(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】可撓性プリント回路のための押出伸張性基材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 25/08 20060101AFI20220419BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220419BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
B32B25/08
B32B27/36
H05K1/03 610M
H05K1/03 630D
(21)【出願番号】P 2019569347
(86)(22)【出願日】2018-06-01
(86)【国際出願番号】 US2018035535
(87)【国際公開番号】W WO2018231544
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-05-28
(32)【優先日】2017-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594055158
【氏名又は名称】イーストマン ケミカル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ウェイン ケン シー
(72)【発明者】
【氏名】キンバリー カーメニア キャリコ
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-43768(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0210768(US,A1)
【文献】特表2007-517926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント回路のための基材としての使用に適合した多層フィルムであって、前記フィルムは、
(a)98~100モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の残基を含む二酸成分、及び、
(i)75~96モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基、及び、
(ii)4~25モル%の分子量500~1100のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールの残基を含むジオール成分、及び、
前記二酸成分又はジオール成分のモル%に基づいて0.1~2モル%の、ヒドロキシル及びカルボキシルから選ばれる少なくとも3つの官能基を有する分岐剤、
を含むポリエステルエラストマーを含む少なくとも1つの層、
(b)98~100モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の残基を含む二酸成分、及び、95~100モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基を含むジオール成分を含む、脂環式化合物を含む少なくとも1つの層、
を含む、多層フィルム。
【請求項2】
ポリエステルエラストマーを含む少なくとも1つの層と脂環式化合物を含む少なくとも1つの層との間に少なくとも1つの接着剤層を含む、請求項1記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記脂環式化合物成分はポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレン-1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート)である、請求項1記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記基材の表面上にプリントされた導電性インクをさらに含む、請求項1記載の多層フィルム。
【請求項5】
ポリエステルエラストマー/脂環式化合物、ポリエステルエラストマー/脂環式化合物/ポリエステルエラストマー、又は、脂環式化合物/ポリエステルエラストマー/脂環式化合物を含む層構成を有する、請求項1記載の多層フィルム。
【請求項6】
各層は少なくとも1つの方向に配向されている、請求項1記載の多層フィルム。
【請求項7】
少なくとも1つのポリエステルエラストマー層及び少なくとも1つの脂環式化合物層を提供すること、及び、前記少なくとも1つのポリエステルエラストマー層を前記少なくとも1つの脂環式化合物層と接続させて多層フィルムを作成するための手段を提供しそして実行する、請求項1記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記多層フィルムの少なくとも1つの層上に導電性インクをプリントすることをさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのポリエステルエラストマー層を前記少なくとも1つの脂環式化合物層と接続させて多層フィルムを作成するための手段は共押出プロセスを含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのポリエステルエラストマー層を前記少なくとも1つの脂環式化合物層と接続して多層フィルムを作成するための手段はラミネート化プロセスを含む、請求項7記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのポリエステルエラストマー層を前記少なくとも1つの脂環式化合物層と接続させて多層フィルムを作成するための手段は押出コーティングプロセスを含む、請求項7記載の方法。
【請求項12】
(a)(i)98~100モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の残基を含む二酸成分、及び、(i)75~96モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基及び(ii)4~25モル%の分子量500~1100のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールの残基を含むジオール成分、及び、前記二酸成分又はジオール成分のモル%に基づいて0.1~2モル%の、ヒドロキシル及びカルボキシルから選ばれる少なくとも3つの官能基を有する分岐剤を含むポリエステルエラストマー成分を含む少なくとも1つのフィルム層、
(ii)98~100モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の残基を含む二酸成分及び95~100モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基を含むジオール成分を含む、脂環式化合物成分を含む少なくとも1つのフィルム層、及び、
(iii)基材の少なくとも1つのフィルム層の少なくとも1つの表面上にプリントされた導電性インク、
を含む、多層フィルムを含む基材を含む、伸長性プリント回路フィルム。
【請求項13】
前記脂環式化合物成分はポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレン-1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート)である、請求項12記載の伸長性プリント回路フィルム。
【請求項14】
少なくとも1つのフィルム層は少なくとも1つの方向に配向されている、請求項12記載の伸長性プリント回路フィルム。
【請求項15】
請求項12記載の伸長性プリント回路フィルムを含む製造品。
【請求項16】
ウェアラブルデバイス、曲面ディスプレイ、折り畳み性電子デバイス、インモールドエレクトロニクス、E-テキスタイル、伸長性薄膜トランジスタ又は透明導電膜を含む、請求項15記載の製造品。
【請求項17】
前記基材は複数のミクロ層を含む、請求項12記載の伸長性プリント回路フィルム。
【請求項18】
