(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】血液分離方法及び血液分離フィルタ
(51)【国際特許分類】
A61M 1/02 20060101AFI20220419BHJP
【FI】
A61M1/02 103
(21)【出願番号】P 2019506994
(86)(22)【出願日】2018-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2018011519
(87)【国際公開番号】W WO2018174195
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2020-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2017058366
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】飯田 直紀
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0051486(US,A1)
【文献】特開2005-237791(JP,A)
【文献】特表2001-500053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/02
B01D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液から所定の血液成分を分離する血液分離フィルタ(10A~10F)を用いた血液分離方法であって、
前記血液分離フィルタ(10A~10F)は、
ハウジング(18、62)と、
前記ハウジング(18、62)内に配設され、血液流入室(20)と血液流出室(22)とに前記ハウジング(18、62)の厚さ方向に区画する濾材(38)と、
前記ハウジング(18、62)に設けられて前記血液流入室(20)に血液を流入させる流入ポート(26)と、
前記ハウジング(18、62)に設けられて前記血液流出室(22)内から前記濾材(38)によって前記血液成分が分離された後の分離済み血液を流出させる流出ポート(28)と、を備え、
前記濾材(38)のうち前記血液流入室(20)に露出する表面が鉛直下方を向き、且つ前記濾材(38)の鉛直下方に前記血液流入室(20)が位置するとともに前記濾材(38)の鉛直上方に前記血液流出室(22)が位置するように前記ハウジング(18、62)を配置する配置工程と、
前記配置工程の状態で、前記血液を前記流入ポート(26)から前記血液流入室(20)に流入させ、前記濾材(38)内を鉛直下方から上方に流通させた後、前記血液流出室(22)内の前記分離済み血液を前記流出ポート(28)に流出させる血液処理工程と、
前記血液処理工程の後で、
前記表面が水平方向を向き、且つ前記流出ポート(28)が前記血液流出室(22)よりも鉛直下方に位置するように前記ハウジング(18、62)を配置することにより、前記ハウジング(18、62)内に残留した前記分離済み血液を前記流出ポート(28)に導く残留処理済み血液回収工程と、を行うことを特徴とする血液分離方法。
【請求項2】
請求項1記載の血液分離方法において、
前記ハウジング(18、62)には、前記流入ポート(26)に接続された流入チューブ(14)が取り外し可能に装着された入口側係止部(11a、15a、19a、21a、23a、25a)が設けられており、
前記配置工程では、前記流入チューブ(14)を前記入口側係止部(11a、15a、19a、21a、23a、25a)に装着した状態で前記ハウジング(18、62)を配置し、
前記残留処理済み血液回収工程では、前記流入チューブ(14)を前記入口側係止部(11a、15a、19a、21a、23a、25a)から取り外すことにより前記ハウジング(18、62)を配置する、
ことを特徴とする血液分離方法。
【請求項3】
請求項2記載の血液分離方法において、
前記入口側係止部(11a、15a、19a、21a、23a、25a)は、前記ハウジング(18、62)のうち前記血液流出室(22)が位置する側の外面(32a)の中央部に設けられ、
前記配置工程では、前記流入チューブ(14)を前記入口側係止部(11a、15a、19a、21a、23a、25a)に装着させた状態で前記流入チューブ(14)の少なくとも一部を前記血液分離フィルタ(10A~10F)の重心(G)を通る重心線(Lg)上に延在させる、
ことを特徴とする血液分離方法。
【請求項4】
請求項3記載の血液分離方法において、
前記ハウジング(18、62)のうち前記血液流入室(20)が位置する側の外面(30a)の中央部には、前記流出ポート(28)に接続された流出チューブ(16)が取り外し可能に装着された出口側係止部(11b、15b、19b、21b、23b、25b)が設けられ、
前記配置工程では、前記流出チューブ(16)を前記出口側係止部(11b、15b、19b、21b、23b、25b)に装着させた状態で前記流出チューブ(16)の少なくとも一部を前記重心線(Lg)上に延在させる、
ことを特徴とする血液分離方法。
【請求項5】
請求項4記載の血液分離方法において、
前記残留処理済み血液回収工程では、前記流出チューブ(16)を前記出口側係止部(11b、15b、19b、21b、23b、25b)から取り外す、
ことを特徴とする血液分離方法。
【請求項6】
血液から所定の血液成分を分離する血液分離フィルタ(10A~10F)において、
ハウジング(18、62)と、
前記ハウジング(18、62)内に配設され、前記ハウジング(18、62)内を血液流入室(20)と血液流出室(22)とに前記ハウジング(18、62)の厚さ方向に区画する濾材(38)と、
