(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】光沢度および表面仕上げの改質のための官能化アクリル加工助剤
(51)【国際特許分類】
C08L 27/06 20060101AFI20220419BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20220419BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
C08L27/06
C08L33/14
C08J5/00 CEV
(21)【出願番号】P 2018550341
(86)(22)【出願日】2017-03-23
(86)【国際出願番号】 US2017023707
(87)【国際公開番号】W WO2017165582
(87)【国際公開日】2017-09-28
【審査請求日】2020-03-18
(32)【優先日】2016-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ケビン・アール・ヨッカ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・エイ・マウンツ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・エム・ライオンズ
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-316374(JP,A)
【文献】特開平07-150052(JP,A)
【文献】特開昭60-047050(JP,A)
【文献】特開2003-026882(JP,A)
【文献】特開2009-091552(JP,A)
【文献】特開2006-089740(JP,A)
【文献】米国特許第03301919(US,A)
【文献】特開平04-300939(JP,A)
【文献】特開昭60-090241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
C08J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PVC樹脂と、少なくとも1種のベースポリマーを含む1種以上の
架橋官能化非コア-シェル加工助剤と、随意としての1種以上の
コア-シェル耐衝撃性改良剤とを含み、表面光沢度が低減されたポリ塩化ビニル(PVC)部品であって、
前記
ベースポリマーが、
前記加工助剤の総重量を基準として
1重量%~
25重量%の反応性エポキシ
またはヒドロキシ
ル官能基で官能化されており、
前記1種以上の加工助剤のベースポリマーがアクリルポリマーまたはコポリマーを含み、
前記1種以上の加工助剤が
50,000g/mol以上の分子量(M
w)を有し、
前記1種以上
の加工助剤の一部は有機溶媒に不溶性を示し、
その不溶性画分が1%~90%の範囲であり、
前記1種以上
の加工助剤が前記PVC部品中での架橋を促進し、
前記PVC樹脂および前記加工助剤は、前記加工助剤の官能基以外の追加の架橋剤を含まず、
加工助剤が官能化されていないことを除いて同様のPVC部品と比較して85度以下の角度で測定した時に少なくとも5ポイントの光沢度の低減を示す、前記ポリ塩化ビニル(PVC)部品。
【請求項2】
前記加工助剤が
0.1~12phrで存在する、請求項1に記載のPVC部品。
【請求項3】
前記1種以上の加工助剤が該加工助剤の総重量を基準として少なくとも5重量%の前記反応性官能基で官能化されている、請求項1に記載のPVC部品。
【請求項4】
加工助剤が官能化されていないことを除いて同様のPVC部品と比較して60度以下の角度で測定した時に少なくとも10ポイントの光沢度の低減を示す、請求項1に記載のPVC部品。
【請求項5】
前
記加工助剤を含有する前記PVC部品と前記の加工助剤が官能化されていないことを除いて同様のPVC部品とが同等の衝撃特性を示し;その衝撃特性がアイゾット衝撃またはドロップダート衝撃として測定される、請求項1に記載のPVC部品。
【請求項6】
前記反応性エポキシ
またはヒドロキシ
ル官能基が、(メタ)アクリル酸のヒドロキシル置換アルキルエステル;直鎖若しくは分岐カルボン酸のビニルエステル;不飽和C
3-C
6モノカルボン酸および不飽和C
4-C
6ジカルボン酸;エポキシ基含有モノマー;またはそれらの混合物から誘導される、請求項1に記載のPVC部品。
【請求項7】
前記1種以上の加工助剤が
100,000g/mol以上の分子量(M
w)を有する、請求項1に記載のPVC部品。
【請求項8】
前記加工助剤がさらに連鎖移動
剤を0~
1重量%含む、請求項1に記載のPVC部品。
【請求項9】
自動車製品、建築材料、家庭用若しくは台所用品目、医療用若しくは事務用製品、衣料品、またはパーソナルケア製品若しくは他の消費者製品用の包装における、請求項1に記載のPVC部品の使用。
【請求項10】
ポリ塩化ビニル(PVC)部品の表面光沢度を低減させる方法であって、
PVC樹脂を提供し;
非コア-シェル加工助剤として少なくとも1種のベースポリマーを形成させ;
前記少なくとも1種のベースポリマーを前記加工助剤の総重量を基準として
1重量%~
25重量%の反応性エポキシ
またはヒドロキシ
ル官能基で官能化して
架橋官能化非コア-シェル加工助剤を形成させ;
随意に少なくとも1種の
コア-シェル耐衝撃性改良剤を提供し;
前記PVC樹脂、前
記加工助剤および前記の随意としての耐衝撃性改良剤からPVC配合物を製造し;
前記PVC配合物から前記PVC部品を形成させる;
ことを含み、
前記少なくとも1種のベースポリマーがアクリルポリマーまたはコポリマーを含み、
前記加工助剤が
50,000g/mol以上の分子量(M
w)を有し、
前
記加工助剤の一部は有機溶媒に不溶性を示し、
その不溶性画分が1%~90%の範囲であり、
前記加工助剤が前記PVC部品中での架橋を促進し、
前記PVC樹脂および前記加工助剤は、前記加工助剤の官能基以外の追加の架橋剤を含まず、
前記PVC部品が、加工助剤が官能化されていないことを除いて同様のPVC部品と比較して、85度以下の角度で測定した時に少なくとも5ポイントの光沢度の低減を示す、前記方法。
【請求項11】
前記加工助剤を
0.1~12phrで存在させる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記1種以上の加工助剤が該加工助剤の総重量を基準として少なくとも5重量%の前記反応性官能基で官能基化されている、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
加工助剤が官能化されていないことを除いて同様のPVC部品と比較して前記PVC部品が、60度以下の角度で測定した時に少なくとも10ポイントの光沢度の低減を示す、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前
記加工助剤を含有する前記PVC部品と前記の加工助剤が官能化されていないことを除いて同様のPVC部品とが同等の衝撃特性を示し;その衝撃特性がアイゾット衝撃またはドロップダート衝撃として測定される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記反応性エポキシ
またはヒドロキシ
ル官能基が、(メタ)アクリル酸のヒドロキシル置換アルキルエステル;直鎖若しくは分岐カルボン酸のビニルエステル;不飽和C
3-C
6モノカルボン酸および不飽和C
4-C
6ジカルボン酸;エポキシ基含有モノマー;またはそれらの混合物から誘導される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記1種以上
の加工助剤が
100,000g/mol以上の分子量(M
w)を有する、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全般的に、ポリ塩化ビニル(PVC)配合物ならびに他の熱可塑性ポリマーに使用される加工助剤に関する。より具体的には、本開示は、機械的特性を犠牲にすることなく、PVCおよび他の熱可塑性ポリマー部品の鏡面光沢度を低減することが可能な加工助剤に関する。
【背景技術】
【0002】
この項の記述は、単に本発明に関する背景情報を提供するにすぎず、先行技術を構成するものではない。
【0003】
ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂は、一般的に、化学的に不活性であり、水および環境腐食に対して耐性があり、良好な電気的および熱的絶縁性を提供し、広い温度範囲にわたって性能を維持することができる。ポリ塩化ビニル(PVC)または一般的に呼ばれる「ビニル」で使用される商業的重合法および後重合処理技術(例えば、押し出し成形、射出成形、ブロー成形など)は、過去一世紀の間に成熟した。この製造拠点と、PVCが示す基本的な特性とが相まって、PVC含有製品の拡大につながった。例えば、10年以内に、ビニル窓の販売は(例えば、年間約3100万)は、木およびアルミニウムベースの窓の両方の販売を上回っている。ビニル製品は、耐久性があり、再利用可能で、維持が容易である。ビニル製品は、真菌および白カビの増殖に対して耐性があり、腐敗、腐食、クラッキング、フレーキング、または昆虫の侵入の影響を受けない。ビニル製品は、優れた耐火特性を示し、着火性、有炎燃焼性、放熱性、燃焼速度、火炎伝播、および発煙のほとんどの建築基準を満たす。ビニル製品は、一般に、全体を通じて同じ色であるため、小さな引掻き傷は塗装または修理を必要とせず、美的特徴は、石鹸と水で洗浄することによって維持が容易である。適切に設置され、維持されると、ビニル製品は、長期にわたる美的特徴、信頼できる性能、および継続的なエネルギー節約を提供する。
【0004】
