(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子分散液の製造方法、鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子およびその用途
(51)【国際特許分類】
C01G 23/053 20060101AFI20220419BHJP
C01G 23/00 20060101ALI20220419BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220419BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20220419BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20220419BHJP
C09D 1/00 20060101ALI20220419BHJP
C09C 1/36 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
C01G23/053
C01G23/00 C
C09D7/61
B82Y30/00
B82Y40/00
C09D1/00
C09C1/36
(21)【出願番号】P 2019509846
(86)(22)【出願日】2018-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2018012287
(87)【国際公開番号】W WO2018181241
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2017072658
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】山口 純
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 巧
(72)【発明者】
【氏名】村口 良
(72)【発明者】
【氏名】上原 龍也
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-132484(JP,A)
【文献】特開2010-168266(JP,A)
【文献】特開平05-330825(JP,A)
【文献】特表2010-504272(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0108122(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 23/00
C09C 1/00
C09D 7/61
B82Y 30/00
B82Y 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)金属鉱酸塩の水溶液であって、前記金属としてTiおよびFeを、酸化物の質量に換算してFe
2O
3の質量/(TiO
2およびFe
2O
3の合計の質量)=0.001~0.010の割合で含有する水溶液を中和して鉄含有含水チタン酸を得る工程、
(2)工程(1)で得られた鉄含有含水チタン酸に過酸化水素水を加えて、平均粒子径が15~50nmである鉄含有過酸化チタン酸の水溶液を得る工程、
(3)工程(2)で得られた鉄含有過酸化チタン酸の水溶液にスズ化合物を、Snと前記水溶液中のTiとの割合が、酸化物の質量に換算してTiO
2の質量/SnO
2の質量=6~16の範囲になるように加える工程、
(4)工程(3)で得られた溶液に、SiとAl、Zr、Sb、Zn、Ni、Ba、MgおよびVからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素(M)とを酸化物の質量に換算してSiO
2の質量/MO
x/2(xはMの価数である。)の質量=99.9/0.1~80/20の範囲で含むシリカ系微粒子のゾルを、工程(3)で得られた溶液中の金属元素の量と前記ゾル中のケイ素および金属元素の量とが、酸化物の質量に換算してSiO
2の質量/(TiO
2、SnO
2、Fe
2O
3、SiO
2およびMO
x/2の合計の質量)=0.08~0.22の関係を満たすように加える工程、
(5)工程(4)で得られた溶液を水熱処理して鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子分散液を得る工程
を含む鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子分散液の製造方法。
【請求項2】
前記シリカ系微粒子の比表面積が100~600m
2/gである請求項1に記載の鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子分散液の製造方法。
【請求項3】
下記要件(a)~(f)を充足する鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子。
(a)TiをTiO
2の質量に換算して70質量%以上含み、Feを含み、さらにAl、Zr、Sb、Zn、Ni、Ba、Mg及びVからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素(M)、SnおよびSiを含む。
(b)FeとTiとの割合が、酸化物の質量に換算してFe
2O
3の質量/(TiO
2およびFe
2O
3の合計の質量)=0.001~0.010である。
(c)TiとSnとの割合が、酸化物の質量に換算してTiO
2の質量/SnO
2の質量=6~18である。
(d)SiとMとの割合が、酸化物の質量に換算してSiO
2の質量/MO
x/2(xはMの価数である。)の質量=99.9/0.1~80/20である。
(e)Siと金属元素との割合が、酸化物の質量に換算してSiO
2の質量/(TiO
2、SnO
2、Fe
2O
3、SiO
2およびMO
x/2(xはMの価数である。)の合計の質量)=0.08~0.22である。
(f)平均粒子径が4~25nmである。
【請求項4】
請求項3に記載の鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子が、Siを含みAl、ZrおよびSbからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を含む酸化物および/または複合酸化物からなる層で被覆されてなるコアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子。
【請求項5】
請求項4に記載のコアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子とマトリックス成分とを含む塗料組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の塗料組成物を硬化させてなる塗膜。
【請求項7】
基材と、該基材の表面に設けられた請求項6に記載の塗膜とを有する塗膜付基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化チタン微粒子分散液の製造方法等に関し、より詳しくはプラスチック基材の塗膜形成用塗布液の材料などに好ましく用いられる酸化チタン微粒子分散液の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン微粒子は、高い屈折率を有することからプラスチックレンズなどの光学基材への塗膜形成用塗布液の材料として好適に使用されている。特にルチル型結晶の酸化チタン微粒子は、アナターゼ型のものに比べて光触媒活性が低いことから、膜形成成分の有機ケイ素化合物や樹脂成分を分解することによる基材と塗膜との密着性の低下を抑制することができる。
【0003】
ルチル型結晶の酸化チタン微粒子分散液の製造方法を挙げると、例えば特許文献1には、水和酸化チタンのゲルまたはゾルに過酸化水素を加えて水和酸化チタンを溶解し、該溶解液にTiO2/SnO2=1.5~14(重量比)の量のスズ化合物の共存下で加熱することでルチル型酸化チタン微粒子分散液が得られることが記載されている。また、チタン酸水溶液とスズ化合物の混合水溶液にさらにケイ素化合物を共存させて、加熱、加水分解することで得られるゾルは分散安定性を増すことが記載されている。
【0004】
特許文献2には、屈折率が高く、透明性、耐候性、基材との密着性に優れたハードコート膜形成用塗布液を提供するために、該膜形成用塗布液に酸化チタン成分と酸化鉄成分をFe2O3/TiO2(重量比)が0.0005以上0.005未満の範囲からなる複合酸化物微粒子を含有させることについて開示されている。特許文献2に開示されている製造方法で酸化チタンと酸化鉄の複合酸化物粒子を調製して得られるアナターゼ型酸化チタンと酸化鉄の複合酸化物微粒子を塗膜形成用塗布液として用いて得られた膜は、該複合酸化物微粒子の光触媒活性が抑えられているために耐候性に優れている。
【0005】
特許文献3には、ルチル型酸化チタン微粒子を核としてケイ素とジルコニウムおよび/またはアルミニウムの酸化物とからなる複合酸化物で被覆したコアシェル型微粒子について開示されている。このような構成とすることでルチル型酸化チタン微粒子光触媒活性が抑制されているため、該コアシェル微粒子を塗膜形成用塗布液として用いて得られた膜は耐候性に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平2-255532号公報
【文献】特開平11-172152号公報
【文献】特開2000-204301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の酸化チタン微粒子に対しては、高い屈折率を維持したままより優れた耐候性および耐光性を発揮することが求められている。
そこで本発明は、高い屈折率を維持したまま光触媒活性が抑制され、透明性に優れた酸化チタン系微粒子およびその分散液、ならびにその製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究したところ、酸化チタン微粒子を、鉄を僅かに含有するルチル型酸化チタン微粒子とすることで上記課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。本発明の要旨は下記のとおりである。
【0009】
