(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】溶射粉末およびコーティング中の繊維多孔性形成充填剤、ならびにその製造方法および使用
(51)【国際特許分類】
C23C 4/067 20160101AFI20220419BHJP
C23C 4/10 20160101ALI20220419BHJP
F01D 5/28 20060101ALN20220419BHJP
F01D 11/12 20060101ALN20220419BHJP
【FI】
C23C4/067
C23C4/10
F01D5/28
F01D11/12
(21)【出願番号】P 2019542505
(86)(22)【出願日】2018-02-15
(86)【国際出願番号】 US2018018373
(87)【国際公開番号】W WO2018152328
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-01-29
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515195347
【氏名又は名称】エリコン メテコ(ユーエス)インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン、スコット
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-213446(JP,A)
【文献】特開2007-327139(JP,A)
【文献】特開2005-330586(JP,A)
【文献】特開2015-183207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料組成物の少なくとも1つの
焼結層を含むTBCまたはアブレイダブル溶射コーティングであって、
前記
焼結層は、
金属およびセラミックの少なくとも1つを含み、かつ前記焼結層に多孔性を
与えるように緩く充填された繊維凝集体を更に含む前記材料組成物が焼結された層であり、
前記焼結層は、前記焼結層の増大された多孔性を与える細孔を更に含み、前記焼結層の増大された多孔性を与えるこれらの細孔は、前記繊維凝集体の繊維の少なくとも一部によって以前に占められていた位置に配されている、
TBCまたはアブレイダブル溶射コーティング。
【請求項2】
前記繊維が、以下のうちの少なくとも1つの繊維を含む、
請求項1に記載のTBCまたはアブレイダブル溶射コーティング:
100~300μmの平均長さ;
0.5~500μmの平均直径;
50μmの最小繊維長;および/または
3000μmの最大繊維長。
【請求項3】
前記繊維が
以下のものである、
請求項1に記載のTBCまたはアブレイダブル溶射コーティング:
コーティングされた繊維;
金属コーティングを有する非金属繊維;
Niコーティングを施した炭素繊維
;または
繊維の凝集体。
【請求項4】
前記繊維凝集体がバインダーで一緒に保持され
た繊維を含む、
請求項1に記載のTBCまたはアブレイダブル溶射コーティング。
【請求項5】
バインダーが、以下のうちの1つである、
請求項4に記載のTBCまたはアブレイダブル溶射コーティング:
有機バインダー;
無機バインダー;
PVA。
【請求項6】
前記金
属が、以下のうちの少なくとも1つである、
請求項1に記載のTBCまたはアブレイダブル溶射コーティング:
亜鉛;
モリブデン;
ニッケル;
鉄;および/または
コバルト。
【請求項7】
前記繊維凝集体が、繊維、金属成分、およびバインダーを含む、
請求項1に記載のTBCまたはアブレイダブル溶射コーティング。
【請求項8】
バインダーが、以下のうちの1つである、
請求項7に記載のTBCまたはアブレイダブル溶射コーティング:
有機バインダー;
無機バインダー;
PVA。
【請求項9】
前記金
属が、以下のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載のTBCまたはアブレイダブル溶射コーティング:
亜鉛;
モリブデン;
ニッケル;
鉄;および/または
コバルト。
【請求項10】
前記繊維凝集体が、繊維、腐食抑制材料、およびバインダーを含む、
請求項1に記載のTBCまたはアブレイダブル溶射コーティング。
【請求項11】
前記腐食抑制材料が、以下のうちの少なくとも1つである、
請求項10に記載のTBCまたはアブレイダブル溶射コーティング:
金属ホスファート;
金属クロマート;および/または
亜鉛ホスファート。
【請求項12】
前記繊維凝集体が、繊維、セラミック材料、およびバインダーを含む、
請求項1に記載のTBCまたはアブレイダブル溶射コーティング。
【請求項13】
前記セラミック材料組成物が、以下のうちの少なくとも1つである、
請求項1に記載のTBCまたはアブレイダブル溶射コーティング:
六方晶窒化ホウ素;
フッ化カルシウム;
酸化イットリウム;
酸化イッテルビウム;
アルバイト、および/または
イライトセラミック粘土。
【請求項14】
前記繊維凝集体が、繊維、および有機充填剤または有機バインダーのいずれかを含む、
請求項1に記載のTBCまたはアブレイダブル溶射コーティング。
【請求項15】
前記繊維が、以下のうちの少なくとも1つを含む、
請求項14に記載のTBCまたはアブレイダブル溶射コーティング:
炭素繊維;
高分子繊維;
ポリアラミド繊維;
天然繊維;
植物繊維もしくは織物繊維;
金属繊維もしくは金属合金繊維;および/または
セラミック繊維。
【請求項16】
前記繊維が、以下のうちの少なくとも1つを含む、
請求項15に記載のTBCまたはアブレイダブル溶射コーティング:
100~300μmの平均長さ;
0.5~500μmの平均直径;
50μmの最小繊維長;および/または
3000μmの最大繊維長。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2017年2月17日に出願された米国仮出願第62/460,350号の利益を主張するPCT国際出願であり、その開示は、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
