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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】床面の表面保護被膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 5/00 20060101AFI20220419BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20220419BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20220419BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220419BHJP
   E04F 15/12 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
B05D5/00 B
B05D7/00 L
B05D1/36 Z
B05D7/24 302T
B05D7/24 302P
E04F15/12 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019547936
(86)(22)【出願日】2018-08-22
(86)【国際出願番号】 JP2018031007
(87)【国際公開番号】W WO2019073698
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2017196596
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 剛
(72)【発明者】
【氏名】樋口 亮史
(72)【発明者】
【氏名】平本 勇也
(72)【発明者】
【氏名】永野 裕幸
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-126623(JP,A)
【文献】特開2007-224261(JP,A)
【文献】特開2005-343924(JP,A)
【文献】特開2004-292798(JP,A)
【文献】国際公開第2008/050756(WO,A1)
【文献】特開2005-200497(JP,A)
【文献】特開2010-247069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
E04F15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に、常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)を塗装し、該組成物による硬化塗膜層(I)を形成する工程、次いでハードコート層形成用コーティング剤(B)を塗布し、少なくとも1層のハードコート層(II)を形成する工程、を含む床面の表面保護被膜形成方法であって、
前記常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)が、
水酸基含有アクリル樹脂(a)を含む主剤と、ポリイソシアネート化合物(b)を含む硬化剤とを含有し、
前記硬化剤中に含まれるポリイソシアネート化合物(b)のイソシアネート基と主剤中に含まれる水酸基含有アクリル樹脂(a)の水酸基との比率(NCO/OH)が、0.7~2.0の範囲内であり、
前記ハードコート層形成用コーティング剤(B)が、
コロイダルシリカ並びに加水分解性シラン及び/又はその縮合物を含み、前記加水分解性シラン及び/又はその縮合物が、エポキシシランオリゴマー(c)、1~3官能性の加水分解性シランから選ばれる少なくとも1種の加水分解性シラン及び/又はその加水分解縮合物(f)、及び、4官能性の加水分解性シラン及び/又はその加水分解縮合物(g)から選ばれる少なくとも1種である、
ことを特徴とする床面の表面保護被膜形成方法。
【請求項2】
前記ハードコート層形成用コーティング剤(B)が、エポキシシランオリゴマー(c)と、平均粒子径が1~100nmの範囲内のコロイダルシリカ(d)と、硬化触媒(e)と、を含む請求項1に記載の床面の表面保護被膜形成方法。
【請求項3】
前記水酸基含有アクリル樹脂(a)のガラス転移温度が、20~90℃の範囲である請求項1又は2に記載の床面の表面保護被膜形成方法。
【請求項4】
前記水酸基含有アクリル樹脂(a)の水酸基価が、15~200mgKOH/gの範囲内である請求項1~3のいずれか1項に記載の床面の表面保護被膜形成方法。
【請求項5】
前記常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)が、充填剤及び/又はポリウレタン樹脂を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の床面の表面保護被膜形成方法。
【請求項6】
前記常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)の塗装時における固形分含有率が、15~70質量%である請求項1~5のいずれか1項に記載の床面の表面保護被膜形成方法。
【請求項7】
前記ハードコート層形成用コーティング剤(B)が、シランカップリング剤をさらに含む請求項1~6のいずれか1項に記載の床面の表面保護被膜形成方法。
【請求項8】
前記硬化塗膜層(I)のマルテンス硬度が30N/mm以上、ハードコート層のマルテンス硬度が100~300N/mmにある請求項1~7のいずれか1項に記載の床面の表面保護被膜形成方法。
【請求項9】
前記床面が、塩化ビニル樹脂系である請求項1~8いずれか1項に記載の床面の表面保護被膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィスビルや商業施設、コンビニエンスストア等の床面に施工することにより、耐擦り傷性、耐水性及び艶感に優れる被膜を形成し、床面の美観を長期間維持することができる床面の表面保護被膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビルや商業施設、コンビニエンスストア等の床面は、擦り傷や汚れ等から床材を保護するとともに、艶を出し、美観を向上させる目的で水性フロアポリッシュが使用されている。しかしながら、樹脂エマルションを主成分とするこれらの水性フロアポリッシュは、人の歩行や台車の運搬により傷や汚れが蓄積しやすく艶(美観)が早期に低下するという問題があった。また、洗浄でのメンテナンスで改善がみられない場合は床面上の被膜を剥離する必要があり、その際に発生する廃水が産業廃棄物になるという問題も内在している。
【0003】
そこで、これらの問題を解決するために、例えば特許文献1には、水性ウレタン樹脂、水、1-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)-2-プロパノールからなるフロアーコーティング剤が開示されている。特許文献1に記載のフロアーコーティング剤は、水性ウレタン樹脂により被膜を形成することから、耐久性、密着性及び光沢等に優れるが、ラッカータイプ(溶剤を揮発させることにより成膜する揮発乾燥型塗料)であり架橋密度が低いため、擦り傷が早期に発生し、美観を長期にわたって維持できないという問題がある。
【0004】
また、特許文献2には、ケイ素原子1個あたり平均0.9~1.1個の炭化水素基がケイ素原子に結合し、及びケイ素原子に結合した水酸基を1分子あたり少なくとも2個有するポリオルガノシロキサン樹脂を含有し、0.10kgf以上の滑り抵抗性を有する室温硬化性のフロアーコーティング剤組成物が開示されている。特許文献2に記載のフロアーコーティング剤は、シラノール基を有するポリオルガノシロキサン樹脂により、乾燥性及び硬化性に優れる被膜が得られるが、樹脂の極性が低いため床材の種類によっては密着性が不十分となる場合があった。
【0005】
特許文献3には、床面に各種常温硬化乾燥型の塗料組成物を塗装しプライマー層を塗設せしめ、次いで紫外線硬化性の中塗り及び/又は上塗りを硬化せしめる床面の現場塗装硬化方法が記載されている。しかしながら、特許文献3に記載の発明は、上塗りを紫外線で硬化させるために装置が大掛かりとなる他、特許文献3に開示のプライマーでは乾燥性に問題があり、塗装作業性、得られる工程膜の耐水性、仕上がり性及び密着性を必ずしも満足するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特開2004-307754公報
【文献】日本国特開2012-12477公報
【文献】日本国特開昭62-68573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、簡便かつ短時間での施工ができ、得られる表面保護被膜の密着性、仕上がり性、耐ワレ性、耐擦り傷性及び艶感に優れる、床面の表面保護被膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる状況の下、本発明者らは鋭意研究した結果、床面にハードコート層形成用コーティング剤によるハードコート層を形成する際に予め、特定の常温硬化型ウレタンプライマー組成物による硬化塗膜層を形成する工程を含むことにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
本発明は、下記の態様を包含する床面の表面保護被膜形成方法を提供する:
(態様1)
床面に、常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)を塗装し、該組成物による硬化塗膜層(I)を形成する工程、次いでハードコート層形成用コーティング剤(B)を塗布し、少なくとも1層のハードコート層(II)を形成する工程、を含む床面の表面保護被膜形成方法であって、前記常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)が、
水酸基含有アクリル樹脂(a)を含む主剤と、ポリイソシアネート化合物(b)を含む硬化剤とを含有し、前記硬化剤中に含まれるポリイソシアネート化合物(b)のイソシアネート基と主剤中に含まれる水酸基含有アクリル樹脂(a)の水酸基との比率(NCO/OH)が、0.7~2.0の範囲内であることを特徴とする床面の表面保護被膜形成方法。
【0010】
(態様2)
前記ハードコート層形成用コーティング剤(B)が、エポキシシランオリゴマー(c)と、平均粒子径が1~100nmの範囲内のコロイダルシリカ(d)と、硬化触媒(e)と、を含む態様1に記載の床面の表面保護被膜形成方法。
【0011】
(態様3)
前記水酸基含有アクリル樹脂(a)のガラス転移温度が、20~90℃の範囲である態様1又は2に記載の床面の表面保護被膜形成方法。
【0012】
(態様4)
前記水酸基含有アクリル樹脂(a)の水酸基価が、15~200mgKOH/gの範囲内である態様1~3のいずれか1の態様に記載の床面の表面保護被膜形成方法。
【0013】
(態様5)
前記常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)が、充填剤及び/又はポリウレタン樹脂を含む態様1~4のいずれか1の態様に記載の床面の表面保護被膜形成方法。
【0014】
(態様6)
前記常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)の塗装時における固形分含有率が、15~70質量%である態様1~5のいずれか1の態様に記載の床面の表面保護被膜形成方法。
【0015】
(態様7)
前記ハードコート層形成用コーティング剤(B)が、加水分解性シラン及び/又はその縮合物、並びにコロイダルシリカを含む、態様1~6のいずれか1の態様に記載の床面の表面保護被膜形成方法。
【0016】
(態様8)
前記硬化塗膜層(I)のマルテンス硬度が30N/mm以上、ハードコート層のマルテンス硬度が100~300N/mmにある態様1~7のいずれか1の態様に記載の床面の表面保護被膜形成方法。
【0017】
(態様9)
前記床面が、塩化ビニル樹脂系である態様1~7のいずれか1の態様に記載の床面の表面保護被膜形成方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の床面の表面保護被膜形成方法(以下、「本方法」と略称する場合がある)によれば、常温硬化型ウレタンプライマー組成物が常温でも被膜を形成するため、床材に対して容易に施工でき、塗装過程における塗り重ね時間が短く、工期短縮化が図れる。また、本方法により形成された複層被膜(工程膜と略称する場合がある)は、床材との密着性に優れ、前記仕上がり性、耐ワレ性、耐擦り傷性及び艶感等の塗膜物性を長期間維持することのできるものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<床面の表面保護被膜形成方法>