前記ハウジング(18、62)に設けられて前記血液流入室(20)内に血液を流入させる流入ポート(26)と、
前記ハウジング(18、62)に設けられて前記血液流出室(22)内から前記濾材(38)によって前記血液成分が分離された後の分離済み血液を流出させる流出ポート(28)と、を備え、
前記流入ポート(26)には、流入チューブ(14)が接続され、
前記ハウジング(18、62)には、前記流入チューブ(14)が取り外し可能に装着された入口側係止部(11a、15a、19a、21a、23a、25a)が設けられ、
前記流入チューブ(14)を前記入口側係止部(11a、15a、19a、21a、23a、25a)に装着した状態で、前記ハウジング(18、62)は、
前記濾材(38)のうち前記血液流入室(20)に露出する表面が鉛直下方を向き、且つ前記濾材(38)の鉛直下方に前記血液流入室(20)が位置するとともに前記濾材(38)の鉛直上方に前記血液流出室(22)が位置するように配置され、
前記流入チューブ(14)を前記入口側係止部(11a、15a、19a、21a、23a、25a)から取り外した状態で、前記ハウジング(18、62)は、
前記表面が水平方向を向き、且つ前記流出ポート(28)が前記血液流出室(22)よりも鉛直下方に位置するように配置される、
ことを特徴とする血液分離フィルタ(10A~10F)。
【請求項7】
請求項6記載の血液分離フィルタ(10A~10F)において、
前記ハウジング(18、62)は、
前記血液流入室(20)が位置する側の第1外面(30a)と、
前記血液流出室(22)が位置する側の第2外面(32a)と、を有し、
前記入口側係止部(11a、15a、19a、21a、23a、25a)は、前記第2外面(32a)の中央部に設けられ、
前記入口側係止部(11a、15a、19a、21a、23a、25a)は、前記流入チューブ(14)を前記入口側係止部(11a、15a、19a、21a、23a、25a)に装着して前記ハウジング(18、62)を配置した状態で前記流入チューブ(14)の少なくとも一部が前記血液分離フィルタ(10A~10F)の重心(G)を通る重心線(Lg)上に延在可能なように構成されている、
ことを特徴とする血液分離フィルタ(10A~10F)。
【請求項8】
請求項7記載の血液分離フィルタ(10A~10F)において、
前記流出ポート(28)には、流出チューブ(16)が接続され、
前記第1外面(30a)の中央部には、前記流出チューブ(16)が着脱可能な出口側係止部(11b、15b、19b、21b、23b、25b)が設けられ、
前記出口側係止部(11b、15b、19b、21b、23b、25b)は、前記流出チューブ(16)を前記出口側係止部(11b、15b、19b、21b、23b、25b)に装着した状態で流出チューブ(16)の少なくとも一部が前記重心線(Lg)上に延在可能なように構成されている、
ことを特徴とする血液分離フィルタ(10A~10F)。
【請求項9】
請求項8記載の血液分離フィルタ(10A、10B)において、
前記入口側係止部(11a、15a)及び前記出口側係止部(11b、15b)の少なくとも一方は、前記流入チューブ(14)又は前記流出チューブ(16)が着脱可能な係止溝が形成されたクリップ部である、
ことを特徴とする血液分離フィルタ(10A、10B)。
【請求項10】
請求項8記載の血液分離フィルタ(10C、10D)において、
前記入口側係止部(19a、21a)及び前記出口側係止部(19b、21b)の少なくとも一方は、前記流入チューブ(14)又は前記流出チューブ(16)を引っ掛けることができるフック部である、
ことを特徴とする血液分離フィルタ(10C、10D)。
【請求項11】
請求項8記載の血液分離フィルタ(10E、10F)において、
前記入口側係止部(23a、25a)及び前記出口側係止部(23b、25b)の少なくとも一方は、前記ハウジング(18、62)との間に前記流入チューブ(14)又は前記流出チューブ(16)が挿通する空間が形成されるように前記ハウジング(18、62)に対して剥離可能に接合された帯状体である、
ことを特徴とする血液分離フィルタ(10E、10F)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液から所定の血液成分を分離する血液分離方法及び血液分離フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、供血者から採取した血液から所定の血液成分(例えば、白血球や血小板等)を分離するために、血液分離フィルタが用いられている。血液分離フィルタは、ハウジングと、ハウジング内を血液流入室と血液流出室とに厚さ方向に区画する濾材と、血液流入室内に血液を流入させる流入ポートと、血液流出室内から濾材により血液成分が分離された後の分離済み血液を流出させる流出ポートとを備える(例えば、再公表WO2010/026891号参照)。
【0003】
このような血液分離フィルタを使用する場合、分離前(濾過前)の血液が収容された血液バッグを懸架台に吊るし、上方に流入ポートが位置するとともに下方に流出ポートが位置するようにハウジングを鉛直に配置し、落差によって血液バッグから血液分離フィルタに導かれた血液を濾材で濾過する。
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、従来の血液分離フィルタでは、血液から血液成分を分離する際にハウジングが鉛直方向に配置されるため、重力の作用によって血液流入室内の下側に血液が溜まる。そうすると、濾材の上側が有効に使用されないため、濾材有効面積が減少する。濾材有効面積の減少により、濾過時の流速の低下、血液成分の漏れ、濾過詰まり、溶血等が生じることがある。