ポリエステルエラストマー成分を含む少なくとも1つのフィルム層を提供すること、脂環式化合物成分を含む少なくとも1つのフィルム層を提供すること、前記ポリエステルエラストマー成分を含む少なくとも1つのフィルム層と、前記脂環式化合物成分を含む少なくとも1つのフィルム層とを接続するための手段を実行して多層フィルムを作成すること、前記基材の少なくとも1つのフィルム層の少なくとも1つの表面上に導電性インクをプリントすること、及び、前記少なくとも1つのフィルム層上の前記インクを硬化させることを含む、請求項12記載の伸長性プリント回路フィルムの製造方法。
【請求項19】
前記伸長性プリント回路フィルムを製造品に取り込むことをさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記製造品は、ウェアラブルデバイス、曲面ディスプレイ、折り畳み性電子デバイス、インモールドエレクトロニクス、E-テキスタイル、伸長性薄膜トランジスタ又は透明導電膜を含む、請求項19記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
従来から、剛性エレクトロニクスは、可撓性も伸長性もないユビキタスプリント回路基材(PCB)上に構築されている。可撓性エレクトロニクスは、典型的に、可撓性プリント回路(FPC)と呼ばれ、可撓性であるが伸長性のないポリイミド基材上にはんだ付けされている。一方、伸長性エレクトロニクスは、プリント構成要素及び/又は可撓性かつ伸長性である伸張性基材上の蛇行相互接続を使用した載置剛性構成要素である。ソフトロボット工学、エネルギー発生及びストレージデバイス、ウェアラブルセンサー、アンテナ、透明導電性電極、ならびに、伸長性バックプレーン、タッチセンサー及び相互接続を備えた折り畳み可能/曲げ可能なOLEDディスプレイなどの伸長性エレクトロニクスの潜在的な用途が登場している。
【0002】
現在の伸長性基材は、PDMS(ポリジメチルシロキサン)及びTPU(熱可塑性ウレタン)である。TPUには、加水分解性、安定性、耐候性及び洗浄性の問題がある。PDMSは良好な生体適合性、熱安定性を有するが、濡れ性、接着性及び表面処理性が低いために、プリントするのが困難である。エラストマー基材上にデバイスを製造するための典型的な技術は、堆積とそれに続くリソグラフィパターン化、パターン化されたシャドウマスクを介した堆積、プリントによるデバイスの転写及び加法プリントを伴う。フォトリソグラフィ及びプリントインク中の溶媒はPDMSを膨張させ、デバイスの剥離を引き起こすことがある。さらに、約300ppm/℃という高いPDMSのCTE(熱膨張係数)のために、その寸法は、熱処理における温度サイクル中に顕著に変化しうる。
【0003】
したがって、優れた機械的特性、印刷性及びインク硬化安定性、可撓性及び伸長性、ならびに、電子性能を同時に達成するプリント回路のための基材として使用するのに適した押出又は共押出多層フィルムの必要性が残っている。本発明は、部分的に、二成分ブレンドを使用して基材の弾性率を調整することによりこれを達成する。
【発明の概要】
【0004】
発明の概要
本発明の実施形態であるプリント回路のための基材として使用するのに適合した押出フィルム。この押出フィルムは、(a)98~100モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の残基を有する二酸成分、(i)75~96モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基及び(ii)4~25モル%の分子量500~1100のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールの残基を有するジオール成分、及び、前記二酸成分又はジオール成分のモル%に基づいて0.1~2モル%の、ヒドロキシル及びカルボキシルから選ばれる少なくとも3つの官能基を有する分岐剤を有するポリエステルエラストマー成分、及び、(b)98~100モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の残基を有する二酸成分、及び、95~100モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基を含むジオール成分を有する脂環式ポリマー成分を含む。脂環式化合物成分は、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレン-1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート)であることができる。押出フィルムは、基材の表面上にプリントされた導電性インクを含むことができ、そして該フィルムは少なくとも一方向に配向されていることができる。
【0005】
別の実施形態において、押出フィルムの製造方法は提供される。この方法は、ポリエステルエラストマー成分を提供すること、脂環式化合物成分を提供すること、ポリエステルエラストマー成分と脂環式化合物成分を組み合わせること、及び、該組み合わせを押出して押出フィルムを作成することを含む。この方法は、押出フィルムの基材上に導電性インクをプリントすることをさらに含むことができる。
【0006】
別の実施形態において、伸長性プリント回路フィルムは提供される。基材は、98~100モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の残基を有する二酸成分、(i)75~96モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基及び(ii)4~25モル%の分子量500~1100のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールの残基を有するジオール成分、及び、前記二酸成分又はジオール成分のモル%に基づいて0.1~2モル%の、ヒドロキシル及びカルボキシルから選ばれる少なくとも3つの官能基を有する分岐剤を含むポリエステルエラストマー成分を含むブレンドから作られたフィルムを含む。それはまた、98~100モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の残基を有する二酸成分、及び、95~100モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基を含むジオール成分を含む脂環式化合物成分を含む。また、導電性インクを基材の表面上にプリントすることができる。脂環式化合物成分はポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレン-1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート)であることができ、フィルムは一軸又は二軸配向されていることができる。製造品は化合物伸長性プリント回路フィルムを含むことができる。これらとしては、ウェアラブルデバイス、曲面ディスプレイ又は折り畳み性電子デバイスが挙げられる。
【0007】
別の実施形態において、伸長性プリント回路の製造方法は提供される。この方法は、ポリエステルエラストマー成分を提供すること、脂環式化合物成分を提供すること、前記ポリエステルエラストマー成分及び脂環式化合物成分を組み合わせること、該組み合わせを押出して押出フィルムを作成すること、該基材上に導電性インクをプリントすること、及び、及び、該基材上の該インクを硬化させることを含む。この方法は、伸長性プリント回路フィルムを製造品にさらに組み込むことができる。代表的な製造品としては、ウェアラブルデバイス、曲面ディスプレイ又は折り畳み性電子デバイスが挙げられる。
【0008】
