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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/00 20060101AFI20220419BHJP
【FI】
F25D23/00 301G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019033526
(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公開番号】P2020139644
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】船山 敦子
(72)【発明者】
【氏名】國分 真子
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-148379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/00
A23L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雰囲気中の二酸化炭素の濃度を検知する濃度検知部と、
該濃度検知部を有する貯蔵室と、
該貯蔵室を開閉する扉と、を有し、
前記扉の閉塞に応じて前記扉が閉塞された状態が所定時間連続したときの前記濃度検知部による前記二酸化炭素の濃度の値を取得し、
取得された第1の値と、前記第1の値の取得後、前記扉が開放及び閉塞された後に取得された第2の値との差分を、前記二酸化炭素の濃度の変動量として利用して、前記貯蔵室内の野菜の収納量の変動を検知又は変動量を推定し、
前記所定時間は、前記貯蔵室内の二酸化炭素の濃度が飽和して安定する時間である冷蔵庫。
【請求項2】
前記二酸化炭素の濃度の変動量から前記野菜の減少量を検知し、該減少量を報知する請求項に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記二酸化炭素の濃度の変動量から前記野菜の増加を所定期間に亘って検知しない場合、野菜の購入を促す旨の報知を行う請求項1又は2に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、庫内カメラと二酸化炭素濃度測定装置により、野菜室に収納されている物が葉物野菜か根菜類かを判別し、その結果に応じて光照射を制御する旨が開示されている(0059,0062)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-40539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
厚生労働省が提唱する健康づくりの指標『健康21』で、目標値として定められている野菜摂取量は1日350gであるが現在の平均摂取量はまだまだ目標に到達していない。健康維持のためには野菜の摂取が不可欠であるものの、主菜は主に肉魚であり、野菜の消費は難しい。そこで、野菜の消費量を冷蔵庫が表示する、消費の見える化により、健康維持を冷蔵庫使用者に自然と促せる技術が望まれる。
【0005】
しかし、収納されている食品種別の判定を通じてエネルギー消費を抑制しようとする技術は知られているものの、収納されている特定種別の食品(特に野菜)の増減を推定しようとするものは知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記事情に鑑みてなされた本発明は、
雰囲気中の二酸化炭素の濃度を検知する濃度検知部と、
該濃度検知部を有する貯蔵室と、
該貯蔵室を開閉する扉と、を有し、
前記扉の閉塞に応じて前記扉が閉塞された状態が所定時間連続したときの前記濃度検知部による前記二酸化炭素の濃度の値を取得し、取得された第1の値と、前記第1の値の取得後、前記扉が開放及び閉塞された後に取得された第2の値との差分を、前記二酸化炭素の濃度の変動量として利用して、前記貯蔵室内の野菜の収納量の変動を検知又は変動量を推定し、前記所定時間は、前記貯蔵室内の二酸化炭素の濃度が飽和して安定する時間である冷蔵庫である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の冷蔵庫の正面図
図2】実施形態の野菜室に収納された上段容器と下段容器の斜視図
図3】実施形態の野菜容器カバーが配置された野菜室の斜視図
図4図3のA-A線断面図
図5】実施形態の上段容器の正面斜視図
図6】二酸化炭素センサ(炭酸ガスセンサ)を搭載した野菜室に保存した野菜の写真。(A)はチンゲン菜、小松菜、小ネギ、ミニトマトを合計684g、前側空間と後側下段空間に分散して保存した場合。(B)はほうれん草、ブロッコリー、パセリ、オクラ、パプリカ、シソ、モロヘイヤ、エンドウを合計1657g、後側下段空間に保存した場合。(C)はほうれん草、ブロッコリー、オクラ、小松菜、キャベツを合計2065g、後側下段空間に保存した場合。(D)はほうれん草、パセリ、カリフラワー。アスパラ、シソを合計2500g、後側下段空間に保存した場合。
図7】(A)から(D)の野菜を収納した状態で野菜室扉を閉めてから2時間に亘る野菜室内の炭酸ガス濃度の推移を示すグラフ
図8】(A)~(D)に基づく、炭酸ガス濃度の平均と野菜保存重量の関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本実施形態の冷蔵庫10の正面図である。冷蔵庫10は、冷蔵庫本体1の正面に、冷蔵室左扉2と、冷蔵室右扉3と、製氷室扉4aと、急速冷凍室扉4bと、冷凍室扉5と、野菜室扉6とを備えている。