[1]
(1)金属鉱酸塩の水溶液であって、前記金属としてTiおよびFeを、酸化物の質量に換算してFe2O3の質量/(TiO2およびFe2O3の合計の質量)=0.001~0.010の割合で含有する水溶液を中和して鉄含有含水チタン酸を得る工程、
(2)工程(1)で得られた鉄含有含水チタン酸に過酸化水素水を加えて、平均粒子径が15~50nmである鉄含有過酸化チタン酸の水溶液を得る工程、
(3)工程(2)で得られた鉄含有過酸化チタン酸の水溶液にスズ化合物を、Snと前記水溶液中のTiとの割合が、酸化物の質量に換算してTiO2の質量/SnO2の質量=6~16の範囲になるように加える工程、
(4)工程(3)で得られた溶液に、SiとAl、Zr、Sb、Zn、Ni、Ba、MgおよびVからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素(M)とを酸化物の質量に換算してSiO2の質量/MOx/2(xはMの価数である。)の質量=99.9/0.1~80/20の範囲で含むシリカ系微粒子のゾルを、工程(3)で得られた溶液中の金属元素の量と前記ゾル中のケイ素および金属元素の量とが、酸化物の質量に換算してSiO2の質量/(TiO2、SnO2、Fe2O3、SiO2およびMOx/2の合計の質量)=0.08~0.22の関係を満たすように加える工程、
(5)工程(4)で得られた溶液を水熱処理して鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子分散液を得る工程
を含む鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子分散液の製造方法。
【0010】
[2]
前記シリカ系微粒子の比表面積が100~600m2/gである前記[1]の鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子分散液の製造方法。
【0011】
[3]
下記要件(a)~(f)を充足する鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子。
(a)TiをTiO2の質量に換算して70質量%以上含み、Feを含み、さらにAl、Zr、Sb、Zn、Ni、Ba、Mg及びVからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素(M)、SnおよびSiを含む。
(b)FeとTiとの割合が、酸化物の質量に換算してFe2O3の質量/(TiO2およびFe2O3の合計の質量)=0.001~0.010である。
(c)TiとSnとの割合が、酸化物の質量に換算してTiO2の質量/SnO2の質量=6~18である。
(d)SiとMとの割合が、酸化物の質量に換算してSiO2の質量/MOx/2(xはMの価数である。)の質量=99.9/0.1~80/20である。
(e)Siと金属元素との割合が、酸化物の質量に換算してSiO2の質量/(TiO2、SnO2、Fe2O3、SiO2およびMOx/2(xはMの価数である。)の合計の質量)=0.08~0.22である。
(f)平均粒子径が4~25nmである。
【0012】
[4]
前記[3]の鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子が、Siを含みAl、ZrおよびSbからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を含む酸化物および/または複合酸化物からなる層で被覆されてなるコアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子。
【0013】
[5]
前記[4]のコアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子とマトリックス成分とを含む塗料組成物。
【0014】
[6]
前記[5]の塗料組成物を硬化させてなる塗膜。
【0015】
[7]
基材と、該基材の表面に設けられた前記[6]の塗膜とを有する塗膜付基材。
【発明の効果】
【0016】
本発明の酸化チタン微粒子の製造方法によれば、従来の酸化チタン微粒子と比べ、高屈折率を維持したまま光触媒活性が抑制され、透明性に優れた酸化チタン微粒子、該微粒子を核粒子とするコアシェル型微粒子およびこれらの分散液、前記微粒子を含む塗料組成物、ならびにこれらの製造方法等を提供することができる。
【0017】
さらに、前記塗料組成物から高屈折率であり光触媒活性が抑制されたハードコート層、ないしは紫外線遮蔽コート層を備えた塗膜付基材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施例1で得られた酸化チタン微粒子1AのSEM画像である。
【
図2】
図2は、比較例11で得られた酸化チタン微粒子21AのSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0020】
[鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子分散液の製造方法]
本発明に係る鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子分散液の製造方法は、以下の工程(1)~(5)を含んでいる。
【0021】
工程(1)
工程(1)は、金属鉱酸塩の水溶液であって、前記金属としてTiおよびFeを、酸化物の質量に換算してFe2O3の質量/(TiO2およびFe2O3の合計の質量)(以下「Fe2O3/(TiO2+Fe2O3)」とも記載する。)=0.001~0.010の割合で含有する水溶液を中和して鉄含有含水チタン酸を得る工程である。
【0022】
前記水溶液は、たとえば、チタンの鉱酸塩と鉄の鉱酸塩と水とを混合する方法、チタンの鉱酸塩と鉄の鉱酸塩とを混合する方法(ただし、前記鉱酸塩の一方または両方は水溶液の形態である。)によって調製してもよい。
チタンの鉱酸塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、硫酸チタン、硝酸チタン、四塩化チタン、硫酸チタニル、塩化チタニル等が挙げられる。
鉄の鉱酸塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硝酸第二鉄等が挙げられる。
【0023】
Fe2O3/(TiO2+Fe2O3)は0.001~0.010(すなわち0.1~1.0質量%)であり、より好ましくは0.003~0.0085(すなわち0.3~0.85質量%)である。この割合(Fe2O3/(TiO2+Fe2O3))が0.001未満の場合は、鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子の光触媒活性を十分に抑えることができず、この割合(Fe2O3/(TiO2+Fe2O3))が0.01より大きい場合は、鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子が黄色味を帯び、鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子を含む膜も黄色味を帯びてしまう。
【0024】
酸化チタン微粒子に鉄を含有させることでその光触媒活性が抑制される理由は定かではないが、酸化チタンの電子のエネルギーバンドに鉄の不純物準位が形成され、そこが励起電子とホールとの再結合サイトとして機能することにより光触媒活性が抑制されるものと考えられる。
【0025】
金属鉱酸塩の水溶液を中和する方法としては、金属鉱酸塩の水溶液と塩基性物質とを接触させる方法が挙げられる。前記塩基性物質の例としてはアンモニアが挙げられる。前記塩基性物質は、水溶液の形態(たとえば、アンモニア水)で使用してもよい。
【0026】
金属鉱酸塩の水溶液を中和すると鉄含有含水チタン酸のスラリーが得られる。鉄含有含水チタン酸のスラリーから鉄含有含水チタン酸を分離する方法の例としては、鉄含有含水チタン酸のスラリーを濾過する方法が挙げられる。なお、鉄含有含水チタン酸とは、前記金属鉱酸塩の水溶液を中和して得られる含水固形分であり、含水チタン酸を主成分とし、少量の鉄を含む成分である。
鉄含有含水チタン酸は、好ましくは純水等により洗浄される。
【0027】
工程(2)
工程(2)は、工程(1)で得られた鉄含有含水チタン酸に過酸化水素水を加えて、平均粒子径が15~50nmである鉄含有過酸化チタン酸の水溶液を得る工程である。
【0028】
工程(2)では、鉄含有含水チタン酸に過酸化水素水を加えた後、好ましくは70~90℃の温度で撹拌が行われる。撹拌時間は、好ましくは0.5~5時間である。このような条件で撹拌を行うと、鉄含有含水チタン酸が解膠されて鉄含有過酸化チタン酸水溶液中の鉄含有過酸化チタン酸の平均粒子径を15~50nmの範囲に制御することができる。なお、この液には鉄含有過酸化チタン酸の粒子が分散しているが、水分散液ではなく水溶液という文言を用いることとする。また鉄含有過酸化チタン酸とは、過酸化チタン酸を主成分とし、少量の鉄を含む成分であり、過酸化チタン酸を構成するチタンの一部が鉄に置換されているものと推測される。
【0029】
さらに、70~90℃への加熱は、鉄含有含水チタン酸に過酸化水素水を加えた後、直ちに、すなわち2時間以内に、好ましくは1時間以内に開始することが望ましい。このように直ちに70~90℃への加熱を行うと、鉄含有過酸化チタン酸の粒子径を小さくすることができる。
【0030】
解膠された鉄含有過酸化チタン酸の、後述する実施例で採用した方法またはこれと同等の方法で測定される平均粒子径は、15~50nmであり、好ましくは30~45nmである。解膠した鉄含有過酸化チタン酸の平均粒子径を前記範囲に制御することで最終的に得られる鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子として、平均粒子径が4~25nmのものを製造することができ、透明性の高い該微粒子分散液が安定的に得られる。
【0031】
鉄含有過酸化チタン酸の平均粒子径が15nm未満であると、鉄含有過酸化チタン酸の水溶液中での分散安定性が低いために、最終的に得られる鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子に粗大粒子が混在し、そのため分散液の透明性が低下することがある。平均粒子径が50nmより大きいと、鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子の粒子径が大きくなり、そのため分散液の透明性が低下することがある。