本発明のさらに他の実施形態において、多層フィルムは提供される。1つの実施形態において、プリント回路のための基材としての使用に適合した多層フィルムは提供される。フィルムは、98~100モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の残基を有する二酸成分、(i)75~96モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基及び(ii)4~25モル%の分子量500~1100のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールの残基を含むジオール成分、及び、前記二酸成分又はジオール成分のモル%に基づいて0.1~2モル%の、ヒドロキシル及びカルボキシルから選ばれる少なくとも3つの官能基を有する分岐剤を含むポリエステルエラストマーを含む少なくとも1つの層を含む。そのフィルムはまた、98~100モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の残基を含む二酸成分、及び、95~100モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基を含むジオール成分を含む脂環式化合物を含む少なくとも1つの層を含む。多層フィルムは、ポリエステルエラストマーを含む少なくとも1つの層と、脂環式化合物を含む少なくとも1つの層との間に少なくとも1つの接着剤層を含むことができる。脂環式化合物成分は、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレン-1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート)であることができる。さらに、導電性インクは基材の表面上にプリントされうる。フィルムは、ポリエステルエラストマー/脂環式化合物、ポリエステルエラストマー/脂環式化合物/ポリエステルエラストマー、又は、脂環式化合物/ポリエステルエラストマー/脂環式化合物を含む様々な層構成を有することができ、各層は少なくとも一方向に配向されていることができる。また、フィルムが数百又はさらには数千もの異なる層を有することができる様々なミクロ層構成を有することもできる。
【0009】
別の実施形態において、多層フィルムの製造方法は提供される。この方法は、少なくとも1つのポリエステルエラストマー層及び少なくとも1つの脂環式化合物層を提供すること、前記少なくとも1つのポリエステルエラストマー層を前記少なくとも1つの脂環式化合物層と接続して多層フィルムを作成することを含む。この方法はまた、多層フィルムの少なくとも1つの層上に導電性インクをプリントすることを含むことができる。さらに、この方法は、共押出、ラミネート化及び/又は押出コーティングを含む、少なくとも1つのポリエステルエラストマー層を少なくとも1つの脂環式化合物層と接続するための様々な手段を含むことができる。
【0010】
別の実施形態において、伸長性プリント回路フィルムは提供される。基材は、多層フィルムを有する基材を含む多層フィルムを含む。多層フィルムは、98~100モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の残基を有する二酸成分、(i)75~96モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基及び(ii)4~25モル%の分子量500~1100のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールの残基を含むジオール成分、及び、前記二酸成分又はジオール成分のモル%に基づいて0.1~2モル%の、ヒドロキシル及びカルボキシルから選ばれる少なくとも3つの官能基を有する分岐剤を含むポリエステルエラストマー成分を有する少なくとも1つのフィルム層を含む。それはまた、98~100モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の残基を含む二酸成分、及び、95~100モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基を含むジオール成分を含む脂環式化合物成分を含む少なくとも1つのフィルム層を含む。それはまた、基材の少なくとも1つのフィルム層の少なくとも1つの表面上にプリントされた導電性インクを含む。脂環式化合物成分はポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレン-1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート)であることができる。前記少なくとも1つのフィルム層は少なくとも1つの方向に配向されている。さらに、フィルムはウェアラブルデバイス、曲面ディスプレイ又は折り畳み性電子デバイスを含む製造品に含まれていることができる。
【0011】
別の実施形態において、伸長性プリント回路フィルムの製造方法は提供される。この方法は、ポリエステルエラストマー成分を有する少なくとも1つのフィルム層を提供すること、脂環式化合物成分を有する少なくとも1つのフィルム層を提供すること、前記ポリエステルエラストマー成分を含む少なくとも1つのフィルム層と、前記脂環式化合物成分を含む少なくとも1つのフィルム層とを接続する手段を実行して、多層フィルムを作成すること、前記基材の少なくとも1つのフィルム層の少なくとも1つの表面上に導電性インクをプリントしそして硬化させることを含む。この方法は、伸長性プリント回路フィルムを製造品に組み込むことをさらに含む。製造品は、ウェアラブルデバイス、曲面ディスプレイ又は折り畳み性電子デバイスであることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面の簡単な説明
【
図1】
図1は曲線近似による脂肪族ポリエステルの関数としての押出ブレンドのヤング率を示す。
【0013】
【
図2】
図2は曲線近似による脂肪族ポリエステルの関数としての二軸配向ブレンドのヤング率を示す。
【0014】
【
図3】
図3は共押出構造の引張弾性率vs脂環式化合物層の総厚比を示す。
【0015】
【
図4】
図4は例9の一定の伸びでの最大1000サイクルの永久ひずみを示す。
【0016】
【
図5】
図5は例20の一定の伸びでの最大1000サイクルの永久ひずみを示す。
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
米国特許第7,297,755号明細書(参照によりその全体が本明細書に取り込まれる)によって教示されるように、ポリエステルエラストマー及び脂肪族ポリエステルをブレンドすることにより、広範囲の弾性率を有するポリマー基材を達成することができる。弾性率は、押出フィルムでは約200MPa~約900MPa、二軸配向フィルムでは約300MPa~約1.3GPaで変化することができる。基材の所望の弾性率が規定されている場合に、押出フィルム又は二軸配向フィルムのそれぞれの経験的モデルを使用して、目標の弾性率を達成することが可能である。二軸/一軸配向フィルムは、押出対応品に比べてダウンゲージング、アニーリング及び光学的利点を提供する。すべてのブレンドは高い可視光線透過率及び低いヘイズで混和性がある。その低屈折率は、低虹色ディスプレイ用のコーティング、接着剤及びガラスとよく一致する。伸び率の高い基材は、典型的に、繰り返し伸長性が要求されるウェアラブルデバイス、曲面ディスプレイ及び折り畳み性電子機器に適している。アニーリングされた基材により、導電性インクの高温硬化又は透明導電性コーティングのアニーリングが可能になる。
【0019】
プリント回路フィルムとして使用するためのポリマー基材の優れた機械的特性と電子性能の両方が、ポリエステルエラストマー及び/又は脂肪族ポリマーの組み合わせを基材に取り込んだ押出及び多層フィルムを使用し、アニールされた基材上に導電性インクをプリントしそして硬化させることにより達成されうることが発見された。ウェアラブルデバイス、曲面ディスプレイ、折り畳み性電子デバイス、インモールドエレクトロニクス、E-テキスタイル、伸長性薄膜トランジスタ及び透明導電膜などの製造品はそのプリント回路フィルムを含むことができる。
【0020】
より具体的には、特定のコポリエステル、特に脂環式ポリエステル、及び/又は、これらのポリエステルと、1つ以上のハードセグメント及び1つ以上のポリエーテル又はポリエステルエーテルソフトセグメントを含む特定のポリエステルエラストマーとの組成物が、プリント回路のための基材中に使用されるフィルムであって、例えば、強度、靭性、柔らかい感触、耐薬品性、耐熱性及び耐紫外線性などの特性の組み合わせを有するフィルムの製造に有用であることが判明した。
【0021】
