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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】フロントエアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/231 20110101AFI20220419BHJP
   B60R 21/205 20110101ALI20220419BHJP
【FI】
B60R21/231
B60R21/205
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019533401
(86)(22)【出願日】2017-12-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2017081516
(87)【国際公開番号】W WO2018114323
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】202016107171.2
(32)【優先日】2016-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513137363
【氏名又は名称】ダルフィー・メタル・エスパーニャ・ソシエダッド・アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】バーニョス・ルイス,リボーリオ
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス・ラヤ,アブラハム
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102015004973(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0275201(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014001506(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102006056919(DE,A1)
【文献】特開2006-205830(JP,A)
【文献】特開2016-037132(JP,A)
【文献】特開2009-292182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 - 21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前壁(12)および周壁(14)によって形成された外側シースを備えたフロントエアバッグであって、前記フロントエアバッグ(10)を車両にしっかりと固定する固定部分(20)が前記周壁(14)に設けられ、
前記前壁(12)は、乗車者に対する衝撃面を構成し、周縁(16)で前記周壁(14)の周縁(18)の第1の部分(18a)に周辺で接続されており、前記前壁周縁(16)の長さは、前記周壁周縁(18)の前記第1の部分(18a)の長さに等しく、
前記周壁周縁(18)の少なくとも第2および第3の部分(18b、18c)は、互いに接続され、
取り付け配向に関連した前記前壁(12)は、前記前壁(12)の下端および上端によって画定される長手方向(L)を有し、
前記前壁(12)は、前記長手方向(L)に対して一方の側に側方膨らみ(24)を有するとともに鏡面対称性ではない、
膨張した取り付け状態に関連した前記前壁(12)は、前記固定部分によって形成された詰込みオリフィスおよび前記固定部分に直に面する前壁部分を有し、前記前壁部分の上方だけで、前記前壁(12)は、非対称である若しくは膨らみ(24)を含み、または前記前壁(12)は非対称であり且つ膨らみ(24)を含むことを特徴とする、
フロントエアバッグ。
【請求項2】
請求項1に記載のフロントエアバッグにおいて、前記周壁(14)の前記周縁(18)の前記第1の部分(18a)は、前記前壁(12)の前記側方膨らみ(24)に対して鏡面対称性である側方膨らみ(26)を備えることを特徴とする、フロントエアバッグ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフロントエアバッグであって、モジュール側で固定する前記固定部分によって形成される固定平面(EF)を備え、前記フロントエアバッグ(10)の膨張した取り付け状態において前記固定部分(20)によって形成された前記詰込みオリフィスの中心を横切っているとともに水平線で前記固定平面(EF)に交差する平面(E)が設けられ、前記平面(E)は、前記詰込みオリフィスに直に面する前記前壁部分を横切り、前記前壁(12)の前記側方膨らみ(24)は、前記長手方向(L)に沿っておよび前記平面(E)に対してずれて配置されることを特徴とする、フロントエアバッグ。
