(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】自転車用フレーム
(51)【国際特許分類】
B62K 19/30 20060101AFI20220419BHJP
B62J 11/19 20200101ALI20220419BHJP
【FI】
B62K19/30
B62J11/19
(21)【出願番号】P 2018194107
(22)【出願日】2018-10-15
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000112978
【氏名又は名称】ブリヂストンサイクル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】野坂 学
(72)【発明者】
【氏名】久保 徹也
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09056646(US,B1)
【文献】特開2012-171556(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0025017(US,A1)
【文献】再公表特許第2014/132913(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0298758(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 19/30
B62J 11/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部に左右方向に延びるハンドルバーが装着されたハンドル支持部と、
前記ハンドル支持部が回転可能に挿入されたヘッドチューブと、
上端部にサドルが配設されたシートチューブと、
前記シートチューブの下端部が連結されたボトムブラケットと、
前記ヘッドチューブと前記シートチューブとを連結する上連結部と、
前記上連結部の下方に配設され、前記ヘッドチューブと前記ボトムブラケットとを連結する下連結部と、を備え、
前記ヘッドチューブは、
前記ハンドル支持部が回転可能に挿入されるとともに、前記上連結部および前記下連結部の各前端部が連結された本体筒と、
前記上連結部と前記下連結部との間に配設され、前記本体筒に対して後側から連なるカバー筒と、を備え、
前記本体筒は、後端壁部を有し、上方に開口し、
前記カバー筒は、前記後端壁部に繋がる前端壁部を有し、
前記上連結部に、上下方向に貫いて、前記カバー筒の内側に開口する貫通部が形成され、
前記貫通部の上方の開口は、前記本体筒の上方の開口から後方に離れて配置され、
前記下連結部に、前記カバー筒の内側に向けて開口する上開口部が形成され、
ワイヤが、前記貫通部、前記カバー筒、および前記上開口部の各内側に一体に挿通される、自転車用フレーム。
【請求項2】
前記カバー筒の
前記前端壁部は、前記本体筒の
前記後端壁部と一体に形成され、
前記カバー筒を画成する壁部のうち、前記前端壁部を除く他の壁部の少なくとも一部は着脱可能に配設されている、請求項1に記載の自転車用フレーム。
【請求項3】
前記カバー筒は、
横断面視で前方に向けて開口するC字状に形成され
た被覆壁部を有し、
前記被覆壁部の前端開口
は、前記前端壁部により覆わ
れ、
前記被覆壁部が、前記前端壁部に対して着脱可能に配設されている、請求項2に記載の自転車用フレーム。
【請求項4】
前記被覆壁部の内面に、前記前端壁部に形成された係止部に対して着脱可能に係止された被係止部が形成されている、請求項3に記載の自転車用フレーム。
【請求項5】
前記下連結部に、下方に向けて開口し、内側が前記上開口部に連通する下開口部が形成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の自転車用フレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用フレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、上端部に左右方向に延びるハンドルバーが装着されたハンドル支持部と、ハンドル支持部が回転可能に挿入されたヘッドチューブと、を備える自転車用フレームが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の自転車用フレームでは、例えばブレーキワイヤなどの、ヘッドチューブに近接して位置するワイヤが、ヘッドチューブの外側に露出し、見栄えが悪くなるなどのおそれがある。