本方法は、床面に、特定の常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)を塗装し、該組成物による硬化塗膜層(I)を形成する工程、次いで該硬化塗膜層上にハードコート層形成用コーティング剤(B)を塗布し、少なくとも1層のハードコート層(II)を形成する工程、を含むことを特徴とする。以下順に説明する。
【0020】
本方法を適用する被塗物は床面である。
【0021】
この床面を構成するものとしては、一般的な床材であり、例えば、陶磁器、磁器タイルなどのセラミックス系床材;鉄、アルミニウム等の金属系床材;天然木、合板等の木質系床材;塩化ビニル樹脂等の合成樹脂系床材;御影石、大理石等の石材系床材;これらの素材を複合した床材等を挙げることができ、表面に保護シールや旧塗膜が設けられたものもであってもよい。床材の形状、大きさは特に制限されない。新設又は既設の床材どちらであってもよい。
【0022】
また、本方法を適用する前に、被塗物に洗浄や研磨等の素地調整を行ってもよい。特に、本方法を適用する被塗物としては、塩化ビニル樹脂系床材が好ましい。
【0023】
本方法は、特定の常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)使用する。
【0024】
該常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)を塗装する際の塗装方法としては、例えば、モップ塗装、スプレー塗り、ローラー塗り、刷毛塗り、流し塗り等の公知の手段で塗装することができ、基材の適用される現場に応じて適宜選択して使用することができる。塗装回数は特に制限されることなく、1回又は複数回塗り重ねてもよい。乾燥膜厚としては、被塗物の状態や周囲環境によって異なるが、一般には1回あたり3~50μm、好ましくは7~30μmの範囲内とすることができる。
【0025】
乾燥方法としては、常温乾燥が採用され、乾燥によって塗膜を得ることができるが、塗装環境等に応じて、加熱乾燥又は強制乾燥しても特に問題はない。必要に応じてブロアー等を用いて風乾燥を併用してもよい。常温乾燥では、例えば5~45℃の環境下で乾燥することにより塗膜を得ることができる。塗装時における相対湿度(以下RHと略すことがある)は、80%以下、特に70%以下が好ましい。
【0026】
風乾燥を併用する場合は、例えば、常温環境下、サーキュレーター等を設置し、10~60分好ましくは15~55分換気をすることにより、乾燥を促進させ、かつ、硬化状態が均一な塗膜を得ることができる。
【0027】
本方法に用いる常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)の塗装後の乾燥時間は、硬化状態が半硬化乾燥状態以上となるまで乾燥することが、得られる工程膜の仕上がり性及び後述するハードコート層を形成した際の耐ワレ性の点から好ましい。
【0028】
ここで、本明細書中において、半硬化乾燥状態とは、JIS K 5600-1-1(2004)に規定された半硬化乾燥状態、すなわち、塗面の中央を指先で静かに軽くこすって塗面にすり跡が付かない状態の塗膜である。一方、半硬化乾燥状態未満の硬化塗膜とは、塗膜が上記硬化乾燥状態に至っていない状態であって、JIS K 5600-1-1(2004)に規定された指触乾燥状態以下をいう。
【0029】
本方法の常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)は、前記半硬化乾燥状態以上であれば、後述するハードコート層形成用コーティング剤(B)を重ね塗りした際、仕上がり性及び密着性に優れる床面の表面保護被膜を形成することができる。
【0030】
本明細書中において、初期乾燥性とは、塗膜状態が前記硬化乾燥状態になるまでの時間を示し、短い方がより乾燥性が良く速乾性である。
【0031】
本方法に用いられる常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)を前記半硬化乾燥状態とするまでには、乾燥膜厚と塗装環境のバランスによって異なるが、例えば、乾燥膜厚が50μm以下の場合、3時間未満とすることができ、1~2時間であってもよい。
【0032】
常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)を下塗り(プライマー)として用いる本方法は、比較的短時間で、後述するハードコート層形成用コーティング剤(B)を重ね塗りすることができ作業効率に優れる。本方法において、重ね塗りまでの時間が、3時間以上など長時間を要しても、特段問題はない。
【0033】
かくして、常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)による硬化塗膜層(I)が形成される。
【0034】
本発明において、硬化塗膜層(I)は、工程膜の耐ワレ性の点から下記条件でのマルテンス硬度が30N/mm以上であることが好ましく、特に好ましくは50~300N/mmである。
【0035】
本明細書においてマルテンス硬度は、ガラス板に試料を乾燥膜厚が20μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、23℃、50%相対湿度の雰囲気下で24時間乾燥させたものを試験板とし、超微小硬度計を用いて測定した値である。
【0036】
超微小硬度計としては、例えば、(株)フィッシャー・インストルメンツ社製、フィッシャースコープHM-2000(商品名)などが挙げられ、23℃、50%相対湿度の雰囲気下で、ビッカース圧子を用いて荷重=20mN/25秒の条件で測定して求めるものとする。
【0037】
次いで、前記常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)による硬化塗膜層(I)上に、ハードコート層形成用コーティング剤(B)を塗布し、少なくとも1層のハードコート層(II)を形成する。
【0038】
前記ハードコート層形成用コーティング剤(B)を塗装する際の塗装方法としては、例えば、モップ塗装、スプレー塗り、ローラー塗り、刷毛塗り、流し塗り等の公知の手段で塗装することができ、基材の適用される現場に応じて適宜選択して使用することができる。さらに必要に応じて塗装後の余剰分を拭き取ることもできる。
【0039】
塗装回数は特に制限されることなく、1回又は複数回塗り重ねてもよい。
【0040】
1回あたりの乾燥膜厚は、仕上がり性、耐ワレ性の点から2~50μm、好ましくは3~30μmの範囲内とすることができる。
【0041】
形成塗膜の乾燥は、常温乾燥で行うことができるが、塗装環境等に応じて、加熱乾燥又は強制乾燥してもよい。また、必要に応じてブロアー等を用いて風乾燥を併用してもよい。
【0042】
常温乾燥では、例えば5~45℃の環境下で乾燥することにより塗膜を得ることができる。塗装時における相対湿度(以下RHと略すことがある)は、80%以下、特に70%以下が好ましい。
【0043】
風乾燥を併用する場合は、例えば、常温環境下、サーキュレーター等を設置し、乾燥の間換気することにより乾燥を促進させることができる。
【0044】
本発明は、床面に、特定の常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)による硬化塗膜層(I)を形成し、該塗膜層(I)の上に、後述するハードコート層形成用コーティング剤(B)を塗装し、少なくとも1層のハードコート層(II)を形成することにより、得られる工程膜の密着性に優れ、かつ、床面の耐擦り傷性と仕上がり性を向上させることができる。
【0045】
(A)常温硬化型ウレタンプライマー組成物
本方法に適用される、前記常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)について説明する。
【0046】
本方法に適用される常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)は、硬化後塗膜中にウレタン結合を有する塗膜を形成するもので、水酸基含有アクリル樹脂(a)を含む主剤と、ポリイソシアネート化合物(b)を含む硬化剤とを含有し、前記硬化剤中に含まれるポリイソシアネート化合物(b)のイソシアネート基と主剤中に含まれる水酸基含有アクリル樹脂(a)の水酸基との比率(NCO/OH)が、0.7~2.0の範囲内であることを特徴とする。
【0047】
NCO/OHが上記範囲内であると、初期乾燥性に優れ、ハードコート層形成用コーティング剤(B)の塗り重ねが短時間で可能になると同時に、仕上がり性、耐ワレ性、耐擦り傷性に優れた表面保護被膜を形成することができる。
【0048】
常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)の仕上がり性及びポットライフの観点から、NCO/OHは、0.8~1.8の範囲内が好ましく、0.9~1.6の範囲内がより好ましく、1.0を超えて1.6未満の範囲内がさらに好ましい。
【0049】
本方法に適用される常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)は、常温で硬化可能でありポリウレタン架橋塗膜を形成するのであれば、水性塗料及び有機溶剤型塗料のいずれの形態であってもよい。本方法に適用される組成物は、環境負荷を低減する観点及び臭気の点から、水性塗料組成物であることが好ましい。
【0050】
(a)水酸基含有アクリル樹脂
主剤に含まれる水酸基含有アクリル樹脂(a)は、後述のポリイソシアネート化合物(b)と共にポリウレタン架橋塗膜形成成分となる成分である。
【0051】
特に、水酸基含有アクリル樹脂(a)のガラス転移温度(以下Tgと略す場合がある)は、初期乾燥性及び表面保護被膜の耐ワレ性の点から、20~90℃の範囲内が好ましく、長期耐久性の点から、25~80℃の範囲内がより好ましく、30~70℃の範囲内がさらに好ましい。
【0052】
特に、水酸基含有アクリル樹脂(a)の水酸基価は、初期乾燥性及びポットライフのバランスの点から、15~200mgKOH/gの範囲内が好ましく、30~180mgKOH/gの範囲内がより好ましく、50~160mgKOH/gの範囲内がさらに好ましい。
【0053】
なお、本明細書において、上記水酸基含有アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、下記式により算出される値である。
【0054】
1/Tg(K)=W/T+W/T+・・・W/T
Tg(℃)=Tg(K)-273
式中、W、W、・・・Wは各モノマーの質量分率であり、T、T・・・Tは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度Tg(K)である。なお、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、POLYMER HANDBOOK Fourth Edition,J.Brandrup,E.h.Immergut,E.A.Grulke編(1999年)による値であり、該文献に記載されていないモノマーのガラス転移温度は、該モノマーのホモポリマーを重量平均分子量が50,000程度になるようにして合成したときの静的ガラス転移温度とする。
【0055】
上記静的ガラス転移温度は、例えば、試料を測定カップにとり、真空吸引して完全に溶剤を除去した後、示差走査熱量計「DSC-50Q型」(商品名、島津製作所製)を用いて、3℃/分の昇温速度で-100℃~150℃の範囲で熱量変化を測定し、低温側における最初のベースラインの変化点を静的ガラス転移温度とすることによって、測定することができる。
【0056】
上記水酸基含有アクリル樹脂(a)としては、通常、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、従来公知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中での乳化重合法などの方法により、共重合せしめることによって製造することができる。
【0057】
水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物のε-カプロラクトン変性体;アリルアルコール等を挙げることができる。
【0058】