PVC配合物への顔料の分散を用いて色を与えることができるが、配合物への艶消し剤の組み込みによって、最終PVC製品が示す表面光沢度を変えることができる。艶消し剤は、典型的には、以下の3つの領域に入る:i)ポリ(ブチルアクリレート)のコアと、ポリ(メチルアクリレート)のシェルとを有するポリマーコア/シェル耐衝撃性改良剤、例えば、Paraloid(商標)(the Dow Chemical Company、ミッドランド、MI)など;ii)数ミクロンの平均サイズを有する架橋ポリ(メチルメタクリレート)粒子、例えば、Techpolymer(登録商標)MBX K-8(Sekisui Plastics Co.Ltd.、東京、日本)またはAltuglas(登録商標)BS 100 particles(Arkema Inc.、キング・オブ・プルシア、PA)など;およびiii)メチルメタクリレート/スチレンコポリマーなどのポリマー、例えば、Acematt(登録商標)OP 278(Evonik Industries、エッセン、ドイツ)など。しかしながら、PVCおよび他の熱可塑性ポリマーおよび樹脂に向けた多くの艶消し剤技術は、表面光沢度を実質的に低減させ得ないかまたは形成されたPVC部品に関連する他の機械的特性に悪影響を及ぼし得る。
【0005】
他の熱可塑性樹脂もまた、PVC樹脂と同様の能力で使用して、同様の後重合プロセスを用いて最終物品を得ることができる。これらの樹脂には、アクリルポリマー、スチレン系、ポリオレフィン、PVCブレンド、ポリカーボネート、ポリウレタン、フルオロポリマー/フッ素ポリマーおよびそれらの混合物が含まれ得る。
【0006】
特許文献1には、低減された光沢度の外観、高い衝撃強度、および優れた耐候性を有するキャップストック(capstocks)に加工することができる熱可塑性ポリマー組成物が開示されている。それらの熱可塑性ポリマー組成物は、アルキルアクリレートモノマーから誘導されるコアと、アルキルメタクリレートモノマーおよび別の共重合可能なモノマーから誘導されるコポリマーであるシェルとを有するコア/シェルポリマーを含んでなると主張されている。
【0007】
特許文献2には、グリシジルメタクリレート単位の少なくとも85%でオキシラン環が無傷であるように、20~98.5重量%のメチルメタクリレート、0.5~40重量%のエチルアクリレートおよび1~40重量%のグリシジルメタクリレートの混合物を重合して得られる実質的に線状のコポリマーを含んでなる、ポリ塩化ビニルの加工助剤が開示されている。
【0008】
特許文献3には、塩化ビニル樹脂の加工助剤として使用されるメタクリレートコポリマーを製造するための方法が開示されている。その方法は、以下の工程:水溶性開始剤および乳化剤の存在下でモノマー混合物を重合させて、ポリマーラテックスを調製する工程;およびそのポリマーラテックスを固化させる工程を含んでなる。そのモノマー混合物は、60~85重量%のメチルメタクリレート、15~30重量%のアルキルアクリレート系化合物および1~10重量%のエポキシド系化合物を含んでなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第7,557,158号明細書
【文献】米国特許第3,301,919号明細書
【文献】韓国登録特許第10-1030513号公報
【発明の概要】
【0010】
本発明は、全般的に、表面光沢度が低減されたポリ塩化ビニル(PVC)および他の熱可塑性ポリマーおよび樹脂、ならびにその表面光沢度を低減する方法を提供する。そのPVCまたは他の熱可塑性ポリマー/樹脂は、PVCなどのポリマーまたは樹脂と;1種以上の加工助剤と;所望により、少なくとも1種の耐衝撃性改良剤とを含んでなる。そのPVCまたは他の熱可塑性ポリマー/樹脂で作られた部品は、上記加工助剤が官能化されていない同様の部品と比較したときに、85度以下の角度で測定された少なくとも5ポイントの光沢度低減を示す。そのPVCまたは他の熱可塑性ポリマー/樹脂で作られた部品は、自動車製品、建築材料、家庭用または台所用品目、医療用または事務用製品、電子製品、衣料品、またはパーソナルケア製品または他の消費者製品用の包装において使用され得る。
【0011】
上記加工助剤は、少なくとも1種のベースポリマーを含んでなり、それらの加工助剤の1種以上は、それらの加工助剤の総重量に対して、約0.5重量%~約35重量%の反応性に富むエポキシ、ヒドロキシル、またはカルボン酸官能基で官能化されている。それらの加工助剤は、PVC配合物中に約0.1~約12phrで存在するかまたは他の(PVCではない)熱可塑性樹脂部品中に0.1~約20phrで存在する。望ましい場合、それらの加工助剤は、それらの加工助剤の総重量に対して、少なくとも1重量%の上記反応性官能基で官能化され得る。それらの加工助剤中の上記反応性に富むエポキシ、ヒドロキシル、またはカルボン酸官能基は、(メタ)アクリル酸のヒドロキシル置換アルキルエステル;直鎖または分岐カルボン酸のビニルエステル;不飽和C3-C6モノカルボン酸および不飽和C4-C6ジカルボン酸;エポキシ基含有モノマー;またはそれらの混合物から誘導され得る。
【0012】
本開示の一態様によれば、上記PVCまたは他の熱可塑性樹脂部品は、60度以下の角度で測定されたときに少なくとも10ポイントの光沢度低減を示し得る。加えて、上記官能化加工助剤を含有する上記PVCまたは他の熱可塑性樹脂部品と上記非官能化加工助剤を含有する上記同様のPVC部品とは同等の衝撃特性を示し得る。この衝撃特性は、限定されるものではないが、アイゾット衝撃またはドロップダート衝撃であり得る。
【0013】
本開示の別の態様によれば、上記加工助剤は、約50,000g/mol以上である平均分子量または重量平均モル質量を示し得る。それらの加工助剤中のベースポリマーは、アクリルポリマーまたはコポリマーを含んでなり得る。このアクリルポリマーまたはコポリマーは、ビニル含有または(メタ)アクリル含有モノマー;スチレンまたはスチレン誘導体;オレフィン;ジエン;またはそれらの混合物から誘導することができる。それらの加工助剤は、上記PVCまたは他の熱可塑性樹脂部品中での架橋を促進する。それらの加工助剤はまた、0~約1重量%の間の連鎖移動剤または架橋剤を含んでなり得る。
【0014】
上記ポリ塩化ビニル(PVC)または他の熱可塑性樹脂部品の表面光沢度を低減する方法は、PVCまたは他のベース熱可塑性樹脂を提供する工程と;加工助剤として少なくとも1種のベースポリマーを形成する工程と;上記少なくとも1種のベースポリマーを官能化して、官能化された加工助剤を形成する工程と;所望により、少なくとも1種の耐衝撃性改良剤を提供する工程と;上記ベース樹脂、上記官能化加工助剤、および上記任意選択の耐衝撃性改良剤から配合物を生産する工程と;上記配合物からPVCまたは他の熱可塑性樹脂部品を形成する工程とを含んでなる。上記ベースポリマーは、その加工助剤の総重量に対して、約0.5重量%~約35重量%の反応性に富むエポキシ、ヒドロキシル、またはカルボン酸官能基で官能化されている。得られたPVC部品は、上記加工助剤が官能化されていない同様のPVC部品と比較したときに、85度以下の角度で測定された少なくとも5ポイントの光沢度低減を示す。あるいはそのPVCまたは他の熱可塑性樹脂部品は、60度以下の角度で測定されたときに少なくとも10ポイントの光沢度低減を示す。また、上記官能化加工助剤を含有するPVCまたは他の熱可塑性樹脂部品と上記非官能化加工助剤を含有する同様のPVC部品とは同等の衝撃特性を示し得る。この衝撃特性は、限定されるものではないが、アイゾット衝撃またはドロップダート衝撃として測定され得る。
【0015】
上記光沢度低減方法は、上記加工助剤がPVC配合物中に約0.1~約12phrで存在するかまたは他の熱可塑性樹脂配合物中に0.1~約20phrで存在することをさらに含み得る。望ましい場合、それらの加工助剤は、それらの加工助剤の総重量に対して、少なくとも1重量%の上記反応性官能基で官能化され得る。それらの加工助剤の上記反応性に富むエポキシ、ヒドロキシル、またはカルボン酸官能基は、(メタ)アクリル酸のヒドロキシル置換アルキルエステル;直鎖または分岐カルボン酸のビニルエステル;不飽和C3-C6モノカルボン酸および不飽和C4-C6ジカルボン酸;エポキシ基含有モノマー;またはそれらの混合物から誘導され得る。それらの加工助剤のベースポリマーはアクリルポリマーまたはコポリマーからなり得る。このアクリルポリマーまたはコポリマーは、ビニル含有または(メタ)アクリル含有モノマー;スチレンまたはスチレン誘導体;オレフィン;ジエン;またはそれらの混合物から誘導することができる。上記官能化加工助剤は、約50,000g/mol以上である分子量(Mw)を有し得る。
【0016】
さらなる適用範囲は本明細書で提供される説明から明らかになるであろう。説明および具体的な例は、例示のみを目的としており、本開示の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0017】
本明細書に記載された図面は、例示目的のためだけのものであり、決して本開示の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本開示の教示に従ってPVCまたは他の熱可塑性ポリマー/樹脂から部品を形成する方法の模式図である。
【
図2】
図2は、本開示の様々なPVC配合物および従来のPVC配合物から調製されたPVC部品について測定された表面光沢度(75°)および衝撃強度のグラフ比較である。
【
図3】
図3は、本開示の様々なPVC配合物および従来のPVC配合物から調製されたPVC部品について測定された表面光沢度(60°)および衝撃強度の別のグラフ比較である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の説明は、事実上単に例示的なものであり、決して本開示またはその用途もしくは使用を限定するものではない。例えば、本明細書に含まれる教示に従って作製され、使用されるポリ塩化ビニル(PVC)配合物は、その組成および使用をより完全に説明するために、「PVC」または「ビニル」の窓およびドアと併せて、本開示を通して説明される。そのようなPVC配合物の他の用途または製品への組み込みおよび使用は、本開示の範囲内にあると考えられる。他の用途または製品において他の熱可塑性ポリマー/樹脂を使用して作製された配合物もまた、本開示の範囲内にあると考えられる。そのような用途には、限定されるものではないが、自動車製品、建築材料、家庭用または台所用品目、医療用または事務用製品、衣料品、またはパーソナルケア製品または他の消費者製品用の包装が含まれ得る。説明全体を通じて、対応する参照番号が同様のまたは対応する部分および特徴を示すことは理解されるべきである。