【請求項4】
請求項に記載のフロントエアバッグであって、前記前壁(12)は、前記平面(E)の領域よりも、前記膨らみ(24)において、より広いことを特徴とする、フロントエアバッグ。
【請求項5】
請求項3または4に記載のフロントエアバッグであって、仮想線(S)は、前記固定部分(20)から前記周壁(14)および前記前壁(12)を介して前記固定部分(20)へ戻る前記最短距離を構成し、前記線(S)は、少なくとも一部で前記平面(E)内にあり、または前記平面(E)と交差することを特徴とする、フロントエアバッグ。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか一項に記載のフロントエアバッグであって、前記平面(E)は、前記固定部分によって形成された前記固定平面(EF)垂直に横切ることを特徴とする、フロントエアバッグ。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか一項に記載のフロントエアバッグであって、前記フロントエアバッグの取り付け展開状態に関連した前記前壁(12)が、仮想垂直中心線(M)を有し、前記平面(E)の領域内で、前記前壁(12)は前記中心線(M)に対して鏡面対称性であり、前記側方膨らみ(24)の領域内で、前記前壁(12)は前記中心線(M)に対して鏡面対称性でないことを特徴とする、フロントエアバッグ。
【請求項8】
請求項に記載のフロントエアバッグであって、前記中心線(M)に沿って、前記前壁(12)の法線ベクトル(V)は、前記固定平面(E)に直交する平面内に位置することを特徴とする、フロントエアバッグ。
【請求項9】
請求項3から8のいずれか一項に記載のフロントエアバッグであって、前記フロントエアバッグの取り付け展開状態に関連した前記前壁(12)は、前記平面(E)の下方で、中心線(M)に対して鏡面対称性であり、前記平面(E)よりも上方で、少なくとも前記膨らみ(24)の領域内で鏡面対称性ではないように形成されていることを特徴とする、フロントエアバッグ。
【請求項10】
請求項3から9のいずれか一項に記載のフロントエアバッグであって、前記平面(E)が2つの交点(P)で前記固定部分の外側で前記前壁周縁(16)と交差し、前記各交点(P)から前記固定部分(20)までの前記周壁(14)のそれぞれの側部(14a、14b)に沿った距離の長さが、ほぼ等しいことを特徴とする、フロントエアバッグ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のフロントエアバッグであって、前記周壁(14)の前記周縁(18)は、前記第1、第2、第3の部分(18a、18b、18c)および前記固定部分(20)によって形成され、前記固定部分(20)は、前記第2および第3の部分(18b、18c)の間に位置し、前記第2および第3の部分(18b、18c)は長さが等しいことを特徴とする、フロントエアバッグ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のフロントエアバッグであって、前記周壁(14)は、一片のコヒーレントカット部分によって形成されることを特徴とする、フロントエアバッグ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のフロントエアバッグであって、前記前壁(12)は、1つの一片のコヒーレントカット部分によって形成されることを特徴とする、フロントエアバッグ。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のフロントエアバッグであって、前記前壁(12)および前記周壁(14)は、互いにまだ接続されていない状態で、互いから別々に平らに広げられることが可能であることを特徴とする、フロントエアバッグ。
【請求項15】
前壁(12)および周壁(14)によって形成された外側シースを備えたフロントエアバッグであって、前記フロントエアバッグ(10)を車両にしっかりと固定する固定部分(20)が前記周壁(14)に設けられ、
前記前壁(12)は、乗車者に対する衝撃面を構成し、周縁(16)で前記周壁(14)の周縁(18)の第1の部分(18a)に周辺で接続されており、前記前壁周縁(16)の長さは、前記周壁周縁(18)の前記第1の部分(18a)の長さに等しく、
前記周壁周縁(18)の少なくとも第2および第3の部分(18b、18c)は、互いに接続され、
取り付け配向に関連した前記前壁(12)は、前記前壁(12)の下端および上端によって画定される長手方向(L)を有し、
前記前壁(12)は、前記長手方向(L)に対して一方の側に側方膨らみ(24)を有するとともに鏡面対称性ではなく、