【0005】
また、血液流入室が血液流出室の上方に位置するようにハウジングを水平に配置した場合、流入ポートから血液流入室内に流入した血液が濾材の表面の全体に広がる前に下方に濾過され始める。そうすると、濾材の表面に空気(気泡)が留まる、いわゆるエアーブロックが発生することがある。この場合、濾材のうち空気が留まっている箇所において血液の濾過が行われないため、濾材有効面積が減少するおそれがある。
【0006】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、濾材有効面積の減少を防止することができる血液分離方法及び血液分離フィルタを提供することを目的とする。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る血液分離方法は、血液から所定の血液成分を分離する血液分離フィルタを用いた血液分離方法であって、前記血液分離フィルタは、ハウジングと、前記ハウジング内に配設され、血液流入室と血液流出室とに前記ハウジングの厚さ方向に区画する濾材と、前記ハウジングに設けられて前記血液流入室に血液を流入させる流入ポートと、前記ハウジングに設けられて前記血液流出室内から前記濾材によって前記血液成分が分離された後の分離済み血液を流出させる流出ポートと、を備え、前記濾材のうち前記血液流入室に露出する表面が鉛直下方を向き、且つ前記濾材の鉛直下方に前記血液流入室が位置するとともに前記濾材の鉛直上方に前記血液流出室が位置するように前記ハウジングを配置する配置工程と、前記配置工程の状態で、前記血液を前記流入ポートから前記血液流入室に流入させ、前記濾材内を鉛直下方から上方に流通させた後、前記血液流出室内の前記分離済み血液を前記流出ポートに流出させる血液処理工程と、前記血液処理工程の後で、前記表面が水平方向を向き、且つ前記流出ポートが前記血液流出室よりも鉛直下方に位置するように前記ハウジングを配置することにより、前記ハウジング内に残留した前記分離済み血液を前記流出ポートに導く残留処理済み血液回収工程と、を行うことを特徴とする。
【0008】
このような方法によれば、流入ポートから血液流入室内に流入した血液は、血液流入室内の全体に広がった後で液面が上昇して濾材の表面(下側表面)の略全体に接触し、濾材を下から上に向かって流通して血液流出室に導かれる。これにより、血液流入室内で血液が偏ることを抑えることができる。また、血液流入室内から空気を確実に排出させることができるため、エアーブロックの発生を抑えることができる。よって、濾材有効面積の減少を防止することができる。また、血液処理工程の後で、ハウジングを配置しているため、ハウジング内に残留している分離済み血液を効率的に回収することができる。
【0009】
上記の血液分離方法において、前記ハウジングには、前記流入ポートに接続された流入チューブが取り外し可能に装着された入口側係止部が設けられており、前記配置工程では、前記流入チューブを前記入口側係止部に装着した状態で前記ハウジングを配置し、前記残留処理済み血液回収工程では、前記流入チューブを前記入口側係止部から取り外すことにより前記ハウジングを配置してもよい。
【0010】
このような方法によれば、ハウジングを鉛直方向に垂直な状態(寝かせた状態)から鉛直方向と水平な状態(立てた状態)に容易に切り替えることができる。
【0011】
上記の血液分離方法において、前記入口側係止部は、前記ハウジングのうち前記血液流出室が位置する側の外面の中央部に設けられ、前記配置工程では、前記流入チューブを前記入口側係止部に装着させた状態で前記流入チューブの少なくとも一部を前記血液分離フィルタの重心を通る重心線上に延在させてもよい。
【0012】
このような方法によれば、配置工程においてハウジングを水平位姿勢に近い状態で寝かせることができる。
【0013】
上記の血液分離方法において、前記ハウジングのうち前記血液流入室が位置する側の外面の中央部には、前記流出ポートに接続された流出チューブ部が取り外し可能に装着された出口側係止部が設けられ、前記配置工程では、前記流出チューブ部を前記出口側係止部に装着させた状態で前記流出チューブの少なくとも一部を前記重心線上に延在させてもよい。
【0014】
このような方法によれば、配置工程においてハウジングを水平位姿勢により近い状態で寝かせることができる。
【0015】
上記の血液分離方法において、前記残留処理済み血液回収工程では、前記流出チューブを前記出口側係止部から取り外してもよい。
【0016】
このような方法によれば、流出チューブ部を介してハウジング内に残留した分離済み血液を効率的に回収することができる。
【0017】
本発明に係る血液分離フィルタは、血液から所定の血液成分を分離する血液分離フィルタにおいて、ハウジングと、前記ハウジング内に配設され、前記ハウジング内を血液流入室と血液流出室とに前記ハウジングの厚さ方向に区画する濾材と、前記ハウジングに設けられて前記血液流入室内に血液を流入させる流入ポートと、前記ハウジングに設けられて前記血液流出室内から前記濾材によって前記血液成分が分離された後の分離済み血液を流出させる流出ポートと、を備え、前記流入ポートには、流入チューブが接続され、前記ハウジングには、前記流入チューブが取り外し可能に装着された入口側係止部が設けられ、前記流入チューブを前記入口側係止部に装着した状態で、前記ハウジングは、前記濾材のうち前記血液流入室に露出する表面が鉛直下方を向き、且つ前記濾材の鉛直下方に前記血液流入室が位置するとともに前記濾材の鉛直上方に前記血液流出室が位置するように配置され、前記流入チューブを前記入口側係止部から取り外した状態で、前記ハウジングは、前記表面が水平方向を向き、且つ前記流出ポートが前記血液流出室よりも鉛直下方に位置するように配置されることを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、上述した血液分離方法と同様の効果を奏する血液分離フィルタを得ることができる。