1.発明の技術分野
本発明は、コーティングに多孔性(porosity)を提供するように構成された繊維充填剤の繊維(fibers/fibres)を含む、溶射(thermal spray:熱スプレー、サーマルスプレー)粉末およびそれを使用する溶射コーティングに関する。コーティングは、遮熱コーティング(TBC)またはアブレイダブルコーティング(abradable coating)、例えばタービンエンジンで使用されるようなものであってよい。多孔性は、コーティングが適用された後にコーティングを熱処理にかけることにより生じ得る。
【0003】
2.背景情報の開示
垂直クラックを有するものを含めて、遮熱コーティングは周知である。垂直クラックを有する遮熱コーティングを開示している多くの公開文献および特許がある。しかしながら、このようなコーティングは、典型的には、密な微細構造を有する。例えば、Taylorの米国特許第5,073,433号およびTaylorらの米国特許第8,197,950号は、理論密度の88%を超える5.47g/cc~5.55g/ccの密度を有するセグメント化コーティングを開示している。これらの米国特許のそれぞれの開示は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0004】
アブレイダブルコーティング、アブレイダブルTBCおよびそれに相当する構造もよく知られており、それぞれ、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる以下の文献に記載されている:STROCKらの米国特許出願公開第2009/0060747号、ERICKSONらの米国特許第4,094,673号、BEATONの米国特許第4,818,630号、MIDDLETONの米国特許第3,936,656号、MERZらの米国特許第5,326,647号、LIUらの米国特許出願公開第2012/0276352号、COFFINBERRYらの米国特許第5,849,416号、LANDISの米国特許出願公開第2006/0251515号、DOMAGOLSKIらの米国特許出願公開第2011/0316179号、ならびに、JPH01147118(A)、GB791568(A)、CN105483597、JP2011167995(A)、CN101518968、JPH0239932(A)、GB821690(A)、CN105565835(A)、CN105524503(A)、ZA201206205(B)、CA2717827(A1)、CN101195937(A)おおびJPH01230475(A)。
【0005】
アブレイダブルコーティングに使用されることが知られている機能性充填剤材料には、ポリエステルまたは液晶ポリエステル(LCP)またはポリアミド粉末、六方晶窒化ホウ素、六方晶窒化ホウ素粉末およびグラファイト粉末と組み合わせたポリエステルが含まれる。高使用温度アブレイダブル用の多孔性形成剤も知られており、これにはポリエステル(LCP)粉末が含まれ、典型的にはコーティング堆積(デポジション)後500℃/3時間でのバーンアウト(燃焼完結)を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの材料には欠点がある。アブレイダブル用の機能性充填剤材料の場合、このような材料に付随する欠点は、それらの軽量性であり、より高い密度を有する粉末とブレンドしたときにそれらが分離する傾向があり、それらを取り扱うことおよび所望のサイズ仕様までのサイズ分け(ふるい分け)を困難にする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
公知の充填剤または多孔性形成剤を、本発明に従って繊維で置き換えることが有利であろう。
【0008】
本発明に従って、繊維で1つ以上のコーティング層を形成することが有利であろう。
【0009】
かくして、本発明は、例えば、多孔性形成剤として繊維を含む粉末および/またはコーティングなど、本明細書で特許請求される粉末、コーティング、および/または方法のいずれか1つ以上に関する。このコーティングは、繊維によって形成された多孔性を有する、遮熱コーティング(TBC)および/またはアブレイダブルコーティングとすることができる。
【0010】
本発明の非限定的な態様によれば、繊維は、例えば溶射プロセス中にコーティング微細構造に組み込まれるが、これは、堆積(デポジション)後に微細構造内に緩く充填された構造を形成することができる。繊維の「非効率的な充填」は、あるレベルの多孔性を微細構造に導入し、それによって、仕立てられたまたは所定のレベルの多孔性および気体または液体の透過性、仕立てられたまたは所定のレベルの破砕性(脆弱性)および結果として生じるコーティング微細構造のバルク硬度などの特性および機能を導入し、それにより、ターボ機械のブレード先端がアブレイダブルコーティングされたシュラウド(shroud)に切り込む際に、ターボ機械のブレード先端に対して低エネルギー切断除去プロセスを補助し(摩耗性を改善し)、それによって、ブレード摩損を低減または防止する。
【0011】
本発明の非限定的な態様によれば、非繊維充填剤または多孔性形成剤を用いて多孔性を作り出す公知のコーティングに用いられるのと同じ多孔性役割を果たすことができる繊維の凝集体である繊維が用いられる。繊維を使用することの利点は、それらが様々な(変化する)サイズ、長さ、および材料であってよく、コーティングの多孔性または破砕性・脆性のレベルを調整するために組み合わせることができることである。加えて、または代替として、それらは、酸化、腐食、浸食、または焼結抵抗性の改善などの他の機能を提供することができる。繊維の凝集体は、有機または無機バインダー、例えばPVA(ポリビニルアルコール)を用いる噴霧乾燥および機械的クラッディングのようないくつかの周知の方法によって製造することができる。さらに、繊維は、繊維+金属+バインダーの凝集体など、異なる機能を調整するために他の非繊維材料と一緒に凝集させることができ、ここで金属は、例えば、腐食抑制/耐性を改善する非常に微細な亜鉛、例えば、0.10~2.00μm±0.05μmの範囲のサイズの粒子;腐食耐性および潤滑性を改善するためのモリブデン、または繊維凝集体の密度を調整するためのニッケル、鉄もしくはコバルトベースの合金の非常に微細な、例えば、0.10~2.00μm±0.05μmの範囲のサイズの粒子;腐食耐性を改善するためのおよび/もしくは繊維凝集体の密度を調整するためのニッケルの非常に微細な、例えば0.10~2.00μm±0.05μmの範囲のサイズの粒子である。