【0032】
また、過酸化水素水は、過酸化水素と鉄含有含水チタン酸中のチタン(酸化物換算)との割合がH2O2の質量/TiO2の質量=2~8となる範囲で加えることが好ましい。過酸化水素水の量がこの範囲にあると、鉄含有過酸化チタン酸粒子径が過度に小さくならずに、分散安定性に優れた鉄含有過酸化チタン酸水溶液が得られる。
【0033】
上記鉄含有過酸化チタン酸水溶液は、チタン濃度がTiO2換算の濃度で好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下となるように調製される。チタン濃度(TiO2換算の濃度)がこの範囲にあると、鉄含有過酸化チタン酸粒子が凝集し難く、その結果、鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子の平均粒子径を小さくすることができる。
【0034】
工程(3)
工程(3)は、工程(2)で得られた鉄含有過酸化チタン酸の水溶液にスズ化合物を、Snと前記水溶液中のTiとの割合が、酸化物の質量に換算してTiO2の質量/SnO2の質量(以下「TiO2/SnO2」とも記載する。)=6~16の範囲になるように加える工程である。
スズ化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、スズ酸カリウム、硝酸スズ、塩化スズが挙げられる。
【0035】
TiO2/SnO2が6未満の場合は、鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子の耐候性が低くなり、TiO2/SnO2が16より大きい場合は、鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子にアナターゼ型結晶が発生してしまう。
【0036】
工程(3)で得られる水溶液に夾雑イオンが存在すると、次の工程(4)で所望の粒子が得られない場合があるので、工程(3)において、夾雑イオンを除去しておくことが好ましい。夾雑イオンの除去方法としては、特に限定するものではないが、イオン交換樹脂や限外膜等を用いる方法等がある。
【0037】
工程(4)
工程(4)は、工程(3)で得られた溶液に、SiとAl、Zr、Sb、Zn、Ni、Ba、MgおよびVからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素(M)とを酸化物の質量に換算してSiO2の質量/MOx/2(xはMの価数である。)の質量(以下「SiO2/MOx/2」とも記載する。)=99.9/0.1~80/20の範囲で含むシリカ系微粒子のゾルを、工程(3)で得られた溶液中の金属元素の量と前記ゾル中のケイ素および金属元素の量とが、酸化物の質量に換算してSiO2の質量/(TiO2、SnO2、Fe2O3、SiO2およびMOx/2の合計の質量)(以下「SiO2/(TiO2+SnO2+Fe2O3+SiO2+MOx/2)」とも記載する。)=0.08~0.22(すなわち8~22質量%)の関係を満たすように加える工程である。
【0038】
前記シリカ系微粒子のゾルは、公知の方法、たとえば特開昭63-123807号公報または特開2009-197078号公報に記載の方法により製造することができる。
【0039】
前記シリカ系微粒子のゾルの添加を行うことで、理由は定かではないが、最終的に得られる鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子分散液を、沈降または沈殿などをせず分散安定性に優れたものとし、微粒子の凝集や粗大粒子の発生を防ぎ、分散液中の微粒子の粒子径および粒度分布の制御をすることができる。
【0040】
一方、シリカ系微粒子のゾルの添加を行わなければ、最終的に得られる鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子分散液において、微粒子の粒子径の制御ができず、また分散安定性にも劣る。また前記シリカ系微粒子のゾルに替えて金属元素Mを含まないシリカ微粒子のゾルを添加した場合は、最終的に得られる鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子分散液において、粗大粒子や凝集粒子が発生する場合がある。
【0041】
SiO2/MOx/2は、99.9/0.1~80/20であり、好ましくは99.9/0.1~82/18である。シリカ系微粒子におけるSiO2/MOx/2が99.9/0.1より大きい場合は、鉄含有過酸化チタン酸粒子の水溶液での分散安定性が劣る傾向にあり、SiO2/MOx/2が80.0/20.0未満の場合は、水熱処理する際にシリカ系微粒子の鉄含有過酸化チタン酸粒子の水溶液への溶解性が低下する傾向にある。
【0042】
前記xは金属元素Mの価数であり、本発明においてはAl、Zr、Sb、Zn、Ni、Ba、MgおよびVの価数は、それぞれIII、IV、III、II、II、II、IIおよびVであるものと仮定する。
【0043】
シリカ系微粒子のゾルは、SiO2/(TiO2+SnO2+Fe2O3+SiO2+MOx/2)=0.08~0.22(すなわち8~22質量%)、好ましくは12~20の範囲となるように添加される。SiO2/(TiO2+SnO2+Fe2O3+SiO2+MOx/2)が8質量%未満の場合は鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子の光触媒活性を十分に抑制できない傾向にあり、SiO2/(TiO2+SnO2+Fe2O3+SiO2+MOx/2)が22質量%を超える場合は水熱処理する際にシリカ系微粒子の溶解が困難となりシリカ系微粒子のゾルを加える効果が十分に得られない傾向にある。
【0044】
シリカ系微粒子の比表面積は、好ましくは100~600m2/gであり、より好ましくは200~550m2/gであり、さらに好ましくは300~550m2/gである。シリカ系微粒子の比表面積がこの範囲にあると、上述したシリカ系微粒子のゾルを添加する効果を十分に得ることができる。
【0045】
工程(5)
工程(5)は、工程(4)で得られた溶液を水熱処理して鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子分散液を得る工程である。
【0046】
水熱処理の際の条件としては、従来の酸化チタン微粒子分散液を水熱処理により製造する際の条件を適宜適用することができ、温度は好ましくは100~300℃であり、時間は好ましくは5~40時間である。この条件で水熱処理を行うと、分散性に優れた鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子分散液を得ることができる。工程(5)では、前記分散液は水分散液の形態で得られる。
【0047】
(鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子分散液)
本発明の製造方法により得られる鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子分散液は、用途に応じて、減圧蒸留、限外ろ過など公知の方法で適宜濃縮して用いてもよい。
【0048】
前記鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子分散液は、水分散液、水および有機溶媒の分散液または有機溶媒分散液のいずれであってもよい。分散媒に有機溶媒を含む分散液は、たとえば水分散液に含まれる水の一部または全部を、ロータリーエバポレーター、限外濾過膜またはその他の公知の方法で有機溶媒に置換することで製造できる。
前記有機溶媒の例は後述する。
【0049】
[鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子]
本発明に係る鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子は、下記要件(a)~(f)を充足する鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子である。
(a)TiをTiO2の質量に換算して70質量%以上含み、Feを含み、さらにAl、Zr、Sb、Zn、Ni、Ba、Mg及びVからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素(M)、SnおよびSiを含む。
(b)FeとTiとの割合が、酸化物の質量に換算してFe2O3の質量/(TiO2およびFe2O3の合計の質量)=0.001~0.010である。
(c)TiとSnとの割合が、酸化物の質量に換算してTiO2の質量/SnO2の質量=6~18(上限値は16であってもよい。)である。
(d)SiとMとの割合が、酸化物の質量に換算してSiO2の質量/MOx/2(xはMの価数である。)の質量=99.9/0.1~80/20である。
(e)Siと金属元素との割合が、酸化物の質量に換算してSiO2の質量/(TiO2、SnO2、Fe2O3、SiO2およびMOx/2(xはMの価数である。)の合計の質量)=0.08~0.22である。
(f)後述する実施例で採用した方法またはこれと同等の方法で測定される平均粒子径が4~25nm、好ましくは12~25nmである。
【0050】
「鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子」とは、XRD測定等によりルチル型酸化チタンの結晶構造を有することが確認されつつ、チタン以外の金属元素(鉄、スズ、前記金属元素M)およびケイ素を含有する微粒子である。ルチル型酸化チタンのチタンサイトの一部は、チタン以外の金属元素およびケイ素の全部または一部によって置換されていると考えられる。
【0051】
前記鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子は、従来の酸化チタン微粒子と比べ、高屈折率を維持したまま光触媒活性が抑制されている。
【0052】