【0019】
上記の血液分離フィルタにおいて、前記ハウジングは、前記血液流入室が位置する側の第1外面と、前記血液流出室が位置する側の第2外面と、を有し、前記入口側係止部は、前記第2外面の中央部に設けられ、前記入口側係止部は、前記流入チューブ部を前記入口側係止部に装着して前記ハウジングを配置した状態で前記流入チューブ部の少なくとも一部が前記血液分離フィルタの重心を通る重心線上に延在可能なように構成されていてもよい。
【0020】
このような構成によれば、ハウジングを容易に水平位姿勢に近い状態で寝かせることができる。
【0021】
上記の血液分離フィルタにおいて、前記流出ポートには、流出チューブが接続され、前記第1外面の中央部には、前記流出チューブが着脱可能な出口側係止部が設けられ、前記出口側係止部は、前記流出チューブを前記出口側係止部に装着した状態で流出チューブの少なくとも一部が前記重心線上に延在可能なように構成されていてもよい。
【0022】
このような構成によれば、ハウジングを容易に水平位姿勢に近い状態で寝かせることができる。
【0023】
上記の血液分離フィルタにおいて、前記入口側係止部及び前記出口側係止部の少なくとも一方は、前記流入チューブ部又は前記流出チューブ部が着脱可能な係止溝が形成されたクリップ部であってもよい。
【0024】
このような構成によれば、簡易な構成により流入チューブを入口側係止部に着脱することができ、簡易な構成により流出チューブを出口側係止部に着脱することができる。
【0025】
上記の血液分離フィルタにおいて、前記入口側係止部及び前記出口側係止部の少なくとも一方は、前記流入チューブ又は前記流出チューブを引っ掛けることができるフック部であってもよい。
【0026】
上記の血液分離フィルタにおいて、前記入口側係止部及び前記出口側係止部の少なくとも一方は、前記ハウジングとの間に前記流入チューブ又は前記流出チューブが挿通する空間が形成されるように前記ハウジングに対して剥離可能に接合された帯状体であってもよい。
【0027】
本発明によれば、濾材の下方に血液流入室が位置するとともに濾材の上方に前記血液流出室が位置するようにハウジングを寝かせて配置するため、血液流入室内で血液が偏ることを抑えることができるとともにエアーブロックの発生を抑えることができる。よって、濾材有効面積の減少を防止することができる。また、血液移送の後で、ハウジングを立位した姿勢に配置するため、ハウジング内に残留している分離済み血液を効率的に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る血液分離フィルタの斜視図である。
【
図3】
図1の血液分離フィルタを用いた血液分離方法の模式的説明図である。
【
図4】
図1の血液分離フィルタの残留処理済み血液回収工程を説明する斜視図である。
【
図5】
図1の血液分離フィルタの残留処理済み血液回収工程を説明する断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る血液分離フィルタの斜視図である。
【
図8】
図6の血液分離フィルタの残留処理済み血液回収工程を説明する斜視図である。
【
図9】
図9Aは、本発明の第3実施形態に係る血液分離フィルタの斜視図であり、
図9Bは、
図9Aの入口側係止部(出口側係止部)の拡大断面図である。
【
図10】本発明の第4実施形態に係る血液分離フィルタの斜視図である。
【
図11】本発明の第5実施形態に係る血液分離フィルタの斜視図である。
【
図12】本発明の第6実施形態に係る血液分離フィルタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る血液分離方法及び血液分離フィルタについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図1に示す血液分離フィルタ10Aは、血液から例えば白血球、血小板等の所定の血液成分を分離又は除去するものであって、ハウジング18内に血液を導く流入チューブ14と、ハウジング18内から血液が導かれる流出チューブ16とが設けられる。
【0031】
図2に示すように、血液分離フィルタ10Aは、ハウジング18と、ハウジング18内を血液流入室20と血液流出室22とに上下方向(ハウジング18の延在方向と直交する厚さ方向)に区画し、且つ濾材38を含むフィルタ部材24と、血液流入室20内に血液を流入させる流入ポート26と、血液流出室22内からフィルタ部材24によって血液成分が分離された後の血液(分離済み血液)を流出させる流出ポート28とを備える。
【0032】
図1及び
図2において、ハウジング18は、平面視で長方形の各短辺を円弧状に突出させた形状を有している。すなわち、ハウジング18は、平面状に延在している。ハウジング18は、水平に配置されて使用されるものであり、互いに反対側の壁を構成する一対の樹脂ケース(第1ケース30及び第2ケース32)を有する。第1ケース30及び第2ケース32のそれぞれは、例えば、ポリカーボネート等の硬質樹脂からなる。ハウジング18は、血液流入室20が位置する側の第1外面30a(第1ケース30の外面)と、血液流出室22が位置する側の第2外面32a(第2ケース32の外面)とを有する。
【0033】