【0012】
繊維の凝集体は、腐食抑制を改善するために、繊維+化合物+バインダーの凝集体であってもよく、ここで化合物は、1種以上の金属ホスファート(リン酸塩)または金属クロマート(クロム酸塩)、例えば、亜鉛ホスファートである。
【0013】
繊維の凝集体はまた、繊維+セラミック+バインダーの凝集体であってよく、ここでセラミックは、酸化および潤滑性/破砕性(脆弱性)を改善するための微細な六方晶窒化ホウ素(hBN)および/もしくはフッ化カルシウム(CaF)、または酸化イットリウム(耐酸化性、密度)、または酸化イッテルビウム(耐酸化性、密度)、または、無機バインダーとしてHajmrleらのCA2358624(C)または対応する米国特許第7,267,889号に記載されているような種々のアルバイトまたはイライトセラミッククレーである。
【0014】
繊維の凝集体はまた、繊維+有機充填剤またはバインダーの凝集体であってよく、ここでバインダーは、溶射堆積プロセスの間、機械的に安定なままであるが、熱、例えば、200~250℃に暴露されると分解する、PVAのような、1つまたは複数の低融点または低分解温度の有機バインダーである。その結果、凝集体中の繊維は、他のいずれかの機能成分と共に、互いに脱結合によってコーティング微細構造中に放出され、それによってコーティング微細構造中にその場の(in-situ(インサイチュー)の)多孔性を生じる。
【0015】
本発明に従って使用することができる繊維または繊維状材料の非限定的な例としては、一般に粉砕された短繊維、典型的には直径10マイクロメートル(μm)および長さ150~200マイクロメートルとして供給されたもののような炭素繊維(PANもしくはポリアクリロニトリルまたはアクリロニトリル前駆体)が挙げられる。それらはさらに細かいサイズに粉砕することができる。炭素繊維は、金属、例えばニッケルの薄層で被覆(クラッド)することもできる。典型的な繊維の長さは150マイクロメートル、典型的な繊維の直径は10マイクロメートル±5マイクロメートル、最小繊維長は20マイクロメートル、最大繊維長は300マイクロメートルである。また、炭素繊維を粉砕し、最大10マイクロメートルおよび最小0.5マイクロメートルで、典型的な直径が5マイクロメートルの角状粒子(粉末)形態にまで分解することもできる。
【0016】
本明細書で用いる「繊維」とは、非金属または非セラミック材料の細長い構造を意味し、その直径または断面形状は、長さ方向に沿って概して均一であり、その長さは、その直径の2倍以上である。直径(平均直径)の非限定的な例は、典型的にはマイクロメートルで測定される。非限定的な長さは、繊維径の4倍以上から繊維径の20倍以上である。繊維は、有機材料でできていてもよく、コーティングされていてもいなくてもよく、概して中実、すなわち、非中空または非管状であってもよい。
【0017】
本明細書中で使用される場合、繊維の凝集体(単数または複数)は、典型的には、有機または無機の化学的バインダーで互いに凝集したままである50~500本の数の繊維を含む、繊維の凝集塊(clump(s):単数または複数)を意味する。各凝集塊のサイズ(平均直径)の非限定的な例は、50~200ミクロンである。凝集塊と粉末スプレー材料との間の相対的なサイズ差の非限定的な例は、10~100ミクロンであり得る。凝集塊と粉末スプレー材料との間の相対密度差の非限定的な例は、1.0~8.0g/cm3であり得る。
【0018】
本明細書で用いる「繊維/粉末の凝集体」(単数または複数)とは、典型的には、互いに凝集したままの10~500本の繊維および10~100の粉末粒子を含む繊維および粉末粒子の凝集塊(clump(s):単数または複数)を意味する。各凝集塊のサイズ(平均直径)の非限定的な例は、40~200ミクロンである。凝集塊と粉末スプレー材料との間の相対的なサイズ差の非限定的な例は、10~100ミクロンであり得る。凝集塊と粉末スプレー材料との間の相対密度差の非限定的な例は、1.0~8.0g/cm3であり得る。
【0019】
本発明に従って使用することができる繊維または繊維状材料の非限定的な例には、1979年7月17日の米国特許第4,161,470号に記載されているように、6-ヒドロキシ-2-ナフチオン酸ならびにパラ-ヒドロキシ安息香酸(およびその変形)のポリエステルなどの溶融紡糸液晶ポリエステル(LCP)によって形成された繊維状ポリマー材料が含まれる。この系統のポリエステル類は融点が高く、典型的には300~310℃であるため、溶融紡糸工程中の粘度が高く、織物工業で使用される一般的な低融点ポリエステル類よりも繊維径が大きい。典型的な繊維の長さは150~300マイクロメートルであり、典型的な繊維の直径は15マイクロメートル±5マイクロメートルであり、最小繊維長は50マイクロメートルであり、最大繊維長は400マイクロメートルである。
【0020】
本発明に従って使用することができる繊維または繊維状材料の非限定的な例には、ポリアラミド繊維、例えば、ケブラー(Kevlar)(R)も含まれる。
【0021】