特に、ヘッドチューブに近接して位置しているワイヤは、ハンドル操作に追従して引っ張られるため、一般に弛ませて配設されていることから、ヘッドチューブの外側に露出していると、見栄えの悪化が際立つおそれがあり、また、駐輪場などで隣りの自転車に引っ掛かりやすくなるおそれもある。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、ヘッドチューブに近接して位置するワイヤが、ヘッドチューブの外側に露出するのを防ぐことができる自転車用フレームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の自転車用フレームは、上端部に左右方向に延びるハンドルバーが装着されたハンドル支持部と、前記ハンドル支持部が回転可能に挿入されたヘッドチューブと、上端部にサドルが配設されたシートチューブと、前記シートチューブの下端部が連結されたボトムブラケットと、前記ヘッドチューブと前記シートチューブとを連結する上連結部と、前記上連結部の下方に配設され、前記ヘッドチューブと前記ボトムブラケットとを連結する下連結部と、を備え、前記ヘッドチューブは、前記ハンドル支持部が回転可能に挿入されるとともに、前記上連結部および前記下連結部の各前端部が連結された本体筒と、前記上連結部と前記下連結部との間に配設され、前記本体筒に対して後側から連なるカバー筒と、を備え、前記本体筒は、後端壁部を有し、上方に開口し、前記カバー筒は、前記後端壁部に繋がる前端壁部を有し、前記上連結部に、上下方向に貫いて、前記カバー筒の内側に開口する貫通部が形成され、前記貫通部の上方の開口は、前記本体筒の上方の開口から後方に離れて配置され、前記下連結部に、前記カバー筒の内側に向けて開口する上開口部が形成され、ワイヤが、前記貫通部、前記カバー筒、および前記上開口部の各内側に一体に挿通される。
【0007】
この発明によれば、ヘッドチューブが、ハンドル支持部が回転可能に挿入された本体筒と、本体筒に対して後側から連なるカバー筒と、を備え、ワイヤが、上連結部の貫通部、カバー筒、および下連結部の上開口部の各内側に一体に挿通されるので、ヘッドチューブに近接して位置するワイヤが、カバー筒により覆われて、ヘッドチューブの外側に露出するのを防ぐことができる。しかも、カバー筒が、上連結部と下連結部との間に配設され、本体筒に対して後側から連なっているので、カバー筒を目立ちにくくすることができる。
以上より、例えば前籠を有さず前部の全体が露出している自転車であっても、見栄えの悪化を防ぐことができる。
【0008】
ここで、前記カバー筒の前記前端壁部は、前記本体筒の前記後端壁部と一体に形成され、前記カバー筒を画成する壁部のうち、前記前端壁部を除く他の壁部の少なくとも一部は着脱可能に配設されてもよい。
【0009】
この場合、カバー筒を画成する壁部のうち、本体筒の後端壁部と一体に形成された前端壁部を除く他の壁部の少なくとも一部が、着脱可能に配設されているので、カバー筒の内側を外部に開放して、カバー筒の内側に指などを差し込んで作業を行うことができる。したがって、例えば、カバー筒内にコネクタが収容されている場合、カバー筒の内側を外部に開放した状態で、コネクタの着脱作業を行うことなどが可能になり、メンテナンス性を向上させることができる。
【0010】
また、前記カバー筒は、横断面視で前方に向けて開口するC字状に形成された被覆壁部を有し、前記被覆壁部の前端開口は、前記前端壁部により覆われ、前記被覆壁部が、前記前端壁部に対して着脱可能に配設されてもよい。
【0011】
この場合、被覆壁部が、前端壁部に対して着脱可能に配設されているので、被覆壁部を前端壁部から離脱することで、カバー筒の内側の全体が外部に露出されることとなり、メンテナンス性を確実に向上させることができる。
【0012】
また、前記被覆壁部の内面に、前記前端壁部に形成された係止部に対して着脱可能に係止された被係止部が形成されてもよい。
【0013】