【0020】
本開示は、全体として、機械的特性を犠牲にすることなく、低減された表面光沢度を示すポリ塩化ビニル(PVC)または他の熱可塑性樹脂部品を提供する。より具体的には、そのPVCまたは他の熱可塑性樹脂部品は、ポリ塩化ビニル(PVC)または他の熱可塑性樹脂と;1種以上の加工助剤であって、それらの加工助剤の少なくとも1種は、それらの加工助剤の総重量に対して、約0.5重量%~約35重量%の反応性に富むエポキシ、ヒドロキシル、またはカルボン酸官能基で官能化されている、1種以上の加工助剤と;所望により、少なくとも1種の耐衝撃性改良剤とを含んでなる、それらから本質的になる、またはそれらからなる。それらから形成されるPVCまたは他の熱可塑性樹脂部品は、加工助剤(PA)が官能化されていない同様のPVC部品と比較したときに、85度以下の角度で測定された少なくとも5ポイントの光沢度低減を示す。単独でまたは耐衝撃性改良剤と組み合わせて使用される官能化加工助剤(f-PA)は、驚くべきことに、表面光沢度を低減させ、美的特徴が重要な多くの用途に有益な、PVCまたは他の熱可塑性樹脂部品が示す機械的特性を維持する。反応性官能基での加工助剤の官能化を受けて実質的に影響を受けないままであるかまたは向上する機械的特性には、限定されるものではないが、衝撃特性および密度、ならびにPVCまたは他の熱可塑性樹脂配合物の加工性(例えば、押し出し成形)に関連するパラメーターが含まれる。
【0021】
あるいは本開示の一態様によれば、従来の加工助剤(PA)を用いた同様のPVC部品と比較したときの、官能化加工助剤(f-PA)を含んでなるPVC部品が示す表面光沢度の低減は、60度以下の角度で測定された少なくとも10ポイント;あるいは20度の角度で測定された少なくとも15ポイントとして特徴付けられ得る。あるいは従来のPAを用いた同様のPVC部品と比較したときの、f-PAを用いたPVC部品との間の表面光沢度の変化(Δ)は、任意の角度で測定された約5ポイントより大きく;あるいは任意の角度で測定された約10ポイントより大きく;あるいは85°で測定された20ポイントより大きく;あるいは60°以下で測定された25ポイントより大きく;あるいは60°以下で測定された30ポイントより大きい。
【0022】
本開示の別の態様によれば、ポリ塩化ビニル加工のために合成され、上記の官能基で修飾され、本明細書においてさらに定義される官能化加工助剤は、従来のアクリル加工助剤と比較したときに、ポリ塩化ビニルマトリックスにおいて差別化効果を達成する。それらの官能化加工助剤は、反応性に富むエポキシ、ヒドロキシル、またはカルボン酸官能基で合成されたアクリルポリマーまたはコポリマーを含んでなり、それらは、PVCまたは他の熱可塑性樹脂部品を形成するために使用されるプロセス中に反応することが可能である。PVCまたは他の熱可塑性樹脂部品を形成することが可能な方法の例には、限定されるものではないが、押し出し成形法が含まれる。押し出し成形プロセス中に、反応性官能基は、任意選択の鎖延長剤または架橋剤の存在下または不在下での架橋の発生を促進する。望ましい場合、押し出し成形中の架橋は、加工助剤によって形成される粒子(例えば、加工する加工助剤間の架橋および/または加工助剤とPVCとの間の架橋)の間で起こり得る。ポリ塩化ビニル(PVC)配合物に使用される従来の加工助剤は、典型的には、そのような加工中に反応しないアクリレートおよびメタクリレートモノマーからなる。本開示の官能化加工助剤は、限定されるものではないが、乳化重合を含む当技術分野で公知の任意の方法に従って、作製し得る。
【0023】
加工助剤は、様々な異なる組成および分子量を有する「アクリル」ポリマーまたはコポリマーであり得る。それらは、PVC樹脂または他の熱可塑性樹脂よりも分子量が高い可能性がある。PVC樹脂では、特に、それらは、PVC樹脂との相溶性が非常に高いため、それらは溶融の初期段階でPVC粒子の粒子間混合の手助けをする。本開示の加工助剤は、約50,000g/molより大きい重量平均分子量(モル質量(Mw)とも呼ばれる)を有し得;あるいはそれらの加工助剤の重量平均分子量は約100,000g/molより大きく;あるいはそれらの加工助剤の分子量(Mw)は約250,000g/mol以上であり;あるいはそれらの加工助剤の可溶性画分の(Mw)は、約50,000g/mol~約15,000,000g/molの間、あるいは約750,000g/mol~約12,000,000g/molの間である。分子量は、限定されるものではないが、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を含む任意の公知の方法によって測定し得、その手順は実施例2にさらに記載されている。分子量測定の上限は、ポリマー加工助剤間の架橋が起こることによって影響を受け得る。
【0024】
一実施形態では、本発明の加工助剤は、驚くべきことに、有機溶媒に不溶性を示す。それらの加工助剤の可溶性および不溶性画分は、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、またはメチルエチルケトン(MEK)などの溶媒を用いた抽出技術(実施例2参照)の使用によって決定し得る。それらの加工助剤の不溶性画分は、1%~約90%の範囲であり、あるいはその不溶性画分は、約2%~約70%の範囲であり;あるいはその不溶性画分は、約4%~約55%、好ましくは、約10~50%、より好ましくは、約20~45%、さらに好ましくは、約25~40%の範囲である。
【0025】
それらの加工助剤は、0℃以上約150℃までのガラス転移温度(Tg)を示し;あるいはそれらの加工助剤のTgは、約60℃~約85℃の範囲内である。それらの加工助剤のTgは、限定されるものではないが、実施例3にさらに記載されている示差走査熱量測定法(DSC)による分析を含む任意の公知の方法を用いて、粉末またはその粉末から形成されたプレスバーのいずれかとして測定することができる。
【0026】
それらの加工助剤は、限定されるものではないが、アクリル酸またはメタクリル酸の直鎖または分岐アルキルエステルなどのビニル含有および(メタ)アクリル含有モノマー;スチレンおよびスチレン誘導体;エチレンなどのオレフィン;ブタジエンなどのジエン;およびそれらの混合物を含む、エチレン系不飽和モノマーから誘導されたベースポリマーまたはコポリマーを含んでなり、好ましいのはアクリル酸またはメタクリル酸の直鎖または分岐アルキルエステルである。ビニル含有および(メタ)アクリル含有モノマーのいくつかの具体的な例としては、限定されるものではないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート(BMA)、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、およびそれらの混合物が挙げられ、好ましいのはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、およびグリシジル(メタ)アクリレートである。あるいはそのベースポリマーまたはコポリマーは、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ブチルアクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート-スチレン)コポリマー、またはそれらの混合物であり得る。あるいはそのベースポリマーは、PVCマトリックスとの相溶性のために好ましいポリ(メチルメタクリレート)を含んでなる。望ましい場合、官能化加工助剤のガラス転移温度(Tg)および溶融特性を制御するために、ポリ(ブチルアクリレート)またはポリ(エチルアクリレート)などの他のアクリレートを10~30重量%のレベルで添加することができる。
【0027】
PVCまたは他の熱可塑性樹脂部品を形成するためにPVCまたは他の熱可塑性樹脂配合物に使用される加工助剤の少なくとも1種は、それらの加工助剤の総重量に対して、約0.5重量%~約35重量%の反応性に富むエポキシ、ヒドロキシル、またはカルボン酸官能基で官能化されている。あるいはその反応性基での官能化のローディングは、約1重量%~約25重量%の間であり;あるいはそれらの1種以上の加工助剤は、それらの加工助剤の総重量の重量に対して、少なくとも約5重量%~約20重量%の間の反応性官能基を含む。配合物に利用される加工助剤の総てを官能化する必要はない。言い換えれば、従来の加工助剤(PA)および官能化加工助剤(f-PA)は、組み合わせて利用し得る。PAとf-PAとの比は、0:100~約75:25;あるいは約0:100~約50:50;あるいは約0:100~約25:75の範囲であり得る。
【0028】
それらの加工助剤は、粉末または粒子形態で使用し得る。この粉末または粒子は反応性基で実質的に官能化されたベースポリマーを含んでなる固体粒子であり得るかまたはそれらは疑似コア-シェル粒子であり得る。官能化加工助剤(f-PA)は多段階重合プロセスで調製し得、官能化加工助剤が、非官能化ベースポリマーで作られたコアを含んでなる疑似コア-シェル粒子に類似し、上記コアの少なくとも一部が、反応性に富むエポキシ、ヒドロキシル、またはカルボン酸官能基を含むシェルで封入されることになる。
【0029】
反応性に富むエポキシ、ヒドロキシル、またはカルボン酸基は、エポキシ、ヒドロキシル、またはカルボン酸を含有するモノマーをベースポリマーへ添加することにより誘導され得る。そのようなモノマーの例としては、限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸のヒドロキシル置換アルキルエステル;ビニルバレレートなどの直鎖または分岐カルボン酸のビニルエステル、アクリル酸(AA)などの不飽和C3-C6モノカルボン酸を含む不飽和カルボン酸、およびマレイン酸およびイタコン酸などの不飽和C4-C6ジカルボン酸;およびグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレート(GMA)などのエポキシ基含有モノマーが挙げられる。アクリル酸(AA)などの不飽和C3-C6モノカルボン酸、およびマレイン酸およびイタコン酸などの不飽和C4-C6ジカルボン酸;およびグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレート(GMA)などのエポキシ基含有モノマーが好ましく、より好ましいのはアクリル酸、グリシジルアクリレート、およびグリシジルメタクリレート(GMA)である。あるいはそれらの官能基は、最も好ましいアクリル酸(AA)、グリシジルメタクリレート(GMA)、またはそれらの混合物を添加することによって、加工助剤のベースポリマーに組み込み得る。