また、前記鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子は、高い形状均一性を有する。微粒子の形状の均一性が高いことは、走査型電子顕微鏡(SEM)で微粒子を観察することによって確認できる。このため、前記鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子は、透明性にも優れている。
【0053】
Fe2O3/(TiO2+Fe2O3)は0.001~0.010(すなわち0.1~1.0質量%)であり、好ましくは0.003~0.0085(すなわち0.3~0.85質量%)である。Fe2O3/(TiO2+Fe2O3)が0.001未満の場合は、鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子の光触媒活性が十分に抑えることができず、Fe2O3/(TiO2+Fe2O3)が0.01より大きい場合は、鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子が黄色味を帯び、鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子を含む膜も黄色味を帯びてしまう。
【0054】
[コアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子]
本発明に係るコアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子は、本発明に係る鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子が、Siを含みAl、ZrおよびSbからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を含む酸化物および/または複合酸化物からなる層(以下「被覆層」ともいう。)で被覆されてなるコアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子である。
【0055】
前記被覆層により、核粒子である鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子の光活性をより低下させることができる。被覆層は、たとえば、特開2009-155496号公報に記載の方法により形成することができる。
【0056】
具体的には、本発明に係る鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子の水分散液に、80℃~95℃の温度で、Siを含み、Al、ZrおよびSbからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む水酸化物、過酸化物、アルコキシドおよび/または無機塩の水溶液を徐々に添加して、添加終了後に0.5~2時間熟成を行った後、得られた分散液をさらに水熱処理することにより、前記被覆層で被覆されたコアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子の水分散液が得られる。
【0057】
また、前記コアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子の被覆層の量は、核粒子である鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子100質量部に対して好ましくは0.5~50質量部である。この量は、鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子および被覆層の原料の仕込み量で調節することができる。
【0058】
コアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子分散液は、水分散液、水および有機溶媒の分散液または有機溶媒分散液のいずれであってもよい。分散媒に有機溶媒を含む分散液は、たとえば分散液に含まれる水の一部または全部を、ロータリーエバポレーター、限外濾過膜またはその他の公知の方法で有機溶媒に置換することができる。
【0059】
上記鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子分散液およびコアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子分散液に用いることのできる有機溶媒としては、たとえば、
メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、オクタノール等のアルコール類;
酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン等のエステル類;
ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;
シクロヘキサン等の環状炭化水素;
ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。これらの有機溶媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
(コアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子の表面処理)
前記コアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子を有機溶媒に、または樹脂が分散した溶液に分散させる場合には、分散液中でのコアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子の凝集を防ぐため、表面処理剤を用いて前記コアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子の表面に疎水化処理を施してもよい。
【0061】
この疎水化処理を施す工程は、表面処理剤を分散液に添加して、必要に応じてさらに加熱または水熱処理を行う工程であり、上述した水分散液の水を溶媒に置換する操作(以下[溶媒置換操作]ともいう。)の前に行ってもよく、溶媒置換操作と同時または溶媒置換操作後に行ってもよい。また、この際、必要に応じてアンモニア等の触媒を使用してもよい。
【0062】
前記表面処理剤としては、テトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムなどのアルコキシド化合物、シランカップリング剤またはチタンカップリング剤などのカップリング剤、ノニオン系またはカチオン系またはアニオン系などの低分子または高分子界面活性剤、脂肪酸の金属塩またはナフテン酸の金属塩などの金属石鹸塩などの公知のものを使用することができる。
【0063】
このようにして得られたコアシェル型の鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子水および/または有機溶媒分散液を塗膜形成用塗布液に用いる方法、または樹脂組成物に配合する方法としては適時従来公知の方法を用いることができる。
【0064】
[塗料組成物]
本発明に係る塗料組成物は、本発明に係るコアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子とマトリックス成分とを含む塗料組成物である。この塗料組成物は、さらに硬化触媒または添加剤を含んでいてもよい。
前記塗料組成物は、熱硬化性塗料組成物であってもよく、光硬化性塗料組成物であってもよい。
【0065】
熱硬化性塗料組成物は、コアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子と、マトリックス成分と、必要に応じて熱硬化用硬化触媒または添加剤とを含んでおり、これらの成分を混合することによって、たとえば、特開2000-204301号公報の記載に基づいて製造することができる。
【0066】
また、光硬化性塗料組成物は、コアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子と、マトリックス成分と、必要に応じて光硬化用硬化触媒または添加剤とを含んでおり、これらの成分を混合することによって、たとえば、特開2009-56387号公報の記載に基づいて製造することができる。
【0067】
前記マトリックス成分としては、たとえば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
前記熱硬化用硬化触媒としては、たとえば、n-ブチルアミン、トリエチルアミン、グアニジン、ビグアニジドなどのアミン類、グリシンなどのアミノ酸類、アルミニウムアセチルアセトナート、クロムアセチルアセトナート、チタニルアセチルアセトネート、コバルトアセチルアセトネートなどの金属アセチルアセトナート、酢酸ナトリウム、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズなどの有機酸の金属塩類、過塩素酸、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸マグネシウムなどの過塩素酸類あるいはその塩、塩酸、リン酸、硝酸、パラトルエンスルホン酸などの酸、またはSnCl2、AlCl3、FeCl3、TiCl4、ZnCl2、SbCl3などのルイス酸である金属塩化物が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
前記光硬化用硬化触媒としては、たとえば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、2-ヒドロキシ-メチル-2-メチル-フェニル-プロパン-1-ケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンおよび2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンが挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
前記添加剤としては、たとえば、界面活性剤、レべリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、希釈溶媒、防腐剤、防汚剤、抗菌剤、消泡剤、紫外線劣化防止剤および染料が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
