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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】風ベクトル場測定システム
(51)【国際特許分類】
   F03D 7/04 20060101AFI20220419BHJP
   F03D 13/25 20160101ALI20220419BHJP
   G01P 5/26 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
F03D7/04 Z
F03D13/25
G01P5/26 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018512380
(86)(22)【出願日】2016-09-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-11-01
(86)【国際出願番号】 GB2016052826
(87)【国際公開番号】W WO2017042594
(87)【国際公開日】2017-03-16
【審査請求日】2019-09-11
(31)【優先権主張番号】1516169.8
(32)【優先日】2015-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515357255
【氏名又は名称】ウインド ファーム アナリティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】テオドール ホルトム
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0274937(US,A1)
【文献】特開2013-148058(JP,A)
【文献】特表2015-502540(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02515578(GB,A)
【文献】特開2010-048810(JP,A)
【文献】国際公開第2013/092746(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0094961(US,A1)
【文献】国際公開第2015/001301(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 7/04
F03D 13/25
G01P 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定ロケールにおける風ベクトル場を測定するための測定システムであって、
少なくとも1つの水上の浮動構造と、
ビームを放射し、反射または散乱されたビームを受け取るように、1つの水上の前記浮動構造もしくは複数の水上の前記浮動構造の何れかに装着された複数のビームトランシーバーとを備え、
前記ビームトランシーバーは、前記ビームトランシーバーによって放射されたビームが前記測定ロケールで同時に交差するように制御可能とされ
ビームトランシーバーから放射されるビームの方向を変更するよう制御可能な制御システムと、
公称作動位置からのなくとも1つの前記浮動構造の変位の測定を可能にする位置検出装置と、
なくとも1つの前記浮動構造の向きを測定するように構成された姿勢検出装置とをさらに備え、
前記位置検出装置および前記姿勢検出装置は、1つ又はそれぞれの前記浮動構造の動きを考慮してビーム操縦を調整するために、制御システムに読み出し値を提供することを特徴とする測定システム。
【請求項2】
前記風ベクトル場が3次元風速場である、請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
複数のビームトランシーバーを担持するフレームを備える、請求項1または2に記載の測定システム。
【請求項4】
前記浮動構造は、気象マストもしくは他の支柱構造体を備えるか、または気象マストもしくは他の支柱構造体を形成する請求項1~3のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項5】
前記トランシーバーのうちの1つ以上が、空間的に分離された送信機および受信機を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項6】
前記制御システムは、前記測定ロケールで交差するように、複数のビームトランシーバーから複数のビームを選択、切替え、又は操縦するよう制御可能とされている、請求項1~5のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項7】
ドップラーシフトを計算するために、周波数等の送信および受信されたビームパラメータを測定および比較し、それによって相対視線速度成分を示す、請求項1~6のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項8】
前記ビームを用いて、密度、乱流強度、水平面等の任意の面に対する流れ傾斜角、水平風力、垂直風力、水平ウィンドシア、垂直ウィンドシア、水平風向、風速(風速度の大きさ)、垂直風速、または水平風速等の、被験媒体の他の特性を測定または推定する、請求項1~7のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項9】
時間的に連続した測定を組み合わせて、測定されたベクトル場のパラメータの変化率を測定または推定する、請求項1~8のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項10】
複数の風ベクトルの測定値を、ある空間領域にわたって延びるベクトル場空間マップ及び/又はある時間領域にわたって延びるベクトル場時間マップに組み合わせる、請求項1~9のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項11】
前記ビームはSODARビーム、RADARビーム、LIDARビーム、ドップラーLIDARビーム、連続波(CW)LIDARビームまたはパルスLIDARビームである、請求項1~10のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項12】
2つ以上のビームが2つ以上の独立した浮動構造から発せられ、前記ベクトル場のパラメータを再構成するために、前記システムが前記独立した構造物からのデータを組み合わせる、請求項1~11のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項13】
風ベクトル場測定データが風力タービン制御システムに供給されるか、及び/又は、状態監視システムデータと組み合わされる、請求項1~12のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項14】
前記風力タービン制御システムは、風からより多くのエネルギーを収穫するために、測定データを利用するか、及び/又は、