また、水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;ビニル芳香族化合物;アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;ビニル化合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボン酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート等やジカルボン酸モノエステル等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;含窒素重合性不飽和モノマー;重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー;リン酸基を有する重合性不飽和モノマー;紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー;紫外線安定性重合性不飽和モノマー;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4~7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基を有する重合性不飽和モノマー化合物等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0059】
さらに、上記水酸基含有アクリル樹脂(a)は変性されていてもよく、例えば、ウレタン変性、エポキシ変性、シリコーン変性などを挙げることができる。
【0060】
水酸基含有アクリル樹脂(a)の形態としては、水分散型、水溶性、有機溶剤系のいずれであってもよいが、塗装環境の安全衛生面や臭気の点から、水分散型又は水溶性であることが好ましく、さらに耐水性の点から水分散型が好ましい。
【0061】
水酸基含有アクリル樹脂の水分散体の製造方法としては、従来公知の方法を使用することができる。例えば、乳化剤存在下、重合性不飽和モノマーを乳化重合する方法や、前記溶液重合法により製造された樹脂に含まれるカルボキシル基等のアニオン性基の一部又は全部をアミン等の塩基性化合物で中和してイオン化することによって水中に分散させる方法、前記溶液重合法により製造された樹脂を撹拌機等により強制分散させる方法を用いることが可能である。必要に応じて、乳化剤や界面活性剤を用いてもよく、中和剤の添加前もしくは水分散後に過剰な有機溶剤を除去してもよい。
【0062】
さらに、上記水分散型水酸基含有アクリル樹脂が、相異なる組成の重合性不飽和モノマー成分を多段階に分けて共重合してもよく、単層だけでなく、コア・シェルタイプと言われる多層構造であってもよい。
【0063】
上記水酸基含有アクリル樹脂(a)を水分散する場合、水分散体の安定性の点からカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有することが好ましい。該カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては特に限定されないが、前記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの例示で挙げたものを使用できる。中でもアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0064】
さらに、貯蔵安定性の点から上記水酸基含有アクリル樹脂(a)に中和剤を加えて、カルボキシル基の少なくとも一部を中和してもよい。該中和剤としては特に限定されず、例えば、アンモニア;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びジメチルエタノールアミン等の有機アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基類等が挙げられる。これらの中和剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
前記中和する前の水酸基含有アクリル樹脂(a)の酸価は、アクリル樹脂の水分散安定性、貯蔵安定性及び塗膜の耐水性の点から、50mgKOH/g以下が好ましい。
以上に述べた水酸基含有アクリル樹脂(a)の重量平均分子量は、一般に3,000~2,000,000の範囲内で適宜調整することができ、塗装作業性及び初期乾燥性の点から、5,000~1,000,000の範囲内が好ましい。
【0066】
一方、水酸基含有アクリル樹脂(a)が溶液重合法により製造された樹脂である場合には、該樹脂(a)の重量平均分子量は、3,000~100,000、さらに、5,000~60,000の範囲内がより好ましい。
【0067】
また、溶液重合法により製造された水酸基含有アクリル樹脂(a)の酸価は、製造安定性、貯蔵安定性、塗膜の耐水性の点から、0~50mgKOH/gの範囲内が好ましく、3~48mgKOH/gの範囲内がより好ましい。
【0068】
本明細書において、樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により、標準ポリスチレンを基準として測定した。下記製造例等における測定は、GPC装置として、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー(株)製)、カラムとして、「TSKgel G-4000HXL」、「TSKgel G-3000HXL」、「TSKgel G-2500HXL」、「TSKgel G-2000HXL」(いずれも東ソー(株)製、商品名)の4本を用いて、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行った。
【0069】
前記水酸基含有アクリル樹脂(a)が水分散体である場合には、分散樹脂の平均粒子径は0.05~1.0μmの範囲内が好ましく、0.08~0.8μmの範囲内がより好ましい。
【0070】
本明細書において平均粒子径としてはコールターカウンターN4(商品名、ベックマン・コールター株式会社製、粒度分布測定装置)にて、試料を脱イオン水にて測定に適した濃度に希釈して、常温(20℃程度)にて測定した値とする。
【0071】
水酸基含有アクリル樹脂(a)の樹脂固形分は、水酸基含有アクリル樹脂(a)の分散安定性の点から、35~65質量%程度であることが好ましい。
【0072】
ここで、本明細書において樹脂固形分とは、試料約2.0gを直径約5cmのアルミニウム箔カップに採取し、110℃で1時間加熱後の残分(g)を測定して算出した値である。
【0073】
(b)ポリイソシアネート化合物
本発明で用いる硬化剤中に含まれるポリイソシアネート化合物(b)は、1分子中に遊離のイソシアネート基を2個以上有する化合物であり、従来からポリウレタンの製造に使用されているものを使用することができる。
【0074】
例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネ-ト;4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンジイソシアネート(以下ポリメリックMDI)などの芳香族ジイソシアネート;及びこれらのイソシアヌレート体やビュウレット体等の誘導体化合物が挙げられる。これらのうち、特に、少なくともその成分の一部に、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらの誘導体化合物が用いられていることが好ましく、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の誘導体化合物、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の誘導化合物体などが用いられていることが好適である。
【0075】
また、ポリエーテル基やカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基又はべタイン構造含有基等の親水性基を前記ポリイソシアネート化合物に導入した親水化ポリイソシアネート化合物や、界面活性剤を用いてポリイソシアネート化合物を水中で分散状態とすることができる水分散性ポリイソシアネート化合物などの水性塗料用ポリイソシアネート化合物も挙げることがきる。以上のポリイソシアネート化合物は1種又は2種以上混合して使用できる。
【0076】
常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)が水性塗料である場合には、ポリイソシアネート化合物(b)としては、塗装直前に水と混合できる水性塗料用に変性されたポリイソシアネート化合物を用いることが好ましいが、中でも、得られる塗膜の平滑性などの観点から、アニオン性基含有ポリイソシアネート化合物が好ましい。アニオン性基含有ポリイソシアネートとしては、スルホン酸基及び/又はリン酸基を有するポリイソシアネート化合物が特に好ましい。
【0077】
前記ポリイソシアネート化合物(b)のイソシアネート基含有率は、層間密着性及び耐ワレ性の点から、6~25質量%の範囲内のものが好ましい。
【0078】
ここで、本明細書において、イソシアネート基含有率は、化合物中に含まれるイソシアネート基の量を質量分率で表したものである。該イソシアネート基の量の測定は、JIS K 1603-1(2007)に準拠して行うことができる。具体的には、試料に過剰のジブチルアミンを加え充分に反応させた後、未反応のジブチルアミンを塩酸標準溶液で逆滴定することによって求めた値である。
【0079】
硬化剤中に含まれるポリイソシアネート化合物(b)の含有量は、硬化剤の合計質量を基準として、10~99.9質量%、30~80質量%の範囲内に調整することがより好ましい。
【0080】
硬化剤を希釈する有機溶剤としては、従来から公知のものを使用することができるが、前述したポリイソシアネート化合物(b)と反応することがあるため、水酸基を有さない水溶性溶剤の中から適宜選択することが好ましい。例えば、アセテート系、ケトン系、エステル系、エーテル系、グリコールエーテル系が挙げられ、特に安全衛生面や仕上がり性の点から水酸基を有さないアセテート系水溶性溶剤、水酸基を有さないグリコールエーテル系水溶性溶剤から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0081】
アセテート系としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート(別名;酢酸n-ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(別名:メトキシプロピルアセテート)、1-メトキシプロピル-2-アセテート等が挙げられる。
【0082】
ケトン系としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
【0083】
エステル系としては、例えば、酢酸エチル(別名:エチルアセテート)、酢酸ブチル(別名:ブチルアセテート)、酢酸イソブチル(別名:イソブチルアセテート)、安息香酸メチル(別名:メチルベンゾエート)、エトキシプロピオン酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル等が挙げられる。
【0084】
エーテル系としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0085】
グリコールエーテル系としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル及びエチレングリコールジエチルエーテル等のエチレングリコールジエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル等のジエチレングリコールジエーテル;トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等のトリエチレングリコールジエーテル;テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のテトラエチレングリコールジエーテル等;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールジイソブチルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジフェニルエーテル等のプロピレングリコールジエーテル;ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、及びジプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールアリルエーテル等のジプロピレングリコールジエーテル;トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、及びトリプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールジアリルエーテル等のトリプロピレングリコールジエーテル等;ブチレングリコールジメチルエーテル、ブチレングリコールジエチルエーテル、及びブチレングリコールジ-n-ブチルエーテル等のブチレングリコールジエーテル等、2-ブトキシエチルジエトキシエチルエーテル、2-ブトキシエチルトリエトキシエーテル、2-ブトキシエチルテトラエトキシエチルエーテル等が挙げられる。