【0030】
PVC配合物中に存在する加工助剤の量は、PVC配合物中に約0.1phr~約12phrまたは他の熱可塑性樹脂部品中に0.1~約20phr;あるいはPVC配合物中に約0.1phr~約7phrまたは他の熱可塑性樹脂部品中に0.1~約10phr;あるいは1phr以上の範囲であり得る。本開示の文脈において、用語「phr」は、PVCまたは他の熱可塑性ベース樹脂の100部に対する部数を意味する。PVCまたは他の熱可塑性樹脂配合物中に存在する加工助剤の量はまた、PVCまたは他の熱可塑性樹脂配合物の総重量に基づいた重量パーセンテージとして表し得る。PVC配合物中の加工助剤の使用レベルは、選択されたPVC配合物のタイプおよびPVCまたは他の熱可塑性樹脂部品が利用される用途について記載された仕様に依存して変化し得る。言い換えれば、上記配合物中の加工助剤の量は、所与の用途(すなわち、とりわけ、サイディング、窓用形材、パイプ、または発泡シート)のための色要求に合致するレベルまで表面光沢度を低減するのに必要な使用レベルに基づいて予め決定し得る。
【0031】
特定の理論に縛られるものではないが、それらの加工助剤は、押し出し成形中のPVC配合物の溶融レオロジーを変えることによって、PVC樹脂の溶融を促進し得ると考えられる。それらの加工助剤はまた、PVC樹脂の溶融が起こるときの成分の混合の促進、溶融ポリマーブレンドの強度の改善、その溶融ポリマーブレンドがダイオープニングを離れた直後に起こる体積増加または膨張(例えば、ダイスウェル)の制御、およびプレートアウトおよび結晶性の発生の減少、ならびに長期衝撃強度および耐候性の改善の手助けをし得る。一般的に、加工助剤は分子量が高いほどもたらすダイスウェルのレベルは高い傾向がある。より高いレベルのダイスウェルは、発泡PVC部品を作製する場合に有益であり得る。
【0032】
官能化加工助剤(f-PA)はまた、PVC配合物からPVC部品を形成するプロセスの間に架橋を促進することが可能である。そのような架橋は、連鎖移動剤または架橋剤の存在下または不在下で行うことができる。任意選択の連鎖移動剤または架橋剤は、望ましい場合、加工助剤の全重量に対して、0重量%を上回り約1重量%までの量で、加工助剤に組み込まれ得る。そのような連鎖移動剤または架橋剤のいくつかの例としては、限定されるものではないが、メルカプタン、ポリメルカプタン、アルコール、およびハロゲン含有化合物が挙げられ、好ましいのはメルカプタンおよびポリメルカプタンである。
【0033】
他の熱可塑性樹脂において、加工助剤の目的は、光沢度を低減することである。
【0034】
PVC樹脂は、限定されるものではないが、溶液重合、懸濁重合、または乳化重合を含む当技術分野で公知の任意の方法を用いて、複数の異なる分子量で作出し得る。PVC樹脂には、限定されるものではないが、硬質PVC樹脂、可撓性PVC樹脂、PVCプラスチゾル、ならびに1種以上の他の熱可塑性かつ/または熱硬化性の樹脂で形成された混合物または組合せが含まれ得る。PVC樹脂は、固有粘度(IV)またはK値として一般に報告されるその分子量によって特徴付けられ得る。一般的には、PVC樹脂のIVまたはK値が高いほど、それから作製されるPVCまたは他の熱可塑性樹脂部品の衝撃強度は大きくなる。しかしながら、高分子量を有するPVC樹脂は、過度の熱または剪断を使用することなく溶融およびポリマー流を達成することもより困難である。PVC部品が作製される配合物に使用されるPVC樹脂の分子量は、最終製品に望まれる機械的特性および経済的要因に基づいて予め決定することができる。典型的には、硬質形材を有するPVC部品を形成するためには、約56~約72;あるいは約63~約67;あるいは約65のK値範囲内の樹脂が使用され、発泡用途にはより低い分子量が使用される。PVC樹脂の分子量は、一般的に、それとともに使用される加工助剤の分子量よりも小さい。PVCまたは他の熱可塑性樹脂部品を形成するために配合物に使用されるPVC樹脂の量は、全PVC配合物の約30重量%~約85重量%;あるいは約50重量%~約80重量%の間の範囲であり得る。
【0035】
例えば、基材上のキャップ層として本発明において有用な他の熱可塑性物質としては、限定されるものではないが、アクリルポリマー、スチレン系ポリマー、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン(PU)、ポリビニリジンフルオリドポリマー(PVDF)、ポリ乳酸(PLA)など、およびそれらの混合物が挙げられる。本明細書に記載されているこれらのような他の熱可塑性物質は、PVCと組み合わせることができるし、または、PVCの存在下または不在下それらの任意の組合せで、表面光沢度が低減された部品を形成するために本発明の加工助剤をさらに含んで使用することができる。
【0036】
本明細書において使用されるスチレン系ポリマーとしては、限定されるものではないが、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)コポリマー、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)コポリマー、スチレンアクリロニトリル(SAN)コポリマー、メタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(MABS)コポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー(SB)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック(SBS)コポリマーおよびそれらの部分的または完全に水素化された誘導体、スチレン-イソプレンコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマーおよびそれらの部分的または完全に水素化された誘導体、スチレン-メチルメタクリレートコポリマー(S/MMA)などのスチレン-(メタ)アクリレートコポリマー、およびそれらの混合物が挙げられる。好ましいスチレン系ポリマーはASAである。本発明のスチレン系コポリマーは少なくとも10重量%、好ましくは、少なくとも25重量%のスチレンモノマー含量を有する。
【0037】
これらのスチレン系ポリマーはまた、他のポリマーとブレンドして、相溶性ブレンドを形成することができる。例としては、PVCとブレンドしたASA、およびPMMAとブレンドしたSANが挙げられる。
【0038】
本明細書において使用されるアクリルポリマーとしては、限定されるものではないが、アルキル(メタ)アクリレートを含んでなる、ホモポリマー、コポリマーおよびターポリマーが挙げられる。
【0039】
そのアルキルメタクリレートモノマーは、好ましくは、メチルメタクリレートであり、これは、上記モノマー混合物の60~100%を構成し得る。0~40%の他のアクリレート、メタクリレート、および/または他のビニルモノマーもまた、そのモノマー混合物中に存在し得る。そのモノマー混合物に有用な他のメタクリレート、アクリレート、および他のビニルモノマーとしては、限定されるものではないが、メチルアクリレート、エチルアクリレートおよびエチルメタクリレート、ブチルアクリレートおよびブチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレートおよびアクリレート、ラウリルアクリレートおよびラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレートおよびステアリルメタクリレート、イソボルニルアクリレートおよびメタクリレート、メトキシエチルアクリレートおよびメタクリレート、2-エトキシエチルアクリレートおよびメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートおよびメタクリレートモノマー、スチレンおよびその誘導体が挙げられる。(メタ)アクリル酸およびアクリル酸などのアルキル(メタ)アクリル酸は、モノマー混合物に有用であり得る。架橋剤としての少量の多官能性モノマーもまた使用し得る。好ましいアクリルポリマーは、メチルメタクリレートと2~16%の1種以上のC1-4アクリレートとのコポリマーである。
【0040】
本発明の熱可塑性ポリマーは、乳化重合、溶液重合、および懸濁重合を含む当技術分野で公知の任意の手段により製造することができる。一実施形態では、その熱可塑性マトリックスは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定された場合、50,000~500,000g/molの間、好ましくは、75,000~150,000g/molの重量平均分子量を有する。その熱可塑性マトリックスの分子量分布は、単峰型、または1.5より大きい多分散指数を有する多峰型であり得る。
【0041】
そのマトリックスポリマーに特に好ましい熱可塑性物質は、スチレン系ポリマー(SAN、ABS、MABS、ASA、HIPSを含む)、アクリルポリマー、およびPVDFポリマーである。
【0042】