前記周壁(14)の前記周縁(18)は、前記第1、第2、第3の部分(18a、18b、18c)および前記固定部分(20)によって形成され、前記固定部分(20)は、前記第2および第3の部分(18b、18c)の間に位置し、前記第2および第3の部分(18b、18c)は長さが等しいことを特徴とする、
フロントエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に乗員のためのフロントエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリングホイールの外側にあるフロントエアバッグは、主に乗員座席の領域内の計器パネルに取り付けられる。知られている設計では、エアバッグは、膨張状態において乗員に面する前壁を備え、この前壁は、乗車者をクッションで支えるための衝撃面を形成する。この前壁は、乗車者が頭部および身体上部をエアバッグに沈み込むませることができるように、通常、垂直方向に対して斜めに延びる。知られているフロントエアバッグでは、前壁は、その周縁に沿って漏斗状の周壁に接続され、この周壁は、前壁から離れるように向いている背面側で、膨張用の口を備え、この口を通じてエアバッグは充填され、フロントエアバッグ全体が計器パネルに固定されることを可能にするための固定部分も通常形成する。それ自体知られているそのようなエアバッグでは、もちろん、前壁は、ほぼ長方形または六角形を有し、角は丸められている。
【0003】
求められているものは、異なるタイプの正面衝突の場合、とりわけ部分的にずれた正面クラッシュでも、乗車者の頭部および身体上部についてのできるだけ幅広い保護である。例えば、約35%の重なり合いを有するとともに、衝撃角度が長手方向車両軸に対して外側に15%だけずれているそのようなクラッシュの場合、特に乗車者の頭部は、フロントエアバッグによるクッションで支えられることが意図される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、特にほとんど重なり合いがない正面衝突の場合に、乗車者の頭部および身体上部についての適切な保護をもたらす、強化されたフロントエアバッグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1に記載の特徴を備えるフロントエアバッグによって実現される。
【0006】
本発明によるフロントエアバッグは、前壁および周壁で形成された外側シースを有し、周壁で、フロントエアバッグを車両にしっかりと固定する固定部分が設けられている。前壁は、乗車者に対する衝撃面を構成し、周縁で、周壁の周縁の第1の部分に周辺で接続され特に縫われている。前壁周縁の長さおよび周壁の周縁の第1の部分の長さは等しい。周壁周縁の少なくとも第2の部分および第3の部分は、互いに接続され、周方向に周壁を閉じるようになっている。前壁は、前壁の下端および上端によって画定される(フロントエアバッグの取り付けられた膨張状態を意味する)取り付け向きに関連した長手方向を有する。通常、長手方向は、取り付けられた膨張したフロントエアバッグに正面図で垂直に延びる。前壁は、片側で、長手方向に対して鏡面対称性ではない長手方向に対して側方膨らみを有する。用語「側方」は、取り付けられた膨張したフロントエアバッグの前壁及び長手方向に対して側方に位置する前壁のリムの、前方からの眺めに言及するものである。側方リムのうちの1つは、反対の側方リムよりもさらに外側に明らかに膨らんでおり、いわば、突出する膨張した耳を形成する。この非対称形状は、部分的にずれたクラッシュイベントにおいて衝撃面を増加させ、乗車者の保護を改善する。
【0007】
好ましくは、取り付けられた膨張状態において、膨らみは、車両内部に面するフロントエアバッグの側面に位置する。
【0008】
好ましくは、周壁は、ほぼ漏斗状であり、それは対称的である必要はない。好ましくは、周壁は、前記固定部分に向かって連続的に先細りし、固定部分は、フロントエアバッグの最小直径を有する領域内に位置する。
【0009】
前壁のより安定な形状ならびにより平らな設計は、周壁の周縁の第1の部分が前壁の側方膨らみに対してミラー反転された側方膨らみを含むときに得ることができ、2つの膨らみは、それらの周辺で互いに直接固定される。したがって、フロントエアバッグ内部の引張力は、膨らみをその他の対称形状に加えることによってあまり変化しない。
【0010】
固定部分は、エアバッグの開口部を通常やはり形成するいわゆる固定平面を画定する。
【0011】
膨張中のほぼ車両方向に延びる軸まわりのエアバッグの回転を防ぐために、前壁は、膨張した取り付け状態に関連して、固定部分によって形成された詰込みオリフィスと、固定オリフィスに直に面する前壁部分とを備える。前壁は、前壁部分の上方でのみ非対称であり、および/または膨らみを含み、したがって流入ガスによって前壁に加えられる力を対称的であるようにさせる。
【0012】