【0086】
上記有機溶剤を含有する場合の含有量は、硬化剤の合計質量を基準として、ポリイソシアネート化合物(b)との混和性、すなわち仕上がり性の観点から、10質量%以上、特に20~70質量%の範囲内に調整することが好ましい。
【0087】
ウレタン硬化触媒は、従来から公知のものを使用することができ、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジ(2-エチルヘキサノエート)、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジ(2-エチルヘキサノエート)、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫サルファイト、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫脂肪酸塩、2-エチルヘキサン酸鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、脂肪酸亜鉛類、オクタン酸ビスマス、2-エチルヘキサン酸ビスマス、オレイン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、バーサチック酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス、ナフテン酸コバルト、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸銅、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート等の有機金属化合物;第三級アミン;イミダゾール化合物等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合せて使用することができる。
【0088】
また、上記硬化触媒を使用する場合、乾燥性とポットライフ(可使時間)のバランス及び、得られる塗膜の耐水性及び工程膜での仕上がり性の点から、その含有量としては、常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)中の固形分総量に対して、0.0001~1.0質量%の範囲内が好ましく、0.0005~0.5質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0089】
常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)の固形分総量とは、前記水酸基含有アクリル樹脂(a)の樹脂固形分、ポリイソシアネート化合物(b)の樹脂固形分及び配合されるその他の添加剤等の有効成分の合計質量を指す。ここで、本明細書中において、有効成分とは、試料から、水、有機溶剤などの溶媒を除いた残渣の合計質量を意味する。
【0090】
本発明に用いられる常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)は、上記水酸基含有アクリル樹脂(a)を含む主剤と、硬化剤と、を含む2液型のプライマー組成物であり、これらを使用直前に混合することによって容易に調製することができる。
【0091】
常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)は、前記各成分以外にも必要に応じて、水酸基含有アクリル樹脂(a)以外の樹脂(例えば、ポリウレタン樹脂)、表面調整剤、体質顔料、着色顔料、充填剤(例えば、タルク、ガラスビーズ、マイカ等)、染料、分散安定剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ポリマー微粒子、造膜助剤、防腐剤、消泡剤、中和剤、レベリング剤、シランカップリング剤、可塑剤、凍結防止剤、香料、pH調整剤、難燃化剤等の添加剤や希釈溶媒を含有してもよい。これらは、水酸基含有アクリル樹脂(a)を含む主剤とポリイソシアネート化合物(b)を含む硬化剤の双方に含有することができ、また、いずれか一方に含有してもよい。
【0092】
中でも、充填剤やその他の樹脂としてポリウレタン樹脂を添加すると、高温高湿度(梅雨や夏場)もしくは低温低湿度(冬場)を含む幅広い環境下においても工程膜と床材との密着性、仕上がり性、耐ワレ性、耐擦り傷性及び艶感等の塗膜物性に優れるため好ましい。なお、タルクの添加量は、常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)中の固形分総量に対して、0.3~15質量%が好ましい。ポリウレタン樹脂の添加量は、常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)中の固形分総量に対して、ポリウレタン樹脂の固形分として0.3~15質量%が好ましく、より好ましくは1.0~10質量%である。
【0093】
これらのうち前記表面調整剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類及び脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類及びポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩類及第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤;シリコーン系界面活性剤;フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0094】
中でも常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)の床素材への濡れ広がり性の点から、シリコーン系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0095】
さらに、本方法で形成された複層膜の耐ワレ性の点からコロイダルシリカを含有してもよく、コロイダルシリカとしては、後述するハードコート層形成用のコーティング剤(B)で挙げるものを特に好適に使用できる。
【0096】
本発明に用いる常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)は、塗装時において、仕上り性、床面への塗れ広がりやすさ及び均一な架橋塗膜形成の点から、固形分含有率を通常15~70質量%、特に20~60質量%の範囲内とすることが好ましい。
【0097】
常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)の粘度は、塗装作業性の点から25Pa・s以下であることが好ましい。前記粘度は、23℃、50%RH条件下で主剤と硬化剤を1分間混合した後、1分間静置してB型粘度計60rpmで測定した値である。
【0098】
(B)ハードコート層形成用コーティング剤
本方法に適用されるハードコート層形成用のコーティング剤(B)は、硬化後、塗膜中にシロキサン結合を有する塗膜を形成するものを好適に使用することができる。具体的にはコーティング剤組成物中の加水分解性基及びシラノール基が反応してシロキサン結合を形成し、3次元のガラス質の硬化膜を形成しうるものであることができる。該硬化膜を形成しうる成分としては、例えば、コロイダルシリカ、加水分解性シラン及び/又はその縮合物が挙げられ、さらに、シランカップリング剤などが挙げられ、これらは単独で又は適宜組み合わせて用いることができる。
【0099】
特に、ハードコート層形成用のコーティング剤(B)が、加水分解性シランとしてエポキシシランオリゴマー(c)と、平均粒子径が1~100nmの範囲内のコロイダルシリカ(d)と、硬化触媒(e)と、を含むものであることが、乾燥性、耐ワレ性及び耐擦り傷性の点から特に好ましい。
【0100】
(c)エポキシシランオリゴマー
エポキシシランオリゴマー(c)は、分子内にエポキシ基とシロキサン結合を有する化合物であり、例えば、下記一般式(I)で表されるエポキシ基含有加水分解性シランの加水分解縮合物(c1)、及び/又は、該エポキシ基含有加水分解性シランとエポキシ基を有さない下記一般式(II)で表される加水分解性シランとの混合物の加水分解縮合物(c2)であることができる。
【0101】
【化1】
【0102】
[式(I)中、Rはエポキシ基を含有する有機基であり、Xは、加水分解性基であり、aは1~3の整数である。]
前記Xは加水分解性基であり、例えば、アルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基、アミノキシ基、ハロゲン原子などが挙げられるが、入手しやすい炭素数1~6のアルコキシ基が好ましく、加水分解縮合の反応速度の点から、メトキシ基が好ましい。
【0103】
前記Rのエポキシ基を含有する有機基としては、具体的には、グリシドキシプロピル基等のグリシドキシ基、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル基、(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基等の3,4-エポキシシクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0104】
前記一般式(I)で表される加水分解性シランとしては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0105】
【化2】
【0106】
[式(II)中、Rはエポキシ基を有さない有機基であり、Xは同一又は異なってもよい加水分解性基、aは0~3の整数を示す]。
【0107】
エポキシ基を有さない有機基としては、耐擦り傷性の点から、炭素数1~18の1価の有機基が好ましく、直鎖でも分岐していてもよく、ウレタン結合、エステル結合、エーテル結合等を有していてもよく、フッ素などのハロゲン等により置換されていてもよい。
【0108】
前記一般式(II)で表される加水分解性シランとして具体的には、例えば、前記aが0~3の整数であり、単官能性、2官能性、3官能性又は4官能性の加水分解性シランが挙げられる。
【0109】
a=1である3官能性の加水分解性シランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物(商品名「KC-89S」、信越化学工業製)、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン;メトキシPEG-10プロピルトリメトキシシラン等のポリアルキレングリコール変性トリメトキシシランなどを挙げることができる。
【0110】
a=2である2官能性の加水分解性シランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン;ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン等のオルガノハロシランなどを挙げることができる。
【0111】
a=3である単官能性の加水分解性シランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルイソプロピルプロポキシシラン、ジメチルイソブチルメトキシシランなどを挙げることができる。
【0112】
a=0である4官能性の加水分解性シランとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラフェノキシシランなどのテトラアルコキシシラン;テトラクロロシランなどのテトラハロシランを挙げることができる。
【0113】
単官能性、2官能性、3官能性又は4官能性の加水分解性シランは、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0114】
前記エポキシシランオリゴマー(c)の重量平均分子量は、乾燥性向上と耐ワレ性の点から、500~20,000の範囲内となるよう調整されることが好ましく、さらに800~10,000の範囲内となるよう調整されることが好ましい。
