され、その回転がロックされる。このように、逆転ロック機構36は、オイルパン12の突起12gと、スタッドボルト20に設けられたロックアーム20gと、によって構成される。なお、オイルパン12にロックアームが形成され、スタッドボルト20に突起が設けられていてもよい。
【0038】
ロックアーム20gは、スタッドボルトユニット14がオイルパン12にねじ込まれるときにはオイルパン12の突起12gに接触しても突起12gを乗り越え可能だが、突起12gを乗り越えた後は、オイルフィルタ交換等の際に加わる回転力によりスタッドボルトユニット14が逆回りしても突起12gを乗り越え不能に構成されている。スタッドボルトユニット14がオイルパン12にねじ込まれる過程において、スタッドボルト20の爪部20hがオイルパン12の突起12gをまず乗り越える。爪部20hが突起12gを一旦乗り越えると、スタッドボルトユニット14の逆回りは、爪部20hの係止部20k及び突起12gの係止部12iによってロックされる。このように、逆転ロック機構36は、スタッドボルトユニット14がオイルパン12にねじ込まれる過程においてスタッドボルトユニット14の逆回りをロックする。これにより、スタッドボルトユニット14をオイルパン12にねじ込むだけで、スタッドボルトユニット14の逆回りをロックすることが可能となる。
【0039】
まず、第1のねじ機構30を強いトルクで締め付けなくても、第1のねじ機構30を介して漏洩するオイルをシール機構32で遮蔽することができる。さらに、第1のねじ機構30の緩みは、逆転ロック機構36によって回避することができる。したがって、オイルパン12にオイルフィルタ16を適切に締結することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
図5(a)は、第2の実施形態に係るスタッドボルト40の斜視図である。
図5(b)は、当該スタッドボルト40を軸方向から見た図である。
図5(c)は、当該スタッドボルト40の側面図である。スタッドボルト40は、工具用孔40aの形状が異なる以外は、第1の実施形態に係るスタッドボルト20と同様である。
【0041】
工具用孔40aは、中心軸Xと垂直な断面が正四角形になるよう形成されている。このため第2の実施形態に係るスタッドボルトユニットは、四角形のドライバを使ってオイルパン12にねじ込むことができる。
【0042】
(第3の実施形態)
図6(a)は、第3の実施形態に係るスタッドボルト42の斜視図である。
図6(b)は、当該スタッドボルト42を軸方向から見た図である。
図6(c)は、当該スタッドボルト42の側面図である。スタッドボルト42は、工具用孔20mに代えて工具用部分42aが設けられている以外は、第1の実施形態に係るスタッドボルト20と同様である。工具用部分42aは、スタッドボルト42のオイルフィルタ16側の端部から軸方向に突出している。工具用部分42aは、中心軸Xと垂直な断面が正六角形の外形を有するように形成されている。このため、スタッドボルト42は六角ボルト用工具を使ってオイルパン12にねじ込むことができる。
【0043】
(第4の実施形態)
図7(a)は、第4の実施形態に係るスタッドボルト44の斜視図である。
図7(b)は、当該スタッドボルト44を軸方向から見た図である。
図7(c)は、当該スタッドボルト44の側面図である。スタッドボルト44は、ロックアーム44aの形状が異なる以外は、第1の実施形態に係るスタッドボルト20と同様である。
【0044】
ロックアーム44aは、爪部44b及びアーム部44cを有する。爪部44bは、第1の実施形態に係る爪部20hと同様である。アーム部44cは、中心軸Xと垂直な面において四角形の角部を形成するように、途中で90度折れ曲がっている。このような形態においても、逆転ロック機構を適切に構成することができる。
【0045】
(第5の実施形態)
図8(a)は、第5の実施形態に係るスタッドボルト46の斜視図である。
図8(b)は、当該スタッドボルト46を軸方向から見た図である。
図8(c)は、当該スタッドボルト46の側面図である。スタッドボルト46は、ロックアーム46aの形状が異なる以外は、第1の実施形態に係るスタッドボルト20と同様である。
【0046】
ロックアーム46aは、爪部46b及びアーム部46cを有する。爪部46bは、第1の実施形態に係る爪部20hと同様である。2つのアーム部46cは、中心軸Xと垂直且つ本体部との結合部から互いに反対方向に直線的に延在している。このような形態においても、逆転ロック機構を適切に構成することができる。
【0047】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0048】
10 オイルフィルタ締結構造,12 オイルパン,12a オイル供給路,12b オイル戻し路,12c 雌ねじ部,12d 係止面,12e ストッパ面,12f シール面,12g 突起,12h 傾斜部,12i 係止部,14 スタッドボルトユニット,16 オイルフィルタ,16a フィルタ部,16b 雌ねじ部,16c 取付け面,20 スタッドボルト,20a 本体部,20b 貫通孔,20c 第1雄ねじ部,20d 第2雄ねじ部,20e 溝,20f ストッパ部,20g ロックアーム,20h 爪部,20i アーム部,20j 傾斜部,20k 係止部,20m 工具用孔,22 Oリング,24 連通路,30 第1のねじ機構,32 シール機構,34 第2のねじ機構,36 逆転ロック機構