本発明に従って使用することができる繊維または繊維状材料の非限定的な例には、竹および亜麻(フラックス)などの天然繊維も含まれる。その他には、麻、黄麻、ラミー、サイザル、綿、コイア、アバカ(マニラ麻)がある。典型的な繊維径が6~12μm±5μmである竹、典型的な繊維径が12~20μm±5μm、最小繊維長が100μm、最大繊維長が3000μmである亜麻を用いることができる。天然繊維は、2013年7月31日に発行された、Stanislaw GrundasおよびAndrzej Stepniewski編集のAdvances in Agrophysical Researchと題された書籍(ISBN 978-953-51-1184-9)、ならびに、M.Sfiligoj Smole, S.Hribernik, K.Stana KleinschekおよびT.KrezeによるPlant Fibers for Textile and Technical Applications(DOI:10.5772/52372)で論じられている種類のものであってもよい。これらの供給源の全開示は、本明細書中に参考として明示的に援用される。
【0022】
本発明に従って使用することができる繊維または繊維状材料の非限定的な例としては、低炭素鋼またはステンレス鋼繊維などの金属または金属合金繊維、純鉄繊維、ニッケルまたは鉄合金繊維(例えばHastelloy XまたはFeCrAlもしくはFeCrAlY組成物を含む)、銅繊維、真ちゅう繊維、例えば65/35真ちゅう繊維、クロム繊維も含まれる。典型的な繊維径は6~500μmであり、最小繊維長は6mm、最大繊維長は60mmである。
【0023】
本発明に従って使用することができる繊維または繊維状材料の非限定的な例としては、アルミン酸マグネシウムスピネル、イットリア、イッテルビウム、ランタンまたはジスプロシアで安定化されたジルコニア(およびこれらの安定化剤の組合せ)、二ケイ酸イッテルビア、フッ化カルシウム、アルミナおよびアルミナベースの組成物、二酸化チタンおよび酸化チタンベースの組成物、シリコン、ならびに、米国特許第7,462,393号明細書に記載された、典型的な繊維径が3~30μm、最小繊維長が10mm、最大繊維長が100mmのセラミック組成物などのセラミック繊維が挙げられる。
【0024】
繊維または繊維状材料と共に使用することができるマトリックス材料の非限定的な例としては、市販のアブレイダブルに現在使用されている、典型的な粒子サイズ30~150μmのアルミニウム合金(例えば、AlSi)、ならびに、市販のアブレイダブルに現在使用されている、典型的な粒子サイズ5~100μmのニッケル合金(例えば、NiCrFe、NiCrAl、NiCrAlYおよびNiCoCrAlY)およびコバルト合金(例えば、CoNiCrAlY)などの非繊維状マトリックス材料が挙げられる。マトリックス材料としてはまた、10~150μmの典型的な粒子サイズを有する市販のアブレイダブルおよびTBCに現在使用されているジルコニアベースのセラミック(例えば、ジスプロシア安定化ZrO2およびイットリア安定化ZrO2)、ならびに5~100μmの典型的な粒子サイズを有するFeCrAlおよびFeCrAlYなどの鉄ベースの合金を挙げることができる。
【0025】
繊維または繊維状材料と共に使用できるバインダーの非限定的な例としては、ポリビドンまたはポビドンとも一般に呼ばれるポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、デキストリン、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレングリコール(PEG)などの有機バインダーが挙げられる。
【0026】
繊維または繊維状材料と共に使用することができるバインダーの非限定的な例としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウムおよびベントナイトなどの無機バインダーが挙げられる。
【0027】
溶射技法および溶射プロセスの非限定的な例としては、燃焼、プラズマ溶射(plasma spray)、高速酸素燃料(HVOF)、冷ガス、ワイヤアーク、懸濁プラズマなどが挙げられる。
【0028】
本発明はまた、アブレイダブルコーティングおよびTBCコーティングにユニークな機能を導入するように仕立てることができる繊維ベースまたは繊維状形態材料の使用に関するものであってよく、これは、多孔性を与えること、ならびにアブレイダブルの場合、ターボ機械ブレードによる金属合金、金属間およびセラミックベースのアブレイダブルコーティングの切削能力をもたらすことを主な目的とする。TBCおよびアブレイダブルの両方について、繊維または繊維状材料を使用して、ユニークに調整された再現性のあるレベルの多孔性、多孔性分布および細孔(ポア)の形態を生成して、所望のレベルの熱伝導率、熱サイクル抵抗性、機械的靭性および固体粒子による浸食性衝撃損傷に対する抵抗性を作り出すことができる。
【0029】
本発明はまた、金属材料、セラミック材料、または金属材料およびセラミック材料を含む粉末組成物を含む溶射粉末に関するものであってよい。多孔性形成繊維を含めることができ、多孔性形成繊維は前記粉末組成物と混合される。
【0030】
いくつかの実施形態では、繊維は、形成されたコーティングにおいて、変化するもしくは異なる多孔性および/または変化するもしくは異なる破砕性(脆弱性)のうちの少なくとも1つを提供するように構成された繊維を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、繊維は、形成されたコーティングにおいて、所定のレベルの酸化抵抗性、所定のレベルの腐食抵抗性、所定のレベルの浸食抵抗性、および/または、所定のレベルの焼結抵抗性のうちの少なくとも1つを提供するように構成された繊維を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、繊維は、変化するもしくは異なる直径、変化するもしくは異なる長さ、および/または変化するもしくは異なる材料のうちの少なくとも1つの繊維を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、繊維は、コーティングされた繊維、金属コーティングを有する非金属繊維、Niコーティングを有する炭素繊維、および/または繊維の凝集体のうちの少なくとも1つである。
【0034】
いくつかの実施形態では、繊維は、バインダーで一緒に保持された繊維を含む繊維の凝集体を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、バインダーは、有機バインダー、無機バインダー、またはPVAのうちの1種である。