【0115】
前記エポキシシランオリゴマー(c)のエポキシ当量は、水希釈安定性と硬化性の点から、150~1,000(g/eq)の範囲内が好ましく、200~800(g/eq)の範囲内がより好ましい。
【0116】
ここで、本明細書中においてエポキシ当量とは、JIS K7236に準拠した方法により測定した1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数である。
【0117】
また、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC-8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G3000HXL」、「TSKgel G2500HXL」及び「TSKgel G2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
【0118】
エポキシシランオリゴマー(c)の製造方法
前記エポキシシランオリゴマー(c)は、一般的なオルガノシランオリゴマーの製造に用いられている製造方法と従来公知の化学反応とを組み合わせることにより得ることができる。例えば、以下の製造方法を用いて製造することができる。
【0119】
具体的には例えば、出発物質に前記式(I)で表されるエポキシ基含有加水分解性シランと、必要に応じて前記式(II)で表されるエポキシ基を有さない加水分解性シランとを、水及び触媒の存在下で加水分解縮合反応を行いエポキシシランオリゴマー(c)を製造する方法が挙げられる。
【0120】
エポキシシランオリゴマー(c)は、特に耐擦り傷性の点から、エポキシシランオリゴマー(c)が、前記一般式(I)で表されるエポキシ基含有加水分解性シランの加水分解縮合物(a1)、及び/又は、該エポキシ基含有加水分解性シランと前記一般式(II)で表されるエポキシ基を有さない加水分解性シランとの混合物の加水分解縮合物(a2)が好ましく、特に前記一般式(I)で表されるエポキシ基含有加水分解性シランと前記一般式(II)で表されるエポキシ基を有さない加水分解性シランとの混合物の加水分解縮合物(a2)が好ましい。
【0121】
上記のうち、エポキシシランオリゴマー(c)が、前記加水分解化合物(a2)である場合には、前記式(I)で表されるエポキシ基含有加水分解性シランと前記式(II)で表されるエポキシ基を有さない加水分解性シランとの割合が、前者/後者(モル比)として99/1~55/45の範囲内であることが好ましく、85/15~60/40の範囲内で調整されることがさらに好ましい。
【0122】
前記エポキシシランオリゴマー(c)は、前記加水分解縮合物(a1)と前記加水分解縮合物(a2)を併用してもよい。
【0123】
本発明に使用するエポキシシランオリゴマー(c)の製造方法における加水分解縮合反応は、前記触媒の存在下で、例えばpH1~7.5、好ましくはpH2~7の範囲の条件を採用するのがよい。上記pH領域で反応させることで合成中にゲル化や、凝集物が発生したりすることを抑制できる。
【0124】
触媒としては、前記pH領域に調整できるものであれば、その種類は特に制限はなく、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、クエン酸、マレイン酸、安息香酸、マロン酸、グルタール酸、トルエンスルホン酸などの有機酸類もしくはフッ化水素、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸等の無機酸類、又は表面にカルボン酸基やスルホン酸基を有する陽イオン交換樹脂等の固体酸触媒等が挙げられる。
【0125】
前記触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、多すぎるとコスト高になる、合成中や貯蔵中にゲル化する等の問題があり、少ないと反応が遅くなる場合がある。
【0126】
そのため、前記触媒の使用量は、出発物質として配合される加水分解性シラン100質量部に対して0.1~20質量部、好ましくは0.5~15質量部の範囲が適当である。
【0127】
前記加水分解縮合反応において、有機溶媒を使用してもよい。有機溶媒を用いることは、ゲル化を防止する点及び製造時の粘度を調節できる点から好ましい。
【0128】
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物類、アセトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類が挙げられる。
【0129】
加水分解縮合時の反応温度としては、通常0~200℃、好ましくは10~190℃、さらに好ましくは10~120℃である。また、この反応は圧力によらず実施できるが、0.02~0.2MPaの圧力範囲が好ましく、特に0.08~0.15MPaの圧力範囲が好ましい。当該反応は、通常、1~15時間程度で終了する。
【0130】
加水分解縮合後の混合液からは、反応で生成したアルコール、溶媒及び触媒を公知の手法で除去してもよい。尚、得られた生成物は、その目的に応じて、洗浄、カラム分離、固体吸着剤による吸着等の各種の精製法によって触媒を除去し、さらに精製してもよい。効率の点から水洗により反応で生成したアルコール及び触媒を除去することが好ましい。
【0131】
ここで、前記加水分解縮合反応において前記加水分解性シランの加水分解性基の縮合割合によりエポキシシランオリゴマーの構造が変化するが、本製造方法により得られる生成物には、Si-OH基が100%縮合した、完全籠型構造、Si-OH基が残存した直鎖状、分岐状、ラダー構造、不完全籠型構造及び/又はランダム縮合体のエポキシシランオリゴマーが含まれる場合がある。本製造方法により得られる(c)成分であるエポキシシランオリゴマーは、それら完全籠型構造、直鎖状、分岐状、ラダー構造、不完全籠型構造及び/又はランダム縮合体のいずれであってもよい。
【0132】
ハードコート層形成用のコーティング剤(B)中のエポキシシランオリゴマーの含有量は、得られる被膜の硬度と耐擦り傷性の点から、ハードコート層形成用のコーティング剤(B)の有効成分の総量に対して、20~80質量%の範囲内が好ましく、35~75質量%の範囲内がより好ましい。
【0133】
(d)コロイダルシリカ
コロイダルシリカの、市販品としては、コロイダルシリカ微粒子が挙げられる。
【0134】
コロイダルシリカは、シリカの超微粒子を分散媒に分散させたものである。
【0135】
分散媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、イソブタノール、n-ブタノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコール等の多価アルコール系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコール誘導体;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン系溶剤;2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等のモノマーが挙げられる。コーティング剤が水性である場合には、水、メタノール、エタノール等の水溶性溶剤、特に水を分散媒としたものであることが、コーティング剤に適用した際の安定性の点から好ましい。
【0136】
水を分散媒とするコロイダルシリカとしては、例えば、酸性コロイダルシリカ、塩基性コロイダルシリカ等が挙げられる。
【0137】
酸性コロイダルシリカとしては、特に限定されないが、例えば、市販品としてスノーテックスAK、スノーテックスO、スノーテックスO-40、スノーテックスOL、スノーテックスOUP、スノーテックスOXS、スノーテックスOYL(以上、商品名、日産化学工業社製、スノーテックスは登録商標)、アデライトAT-20Q(商品名、ADEKA社製、アデライトは登録商標)等が挙げられる。
【0138】
塩基性コロイダルシリカとしては、特に限定されないが、例えば、市販品としてスノーテックスC、スノーテックスN、スノーテックスNXS(以上、商品名、日産化学工業社製、スノーテックスは登録商標)、アデライトAT-20、アデライトAT-20N(以上、商品名、ADEKA社製、アデライトは登録商標)等が挙げられる。
【0139】
水溶性溶剤を分散媒とするコロイダルシリカとしては、特に限定されないが、例えば、市販品としてMA-ST-M、IPA-ST、EG-ST、PGM-ST(以上、商品名、日産化学工業社製)等が挙げられる。
【0140】
これらコロイダルシリカは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上のコロイダルシリカを併用する方法としては、具体的には例えば、平均一次粒子径が10~15nmの酸性コロイダルシリカと平均一次粒子径が20~25nmの酸性コロイダルシリカとを、質量比(前者/後者)が、好ましくは10/90~70/30の範囲内となるように併用する方法、平均一次粒子径が20~25nmの酸性コロイダルシリカと平均一次粒子径が50~80nmの酸性コロイダルシリカとを、質量比(前者/後者)が、好ましくは10/90~60/40となるように併用する方法が挙げられる。
【0141】
さらに、コロイダルシリカには、アルミナゾル、チタニアゾル、セリアゾル等のシリカ微粒子以外の無機質微粒子を含有させることもできる。
【0142】
コロイダルシリカ(d)の平均粒子径は、硬化塗膜の透明性及び硬度の点から1~100nmの範囲内が好ましく、8~50nmの範囲内がさらに好ましい。
【0143】
中でも、前記コロイダルシリカは、ハードコート層形成用コーティング剤(B)の安定性、塗膜外観から酸性コロイダルシリカが好適に使用できる。
【0144】
本明細書において、平均粒子径は、コロイダルシリカ粒子の一次粒子の平均粒子径である。本明細書において、コロイダルシリカの平均粒子径は、特に断りのない限り窒素吸着法(BET法)によって算出される平均粒子径をいう。
【0145】
前記コロイダルシリカ(d)の含有量は、得られる被膜の硬度と耐擦り傷性の点から、ハードコート層形成用コーティング剤(B)の有効成分の総量に対して、20~80質量%の範囲内が好ましく、35~75質量%の範囲内がより好ましい。
【0146】
(e)硬化触媒
硬化触媒としては、加水分解性基を有する化合物を加水分解縮合させて硬化性を促進させうるものであれば、特に限定されず、前記エポキシシランオリゴマー(c)の製造方法の項に例示した触媒の他、例えば、ジアセチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジアセチル錫ジオクトエート、オクチル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクチレートなどの有機錫化合物;アルミニウムトリメトキシド、トリス(アセチルアセトネート)アルミニウム、アルミニウムトリ-n-ブトキシド、アルミニウムトリス(アセチルアセトン)、アルミニウムトリス(アセトアセテートエチル)、アルミニウムジイソプロポキシ(アセトアセテートエチル)、アルミニウムアセチルアセトネート等の有機アルミニウム化合物;チタニウムテトラキス(エチレングリコールモノメチルエーテル)、チタニウムテトラキス(エチレングリコールモノエチルエーテル)、チタニウムテトラキス(エチレングリコールモノブチルエーテル)、テトラノルマルブチルチタネート等の有機チタン化合物;ジルコニウムテトラキス(エチレングリコールモノメチルエーテル)、ジルコニウムテトラキス(エチレングリコールモノエチルエーテル)、ジルコニウムテトラキス(エチレングリコールモノブチルエーテル)、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)等の有機ジルコニウム化合物;ナフテン酸亜鉛等の有機亜鉛化合物;オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト等の有機コバルト化合物;ホウ酸、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニル、ホウ酸トリ(4-クロロフェニル)、ホウ酸トリヘキサフルオロイソプロピル等のホウ酸エステル等のホウ酸化合物等;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等の水酸化アンモニウム塩;テトラブチルアンモニウムフルオリド等のフッ化アンモニウム塩;ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン等のエタノールアミン類、DBU等の強塩基3級アミン化合物等が挙げられる。上記硬化触媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0147】