図2に示すように、第1ケース30及び第2ケース32の周縁部同士は、全周において融着(超音波融着等)により接合されている。血液流入室20内に血液を流通させ易くするために、第1ケース30のうちフィルタ部材24に対向する内面には、複数の突起34が設けられている。血液流出室22内に分離済み血液を流通させ易くするために、第2ケース32のうちフィルタ部材24に対向する内面には、複数の突起36が設けられている。突起34及び突起36の少なくとも一方は、省略してもよい。
【0034】
フィルタ部材24は、第1ケース30と第2ケース32との間に設けられており、ハウジング18内を血液流入室20と血液流出室22とに上下方向に区画するとともに、血液流入室20内の血液が血液流出室22に移動する際の流路となり、所定の血液成分を分離又は除去する部材である。具体的に、フィルタ部材24は、互いに同一形状の複数の濾材38が厚さ方向に積層されて構成されている。
【0035】
濾材38は、一方の面から他方の面に連通する多数の微細な連続孔を有するシート状の多孔質体からなる。このような多孔質体としては、例えばポリウレタン製のスポンジシート、不織布等が挙げられる。濾材38の積層枚数は、例えば、2~10枚程度である。なお、
図2のフィルタ部材24では、6枚の濾材38が積層されている。フィルタ部材24を構成する濾材38の枚数は1枚のみであってもよい。
【0036】
フィルタ部材24の周縁部は、血液流入室20からフィルタ部材24の外側を介して血液流出室22に血液が流れることを阻止するために、第1ケース30に設けられた第1凸部40と第2ケース32に設けられた第2凸部42とによってフィルタ部材24が積層方向内方に圧縮されるように加締められている。第1凸部40と第2凸部42とのそれぞれは、フィルタ部材24の周縁部に沿って一周延在する。
【0037】
血液流入室20は、第1ケース30とフィルタ部材24との間に形成され、血液流出室22は、第2ケース32とフィルタ部材24との間に形成されている。
【0038】
流入ポート26は、流出ポート28に対して血液分離フィルタ10Aの重心Gを通るとともに厚さ方向に延在する重心線Lgを挟んだ反対側に位置している。流入ポート26は、血液をハウジング18内に流入させるものであって、血液流入室20に連通する流入孔26aを有している。流入ポート26は、第1ケース30の外縁部に一体的に設けられている。ただし、第1ケース30とは別部材として構成された流入ポート26を第1ケース30に対して融着等により接合してもよい。
【0039】
流出ポート28は、分離済み血液をハウジング18から流出させるものであって、血液流出室22に連通する流出孔28aを有している。流出ポート28は、第2ケース32の外縁部に一体的に設けられている。ただし、第2ケース32とは別部材として構成された流出ポート28を第2ケース32に対して融着により接合してもよい。
【0040】
流入チューブ14は、可撓性を有する長尺な円筒状チューブであって、流入ポート26に接続されている。流入チューブ14の一端は、封止部材50を介して血液が収容された血液バッグ52に接続され、流入チューブ14の他端は、流入ポート26に接続されている(
図3参照)。
【0041】
流出チューブ16は、可撓性を有する長尺な円筒状チューブであって、流出ポート28に接続されている。流出チューブ16の一端は、流出ポート28に接続され、流出チューブ16の他端は、分離済み血液が収容される収容バッグ58に接続されている(
図3参照)。
【0042】
第2外面32aの中央部には、流入チューブ14が着脱可能な入口側係止部11aが設けられている。ハウジング18は、流入チューブ14を入口側係止部11aに装着してハウジング18を吊るした状態で、血液流入室20がフィルタ部材24の下方に位置するとともに血液流出室22がフィルタ部材24の上方に位置するように寝かされる(
図1参照)。また、ハウジング18は、流入チューブ14を入口側係止部11aから取り外してハウジング18を吊るした状態で、流出ポート28が血液流出室22よりも下方に位置するように立てた状態になる(
図4参照)。入口側係止部11aは、流入チューブ14を入口側係止部11aに装着してハウジング18を吊るした状態で重心線Lg上に延在可能なように構成されている。
【0043】
入口側係止部11aは、流入チューブ14が着脱可能な係止溝13が形成されたクリップ部である。具体的に、入口側係止部11aは、第2外面32aの中央部から流入ポート26に向かって直線状に延在している。係止溝13は、入口側係止部11aの全長に亘って延在している。流入チューブ14を係止溝13内に適度な力で嵌めることができるように、係止溝13の溝幅w1は流入チューブ14の外径(外側の直径)よりも僅かに小さく、係止溝13の溝深さdは流入チューブ14の外径と略同一に設定されている。ただし、係止溝13の溝幅w及び溝深さdは、任意に設定可能である。
【0044】
第1外面30aの中央部には、流出チューブ16が着脱可能な出口側係止部11bが設けられている。出口側係止部11bは、流出チューブ16を出口側係止部11bに装着してハウジング18を吊るした状態で重心線Lg上に延在可能なように構成されている。
【0045】
出口側係止部11bは、流出チューブ16が着脱可能な係止溝13が形成されたクリップ部である。具体的に、出口側係止部11bは、第1外面30aの中央部から流出ポート28に向かって直線状に延在している。係止溝13は、係止溝13と同様に構成されている。入口側係止部11aと出口側係止部11bとは、ハウジング18の中央部から互いに反対方向に延在している。
【0046】
次に、血液分離フィルタ10Aを用いた血液分離方法について説明する。