【0036】
いくつかの実施形態では、金属材料は、亜鉛、モリブデン、ニッケル、鉄、および/またはコバルトのうちの少なくとも1種である。
【0037】
いくつかの実施形態では、繊維は、繊維、金属成分、およびバインダーを含む繊維で作られた凝集体を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、バインダーは、有機バインダー、無機バインダー、またはPVAのうちの1種である。
【0039】
いくつかの実施形態では、繊維は、繊維、腐食抑制材料、およびバインダーを含む繊維の凝集体を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、腐食抑制材料は、金属ホスファート、金属クロマート、および/または亜鉛ホスファートのうちの少なくとも1種である。
【0041】
いくつかの実施形態では、繊維は、繊維、セラミック材料、およびバインダーを含む繊維の凝集体を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、セラミック材料は、六方晶窒化ホウ素、フッ化カルシウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、アルバイトセラミック粘土、および/またはイライトセラミック粘土のうちの少なくとも1種である。
【0043】
いくつかの実施形態では、繊維は、繊維、および有機充填剤または有機バインダーのいずれかを含む繊維の凝集体を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、繊維は、炭素繊維、ポリマー繊維(高分子繊維)、ポリアラミド繊維、天然繊維、植物または織物繊維のうちの少なくとも1種を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、繊維は、炭素繊維、ポリマー繊維、ポリアラミド繊維、天然繊維、植物または織物繊維、金属または金属合金繊維、および/またはセラミック繊維のうちの少なくとも1種を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、繊維は、100~300マイクロメートルの平均長さ、0.5~500マイクロメートルの平均直径、ならびに/または50マイクロメートルの最小繊維長、および3000マイクロメートルの最大繊維長のうちの少なくとも1つを含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、溶射粉末は、金属材料およびセラミック材料のうちの少なくとも1つを含む粉末組成物、ならびに前記粉末組成物と混合された繊維の凝集体を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、溶射コーティングは、上述した態様のいずれか1つの粉末によって作製される。
【0049】
いくつかの実施形態では、溶射コーティングは、TBCコーティングおよびアブレイダブルコーティングのうちの1つである。
【0050】
いくつかの実施形態では、TBCまたはアブレイダブル溶射コーティングは、金属またはセラミックを含む材料組成物の少なくとも1つの層を含み、ここで前記層は、前記層内に繊維の配列を有する。
【0051】
いくつかの実施形態では、TBCまたはアブレイダブル溶射コーティングは、金属またはセラミックを含む材料組成物の少なくとも1つの層を含み、ここで前記層は、前記層に配置される繊維凝集体を有する。
【0052】
いくつかの実施形態では、TBCまたはアブレイダブル溶射コーティングは、金属またはセラミックを含む材料組成物の少なくとも1つの層を含み、ここで前記層は、繊維が前記層から少なくとも部分的に焼き尽くされることに起因する所定のレベルの多孔性を有する。
【0053】
いくつかの実施形態では、TBCまたはアブレイダブル溶射コーティングは、金属またはセラミックを含む材料組成物の少なくとも1つの層を含み、ここで前記層は、繊維凝集体が前記層から少なくとも部分的に焼き尽くされることに起因する所定のレベルの多孔性を有する。
【0054】
いくつかの実施形態では、TBCまたはアブレイダブル溶射コーティングは、金属またはセラミック材料組成物の少なくとも1つの層を含み、ここで前記層は、前記層に永久的に配置された繊維に起因する所定のレベルの多孔性を有する。いくつかの実施形態では、その中に永久的に配置された繊維を有する領域またはゾーンは、周囲のコーティング層よりも低いまたは異なる密度の領域またはゾーンである。
【0055】
いくつかの実施形態では、TBCまたはアブレイダブル溶射コーティングは、金属またはセラミック材料組成物の少なくとも1つの層を含み、ここで前記層は、前記層に永久的に配置された繊維凝集体から生じる所定のレベルの多孔性を有する。いくつかの実施形態では、その中に永久的に配置された繊維を有する領域またはゾーンは、周囲のコーティング層よりも低いまたは異なる密度の領域またはゾーンである。
【0056】
いくつかの実施形態では、上記のタイプのいずれか1つの粉末を使用して基板をコーティングする方法は、粉末を溶射すること(thermal spraying)によって基板上にコーティングを適用することと、基板上にコーティング材料を堆積させることとを含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、上述のタイプのいずれか1つの粉末を使用して基板上にTBCコーティングまたはアブレイダブルコーティングを適用する方法は、粉末を溶射することによって基板上にコーティングを適用することと、基板上にコーティング材料を堆積させることとを含む。
【0058】
本発明の他の例示的な実施形態および利点は、本開示および添付の図面を再検討することによって確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