上記硬化触媒の中でも、乾燥性や耐擦り傷性、水希釈安定性の点からリン酸化合物、有機錫化合物が好ましい。上記リン酸化合物としては、例えば、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、亜リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸、メタンホスホン酸、ベンゼンホスホン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、ホスフィン酸;これらのリン酸化合物のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩などが挙げられる。
【0148】
硬化触媒(e)の含有量としては、ハードコート層形成用のコーティング剤(B)の有効成分の総量に対して、0.1~30質量部の範囲内が好ましく、さらに0.5~20質量部となる範囲内で調整されることが望ましい。
【0149】
本発明に用いるハードコート層形成用コーティング剤(B)はさらにシランカップリング剤を配合することができ、シランカップリング剤としては、前記コーティング剤(B)に凝集が発生せず、常温で反応し得る官能基であれば特に制限されないが、具体的には、エポキシ基、水酸基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基又はイソシアネート基等を挙げることができる。
【0150】
例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、等のグリシドキシ基含有シランカップリング剤、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルジメトキシシラン等の(3,4-エポキシシクロヘキシル)基含有シランカップリング剤等のエポキシ基含有シランカップリング剤;3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン等のウレイド基含有シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン等のビニル基含有シランカップリング剤;3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤等が挙げられる。前記コーティング剤(B)の安定性、耐擦り傷性の点からウレイド基含有シランカップリング剤、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルジメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤が好ましい。
【0151】
シランカップリング剤をハードコート層形成用コーティング剤(B)に含有させる場合、その含有率としては、塗膜外観、耐擦り傷性の点から、ハードコート層形成用コーティング剤(B)の有効成分の総量を基準として、1~70質量%の範囲内が好ましく、5~50質量%の範囲内がより好ましい。
【0152】
本発明に用いるハードコート層形成用コーティング剤(B)は、その他、希釈溶媒、RTVゴム、着色顔料、体質顔料、染料、艶消し剤、骨材、樹脂粒子、表面調整剤、粘度調整剤、消泡剤、抗菌剤、防カビ剤、難燃剤、防曇剤、可塑剤、スリップ剤、脱水剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、金属酸化物微粒子、金属粉、酸化防止剤、界面活性剤、造膜助剤、増粘剤、帯電防止剤、撥水性付与剤、繊維類等の添加剤;イソシアネート化合物やメラミン樹脂等の架橋剤;樹脂エマルション、ワックスエマルション等の樹脂成分;アクリル樹脂、フッ素樹脂、各種有機変性シリコーンオイル等の改質剤などを適宜配合することができる。
【0153】
本発明に用いるハードコート層形成用コーティング剤(B)は、無溶剤でもよく、または有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤を含有することにより、前記加水分解性シランとコロイダルシリカとの相溶性を向上させることができ特に好ましい。有機溶剤としては、上記加水分解性シラン化合物を溶解し、その加水分解縮合反応が進行した後も溶解し得る限り、任意の適切なものを用いることができる。
【0154】
有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、メチルイソブチルカルビノール、2-エチルヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル系溶剤;シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソプロピルグリコール等のエーテル系溶剤;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等のグリコールエーテル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素類系溶剤が挙げられる。これらは、粘度の調整、塗布性の調整等の目的に応じて適宜組み合わせて使用することができる。
【0155】
上記有機溶剤の水への溶解度(20℃)としては、5g/水100g以上が好ましく、仕上がり性と前記加水分解性シランとコロイダルシリカの相溶性向上の点から、好ましくは20g/水100g以上、より好ましくは50g/水100g以上である。
【0156】
仕上がり性と硬化性の点から、上記有機溶剤の中でも、塗装作業性と相溶性の点から、ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテルの中から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0157】
有機溶剤をハードコート層形成用コーティング剤(B)に含有させる場合、その含有率としては、塗膜外観、塗装作業性の点から、前記ハードコート形成用コーティング剤(B)の有効成分の総量100質量部を基準として、例えば5~200質量部、好ましくは10~50質量部である。
【0158】
(f)1~官能性の加水分解性シランから選ばれる少なくとも1種の加水分解性シラン及び/又はその加水分解縮合物
ハードコート層形成用コーティング剤(B)は、加水分解性シランとして、1~官能性の加水分解性シランから選ばれる少なくとも1種の加水分解性シラン及び/又はその加水分解縮合物(f)を含有してもよい。前記(f)成分としては、前記一般式(II)で表される加水分解性シランの加水分解縮合物を好適に使用することができる。
【0159】
前記一般式(II)で表される1~官能性のエポキシ基を有さない加水分解性シランが具体的に挙げられるが、中でも、特に乾燥性の点から、メチルトリメトキシシランが好ましい。
【0160】
前記1~官能性のエポキシ基を有さない加水分解性シランから選ばれる少なくとも1種の加水分解性シラン及び/又はその加水分解縮合物(f)をハードコート層形成用コーティング剤(B)に含有させる場合、その含有率としては、耐擦り傷性と耐クラック性などのバランスの点から適宜調整することができるが、ハードコート層形成用コーティング剤(B)の有効成分の総量に対して、1~40質量%、好ましくは35~30質量%である。
【0161】
(g)4官能性の加水分解性シラン及び/又はその加水分解縮合物
ハードコート層形成用コーティング剤(B)は、前記(f)成分のうち、少なくともその成分の一部に4官能性の加水分解性シラン及び/又はその加水分解縮合物(g)を含有してもよい。
【0162】
(g)成分としては、下記一般式(III)で表される加水分解性シラン及び/又はその加水分解縮合物が挙げられる。
【0163】
【化3】
【0164】
[前記式(III)中、Xは前記と同じ意味である。]
上記一般式(III)は、4官能性の加水分解性シランであり、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラフェノキシシランなどのテトラアルコキシシラン;テトラクロロシランなどのテトラハロシラン等を挙げることができる。
【0165】
前記4官能性の加水分解性シランの加水分解縮合物としては、平均縮合度が2~15のものが好適であり、該オルガノシリケート化合物を900℃で焼成した際にシリカとなって残る該シリカの重量分率で20~60質量%の範囲内となるまで縮合せしめた縮合物が好適である。また該加水分解縮合物には、直鎖状の縮合物以外に、分岐状或いは環状構造の縮合物を含んでいてもよい。
【0166】
なお、前記平均縮合度は、4官能性の加水分解性シランの縮合化合物におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)から得られる分子量を用いて求めることができる。
【0167】
前記一般式(III)で表される4官能性の加水分解性シラン及び/又はその加水分解縮合物(G)を含有させる場合のその含有率は、耐擦り傷性と乾燥性、耐クラック性のバランスの観点から、ハードコート層形成用コーティング剤(B)の有効成分の総量に対して1~20質量%、好ましくは1.5~15質量%の範囲内が好ましい。
【0168】
ここで、本明細書において、有効成分とは、試料から、水、有機溶剤などの溶媒を除いた残渣を意味する。有効成分の量は、例えば水、有機溶剤等が含まれる混合物・組成物等を105℃の熱風乾燥機中で3時間乾燥して溶剤等を揮散させたときの加熱残分により求めることができる。尚、本明細書において、加水分解性シラン及びシランカップリング剤などのケイ素化合物に関しては有効成分に含むものとする。
【0169】
(h)水
ハードコート層形成用コーティング剤(B)は、水(h)を含有してもよい。水を含有することにより、塗膜形成時に乾燥を促進することができる。また、塗装時に水で後から希釈することによりハードコート層形成用コーティング剤(B)の粘度を適宜調整し、塗装作業性を調製することができる。ハードコート層形成用コーティング剤(B)は水を含むことが可能であると共に、塗装段階の希釈作業において、有機溶剤ではなく水を用いることができるため、屋内作業においても、作業者の健康や周辺の衛生環境を損なう恐れが少なく安全性が高い。
【0170】
水(h)としては、任意のものを用いることができ、例えば、水道水、イオン交換水、および純水が好ましく用いられる。
【0171】
上記水(h)の含有量は、ハードコート層形成用コーティング剤(B)の仕上がり性や塗装時のハジキ性を配慮した範囲内で適宜調節することができる。
【0172】
後から添加する場合、その添加量としては、例えば希釈前のハードコート層形成用コーティング剤(B)の有効成分の総量に対して、1~30質量%の範囲内とすることができる。
【0173】
ハードコート層形成用コーティング剤(B)は、その他、性能を損なわない範囲で、前記硬化触媒以外の硬化触媒、RTVゴム、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等の顔料、染料、艶消し剤、骨材、樹脂粒子、表面調整剤、粘度調整剤、消泡剤、抗菌剤、防カビ剤、難燃剤、防曇剤、可塑剤、スリップ剤、脱水剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、金属酸化物微粒子、金属粉、酸化防止剤、界面活性剤、造膜助剤、増粘剤、帯電防止剤、撥水性付与剤、繊維類等の添加剤;イソシアネート化合物やメラミン樹脂等の架橋剤;樹脂エマルション、ワックスエマルション等の樹脂成分;アクリル樹脂、フッ素樹脂、各種有機変性シリコーンオイル等の改質剤などを適宜配合することができる。
【0174】
ハードコート層形成用コーティング剤(B)の形態及び調製方法
本方法に適用するハードコート層形成用コーティング剤(B)は、一液型組成物であってもよいし、二液以上の多液型組成物であってもよい。
【0175】
多液型とする場合は、例えば、加水分解性シランを第1成分に、硬化触媒(e)を第2成分にし、それ以外のその他成分をいずれかもしくは第3成分に振り分ける方法を挙げることができる。
【0176】
ハードコート層形成用コーティング剤(B)において、貯蔵安定性及び塗装作業性の観点から、例えば、エポキシシランオリゴマー(c)を含む第一液、硬化触媒(e)を含む第二液及び、コロイダルシリカ(d)を含む第三液を個別に作成し、使用直前に全液を混合して使用することができる。前記シランカップリング剤、有機溶剤、(f)~(h)成分やその他、顔料分散剤、沈降防止剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤等を第一~三液のいずれかに適宜含ませることができる。