特に明記しない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表すすべての数字は、「約」という用語によってすべての場合に修飾されていると理解されるべきである。したがって、逆に指示がないかぎり、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に示される数値パラメータは、本発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて変わり得る近似値である。少なくとも、報告された有効数字の数を考慮し、通常の端数処理技術を適用して、各数値パラメータを少なくとも解釈する必要がある。さらに、本開示及び特許請求の範囲に記載されている範囲は、端点だけでなく範囲全体を具体的に含むことが意図されている。例えば、0~10の範囲は、例えば、1、2、3、4など0~10のすべての整数、例えば、1.5、2.3、4.57、6.1113などの0~10のすべての小数、及び、0と10の端点を開示することが意図されている。また、例えば「C1~C5炭化水素」などの化学置換基に関連する範囲は、C1及びC5炭化水素ならびにC2、C3及びC4炭化水素を具体的に含みそして開示することが意図されている。
【0022】
本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示される数値は可能な限り正確に報告されている。しかしながら、数値は、それぞれの試験測定値で見出される標準偏差から必然的に生じる特定の誤差が生来的に含まれている。
【0023】
本明細書で使用されるときに、「ポリエステル」という用語は、「コポリエステル」を含むことを意図しており、1つ以上の二官能性カルボン酸と1つ以上の二官能性ヒドロキシル化合物の重縮合により調製される合成ポリマーを意味するものと理解される。本明細書中で使用されるときに、「脂環式ポリエステル」という用語は、モル過剰の脂環式ジカルボン酸及び/又は脂環式ジオールの残基を含むポリエステルを意味する。本発明のジオール及びジカルボン酸に関して本明細書で使用される「脂環式」とは、本質的に飽和又はパラフィン、不飽和、すなわち、非芳香族炭素-炭素二重結合、又は、アセチレン、すなわち炭素-炭素三重結合を含む構成炭素の環状配列を骨格として含む構造を指す。典型的には、二官能性カルボン酸はジカルボン酸であり、二官能性ヒドロキシル化合物は、例えばグリコール及びジオールなどの二価アルコールである。
【0024】
本発明において、二官能性カルボン酸は、典型的には、例えば、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸であり、二官能性ヒドロキシル化合物は、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオールであることができる。本明細書で使用されるときに、「残基」という用語は、対応するモノマーが関与する重縮合反応によりポリマーに取り込まれる任意の有機構造を意味する。本明細書で使用されるときに、「繰り返し単位」という用語は、カルボニルオキシ基を介して結合したジカルボン酸残基とジオール残基とを有する有機構造を意味する。したがって、ジカルボン酸残基は、ジカルボン酸モノマー又はその関連酸ハロゲン化物、エステル、塩、無水物又はそれらの混合物に由来しうる。したがって、本明細書で使用されるときに、ジカルボン酸という用語は、ジカルボン酸及びジカルボン酸の任意の誘導体を含むことが意図され、その誘導体としては、関連する酸ハロゲン化物、エステル、半エステル、塩、半塩、無水物、混合無水物又はそれらの混合物が挙げられ、高分子量ポリエステルを作るためのジオールとの重縮合法に有用である。
【0025】
本発明で使用される脂環式ポリエステルは、典型的には、ジカルボン酸及びジオールから調製され、それらは実質的に等しい割合で反応し、それらの対応する残基としてポリエステルポリマー中に組み込まれる。したがって、本発明の脂環式ポリエステルは、繰り返し単位の総モルが100モル%に等しくなるように、実質的に等しいモル比率の酸残基(100モル%)及びジオール残基(100モル%)を含む。したがって、本開示で提供されるモルパーセントは、酸残基の総モル、ジオール残基の総モル、又は、繰り返し単位の総モルに基づくことができる。例えば、総酸残基に基づいて30モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(1,4-CHDA)を含むポリエステルは、ポリエステルが合計100モル%の酸残基のうちの30モル%の1,4-CHDA残基を含むことを意味する。したがって、酸残基100モルごとに30モルの1,4-CHDA残基が存在する。別の例において、総ジオール残基に基づいて30モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノール(1,4-CHDM)を含むポリエステルは、ポリエステルが合計100モル%のジオール残基のうちに30モル%の1,4-CHDM残基を含むことを意味する。したがって、ジオール残基100モルごとに30モルの1,4-CHDM残基が存在する。
【0026】
脂環式ポリエステルは、二酸残基の総量に基づいて、約98~約100モルパーセント(本明細書では「モル%」と略す)の、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4-シクロヘキサンジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1つの二酸の残基を含む。例えば、二酸は1,4-シクロヘキサンジカルボン酸であることができる。1,3-及び1,4-シクロヘキサンジカルボン酸は、それらの純粋なシス又はトランス異性体として、又は、シス及びトランス異性体の混合物として使用されうる。より高いガラス転移温度を提供するには、高レベルのトランス異性体(トランスが60モル%を超える)を有する脂環式酸は、一般に、好ましい。
【0027】
本発明の脂環式ポリエステルは、約70~約100モル%の、1,3-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール及び1,4-シクロヘキサン-ジメタノール(本明細書では「CHDM」と略す)から選ばれる少なくとも1つの残基を含むことができるジオール残基も含む。本明細書で使用されるときに、「ジオール」という用語は、「グリコール」という用語と同義であり、任意の二価アルコールを意味する。二酸と同様に、グリコールのシス異性体、トランス異性体、及び、シス異性体とトランス異性体の混合物は、本発明の範囲内に含まれることが意図されている。例えば、CHDMは、純粋なシス異性体又はトランス異性体として、又は、シス、トランス異性体の混合物として使用できる。二酸について上述したように、高レベルのトランス異性体が一般的に好ましい。脂環式ジオールに加えて、脂環式ポリエステルは、脂肪族ジオールも含むことができ、より少ない量で含むことができる。例えば、脂環式ポリエステルは、ジオール残基の総モルに基づいて、0~約30モル%の、2~約16個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖脂肪族ジオールから選ばれる少なくとも1つのジオールの残基を含むことができる。ジオールの典型的な例としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、2,2,4-トリメチル1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。別の例において、ポリエステルのジオール残基は、総ジオール残基に基づいて約95~約100モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基を含むことができる。さらなる例において、二酸は1,4-シクロヘキサンジカルボン酸であることができ、別の例において、ジオールは1,4-シクロヘキサンジメタノールであることができる。さらに別の例において、脂環式ポリエステルは、ポリ(1,3-シクロヘキシレンジメチレン-1,3-シクロヘキサンジカルボキシレート)、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレン-1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート)又はポリ(2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブチレン-1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート)であることができる。