[塗膜付基材]
本発明に係る塗膜付基材は、基材と、該基材の表面に設けられた本発明に係る塗料組成物から形成された塗膜とを有する塗膜付基材である。
【0072】
前記基材としては、ガラス、プラスチックなどからなる各種基材が挙げられ、具体例としては光学レンズ等として使用されるプラスチック基材が挙げられる。
【0073】
前記塗膜の膜厚は、塗膜付基材の用途によって異なるが、好ましくは0.03~30μmである。
【0074】
本発明に係る塗膜付基材は、前記熱硬化性塗料組成物を用いた場合は、たとえば、特開2000-204301号公報の記載に基づいて製造することができ、前記光硬化性塗料組成物を用いた場合は、たとえば、特開2009-56387号公報の記載に基づいて製造することができ、熱硬化性塗料組成物または光硬化性塗料組成物を、ディッピング法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法、バーコーター法等の公知の方法で基材に塗布し、乾燥させ、加熱処理または紫外線照射等によって硬化させることにより製造できる。
【0075】
本発明に係る塗膜付基材を製造するに際し、基材、たとえばプラスチック基材と塗膜との密着性を向上させる目的で、基材表面を予めアルカリ、酸または界面活性剤で処理したり、無機または有機微粒子で研磨処理したり、プライマー処理またはプラズマ処理を行ってもよい。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0077】
[測定方法および測定方法]
実施例等における測定方法および評価方法を以下に説明する。
【0078】
[1]平均粒子径((鉄含有)過酸化チタン酸、無機酸化物微粒子)
各粒子を固形分濃度が3重量%となるように分散媒で希釈し、動的光散乱法による微粒子粒度測定装置(大塚電子社製、ELS-Z)を用いて、粒子径分布を測定した。溶液の屈折率および粘度には、それぞれの分散媒の屈折率および粘度を使用した。平均粒子径はキュムラント解析により求めた。
【0079】
[2]比表面積(シリカ微粒子またはシリカ系微粒子)
シリカ微粒子またはシリカ系微粒子のゾル50mlをHNO3でpH3.5に調整し、1-プロパノール40mlを加え、110℃で16時間乾燥させた。得られた残渣を乳鉢で粉砕した後、マッフル炉にて500℃、1時間焼成し、試料を得た。
【0080】
得られた試料について、比表面積測定装置(ユアサアイオニクス製、型番マルチソーブ12)を用いて窒素吸着法(BET法)により窒素吸着量を測定し、吸着量からBET1点法による比表面積を算出した。具体的には、試料0.5gを測定セルに取り、窒素30vol%/ヘリウム70vol%の混合ガス気流中で、300℃で20分間脱ガス処理を行った後、試料を上記混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させた。次に、上記混合ガスを流しながら試料温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により、シリカ微粒子またはシリカ系微粒子の比表面積(m2/g)を算出した。
【0081】
[3]固形分濃度
試料に含まれる溶媒を赤外線照射等により除去した後、残渣を1000℃で1時間焼成して強熱残分(固形分)を得た。試料の重量に対する強熱残分の重量の割合を固形分濃度とした。
【0082】
[4]イエローインデックス
固形分重量で0.05gに相当する量の無機酸化物微粒子の水分散液またはメタノール分散液に、水/メタノール=1/1(重量比)、固形分濃度が0.5重量%となるように適宜溶媒を加えた。次いで、得られた分散液とグリセリンとを重量比(分散液重量/グリセリン重量)が1/3となるように混合し、これを奥行き1mm、幅1cm、高さ5cmの石英セルに入れ、色差・濁度測定器(日本電色工業(株)製、COH-400)でYI値を測定した。
【0083】
[5]粒子組成
(チタニウム、スズおよびケイ素)
無機酸化物微粒子の水分散液をジルコニアボールに採取し、赤外線照射により水分を除去した後、得られた乾燥物を、Na2O2とNaOHを加えて加熱し、溶融させた。得られた溶融物に、さらに、塩酸を加え、希釈のために純水を加えた。
ICP装置(島津製作所(株)製、ICPS-8100)を用いて、得られた溶液中のチタニウム、スズおよびケイ素の量を酸化物換算基準(TiO2、SnO2、SiO2)で測定した。
【0084】
(ジルコニウム、アルミニウム)
無機酸化物微粒子の水分散液を白金皿に採取し、フッ化水素酸と硫酸を加えて加熱し、塩酸を加えて、酸化物粒子を溶解させた。さらに、これを純水で希釈した後、ICP装置((株)島津製作所製、ICPS-8100)を用いてジルコニウムおよびアルミニウムの量を酸化物換算基準(ZrO2、Al2O3)で測定した。
【0085】
(カリウム、ナトリウム)
無機酸化物微粒子の水分散液を白金皿に採取し、フッ化水素酸と硫酸を加えて加熱し、塩酸を加えて、酸化物粒子を溶解させた。さらに、これを純水で希釈した後、原子吸光装置((株)日立製作所製、Z-5300)を用いてカリウムおよびナトリウムの量を酸化物換算基準(K2O、Na2O)で測定した。
これらの測定結果に基づいて無機酸化物微粒子中の各成分の含有量を算出した。
【0086】
[6]粒子の結晶形態
無機酸化物微粒子(核粒子)の水分散液を、磁製ルツボ(B-2型)に約30ml採取し、110℃で12時間乾燥させた後、残渣をデシケーターに入れて室温まで冷却した。次に、残渣を乳鉢にて15分間粉砕した後、X線回折装置(理学電機(株)製、RINT1400)を用いて結晶形態を測定した。
【0087】
[7]粒子の形状
無機酸化物微粒子の形状を、走査型電子顕微鏡(SEM)((株)日立ハイテクノロジーズ製 S-5500)を用いて、30kVの加速電圧で観察した。観察用の試料は、以下のように作製した。
無機酸化物微粒子の水分散ゾルを水で固形分濃度0.05%に希釈した後、コロジオン膜付金属グリッド(応研商事(株))に塗布し250Wランプにて30分間照射して溶媒を飛散し観察用の試料を作成した。
【0088】
[8]無機酸化物微粒子の光触媒活性抑制効果の評価(退色変化率の測定)
固形分重量で0.05gに相当する量の無機酸化物微粒子の水分散液またはメタノール分散液に、水/メタノール=1/1(重量比)、固形分濃度0.5重量%となるように適宜溶媒を加えた。次いで、得られた分散液と固形分濃度0.02重量%のサンセットイエロー染料のグリセリン溶液とを重量比(分散液重量/グリセリン溶液重量)が1/3となるように混合して試料を調製し、これを奥行き1mm、幅1cm、高さ5cmの石英セルに入れた。次に、I線(波長365nm)の波長域が選択された紫外線ランプ(AS ONE製SLUV-6)を用いて、前記石英セルの幅1cm×高さ5cmの面に対して距離5.5cmの距離から強度0.4mW/cm2(波長365nm換算)で3時間、紫外線を照射した。
【0089】
前記試料の波長490nmにおける紫外線照射前の吸光度(A0)および紫外線照射後の吸光度(A3)を紫外可視光分光光度計(JASCO製、V-550)で測定し、以下の式から染料の退色変化率を算出した。
退色変化率(%)=(A3-A0)/A0×100
【0090】
[9]熱硬化塗膜の耐候性評価
熱硬化塗膜付基材の塗膜の表面にナイフで縦横それぞれ1mmの間隔で11本の平行な傷を付けて100個の升目を作った。次いで、熱硬化塗膜付基材に対してキセノンウェザーメーター(スガ試験機(株)製、SX-75、UV照射強度60W/m2、試験条件はJIS-K7350-2)を用いて、曝露加速試験を行った後に、升目にセロファンテープを接着し、次いでセロファンテープを剥離し、升目の剥離の有無を確認した。升目の剥離が無い場合には、再び曝露加速試験を行ってから升目にセロファンテープを接着し、次いでセロファンテープを剥離する操作を繰り返し、一つ以上の升目が剥離するまでのUV照射時間の合計を求めた。
【0091】
[10]光硬化塗膜の耐候性評価
光硬化塗膜付フィルムの塗膜の表面にナイフで縦横それぞれ1mmの間隔で11本の平行な傷を付けて100個の升目を作った。次いで、光硬化塗膜付きフィルムに対してキセノンウェザーメーター(スガ試験機(株)製、SX-75、UV照射強度60W/m2)を用いて、曝露加速試験を行った後に、升目にセロファンテープを接着し、次いでセロファンテープを剥離したときに残存している升目を数えた。
【0092】
また、別途準備した光硬化塗膜付フィルムの塗膜に生じるクラックの程度を目視観察にて評価した。
表4中の記号の意味は以下のとおりである。
【0093】
密着性
○:残存している升目が100個
△:残存している升目が99~30個
×:残存している升目が29~0個
塗膜外観
○:クラックが見られない
△:クラックの面積が塗膜全面積に対して30%未満
×:クラックの面積が塗膜全面積に対して30%以上
【0094】
[11]全光線透過率およびヘーズ評価
固形分濃度10%の水分散ゾルを光路長33mmのセルに入れ、色差・濁度測定器(日本電色工業(株)製、COH-400)で全光線透過率およびヘーズを測定した。
【0095】
〔酸化チタン微粒子分散液の製造〕
[実施例1]
四塩化チタンをTiO2換算基準で7.75重量%含む四塩化チタン水溶液(大阪チタニウムテクノロジーズ(株)製)93.665kgと、塩化第二鉄(林純薬(株)製)をFe2O3換算基準で10重量%含む塩化第二鉄水溶液0.218kgとを混合した後、この混合物とアンモニアを15重量%含むアンモニア水(宇部興産(株)製)36.295kgとを混合し、pH9.5の微黄褐色スラリー液を調製した。次いで、このスラリーを濾過した後、濾物を純水で洗浄して、固形分濃度が10重量%の鉄を含む鉄含有含水チタン酸ケーキ72.7kgを得た。
【0096】
次に、このケーキに、過酸化水素を35重量%含む過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製)83.0kgおよび純水411.4kgを加えた後、80℃の温度で1時間撹拌し、さらに純水159kgを加えて、鉄含有過酸化チタン酸を、ここに含まれるチタンおよび鉄の量をそれぞれTiO2およびFe2O3の量に換算した基準で1重量%含む鉄含有過酸化チタン酸水溶液を726kg得た。この鉄含有過酸化チタン酸水溶液は、透明な黄褐色でpHは8.5、水溶液中の粒子の粒子径(表1-1において「過酸化チタン酸粒子径」と記載する。)は35nmであった。