【0177】
上記の例の場合、混合中に凝集物が発生するのを抑制する観点から、前記第一液および前記第三液を先に混合した後、前記第二液を最後に混合することが好ましい。
【0178】
シランカップリング剤を含有する場合には、コロイダルシリカ(d)と予め分散せしめてから硬化触媒(e)を混合することで相溶性が向上する場合があり好ましい。
【0179】
上述のように、本方法に適用するハードコート層形成用コーティング剤(B)は、無溶剤でもよく、さらに希釈溶媒を含有してもよい。希釈溶媒としては、水及び有機溶剤が挙げられ、臭気及び相溶性の点から、先の硬化剤を希釈する有機溶剤の項で例示に挙げたものを好適に使用することができる。
【0180】
本発明に用いるハードコート層形成用コーティング剤(B)は、塗装時において、作業性と仕上り性の点から、有効成分の含有率は通常15質量%以上、特に20~60質量%の範囲内とすることが好ましい。
【0181】
本発明においてハードコート層(II)は、工程膜の耐スリキズ性、耐ワレ性の点から、マルテンス硬度が100~300N/mm、特に120~300N/mmの範囲内にあることが適している。
【実施例
【0182】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、「部」及び「%」は、特記しない限り「質量部」及び「質量%」を示す。
【0183】
(製造例1)水酸基含有アクリル樹脂(a-1)
温度計、撹拌機、還流冷却管、窒素導入口を備えた2リットルのガラス製4ツ口フラスコに、脱イオン水400部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1部を仕込み、内部の空気を窒素置換した後、撹拌しながら82℃まで昇温させた。別容器に、脱イオン水440部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ40部、過硫酸アンモニウム2部を添加し、よく撹拌後、その中に表1の水酸基含有アクリル樹脂名(a-1)の欄に記載のモノマー配合からなる混合物を加え乳化物とし、該乳化物を82℃に保ったガラス製4ツ口フラスコに4時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、さらに82℃で2時間撹拌した後、40℃まで冷却し、アンモニアでpHを7.5に調整することにより、平均粒子径150nm、樹脂固形分50%の水酸基含有アクリル樹脂(a-1)の水分散体を得た。該水酸基含有アクリル樹脂(a-1)の水酸基価は103mgKOH/g、ガラス転移温度は41℃であった。
【0184】
【表1】
【0185】
(製造例2)水酸基含有アクリル樹脂(a-2)
温度計、撹拌機、還流冷却管、窒素導入口を備えた2リットルのガラス製4ツ口フラスコに、脱イオン水300部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1部を仕込み、内部の空気を窒素置換した後、撹拌しながら82℃まで昇温させた。別容器に、脱イオン水340部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ20部、過硫酸アンモニウム1部を添加し、よく撹拌後、その中に表1の水酸基含有アクリル樹脂(a-2)のコア部の欄に記載のモノマー配合からなる混合物を加え乳化物とし、該乳化物を82℃に保ったガラス製4ツ口フラスコに2時間かけて一定速度で滴下した。
【0186】
滴下終了後、82℃で30分間撹拌した後、別容器にて脱イオン水200部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ20部、過硫酸アンモニウム1部を添加し、よく撹拌後、その中に表1の水酸基含有アクリル樹脂(a-2)のシェル部の欄に記載のモノマー配合からなる混合物を加え乳化物としたものを82℃に保ったガラス製4ツ口フラスコに2時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、さらに82℃で2時間撹拌した後、40℃まで冷却し、アンモニアでpHを7.5に調整することにより、平均粒子径150nm、樹脂固形分50%の水酸基含有アクリル樹脂(a-2)のコア・シェル型水分散体を得た。該水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は103mgKOH/g、ガラス転移温度は40℃であった。
【0187】
(製造例3)水酸基含有アクリル樹脂(a-3)
製造例2において、モノマー混合物の配合を表1の水酸基含有アクリル樹脂(a-3)の欄に示す通りとする以外は製造例2と同様にして水酸基含有アクリル樹脂(a-3)のコア・シェル型水分散体を得た。
【0188】
(製造例4)水酸基含有アクリル樹脂(a-4)
温度計、撹拌機、還流冷却管、窒素導入口を備えた2リットルのガラス製4ツ口フラスコに「スワゾール1000」(コスモ石油(株)製、炭化水素系有機溶剤)640部、n-ブタノール80部を仕込み、内部の空気を窒素置換した後、撹拌しながら90℃まで昇温した。90℃に達したところで、表1の水酸基含有アクリル樹脂(a-4)の欄に記載のモノマー配合及びアゾビスイソブチロニトリル32部からなる混合溶液を4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに90℃で1時間撹拌を続けた。
【0189】
その後、アゾビスイソブチロニトリル4部を「スワゾール1000」80部に溶解させたものを1時間かけて滴下し、さらに90℃で1時間撹拌を続けた後、40℃まで冷却し、樹脂固形分50%の水酸基含有アクリル樹脂(a-4)の溶液を得た。該アクリル樹脂の水酸基価は103mgKOH/g、ガラス転移温度は39℃、重量平均分子量は15,000であった。
【0190】
(製造例5)水酸基含有アクリル樹脂(a-5)
温度計、撹拌機、還流冷却管、窒素導入口を備えた2リットルのガラス製4ツ口フラスコに有機溶剤としてプロピレングリコールモノプロピルエーテルを400部入れ、撹拌しながら120℃まで昇温した。120℃に達したところで表1の水酸基含有アクリル樹脂(a-5)の一段階目の欄に記載のモノマー配合及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート12部からなる混合溶液1を4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに同温度で1時間撹拌を続けた。
【0191】
次に、120℃の温度を保持したまま、上記フラスコ中に、表1の水酸基含有アクリル樹脂(a-5)二段階目の欄に記載のモノマー配合及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート2.4部からなる混合溶液2を1時間かけて滴下し、さらに滴下終了後同温度で1.5時間撹拌を続け、水酸基含有アクリル樹脂(a-5)溶液を得た。
得られた水酸基含有アクリル樹脂溶液(a-5)の樹脂固形分は77.5%であった。続いて、得られた水酸基含有アクリル樹脂溶液から固形分が85%になるまでプロピレングリコールモノプロピルエーテルを減圧下で留去した。
【0192】
これを95℃まで冷却し、ジメチルエタノールアミン2.8部を添加して30分間撹拌した。さらに、撹拌しながら樹脂固形分が50%となるように脱イオン水を2時間かけて滴下して、水酸基含有アクリル樹脂(a-5)の分散体を得た。該水酸基含有アクリル樹脂の分散体の水酸基価は103mgKOH/g、ガラス転移温度は43℃、重量平均分子量は30,000であった。
【0193】
(製造例6)比較用樹脂(a’-1)
製造例1において、モノマー混合物の配合を表1のアクリル樹脂(a’-1)の欄に示す通りとする以外は製造例1と同様にして水酸基非含有であり、架橋官能基モノマーとしてダイアセトンアクリルアミドを共重合したアクリル樹脂(a’-1)の水分散体を得た。
【0194】
製造例1~6で得られた水酸基含有アクリル樹脂又はアクリル樹脂の樹脂固形分、平均粒子径、水酸基価、酸価及びガラス転移温度を表2に示す。
【0195】
【表2】
【0196】
(製造例7)ポリイソシアネート化合物(b-1)
ポリイソシアネート化合物b〔市販品、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、21.7%のNCO含有率、平均NCO基数=3.5(GPCによる)、モノマーHDI含有量0.1%、粘度(23℃)3000mPa・s〕970g(5.00mol)、3-(シクロヘキシルアミノ)プロパンスルホン酸30g(0.14mol)、ジメチルシクロヘキシルアミン17.4g(0.14mol)及び1-メトキシプロピル-2-アセテート(水酸基を有さないアセテート系水溶性溶剤)254gを、窒素雰囲気下、80℃で5時間撹拌することにより、固形分80%、イソシアネート基含有率16.0%のスルホン酸変性イソシアネート化合物(b-1)を得た。
【0197】
(製造例8)常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A-1)
上記製造例1で得られた水酸基含有アクリル樹脂(a-1)200部(固形分100部)、脱イオン水100部、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(水酸基を有さないグリコールエーテル系水溶性溶剤)30部、「サーフロン S-211」(注1)1.4部(固形分0.7部)を混合し、ディスパーで15分間撹拌することにより、主剤を製造した。次に、硬化剤として、前記製造例7で得られたポリイソシアネート化合物(b-1)75部(固形分60部)とジオクチルスズジラウレート0.3部を加え、ディスパーを用いて混合して常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A-1)を作製した。
【0198】
常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A-1)の固形分含有率及びNCO/OH比を表3に示す。なお、常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A-1)の初期乾燥性評価の結果及びマルテンス硬度の値も合わせて表3に示す。
【0199】
(製造例9~22)
製造例8において、主剤と硬化剤の配合量を表3の通りに変更する以外は、製造例8と同様にして、常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A-2)~(A-12)、比較例用常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A’-1)~(A’-3)を得た。
【0200】
【表3】

【0201】
表中の「-」は算出できないことを示し、注は下記を示す。
【0202】
(注1)サーフロンS-211:商品名、AGCセイミケミカル社製、パーフルオロアルキルカルボン酸系界面活性剤、有効成分50%。
【0203】
(注2)ポリイソシアネート化合物(b-2):デュラネート TSA-100、商品名、旭化成株式会社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、固形分100質量%、イソシアネート基含有率20.6質量%。
(注3)ポリウレタン樹脂エマルション(第一工業製薬株式会社製スーパーフレックス150、固形分=30質量%)平均粒子径0.03μm
(注4)タルク(日本タルク株式会社製P-3、粒子径D50=5μm)
【0204】
表中の試験項目の試験方法及び評価基準は下記の通りである。
【0205】
(試験項目1.)初期乾燥性:
気温23℃、湿度50%RHの条件下、各常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A)を厚さ2mmのガラス板(150×70mm)に乾燥膜厚が10μmになるようにアプリケーターを用いて塗装した。その後、同条件下、指で軽くこすっても跡が付かなくなる、半硬化乾燥状態になるまでの時間(以下半硬化時間という)を測定し、以下の基準で評価した。
◎:半硬化時間が1時間未満、
○:半硬化時間が1時間以上かつ2時間未満
△:半硬化時間が2時間以上かつ4時間未満
×:半硬化時間が4時間以上。
【0206】
(試験項目2.)ポットライフ(可使時間):