【0028】
本発明に必須ではないが、脂環式ポリエステルは、ジオール又は二酸残基の総モルに基づいて、2モル%以下の、3つ以上のカルボキシル置換基、ヒドロキシル置換基、イオン形成性基又はそれらの組み合わせを有する1つ以上の分岐剤の残基を含むことができ、それにより、溶融強度及び加工性を改善することができる。分岐剤の例としては、限定するわけではないが、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸二無水物、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、クエン酸、酒石酸、3-ヒドロキシグルタル酸などの多官能酸又はグリコールが挙げられる。イオン形成性基の例としては、ソジオスルホイソフタル酸及びソジオスルホ安息香酸が挙げれられる。一例において、分岐剤残基は、無水トリメリット酸、ピロメリット酸二無水物、グリセロール、ソルビトール、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン又はトリメシン酸の1つ以上の残基を約0.1~約1モルパーセントで含む。分岐剤はポリエステル反応混合物に添加するか、又は、濃縮物の形態のポリエステルとブレンドすることができ、例えば、米国特許第5,654,347号明細書に記載されているとおりである。
【0029】
本発明のポリエステルは、約0.5~約1.5dL/gの固有粘度を有する。本明細書で「I.V.」と略される固有粘度は、フェノール60質量%及びテトラクロロエタン40質量%からなる溶媒50mL当たり0.25グラムのポリマーを使用して25℃で行われる固有粘度測定値を指す。ポリエステル組成物によって示されうるI.V.値の他の例は、約0.6~約1.2dL/g、約0.7~約1.1dL/gである。
【0030】
本明細書で使用されるときに、「ポリエステルエラストマー」という用語は、小さな負荷応力下で容易に変形し、可逆的伸びを示す、すなわち、弾性を示す、約1~500メガパスカル(MPa)の低弾性率を有する任意のポリエステルを意味すると理解される。本明細書で使用されるときに、「可逆的」という用語は、負荷応力が取り除かれた後に、ポリエステルがその元の形状に戻ることを意味する。一般に、これらは、(i)1つ以上のジオール、(ii)1つ以上のジカルボン酸、(iii)1つ以上の長鎖エーテルグリコール、及び、場合により、(iv)1つ以上のラクトン又はポリラクトンからの従来のエステル化/重縮合法によって調製される。例えば、本発明のポリエステルエラストマーは、(i)2~20個の炭素原子を含む置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖脂肪族ジカルボン酸、5~20個の炭素原子を含む置換又は非置換の直鎖又は分岐脂環式ジカルボン酸、及び6~20個の炭素原子を含む置換又は非置換の芳香族ジカルボン酸から選ばれる1つ以上の二酸の残基を含む二酸残基、及び、(ii)2~20個の炭素原子を含む脂肪族ジオール、平均分子量が約400~約12000であるポリ(オキシアルキレン)-グリコール及びコポリ-(オキシアルキレン)グリコール、5~20個の炭素原子を含む脂環式ジオール及び6~20個の炭素原子を含む芳香族ジオールから選ばれる1つ以上の置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖ジオールの残基を含むジオール残基を含むことができる。ポリエステルエラストマーの調製に使用できる代表的なジカルボン酸としては、限定するわけではないが、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ソジオスルホイソフタル酸、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、アゼライン酸、ダイマー酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸及びそれらの混合物が挙げられる。好ましい脂肪族酸としては、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、ダイマー酸、グルタル酸、アゼライン酸、アジピン酸及びそれらの混合物が挙げられる。例えば、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸は、純粋なシス異性体又はトランス異性体として、又は、シス異性体及びトランス異性体の混合物として存在することができる。好ましい芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、フタル酸及びイソフタル酸、ソジオスルホイソフタル酸及び2,6-ナフタレンジカルボン酸、及び、それらの混合物が挙げられる。
【0031】
ポリエステルエラストマーはまた、少なくとも1つのジオールの残基を含むことができる。ジオールの例としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチルプロパンジオール、2,2-ジメチルプロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、デカンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ポリ(エチレンエーテル)グリコール、ポリ(プロピレンエーテル)グリコール及びポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールが挙げられる。例えば、ポリエステルエラストマーは、例えば、平均分子量が約400~約2000のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールなどのポリ(オキシアルキレン)グリコールの残基を含むことができる。必須ではないが、ポリエステルエラストマーは、3つ以上のカルボキシル置換基、ヒドロキシル置換基又はそれらの組み合わせを有する分岐剤の残基を含むことができる。分岐剤の例としては、限定するわけではないが、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸二無水物、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、クエン酸、酒石酸、3-ヒドロキシグルタル酸などの多官能性酸又はグリコールが挙げられる。ポリエステルエラストマー内の分岐剤レベルの例は、二酸又はジオール残基の総モルに基づいて、約0.1~約2モル%、約0.1~約1モル%及び0.5~約1モル%である。
【0032】
さらなる実施形態において、本発明のポリエステルエラストマーは、二酸残基の総モルに基づいて、少なくとも90モル%の、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸及びテレフタル酸から選ばれる少なくとも1つの二酸の残基、及び、総ジオール残基に基づいて約2~約30モル%の、平均分子量が約400~約2000のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールを、及び、総ジオール残基に基づいて約98~約70モル%の、1,4-シクロヘキサンジメタノール及び1,4-ブタンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1つのジオールの残基、及び、総二酸残基に基づいて約0.1~約2モル%の、トリメリット酸、無水トリメリット酸及びピロメリット酸二無水物からなる群より選ばれる少なくとも1つの分岐剤の残基を含むことができる。さらに別の例において、ポリエステルエラストマーは、二酸残基の総モルに基づいて少なくとも95モル%の、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の残基、及び、総ジオール残基に基づいて約98~約70モル%の、1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基を含むことができる。本発明のポリエステル組成物に使用できる市販のポリエステルエラストマーの例としては、ECDEL(登録商標)ポリエステルエラストマー(Eastman Chemical Companyから入手可能)及びHYTREL(登録商標)ポリエステルエラストマー(DuPont Companyから入手可能)が挙げられる。幾つかの例において、HYTREL(登録商標)及びECDEL(登録商標)ポリエステルエラストマーと脂環式ポリエステルの混合物を使用することが望ましい場合がある。