この場合、被覆壁部の内面に、前端壁部の係止部に対して着脱可能に係止された被係止部が形成されているので、被覆壁部に外力が加えられると、被係止部が前端壁部の係止部に対して押し込まれるように被覆壁部が変形することとなる。したがって、被覆壁部に加えられた不意の外力によって被覆壁部が変形しても、被覆壁部が前端壁部から外れるのを抑制することができる。
【0014】
また、前記下連結部に、下方に向けて開口し、内側が前記上開口部に連通する下開口部が形成されてもよい。
【0015】
この場合、下連結部に、下方に向けて開口し、内側が上開口部に連通する下開口部が形成されているので、ヘッドチューブの下方に位置する、例えば前輪用のブレーキ制動子などの部材に接続されたワイヤを、下開口部を通して下連結部の内側に挿通することが可能になり、ヘッドチューブに近接して位置するワイヤが、ヘッドチューブの外側に露出するのを確実に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、ヘッドチューブに近接して位置するワイヤが、ヘッドチューブの外側に露出するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る一実施形態として示した自転車用フレームを有する自転車の要部の側面図である。
【
図2】
図1に示す自転車用フレームのII-II線矢視断面図である。
【
図3】
図2に示す自転車用フレームのIII-III線矢視断面図である。
【
図4】
図1から
図3に示す自転車用フレームの要部の斜視図であって、ワイヤが取り付けられた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る自転車用フレーム1の一実施形態を、
図1から
図4を参照しながら説明する。
以下の説明にあたり、自転車用フレーム1を有する自転車10の通常の走行方向に合わせて、自転車10の前側(
図1の右側)を前側、自転車10の後側(
図1の左側)を後側として説明する。また、前後方向、および上下方向の双方向に対して直交する方向を左右方向という。
【0019】
自転車用フレーム1は、フロントフォーク11、ヘッドチューブ12、ハンドル支持部13、シートチューブ14、ボトムブラケット15、チェーンステー16、上連結部17、および下連結部18を備える。
【0020】
フロントフォーク11は、上下方向に延び、自転車用フレーム1の前部に位置している。フロントフォーク11の下端部に、前輪が車軸を介して回転可能に取り付けられている。この車軸に、前輪を回転させる駆動力を生成する電動モータが取り付けられている。電動モータの回転は、減速機構によって減速され前輪に伝達される。電動モータは、前輪に補助トルクを付加する。電動モータとしては、例えばブラシレスDCモータなどを用いることができる。
フロントフォーク11の上端部から、ヘッドチューブ12が上方に向けて延びている。ヘッドチューブ12内に、ハンドル支持部13が回転可能に挿入されている。
【0021】
ハンドル支持部13の下端部は、フロントフォーク11の上端部に連結されている。ハンドル支持部13は、ヘッドチューブ12から上方に突出している。ハンドル支持部13の上端部に左右方向に延びるハンドルバー22が装着されている。ハンドルバー22の左右方向の両端部に、運転者の握るグリップ部Gが配設されている。ハンドルバー22に、グリップ部Gに対して進退可能に配設されたブレーキレバー23が取り付けられている。ブレーキレバー23は左右一対配設されている。
【0022】
シートチューブ14の上端部にサドル14aが配設されている。サドル14aは、下方に向けて延びるシートポスト14bを備え、シートポスト14bが、シートチューブ14内に上下動可能に嵌合されている。シートチューブ14は、下方から上方に向かうに従い漸次、後方に向けて延びている。シートチューブ14の後部に、バッテリ31が着脱可能に取り付けられている。バッテリ31は、前述の電動モータに電気的に接続されており、電動モータに電力を供給する。バッテリ31は、例えばリチウムイオン二次電池などからなり、充電を行うことによって繰り返し使用することができる。電動モータが回生電力を生成可能である場合には、この回生電力によってバッテリ31を充電することも可能である。
シートチューブ14の下端部は、ボトムブラケット15に連結されている。
【0023】