好ましい実施形態では、フロントエアバッグの膨張状態において、以下に説明される平面は、固定部分によって形成された詰込みオリフィスの中心を横切って前壁へ前方に延びる。フロントエアバッグは、モジュール側で固定する固定部分によって形成された固定平面を有する。フロントエアバッグの膨張した取り付け状態において、平面は、固定部分によって形成された詰込みオリフィスの中心を横切って延び、ほぼ水平線で固定平面に交差する。この平面は、前壁部分に延び詰込みオリフィスに直に面し、前壁の側方膨らみは、長手方向に沿って配設され、平面に対してずらされる。
【0013】
前壁の側方膨らみは、平面に対してずれて延び、したがって平面の中には延びない。通常、前壁に衝突する流入ガスの主入口方向も、上記平面に沿って延びる。展開中に膨らみが上記平面内に位置するとき、荷重値に影響を及ぼし得るエアバッグの回転が生じる。しかしながら、前壁が、平面の領域内でほぼ対称的である場合、衝突するガスによって(この領域内の対称の線も表す)仮想中心線の左側および右側に導入される力は等しい。このように、流入ガスによるエアバッグの回転は生じない。
【0014】
この構成は、特に、膨張したエアバッグ内の前壁の配向(方向)を膨らみを有さないエアバッグ形状に対してほぼ変えさせず、膨張したエアバッグ内の前壁を同じ寸法を有するが膨らみを有さない対称的なエアバッグの前壁に対して傾けない。
【0015】
したがって、本発明による設計は、異なる車両形状に容易に適合することができる。また、非対称の前壁形状は、フロントエアバッグの膨張状態における前壁の全体的な(一般的な)配向をほぼ変えられることなく,容易に使用することができる。
【0016】
詰込みオリフィスの中心を横切って延びる前述した平面は、特に固定平面に直交して延びる。
【0017】
取り付けられた膨張したフロントエアバッグの前壁への前面図では、したがって膨らみが、頭部のためにより大きい保持領域を与えるように、固定部分に対して長手方向に沿って、特に上方へシフトされてずれている。
【0018】
したがって、前壁は、仮想平面の領域内よりも膨らみが広くいことが好ましく、幅の増大は、例えば、約20~100%であり得る。
【0019】
好ましくは、前壁は、取り付けられた膨張状態に関連した仮想垂直中心線を備える。有利には、前壁は、詰込みオリフィスの中心を横切って延びる平面の領域内で中心線に対して対称であり、側方膨らみの領域内で中心線に対して鏡面対称性ではない。
【0020】
好ましい実施形態では、前壁は、フロントエアバッグの取り付け展開状態に関連して、前に定めた平面の下方で中心線に対して鏡面対称性であるように形成され、上記平面の上方で少なくとも膨らみの領域内で中心線に対して鏡面対称性でない。オフセット正面クラッシュの場合に乗車者をクッションで支持する前壁の増大が、主に(取り付け状態における)フロントエアバッグの上部において必要とされることが分かっている。したがって、フロントエアバッグの下部において対称的な構成を用いて、フロントエアバッグの従来の設計を維持し、したがって、膨張中にエアバッグの安定性を確実にし、単に上側領域内の一方の側で車両内部への膨らみを加えることが可能である。
【0021】
好ましくは、中心線に沿って、前壁の各法線ベクトルが、固定平面に直角をなす平面内に位置し、したがって、前壁は、対称的な前壁に対して傾斜せず、また、何らの膨らみもなくその他の同一に成形されたフロントエアバッグの前壁とほぼ同じ配向を有する。
【0022】
詰込み口の中心を横切って延びる平面は、2つの交点で固定部分の外側で前面周縁と交差し、好ましくは、上記各交点から固定部分までのそれぞれの周壁の側部に沿った距離の長さは、ほぼ等しい。これらの幾何学的条件も、膨らみが設けられない場合に前壁が有する配向と同じ配向を維持することを確実にする。
【0023】
好ましくは、周壁周縁は、第1、第2、および第3の部分、ならびに固定部分によって形成され、固定部分は、第2の部分と第3の部分の間に位置し、第2および第3の部分は、長さが等しい。フロントエアバッグの製造中、例えば、前壁および周壁は、互いに接続され、周壁の第1の部分ならびに周壁の第2および第3の部分は、重ね合わされ、例えば、縫製、溶接、または接着によって互いに接続され、したがって開いたままである固定部分に周方向に閉じられた詰込みオリフィスを形成させる。
【0024】
好ましくは、周壁は、全体として平らに広げられ得る単一の(一片の)コヒーレントカット部分として設計することができる。もちろん、異なる別個に製造された部分のカット部分を構成することが可能であり、カット部分の個々の部分を前壁に別々に接続することも想像可能である。しかしながら、基本的に、周壁を前述の形態に構成することが可能である。
【0025】