【0033】
さらに、ポリエステルエラストマーは、1つ以上のラクトン又はポリラクトンをその中に取り込むことができる。ここで好適なラクトンは広く市販されており、例えば、Union Carbide Corporation及びAldrich Chemicalsから市販されている。εカプロラクトンが特に好ましいが、ラクトンがα、β、γ、δ又はε位置でメチル又はエチル基などの低級アルキル基で置換されている置換ラクトンを使用することも可能である。さらに、ポリラクトンを使用することが可能であり、該ポリラクトンは、ホモポリマー及び1つ以上の成分とのそのコポリマーを含み、ならびに、ヒドロキシ末端ポリラクトンをこれらのポリ(エーテルエステル)中のブロック単位として含む。
【0034】
本発明の脂環式ポリエステル及びポリエステルエラストマーは、適切なジカルボン酸、エステル、無水物又は塩、適切なジオール又はジオール混合物、及び、場合により分岐剤から、典型的な重縮合反応条件を使用して容易に調製される。それらは、連続、半連続、及びバッチ操作モードで製造することができ、様々なタイプの反応器を利用することができる。適切な反応器タイプの例としては、限定するわけではないが、攪拌タンク、連続攪拌タンク、スラリー、管状、ワイプフィルム、流下膜又は押出反応器が挙げられる。本明細書で使用されるときに、「連続」という用語は、中断されずに反応体が導入され、生成物が同時に引き出されるプロセスを意味する。「連続的」とは、「バッチ」プロセスとは対照的に、プロセスが操作中に実質的又は完全に連続的であることを意味する。「連続」とは、例えば、スタートアップ、反応器メンテナンス又は計画的なシャットダウン期間などによるプロセスの連続性の通常の中断を禁止することを決して意味しない。本明細書で使用されるときに、「バッチ」プロセスという用語は、すべての反応体を反応器に加え、次いで、所定の反応過程に従って処理するプロセスであって、その間に、材料が反応器にフィード又は除去されないプロセスを意味する。「半連続」という用語は、プロセスの開始時に反応体の一部が投入され、反応が進行するにつれて残りの反応体が連続的にフィードされるプロセスを意味する。あるいは、半連続プロセスは、プロセスの開始時にすべての反応体が添加されるバッチプロセスと同様のプロセスを含むことができるが、ただし、1つ以上の生成物は反応が進行するにつれて連続的に除去される。このプロセスは、経済的理由から、また、高温の反応器内に長時間放置されるとポリエステルの外観が低下する可能性があるときにポリマーの優れた着色をもたらすために、連続プロセスとして有利に操作される。
【0035】
本発明の脂環式ポリエステル及びポリエステルエラストマーは、当業者に公知の手順により調製される。ジオール、ジカルボン酸及び任意成分の分岐剤成分の反応は、従来のポリエステル重合条件を使用して実施することができる。例えば、エステル交換反応によって、すなわち、ジカルボン酸成分のエステル形態から脂環式ポリエステル又はポリエステルエラストマーを調製する場合に、反応プロセスは2つの工程を含むことができる。第一の工程において、ジオール成分と、例えばジメチルテレフタレートなどのジカルボン酸成分を、高温、典型的には約150℃~約250℃で、約0.5~約8時間、約0.0kPaゲージ~約414kPaゲージ(60ポンド/平方インチ、「psig」)の範囲の圧力で反応させる。好ましくは、エステル交換反応の温度は、約1~約4時間、約180℃~約230℃の範囲であり、一方、好ましい圧力は、約103kPaゲージ(15psig)~約276kPaゲージ(40psig)の範囲である。その後に、反応生成物をより高い温度及び減圧下で加熱して、ジオールを除去したポリエステルを形成し、ここで、該ジオールはこれらの条件下で容易に揮発し、系から除去される。この第二の工程又は重縮合工程は、より高い真空及び一般に約230℃~約350℃、好ましくは約250℃~約310℃、最も好ましくは約260℃~約290℃の範囲の温度下で、固有粘度により決定される所望の重合度を有するポリマーが得られるまで、約0.1~約6時間又は好ましくは約0.2~約2時間継続される。重縮合工程は、約53kPa(400トル)~約0.013kPa(0.1トル)の範囲の減圧下で実施することができる。両方の段階で攪拌又は適切な条件を使用して、反応混合物の適切な熱伝達及び表面更新を確保する。両方の段階の反応速度は、例えば、アルコキシチタン化合物、アルカリ金属水酸化物及びアルコラート、有機カルボン酸の塩、アルキルスズ化合物、金属酸化物などの適切な触媒によって増加する。特に酸とエステルの混合モノマーフィードが使用される場合には、米国特許第5,290,631号明細書に記載されているものと同様の三段階の製造手順も使用できる。
【0036】
エステル交換反応によるジオール成分とジカルボン酸成分の反応を確実に完了させるために、ジカルボン酸成分1モルに対して約1.05~約2.5モルのジオール成分を使用することが時々望ましい。しかしながら、ジオール成分とジカルボン酸成分の比は一般に、反応プロセスが起こる反応器の設計によって決定されることを当業者は理解するであろう。
【0037】
直接エステル化による、すなわち、ジカルボン酸成分の酸形態からの脂環式ポリエステル又はポリエステルエラストマーの調製において、ポリエステルは、ジカルボン酸又はジカルボン酸の混合物をジオール成分又はジオール成分の混合物及び場合により分岐剤成分と反応させることにより製造される。反応は、平均重合度が約1.4~約10である低分子量ポリエステル生成物を生成するために、約7kPaゲージ(1psig)~約1379kPaゲージ(200psig)、好ましくは689kPa(100 psig)未満の圧力で行われる。直接エステル化反応中に使用される温度は、典型的には約180℃~約280℃、より好ましくは約220℃~約270℃の範囲である。この低分子量ポリマーは、次いで、重縮合反応により重合される。
【0038】
脂環式ポリエステル及びポリエステルエラストマーは、相溶性ブレンド又は混和性ブレンドとして存在することができ、物品の総質量に基づいて広範囲のブレンド比/質量パーセントで存在することができる。フィルムの所望の特性を得るために、必要に応じて1つを超える脂環式ポリエステル及び/又はポリエステルエラストマーを使用してもよい。例えば、フィルムは、フィルムの総質量に基づいて、約5~約100質量パーセントの1つ以上の脂環式ポリエステル及び0~約95質量パーセントの1つ以上のポリエステルエラストマーを含むことができる。別の例において、フィルムは、約5~約95wt%の1つ以上の脂環式ポリエステル及び約5~約95wt%の1つ以上の脂環式ポリエステルエラストマーを含む。さらに別の例において、フィルムは、約30~約100wt%の脂環式ポリエステル及び0~70wt%のポリエステルエラストマーを含むことができる。脂環式ポリエステル及びポリエステルエラストマーの質量パーセントの他の例としては、限定するわけではないが、約90~約100wt%の脂環式ポリエステル及び0~10wt%のポリエステルエラストマー、及び、約30~約50wt%の脂環式ポリエステル及び50~70wt%のポリエステルエラストマーが挙げられる。組成物の追加の具体例は、約10wt%の脂環式ポリエステル及び約90wt%のポリエステルエラストマー、約20wt%の脂環式ポリエステル及び約80wt%のポリエステルエラストマー、約60wt%の脂環式ポリエステル及び約40wt%のポリエステルエラストマー、及び、約80wt%の脂環式ポリエステル及び約20wt%のポリエステルエラストマー、及び、約90wt%の脂環式ポリエステル及び約10wt%のポリエステルエラストマーである。
【0039】