望ましい場合、PVCまたは他の熱可塑性樹脂部品を形成するために使用されるPVC配合物は、所望により、少なくとも1種の耐衝撃性改良剤を含み得る。耐衝撃性改良剤は、そのPVCまたは他の熱可塑性樹脂部品上で行われる任意の後続の製造作業、例えば、その部品の形材における切断または穴あけなどの間のクラッキングまたは粉砕に対する最終製品の靱性および耐性を高める。耐衝撃性改良剤は、典型的には、エネルギーを吸収し、かつ/または伝播する亀裂のエネルギーを消散させることによって機能する。それらの耐衝撃性改良剤には、ブロックコポリマーおよび、PVC樹脂との相溶性がほとんどない軟質ゴム状コア(Tg<0℃)または硬質コア(Tg>0度)と、グラフトされた、相溶性のある、外側のポリマーシェルとを有する「コア-シェル粒子状」ポリマーを含む、任意の相溶性ポリマー粒子が含まれ得る。それらのポリマー粒子または相溶性のある外側のポリマーシェルは、メタクリレート/ブタジエン/スチレン(MBS)、アクリルポリマー(例えば、アクリル系耐衝撃性改良剤[AIM]として知られる)、またはアクリレート/ブタジエン/メタクリレート、およびアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS);塩素化ポリエチレン(CPE)およびエチレン-酢酸ビニル(EVA)のポリマーなどの半相溶性ポリマー;およびエチレン/酢酸ビニル/一酸化炭素、エチレン/プロピレン/一酸化炭素のターポリマー、オレフィンとアクリレートとのポリマー、ブタジエンとアクリロニトリル、メタクリレートまたは他のゴムとの様々なコポリマー、さらに、ポリシロキサン強化材料などの他のポリマーを含んでなり得る。好ましいシェルは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を含んでなる。
【0043】
そのPVCまたは他の熱可塑性樹脂配合物はまた、所望により、1種以上の無機充填剤または粒子、顔料、潤滑剤、安定剤、または他の所望の添加剤を含んでなり得る。例えば、超微細CaCO3粒子は、低温耐衝撃性を強化し、硬質PVC製品のUV安定性を高めるための充填剤として使用し得る。また、耐衝撃性を強化し、改善された流動特性を提供するために、合成非晶質シリカ粒子をPVC配合物に組み込み得る。限定されるものではないが、カオリンクレイ、タルク、マイカ、珪灰石、メタケイ酸カルシウムを含む他の固体充填剤もまた、PVCまたは他の熱可塑性樹脂部品が示す特性に実質的に影響を及ぼすことなく単にその配合物のコストを低減するためにその配合物に組み込み得る。
【0044】
PVCまたは他の熱可塑性樹脂部品に色を与えるために、様々な顔料を含めることができる。これらの顔料は、一般的に、高温下でおよび塩化水素の存在に対して安定性を示す。これらの顔料には、限定されるものではないが、シリカまたはアルミナ表面処理の有無にかかわらず、様々な有機顔料またはセラミック顔料、例えば二酸化チタンおよび他の金属酸化物などが含まれ得る。
【0045】
存在するポリマー鎖および他の成分の流れ抵抗を低減するために、様々な潤滑剤をPVC配合物中に比較的少量で含めることができる。これらの潤滑剤は、処理装置を通る「高温」材料の流れを強化する外部潤滑剤または金属放出(スリップ)剤としてまたは加工される材料の溶融粘度を低下させる内部潤滑剤として働き得る。潤滑剤は、PVC樹脂の溶融を促進または駆動するのに役立ち得る、配合物に添加され得る主な追加成分である。潤滑剤のいくつかの例としては、限定されるものではないが、パラフィンワックスおよび長鎖カルボン酸またはそれらのエステル、アミド、および塩が挙げられる。利用される潤滑剤の量は、典型的には、「プレートアウト」を発生させないレベルである。プレートアウトは、押出成形物がダイから離れるかまたは真空キャリブレーターを通過するときに配合物中に存在する潤滑剤が高温バルク材料から締め出される場合に起こり、それによって、材料のプラグまたは堆積のいずれかを発生させる。
【0046】
2~3例を挙げると、熱または紫外線に対する耐性を強化するために、PVC配合物または他の熱可塑性配合物に種々の安定剤を含めることができる。熱安定剤には、限定されるものではないが、鉛系または有機スズ化合物、混合金属安定剤、または有機安定剤、例えば、エポキシドなどが含まれ得る。UV安定剤には、限定されるものではないが、ヒンダードアミンまたはフェノールが含まれ得る。
【0047】
本開示の別の態様によれば、ポリ塩化ビニル(PVC)または他の熱可塑性樹脂部品の鏡面光沢度を低減する方法(10)が提供される。
図1を参照すると、その方法(10)は、全体として、PVCまたは他の熱可塑性ベース樹脂を提供する工程(15)、加工助剤として少なくとも1種のベースポリマーを形成する工程(20);そのベースポリマーを反応性官能基で官能化して、官能化された加工助剤を形成する工程(25);そのベース樹脂および官能化加工助剤からPVCまたは他の熱可塑性樹脂配合物を生産する工程(30);およびPVCまたは他の熱可塑性樹脂配合物からPVCまたは他の熱可塑性樹脂部品を形成する工程(35)を含んでなる。PVC配合物およびその組成に関するより具体的な情報は、これまでに上で論じたが、本明細書においてさらに定義される。ベースポリマーは、約0.5重量%~35重量%の間の反応性に富むエポキシ、ヒドロキシル、またはカルボン酸官能基で官能化されている。所望により、少なくとも1種の耐衝撃性改良剤もまた提供することができ(40)、PVCまたは他の熱可塑性樹脂配合物中に組み込むことができる(30)。得られたPVCまたは他の熱可塑性樹脂部品は、85°以下の角度で測定された表面光沢度の少なくとも5ポイントの低減を示す。
【0048】
本発明の他の実施形態
1.表面光沢度が低減されたポリ塩化ビニル(PVC)部品であって、
PVC樹脂と;少なくとも1種のベースポリマーを含んでなる1種以上の加工助剤であって、それらの加工助剤の1種以上が、それらの加工助剤の総重量に対して、約0.5重量%~約35重量%の反応性に富むエポキシ、ヒドロキシル、またはカルボン酸官能基で官能化されている、1種以上の加工助剤と;
所望により、少なくとも1種の耐衝撃性改良剤と;
を含んでなり、
ここで、該PVC部品は、上記加工助剤が官能化されていない同様のPVC部品と比較したときに、85度以下の角度で測定された少なくとも5ポイントの光沢度低減を示す、ポリ塩化ビニル(PVC)部品。
2.上記加工助剤が約0.1~約12phrで存在する、請求項1に記載のPVC部品。
3.上記1種以上の加工助剤が、それらの加工助剤の総重量に対して、少なくとも5重量%の上記反応性官能基で官能化されており、かつ、上記PVC部品が、60度以下の角度で測定されたときに少なくとも10ポイントの光沢度低減を示す、請求項1または2のいずれか一項に記載のPVC部品。
4.上記官能化加工助剤を含有する上記PVC部品と上記非官能化加工助剤を含有する上記同様のPVC部品とが同等の衝撃特性を示し;その衝撃特性がアイゾット衝撃またはドロップダート衝撃として測定される、請求項1~3のいずれか一項に記載のPVC部品。
5.上記反応性に富むエポキシ、ヒドロキシル、またはカルボン酸官能基が、(メタ)アクリル酸のヒドロキシル置換アルキルエステル;直鎖または分岐カルボン酸のビニルエステル;不飽和C3-C6モノカルボン酸および不飽和C4-C6ジカルボン酸;エポキシ基含有モノマー;またはそれらの混合物から誘導される、請求項1~4のいずれか一項に記載のPVC部品。
6.上記1種以上の加工助剤のベースポリマーがアクリルポリマーまたはコポリマーを含んでなり、かつ、それらの加工助剤の分子量(Mw)が約50,000g/mol以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のPVC部品。
7.上記アクリルポリマーまたはコポリマーが、ビニル含有または(メタ)アクリル含有モノマー;スチレンまたはスチレン誘導体;オレフィン;ジエン;またはそれらの混合物から誘導される、請求項1~6のいずれか一項に記載のPVC部品。
8.上記1種以上の官能化加工助剤が、上記PVC部品中での架橋を促進し、その官能化加工助剤が0~約1重量%の間の連鎖移動剤または架橋剤をさらに含んでなる、請求項1~7のいずれか一項に記載のPVC部品。
9.自動車製品、建築材料、家庭用または台所用品目、医療用または事務用製品、衣料品、またはパーソナルケア製品または他の消費者製品用の包装における、請求項1~8のいずれか一項に記載のPVC部品の使用。
10.ポリ塩化ビニル(PVC)部品の表面光沢度を低減する方法であって、
PVC樹脂を提供する工程と;
加工助剤として少なくとも1種のベースポリマーを形成する工程と;
上記少なくとも1種のベースポリマーを官能化して、官能化された加工助剤を形成する工程であって、そのベースポリマーを、その加工助剤の総重量に対して、約0.5重量%~約35重量%の反応性に富むエポキシ、ヒドロキシル、またはカルボン酸官能基で官能化する、工程と;
所望により、少なくとも1種の耐衝撃性改良剤を提供する工程と;
上記PVC樹脂、上記官能化加工助剤、および上記任意選択の耐衝撃性改良剤からPVC配合物を生産する工程と;
上記PVC配合物から該PVC部品を形成する工程と;
を含んでなり、
ここで、該PVC部品は、上記加工助剤が官能化されていない同様のPVC部品と比較したときに、85度以下の角度で測定された少なくとも5ポイントの光沢度低減を示す、方法。
11.上記加工助剤が約0.1~約12phrで存在する、請求項11に記載の方法。
12.上記1種以上の加工助剤が、それらの加工助剤の総重量に対して、少なくとも5重量%の上記反応性官能基で官能化されており、かつ、上記PVC部品が、60度以下の角度で測定されたときに少なくとも10ポイントの光沢度低減を示す、請求項10または11のいずれか一項に記載の方法。
13.上記官能化加工助剤を含有する上記PVC部品と上記非官能化加工助剤を含有する上記同様のPVC部品とが同等の衝撃特性を示し;その衝撃特性がアイゾット衝撃またはドロップダート衝撃として測定される、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
14.上記反応性に富むエポキシ、ヒドロキシル、またはカルボン酸官能基が、(メタ)アクリル酸のヒドロキシル置換アルキルエステル;直鎖または分岐カルボン酸のビニルエステル;不飽和C3-C6モノカルボン酸および不飽和C4-C6ジカルボン酸;エポキシ基含有モノマー;またはそれらの混合物から誘導され、かつ、上記1種以上の加工助剤のベースポリマーがアクリルポリマーまたはコポリマーを含んでなり、そのアクリルポリマーまたはコポリマーが、ビニル含有および(メタ)アクリル含有モノマー;スチレンおよびスチレン誘導体;オレフィン;ジエン;またはそれらの混合物から誘導される、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