同様に、好ましくは、前壁は、1つの単一の(一片の)コヒーレントカット部分として形成されてもよく、前壁が現実のフロントエアバッグにおいて複数の別個に製造されたカット部分によって具体化されてもよいことは、周壁に関して当てはまる。
【0026】
好ましくは、前壁および周壁は、互いから別個であり、すなわち、まだ互いに固定されていない状態で、それらは、平らに広げられることができ、これによって個々のカット部分の製造を助ける。それぞれの周辺の幾何学的形状は、典型的な場合には、各部分で互いに固定される周辺のセグメントが、前壁および周壁の対応する部分を平らに重ね合わせることによって接続できるように選ぶことができる。前壁周縁の長さおよび周壁周縁の長さだけが正確に一致しているだけでなく、曲率もそれほど異なったものではないとき、この目的にとって有利である。特に、膨らみの領域内で、重ね合わされた部分の曲率の正確な一致が好ましい。
【0027】
以下、本発明は、一実施形態によって同封の図面を参照して詳細に例示されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】従来技術による従来の対称的なフロントエアバッグについてのカットを示す図である。
図2】周壁について2つのカット部分の異なる配置における図1からのカットを示す図である。
図3図1に類似するカット部分の構成における、本発明によるフロントエアバッグについてのカットを示す図である。
図4図2に類似するカット部分の構成における、図3からカットを示す図である。
図5】幾何学的条件に例示のために、取り付け状態および膨張状態における、本発明によるフロントエアバッグの概略断面図である。
図6】異なるエアバッグの幾何学についての本発明によるフロントエアバッグの前壁についての幾何学的形状の概略説明図である。
図7】異なるエアバッグの幾何学についての本発明によるフロントエアバッグの前壁についての幾何学的形状の概略説明図である。
図8】本発明によるフロントエアバッグの製造における可能なさらなるステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1および図2は、従来技術によるフロントエアバッグ100のカットを示す図である。
【0030】
フロントエアバッグ100外側シースは、前壁112と周壁114とで構成される。図1に選ばれた描写では、前壁112および周壁114の各カットは、単一のひとつなぎの(one-piece)カット部分として示されている。
【0031】
フロントエアバッグ100を前壁112および周壁114から製造するために、前壁112の周縁116は、周壁114の周縁118の第1の部分118aに周辺で接続される。また、周壁周縁118の第2の部分118bは、その第3の部分118cに接続される。
【0032】
第2の部分118bと第3の部分118cの間の中央で、周縁118において、固定部分120が空けられて(割かれて)おり、この固定部分120は、完成したフロントエアバッグ100において、フロントエアバッグ100全体を車両にしっかりと固定する役割を有するとともに、同時に充填ガスを取り込むための詰込みオリフィスを形成する。
【0033】
通常の場合におけるフロントエアバッグ100は、車両の計器パネル19に固定されたモジュールハウジング上で車両にしっかりと固定され、それによって(図5に示すように)フロントエアバッグ100は、乗員を保護する役割を果たすことができる。
【0034】
図2は、前壁112および周壁114の平らに広げられたカットの異なる図を示す。周壁114が、膨張したフロントエアバッグ10において2つの対向した側部114a、114bを形成する2つの鏡像対称部分に、セパレート線122に沿って分割される。セパレート線122は、固定部分120を横切って延び、その結果これは2つの部分に等しく分割される。
【0035】
周壁114の側部114a、114bは、中央に配置された前壁112の右隣および左隣に位置し、周壁114の第1の周縁部分118aは、後で接続される前壁112の周縁116の領域に面する。
【0036】
膨張状態における図1および図2に示したフロントエアバッグ100は、図において前壁112をその長手方向Lに沿って2つの鏡面対称性半分に中央で分割する垂直に延びる中心線Mに対して対称である。長手方向Lは、壁112の下端および上端によって画定される方向の取り付け配向に対応し、それによって図中の前壁112の上端は、後で車両内の取り付け位置においても、膨張状態におけるフロントエアバッグ100の上点を構成する。
【0037】
仮想線Sは、固定部分120の片方の半部分から周壁114の第1の側部114a、前壁112、および周壁114の第2の側部114bを介して固定部分120の第2の半部分まで延びる(図5も参照)。図2に示す図では、線Sは、連続距離を構成する。カット部分が図1におけるように分割される場合、距離Sは、前壁112の短辺にわたって、ならびに固定部分120から周壁114の周縁118の第1の部分118aまでの最小距離にわたって分布している。図2に示す実施形態では、距離Sは、また、後に詰込みオリフィスを形成する固定部分120を横切って延びる。