さらなる例において、本発明のフィルムは、脂環式ポリエステルとして、約5~約95wt%のポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレン1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート)(本明細書では「PCCD」と略す)、及び、約95~約5wt%の、二酸残基の総モルに基づいて少なくとも95モル%の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の残基及び総ジオール残基に基づいて約98~約70モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基を含むポリエステルエラストマーを含む。この実施形態では、例えば、ポリエステルエラストマーは、平均分子量が約400~約2000の、約2~約30モル%のPTMEGと共重合したポリ(1,4シクロヘキシレンジメチレン1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート)(本明細書では「PCCE」として略す)を含むことができる。ポリエステルエラストマーは、総計の二酸残基に基づいて約0.1~約2モル%のトリメリット酸又は無水物の残基を分岐剤として含むことができる。PCCDはガラス転移温度Tgが約65℃であるのに対し、ポリエステルエラストマーは、室温未満(約-3℃)のTgを有する軟質エラストマーである。配向フィルムにおいて、PCCDは弾性率が、典型的な二軸配向PETフィルム(例:Mylar(商標))又は繊維の約半分であるため、より柔らかい感触が得られる。両方のポリマーの構造が類似しているため、混和性ブレンドのTgは脂環式ポリエステルとポリエステルエラストマーとの間でほぼ直線的に低下する。物品の弾性率も、物品の組成とともに変化するであろう。
【0040】
脂環式ポリエステル及びポリエステルエラストマーは化学的及びUV攻撃に対して耐性であり、実質的に線状の脂肪族ポリエステルと比較して追加の剛性及び加工性を付与する。この耐性により、フィルムはまた、脂環式ポリエステル及びポリエステルエラストマーの全組成範囲にわたるUV及び化学的攻撃に対して耐性があるであろう。したがって、ポリエステルエラストマーのレベルは、フィルムに望まれる触覚及び靭性関連最終用途に応じて変更されうる。例えば、高レベル(約30wt%以上)では、ポリエステルエラストマーは室温で可撓性になり、オレフィン又は可塑化PVCに似た感触になるまで、物品を有意に軟化させる。例えば、PCCD及びPCCEの組み合わせは、PCCD単独よりも柔らかくて強靭なフィルムを提供するが、PCCE単独と比較して、より簡単に加工及び配向することができる。配向は、ヒートセットによってさらに熱的に安定化できるフィルムをさらに作成する。これらのポリエステル組成物はひずみ結晶化及びヒートセットされうるので、物品は、可塑化PVC、ポリオレフィンなどの他の従来の柔軟感触樹脂よりもはるかに広い温度範囲にわたって優れた特性を示すことができる。
【0041】
本発明のフィルムは製造品に含まれることができる。例示的な製造品としては、ウェアラブルデバイス、曲面ディスプレイ又は折り畳み性電子デバイスが挙げられる。脂環式ポリエステル、したがってフィルムは生来的に紫外光に対して安定であるが、少量のヒンダードアミン光安定剤(HALS)を脂環式ポリエステル又は組成物に添加して、押出プロセス中に形成されるラジカル、又は、脂環式ポリエステル又はポリエステルエラストマーに見られる不純物によるUV吸収から開始される光分解により形成されるラジカルを掃去することができる。この目的に使用できるHALSの例としては、Ciba Specialty Chemicalsから入手可能なCHIMMASORB(登録商標)119、CHIMMASORB(登録商標)944、TINUVIN(登録商標)770及び他の製品、及び、Cytec Industriesから入手可能なCYASORB(登録商標)UV-3529及びCYASORB(登録商標)UV-3346が挙げられる。HALSは、通常、0.1~1質量パーセントのレベルで使用される。さらに、フィルムを別の表面上の保護層として使用する場合に、幾らかのUV吸収添加剤を組成物に添加することもできる。有効なUV吸収剤の例は、TINUVIN(登録商標)81、CYASORB(登録商標)UV-9、CYASORB(登録商標)UV-24及びCYASORB(登録商標)UV-531などのベンゾフェノン、TINUVIN(登録商標)213、TINUVIN(登録商標)234、TINUVIN(登録商標)320、TINUVIN(登録商標)360、CYASORB(登録商標)UV-2337及びCYASORB(登録商標)UV-5411などのベンゾトリアゾール、及び、TINUVIN(登録商標)1577及びCYASORB(登録商標)1164などのトリアジンが挙げられる。ポリエステルエラストマーについては、ポリエステル残留物が存在する場合に、その分解を遅らせるために、幾つかの場合に、1つ以上の酸化安定剤を使用することができる。この目的に使用できる安定剤の例としては、典型的に約0.1~約1wt%のレベルで使用されるIRGANOX(登録商標)1010及びIRGANOX(登録商標)1076などのヒンダードフェノール安定剤が挙げられる。
【0042】
脂環式ポリエステル及びポリエステルエラストマーは、一軸又は二軸押出機又はバンバリーミキサで乾式混合又は溶融混合することができる。例えば、無配向フィルムは、チルロールキャスティング、カレンダー加工、メルトブロー加工、ダイ押出、射出成形、スピニングなどの従来の方法で調製できる。例えば、ポリエステルエラストマーの高い溶融強度は、フィルムのカレンダー加工をより低い温度で簡単にする。多くのファイバー操作で一般的な反応器からの直接押出も可能である。例えば、フィルムを調製するための典型的な手順において、メルトは、約200~280℃の溶融温度を使用してスロット付きダイから押し出され、次いで、約20℃~約100℃(70℃F~210℃F)でチルロール上にキャストされる。最適なキャスティング温度は、組成物中のエラストマーの量によって変化する。形成されたフィルムは、延伸後のフィルムの最終的な所望の厚さに応じて、約5~300ミルのどこかの公称厚さを有することができる。別の典型的な厚さの範囲は10~100ミルである。
【0043】
本発明のフィルムは、当業者に知られている様々な技術によって、物品の性質に応じて配向することができる。例えば、フィルムは、機械方向配向(「MDO」)ドラフティング、幅出し、ダブルバブル延伸、圧縮強化延伸、圧縮成形、固体押出などの1つ以上の技術を使用して一軸又は二軸延伸できる。延伸は、通常、ポリエステルのガラス転移温度Tg又はその近くで行われる。延伸のための典型的な温度範囲は約Tg+5℃~約Tg+30℃(Tg+10°F~Tg+60°F)である。延伸速度をより速くするために、延伸温度を高くすることができる。
【0044】
フィルムの配向レベルは光学複屈折により定量化できる。複屈折は、材料の3つの主な方向のうちの任意の2つの間の屈折率の差である。これらの方向は、フィルムの機械方向(MD又はx)、横断方向(TD又はy)及び厚さ方向(ND又はz)である。したがって、複屈折には3つの値:(nx-ny)、(ny-nz)及び(nx-nz)があるが、これらのうち2つだけが独立している。複屈折は、事実上、これらの2つの方向の間の配向の差の尺度である。0の複屈折はそれぞれの方向の配向に差がないことを示す。複屈折の3つの値がすべてゼロに近い場合に、物品は配向性がなく、例えばキャストフィルムの場合である。
【0045】
本発明の非配向脂環式ポリマーの公称屈折率は約1.510(波長632nmで)である。高配向フィルムについて、最大複屈折は、典型的に約0.02~約0.03である。これらの脂環式ポリエステルの複屈折のこの低い変動は、面内屈折率がすべての方向で一定である必要がある光学用途で有利であることができる(不要な偏光又は歪みを防ぐため)。例えば、等二軸配向フィルムにおいて、MD及びTD方向における屈折率は同じであるべきであり、一方、厚さ方向の屈折率ははるかに低くなる(相対配向性のため)。しかしながら、プロセスの変動により、MD及びTD屈折率がわずかに変動するであろう。芳香族ポリマーについて、これらの変動は視覚的な歪みを引き起こすのに十分な大きさになることがある。対照的に、本発明のフィルムについて、MD屈折率とTD屈折率の差は常に小さいままであり、それにより歪みが少なくなる。