15.上記1種以上の官能化加工助剤が上記PVC部品中での架橋を促進し、それらの1種以上の官能化加工助剤が、約50,000g/mol以上である分子量(Mw)を有し;その官能化加工助剤が0~約1重量%の間の連鎖移動剤または架橋剤をさらに含んでなる、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【実施例】
【0049】
実施例1-一般的な実験条件および試験プロトコール
加工性を含む機械的特性、および光沢度レベルを観察および比較するために、官能化加工助剤および従来の加工助剤の両方をPVC配合物において評価した。ポリマー加工は、Brabender社製レオメーターを使用して行い、対照アクリル加工助剤または反応性に富む種で官能化されたもののいずれかを含むブレンドPVC配合物(粉末)を用い、溶融トルク、溶融時間、溶融温度および平衡トルクを測定する。トルクレオメーターを使用してPVC化合物の溶融を測定するための方法論は、ASTM D2538-02(2010年、ASTM International、ウェストコンショホッケン、PA)に従って実施される標準的技法である。
【0050】
次いで、それらのPVC配合物から作製したペレットを射出成形装置に使用して、射出成形試験バーおよびプラックまたはシートを調製する。それらのバーおよびプラックを作製した後、それらを衝撃強度および光沢度計による光沢度について試験し、各サンプルの表面が光を反射する能力を記録した。アイゾット衝撃は、破壊を開始させ、試験片が破損するまでそのような破壊を継続するために必要な運動エネルギーとして定義される。アイゾット試験片は、ASTM D256-10e1(ASTM International、ウェストコンショホッケン、PA)に定義される方法論に従って、ノッチを入れ、測定する。プラスチックの衝撃強度または靱性もまた、ASTM D4226およびASTM D5420(ASTM International、ウェストコンショホッケン、PA)に従って定義される落下ダート(すなわち、ガードナー衝撃)方法論を用いて決定し得る。
【0051】
光沢度は、鏡面に近い方向により多くの光を反射する表面の能力に関連している。ASTM D523(2014、ASTM、International、ウェストコンショホッケン、PA)に記載される標準的な試験方法論に従って、バーおよびプラックが示す鏡面光沢度を様々な角度で測定した。測定された光沢度の評価は、試験バーまたはプラックの鏡面反射率を黒色ガラス標準のものと比較することにより得た。
【0052】
可溶性画分を形成するかまたは不溶性画分として残る各加工助剤の量は、アセトン、THF、またはMEKなどの溶媒を用いて行われる抽出を用いて測定することができる。予め決定した粉末総量を約35グラムの溶媒とともにフラスコに加える。この粉末/溶媒混合物を22時間撹拌または振盪し、その時点で別の約30グラムの溶媒をそのフラスコに加え、その後、さらに1.5時間撹拌または振盪する。次いで、約30グラムの混合溶液を遠心管に入れ、5℃の温度で16,500rpmで3~5時間遠心力をかける。分離した混合溶液の上部を別の管に加え、その後、同様の条件下でもう一度遠心分離する。遠心管に存在する透明な上清を集め、この上清の10mLを、血清ピペットを用いてアルミニウムパンに入れる。アルミニウムパンの上清を熱に曝して乾燥させ、不溶性画分のパーセンテージを式1に従って決定することができ、この場合、Wfはアルミニウムパンの最終重量であり、Wiはアルミニウムパンの初期重量であり、W(粉末)はフラスコに入れた、予め決定した量の粉末の重量であり、V(溶媒)はフラスコに入れた溶媒の総容量であり、V(上清)はアルミニウムパンにピペットで入れた上清の容量である。
【0053】
不溶性画分(%)=[1-{(Wf-Wi)/W(粉末)×V(溶媒)/V(上清)}]×100 (式1)
【0054】
実施例2-加工助剤の分子量の測定
加工助剤に関する分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて様々な公知の方法および手順により決定し得る。このような一方法は、2つのPL gel mixed Aカラムおよびガードカラムを備えた示差屈折計を利用する。1.5mg/mLの濃度を有するTHF溶液として、注入量150マイクロリットル(μL)の加工助剤の可溶性部分を、35℃の温度でカラムに注入する。カラムを通しての加工助剤の溶出は、流速1.0mL/分のTHF溶媒(HPLCグレード)を用いて行う。加工助剤の各サンプルは濾過状態または非濾過状態のいずれかで試験し得る。試験したサンプルそれぞれのクロマトグラムを得、モル質量値をポリ(メチルメタクリレート)、PMMA、較正曲線に対して計算して分析する。GPC方法論に関するさらなる情報は、ASTM D4001-13(ASTM International、ウェストコンショホッケン、PA)に見出される。
【0055】
濾過および非濾過サンプルのモル質量平均は、互いにわずかに異なり得る。言い換えれば、1.0μm PTFEフィルムでのサンプルの濾過は、測定された分子量分布に影響を及ぼし得る。サンプルの濾過により非常に高いモル質量種は除去され、それによって、モル質量分布の上限が下がる可能性がある。また、サンプルの濾過により高モル質量種の分解も起こり、それによって、より低いモル質量の種の量が増加し、数平均および/または重量平均モル質量平均値のより高い値をもたらす可能性がある。モル質量平均は、各スライスにおける分子数に基づく加重平均であり、従って、所与のモル質量の分子の量の増加または減少は、モル質量平均および分布に影響を及ぼし得る。
【0056】
本開示の教示に従って調製された合計13の異なる加工助剤サンプルの可溶性部分の分子量を測定した。各サンプルについて合計3回の注入を平均し、平均分子量(Mw)を得た。それぞれの異なる加工助剤サンプルの分子量を、濾過せずに得、同様に濾過して得た。試験したサンプルの平均分子量(Mw)は、濾過していない状態および濾過した状態の両方において50,000g/mol~約15,000,000g/molの範囲であった。試験したサンプルそれぞれについての、重量平均と数平均分子量との比率(Mw/Mn)として定義される多分散性は、約10~約60の間であると測定された。例えば、1つの特定の加工助剤サンプルは、非濾過状態で重量平均分子量(Mw)2,690,000g/molと多分散性54.2を示し、濾過状態でMw2,110,000g/molと多分散性15.5を示した。
【0057】
実施例3-加工助剤のガラス転移温度の測定
本開示の教示に従って調製された加工助剤のガラス転移温度(Tg)を決定するために、示差走査熱量測定法(DSC)を利用する。各DSC測定は、加熱速度20℃/分および冷却速度10℃/分を使用して、-75℃~160℃の温度範囲にわたって得る。Tgは、各サンプル配合物について得られた少なくとも2回の測定値の平均として決定される。DSC方法論のさらなる記載は、ASTM E1356-08(2014)(ASTM International、ウェストコンショホッケン、PA)に見出される。
【0058】
加工助剤のガラス転移温度(Tg)は、粉末としてまたは粉末から形成されたバーとして決定することができる。粉末は、高圧下(例えば、25トン)で高温(例えば、215℃)に曝されると、加圧されバーになり得る。合計10の異なる加工助剤サンプルを分析し、各サンプルの平均Tgは0℃~約150℃の範囲内であった。バーおよび粉末について測定されたガラス転移温度に有意差は観察されなかった。例えば、1つの特定の加工助剤サンプルは、バー形態で85.0℃および粉末形態で83.4℃のガラス転移温度を示した。
【0059】
実施例4-グリシジルメタクリレート(GMA)で官能化された加工助剤を用いて調製し、試験したPVC配合物および部品
24,948グラム(100phr)のPVC樹脂(PVC-5385、Axiall Corp.、以前のGeorgia Gulf、アトランタ、GA)、249.48グラム(1.0phr)のスズ安定剤(T-161、PMC Organometallix,Inc.、カロルトン、KY)、299.38グラム(1.2phr)のステアリン酸カルシウム、249.48グラム(1.0phr)の潤滑剤(Rheolub(登録商標)RL-165、Honeywell International Inc.、NJ)、24.95グラム(0.1phr)の第2のポリエチレン潤滑剤(AC629A、Honeywell International Inc.、NJ)、748.44グラム(3.0phr)の炭酸カルシウム、および2,494.8グラム(10phr)の二酸化チタンを含んでなる、29,014.52グラム(116.3phr)のポリ塩化ビニル(PVC)配合物のマスターバッチを調製した。次いで、このPVCマスターバッチを利用して、従来の加工助剤(c-PA)および官能化加工助剤(f-PA)と従来の耐衝撃性改良剤(c-IM)または官能化耐衝撃性改良剤(f-IM)との様々な組合せを含有するPVC配合物を調製した。この実験に利用した従来の耐衝撃性改良剤(c-IM)はアクリルポリマー(Durastrength(登録商標)D-350、Arkema Inc.、キング・オブ・プルシア、PA)であり、この実験に利用した従来の加工助剤(c-PA)はアクリルポリマー(Plastistrength(登録商標)550、Arkema Inc.、キング・オブ・プルシア、PA)であった。この実験に利用した官能化耐衝撃性改良剤(f-IM)および官能化加工助剤(f-PA)は、従来のIMおよびPAを約16重量%のグリシジルメタクリレート(GMA)で官能化することにより調製した。
【0060】
調製し試験した4つの比較サンプル(試験番号C1~C4)および2つの試験サンプル(試験番号R1およびR2)中に存在する加工助剤および耐衝撃性改良剤の概要を下記の表1に示す。それぞれの比較サンプルおよび試験サンプルに利用した耐衝撃性改良剤の量は4phrであった。それぞれの比較サンプルおよび試験サンプルに利用した加工助剤の量は1phrまたは3phrのいずれかであった。従って、PVCマスターバッチに添加された耐衝撃性改良剤および加工助剤の合計量は5phrまたは7phrのオーダーであった。
【0061】
【0062】