【0097】
次いで、前記鉄含有過酸化チタン酸水溶液72.9kgに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)3.5kgを混合して、これに、スズ酸カリウム(昭和化工(株)製)をSnO2換算基準で1重量%含むスズ酸カリウム水溶液9.11kgを撹拌下で徐々に添加した。
【0098】
次に、得られた水溶液に、カリウムイオンなどを取り込んだ陽イオン交換樹脂を分離した後、比表面積が375m2/gでありアルミニウムをAl2O3換算で0.4重量%含有するシリカ微粒子(すなわち、シリカ系微粒子)のゾル(以下「シリカ系ゾル1」ともいう。pH2.2、固形分濃度16重量%、日揮触媒化成(株)製)1.125kgおよび純水18.0kgを混合して、オートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製、120L)中で165℃の温度で18時間、加熱した。
【0099】
次に、得られたゾルを室温まで冷却した後、限外濾過膜装置(旭化成(株)製、ACV-3010)で濃縮して、固形分濃度が10重量%の水分散ゾル10.0kgを得た。
【0100】
このようにして得られた水分散ゾルに含まれる微粒子は、ルチル型結晶構造を有し、スズおよびケイ素を含む鉄含有酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子1A」という)であった。無機酸化物微粒子1A中の金属(ケイ素も含む。以下同様。)成分の含有量は、酸化物換算基準で、TiO2が74.4重量%、SnO2が9.4重量%、SiO2が14.3重量%、K2Oが1.7重量%、Fe2O3が0.2重量%、Al2O3が0.05重量%であった。
【0101】
[実施例2]
四塩化チタン水溶液の量を93.342kg、塩化第二鉄水溶液の量を0.36kgに変更した以外は実施例1と同じ操作を行い、ルチル型結晶構造を有し、スズおよびケイ素を含む鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子2A」という)を含む水分散ゾルを得た。
【0102】
[実施例3]
四塩化チタン水溶液の量を93.006kg、塩化第二鉄水溶液の量を0.62kgに変更した以外は実施例1と同じ操作を行い、ルチル型結晶構造を有し、スズおよびケイ素を含む鉄含有酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子3A」という)を含む水分散ゾルを得た。
【0103】
[比較例1]
四塩化チタン水溶液の量を93.80kgとし、塩化第二鉄水溶液を加えなかった以外は実施例1と同じ操作を行い、ルチル型結晶構造を有し、スズおよびケイ素を含む酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子4A」という)を含む水分散ゾルを得た。
【0104】
[比較例2]
四塩化チタン水溶液の量を91.46kg、塩化第二鉄水溶液の量を1.82kgに変更した以外は実施例1と同じ操作を行い、ルチル型結晶構造を有し、スズおよびケイ素を含む鉄含有酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子5A」という)を含む水分散ゾルを得た。
【0105】
[比較例3]
四塩化チタン水溶液の量を89.116kg、塩化第二鉄水溶液の量を3.64kgとした以外は実施例1と同じ操作を行い、ルチル型結晶構造を有し、スズおよびケイ素を含む鉄含有酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子6A」という)を含む水分散ゾルを得た。
【0106】
[比較例4]
四塩化チタンをTiO2換算基準で2.0重量%含む四塩化チタン水溶液(大阪チタニウムテクノロジーズ(株)製)100kgと、アンモニアを15重量%含むアンモニア水(宇部興産(株)製)とを混合して、pH8.5の白色スラリー液を調製した。次いで、このスラリーを濾過した後、純水で洗浄して、固形分濃度が10重量%の含水チタン酸ケーキ20kgを得た。
【0107】
次に、このケーキ20kgに、過酸化水素を35重量%含む過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製)22.84kgと純水57.16kgとを加えた後、80℃の温度で1時間撹拌して、過酸化チタン酸をTiO2換算基準で2重量%含む過酸化チタン酸水溶液100kgを得た。この過酸化チタン酸水溶液は、透明な黄褐色でpHは8.1であった。
【0108】
次いで、前記過酸化チタン酸水溶液22.5kgに、比表面積が375m2/gでありアルミニウムをAl2O3換算で0.4%含有するシリカ微粒子(すなわち、シリカ系微粒子)のゾル(濃度16重量%、日揮触媒化成(株)製))465.47gおよび純水29.45kgを混合して、オートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製、120L)中にて165℃の温度で18時間、加熱した。
【0109】
次に、得られたゾルを室温まで冷却した後、限外濾過膜装置(旭化成(株)製、ACV-3010)を用いて濃縮して、固形分濃度が10重量%の水分散ゾル5.245kgを得た。
このようにして得られた水分散ゾル中に含まれる微粒子は、アナターゼ型結晶構造を有し、ケイ素を含む酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子7A」という)であった。
【0110】
[比較例5]
四塩化チタン水溶液の量を99.15kgとし、これにFe2O3基準換算で10%濃度の塩化第二鉄水溶液を170g加えた以外は比較例4と同様の操作を行い、アナターゼ型結晶構造を有し、ケイ素を含む鉄含有酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子8A」という)を含む水分散ゾルを得た。
【0111】
[実施例4]
シリカ系ゾル1(日揮触媒化成(株)製)の量を875g、シリカ系ゾル1と混合する純水の量を14.0kgに変更した以外は実施例3と同様の操作を行い、ルチル型結晶構造を有し、スズおよびケイ素を含む鉄含有酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子9A」という)を含む水分散ゾルを得た。
【0112】
[実施例5]
鉄含有過酸化チタン水溶液の量を75.18kg、陽イオン交換樹脂の量を3.7kg、スズ酸カリウム水溶液の量を6.83kgに変更した以外は実施例4と同様の操作を行い、ルチル型結晶構造を有し、スズおよびケイ素を含む鉄含有酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子10A」という)を含む水分散ゾルを得た。
【0113】
[実施例6]
鉄含有過酸化チタン水溶液の量を77.19kg、陽イオン交換樹脂の量を3.7kg、スズ酸カリウム水溶液の量を4.82kgに変更した以外は実施例3と同様の操作を行い、ルチル型結晶構造を有し、スズおよびケイ素を含む鉄含有酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子11A」という)を含む水分散ゾルを得た。
【0114】
[比較例6]
鉄含有過酸化チタン水溶液の量を65.61kg、陽イオン交換樹脂の量を3.15kg、スズ酸カリウム水溶液の量を16.4kgに変更した以外は実施例3と同様の操作を行い、ルチル型結晶構造を有し、スズおよびケイ素を含む鉄含有酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子12A」という)を含む水分散ゾルを得た。
【0115】
[比較例7]
鉄含有過酸化チタン水溶液の量を78.73kg、陽イオン交換樹脂の量を3.15kg、スズ酸カリウム水溶液の量を3.78kgに変更した以外は実施例3と同様の操作を行い、スズおよびケイ素を含む鉄含有酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子13A」という)を含む水分散ゾルを得た。無機酸化物微粒子13Aの結晶型はルチルとアナターゼとの混晶であった。
【0116】
[比較例8]
シリカ系ゾル1の量を327g、シリカ系ゾル1と混合する純水の量を4.9kgに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、ルチル型結晶構造を有し、スズおよびケイ素を含む鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子14A」という)を含む水分散ゾルを得た。
【0117】
[比較例9]
シリカ系ゾル1の量を1.709kg、シリカ系ゾル1と混合する純水の量を27.34kgに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、ルチル型結晶構造を有し、スズおよびケイ素を含む鉄含有酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子15A」という)を含む水分散ゾルを得た。
【0118】
[実施例7]
シリカ系ゾル1を、比表面積が218m2/gでありアルミニウムをAl2O3換算で0.4重量%含有するシリカ微粒子(すなわち、シリカ系微粒子)のゾル(pH2.3、濃度16重量%、日揮触媒化成(株)製)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、ルチル型結晶構造を有し、スズおよびケイ素を含む鉄含有酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子16A」という)を含む水分散ゾルを得た。
【0119】
[実施例8]
シリカ系ゾル1を、比表面積が530m2/gでありアルミニウムをAl2O3換算で0.4重量%含有するシリカ微粒子(すなわち、シリカ系微粒子)のゾル(pH2.5、濃度16重量%、日揮触媒化成(株)製)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、ルチル型結晶構造を有し、スズおよびケイ素を含む鉄含有酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子17A」という)を含む水分散ゾルを得た。