アラームもしくは保護手段を始動して部品の損傷を低減または回避するために、測定データを利用する、請求項13に記載の測定システム。
【請求項15】
測定値を分析して空気の密度値を導出するか、及び/又は、
連続的な速度測定を用いて、流体加速度測定値、またはベクトル変位のより高い時間微分値を生成する、請求項1~14のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項16】
複数のビーム源は、異なる周波数、パルス繰り返し周波数、または異なる偏光特性で送信する、請求項1~15のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項17】
前記ビームは、異なるビームを識別するために、周波数、偏光またはパルスチェーンインターバル符号化によって符号化される、請求項1~16のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項18】
前記姿勢検知装置によって測定された方向は、ロール角、ピッチ角およびヨー角データを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項19】
測定ロケールにおける風ベクトル場を測定する方法であって、
ビームを放射し、反射または散乱したビームを受信する複数のビームトランシーバーを設けることを含み、前記複数のビームトランシーバーは、1つの水上の浮動構造もしくは複数の水上の浮動構造の何れかに装着されており、
前記ビームトランシーバーによって放射されたビームは前記測定ロケールで同時に交差し、
1つ又はそれぞれの浮動構造の公称動作位置からの変位を測定することと、
1つ又はそれぞれの浮動構造の向きを測定することとをさらに含み、
1つ又はそれぞれの浮動構造の動きを考慮して、測定された変位、ロール、ピッチおよびヨー角度に基づいてビームトランシーバーから放射されるビームの方向を変化させることを特徴とする方法。
【請求項20】
測定ロケールにおける風ベクトル場を測定するための測定システムの一部を構成するプロセッサによって実行される際、1つの水上の浮動構造もしくは複数の水上の浮動構造の何れかに装着された、ビームを放射し、反射または散乱したビームを受信する複数のビームトランシーバーを、前記浮動構造の変位と向きに基づいて制御し、風ベクトル場を測定するために前記ビームトランシーバーによって放射されたビームが測定ロケールで交差するように動作する命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風ベクトル場測定システム、特に、再生可能エネルギー等の分野の用途向けの流動場測定の新規なシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風力タービンは、当業者に周知である。風力タービンは、垂直回転軸線または水平回転軸線を有することができる。本明細書では、風力タービンとは、流体を圧送または圧縮するために回転トルクが使用される風力ポンプまたは圧縮機をも指す。流体は、液体または気体とすることができる。風力タービンは、陸上風力タービンと呼ばれる陸に設置されたもの、または、洋上風力タービンと呼ばれる海に設置されたものとすることが理解される。洋上風力タービンは、内陸の湖沼だけでなく、浅いまたは深い海水中に配備することができる。洋上風力タービンは、浮動基礎または固定基礎を有することができる。浮動基礎を係留することができる。様々な種類の基礎が知られており、これには、海底に打ち込まれる杭、重力基礎、ジャケットおよび格子構造が含まれるが、これらに限定されない。トランジションピースは、基礎を風力タービンタワーベースに接続することができる。鉄鋼を含むがこれに限定されない種々の材料を構造物に使用することができる。風力タービンは、エネルギー貯蔵装置を組み込むことも組み込まないこともできる。風力タービンは、電力を送電ネットワークまたは配電ネットワークに送電することができる。あるいは、風力タービンからの電力を、グリッドアイランドとしても知られている局所化された電気グリッド内で直接使用することができる。
【0003】
LIDARは、当業者に周知である。SONAR、SODARおよびRADARもまた、当業者に周知である。また、ドップラー効果、および、半径方向速度成分の測定、推定または計算方法も当業者に周知である。
【0004】
気象マストは、当業者に周知である。気象マストは、様々な高さに設置された点測定機器から風データを収集するために、風力産業において使用されてきた。地上を基礎とするLIDARおよびブイを基礎とするLIDARは、気象マストを配置する代替物として使用されてきた。LIDARは、より高い高さで測定を達成することがより容易であるが、産業界で採用されている物理的気象マストが大型風力タービンによって大型化されているので、有利であると考えられる。気象マスト(「メットマスト」とも呼ばれる)に装着された機器は、マストおよびそのブーム構造のシャドウイング効果による測定誤差があるが、LIDARは非侵入型のリモートセンシング測定技術であると考えられている。
【0005】
しかし、風力産業で使用されているLIDARは発散ビームを使用している。つまり、異なる速度成分が、特に最高部では、広く分散している空間の異なる点から結合される。したがって、かかる成分の所定の高さにおける風速ベクトルへの結合は、大体積にわたる平均風速を表し、あるいはその大体積にわたる均一な流れの仮定を表す。
【0006】
発散するLIDARビームの使用は、乱気流および乱気流強度を特徴づけるのに特に問題である。風力タービン階級は、典型的には気象マスト上に設置された器具等の点状の器具によって測定される乱流強度を指す。本発明の利点は、点状器具に近づくようにLIDAR測定体積の位置を確実にすることである。これにより、乱流強度の局所測定が可能になる。
【0007】
選択された測定点で互いに交差することを目的とする収束ビームを使用することにより、伝統的にはマストに取り付けられた点状風速計または風向計から得られる風力およびウィンドシア等の、多くの他の風力場特性を測定することが可能になる。
【発明の概要】
【0008】
収束ビームドップラー速度測定の新しいシステムは、高度な制御、改善されたエネルギーハーベスティング、先進的な保護システム、改善された探査および改善された装置選択を可能にする。
【0009】
本発明は、複素場特性のマッピングを可能にする3次元ベクトル場測定システムに関する。本発明は、高度な制御および保護システムを可能にする。また、本発明は、改善されたハーベスティングを可能にする。また、本発明は、改善された探査を可能にする。また、本発明は、改善された装置選択を可能にする。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、測定ロケールにおけるベクトル場を測定するための測定システムであって、浮動ブイと、ビームを放射し、反射または散乱されたビームを受け取るように浮動ブイに装着された複数のビームトランシーバーとを備え、前記ビームトランシーバーは、前記ビームトランシーバーによって放射されたビームが前記測定ロケールで交差するように配置されることを特徴とする測定システムが提供される。