ボトムブラケット15に、スプロケット(以下「前側スプロケット」という)を介してクランク24の一端部が取り付けられており、クランク24の他端部に、ペダル25が取り付けられている。クランク24は、ボトムブラケット15に一端部回りに回動可能に支持されている。ペダル25は、クランク24の他端部に、左右方向に延びる回転軸周りに回転可能に支持されている。クランク24およびペダル25は、左右一対配設されている。ボトムブラケット15の後端部に、後方に向けて延びるチェーンステー16が配設されている。
【0024】
チェーンステー16の後端部に、後輪が回転可能に取り付けられている。後輪に、スプロケット(以下「後側スプロケット」という)が、後輪と同軸に配置されて取り付けられている。
前側スプロケット、および後側スプロケットに、チェーンが巻回されている。ペダル25に運転者などの踏力が加えられると、前側スプロケットが回転する。前側スプロケットの回転は、チェーンを介して後側スプロケットに伝達されて後側スプロケットが回転し、後側スプロケットの回転によって後輪が回転する。
【0025】
上連結部17は、ヘッドチューブ12とシートチューブ14とを連結している。上連結部17の後端部は、シートチューブ14の上下方向の中央部に連結されている。上連結部17は、前側から後側に向かうに従い漸次、下方に向けて延びている。上連結部17は、管状に形成されている。なお、上連結部17は、中実の棒状に形成されてもよい。
【0026】
下連結部18は、上連結部17の下方に配設され、ヘッドチューブ12とボトムブラケット15とを連結している。下連結部18の後端部は、ボトムブラケット15の前端部に連結されている。下連結部18は、前側から後側に向かうに従い漸次、下方に向けて延びている。下連結部18は、管状に形成されている。なお、下連結部18は、中実の棒状に形成されてもよい。
上連結部17と下連結部18との間に上下方向の隙間が設けられている。上連結部17および下連結部18それぞれの左右方向の中央部は互いに一致している。
【0027】
そして、本実施形態では、ヘッドチューブ12が、ハンドル支持部13が回転可能に挿入されるとともに、上連結部17および下連結部18の各前端部が連結された本体筒27と、上連結部17と下連結部18との間に配設され、本体筒27に対して後側から連なるカバー筒28と、を備えている。本体筒27の上端部に、上連結部17の前端部が連結され、本体筒27の下端部に、下連結部18の前端部が連結されている。
図3に示されるように、上連結部17に、上下方向に貫いて、カバー筒28の内側に開口する貫通部17aが形成され、下連結部18に、カバー筒28の内側に向けて開口する上開口部18aが形成されている。
【0028】
これにより、
図4に示されるように、ワイヤWが、貫通部17a、カバー筒28、および上開口部18aの各内側を一体に挿通可能になっている。このワイヤWは、ハンドルバー22に取り付けられる、例えば電動アシスト用操作スイッチ、ブレーキレバー23、若しくはシフトレバーなどの操作部材に接続される。このうち、例えば電動アシスト用操作スイッチに接続されるワイヤWは、貫通部17a、カバー筒28、および上開口部18aの各内側を通して下連結部18の内側に挿通され、下連結部18の内側を後方に導かれて、図示しない電動アシスト操作用制御部に接続される。このワイヤWには、コネクタCが配設されており、コネクタCはカバー筒28の内側に収容されている。
【0029】
本実施形態では、下連結部18に、下方に向けて開口し、内側が上開口部18aに連通する下開口部18bが形成されている。
これにより、ヘッドチューブ12の下方に位置する、例えば前輪用のブレーキ制動子、若しくは電動モータなどの部材に接続されたワイヤWが、下開口部18bを通して下連結部18の内側に挿通することが可能になっている。電動モータに接続されるワイヤWは、下開口部18bを通して下連結部18の内側に挿通され、下連結部18の内側を後方に導かれてバッテリ31に接続される。前輪用のブレーキ制動子に接続されたワイヤWは、下開口部18b、下連結部18、上開口部18a、カバー筒28、および貫通部17aの各内側に一体に挿通されてブレーキレバー23に接続される。
なお、前照灯がヘッドチューブ12に隣接して配設されている場合には、前照灯に電力を供給するワイヤを、下開口部18bを通して下連結部18の内側に挿通してもよい。
【0030】