【0038】
全てのカット部分のまわりに、全体的な外側輪郭Aが引かれており、これは点線でマークされている。外側輪郭Aは、ほぼ長方形または六角形の対称的な衝撃面を有する知られているおよびしばしば使用されいわゆるSQSエアバッグ(正方形バッグ)の基本寸法を予め定める。中心線に対しての対称性ならびに周壁114の両側部114a、114bの輪郭の対称性が維持される前壁112および周壁114の2つの側部114a、114bの寸法を変えることによって、そのようなエアバッグは、様々な取り付け状況に容易にかつ柔軟に適合され得、常に対称的なエアバッグが得られる。
【0039】
図3および図4は、本発明によるフロントエアバッグ10について図1および図2と同じ図を示す。図4では、前壁12は、例示的な理由のために、実線によって表されるのに対して、周壁14の2つの側部14a、14bは、破線によって描かれる。
【0040】
本発明による構成では、前壁12は、中心線Mおよび長手方向Lに対して完全に鏡面対称性ではないが、部分的にのみ鏡面対称性である。
【0041】
図3および図4中の前壁12の上側領域では、長手方向L直角をなす前壁12の残りの輪郭から突き出る片側の側方膨らみ24が形成される。この例では、これは、最新技術から知られたフロントエアバッグ100のほぼ楕円の前壁112との唯一の違いである。これと比較すると、長手方向Lに直角をなす前壁12の幅は、膨らみ24の領域内で約20%から100%だけ増加する。
【0042】
周壁14の関連する第1の側部14aでは、鏡面対称性の膨らみ26が形成される。さもなければ、やはり周壁14の第1の側部14aは、従来技術におけるものと同じ形状を有する。図4によれば、個々のカット部分は、重ね合わされて示されており、したがって、膨らみ24、26は、まだ互いに縫い合わされていないことに留意しなければならない。
【0043】
図4に示すように、膨らみ24、26は、周壁14がセパレート線22に沿って分割され、カット部分が図2に示すような構成で置かれるとき、重ね合わされる。これは、前壁12および周壁14の周辺16、18が、依然として従来技術における通りに互いに接続することができることを示し、単に、前壁12中および周壁14中のさらに2つの膨らみ24、26は、その外側輪郭に沿って互いに接続される。前壁周縁16は、周壁周縁18の第1の部分18aと同じ長さをさらに有する。周壁14の2つの他の部分18b、18cは、固定部分20を空けつつ、互いに接続される。膨張したフロントエアバッグ10における相互接続された膨らみ24、26は、前壁12から側方に突出するいわば膨張した耳という結果になり、これは、さもなければ長手方向Lに対して対称的である。
【0044】
本発明によるフロントエアバッグ10の全体的な外側輪郭Aは、従来技術により知られているものと同一である。したがって、前壁12および周壁14の外側輪郭の全体的形状は、知られているSQSエアバッグと同じ原理に従って容易に変更することができる。
【0045】
また、本発明によるフロントエアバッグ10の場合には、仮想線Sは、先に述べたように画定することができる。仮想線Sは、典型的な場合には、固定部分20から延び、周壁14の第1の側部14、前壁12、周壁14の第2の側部14bを介して固定部分20へ戻る最小距離をここでも説明する。
【0046】
膨らみ24、26のさらなる体積は、膨らみ24が平面E内に位置しない限り、膨張状態におけるフロントエアバッグ10の配向に影響を及ぼさないことが分かっている。平面Eは、詰込みオリフィス50(図5参照)の中心Zを横切って延び、好ましくは固定平面EFに直交して延び、ほぼ水平線で固定平面EFに交差する。図5によれば、水平線は、点Zを横切る突出の平面に直交して延びる。
【0047】
平面Eは、通常、フロントエアバッグの中へのガスの主入口方向にも延びる。これは、平面Eが広がる詰込みオリフィスに直に面する前壁12の一部が、展開中に主要な荷重を吸収する領域も構成することも意味する。この部分では、前壁は、中心線Mに対して対称であり、それによって力がエアバッグに均一に作用する。
【0048】
ここに示された例では、膨らみ24は、図3から図7において、仮想線Sおよび平面Eの上方に位置する。線Sは、平面Eを交差することができ、または平面Eに沿って少なくとも一部で延びることができる。
【0049】
線Sおよび平面Eの下方に位置する領域では、前壁12は、長手方向Lに対して対称であり、それによってこの場合には中心線Mが、前壁12のこの領域について対称の線も形成する。
【0050】
線Sまたは平面Eの上方に位置する前壁12の領域では、前壁は、長手方向Lおよび中心線Mに対して鏡面対称性ではなく、しかしながら、膨らみ24が片側だけに与えられているようになっている。