【0011】
任意選択で、前記測定システムは、ビームトランシーバーから放射されるビームの方向を変更するよう構成された制御システムと、公称作動位置からの浮動ブイの変位の測定を可能にする位置検出装置と、浮動ブイの向きを測定するように構成された姿勢検出装置とをさらに備え、前記位置検出装置および前記姿勢検出装置は、浮動ブイの動きを考慮してビーム操縦を調整するために、制御システムに読み取り値を提供する。
【0012】
ここで、ブイは任意のタイプの浮動構造を指すことができる。ビーム源は、いくつかの実施形態では、電磁放射の狭い単一方向の流れを放射する源を含むことができるが、本発明は、SODARまたは他の音響ビーム源等の他の種類のビームを含む電磁的解決法に限定されないことを強調しておく。
【0013】
LIDARビーム源の例では、ガルバノメータ、MEMS格子、マイクロミラー、偏心レンズアレイ、回転ウェッジまたは他のビーム操縦システムを使用する装置を用いて、レーザの非常に正確なミリラジアンビーム操縦が可能である。
【0014】
任意選択で、ベクトル場は流体速度である。
【0015】
任意選択で、測定システムは、複数のビームトランシーバーを担持するフレームを備える。
【0016】
任意選択で、浮動ブイは、支柱構造体を備えるか、または支柱構造体を形成する。
【0017】
任意選択で、フレームは支柱構造体に固定される。
【0018】
任意選択で、支柱構造体は気象マストを備える。
【0019】
任意選択で、トランシーバーのうちの1つ以上が、空間的に分離された送信機および受信機を備える。
【0020】
任意選択で、システムは、基準位置データまたは基準姿勢データでプログラムまたは較正される。
【0021】
任意選択で、制御システムは、測定ロケールで交差するように選択された複数のビームトランシーバーから特定のビームを選択する。
【0022】
任意選択で、ビーム選択は、位置センサおよび/または方向センサからのデータに基づく。
【0023】
任意選択で、制御システムは、ビーム操縦手段またはビーム切り替え手段を備える。
【0024】
任意選択で、ドップラーシフトを計算するために、周波数等の送信および受信されたビームパラメータが測定および比較され、それによって相対視線速度成分を示す。
【0025】
任意選択で、ビームを用いて、密度、乱流強度、水平面等の任意の面に対する流れ傾斜角、水平風力、垂直風力、水平ウィンドシア、垂直ウィンドシア、水平風向、風速(風速度の大きさ)、垂直風速、または水平風速等の、被験媒体の他の特性を測定または推定する。
【0026】
任意選択で、時間的に連続した測定を組み合わせて、被験媒体のパラメータの変化率を測定または推定する。
【0027】
任意選択で、複数の測定値を、ある空間領域にわたって延びるベクトル場空間マップに組み合わせる。
【0028】
任意選択で、複数の測定値を、ある時間領域にわたって延びるベクトル場時間マップに組み合わせる。
【0029】
任意選択で、ビームはSODARビームである。
【0030】
任意選択で、ビームはRADARビームである。
【0031】
任意選択で、ビームはLIDARビームである。
【0032】
任意選択で、ビームはドップラーLIDARビームである。
【0033】
任意選択で、ビームは、連続波(CW)LIDARビームまたはパルスLIDARビームである。
【0034】
任意選択で、2つ以上のビームが2つ以上の独立した浮動ブイから発せられ、風ベクトル場のパラメータを再構成するために、システムが独立したブイからのデータを組み合わせる。
【0035】
任意選択で、風ベクトル場測定データが風力タービン制御システムに供給される。
【0036】
任意選択で、風ベクトル場測定データが状態監視システムデータと組み合わされる。
【0037】
任意選択で、制御システムは、風からより多くのエネルギーを収穫するために、測定データを利用する。
【0038】
任意選択で、制御システムは、部品の損傷を低減または回避するために、アラームおよび保護手段を始動するために測定データを利用する。
【0039】
任意選択で、複数のビームトランシーバーを、テンションストラップで、弾性ストラップで、バックルで、ラチェットストラップで、穿孔およびボルト締めで、糊/接着剤を使用して、ブラケットを使用して、磁石を使用して、固着接合で、等により浮動ブイまたはフレームに固定する。
【0040】
任意選択で、固定方法は、単一の製品が多くの種類の風力タービンタワー、多くの種類のブイ構造および多くの種類の気象マスト構造に適合することができるように、寸法を調節することができる。
【0041】
任意選択で、フレーム構造は、上からの装置の巻き上げ等の保守動作との干渉を避けるために、都合よく折り畳み可能、格納可能または取り外し可能である。
【0042】
任意選択で、フレームは、支柱の周りのヨーリング上に支持され、ヨー運動システムによって支柱の周りを回転することができる。
【0043】
任意選択で、測定値を分析して流体密度値を導出する。
【0044】
任意選択で、連続的な速度測定を用いて、流体加速度測定値、またはベクトル変位のより高い時間微分値を生成する。
【0045】
任意選択で、複数のビーム源は、異なる周波数、パルス繰り返し周波数、または異なる偏光特性で送信する。
【0046】
任意選択で、測定データは風力タービン状態監視システムに供給される。
【0047】
任意選択で、測定データは風力タービン制御システムに供給される。
【0048】
任意選択で、ビームは、異なるビームを識別するために、周波数、偏光またはパルスチェーンインターバル符号化によって符号化される。
【0049】
任意選択で、姿勢検知装置によって測定された方向は、ロール角、ピッチ角およびヨー角データを含む。
【0050】
本発明の第2の態様によれば、測定ロケールにおけるベクトル場を測定する方法であって、ビームを放射し、反射または散乱したビームを受信する複数のビームトランシーバーを浮動ブイに設けることを含む方法が提供される。
【0051】
任意選択で、この方法は、浮動ブイの公称動作位置からの変位を測定することと、浮動ブイの向きを測定することとをさらに含み、浮動ブイの動きを考慮して、測定された変位、ロール、ピッチおよびヨー角度に基づいてビームトランシーバーから放射されるビームの方向を変化させる。
【0052】
本開示の第3の態様によれば、上記したもののいずれかを実施するためのコンピュータプログラム製品が提供される。
【0053】
任意選択で、コンピュータプログラム製品は、ビーム源を操縦するための制御システムに対する命令を含む。
【0054】
任意選択で、コンピュータプログラム製品は、タービン制御システムに対して、速度測定からの入力を受信し、計算を行い、タービン部品を制御するための指令信号を提供させる命令を含む。
【0055】
任意選択で、コンピュータプログラム製品は、速度測定システムの出力を分析し、予測および測定を行うための様々な計算を実行するための命令を含む。
【0056】
本発明の第4の態様によれば、支柱と、フレームと、ビームを放射し、反射または散乱されたビームを受信するように、かつ、放射されたビームが測定ロケールで交差するように配置されるようにフレームに取り付けられた複数のビームトランシーバーとを含む測定システムが提供される。