貫通部17a、上開口部18a、および下開口部18bは、上下方向で対向している。なお、貫通部17a、上開口部18a、および下開口部18bのうちの少なくとも1つは、他とは上下方向で対向しない位置に配設されてもよい。
貫通部17aは、上連結部17における上壁および下壁に形成された各貫通孔内に嵌合されたブッシュBの内側と、上連結部17の内側のうち、各ブッシュBと上下方向で対向する部分と、により構成されている。上開口部18aは、下連結部18の上壁に形成された貫通孔内に嵌合されたブッシュBの内側により構成されている。下開口部18bは、下連結部18の下壁に形成された貫通孔内に嵌合されたブッシュBの内側により構成されている。
【0031】
上連結部17のうち、前後方向の両端部と、前後方向の中間部と、は別体となっている。下連結部18のうち、前端部と、前端部より後方に位置する部分と、は別体となっている。本体筒27、上連結部17の前端部、および下連結部18の前端部は、一体に形成されている。なお、上連結部17、および下連結部18はそれぞれ、前後方向の全長にわたって一体に形成されてもよい。
【0032】
図2および
図3に示されるように、カバー筒28は、本体筒27の後端壁部27aと一体に形成された前端壁部28aと、横断面視で前方に向けて開口するC字状に形成され、この前端開口が前端壁部28aにより覆われた被覆壁部29と、を有しており、被覆壁部29が、前端壁部28aに対して着脱可能に配設されている。
被覆壁部29は、前端壁部28aから後方に向けて延びる左右一対の側壁部29aと、これらの側壁部29aの後端部同士を接続する後端壁部29bと、を備える。側壁部29aは、前後方向にほぼ真直ぐ延び、後端壁部29bは、後方に向けて突となるように湾曲している。被覆壁部29の上端開口縁は、上連結部17の下壁に当接、若しくは近接し、被覆壁部29の下端開口縁は、下連結部18の上壁に当接、若しくは近接している。被覆壁部29は、左右一対の側壁部29aが互いに接近、および離間するように弾性変形可能に形成されている。なお、被覆壁部29は、弾性変形しにくい剛体であってもよい。
【0033】
カバー筒28の前端壁部28aの後面は、左右方向の両端縁に位置し、上下方向および左右方向の双方向に延び、後方を向く左右一対の段面28bと、左右一対の段面28b同士の間に位置し、後方に向けて突の曲面状に形成された主面部28cと、により構成されている。段面28bに、被覆壁部29の側壁部29aの前端開口縁が、当接、若しくは近接している。
【0034】
図2に示されるように、被覆壁部29の内面に、前端壁部28aに形成された係止部33に対して着脱可能に係止された被係止部34が形成されている。
【0035】
被係止部34は、被覆壁部29の各側壁部29aの内面に、上下方向に間隔をあけて複数ずつ形成されている。被係止部34は、側壁部29aの前部の内面における上部および下部にそれぞれ1つずつ配設されている。被係止部34は上下方向から見て左右方向に長い長方形状を呈し、かつ前後方向から見て上下方向に長い長方形状を呈する直方体状に形成されている。被係止部34の左右方向の内端部は、上下方向から見て左右方向の内側に向けて突の曲線状を呈する。被係止部34の表面のうち、前方を向く前面に、前方に向けて突出し左右方向に延びる突条部34aが、上下方向に間隔をあけて複数形成されている。
【0036】
図2および
図4に示されるように、カバー筒28の前端壁部28aの後面における主面部28cと左右一対の段面28bとの各接続部分に、段面28bから後方に向けて突出し左右方向の外側を向く第1面35aと、主面部28cから左右方向の外側に向けて突出して第1面35aの後端縁に連なり、後方を向く第2面35bと、を少なくとも備えるブロック部35が、上下方向に間隔をあけて複数形成されている。ブロック部35は、前端壁部28aの後面における上部および下部に1つずつ配設されている。
第1面35aに係止部33が形成されている。係止部33は、上下方向に延びる窪み部となっている。係止部33に、被係止部34が着脱可能に嵌合されている。係止部33の内面に、被係止部34における少なくとも突条部34a、および後面が当接している。
【0037】