【0120】
[実施例9]
シリカ系ゾル1を、比表面積が530m2/gでありアルミニウムをAl2O3換算で15重量%含有するシリカ微粒子(すなわち、シリカ系微粒子)のゾル(pH4.0、濃度16%、日揮触媒化成(株)製)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、ルチル型結晶構造を有し、スズおよびケイ素を含む鉄含有酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子18A」という)を含む水分散ゾルを得た。
【0121】
[実施例10]
シリカ系ゾル1を、比表面積が263m2/gでありジルコニウムをZrO2換算で0.6重量%含有するシリカ微粒子(すなわち、シリカ系微粒子)のゾル(以下「シリカ系ゾル2」ともいう。)(pH3.2、)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、ルチル型結晶構造を有し、スズおよびケイ素を含む鉄含有酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子19A」という)を含む水分散ゾルを得た。
【0122】
[比較例10]
実施例1の鉄含有過酸化チタン酸水溶液を得る段階において、鉄含有含水チタン酸ケーキ72.7kgに、過酸化水素を35%含む過酸化水素水166.0kgおよび純水328.4kgを加えた後、80℃で1時間撹拌し、さらに純水159kg加えて鉄含有過酸化チタン酸をTiO2+Fe2O3換算基準で1重量%含む鉄含有過酸化チタン酸水溶液を726kg得た。この鉄含有過酸化チタン酸水溶液は、透明な若干黄褐色の外観でpHは8.5、水溶液中の粒子の粒子径は12nmであった。
【0123】
鉄含有含水チタン酸ケーキを用いて鉄含有過酸化チタン酸水溶液を得る段階をこのように変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、固形分濃度が10重量%の水分散ゾル10.0kgを得た。
この水分散ゾルに含まれる微粒子は、ルチル型結晶構造を有し、スズおよびケイ素を含む鉄含有酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子20A」という)であった。
【0124】
[比較例11]
実施例1の鉄含有過酸化チタン酸水溶液を得る段階において、鉄含有含水チタン酸ケーキ72.7kgに、過酸化水素を35%含む過酸化水素水83.0kgおよび純水411.4kgを加えた後、室温で2.5時間撹拌してゆっくりと鉄含有含水チタン酸を解膠し、その後80℃で1時間撹拌し、さらに純水159kg加えて、鉄含有過酸化チタン酸をTiO2+Fe2O3換算基準で1重量%含む鉄含有過酸化チタン酸水溶液を726kg得た。この鉄含有過酸化チタン酸水溶液は、若干白みがかった黄褐色でpHは8.5、水溶液中の粒子の粒子径は90nmであった。
【0125】
鉄含有含水チタン酸ケーキを用いて鉄含有過酸化チタン酸水溶液を得る段階をこのように変更した以外は実施例1と同様な操作を行い、固形分濃度が10重量%の水分散ゾル10.0kgを得た。
この水分散ゾルに含まれる微粒子は、ルチル型結晶構造を有し、スズおよびケイ素を含む鉄含有酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子21A」という)であった。
【0126】
[比較例12]
実施例1の鉄含有過酸化チタン酸水溶液を得る段階において、鉄含有含水チタン酸ケーキ72.7kgに、過酸化水素を35%含む過酸化水素水83.0kgおよび純水411.4kgを加えた後、室温で10時間撹拌し、その後80℃で1時間撹拌し、さらに純水159kg加えて、鉄含有過酸化チタン酸をTiO2+Fe2O3換算基準で1重量%含む鉄含有過酸化チタン酸水溶液を726kg得た。この鉄含有過酸化チタン酸水溶液は、白みがかった黄褐色でpHは8.7、水溶液中の粒子の粒子径は110nmであった。
【0127】
鉄含有含水チタン酸ケーキを用いて鉄含有過酸化チタン酸水溶液を得る段階をこのように変更した以外は実施例1と同様な手順で固形分濃度が10重量%の水分散ゾル10.0kgを得た。
この水分散ゾルに含まれる微粒子は、ルチル型結晶構造を有し、スズおよびケイ素を含む鉄含有酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子22A」という)であった。
【0128】
[比較例13]
シリカ系ゾル1を、比表面積が530m2/gでありアルミニウムを含まないシリカ微粒子のゾル(pH9.2、濃度16重量%、日揮触媒化成(株)製)に変更した以外は同じ手順で、スズおよびケイ素を含む鉄含有酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子23A」という)を含む水分散ゾルを得た。無機酸化物粒子23Aの結晶型はルチルとアナターゼとの混晶であった。
【0129】
[比較例14]
シリカ系ゾル1を、比表面積が218m2/gでありアルミニウムを含まないシリカ微粒子のゾル(pH9.5、濃度16重量%、日揮触媒化成(株)製)に変更した以外は実施例1と同じ操作を行い、スズおよびケイ素を含む鉄含有酸化チタン微粒子(以下、「無機酸化物微粒子24A」という)を含む水分散ゾルを得た。無機酸化物粒子24Aの結晶型はルチルとアナターゼとの混晶であった。
【0130】
[比較例15]
シリカ系ゾル2を、比表面積が530m2/gでありアルミニウムをAl2O3換算で25重量%含むシリカ微粒子(すなわち、シリカ系微粒子)のゾル(pH4.3、濃度16%、日揮触媒化成(株)製)に変更した以外は実施例10と同じ操作を行い、スズおよびケイ素を含む鉄含有酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子25A」という)を含む水分散ゾルを得た。無機酸化物微粒子25Aの結晶型はルチルとアナターゼとの混晶であった。
以上の実施例1~10および比較例1~15の原料、無機酸化物微粒子および分散液の特性および評価結果を表1-1~1-3に示す。
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
〔コアシェル型酸化チタン微粒子分散液の製造〕
[実施例11]
(1)コアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子の水分散ゾルの調製工程
オキシ塩化ジルコニウム(太陽鉱工(株)製)をZrO2換算基準で2重量%含むオキシ塩化ジルコニウム水溶液26.3kgに、アンモニアを15重量%含むアンモニア水を撹拌下で徐々に添加して、pH8.5のスラリー液を得た。次いで、このスラリーを濾過した後、純水で洗浄して、ジルコニウム成分をZrO2に換算基準で10重量%含むケーキ5.26kgを得た。
【0135】
次に、このケーキ200gに純水1.80kgを加え、さらに水酸化カリウム(関東化学(株)製)を10重量%含む水酸化カリウム水溶液120gを加えて系内をアルカリ性にした後、過酸化水素を35重量%含む過酸化水素水400gを加えて、50℃の温度に加熱してこのケーキを溶解した。さらに、純水1.48kgを加えて、過酸化ジルコン酸をZrO2換算基準で0.5重量%含む過酸化ジルコン酸水溶液4.0kgを得た。この過酸化ジルコン酸水溶液のpHは12.2であった。
【0136】
一方、市販の水ガラス(AGCエスアイテック(株)製)を、純水で希釈した後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)を用いて脱アルカリして、ケイ素成分をSiO2換算基準で2重量%含む珪酸水溶液を得た。この珪酸水溶液のpHは2.3であった。
【0137】
次に、実施例1で得られた無機酸化物微粒子1Aを含む水分散ゾル3.0kgに純水12.0kgを加えて撹拌することにより、固形分濃度が2重量%の水分散ゾルを得た。次いで、この水分散ゾルを90℃の温度に加熱した後、これに前記過酸化ジルコン酸水溶液3050gおよび前記珪酸水溶液2812.5gを徐々に添加し、さらに添加終了後、得られた混合液を90℃の温度に保ちながら攪拌下で1時間熟成した。
次いで、熟成した混合液をオートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製、50L)に入れて、165℃の温度で18時間、加熱処理を行った。
【0138】
次に、得られた混合液を室温まで冷却した後、限外濾過膜装置(旭化成(株)製、SIP-1013)を用いて濃縮して、固形分濃度が20重量%の水分散ゾル1Bを得た。
水分散ゾル1Bに含まれる微粒子は、ルチル型の結晶構造を有し、スズ及びケイ素を含む鉄含有酸化チタン微粒子(核粒子)の表面を、ジルコニウムおよびケイ素を含む複合酸化物で被覆してなるコアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子1B」という)であった。水分散ゾル1Bの外観は、透明で僅かに黄褐色を帯びた色であった。
【0139】
(2)コアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製工程
前記工程(1)で得られた水分散ゾル1Bを、表面処理剤としてのテトラエトキシシラン(多摩化学工業(株)製)を溶解させたメタノール溶液に撹拌下で添加した。
次に、得られた混合液を50℃の温度に6時間加熱した後、室温まで冷却してから、限外濾過膜装置を用いて混合液中の分散媒を水からメタノール(中国精油(株)製)に置換した。
【0140】
さらに、得られたメタノール分散液を限外濾過膜装置(旭化成(株)製、SIP-1013)で濃縮して、固形分濃度が20重量%の無機酸化物微粒子1Bを含むメタノール分散ゾル1Bmを調製した。
メタノール分散ゾル1Bmの外観は、透明な僅かに黄褐色を帯びた色であった。
【0141】
[実施例12]
(1)コアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子の水分散ゾルの調製工程