【0057】
任意選択で、支柱は気象マストである。
【0058】
任意選択で、支柱は風力タービンタワーである。
【0059】
任意選択で、支柱は浮動ブイである。
【0060】
また、第4の態様は、適用可能であれば、上記の第1、第2および第3態様の上記の特徴のいずれかを含むこともできる。
【0061】
本発明はまた、以下の項目のうちの1つ以上を含むことができる。
【0062】
項1:1つまたは複数の支柱に取り付けられた1つまたは複数のフレームに装着された複数の交差ビームトランシーバーからなるシステムであって、前記ビームは意図された測定位置に収束する目的で配置されるシステム。
項2:支柱が風力タービンタワーである項1。
項3:支柱が浮動ブイである項1。
項4:支柱が気象マストである項1。
項5:トランシーバーが受信機に置き換えられた項1~4のいずれか。
項6:トランシーバーが送信機に置き換えられた項1~5のいずれか。
項7:ビームが方向に関して切替可能な項1~6のいずれか。
項8:ビームが方向に関して操縦可能な項1~7のいずれか。
項9:システムが1つ以上の位置センサを含む項1~8のいずれか。
項10:システムが1つ以上の方向センサを含む項1~9のいずれか。
項11:システムが基準位置データを用いてプログラムまたは較正されている項1~10のいずれか。
項12:システムが基準方向データを用いてプログラミングまたは較正されている項1~11のいずれか。
項13:システムが、選択された測定位置またはその近傍で交差するようにビームを選択し、操縦し、または切り替えるために使用される制御システムを含む項1~12のいずれか。
項14:システムが、位置センサからのデータにしたがってビーム操縦補正を計算する項1~13のいずれか。
項15:システムが、方位センサからのデータにしたがってビーム操縦補正を計算する項1~14のいずれか。
項16:システムが、位置センサからのデータにしたがってビーム選択を計算する項1~15のいずれか。
項17:システムが、方位センサからのデータにしたがってビーム選択を計算する項1~16のいずれか。
項18:周波数等の送信されたビームパラメータおよび受信されたビームパラメータを測定し比較してドップラーシフトを計算し、それによって視線速度成分の相対線を示す項1~17のいずれか。
項19:ビームを用いて、密度、乱流強度、水平面等の任意の面に関する流れ傾斜角、水平風力、垂直風力、水平ウィンドシア、垂直ウィンドシア、水平風向、風速(風速度の大きさ)、垂直風速、または水平風速等の、被験媒体の他の特性を測定または推定する項1~18のいずれか。
項20:時間的に連続した測定値を組み合わせて、被験媒体のパラメータの変化率を測定または推定する項1~19のいずれか。
項21:複数の測定値を、空間領域を通って延びるベクトル場空間マップに組み合わせる項1~20のいずれか。
項22:複数の測定値を、時間領域を通って延びるベクトル場時間マップに組み合わせる項1~21のいずれか。
項23:ビームがSODARビームである項1~22のいずれか。
項24:ビームがRADARビームである項1~23のいずれか。
項25:ビームがLIDARビームである項1~24のいずれか。
項26:ビームがドップラーLIDARビームである項1~25のいずれか。
項27:ビームが連続波(CW)LIDARビームである項1~26のいずれか。
項28:ビームがパルスLIDARビームである項1~27のいずれか。
項29:2つ以上のビームが2つ以上の独立したブイから発生し、風ベクトル場のパラメータを再構成するために、システムは独立したブイからのデータを組み合わせる項1~28のいずれか。
項30:風ベクトル場測定データが風力タービン制御システムに供給される項1~29のいずれか。
項31:風ベクトル場測定データが状態監視システムデータと組み合わされる項1~30のいずれか。
項32:制御システムが、風からより多くのエネルギーを収穫するために、測定データを利用する項1~31のいずれか。
項33:制御システムが、部品の損傷を軽減または回避するために、アラームおよび保護手段を始動するために、測定データを利用する項1~32のいずれか。
項34:テンションストラップ、弾性ストラップ、バックル、ラチェットストラップ、穿孔およびボルト締め、糊接着剤の使用、ブラケットの使用、磁石の使用、固着接合等からなる固定方法を含む項1~33のいずれか。
項35:固定方法の寸法が調整可能で、単一の製品が多くの種類の風力タービンタワー、多くの種類のブイ構造および多くの種類の気象マスト構造に適合することができる項1~34。
項36:LIDARフレーム構造が、上からの機器の巻き上げ等の保守動作との干渉を避けるために、都合よく折りたたみ可能、格納可能または取り外し可能である項1~35のいずれか。
項37:LIDARフレームが支柱の周りのヨーリング上に担持され、ヨー運動システムによって支柱の周りを回転することができる項1~36のいずれか。。
項38:測定値を分析して流体密度値を導出する項1~37のいずれか。
項39:連続する速度測定値を用いて、流体加速度測定値、またはベクトル変位のより高い時間微分値を生成する項1~38のいずれか。
項40:複数のビーム源が、異なる周波数、パルス繰り返し周波数、または異なる偏光特性で送信する項1~39のいずれか。
項41:測定データが風力タービン状態監視システムに供給される項1~40のいずれか。
項42:測定データが風力タービン制御システムに供給される項1~41のいずれか。
項43:ビームが、異なるビームを識別するために、周波数、偏光、またはパルスチェーンインターバル符号化によって符号化されることができる項1~42のいずれか。
項44:項1~43のいずれかを実行するコンピュータプログラム製品。
項45:ビーム源を操縦するための制御システムに対する命令を含むコンピュータプログラム製品。
項46:タービン制御システムが速度測定値から入力を受信し、計算を行い、タービン部品を制御するための指令信号を提供するための命令を含むコンピュータプログラム製品。
項47:速度測定システムの出力を分析し、予測および測定を行うための様々な計算を実行するための命令を含むコンピュータプログラム製品。
【0063】