冷蔵室左扉2は上ヒンジ7a及び下ヒンジ8aにより、冷蔵室右扉3は上ヒンジ7b及び下ヒンジ8bにより、それぞれ紙面手前方向に回動可能になっている。これらと冷蔵庫本体1とにより形成される空間に、冷蔵室が形成されている。
【0009】
また、製氷室扉4a、急速冷凍室扉4b及び冷凍室扉5は、紙面手前方向に引き出し可能になっている。これらと冷蔵庫本体1とにより形成される空間に、製氷室、急速冷凍室及び冷凍室がそれぞれ形成されている。
野菜室扉6も同様に、紙面手前方向に引き出し可能になっている。さらに、これと冷蔵庫本体1とにより構成される空間に、野菜室100が形成されている。野菜室扉6の開閉状態を検知する扉センサを冷蔵庫10は有している。
【0010】
図2は野菜室100に収納された上段容器102と下段容器101の斜視図である。図3は野菜容器カバー105が配置された野菜室100の斜視図である。図4図3のA-A線断面図である。
野菜室100の上方に配置される野菜容器カバー105が、野菜室100の上壁を構成している。従って、野菜室100では、下段容器101及び上段容器102のそれぞれの内部の密閉性がある程度確保されている。
【0011】
下段容器101及び上段容器102はそれぞれ、正面側と背面側とに(以下、「前後方向に」ということがある)引出自在に収容されている。ただし、本実施形態では、下段容器101が前後方向に移動すると上段容器102もそれに伴い移動して、下段容器101から見た上段容器の位置が変化しないように係合されている。この係合は、使用者がロックハンドル106を操作することで解除可能にされている。
【0012】
野菜室100の背面側には、圧縮機等を庫外に配置するための機械室が形成されている。そのため、底壁が正面側よりも背面側で高くなっている。また、下段容器101には、ガラス製の仕切り103が備えられている。これにより、下段容器101が二つの区画(正面側の前側空間101Bと、背面側の後側下段空間101A)に分割されている。そして、上段容器102は、後側下段空間101A上側を覆うように配置されている。
【0013】
野菜容器カバー105は、前側空間101B及び上段容器102の上部開口を覆うように配置されている。なお、野菜容器カバー105は、下段容器101を冷蔵庫10に収容したときに、下段容器101の上方に配置されるようになっている。下段容器101を冷蔵庫10から完全に引き出したときには、野菜容器カバー105は冷蔵庫10の内部に残存し、下段容器101の内部が外部に開放される。
【0014】
また、野菜室100の壁面、又は、野菜室100と冷凍室との間に位置する断熱仕切壁には、冷気の吹出口が形成されている。そして、この吹出口には、野菜室100を冷却する冷気の供給を制御可能な冷気供給調整手段141が設けられている。これにより、野菜室100に吹き出された冷気が多少は後側空間101Aに入り込んで、また、正面側から抜けるようになっている。さらには、後側空間101A内の湿度が過度に上昇することを防止でき、意図しない部位での結露が防止される。
【0015】
後側下段空間101Aは、下段容器101の内部に配置された仕切り103と、上段容器102の下面とにより前側および上側を覆われている。また、前側空間101Bは、上段容器102の正面側の側面と仕切り103とにより後側を、野菜容器カバー105により上側を覆われている。後側上段空間101Cは、上段容器102の底面と野菜容器カバー105とにより下側と上側を覆われている。
【0016】
野菜室100内、好ましくは扉から仕切り103やカバー105又は上段容器102の底面によって区切られることで庫外との気体交換が抑制された後側下段空間101Aに、この空間内の炭酸ガス濃度を検知する濃度検知部としての炭酸ガスセンサを配している。
【0017】
上段容器102の底面には、後側下段空間101Aと後側上段空間101Cとを連通する連通孔102aが形成されている。これにより、後側下段空間101Aと後側上段空間101Cとの双方の湿度調整が可能となる。
【0018】
図5は、上段容器102の正面斜視図である。
上段容器102の正面側に配置されたロックハンドル106は、通常時には下段容器101に支持固定された上段容器102を、使用者の操作に応じて前後移動可能にするものである。ロックハンドル106は、押下されることで上段容器102の正面側への移動を可能にする押下部106aと、上段容器102の正面側上端に少し窪んで形成された窪み部106bとを備えて構成される。押下部106aを把持した手の親指等で押下することで、下段容器101内での上段容器102の支持固定が解除され、上段容器102が前後方向に移動可能になる。
【0019】
図6は二酸化炭素センサ(炭酸ガスセンサ)を搭載した野菜室100に保存した野菜の写真である。(A)はチンゲン菜、小松菜、小ネギ、ミニトマトを合計684g、前側空間101Bと後側下段空間101Aに分散して保存した場合。(B)はほうれん草、ブロッコリー、パセリ、オクラ、パプリカ、シソ、モロヘイヤ、エンドウを合計1657g、後側下段空間101Aに保存した場合。(C)はほうれん草、ブロッコリー、オクラ、小松菜、キャベツを合計2065g、後側下段空間101Aに保存した場合。(D)はほうれん草、パセリ、カリフラワー。アスパラ、シソを合計2500g、後側下段空間101Aに保存した場合である。図中手前側が前側である。
【0020】