【0051】
図5に示されているように、固定平面EFに対する法線Nの前壁12との交点P1は、中心線M上に位置する。本発明による構成では、また、中心線Mに沿って、前壁12の法線ベクトルVは、固定平面EFに直交する平面に位置する。平面Eは、2つの交点P2で固定部分20の外側で前壁周縁16と交差し、周壁14のそれぞれの側部14a、14bに沿った各交点P2から固定部分20まで距離の長さは、ほぼ等しい。
【0052】
膨らみ24の領域では、前壁12の幅を定める中心線M(図4参照)に直交する仮想交差線Wは、中心線Mによって中央で分割されない。
【0053】
図6および図7によって示されるように、膨らみ24(および周壁14の対応する膨らみ26)は、様々なやり方で設計されてもよい。膨張状態におけるフロントエアバッグ10の配向にとって有利であることが分かっているが、膨らみ24が前壁の形状を変えないとき、(膨張状態に関連した)平面Eまたは(広げた状態のカット部に関連した)線Sの領域内の従来のエアバッグと比較すると、すなわち、平面Eおよびそれぞれの線Sの上方および/または下方で排他的に形成される。
【0054】
図6および図7は、基礎をなすSQSエアバッグの種々設計された基本形状について、前壁12における膨らみ24の設計の比較も示しており、仮想線Sは、長手方向に対して前壁12を中央で分割する必要がない(図7参照)。
【0055】
膨張状態におけるフロントエアバッグ10の形状を強化するようにフロントエアバッグ10の体積を適合することが必要かもしれない。この場合、周壁14は、図8に示すように、固定部分20から始める周壁周縁18の第3の部分18cの領域内で約5°から10度の円セグメントを加えることによって小部分Δだけ延び得る。このように、膨らみ24、26の領域内で、前壁12および周壁14からの周辺16、18aの長さLおよびLの可能性ある偏差が補償され得る。
【0056】
フロントエアバッグ10は、特にオフセットの前方衝突の場合に乗車者を保護するように、膨らみ24が車両内部に向けられるように配置される。
【0057】
この場合、個々の周縁部分16、18a、18b、18cの接続は、例えば、縫製によって実行されるが、接着または溶接によって実現することもできる。特定の場合には、前壁12および周壁14の個々の部分を互いに一体に形成することも可能である。
【0058】
特に、当然のこととして、前壁12および周壁14の各カット部分は、図3に示す形態で一部品に切断されてよく、または任意の個数の個々のカット部分で構成されてもよい。
【0059】
しかしながら、周辺に沿って固定されることなく、互いから分離されて、すなわち、その周辺16、18がまだ互いに接続されていない状態で、それらが完全に平らに広げられ得ることは、前壁12と周壁14の両方に適用可能である。したがって、それらは、各部分が3次元領域を与えるようにステッチダウンされた状態で平らな基部から突き出るそれ自体3次元の領域を有さない。そのような3次元領域も、三角部分がカット部分から切断され、形成されたリムが互いに縫い合わされる場合、形成される。本発明によるフロントエアバッグの部分は、そのような3次元構造を有することが意図されない。
【0060】
本出願において、理想化されたエアバッグ形状が説明される。ここに示された本発明による概念により構成された実際のフロントエアバッグでは、幾何学的条件は、当然のこと
として、あまり明確に開発されておらず、理想化されたエアバッグについて本明細書に与えられた指示から逸脱してもよい。フロントエアバッグ10の予め定められた3次元の最終的な形状について、本発明の原理から逸脱することなく個々のカット部分の正確な形状を変更させるために、無限のオプションがあることも明らかである。したがって、たった1つの特定の例がここに示されている。同一形状のフロントエアバッグ10になる他の全ての変形例が、しかしながら、本発明によって等しく含まれる。
<付記>
[形態1]
前壁(12)および周壁(14)によって形成された外側シースを備えたフロントエアバッグであって、前記フロントエアバッグ(10)を車両にしっかりと固定する固定部分(20)が前記周壁(14)に設けられ、
前記前壁(12)は、乗車者に対する衝撃面を構成し、周縁(16)で前記周壁(14)の周縁(18)の第1の部分(18a)に周辺で接続されており、前記前壁周縁(16)の長さは、前記周壁周縁(18)の前記第1の部分(18a)の長さに等しく、
前記周壁周縁(18)の少なくとも第2および第3の部分(18b、18c)は、互いに接続され、
取り付け配向に関連した前記前壁(12)は、前記前壁(12)の下端および上端によって画定される長手方向(L)を有し、
前記前壁(12)は、前記長手方向(L)に対して一方の側に側方膨らみ(24)を有するとともに鏡面対称性ではない、フロントエアバッグ。