本発明は、以下の詳細な説明において、本発明の典型的な実施形態の非限定的な例として、示された複数の図面を参照してさらに記載され、ここで、同様の参照番号は、図面のいくつかの箇所を通じて類似の部分を表す。
【
図1】
図1は、粉末(セラミックおよび/または金属)を繊維と混合して、粉末と繊維の混合物またはブレンドを形成する方法を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1における混合物またはブレンドから作製された溶射コーティング層を示す。
【
図3】
図3は、コーティング中の繊維を焼き尽くし、多孔質微細構造を残す熱処理または焼結処理後の、
図2の適用溶射コーティング層を示す図である。
【
図4】
図4は、粉末粒子(セラミックおよび/または金属粉末粒子)を遊離繊維と混合またはブレンドして粉末/繊維凝集体を形成することで得られた、凝集体または凝集塊から形成された溶射材料を示す図であり、各凝集体は繊維および粉末粒子を含有し、互いに付着している。
【
図5】
図5は、
図4の凝集体から作製された溶射コーティング層を示す。
【
図6】
図6は、コーティング中の繊維を焼き尽くし、多孔質微細構造を残す熱処理または焼結処理後の、
図5の適用溶射コーティング層を示す図である。
【
図7】
図7は、繊維のみの凝集体を示す図であり、各凝集体は繊維を含み、繊維は有機または無機バインダーで互いに付着している。
【
図8】
図8は、繊維凝集体を含有する溶射粉末を溶射することによって作製された適用溶射コーティングを示す図である。
【
図9】
図9は、繊維および非繊維成分凝集体を示す図であり、各凝集体は、有機または無機バインダーで互いに付着した繊維を含み、金属および/またはセラミック化合物成分などの非繊維成分を含む。
【
図10】
図10は、
図9の凝集体を含有する溶射粉末を溶射することによって作製され適用溶射コーティングを示す図である。
【
図11】
図11は、ゆるく付着した繊維と混合またはブレンドして溶射粉末を形成する粉末粒子(セラミックおよび/または金属粉末粒子)を示す図である。
【
図12】
図12は、
図11の溶射粉末を溶射することによって作製された適用溶射コーティングを示す図である。
【
図13】
図13は、コーティング中の繊維を焼き尽くし、多孔質微細構造を残す熱処理または焼結処理後の、
図12の適用溶射コーティングを示す図である。
【
図14】
図14は、100μmのスケールで、熱処理前の、本発明による
図7のそれと同様の溶融・形成された暗い領域を備えた炭素繊維凝集体を有するFeCrAlYマトリックス合金の適用溶射アブレイダブルコーティングの走査電子顕微鏡(SEM)断面を示す図である。
【
図15】
図15は、
図14の走査型電子顕微鏡(SEM)の50μmスケールの断面を示す図である。
【
図16】
図16は、炭素繊維原料を200μmスケールで示す図である。
【
図17】
図17は、粉砕繊維と有機バインダーとから形成され、噴霧乾燥プロセスを用いて凝集させた100μmスケール(予備粉砕)の凝集体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
発明の詳細な説明
例A
図1~3は、本発明の一実施形態による粉末およびコーティング形成を示す。
図1は、セラミックおよび/または金属粉末粒子P(左側)を遊離繊維(ルースファイバー)と混合またはブレンドして、粉末粒子と遊離繊維のブレンド混合物(右側)を形成することができる方法を示す。次いで、このブレンド混合物は、溶射粉末として機能し得る。繊維は、100~300マイクロメートルの平均長さおよび0.5~500マイクロメートルの平均直径を有し得る。さらに、繊維は、50マイクロメートルの最小繊維長および3000マイクロメートルの最大繊維長を有することができる。繊維は、例えば、コーティングされた繊維、金属コーティングを有する非金属繊維、および/またはNiコーティングを有する炭素繊維であり得る。
【0061】
図2は、
図1に示す溶射粉末混合物を溶射することによって作製された適用溶射コーティングを模式的に示す。実際には、
図2に示された繊維は溶けて形を変えたであろう。しかし、繊維の位置は、コーティング層内の比較的均等な分布を示す。
【0062】
図3は、コーティング中の繊維を焼き尽くし、多孔質微細構造を残す熱または焼結処理後の、
図2の適用溶射コーティングを示す。このコーティングは、所定の孔径構造(細孔の均等な分布およびコーティング全体にわたる広がりの両方を利用する)を有することができ、これらの細孔は、コーティングが、例えば濾過膜として機能し得るように十分に配列される。
【0063】
例B
図4~6は、本発明の別の実施形態による粉末およびコーティング形成を示す。
図4は、セラミックおよび/または金属粉末粒子を遊離繊維と混合またはブレンドして粉末凝集体A
FPを形成することができる方法(各凝集体A
FP含有繊維および粉末粒子が互いに付着している)を示す。凝集体A
FPは、噴霧乾燥または機械的凝集によって形成することができる。次いで、これらの凝集体A
FPは溶射粉末として機能し得る。あるいは、これらの凝集体A
FPを粉末材料と混合またはブレンドすることができる。
【0064】
図5は、凝集体A
FPで形成された溶射粉末を溶射することによって作製された適用溶射コーティングを示す。実際には、
図4に示す繊維は融解し、形を変えたであろう。しかし、繊維の位置は、コーティング層内の比較的均等な分布を示す。
【0065】
図6は、コーティング中の繊維を焼き尽くし多孔質微細構造を残す熱処理または焼結処理後の、
図5の適用溶射コーティングを示す。このコーティングは、コーティングが、例えば、濾過膜として機能し得るように、規定の孔径構造を有し得る。このコーティングは、所定の孔径構造(細孔の均等な分布およびコーティング全体にわたる広がりの両方を利用する)を有することができ、これらの細孔は、コーティングが、例えば濾過膜として機能し得るように十分に配列される。
【0066】
例C
図7~8は、本発明の別の実施形態による粉末およびコーティング形成を示す。
図7は、繊維凝集体A