図7は(A)から(D)の野菜を収納した状態で野菜室扉を閉めてから2時間に亘る野菜室100内の炭酸ガス濃度の推移を示すグラフである。図8は(A)~(D)に基づく、炭酸ガス濃度の平均と野菜保存重量の関係を示すグラフである。
【0021】
野菜室100内の炭酸ガス濃度は、概ね0.2時間で安定し始め、野菜重量が多い場合でも1.75時間程度で飽和して安定することが看取される。また、野菜の重量と2時間に亘る炭酸ガス濃度の平均値との間には、ほぼ直線の関係になっていることが判る。この関係は、図8のように平均値を使用しても、立ち上がりを終える0.2時間時点での値を使用しても、今回の実験における最重量で安定し始めた1.75時間時点での値を使用しても良い。
【0022】
また、(A)~(D)において種々野菜の種類を変えてもこのような関係が成立することから、野菜の呼吸による炭酸ガス濃度の増加速度は野菜の種類の影響が少ないことが推認される。
【0023】
このことから、野菜室100内の炭酸ガス濃度を扉閉塞時からおよそ0.2時間、1.75時間又は2時間計測し、その経過時点の炭酸ガス濃度又は経過時点までの炭酸ガス濃度の平均値が、扉閉塞時からどの様に変化したかで、閉塞時点の野菜室における野菜の収納量を推定できる。すなわち、少なくとも連続して0.2時間に亘って扉閉塞状態が維持された場合、炭酸ガス濃度のデータから野菜収納量を推定し、このときの推定量と、前回成功した推定量とを比較することで、その間の扉開閉によって野菜が追加保存されたか、又は野菜が取り出されたかを推定できる。単に野菜が追加保存されたか否か、及び/又は取り出されたか否かというそれぞれ2値の検知に留めても良いし、追加保存量や取り出し量を具体的に推定しても良い。冷蔵庫10は、このような演算処理を行う又は演算処理を外部機器に依頼して演算結果を取得する制御部を有している。
【0024】
ユーザによる野菜の出し入れ態様には様々なものが想定される。例えば、料理をする際、野菜室100内の野菜を一旦全部取出し、その一部を料理に使用して、調理途中又は調理終了後余った野菜を保存するユーザも想定し得る。そのため、炭酸ガスの検知時間を扉閉塞後例えば2時間として、2時間以内に扉開された場合の炭酸ガス濃度の変化の検知を無効とすることで精度を向上できる。このようにすれば、調理が終了して次の調理や買い物まで野菜室扉が開閉されない安定時の炭酸ガス濃度だけを検知するようにでき、正確な野菜の消費量や追加量を検知することができる。例えば、扉が閉塞された状態が2時間連続した場合に炭酸ガス濃度データ(第1の値)を取得する。その後、扉が開放及び閉塞され、この閉塞状態が例えば2時間連続した場合に炭酸ガス濃度データ(第2の値)を取得する。第1の値と第2の値との差分を利用して、野菜の収納量の増減を検知する。
【0025】
第1の値と第2の値それぞれの演算法は共通にする。例えば2時間経過時点の瞬時値にしたり、2時間に亘る平均値にしたりすることができる。
【0026】
この変化より、毎日の野菜の消費量を算出することが出来る。炭酸ガス濃度の検知時間は2時間に限られない。
【0027】
さらに、消費した1日あたりの野菜の重量を冷蔵庫の例えば扉に表示したり別機器に送信したりして報知することで、その家庭の1日(起点を零時に固定する必要は必ずしもなく、適宜設定できる。)の野菜の消費量を家族で認知しやすくなる。これにより健康のため野菜をもっと摂取しようという意欲につなげることが出来る。また、日々の変化をグラフ化したり、曜日ごとに表示したりすることで、家族の野菜摂取のバランスを認知することが出来、外食を控えたり、家食の推進につながり家族の親睦が深まったりすることが期待される。
【0028】
野菜の消費量を報知するに際しては、例えば、各日における野菜の推定増加量を無視して推定減少量のみを取得し、その和とすることができる。推定増加量を含めて、例えば零時時点の収納量と24時時点の収納量との差分にしてしまうと、新たに購入した量が消費量を相殺してしまい、実態に即さなくなるためである。
【0029】
野菜の消費量を高精度に推定するには、これから調理に使用する野菜の取出しと、新たに購入した野菜の収納とを同時に行うことを避けることが望まれる。このため、冷蔵庫や別機器にその旨を報知させることができる。また、野菜室に収納重量の増減を検知する重量変動検知部を配して、重量の増加又は減少を検知した場合は、所定時間以内に野菜を取り出す又は収納することを避けるように報知しても良い。
【0030】
本実施形態では炭酸ガスを利用して野菜の収納量を推定するようにしたが、推定したい食材の種別に応じて異なるガス濃度を検知するセンサを利用できる。例えば特に、果物、魚や肉、に適したものとしてエチレンガス、アンモニア又はトリメチルアミン等の濃度を利用できる。このように、対象成分の濃度の減少量を利用することで、対象食品類(野菜、果物、魚、又は肉など)の収納量の減少や減少量を推定できる。
【0031】
数日間など所定期間に亘って対象食品類の収納量の増加を検知しない場合は、対象食品類の購入を促す報知をしても良い。
【符号の説明】
【0032】
10 冷蔵庫
100 野菜室(貯蔵室)
101 下段容器(収納容器)
101A 後側下段空間
101B 前側空間
101C 後側上段空間
102 上段容器
102a 連通孔
103 仕切り
105 野菜容器カバー
105a ローレット
105b 蒸散ボード
105c 連通孔
105d リブ
106 ロックハンドル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8