図3に示すように、血液から所定の血液成分を分離する際、まず、血液が収容された血液バッグ52を懸架台に吊り下げて高所に配置する。また、配置工程において、ハウジング18を流入チューブ14により吊り下げる。そうすると、血液流入室20がフィルタ部材24の下方に位置するとともに血液流出室22がフィルタ部材24の上方に位置するように水平姿勢に近い状態(寝かせた状態)になる。この際、流入チューブ14の少なくとも一部と流出チューブ16の少なくとも一部が重心線Lg上に延在している。
【0047】
その後、配置工程の状態で、血液を移送する血液処理工程を行う。具体的には、封止部材50を破断して、落差(重力)を利用して血液バッグ52内の血液を流入チューブ14に移送する。流入チューブ14に移送された血液は、流入ポート26を介してハウジング18の血液流入室20内に流入される。血液流入室20内に流入した血液は、血液流入室20内の全体に広がり、その液面が徐々に上昇する。そして、血液がフィルタ部材24を下から上に流通する際に、血液成分(例えば、白血球等)がフィルタ部材24にトラップされることにより血液から分離又は除去される。この際、血液を流入ポート26から濾材38へ鉛直方向下向きから導入することにより、ハウジング18内に残存する空気が流出ポート28から排除される。フィルタ部材24を流通した分離済み血液は、血液流出室22内から流出ポート28及び流出チューブ16に導かれ、収容バッグ58内に収容される。
【0048】
血液処理工程が完了すると、
図4に示すように、流入チューブ14を入口側係止部11aから取り外すとともに流出チューブ16を出口側係止部11bから取り外すことにより、ハウジング18を立てた状態にする。この際、流出ポート28が血液流出室22の下方に位置する。そうすると、
図5に示すように、落差によって血液流入室20内の血液が下方に流れてフィルタ部材24の下側を流通する。そして、血液流出室22内に導かれた分離済み血液は、下方に位置する流出ポート28を介して流出チューブ16に導かれ、収容バッグ58内に収容される。
【0049】
次に、本実施形態に係る血液分離フィルタ10A及び血液分離方法の効果について説明する。
【0050】
血液分離方法は、血液分離フィルタ10Aを用いて血液から所定の血液成分を分離する。この血液分離フィルタ10Aは、ハウジング18と、ハウジング18内を血液流入室20と血液流出室22とにハウジング18の厚さ方向に区画する濾材38と、ハウジング18に設けられて血液流入室20に血液を流入させる流入ポート26と、ハウジング18に設けられて血液流出室22内からフィルタ部材24によって血液成分が分離された後の分離済み血液を流出させる流出ポート28と、を備える。
【0051】
流入ポート26には、流入チューブ14が接続され、ハウジング18には、流入チューブ14が取り外し可能に装着された入口側係止部11aが設けられている。流入チューブ14を入口側係止部11aに装着した状態で、ハウジング18は、濾材38の下方に血液流入室20が位置するとともに濾材38の上方に血液流出室22が位置するように配置される。また、流入チューブ14を入口側係止部11aから取り外した状態で、ハウジング18は、流出ポート28が血液流出室22よりも鉛直下方に位置するように配置される。
【0052】
また、配置工程において、濾材38の鉛直下方に血液流入室20が位置するとともに濾材38の鉛直上方に血液流出室22が位置するようにハウジング18を配置している。そして、血液処理工程において、配置工程の状態で、血液を前記流入ポート26から血液流入室20に流入させ、濾材38内を鉛直下方から上方に流通させた後、血液流出室22内の分離済み血液を流出ポート28に流出させている。その後、残留処理済み血液回収工程において、流出ポート28が血液流出室22よりも鉛直下方に位置するようにハウジング18を配置することにより、ハウジング18内に残留した分離済み血液を流出ポート28に導いている。
【0053】
これにより、流入ポート26から血液流入室20内に流入した血液は、血液流入室20内の全体に広がった後で液面が上昇して濾材38の表面(下側表面)の略全体に接触し、濾材38を下から上に向かって流通して血液流出室22に導かれる。よって、血液流入室20内で血液が偏ることを抑えることができる。また、血液流入室20内から空気を確実に排出させることができるため、エアーブロックの発生を抑えることができる。従って、濾材有効面積の減少を防止することができる。また、血液処理工程の後で、ハウジング18を立てた状態にしているため、ハウジング18内に残留している分離済み血液を効率的に回収することができる。
【0054】
配置工程では、流入チューブ14を入口側係止部11aに装着した状態でハウジング18を配置し、残留処理済み血液回収工程では、流入チューブ14を入口側係止部11aから取り外すことによりハウジング18を配置している。これにより、ハウジング18を寝かせた状態から立てた状態に容易に切り替えることができる。
【0055】
入口側係止部11aは、ハウジング18のうち血液流出室22が位置する側の第2外面32aの中央部に設けられている。配置工程では、流入チューブ14を入口側係止部11aに装着させた状態で流入チューブ14の少なくとも一部を重心線Lg上に延在させている。これにより、配置工程においてハウジング18を水平位姿勢に近い状態で寝かせることができる。
【0056】
ハウジング18のうち血液流入室20が位置する側の第1外面30aの中央部には、流出ポート28に接続された流出チューブ16が取り外し可能に装着された出口側係止部11bが設けられている。配置工程では、流出チューブ16を出口側係止部11bに装着させた状態で流出チューブ16の少なくとも一部を重心線Lg上に延在させている。これにより、配置工程においてハウジング18を水平位姿勢により近い状態で寝かせることができる。