上記の態様および項のコンピュータプログラム製品を、コンピュータ可読媒体に、1つまたは複数の命令またはコードとして格納または伝送することができる。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体と、ある場所から別の場所へのコンピュータプログラムの転送を容易にする任意の媒体を含む通信媒体の両方を含む。記憶媒体は、コンピュータによってアクセスできる任意の利用可能な媒体とすることができる。一例として、かかるコンピュータ可読媒体は、RAM、ROM、EEPROM、CD-ROMもしくは他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置もしくは他の磁気記憶装置、または、所望のプログラムコードを命令またはデータ構造の形態で担持または格納することができ、コンピュータによってアクセスすることができる、任意の他の媒体を含むことができる。また、任意の接続も、適切にコンピュータ可読媒体と称される。例えば、ソフトウェアが、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、デジタル加入者線(DSL)、または赤外線、電波、およびマイクロ波等の無線技術を使用して、ウェブサイト、サーバ、または他のリモートソースから送信される場合、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、DSL、または赤外線、電波、マイクロ波等の無線技術は、媒体の定義に含まれる。本明細書で使用されるディスク(disk)およびディスク(disc)は、コンパクトディスク(CD)、レーザーディスク、光ディスク、デジタル多用途ディスク(DVD)、フロッピーディスクおよびブルーレイディスクを含むが、ディスク(disk)は通常データを磁気的に再生し、ディスク(disc)はレーザを用いて光学的にデータを再生する。また、上記の組み合わせも、コンピュータ可読媒体の範囲内に含まれるべきである。コンピュータプログラム製品のコンピュータ可読媒体に関連する命令またはコードは、例えば、1つまたは複数のデジタル信号プロセッサ(DSP)、汎用マイクロプロセッサ、ASIC、FPGA、または他の等価な集積回路または個別論理回路等の1つまたは複数のプロセッサによって、コンピュータによって実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】タワーに搭載された4つのLIDARヘッドを備えた風力タービンを示しており、そのうち3つは、タービンロータの前の測定マップ内の選択された点で風速を解消するために、半径測定を組み合わせている。
図2】ロータに衝突する前に変化する風の状態を検出するために、風力タービンロータの前方の異なる距離での風ベクトル場の変化のマップを構築するための、多数のベクトル測定の組み合わせを示す。
図3】風力タービンがブイ位置またはその近くに位置する場合に、風力タービンが遭遇する風の状態を測定するために、ブイ搭載システムが測定マップを構築することができることを示す。
図4】ブイの任意の位置の変位または方向の変化をビーム操縦が補償できるので、あたかもブイが全く動かないかのごとく、ブイの動きに対して風速測定を正確に補償することができることを示す。
図5】それぞれが単一の操縦可能なビームを有する3つのブイを示し、3つのビームが協働して選択された測定点で交差する。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明は、光学ヘッドを支柱上の既知の寸法のフレームに搭載することによって一連の3次元(3d)風速測定を行うための交差ビームLIDARシステムに関する。ビームは、方向に関して操縦可能または切替可能とすることができる。次いで、選択された測定位置にビームを向け、そこでの3次元風速を再構成するために、光学ヘッドの相対的な位置決めを、3つ以上のLIDAR測定値の組み合わせに使用することができる。
【0066】
本発明は、空間内の広く離れた領域からのLIDAR成分の測定を組み合わせることとなる、発散ビームを利用する風力産業LIDARシステムの問題に対処するものである。これは、風ベクトル場がこれらの測定領域間で実質的に変化し得るので問題である。ここで説明する発明は、空間の単一点、または、意図された測定点の周りの小さな領域にビームを意図的に収束させる。したがって、成分を意味のあるように組み合わせて、その位置で測定された風ベクトルを提供することができる。これは、空間内の異なる位置からの測定成分を組み合わせる作用が、空間内の拡張領域上の速度測定を効果的に平均化する、または、風ベクトル場がその領域にわたって一様であると誤って仮定する、円錐スキャン等の発散ビームの使用よりも優れている。
【0067】
特に、本発明は、ブイ装着装置からビームが放射される(および/または受信される)一連の3d風速測定を行うための操縦可能な交差ビームLIDARシステムを対象とする。
【0068】
また、本発明は、タービンタワー搭載装置からビームが放射される(および/または受信される)一連の3d風速測定を行うための操縦可能な交差ビームLIDARシステムを対象とする。
【0069】
本発明は、気象マスト搭載装置からビームが放射される(および/または受信される)一連の3d風速測定を行うための操縦可能な交差ビームLIDARシステムも対象とする。
【0070】
物理的風速計または風力羽根は空間的な広がりを有するので、真の点状の器具は存在しないが、それでもある点での測定を達成することが目的および意図であることを理解されたい。また、局所的な測定を達成するために、交差ビームまたは収束ビームが完全に交差する必要はないことも理解されたい。ビームは、非ゼロのウェストまたはプロファイルを有することができることを理解されたい。連続波(CW)レーザビームは、非ゼロの焦点範囲を有することができることが許容されている。例えば、CWレーザを、意図する測定位置から数センチメートル又は数メートル以内に集束することができる。ビーム操縦システムは、複数のビームを互いに完全には交差させないが、それにもかかわらず、数センチメートル(例えば10センチメートル)または数メートル(例えば10メートル)以内等の所定の許容範囲内で、意図された理想測定点を取り囲む測定ロケールと交差させることが許容されている。また、パルスレーザLIDARは、その信号処理内にタイミングゲート(「レンジゲート」としても知られている)を有すことが許容されており、このことは、数センチメートル(例えば10センチメートル)または数メートル(例えば10メートル)にわたって延びることのできる測定範囲の空間的広がりを暗示する。測定ローカライゼーションの不完全性は、交差ビームLIDARに対しては許容され、かかるシステムからのデータを分析する際には考慮すべきである。しかしながら、最新の風力タービンは、125メートルを超えるロータ直径が今では一般的であるように成長しており、したがって、風ベクトル場を数メートル(例えば10メートル以下)のロケール内の測定によって解明またはマッピングすることができる測定システムは、大きな風力タービンロータ領域にわたる風場の変化を測定するのに有益である。
【0071】
本発明は、好ましくは、LIDAR(光検出および測距)測定システムに焦点を当てている。本発明は、潜在的に、RADAR(無線検出および測距)又はSODAR(音波検出および測距)等の他のビーム測定システムに関する。
【0072】
トランシーバーは、送信機と受信機の両方を含む単一のデバイスで構成される。トランシーバーは、望遠鏡等の光学部品および、送信された放射線と受信された放射線との間の光路を共有することができる。あるいは、光学部品を共有しなくてもよい。例えば、トランシーバーは、位置および/または角度において互いに非常にわずかにずれている送信望遠鏡および受信望遠鏡を含むことができる。
【0073】
LIDARは、モノスタティックLIDARと呼ばれることもある、実質的に同じ場所に位置する送信機および受信機(トランシーバー)に基づいて動作することができることがよく知られている。また、LIDARは、バイスタティックLIDARと呼ばれることもある、空間的に分離された送信機および受信機に基づいて動作することができることも知られている。