実施例1で得られた水分散ゾルを実施例3で得られた無機酸化物微粒子3Aを含む水分散ゾルに変更した以外は実施例11と同じ操作を行い、ルチル型の結晶構造を有し、スズおよびケイ素含む鉄含有酸化チタン微粒子(核粒子)の表面を、ジルコニウムおよびケイ素を含む複合酸化物で被覆してなるコアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子3B」という)を含む水分散ゾル3Bを得た。水分散ゾル3Bの外観は、透明で黄褐色を帯びた色であった。
【0142】
(2)コアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製工程
水分散ゾル1Bを水分散ゾル3Bに変更した以外は実施例11の工程(2)と同様の操作を行い、固形分濃度が20重量%の無機酸化物微粒子3Bを含むメタノール分散ゾル3Bmを調製した。
メタノール分散ゾル3Bmの外観は、透明な僅かに黄褐色を帯びた色であった。
【0143】
[実施例13]
(1)コアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子の水分散ゾルの調製工程
実施例5で得られた無機酸化物微粒子10Aを含む水分散ゾル190kgに、NaOH(旭硝子(株)製)を0.3%濃度になるように純水で溶解したNaOH水溶液108.2kgを加えpHを約10.5に調整した後、純水を283kg加えて90℃まで加熱した。この加熱された水分散ゾルに、実施例11と同様に調製した2重量%珪酸水溶液240kgと、アルミン酸ソーダ(朝日化学工業(株)製)をAl2O3換算基準で0.67%になるように純水で希釈したアルミン酸ソーダ水溶液202kgとを同時に3時間かけて添加した。その後90℃で1時間熟成した後、冷却してから、得られた混合液を限外濾過装置(旭化成(株)製、SIP-1013)を用いて濃縮し、固形分濃度が10重量%の水分散ゾル10Bを得た。
【0144】
水分散ゾル10Bに含まれる微粒子は、ルチル型結晶構造を有しスズおよびケイ素を含む鉄含有酸化チタン微粒子(核粒子)の表面を、ケイ素及びアルミニウムを含む複合酸化物で被覆してなるコアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子10B」という)であった。水分散ゾル10Bの外観は僅かに黄褐色を帯びた色であった。
【0145】
(2)コアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子を含むメタノール分散ゾルの調製工程
水分散ゾル10Bに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)をpHが5になるまで加えた後、メタノールを水分散ゾルと同量加え、限外濾過装置を用いて分散媒を水からメタノールに置換し、濃縮して固形分濃度が20重量%の無機酸化物微粒子10Bを含むメタノール分散ゾル10Bmを調製した。
【0146】
[比較例16]
実施例1で得られた水分散ゾルを比較例1で得られた無機酸化物微粒子4Aを含む水分散ゾルに変更した以外は実施例11の工程(1)と同じ操作を行い、ルチル型の結晶構造を有し、スズおよびケイ素を含む酸化チタン微粒子(核粒子)の表面を、ジルコニウムおよびケイ素を含む複合酸化物で被覆してなるコアシェル型ルチル型酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子4B」という)を含む水分散ゾル4Bを得た。水分散ゾル4Bの外観は、透明で僅かに乳白色を示した。
【0147】
さらに、水分散ゾル1Bを水分散ゾル4Bに変更した以外は実施例11の工程(2)と同様の操作を行い、固形分濃度が20重量%の無機酸化物微粒子4Bを含むメタノール分散ゾル4Bmを調製した。
メタノール分散ゾル4Bmの外観は、透明な僅かに青味を帯びた色であった。
【0148】
[比較例17]
実施例1で得られた水分散ゾルを比較例5で得られた無機酸化物微粒子8Aを含む水分散ゾルに変更した以外は実施例11の工程(1)と同じ操作を行い、アナターゼ型結晶構造を有し、ケイ素を含む鉄含有酸化チタン微粒子(核粒子)の表面を、ジルコニウムおよびケイ素を含む複合酸化物で被覆してなるコアシェル型鉄含有アナターゼ型酸化チタン微粒子(以下「無機酸化物微粒子8B」という)を含む水分散ゾル8Bを得た。水分散ゾル8Bの外観は、透明で僅かに乳白色を示した。
【0149】
さらに、水分散ゾル1Bを水分散ゾル8Bに変更した以外は実施例11の工程(2)と同様の操作を行い、固形分濃度が20重量%の無機酸化物微粒子8Bを含むメタノール分散ゾル8Bmを調製した。
メタノール分散ゾル8Bmの外観は、薄い黄褐色であった。
【0150】
以上の実施例11~13および比較例16~17の無機酸化物微粒子および分散液の特性および評価結果を表2に示す。
【0151】
【0152】
〔熱硬化性塗料組成物および熱硬化塗膜付基材の調製〕
[実施例14]
(1)熱硬化性塗料組成物の調製
γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)166.3gにメタノール(中国精油(株)製)24.9gを加えて、撹拌しながら0.01N塩酸49.0gを滴下した。更に室温で一昼夜撹拌して前記γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解を行った。
次いで、この混合液に、メタノール分散ゾル1Bmを662.6g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(ダウケミカル日本製)を50.8g、イタコン酸(キシダ化学製)を28.5g、ジシアンジアミド(キシダ化学製)を10.3g、およびレベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L-7001)を6.7g加えて、室温で一昼夜撹拌した。これにより、熱硬化性塗料組成物(以下「ハードコート塗料1BmH」という)を調製した。
【0153】
(2)プラスチックレンズ基材の前処理
市販の屈折率1.67のプラスチックレンズ基材(三井化学(株)製の「モノマー名:MR-7」)を必要な枚数準備し、40℃に保った10重量%濃度のKOH水溶液に2分間浸漬してエッチング処理を行った。更にこれを取り出して水洗した後、十分に乾燥させた。
【0154】
(3)熱硬化塗膜付基材の調製
前記プラスチックレンズ基材の表面に、上記で得られたハードコート塗料1BmHを塗布し塗膜を形成した。塗料組成物の塗布は、ディッピング法(引上げ速度190mm/分)を用いて行った。前記塗膜を、90℃で10分、次いで110℃で2時間、加熱処理して硬化させ、熱硬化塗膜付基材1BmHFを得た。
【0155】
[実施例15]
メタノール分散ゾル1Bmをメタノール分散ゾル3Bmに変更した以外は実施例14と同様の操作を行い、熱硬化性塗料組成物(以下「ハードコート塗料3BmH」という)を調製し、熱硬化塗膜付基材3BmHFを得た。
【0156】
[実施例16]
メタノール分散ゾル1Bmをメタノール分散ゾル10Bmに変更した以外は実施例14と同様の操作を行い、熱硬化性塗料組成物(以下「ハードコート塗料10BmH」という)を調製し、熱硬化塗膜付基材10BmHFを得た。
【0157】
[比較例18]
メタノール分散ゾル1Bmをメタノール分散ゾル4Bmに変更した以外は実施例14と同様の操作を行い、熱硬化性塗料組成物(以下「ハードコート塗料4BmH」という)を調製し、熱硬化塗膜付基材4BmHFを得た。
【0158】
[比較例19]
メタノール分散ゾル1Bmをメタノール分散ゾル8Bmに変更した以外は実施例14と同様の操作を行い、熱硬化性塗料組成物(以下「ハードコート塗料8BmH」という)を調製し、熱硬化塗膜付基材8BmHFを得た。
【0159】
以上の実施例14~16および比較例18~19で得られた塗膜付基材の評価結果を表3に示す。
【0160】
【0161】
〔光硬化性塗料組成物および光硬化塗膜付フィルムの調製〕
[実施例17]
(1)コアシェル型鉄含有ルチル型酸化チタン微粒子のPGME分散ゾルの調製
固形分濃度が20重量%の400gのメタノール分散ゾル1Bmに、アンモニア濃度が200ppmとなるように15%濃度のアンモニア水溶液を添加し、次いで、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越製:KBM-503)8gを添加して、50℃で18時間撹拌した。次いで、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下「PGME」と記載する。三京化成(株)製)を320g加えてロータリーエボパレータにて減圧加温下で363gとなるまで溶媒除去した後にPGMEをさらに添加し、固形分濃度が20重量%のPGME分散ゾル1Bpを得た。PGME分散ゾル1Bpの粘度は2.7mPa・sであった。
【0162】
(2)光硬化性塗料組成物の調製
PGME分散ゾル1Bp7.47gに対して、PGME(三京化成)を0.57g,アセトン(キシダ化学)を1.25g、DPHA(日本化薬製:カヤラットDPHA)を0.60g、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(巴工業製:SR-238F)を0.07gおよび光硬化用硬化触媒(BASF製:イルガキュア184)を0.04g撹拌しながら添加、混合し、光硬化性塗料組成物1BpUを得た。
【0163】
(3)光硬化塗膜付フィルムの調製
易接着層付き188μmPETフィルム(東洋紡製:A4300)に光硬化性塗料組成物1BpUをバーコーター(#34)を用いて塗布した後、80℃-5分の熱処理で溶媒を除去し、密閉容器に入れて窒素充填を行った。これに紫外線をヘレウスUV-Hバルブで600mJ/cm2照射し、光硬化塗膜付フィルム1BpUFを得た。
【0164】
[比較例20]
メタノール分散ゾル1Bmをメタノール分散ゾル4Bmに変更した以外は実施例17と同様の操作を行い固形分濃度が20重量%のPGME分散ゾル4Bp(粘度2.5mPa・s)、光硬化性塗料組成物4BpU、および光硬化塗膜付フィルム4BpUFを得た。
【0165】
[比較例21]
メタノール分散ゾル1Bmをメタノール分散ゾル8Bmに変更した以外は実施例17と同様の操作を行い固形分濃度が20重量%のPGME分散ゾル8Bp(粘度2.8mPa・s)、光硬化性塗料組成物8BpU、および光硬化塗膜付フィルム8BpUFを得た。
以上の実施例17および比較例20~21の光硬化塗膜付フィルムの評価結果を表4に示す。
【0166】