F(各凝集体A
F含有繊維は、例えば、有機または無機バインダーで互いに付着している)を示す。繊維凝集体A
Fは、セラミックおよび/または金属粉末粒子と混合またはブレンドして、溶射粉末(図示せず)を形成することができる。
【0067】
図8は、
図7の繊維凝集体を含有する溶射粉末を溶射することによって作製された適用溶射コーティングを示す。図示されていないが、適用された溶射コーティングは、次に、コーティング中の繊維凝集体を焼き尽くし、多孔質微細構造を残す熱処理または焼結処理にかけることができ、ここで細孔は、繊維凝集体が焼き尽くされた場所に位置する。このコーティングは、コーティングが、例えば、TBCアブレイダブルコーティングとして機能し得るように、規定された孔構造または多孔性を有し得る。
【0068】
例D
図9~10は、本発明の別の実施形態による粉末およびコーティング形成を示す。
図9は、繊維および非繊維成分凝集体A
FCを示し、各凝集体A
FCは、例えば、有機または無機バインダーで互いに付着した繊維を含み、粒子の形態の金属および/またはセラミック化合物成分Cのような非繊維成分Cを包含する。凝集体A
FCは、セラミックおよび/または金属粉末粒子と混合またはブレンドして、溶射粉末(図示せず)を形成することができる。この例において、凝集体A
FC中に配置される非繊維成分Cは、典型的には、凝集体A
FCが混合またはブレンドされる粉末材料よりも小さい粒子のものであり得る。
【0069】
図10は、それと混合またはブレンドされた凝集体A
FCを含有する溶射粉末を溶射することによって作製された適用溶射コーティングを示す。図示されていないが、適用された溶射コーティングは、次いで、熱処理または焼結処理に付すことができ、これは、コーティング中の凝集体の繊維を焼き尽くし、少なくとも部分的に融解した状態で、細孔内に、化合物成分を有する多孔質微細構造を残す。このコーティングは、コーティングが、例えば、TBCアブレイダブルコーティングとして機能し得るように、規定された細孔構造または多孔性を有し得る。
【0070】
例E
図11~13は、本発明の別の実施形態による粉末およびコーティング形成を示す。
図11は、セラミックおよび/または金属粉末粒子Pを、緩く付着した繊維Fと混合またはブレンドして、溶射粉末を形成する方法を示す。
【0071】
図12は、
図11の溶射粉末を溶射することによって作製された適用溶射コーティングを示す。
図13は、コーティング中の繊維を焼き尽くし、多孔質微細構造を残す熱処理または焼結処理後の、
図12の適用溶射コーティングを示す。このコーティングは、コーティングが、例えば濾過膜として機能し得るように、規定の孔径構造を有し得る。
【0072】
図14および
図15は、炭素繊維凝集体を有するFeCrAlYマトリックス合金のアブレイダブル溶射コーティング微細構造を示す、本明細書に記載した実施例の1つによる適用コーティング(予備焼結または予備熱処理状態)を示す。
図14は、走査電子顕微鏡(SEM)写真の断面を100μmスケールで示し、
図15は、同じコーティングを50μmスケールで示す。
【0073】
図16は、200μmスケール遊離炭素繊維原料を示す。
図17は、ミルドファイバー(粉砕繊維)と有機バインダーとから形成され、スプレードライプロセスを用いて凝集した100μmスケールの(予備粉砕された)凝集体を示す。
【0074】
繊維および繊維凝集体の非限定的な例には、上記および添付の特許請求の範囲に記載されたものが含まれる。
【0075】
繊維と混合することができる粉末材料または組成物の非限定的な例には、本明細書において論じられるもの、または従来公知のもの、ならびに組み込まれた先行技術文献において使用されるものが含まれる。
【0076】
粉末材料または組成物、およびそれで形成されるコーティングの非限定的な例には、組み込まれた先行技術文献において使用されるもの、ならびに図面に示されるものが含まれる。
【0077】
さらに、少なくとも、本発明は、特定の例示的実施形態の開示によって、それを作製および使用することを可能にする様式で、例えば、単純化または効率のために、本明細書中に開示されているので、本発明は、例えば、本明細書中に具体的に開示されていない、いかなる工程、さらなる要素、またはさらなる構造の非存在下でも実施され得る。
【0078】
上述の実施例は、単に説明を目的として提供されたものであり、決して本発明を限定するものと解釈されるものではないことに留意されたい。例示的実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本明細書で用いられている用語は、限定の用語ではなく、解説および例示の用語であることが理解される。本発明の各態様の範囲および本質から逸脱することなく、添付の(現在規定されている、および補正された)特許請求の範囲内で、変更を行うことができる。本発明は、特定の手段、材料、および実施形態を参照して本明細書に記載されているが、本発明は、本明細書に開示された詳細に限定されることを意図しておらず、むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲内にあるような、機能的に等価な構造、方法、および使用法の全てに及ぶ。
本発明に包含され得る諸態様または諸実施形態は、以下のとおり要約される。
[1].
溶射粉末であって、
金属材料、セラミック材料、または金属材料およびセラミック材料を含む粉末組成物、ならびに
多孔性形成繊維を含み、
この多孔性形成繊維が、前記粉末組成物と混合される、溶射粉末。
[2].
前記繊維が、形成されたコーティングにおいて、変化するもしくは異なる多孔性および/または変化するもしくは異なる破砕性の少なくとも1つを提供するように構成された繊維を含む、上記項目1に記載の粉末。
[3].
前記繊維が、形成されたコーティングにおいて、以下のうちの少なくとも1つを提供するように構成された繊維を含む、上記項目1に記載の粉末:
所定のレベルの耐酸化性;
所定のレベルの耐腐食性;
所定のレベルの耐浸食性;および/または
所定のレベルの耐焼結性。
[4].