次いで、耐衝撃性改良剤および加工助剤を含有するPVC配合物を、Brabender社製レオメーターを使用して評価し、それらから形成された射出成形バーまたはプラックを密度、アイゾット衝撃、および様々な角度での表面光沢度について試験した。試験結果の概要を下記の表2に示す。試験サンプル(試験番号R1およびR2)は、密度、溶融時間、溶融トルク、溶融温度、および平衡トルクに関して同様の特性を示すことが観察された。
【0063】
【0064】
官能化耐衝撃性改良剤を含んでなる比較サンプル(C2およびC4)は、従来の耐衝撃性改良剤を含んでなる比較サンプル(C1およびC3)と同様の光沢度レベルを総ての角度で示すことが観察された。しかしながら、試験サンプル(R1およびR2)では、比較サンプル(C1~C4)と比較したときに、総ての角度で光沢度のシフトが観察された。より具体的には、1phrの官能化加工助剤を含んでなる試験サンプル(R1)は、比較サンプル(C1およびC2)と比較したときに、20°の角度で約38~46ポイント、60°の角度で約16~18ポイント、および85°の角度で約7~9ポイントの範囲で光沢度の低減を示した。同様に、3phrの官能化加工助剤を含んでなる試験サンプル(R2)は、比較サンプル(C3およびC4)と比較したときに、20°の角度で約50~56ポイント、60°の角度で約68~70ポイント、および85°の角度で約33ポイントの範囲で光沢度の低減を示した。加えて、試験サンプル(R1およびR2)は、比較サンプル(C1~C4)よりも良好ではないにしても同程度に良好なアイゾット衝撃耐性であることを示した。
【0065】
この実施例は、官能化加工助剤を組み込んだPVC配合物は、従来の非官能化加工助剤だけを含む同様のPVC部品と比較したときに、20°、60°、および85°の角度での光沢度の低減を示すPVC部品に形成することができることを実証する。この実施例はまた、耐衝撃性改良剤の同様の官能化は、官能化加工助剤の使用について観察される光沢度低減の有益な効果を提供しないことも実証する。加えて、官能化耐衝撃性改良剤の使用は、PVCまたは他の熱可塑性樹脂部品の衝撃特性を低下させる(C1/C3とC2/C4との比較を参照)。一方、官能化加工助剤の使用は、加工中およびPVC部品の形成後のPVC配合物の機械的特性を、従来の加工助剤を用いて形成されたPVC配合物および部品について観察されたのと同様のレベルで維持する。
【0066】
実施例5-アクリル酸(AA)またはグリシジルメタクリレート(GMA)で官能化された加工助剤の調製
GMA官能化によるf-PA-撹拌機および還流冷却器を備えた5リットルの重合加熱マントル反応器に、848.7gの蒸留水、31.34gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、および0.48gの炭酸ナトリウムを入れた。MMA/BA/GMA重量パーセント比64/20/16を有する320.0グラムのメチルメタクリレート(MMA)と、100.0グラムのブチルアクリレート(BA)と、80.0グラムのグリシジルメタクリレート(GMA)とのモノマー混合物を調製し、その後、反応器に添加した。反応器を窒素で20分間スパージしながら、反応温度を45℃に設定した。窒素雰囲気下で蒸留水中の4%過硫酸カリウム溶液20.45gおよび蒸留水中の5%メタ重亜硫酸ナトリウム溶液12.12gを添加することにより反応を開始させた。12分後に86℃のピーク温度が観察された。反応器の温度を80℃に設定し、蒸留水中の4%過硫酸カリウム溶液1.25gを反応器に添加した。バッチを80℃で30分間保持し、その後、室温に冷却した。Nicomp Modle 380 ZLSを使用して平均ラテックス粒径Dvは約100nmと測定された。固形含量は約36%であった。GMAで官能化されたf-PAのラテックス粒子を、噴霧乾燥法を用いて単離した。
【0067】
AA官能化によるf-PA-GMAコモノマーをアクリル酸で置換することを除いて、加工助剤のGMA官能化について上記したのと同じ手順を行い、アクリル酸(AA)で官能化された加工助剤を作製した。従って、利用したモノマー混合物は、324.6グラムのメチルメタクリレート(MMA)、100.0グラムのブチルアクリレート(BA)、75.0グラムのアクリル酸(AA)、および0.375グラムtert-ドデシルメルカプタン(t-DDM)を含んでなり、MMA/BA/AA/t-DDM重量パーセント比64.925/20/15/0.075を有した。開始剤の添加から18分後に79.5℃のピーク温度が観察された。平均ラテックス粒径は約165nmと測定された。固形含量は約35.7%であった。AAで官能化されたf-PAのラテックス粒子を、噴霧乾燥法を用いて単離した。
【0068】
実施例6-実験2で調製された加工助剤を用いて調製し、試験したPVC配合物および部品。
3,090グラム(123.6phr)のポリ塩化ビニル(PVC)配合物を含んでなる2つのマスターバッチを調製し、白色顔料またはベージュ色顔料のいずれかで着色した。各バッチは、2,500.0グラム(100phr)のPVC樹脂(SE-950、Shintech Inc.、ヒューストン、TX)、25.0グラム(1.0phr)のスズ安定剤(Thermolite(登録商標)161、PMC Group Inc.、マウントローレル、NJ)、25.0グラム(1.2phr)のステアリン酸カルシウム、2.5グラム(0.1phr)の潤滑剤(Epoline E-14、Westlake Chemical Corp.、ヒューストン、TX)、112.5グラム(4.5phr)の耐衝撃性改良剤(Durastrength(登録商標)D-350、Arkema Inc.、キング・オブ・プルシア、PA)、125.0グラム(5.0phr)の炭酸カルシウム、250.0グラム(10.0phr)の二酸化チタン、および25.0グラム(1.0phr)の白色またはベージュ色の顔料を含んでなった。次いで、これらのPVCマスターバッチを利用して、実験2で調製された官能化加工助剤の様々な組合せを含有する様々なPVC配合物(試験番号R3~R7)、ならびに従来の非官能化加工助剤を含んでなる対照サンプル(対照番号C5)を調製した。
【0069】
PVC配合物を形成するためにマスターバッチに添加された加工助剤組成の概要を表3に示す。それぞれの試験サンプル(試験番号R3~R7)および対照サンプル(対照番号C5)は、合計25.0グラム(1.0phr)の加工助剤を含んだ。対照サンプル(C5)中の加工助剤は従来のアクリルポリマー(Plastistrength(登録商標)550、Arkema Inc.、キング・オブ・プルシア、PA)であった。試験番号R3で使用したf-PAは、実験2においてアクリル酸(AA)で官能化された加工助剤から完全になった。同様に、試験番号R7で使用したf-PAは、実験2においてグリシジルメタクリレート(GMA)で官能化された加工助剤から完全になった。試験番号R4~R6で使用したf-PAは、実験2においてAAで官能化された加工助剤とGMAで官能化された加工助剤との混合物からなる。試験番号4、5、および6で利用したAA/GMA加工助剤の比率は、それぞれ1/3、2/2、および3/1であった。それぞれの試験サンプル(試験番号R3~R7)および対照サンプル(対照番号C5)は、2回の試験、すなわち、白色顔料を用いた1回の試験およびベージュ色顔料を用いた1回の試験を含んだ。
【0070】
【0071】
次いで、Brabender社製コニカル二軸押出機を使用して、官能化加工助剤を含有するPVC配合物(試験番号R3~R7)および従来の加工助剤を含有するPVC配合物(対照番号C5)をシート(0.040インチ×4.5インチ)に形成し、シートの表面光沢度を様々な角度で測定した。シートの加工において差は認められなかった。各試験サンプルについて得られた平均光沢度測定値の概要を下記の表4に示す。報告された平均光沢度は、シートの上部、下部、左側および右側から得られた60回の測定値の平均を表す。
【0072】
白色またはベージュ色いずれかの、官能化加工助剤を含有する試験シート(試験番号R3~R7)の総ては、従来の非官能化加工助剤を含有する比較シート(対照番号C5)について測定された光沢度と比較したときに、総ての角度で光沢度の実質的な低減を示した。白色着色の試験シート(R3~R7)は、比較シート(対照番号C5)と比較して、20°の角度で約34~39ポイント、60°の角度で約34~55ポイント、75°の角度で約13~20ポイント、および85°の角度で約20~27ポイントのオーダーで光沢度の低減を示した。同様に、ベージュ色着色の試験シート(試験番号R3~R7)は、比較シート(対照番号C5)と比較して、20°の角度で約23~30ポイント、60°の角度で約27~46ポイント、75°の角度で約12~19ポイント、および85°の角度で約11~20ポイントのオーダーで光沢度の低減を示した。
【0073】
【0074】
加えて、GMAで官能化されたf-PAまたはAAで官能化されたf-PAの量は、光沢度低減のレベルに影響を及ぼすことが観察される。一般的に、GMA/AAの比率が増加すると、試験シートまたは部品について測定される光沢度低減が増加することが観察された。例えば、GMAで官能化されたf-PAを完全に含んでなる試験シート(試験番号。R7)は、白色およびベージュ色の両方の部品について20°~75°の角度で測定された場合、AAで官能化されたf-PAを完全に含んでなる試験シート(試験番号R3)よりも大きな光沢度低減を示した。
【0075】
ここで
図2および
図3を参照すると、試験シートまたは部品(試験番号R3~R7)について、それぞれ、60°および75°の角度で測定された光沢度値を、比較シート(対照番号C5)について測定された光沢度値と図で比較している。加えて、各シートについてのダートドロップ試験の衝撃結果もまた比較している。PVCまたは他の熱可塑性樹脂部品へのf-PAの組み込みは、従来の非官能化加工助剤だけを有するPVC部品が示す衝撃性能と比較したときに、光沢度を低減し、かつ、その部品の衝撃強度に影響を及ぼさないことが見出されている。
【0076】