【0074】
ドップラーLIDARは、エアロゾルまたは風に乗った他の粒子から反射された放射のドップラー周波数シフトを測定することによって、風速の半径方向成分を測定することがよく知られている。かかる粒子は、海水噴霧液滴、粉塵、灰、花粉または微粒子を含むが、これらに限定されない。
【0075】
LIDARは連続波(CW)モードで動作し、測定範囲は焦点によって決定されることがよく知られている。CW系は、10メートル、100メートル、さらには200メートル等の短い範囲で有利であると考えられている。しかし、波長と絞りのサイズによっては、CW焦点が200メートル以上に局在しない場合がある。この場合、パルスLIDAR測定は、意図された測定点でより良好に局在化する可能性がある。
【0076】
LIDARは、信号処理のタイミングゲートによって測定レンジが決定されるパルスモードで動作できることがよく知られている。
【0077】
3次元風速ベクトルは3つの成分の測定を必要とすることが知られている。3つの非平行ビームの方向は、3次元ベクトル空間の方向ベクトルの集合を形成する。LIDARは、典型的には、発散ビームを使用することによって風力産業で使用されてきた。これは、空間内の広く離れた点で多数の速度成分を収集し、それにより、一般に風の流れは完全に均一ではないのに、均一な風の流れという誤りまたは一般的に間違った仮定を導入するという欠点を有する。
【0078】
したがって、選択された測定位置で収束することを目的とした交差ビームを使用するLIDARシステムは、発散ビームシステムの空間平均化による均一な流れという仮定および誤り無しに、意図された測定位置で風速ベクトルを解明するようにシステムが設計されているという意味で、発散ビームを使用するLIDARシステムより優れている。
【0079】
歴史的に、風力発電所および風力タービンの設置場所は、主に風力タービンハブの高さにおける平均風速または風速および方向分布を示すデータの収集または計算によって調査されてきた。乱気流強度を推定するために解析が行われる場合がある。
【0080】
歴史的に、風力タービンは、平均ハブ高風速、乱気流強度および50年間の極端な風速等のデータに基づく分類システムにしたがって製造および販売されてきた。
【0081】
しかしながら、風力タービンロータが大きくなるにつれて、ロータ領域を横切る風ベクトル場は、非常に高い負荷を生じ得る非標準的で不均一な変動を頻繁に含むことは明らかである。
【0082】
駆動系振動センサデータ、ブレードたわみセンサデータ、ブレードひずみゲージデータ、タワーたわみセンサデータ、タワーひずみゲージデータ、基礎たわみセンサデータ、基礎ひずみゲージデータ等であるが、これらに限定されない多くの種類の状態監視システムが存在する。たわみは、空間変位および/または角変位とすることができる。振動センサは加速度計とすることができる。
【0083】
状態監視システムと3D風ベクトル場マッピングを組み合わせることにより、特定の風の形跡または風の形跡の群と最大の状態監視信号を相関させることができる。したがって、LIDARシステムによって特定の風の形跡が観測された際に警報または警告を発するように、警報または警告システムを設定することができる。かかる警報および警告は、ピッチシステム、ヨーシステム、発電機トルク制御または他の制御パラメータ内で保護動作を開始するようにプログラムすることのできる風力タービン制御システムに送信され、それにより、風力タービン部品を保護し、全体的なシステムまたは部品の寿命の短縮を回避し、人件費、交換部品コスト、修理コスト、ダウンタイムコストによるタービン損失発生およびクレーン雇用またはサービス船の費用等の関連する機器のレンタル費用を含めることができる操作および保守(O&M)の介入を低減するために、損害を与える風の形跡の影響を低減する。
【0084】
状態監視システムデータは、タービン寿命の一部または全体にわたってタービンごとに収集することができる。これは、タービンが受ける極端な負荷および累積疲労負荷を示すことができる。提案されたLIDARシステムデータは、タービン寿命の一部にわたって、またはタービン寿命全体にわたって一様に収集することができる。これは、タービンが受ける極端な風の形跡および全体的な風の様子を示すことができる。したがって、状態監視データおよび/またはLIDARデータは、部品を正しく指定し、コストメリットを最適化するために、風力タービン設計エンジニアに通知することができる。したがって、LIDARデータは、与えられた風力等級に対して、より効果的に低コストの風力タービン仕様を可能にすることができる。風力等級は、単一点ハブ高さ風速および単一点ハブ高さ乱気流強度の点でのみ特定する必要はない。風力タービンの負荷および曲げモーメントに最も関連すると判明した風特性を説明するために、新しい風力等級を導入することができる。
【0085】
したがって、風力タービンの負荷および曲げモーメントに最も関連すると判明した風特性を解明することができるLIDARセンサシステムを、プロジェクトの計画および開発の風力発電所探査段階で配備することができる。これにより、風力発電所の開発者は、寿命疲労負荷および寿命極度負荷をよりよく評価し、それによって、与えられた用地に対して最も適切な風力タービン分類を選択することが可能になる。
【0086】
最悪の負荷を避けるために十分に特定されていない風条件で運転するように設計されているので、風力タービンの仕様および設計が過剰であるという問題があること、および、最も被害を与える風の形跡を測定し特徴づけるために、より包括的な風力測定システムを用いることができることが認識されている。風ベクトル場測定システムと状態監視センサ情報とを組み合わせることにより、状態監視センサによって測定された最大および最悪の負荷に関連または相関する複雑な風ベクトル場パターンの識別を可能とする。
【0087】
最大荷重と相関する複雑な風ベクトル場のパターンを特定すると、かかる損害を与える風の形跡の頻度を調査することにより、この情報を風力発電所探査値に使うことができる。したがって、1年間等の長期間にわたって風ベクトル場データを収集し、所定の場所に対する風力タービンまたは風力発電所の寿命にわたる複雑な風条件を推定することが可能である。この情報を用いて、多数の将来の風力タービンまたは風力発電所の位置を特徴付け、順位付け、または比較することができる。したがって、本発明は、より効果的な風力発電所探査を可能にし、風力タービンに損傷を与える傾向のある複雑な風ベクトル場の回避を可能にする。
【0088】
さらに、この情報は、かかる工学分類が関連する風ベクトル場の形跡を考慮に入れている場合には、所定の場所に対してより適切な風力タービン分類を選択するために使用することができる。これにより、風力タービンまたは風力発電所の寿命にわたって故障の可能性を低減し、維持費を削減することができる。
【0089】