【0057】
残留処理済み血液回収工程では、流出チューブ16を出口側係止部11bから取り外している。そのため、流出チューブ16を介してハウジング18内に残留した分離済み血液を効率的に回収することができる。
【0058】
入口側係止部11aは、流入チューブ14が着脱可能な係止溝13が形成されたクリップ部であり、出口側係止部11bは、流出チューブ16が着脱可能な係止溝13が形成されたクリップ部である。よって、簡易な構成により流入チューブ14を入口側係止部11aに着脱することができ、簡易な構成により流出チューブ16を出口側係止部11bに着脱することができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る血液分離フィルタ10Bについて説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その説明は省略する。
【0060】
図6及び
図7に示すように、血液分離フィルタ10Bは、ハウジング62と、ハウジング62内を血液流入室20と血液流出室22とに厚さ方向に区画し、且つ濾材38を含むフィルタ部材24と、血液流入室20内に血液を導く流入ポート64と、血液流出室22内から分離済み血液が導かれる流出ポート66と、フィルタ部材24から外方に延在する接続シート68とを備える。
【0061】
ハウジング62は、平面視で長方形の一方の短辺を円弧状に突出させた形状を有している。すなわち、ハウジング62は、平面状に延在している。ハウジング62は、袋状に形成され、互いに反対側の壁を構成する一対の樹脂シート(第1樹脂シート70及び第2樹脂シート72)を有する。第1樹脂シート70及び第2樹脂シート72は、例えば、ポリ塩化ビニル等の軟質樹脂からなる。ハウジング62は、血液流入室20が位置する側の第1外面70a(第1樹脂シート70の外面)と、血液流出室22が位置する側の第2外面72a(第2樹脂シート72の外面)とを有する。
【0062】
第1樹脂シート70と第2樹脂シート72の周縁部同士は、流入ポート64及び流出ポート66の部分を除く全周において、接続シート68を介して、融着(高周波融着等)により接合されている。
【0063】
血液流出室22内に分離済み血液を流通させ易くするために、第2樹脂シート72のうちフィルタ部材24に対向する内面には、第2樹脂シート72の長手方向に延在した複数のリブ76が設けられている。なお、血液流入室20内に血液を流通させ易くするために、第1樹脂シート70のうちフィルタ部材24に対向する内面にもリブ76と同様の複数のリブを設けてもよい。第2樹脂シート72において、リブ76は省略されてもよい。
【0064】
血液流入室20は、ハウジング62の第1樹脂シート70とフィルタ部材24との間に形成され、血液流出室22は、ハウジング62の第2樹脂シート72とフィルタ部材24との間に形成されている。
【0065】
流入ポート64は、流出ポート66に対して血液分離フィルタ10Bの重心Gを通る重心線Lgを挟んだ反対側に位置している。流入ポート64は、血液をハウジング62内に流入させるものであって、血液流入室20に連通する流入孔64aを有している。流入ポート64は、例えばポリ塩化ビニル等の軟質樹脂からなる。流入ポート64は、ハウジング62の外縁部において、第1樹脂シート70と第2樹脂シート72との間に挟まれて、これらと融着により接合されている。
【0066】
流出ポート66は、分離済み血液をハウジング62から流出させるものであって、血液流出室22に連通する流出孔66aを有している。流出ポート66は、例えばポリ塩化ビニル等の軟質樹脂からなる。流出ポート66は、ハウジング62の外縁部において、第1樹脂シート70と第2樹脂シート72との間に挟まれて、これらと融着により接合されている。
【0067】
第2外面72aには、流入チューブ14が着脱可能な入口側係止部15aが設けられている。入口側係止部15aは、第1実施形態の入口側係止部11aと同様に構成されている。つまり、入口側係止部15aは、流入チューブ14が着脱可能な係止溝17が形成されたクリップ部であって、第2外面72aの中央部から流入ポート64に向かって直線状に延在している。
【0068】
第1外面70aには、流出チューブ16が着脱可能な出口側係止部15bが設けられている。出口側係止部15bは、第1実施形態の出口側係止部15bと同様に構成されている。つまり、出口側係止部15bは、流出チューブ16が着脱可能な係止溝17が形成されたクリップ部であって、第1外面70aの中央部から流出ポート66に向かって直線状に延在している。本実施形態は、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0069】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る血液分離フィルタ10Cについて説明する。なお、第3実施形態において、上述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その説明は省略する。
【0070】
図9A及び
図9Bに示すように、第3実施形態に係る血液分離フィルタ10Cは、ハウジング18と、第2ケース32の第2外面32aの中央部に設けられた入口側係止部19aと、第1ケース30の第1外面30aの中央部に設けられた出口側係止部19bとを備える。入口側係止部19aは、流入チューブ14を引っ掛けることができるフック部である。入口側係止部19aは、第2外面32aの中央部から突出した係止基部80と、係止基部80の突出端部から円弧状に延在した係止部本体82とを有する。係止部本体82は、線材が円弧状に湾曲することにより形成されている。