前記繊維が、以下のうちの少なくとも1つの繊維を含む、上記項目1に記載の粉末:
変化するもしくは異なる直径;
変化するもしくは異なる長さ;および/または
変化するもしくは異なる材料。
[5].
前記繊維が、以下のうちの少なくとも1つである、上記項目1に記載の粉末:
コーティングされた繊維;
金属コーティングを有する非金属繊維;
Niコーティングを施した炭素繊維;および/または
繊維の凝集体。
[6].
前記繊維が、バインダーで一緒に保持された繊維を含む繊維の凝集体を含む、上記項目1に記載の粉末。
[7].
バインダーが、以下のうちの1つである、上記項目6に記載の粉末:
有機バインダー;
無機バインダー;
PVA。
[8].
前記金属が、以下のうちの少なくとも1つである、上記項目1に記載の粉末:
亜鉛;
モリブデン;
ニッケル;
鉄;および/または
コバルト。
[9].
前記繊維が、繊維、金属成分、およびバインダーを含む繊維で作られた凝集体を含む、上記項目1に記載の粉末。
[10].
バインダーが、以下のうちの1つである、上記項目9に記載の粉末:
有機バインダー;
無機バインダー;
PVA。
[11].
前記繊維が、繊維、腐食抑制材料、およびバインダーを含む繊維の凝集体を含む、上記項目1に記載の粉末。
[12].
前記腐食抑制材料は、以下のうちの少なくとも1つである、上記項目11に記載の粉末:
金属ホスファート;
金属クロマート;および/または
亜鉛ホスファート。
[13].
前記繊維が、繊維、セラミック材料、およびバインダーを含む繊維の凝集体を含む、上記項目1に記載の粉末。
[14].
前記セラミック材料が、以下のうちの少なくとも1つである、上記項目1に記載の粉末:
六方晶窒化ホウ素;
フッ化カルシウム;
酸化イットリウム;
酸化イッテルビウム;
アルバイト、および/または
イライトセラミック粘土。
[15].
前記繊維が、繊維および有機充填剤または有機バインダーのいずれかを含む繊維の凝集体を含む、上記項目1に記載の粉末。
[16].
前記繊維が、以下のうちの少なくとも1つを含む、上記項目1に記載の粉末:
炭素繊維;
高分子繊維;
ポリアラミド繊維;
天然繊維;
植物繊維もしくは織物繊維;
金属繊維もしくは金属合金繊維;および/または
セラミック繊維。
[17].
前記繊維が、以下のうちの少なくとも1つを含む、上記項目1に記載の粉末:
炭素繊維;
高分子繊維;
ポリアラミド繊維;
天然繊維;および/または
植物繊維もしくは織物繊維。
[18].
前記繊維が、以下のうちの少なくとも1つを含む、上記項目1に記載の粉末:
100~300μmの平均長さ;
0.5~500μmの平均直径;ならびに/または
50μmの最小繊維長および3000μmの最大繊維長。
[19].
金属材料およびセラミック材料のうちの少なくとも1つを含む粉末組成物;ならびに
前記粉末組成物と混合された繊維の凝集体を含む、
溶射粉末。
[20].
上記項目1~19のいずれか1項に記載の粉末によって形成された溶射コーティング。
[21].
前記溶射コーティングが、TBCコーティング;およびアブレイダブルコーティングのうちの1つである、上記項目20に記載の溶射コーティング。
[22].
金属またはセラミックを含む材料組成物の少なくとも1つの層を含む、TBCまたはアブレイダブル溶射コーティングであって、前記層は、その層内に繊維の配列を有する、TBCまたはアブレイダブル溶射コーティング。
[23].
金属またはセラミックを含む材料組成物の少なくとも1つの層を含む、TBCまたはアブレイダブル溶射コーティングであって、前記層は、その層内に配置された繊維凝集体を有する、TBCまたはアブレイダブル溶射コーティング。
[24].
金属またはセラミックを含む材料組成物の少なくとも1つの層を含むTBCまたはアブレイダブル溶射コーティングであって、前記層は、その層から繊維が少なくとも部分的に焼き尽くされることに起因する所定のレベルの多孔性を有する、TBCまたはアブレイダブル溶射コーティング。
[25].
金属またはセラミックを含む材料組成物の少なくとも1つの層を含むTBCまたはアブレイダブル溶射コーティングであって、前記層は、その層から繊維凝集体が少なくとも部分的に焼き尽くされることに起因する所定のレベルの多孔性を有する、TBCまたはアブレイダブル溶射コーティング。
[26].
金属またはセラミック材料組成物の少なくとも1つの層を含む、TBCまたはアブレイダブル溶射コーティングであって、前記層は、その層内に永久的に配置される繊維に起因する所定のレベルの多孔性を有する、TBCまたはアブレイダブル溶射コーティング。
[27].
金属またはセラミック材料組成物の少なくとも1つの層を含む、TBCまたはアブレイダブル溶射コーティングであって、前記層は、その層内に永久的に配置される繊維凝集体から生じる所定のレベルの多孔性を有する、TBCまたはアブレイダブル溶射コーティング。
[28].
上記項目1~19のいずれか1項に記載の粉末を使用して基板をコーティングする方法であって、前記粉末を溶射することによって基板上にコーティングを適用すること、および前記基板上にコーティング材料を堆積させることを含む方法。
[29].
上記項目1~19のいずれか1項に記載の粉末を使用して基板上にTBCコーティングまたはアブレイダブルコーティングを適用する方法であって、前記粉末を溶射することによって基板上にコーティングを適用すること、および前記基板上にコーティング材料を堆積させることを含む方法。