この実施例はまた、官能化加工助剤を組み込んだPVC配合物は、従来の非官能化加工助剤だけを含む同様のPVC部品と比較したときに、20°、60°、および85°の角度での光沢度の低減を示すPVC部品に形成することができることも実証する。この実施例はさらに、加工助剤の官能化はGMA、AA、またはそれらの混合物を用いて行い得ることを実証する。GMAで官能化されたf-PAを含む試験部品と、AAで官能化されたf-PAを含む試験部品とが示した光沢度低減間の比較は、GMA官能化はAA官能化よりも部品の光沢度を低減する上でより有効であり得ることを示している。この実施例はまた、官能化加工助剤の組み込みから生じる光沢度低減は異なる着色PVC部品で観察され得ることも実証する。
【0077】
実施例7-実験2で調製された加工助剤を用いて調製し、試験したさらなるPVC配合物および部品。
2,000グラム(100phr)のPVC樹脂(SE-950、Shintech Inc.、ヒューストン、TX)、20.0グラム(1.0phr)のスズ安定剤(Thermolite(登録商標)161、PMC Group Inc.、マウントローレル、NJ)、24.0グラム(1.2phr)のステアリン酸カルシウム、20.0グラム(0.1phr)の潤滑剤(Rheolub(登録商標)RL-165 Honeywell International Inc.、NJ)、2.0グラム(0.1phr)の第2のポリエチレン潤滑剤(AC629A、Honeywell International Inc.、NJ)、90.0グラム(4.5phr)の耐衝撃性改良剤(Durastrength(登録商標)D-350、Arkema Inc.、キング・オブ・プルシア、PA)、100.0グラム(5.0phr)の炭酸カルシウム、200.0グラム(10.0phr)の二酸化チタン、および70.0グラム(3.5phr)のベージュ色顔料を含んでなる、2,526.0グラム(126.3phr)のポリ塩化ビニル(PVC)配合物のマスターバッチを調製した。次いで、このPVCマスターバッチを利用して、実験2で調製された官能化加工助剤の様々な組合せを含有する様々なPVC配合物(試験番号R8~R12)、ならびに非官能化加工助剤および/または耐衝撃性改良剤を含んでなる対照配合物(対照番号C6~C14)を調製した。
【0078】
PVC配合物を形成するためにマスターバッチに添加された加工助剤組成の概要を表5に示す。それぞれの試験サンプル(試験番号R8~R11)および対照配合物(対照番号C6~C14)は、合計20.1グラム(1.0phr)の加工助剤を含んだ。対照番号C6~C9およびC11~C13中の加工助剤は従来のアクリルポリマー(Plastistrength(登録商標)550、Arkema Inc.、キング・オブ・プルシア、PA)であった。対照番号C7~C10では、耐衝撃性改良剤(Paraloid(商標)EXL-5136、Dow Chemical Co.、ミッドランド、ミシガン州)を利用した。この耐衝撃性改良剤は、ポリ(ブチルアクリレート)のコアと、ポリ(メチルアクリレート)のシェルとを有するポリマーコア/シェル耐衝撃性改良剤である。対照番号C11~C14では、別の耐衝撃性改良剤(Altuglas(登録商標)BS-130、Arkema Inc.、キング・オブ・プルシア、PA)を利用した。この耐衝撃性改良剤は、数ミクロンの平均サイズを有する架橋ポリ(メチルメタクリレート)粒子である。試験番号R8で使用したf-PAは、実験2においてアクリル酸(AA)で官能化された加工助剤から完全になった。同様に、試験番号R9で使用したf-PAは、実験2においてグリシジルメタクリレート(GMA)で官能化された加工助剤から完全になった。試験番号R10で使用したf-PAは、実験2においてAAで官能化された加工助剤とGMAで官能化された加工助剤との50:50混合物からなった。最後に、試験番号R11で使用したf-PAは、実験2においてAAで官能化された加工助剤と従来のアクリルポリマー(Plastistrength(登録商標)550、Arkema Inc.、キング・オブ・プルシア、PA)との50:50混合物からなった。
【0079】
【0080】
次いで、耐衝撃性改良剤および/または加工助剤を含有するPVC配合物を、Brabender社製レオメーターを使用して評価し、それらから形成された射出成形バーまたはプラックを密度、ガードナー衝撃、および様々な角度での表面光沢度について試験した。嵩密度、溶融時間、溶融トルク、溶融温度、および平衡トルクの概要を表6に示す。試験サンプル(試験番号R8~R11)および比較サンプル(対照番号C6~C14)は、密度、溶融時間、溶融トルク、および溶融温度に関して同様の特性を示すことが観察された。しかしながら、試験サンプル(試験番号R8~R11)は、比較サンプル(対照番号C6~C14)に対して、平衡トルクの実質的な増強を示すことが見出された。従って、官能化加工助剤を含有するPVC配合物(試験番号R8~R10)または官能化加工助剤と非官能化加工助剤との混合物を含有するPVC配合物(試験番号R11)は、非官能化加工助剤を含有するPVC配合物(対照番号C6)または従来の、非官能化加工助剤および耐衝撃性改良剤の混合物を含有するPVC配合物(対照番号C7~C9およびC11~C13)、または耐衝撃性改良剤だけを含有するPVC配合物(対照番号C10およびC14)よりも良好な機械的特性を示す。
【0081】
【0082】
次いで、Brabender社製コニカル二軸押出機を使用して、官能化加工助剤を含有するPVC配合物(試験番号R8~R11)および従来の加工助剤および/または耐衝撃性改良剤を含有するPVC配合物(対照番号C5~C14)をシート(0.040インチ×6フィート)に形成し、シートの表面光沢度を60°の角度で測定した。各試験サンプルについて得られた平均光沢度測定値の概要を下記の表7に示す。報告された平均光沢度は、シートの上部および下部から得られた20回の測定値の平均を表す。
【0083】
官能化加工助剤を含有する試験シート(試験番号R8~R11)の総ては、非官能化加工助剤、従来の耐衝撃性改良剤、またはそれらの混合物を含有する比較シート(対照番号C6~C14)について測定された光沢度と比較したときに、光沢度の低減または衝撃特性の向上のいずれかを示した。試験シート(試験番号R3~R7)は、従来の耐衝撃性改良剤だけを含有する対照シート(対照番号C10およびC14)または耐衝撃性改良剤と従来の加工助剤との混合物を含有する対照シート(対照番号C7~C9およびC11~C13)に対して、改善されたガードナー衝撃を示した。加えて、試験シート(試験番号R3~R7)は、比較シート(対照番号C6~C14)と比較して、シートの上部で測定された光沢度が60°の角度で約10ポイント以上のオーダーで低減を示した。同様に、試験シート(試験番号R3~R7)は、60°の角度で比較シート(対照番号C6~C14)と比較したときに、シートの下部で測定された光沢度は同レベル以下を示した。
【0084】
【0085】
この実施例は、官能化加工助剤を組み込んだPVC配合物を、従来の非官能化加工助剤単独、従来の加工助剤および耐衝撃性改良剤の混合物、または耐衝撃性改良剤単独を含む同様のPVC部品と比較したときに、60°の角度での光沢度の低減または衝撃特性の向上を示すPVC部品に形成することができることを実証する。この実施例はさらに、加工助剤の官能化はGMA、AA、またはそれらの混合物を用いて行い得ることを実証する。最後に、この実施例は、PVCの窓、ドア、およびサイディングキャップストックの業界で現在商業的に利用されている現在の艶消し剤技術(対照番号C7~C14)と比較したときの、官能化加工助剤を含んでなるPVC部品の性能の向上を実証する。
【0086】
本明細書において、実施形態を、明瞭かつ簡潔な明細書を書くことを可能にする方法で記載してきたが、本発明から逸脱することなく実施形態は様々に組み合わせられまたは分離されることが意図され、理解される。例えば、本明細書に記載された総ての好ましい特徴は、本明細書に記載された本発明の総ての態様に適用可能であることが理解されよう。
【0087】
本発明の様々な形態の前述の説明は、例示および説明のために提示したものである。包括的であることまたは開示された正確な形態に本発明を限定することを意図するものではない。上記の教示に照らして、数多くの変更または変形が可能である。論議された形態は、本発明の原理およびその実際的な応用の最良の例証を与えるために選択され、記載されており、それによって、当業者が企図される特定の用途に適した様々な形態で、かつ、様々な変更を加えて本発明を利用することが可能になる。そのような総ての変更および変形は、それらが公正、法的および公平に権利が与えられる範囲に従って解釈される場合、添付の特許請求の範囲によって決定される本発明の範囲内である。
【0088】
実施例8(予言的実施例)-実験2で調製された加工助剤を用いて調製され、試験されるPVC-アクリル配合物。
1,000グラム(50phr)のPVC樹脂(SE-950、Shintech Inc.、ヒューストン、TX)、24グラム(1.2phr)のスズ安定剤(Thermolite(登録商標)172、PMC Group Inc.、マウントローレル、NJ)、24グラム(1.2phr)の潤滑剤(Rheolub(登録商標)RL-165 Honeywell International Inc.、NJ)、12グラム(0.6phr)のステアリン酸カルシウム、2グラム(0.1phr)の第2のポリエチレン潤滑剤(AC629A、Honeywell International Inc.、NJ)、および200グラム(10phr)の二酸化チタンを含んでなる、1,262グラム(63.1phr)のポリ塩化ビニル(PVC)配合物のマスターバッチを調製する。
【0089】
PVCマスターバッチに加えて、1,000グラム(50phr)のアクリル樹脂(Solarkote(登録商標)PB、Arkema Inc.、キング・オブ・プルシア、PA)および、実施例2で調製されたものからの加工助剤100グラム(5phr)を添加し、一緒にブレンドして、PVC-アクリル配合物を形成する。
【0090】
実施例9(予言的実施例)-実験2で調製された加工助剤を用いて調製され、試験されるアクリル配合物。
アクリル配合物を調製するために、2,000グラム(100phr)のアクリル樹脂(Solarkote(登録商標)P600、Arkema Inc.、キング・オブ・プルシア、PA)に、実施例2で調製されたものからの加工助剤100グラム(5phr)を追加する。