【0071】
係止部本体82の延在する周方向の角度(係止部本体82の延在する周方向の範囲)は、例えば、180°以上300°以下の範囲が好ましく、270°がより好ましい。この場合、入口側係止部19aに対する流入チューブ14の着脱操作を容易に行うことができるとともに流入チューブ14を係止部本体82に対して確実に引っ掛けることができる。ただし、係止部本体82の延在する周方向の角度は、任意に設定可能である。また、係止部本体82の延出端は、流入チューブ14を傷つけないように丸みを帯びている。
【0072】
係止部本体82で構成される内孔82aには、流入チューブ14が挿入される。係止部本体82の内孔82aの直径は、流入チューブ14の外径と略同一に形成されている。係止部本体82の延出端と係止基部80との間の開口部83の幅w2は、流入チューブ14の外径よりも狭い。これにより、流入チューブ14が入口側係止部19aから容易に外れることを抑えることができる。この場合、流入チューブ14を径方向内側に撓ませた状態で係止部本体82と係止基部80との間の開口部83を通すことにより、入口側係止部19aに対する流入チューブ14の着脱が行われる。
【0073】
出口側係止部19bは、入口側係止部19aと同様に構成されているため、その説明は省略する。本実施形態によれば、簡易な構成により流入チューブ14を入口側係止部19aに着脱することができ、簡易な構成により流出チューブ16を出口側係止部19bに着脱することができる。
【0074】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る血液分離フィルタ10Dについて説明する。なお、第4実施形態において、上述した第2及び第3実施形態と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その説明は省略する。
【0075】
図10に示すように、第4実施形態に係る血液分離フィルタ10Dは、ハウジング62と、第2樹脂シート72の第2外面32aの中央部に設けられた入口側係止部21aと、第1樹脂シート70の第1外面30aに設けられた出口側係止部21bとを備える。入口側係止部21aは、流入チューブ14を引っ掛けることができるフック部であって、第3実施形態の入口側係止部19aと同様に構成されている。
【0076】
出口側係止部21bは、流出チューブ16を引っ掛けることができるフック部であって、第3実施形態の出口側係止部19bと同様に構成されている。本実施形態によれば、第3実施形態と同様の効果を奏する。
【0077】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係る血液分離フィルタ10Eについて説明する。なお、第5実施形態において、上述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その説明は省略する。
【0078】
図11に示すように、血液分離フィルタ10Eは、ハウジング18と、第2ケース32の第2外面32aの中央部に設けられた入口側係止部23aと、第1ケース30の第1外面30aの中央部に設けられた出口側係止部23bとを備える。入口側係止部23aは、ハウジング18との間に流入チューブ14が挿通する空間が形成されるようにハウジング18に対して剥離可能に接合された帯状体である。入口側係止部23aは、第2外面32aとは反対側に湾曲している。
【0079】
入口側係止部23aの両端部は、ハウジング18の第2外面32aに対して融着されている。入口側係止部23aとハウジング18との間の接合強度は、人手によって入口側係止部23aをハウジング18に対して引きちぎる(剥離させる)ことができる程度の大きさに設定されている。ただし、入口側係止部23aは、接着剤等によって剥離可能に第2外面32aに対して接合されていてもよい。
【0080】
出口側係止部23bは、ハウジング18との間に流出チューブ16が挿通する空間が形成されるようにハウジング18に対して剥離可能に接合された帯状体であって、入口側係止部23aと同様に構成されている。本実施形態によれば、簡易な構成により流入チューブ14を入口側係止部23aに対して取り外し可能に装着することができ、簡易な構成により流出チューブ16を出口側係止部23bに対して取り外し可能に装着することができる。
【0081】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態に係る血液分離フィルタ10Fについて説明する。なお、第6実施形態において、上述した第2実施形態と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その説明は省略する。
【0082】
図12に示すように、第6実施形態に係る血液分離フィルタ10Fは、ハウジング62と、第2樹脂シート72の第2外面32aの中央部に設けられた入口側係止部25aと、第1樹脂シート70の第1外面30aに設けられた出口側係止部25bとを備える。入口側係止部25aは、ハウジング62との間に流入チューブ14が挿通する空間が形成されるようにハウジング62に対して剥離可能に接合された帯状体であって、入口側係止部25aと同様に構成されている。出口側係止部25bは、ハウジング62との間に流出チューブ16が挿通する空間が形成されるようにハウジング62に対して剥離可能に接合された帯状体であって、入口側係止部25aと同様に構成されている。本実施形態によれば第5実施形態と同様の効果を奏する。
【0083】
本発明に係る血液分離方法及び血液分離フィルタは、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。