本発明によって解決される他の問題は、適切なフレームがタワーに都合よく取り付けられることができるので、支柱またはタワーを有する任意の風力タービンに容易に配備され得る装置を説明することである。これは、陸上および洋上の両方の風力タービンに適合させることができるが、かかるLIDAR装置を地上に配置することが不可能な場合の洋上の風力タービンにおいて特に有用である。
【0090】
損害を与える風の形跡の頻度に関する測定情報を提供することの他に、本発明は、動作風力タービンの支柱またはタワーに取り付けられたときに、入ってくる風の状態の先行予測測定を可能にする。これは、入ってくる風からより多くのエネルギーを収穫するために情報を使用することができるか、または、風力タービン部品の負荷を軽減し得る警報および保護手段を始動するために情報を使用し得る風力タービン制御システムにとって有益であり得る。
【0091】
例えば、迫りくる極端な突風を検出すると、負荷を緩和するような方法でブレードピッチ制御の調整を開始する信号を引き起こし、警報を発して、切迫した突風に対してタービンを準備することができる。
【0092】
例えば、ロータ全体にわたる風向情報を利用することにより、制御システムは、風力タービンをより効果的に風に導くヨー指令を適用することができ、それにより最大可能電力を収穫する。
【0093】
風力タービン制御システムが本発明からの風ベクトル場データに対して有利に応答することができる多くの方法があることは理解されよう。
【0094】
風力タービンの製造業者は、大きな負荷を回避し、ブレードピッチ制御等を通じて平均負荷を低減するために、かかるLIDARシステムからの警報と警報を使用して風力タービンの保護動作を開始できると確信した場合には、風力タービンの製造者は、より小さな安全係数を組み込み、より低い寿命負荷、疲労負荷または臨界負荷に耐えるようタービンを設計することができる。これにより、風力タービンの製造コストを実質的に低減し、それによって風力エネルギーのコストを削減することができる。
【0095】
洋上環境における代替的な配備は、1つ以上のブイ装着LIDARシステムの使用により、提案された発明によって達成可能である。この種類の配備は、洋上風力探査に有益である。
【0096】
LIDARブイの形状および設計には多くの可能な変形物があるが、本質的な態様は、ブイが、ビームが選択された測定位置で交差または収束するように配置された複数のLIDAR光学ヘッドを支持するように延びるフレームまたはアームが取り付けられた浮動支持支柱としての役割を果たすことである。
【0097】
ブイは、海水または湖水等の流体中に浮遊するように配備することができる。ブイは、ソーラーパネル、風力タービン、燃料電池、バッテリー等の発電装置を含むことができる。これらの電源を用いて、LIDARシステムに電力を供給することができる。ブイを海底に固定することができる。
【0098】
かかるシステムの利点は、陸上設置場所がない場合にも、選択された場所で3次元風ベクトル測定が可能になることである。ビームが操縦可能または方向転換可能である場合、本明細書内の他の箇所に記載されているように、洋上風力産業にとって有益となり得る、風ベクトル場の3次元マップを生成することが可能である。
【0099】
ブイは、全地球測位システム(GPS)、差動GPS、または他の位置センサ等の位置検出装置を含むことができる。位置検出装置は、公称動作位置(上下揺れ、前後揺れおよび左右揺れパラメータ)からシステムの変位を測定することを可能にする。ブイは、そのロール角、ピッチ角およびヨー角を測定するために、姿勢検出装置を備えることができる。したがって、ブイの任意の動きに対してビーム操縦を補正するために、十分なデータ(ブイおよびその光学ヘッドの形状および寸法を含む)を供給することが可能である。また、ブイの重心に関する個々のセンサの相対位置も考慮に入れることができる。したがって、風ベクトルの測定は、ブイの動きにかかわらず行うことができる。
【0100】
一実施形態では、3つのブイが使用され、各々が固有の位置および方向センサシステムを有し、各々がビーム操縦システムを有し、3つのブイのすべてが選択された測定位置で交差するようにビームを向けることができる。かかる測定の多くを、ベクトル場マップに組み合わせることができる。ブイを1つ以上の固定点に係留することができる。かかるシステムの利点は、ビームがそれらの間に実質的な角度を有することを確実にするために、ビーム操縦システム間のベースライン距離を大きくすることを可能にすることである。ビーム間の実質的な角度を保証することにより、3つの直交するベクトル成分のすべての解明が可能になる。
【0101】
交差ビームLIDARシステムのためのプラットフォームとして1つ以上のブイを使用する代わりに、ボートまたは遠隔操作される輸送手段等の1以上の輸送手段を使用することが可能である。輸送手段は有人または無人とすることができる。輸送手段は、潜水艦、船舶、航空輸送手段、または衛星等の宇宙船とすることができる。
【0102】
あるいは、洋上風力タービンは水中の土台および基礎を有することができるので、システムは、陸上気象マストまたは水中の土台および基礎を有することができる洋上気象マストに固定して配置することができる。気象マストまたは風力タービンを浮遊基礎に装着することができ、浮遊基礎を適切な場所、おそらく海底に係留または固定することが可能であることは明らかである。
【0103】
提案された風力タービンロータは、そのロータ面が全体として平均風向に対して垂直に配向されており、風力タービンの配置場所と寸法は既知であるという前提で、任意の風力タービンが存在しない場合であっても、全体の平均風向またはロータの平均風向を検知することによって、風ベクトル場データを一連の場所(またはロータ範囲領域)に集めるように構成することが可能である。
【0104】
さらに、空間領域を高密度でサンプリングすることにより、様々な見込まれる風力タービンロータにわたる風ベクトル場を瞬間的にまたは長期間にわたり計算し、特徴付けることができることが理解されるであろう。したがって、本発明はさらに、異なるタービンの種類から予想される出力を推定および比較する手段を提供すること、および、異なるタービン上で予想される負荷を特性化および予測する手段を提供することによって、高度な風力探査を可能にする。
【0105】
異なるタービンは、ロータの大きさおよびタワーまたはハブの高さ等の様々な寸法を有することができることに留意されたい。また、異なるタービンは、タワーおよびブレードの構造的剛性等の異なる材料特性を有することができることにも留意されたい。
【0106】
支柱から半径方向に延びる3つ以上の構造的アームは、3つ以上のLIDARビームユニットまたは光学ヘッドを支持するために使用することができ、電力ケーブルおよび/または光ファイバは、中央制御ユニットおよび光学ユニットからアームに沿って光学ヘッドに引き込まれることができる。3つの光学ヘッド位置によって画定された平面外の任意の測定位置は、光学ヘッドの各々から選択された測定位置に向かって向けられた3つの半径方向ドップラー測定ビームを交差させ、3つの対応する半径方向速度成分を正しく組み合わせることによって解明される風速を有することができる。
【0107】