[形態2]
形態1に記載のフロントエアバッグにおいて、前記周壁(14)の前記周縁(18)の前記第1の部分(18a)は、前記前壁(12)の前記側方膨らみ(24)に対して鏡面対称性である側方膨らみ(26)を備えることを特徴とする、フロントエアバッグ。
[形態3]
形態1または2に記載のフロントエアバッグにおいて、膨張した取り付け状態に関連した前記前壁(12)は、前記固定部分によって形成された詰込みオリフィスおよび前記固定部分に直に面する前壁部分を有し、前記前壁部分の上方だけで、前記前壁(12)は非対称であるおよび/または膨らみ(24)を含むことを特徴とする、フロントエアバッグ。
[形態4]
形態1から3のいずれか一項に記載のフロントエアバッグにおいて、モジュール側で固定する前記固定部分によって形成される固定平面(EF)を備え、前記フロントエアバッグ(10)の膨張した取り付け状態において前記固定部分(20)によって形成された前記詰込みオリフィスの中心を横切って延びるとともに水平線で前記固定平面(EF)に交差する平面(E)が設けられ、前記平面(E)は、前記詰込みオリフィスに直に面する前記前壁部分へ延び、前記前壁(12)の前記側方膨らみ(24)は、前記長手方向(L)に沿っておよび前記平面(E)に対してずれて配置されることを特徴とする、フロントエアバッグ。
[形態5]
形態4に記載のフロントエアバッグにおいて、前記前壁(12)は、前記平面(E)の領域よりも、前記膨らみ(24)において、より広いことを特徴とする、フロントエアバッグ。
[形態6]
形態4または5に記載のフロントエアバッグにおいて、仮想線(S)は、前記固定部分(20)から前記周壁(14)および前記前壁(12)を介して前記固定部分(20)へ戻る前記最短距離を構成し、前記線(S)は、少なくとも一部で前記平面(E)内で延び、または前記平面(E)と交差することを特徴とする、フロントエアバッグ。
[形態7]
形態4から6のいずれか一項に記載のフロントエアバッグにおいて、前記平面(E)は、前記固定部分によって形成された前記固定平面(EF)に垂直に延びることを特徴とする、フロントエアバッグ。
[形態8]
形態4から7のいずれか一項に記載のフロントエアバッグにおいて、前記フロントエアバッグの取り付け展開状態に関連した前記前壁(12)が、仮想垂直中心線(M)を有し、前記平面(E)の領域内で、前記前壁(12)は前記中心線(M)に対して鏡面対称性であり、前記側方膨らみ(24)の領域内で、前記前壁(12)は前記中心線(M)に対して鏡面対称性でないことを特徴とする、フロントエアバッグ。
[形態9]
形態8に記載のフロントエアバッグにおいて、前記中心線(M)に沿って、前記前壁(12)の法線ベクトル(V)は、前記固定平面(E)に直交する平面内に位置することを特徴とする、フロントエアバッグ。
[形態10]
形態4から9のいずれか一項に記載のフロントエアバッグにおいて、前記フロントエアバッグの取り付け展開状態に関連した前記前壁(12)は、前記平面(E)の下方で、中心線(M)に対して鏡面対称性であり、前記平面(E)よりも上方で、少なくとも前記膨らみ(24)の領域内で鏡面対称性ではないように形成されていることを特徴とする、フロントエアバッグ。
[形態11]
形態4から10のいずれか一項に記載のフロントエアバッグにおいて、前記平面(E)が2つの交点(P)で前記固定部分の外側で前記前壁周縁(16)と交差し、前記各交点(P)から前記固定部分(20)までの前記周壁(14)のそれぞれの側部(14a、14b)に沿った距離の長さが、ほぼ等しいことを特徴とする、フロントエアバッグ。
[形態12]
形態1から11のいずれか一項に記載のフロントエアバッグにおいて、前記周壁(14)の前記周縁(18)は、前記第1、第2、第3の部分(18a、18b、18c)および前記固定部分(20)によって形成され、前記固定部分(20)は、前記第2および第3の部分(18b、18c)の間に位置し、前記第2および第3の部分(18b、18c)は長さが等しいことを特徴とする、フロントエアバッグ。
[形態13]
形態1から12のいずれか一項に記載のフロントエアバッグにおいて、前記周壁(14)は、一片のコヒーレントカット部分によって形成されることを特徴とする、フロントエアバッグ。
[形態14]
形態1から13のいずれか一項に記載のフロントエアバッグにおいて、前記前壁(12)は、1つの一片のコヒーレントカット部分によって形成されることを特徴とする、フロントエアバッグ。
[形態15]
形態1から14のいずれか一項に記載のフロントエアバッグにおいて、前記前壁(12)および前記周壁(14)は、互いにまだ接続されていない状態で、互いから別々に平らに広げられることが可能であることを特徴とする、フロントエアバッグ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8