主剤に硬化剤を均一に混合した各常温硬化型プライマー組成物を、気温23℃、湿度50%RHの条件下、2時間放置した後の塗料状態を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
◎:粘度上昇やブツの発生などなく、問題なく使用できる
○:わずかに粘度上昇が認められるが、ブツはなく実用上問題なく使用できる
△:粘度上昇やブツが認められる
×:ゲル化する。
【0207】
(試験項目3.)マルテンス硬度:
明細書記載の方法に準じて測定した。
【0208】
(製造例23)ハードコート層形成用コーティング剤(B-1)
エポキシシランオリゴマー(注5)(c-1)62.5部(有効成分として50部)、スノーテックスO-40(注6)125部(有効成分として50部)、KBM-403(注7)15部(有効成分として15部)、硬化触媒としてリン酸2部及び希釈溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール40部をディスパーで均一になるまで撹拌することによりハードコート層形成用コーティング剤(B-1)を得た。コーティング剤(B-1)による塗膜のマルテンス硬度は明細書記載の方法で求めたところ170N/mmであった。
【0209】
(製造例24)ハードコート層形成用コーティング剤(B-2)
エポキシシランオリゴマー(注5)(c-1)62.5部(有効成分として50部)、スノーテックスO-40(注6)125部(有効成分として50部)、KBM-403(注7)15部(有効成分として15部)、KBM-13(注8)10部(有効成分として10部)、硬化触媒としてリン酸2部、希釈溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール40部を混合し、ディスパーで均一になるまで撹拌することによりハードコート層形成用コーティング剤(B-2)を得た。
コーティング剤(B-2)による塗膜のマルテンス硬度は明細書記載の方法で求めたところ180N/mmであった。
【0210】
(製造例25)ハードコート層形成用コーティング剤(B-3)
エポキシシランオリゴマー(注9)(c-2)62.5部(有効成分として50部)、スノーテックスO-40(注6)62.5部(有効成分として25部)、スノーテックスO(注10)125部(有効成分として25部)、KBM-403(注7)15部(有効成分として15部)、硬化触媒としてリン酸2部、希釈溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール40部を混合し、ディスパーで均一になるまで撹拌することによりハードコート層形成用コーティング剤(B-3)を得た。
コーティング剤(B-3)による塗膜のマルテンス硬度は明細書記載の方法で求めたところ185N/mmであった。
【0211】
前記製造例23~25において、注は下記を示す。
【0212】
(注5)エポキシシランオリゴマー(c-1):温度計、撹拌機、還流冷却器及び窒素導入管を取り付けたセパラブルフラスコに、KBM-403(注7)236部(1.0mol)とメタノール32部(1.0mol)を入れ、室温下混合撹拌した。次に撹拌しながら0.05N塩酸水10部を30分かけて滴下し、さらに30分間撹拌した。その後、マントルヒーターを用いて75℃まで昇温させ、副生したメタノールも同時に除去しながら2時間還流させた。室温まで冷却後、ろ過を行い、エポキシシランオリゴマー(c-1)を得た。
生成物(c-1)について120℃で1時間加熱した結果、加熱残分(有効成分)は80%であった。また、重量平均分子量は1,100、エポキシ当量は220g/eqであった。
【0213】
(注6)スノーテックスO-40:商品名、日産化学工業株式会社、平均粒子径23nmの水分散型酸性コロイダルシリカ、pH=3、有効成分40質量%。
【0214】
(注7)KBM-403:商品名、信越化学工業社製、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、分子量236.34。
(注8)KBM-13:商品名、信越化学工業製、メチルトリメトキシシラン。
(注9)エポキシシランオリゴマー(c-2):温度計、撹拌機、還流冷却器及び窒素導入管を取り付けたセパラブルフラスコに、KBM-403(注7)236部(1.0mol)とメタノール32部(1.0mol)入れ、室温下混合撹拌した。次に撹拌しながら0.05N塩酸水3部を30分かけて滴下し、さらに30分間撹拌した。その後、マントルヒーターを用いて75℃まで昇温させ、副生したメタノールも同時に除去しながら2時間還流させた。室温まで冷却後、ろ過を行い、エポキシシランオリゴマー(c-2)を得た。
生成物(c-2)について120℃で1時間加熱した結果、加熱残分(有効成分)は80%であった。また、重量平均分子量は500、エポキシ当量は167g/eqであった。
(注10)スノーテックスO:商品名、日産化学工業株式会社、スノーテックスは登録商標、平均一次粒子径12.5nmの水分散型酸性コロイダルシリカ、有効成分20質量%。
【0215】
(実施例1~9、15~19)
305×305×2mmのコンポジションビニル床タイル(商品名「PタイルP-60」、タジマ製、塩化ビニル樹脂系床材)上に、表4に記載の各常温硬化型ウレタンプライマー組成物を、床用モップを用いて塗装し、気温23℃、湿度50%RHの条件下で、2時間乾燥させ各プライマー硬化塗膜層(I)を形成した。乾燥膜厚は表4に示すとおりとした。このときの次工程の重ね塗りまでの間隔は乾燥時間の2時間とした。
この上にハードコート層形成用コーティング剤(B-1)または(B-3)を、床用モップを用いて乾燥膜厚15μmになるように1回塗装し、気温23℃、湿度50%RHの条件下で4日間乾燥させハードコート層(II)を形成して各塗装タイルを得た。
【0216】
(実施例10)
305×305×2mmのコンポジションビニル床タイル(商品名「PタイルP-60」、タジマ製、塩化ビニル樹脂系床材)上に、表4に記載の各常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A-1)を、床用モップを用いて塗装し、気温23℃、湿度50%RHの条件下で、24時間乾燥させプライマー硬化塗膜層(I)を形成した。乾燥膜厚は表4に示すとおりとした。このときの次工程の重ね塗りまでの間隔は乾燥時間の24時間とした。
【0217】
この上にハードコート層形成用コーティング剤(B-1)を、床用モップを用いて乾燥膜厚25μmになるように1回塗装し、気温23℃、湿度50%RHの条件下で4日間乾燥させハードコート層(II)を形成して塗装タイルを得た。
【0218】
(実施例11)
305×305×2mmのコンポジションビニル床タイル(商品名「PタイルP-60」、タジマ製、塩化ビニル樹脂系床材)上に、表4に記載の各常温硬化型ウレタンプライマー組成物を、床用モップを用いて塗装し、気温23℃、湿度50%RHの条件下で、2時間乾燥させ各プライマー硬化塗膜層(I)を形成した。乾燥膜厚は表4に示すとおりとした。このときの次工程の重ね塗りまでの間隔は乾燥時間の2時間とした。
【0219】
この上に表4のハードコート層形成用コーティング剤1回目の欄に記載のものを、床用モップを用いて乾燥膜厚15μmになるように1回塗装し、気温23℃、湿度50%RHの条件下で18時間静置、その後さらにその上にハードコート層形成用コーティング剤2回目の欄に記載のものを、床用モップを用いて乾燥膜厚15μmになるように1回塗装し、同条件下で4日間乾燥させ、プライマー硬化塗膜層(I)上に2層のハードコート層(II)が形成された塗装タイルを得た。2層目のハードコート剤を塗布するまでの、重ね塗りまでの間隔は乾燥時間の18時間である。
【0220】
(実施例12~14)
実施例11において、常温硬化型プライマー組成物、ハードコート層形成用コーティング剤及び重ね塗間隔(時間:h)を表4に示すものとする以外は実施例1と同様の工程で行い、各プライマー層(I)上に、2層のハードコート層(II)が形成された塗装タイルを得た。
【0221】
(比較例1~3)
実施例1において、常温硬化型プライマー組成物、ハードコート層形成用コーティング剤及び重ね塗間隔(時間:h)を表4に示すものとする以外は実施例1と同様の工程で行い、プライマー層(I)上に、1層のハードコート層(II)が形成された塗装タイルを得た。
【0222】
(比較例4)
305×305×2mmのコンポジションビニル床タイル(商品名「PタイルP-60」、タジマ製、塩化ビニル樹脂系床材)上に、常温硬化型ウレタンプライマー組成物を、塗装せず、ハードコート層形成用コーティング剤(B-1)を、床用モップを用いて乾燥膜厚15μmになるように1回塗装し、気温23℃、湿度50%RHの条件下で4日間乾燥させハードコート層を形成しプライマー硬化塗膜層(I)を有さない塗装タイルを得た。
【0223】
(比較例5)
305×305×2mmのコンポジションビニル床タイル(商品名「PタイルP-60」、タジマ製、塩化ビニル樹脂系床材)上に、常温硬化型ウレタンプライマー組成物(A-2)を、床用モップを用いて塗装して、気温23℃、湿度50%RHの条件下で、24時間乾燥させ各プライマー硬化塗膜層(I)を形成し、ハードコート層(II)を有さない塗装タイルを得た。
【0224】
(比較例6)
305×305×2mmのコンポジションビニル床タイル(商品名「PタイルP-60」、タジマ製、塩化ビニル樹脂系床材)上に、常温硬化型ウレタンプライマー組成物を、塗装せず、ハードコート層形成用コーティング剤(B-2)を、床用モップを用いて乾燥膜厚15μmになるように1回塗装し、気温23℃、湿度50%RHの条件下で18時間静置、その後さらにその上にハードコート層形成用コーティング剤(B-2)を、床用モップを用いて乾燥膜厚15μmになるように1回塗装し、同条件下で4日間乾燥させ、プライマー硬化塗膜層(I)上に2層のハードコート層(II)が形成された塗装タイルを得た。2層目のハードコート剤を塗布するまでの、重ね塗りまでの間隔は乾燥時間の18時間である。
【0225】
上記のようにして得られた各塗装タイルを試験板とし、各種試験に供した。
【0226】
【表4】
【0227】
<性能評価>
各試験項目の試験方法及び評価基準は下記の通りである。
(試験項目4.)仕上がり性〔塗膜外観(目視)〕:
各試験板について、塗膜外観を目視にて確認し、下記基準にて評価した。
◎:平滑であり、均一な光沢感が認められる
○:平滑であるが、ごくわずかな艶ムラが認められる
△:ユズ肌や艶ムラが少し認められる
×:顕著なユズ肌や艶ムラが認められる。
【0228】
(試験項目5.)密着性:
各試験板上の塗膜を素地に達するようにクロスカットし、その塗面に粘着セロハンテープを貼り付け強く剥離した後の塗膜面を目視にて確認し、タイルからの剥離に関して下記基準にて評価した。なお、塗膜が剥離した際の界面は、すべて、塩化ビニル樹脂素材/プライマー層間であった。
◎:剥離が認められない
○:クロスカットの線上に、ごくわずかに剥離が認められる
△:クロスカットの周辺もあわせて部分的に剥離が認められる
×:クロスカットの周辺もあわせて全面に剥離が認められる。
【0229】
(試験項目6.)耐ワレ性:
各試験板の塗膜外観を、下記基準にて評価した。
◎:塗膜全体にワレの発生が全く認められない
○:塗膜の一部分に微細なワレの発生が認められる
△:塗膜全体に微細なワレの発生が認められる
×:塗膜全体に著しいワレの発生が認められる。
【0230】
(試験項目7.)耐擦り傷性:
得られた各試験板を気温23℃、湿度50%RHの条件下、4日放置してスチールウール#0000を用い、塗膜表面を300g/cm荷重で100mmの移動距離で10往復させ、擦り傷を付けたときの塗膜外観を目視で評価した。
◎:傷が認められない
○:傷がわずかに認められるが、傷の本数は10本未満である
△:傷が認められ、傷の本数が10本以上ある
×:著しい傷がはっきりと認められる。
【0231】
(試験項目8.)耐水性:
得られた各試験板を気温23℃、湿度50%RHの条件下、4日放置した後、20℃の水に24時間浸漬した後、水洗いした試験板の外観を下記基準にて評価した。
◎:試験前の塗膜に対して、全く外観の変化のないもの
○:試験前の塗膜に対して、白化が見られるが、製品とした時に問題ないレベル
△:試験前の塗膜に対して、若干白化が見られる
×:試験前の塗膜に対して、著しく白化が見られる。
【0232】
本出願を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2017年10月10日出願の日本特許出願(特願2017-196596)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。