装着する支柱が風力タービンタワー等のかなりの大きさである場合、かかる測定システムは、1つ以上の光学ヘッドに関して、意図された測定位置がタワーの後ろ、ブレードの後ろ、またはロータハブの後ろ、またはナセルの後ろとして、ブラインドスポットを有する。この観点から、4つまたは6つ等の、光学ヘッドを有する3つより多いアームを使用することが有利であり得る。
【0108】
3つより多い光学ヘッドを有する風力タービン装着システムの場合、どの光学ヘッドが意図された測定位置に対して妨げられない、または遮られていない視線を有するかに基づいてビームを選択することができる。かかる計算は、タワーの大きさおよび位置、風力タービンブレードの大きさおよび位置、および適宜に他の既知の障害を考慮に入れてることができる。ロータ位置センサ、エンコーダデータおよび他のデータを、光学ヘッド選択アルゴリズムにより使用することができる。
【0109】
6つの光学ヘッドを有する風力タービン装着システムの場合、3つを風上測定点に向け、残りの3つをタービン後流の測定点に、または必要に応じて他の場所に向けることができる。
【0110】
テンションストラップの使用、弾性ストラップの使用、バックルの使用、ラチェットストラップの使用、穿孔およびボルト締め、糊/接着剤の使用、ブラケットの使用、磁石の使用、固定接合等を含む、LIDARフレームを支柱に取り付けることができる様々な方法があることは理解されよう。
【0111】
単一のLIDAR製品を多くの異なる種類の風力タービン、多くの異なる種類のブイ、および多くの種類の気象マストに固定することができるように、都合よく調整可能な固定方法を提供することができる。
【0112】
ウインチング操作または他のサービス動作との干渉をさけるために、LIDARフレームのアームを上下させる、または都合よくフレーム全体を取り外すための機械的手段を提供することができる。自動遠隔制御信号は格納工程を開始することができる。
【0113】
LIDARフレームを、ヨー運動を利用してタワーの周りを自動的に回転することができるヨーリングの一種で支持することができる。かかる動きは、ヨー位置エンコーダの使用によって正確に制御することができる。
【0114】
風力タービンの場合、風力タービンタワーは、垂直軸風力タービンまたは水平軸風力タービンを支持することができることに留意されたい。垂直軸風力タービンの場合、固定されたタワーが回転タービンの上方および回転タービンの下方に延在することが可能である。水平軸風力タービンの場合、下部タワーセクションは、輸送手段、人員、機器、または作業船の通常の通過と干渉しないように、ブレードのロータ掃引よりも低く、かつ、地面または海面よりは実質的に高い高さの範囲を含むことに留意されたい。また、本発明の目的のために、風力タービンという用語は、風力ポンプを網羅することも意味する。
【0115】
本発明の主な目的は、風力産業であるが、この装置は、空港滑走路およびその周辺の乱気流または他の風測定等の他の産業または環境における流体速度ベクトル場測定に適用することができる。
【0116】
ビームシステムの異なる較正方法が可能であることが理解される。較正は、風速測定の精度、ビーム操縦の角度精度、およびシステムの他のパラメータを網羅することができる。
【0117】
この測定システムは、流れの傾き、水平および垂直ウィンドシア、水平および垂直の風向、乱気流の強さ、突風および一般的なベクトル場等の多くの異なる風パラメータを特徴付けることができる。
【0118】
この測定システムは、ロータ平均風速、ロータ平均風向、ロータ平均乱気流、ロータ平均ヨー誤差および他のロータ平均風統計を測定することができる。
【0119】
風力場の測定以外に、このビーム測定システムは、水圧速度場、潮流またはガス流場等の他のベクトル場または流れ場を測定するために配置することができる。例えば、一実施形態は、3d LIDARを水上で用いた洋上風ベクトル場の測定と、3d SONAR交差ビームを水中で用いた潮流場の測定を同時に提供するブイ装着システムとすることができる。
【0120】
ここで説明するシステムは、別のビームからの干渉なしにデータを収集するために、3つのビームの動作を交互に行うことができる。あるいは、3つ全てのビームは、異なるビーム間の干渉が最小であることに基づいて同時に動作することができる。あるいは、ビームは、異なるビーム間を識別するために、周波数、偏光またはパルスチェーンインターバル符号化によって符号化することができる。
【0121】
本明細書では、パラメータの測定を可能にするシステムは、同様にパラメータの推定を可能にし、同様にパラメータの計算を可能にすると考えられる。本明細書では、パラメータの測定をパラメータの推定とすることも、その逆とすることもでき、パラメータの測定をパラメータの計算とすることも、その逆とすることもできる。
【0122】
また、本発明を添付の図面にも示す。図1は、タワー70、ナセル72、ロータハブ74およびブレード76を含む風力タービンを示す。ロータの前の測定領域は、50、51、52、53、および54を含む測定位置のマップからなる。タワーの支柱には、LIDAR光学ヘッド5を支持するアーム15を含むフレームが取り付けられている。この図は、同様に装着された第2、第3および第4のLIDAR光学ヘッド(6、7、8)を示している。LIDAR光学ヘッドのうちの3つ6、7および8は、それぞれのビーム21、22および23が選択された測定点50に収束するように選択される。
【0123】
図2図1と同じであるが、測定位置の別の組を含み、風速ベクトルが点60、61、62、63、64を含む3つのビームの収束によって局所的に解明され得る。矢印は風速ベクトルを示し、図は突然の損傷を与える突風がロータに向かって進入するときに発生し得る風の場の変化を示している。
【0124】
図3は、風力タービンロータが測定値の収集された位置に配置されている場合に、風力タービンが経験したであろう風の場を測定するためにブイ装着システムを使用することができるという事実を示している。ブイ10は、LIDAR光学ヘッド5を支持するアーム15を含むフレームが取り付けられている。更なる光学ヘッド6、7および8は、それぞれビーム21、22および23を測定位置に収束させるように向けて描かれている。
【0125】
図4図3のブイ10を示しているが、ブイの位置および向きが時間の経過と共に動くことができるという事実を示している。センサを組み込むことによって、システムは、光学ヘッド6からのビーム21が、重心が第1の位置94から第2の位置95に移動したブイのロール、ピッチおよびヨーにかかわらず、測定点50に良好に向けられたままであるように、ビームの操縦を調節することができる。したがって、ブイ装着システムは、ブイの動きにもかかわらず、複数の測定点を含む測定マップを再構成することができる。
【0126】
図5は、LIDAR光学ヘッド6、7および8をそれぞれ支持する3つのブイ11、12および13からなるシステムを示しており、それぞれのビーム21、22および23は、測定点69で収束するように向けられており、測定点は、測定マップまたは測定領域内の多数の測定点のうちの一つとすることができる。あるブイ13は、1つ以上の係留具33によって適所に保持されるように示されている。
図1
図2
図3
図4
図5