以上説明したように、本実施形態による自転車用フレーム1によれば、ヘッドチューブ12が、ハンドル支持部13が回転可能に挿入された本体筒27と、本体筒27に対して後側から連なるカバー筒28と、を備え、ワイヤWが、上連結部17の貫通部17a、カバー筒28、および下連結部18の上開口部18aの各内側に一体に挿通されるので、ヘッドチューブ12に近接して位置するワイヤWが、カバー筒28により覆われて、ヘッドチューブ12の外側に露出するのを防ぐことができる。しかも、カバー筒28が、上連結部17と下連結部18との間に配設され、本体筒27に対して後側から連なっているので、カバー筒28を目立ちにくくすることができる。
以上より、例えば前籠を有さず前部の全体が露出している自転車10であっても、見栄えの悪化を防ぐことができる。
【0038】
また、被覆壁部29が、前端壁部28aに対して着脱可能に配設されているので、被覆壁部29を前端壁部28aから離脱することで、カバー筒28の内側の全体が外部に露出されることとなる。したがって、カバー筒28内に収容されていたコネクタCの着脱作業を容易に行うことなどが可能になり、メンテナンス性を確実に向上させることができる。
【0039】
また、被覆壁部29の内面に、前端壁部28aの係止部33に対して着脱可能に係止された被係止部34が形成されているので、被覆壁部29に外力が加えられると、被係止部34が前端壁部28aの係止部33に対して押し込まれるように被覆壁部29が変形することとなる。したがって、被覆壁部29に加えられた不意の外力によって被覆壁部29が変形しても、被覆壁部29が前端壁部28aから外れるのを抑制することができる。
【0040】
また、下連結部18に、下方に向けて開口し、内側が上開口部18aに連通する下開口部18bが形成されているので、ヘッドチューブ12の下方に位置する、例えば前輪用のブレーキ制動子などの部材に接続されたワイヤWを、下開口部18bを通して下連結部18の内側に挿通することが可能になり、ヘッドチューブ12に近接して位置するワイヤWが、ヘッドチューブ12の外側に露出するのを確実に防ぐことができる。
【0041】
なお、本発明の技術範囲は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0042】
例えば、前記実施形態では、被覆壁部29として、後端壁部29bが後方に向けて突となるように湾曲した構成を示したが、左右方向にほぼ真直ぐ延びる平面状に形成してもよいし、後端壁部29bを有さず、左右一対の側壁部29aが、後方に向かうに従い漸次、互いに近づいて頂部を介して接続された構成を採用してもよい。
【0043】
また、カバー筒28として、被覆壁部29の全体が、前端壁部28aに対して着脱可能に配設された構成を示したが、カバー筒28を画成する壁部のうち、前端壁部28aを除く他の壁部の少なくとも一部が着脱可能に配設された構成を採用してもよい。例えば、被覆壁部29のうち、側壁部29aの一部のみが着脱可能に配設された構成を採用してもよい。
このような構成においても、カバー筒28の内側を外部に開放し、カバー筒28の内側に指などを差し込んで、カバー筒28内のコネクタCの着脱作業を行うことなどが可能になり、メンテナンス性を向上させることができる。
【0044】
また、カバー筒28の全体、および本体筒27が一体に形成されたヘッドチューブを採用してもよい。
また、カバー筒28は、上連結部17および下連結部18から上下方向に離れてもよい。
また、被覆壁部29の被係止部34として窪み部を採用し、前端壁部28aの係止部33として突部を採用してもよい。
また、ブレーキレバー23とブレーキ制動子とを接続するワイヤWに、パワーモジュレータを配設した場合、パワーモジュレータをカバー筒28の内側に収容してもよい。
【0045】
前記実施形態では、自転車として、2輪の電動アシスト自転車を示したが、電動モータおよびバッテリ31を有さず、人力のみで走行する自転車であってもよい。また、2輪に限らず、3輪以上の車輪を有する自転車であってもよい。
【0046】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 自転車用フレーム
12 ヘッドチューブ
13 ハンドル支持部
14 シートチューブ
14a サドル
15 ボトムブラケット
17 上連結部
17a 貫通部
18 下連結部
18a 上開口部
18b 下開口部
22 ハンドルバー
27 本体筒
27a 本体筒の後端壁部
28 カバー筒
28a カバー筒の前端壁部
29 被覆壁部
33 係止部
34 被係止部
W ワイヤ