【0046】
典型的には、本発明の配向フィルムは、約0.005より大きい少なくとも1つの複屈折を有する。別の例において、本発明のフィルムは、約0.01より大きい少なくとも1つの複屈折を有することができる。殆どのフィルム(特に等二軸)については、この最大複屈折は通常(MD-厚さ)又は(TD-厚さ)である。
【0047】
フィルムは、最終用途の要件に応じてヒートセットされうる。ヒートセットは、通常、高温での収縮を防ぐために、物品に熱安定性を付与する。これは、フィルムを約125℃~200℃の温度に加熱しながら拘束することで達成され、例えばフィルム及び繊維産業でよく知られている。通常、応力を軽減するために、ヒートセット中にある程度の緩和が可能である(約5~10%)。ヒートセットオーブン中での滞留時間は、オーブンのサイズ、ライン速度及びその他の要因に応じて、数秒という短時間から数分である。典型的なヒートセット温度は170℃~210℃である。
【0048】
フィルムはまた、当該分野で周知の他の技術を使用して処理されうる。例えば、適切な圧縮ロール又はキャスティングロールを使用して、フィルムにエンボス加工又はその他の方法で刻銘を施すことができる。グラフィックアート用途のレンズ形フィルムは、屋外のUV安定性又は耐薬品性が必要な場合に本発明で特に有用である。低密度のフィルムは、発泡剤(薬品又はガス)又はボイド形成剤を添加することにより製造できる。例えば、フィルムは、ボイド形成剤、すなわち、伸長時にボイドを形成する少量の粒子又は非相溶性ポリマーをブレンドすることにより、ミクロボイド形成されてもよい。このプロセスは「ボイド形成」と呼ばれ、「空洞化」又は「ミクロボイド形成」とも呼ばれることができる。ボイドは、約5~約50質量%の小さな有機又は無機粒子又は「介在物」(当該技術分野では「ボイド形成」剤又は「空洞」剤と呼ばれる)をマトリックスポリマーに取り込み、少なくとも1つの方向に延伸することによりポリマーを配向させることにより得られる。延伸中に、ボイド形成剤の周りに小さな空洞又は「ミクロボイド」が形成される。
【0049】
本発明のフィルムは1つ以上の層を含むことができる。フィルムが複数の層を含む場合に、それは互いに接続した層を有し、当該技術分野で知られているように、共押出、ラミネート化、ミクロ層共押出などの方法によって達成できるであろう。さらに、多層は、例えば、ポリエステルエラストマー/脂環式化合物、ポリエステルエラストマー/脂環式化合物/ポリエステルエラストマー、又は、脂環式化合物/ポリエステルエラストマー/脂環式化合物などの層構成を含む、任意の所望の順序で配置することができる。フィルムは、例えば、複数の層を含むことができ、少なくとも1つの層は1μm以下の厚さを有する。特に、特にミクロ層共押出技術を利用する場合に、フィルムは複数の「ミクロ層」から形成されることができる。このようなフィルムにおいて、特殊なダイ技術を使用して、最大で数百又は数千の2つ以上の交互の異なる層は共押出される。層は、内部反射率を最大化し、フィルムの真珠光沢で虹色の外観を向上させるために、有意に異なる屈折率を達成することを含む、様々な理由で選ぶことができる。
【0050】
単層であろうと又は多層であろうと、本発明のフィルムは、基材上にプリントされた導電性インクを含む。適切なインクとしては、Ag、カーボン、Cu、CNT、グラフェン、PEDOT、AgNWなどが挙げられる。インクをプリントする適切な方法としては、スクリーン印刷、インクジェット、グラビアオフセット、フォトパターニング、ハイブリッド、3D印刷などが挙げられる。
【実施例】
【0051】
例
以下の実施例において、ポリマーブレンドはポリエステルエラストマー(A)と脂肪族ポリエステル(B)から構成されている。ポリマー(B)のブレンド比は0~100wt%の範囲にある。
(A)ポリエステルエラストマー組成物:100モル%のDMCD、0.5モル%のTMA、90.6モル%のCHDM、8.9モル%PTMEG。
(B)脂肪族ポリエステル組成物:100モル%のDMCD、100モル%CHDM。
ここで、
DMCD=1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル、
TMA=無水トリメリット酸、
PTMEG=ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、
CHDM=1,4-シクロヘキサンジメタノール。
【0052】
例1~8
サンプルは、(A)ポリエステルエラストマーと(B)脂肪族ポリエステルのブレンドから溶融加工により製造した。両方の材料を押出前に乾燥した。ブレンドは、2つの材料をペレット-ペレット混合することにより調製した(表1)。次いで、ブレンドをキャストフィルム押出ラインにフィードして、250μm厚のフィルムを製造した。表1に示すように、(A)ポリエステルエラストマーは押出中に容易に結晶化するので、各サンプルにはある程度の結晶化度がある。しかしながら、100%の(B)脂肪族ポリエステルは結晶化度がゼロである。
【表1】
【0053】
押出サンプルの光学特性を表2に示す。すべてのサンプルは透明であり、90%を超える可視光線透過率(VLT)を有する。
【表2】
【0054】
押出サンプルの引張特性を表3に示す。エラストマー含有量が高いサンプルは破断点伸び率が大きい。最も重要なことには、脂肪族ポリエステルの含有量を増やすと弾性率を上げることができ、一方、優れた混和性のために、より良好な光学特性を維持する。
【表3】
【0055】
弾性率データをデカルト座標でプロットすることにより、
図1に示すように非線形回帰モデルを取得できる。押出サンプルについて、その弾性率は式(1)により評価されうる。
E=-0.0022x
3+0.2481x
2+3.3645x+205.12 (1)
(上式中、Eは引張弾性率MPaであり、xは脂肪族ポリエステルBのwt%である)
【0056】
式(1)により、適切なブレンド比を設計して、導電性インク又はTFT(薄膜トランジスタ)などの電子部品と適合性のある望ましい弾性率を実現できる。
【0057】
例9~16
次いで、例1~8(例9~16に個々に対応する)サンプルを、ドイツのシーグスドルフのブリュクナーから入手可能なブリュクナー・カロIVフィルム延伸機で延伸して、機械方向及び横断方向に同時に延伸した二軸配向フィルムを製造した。表4は、Eastman Chemicalから入手可能なEcdel 9966ポリエステルエラストマー/Eastman Chemical Companyから入手可能なPCCD 19972脂肪族ポリエステルの様々なブレンド比の押出フィルムを、対応する延伸条件とともに示す。サンプルを熱風オーブンで70℃又は80℃で30秒間加熱し、歪み率100%で3x3(MDxTD)に延伸した。歪み率100%は、元の寸法が1秒で2倍になることを意味する。押出フィルムは公称厚さが10ミルなので、二軸配向フィルムは公称厚さが延伸後に1ミル強になる。Ecdel含有量の高いブレンドは、押出時に結晶化度%で20%半ばまで容易に結晶化する(表1)。二軸延伸は、さらなる結晶化を誘発しない(表4)。一方、押出PCCDシートは結晶化度がほとんどなく、その結晶化度は二軸延伸後に10%を超えるように増加する。
【表4】
【0058】
表5は、二軸配向ブレンドの光学特性を示す。主に延伸後の厚さ低下と表面平滑化のために、二軸配向サンプルは押出サンプルよりもはるかに低いヘイズを有する。
【表5】
【0059】
表6は、二軸配向ブレンドの引張特性を示す。弾性率は300~1300MPaの範囲である。押出されたままのサンプルと二軸配向サンプルの間の機械的特性の差は有意である。一般に、二軸配向は強度及び弾性率を高めるが、伸び率を減じる。
【表6】
【0060】
デカルト座標で弾性率データvsB wt%をプロットすることにより、
図2に示すように非線形回帰モデルを取得できる。二軸配向サンプルについて、弾性率は式(2)により評価できる。
E=-0.0023x
3+0.2287x
2+10.073x+283.31 (2)
(上式中、Eは引張弾性率MPaであり、xは脂肪族ポリエステルBのwt%である)
【0061】
式(2)により、適切なブレンド比を設計して、電子部品と適合性のある望ましい弾性率を実現できる。
【0062】
ペレット-ペレットのブレンディングに加えて、弾性率を変化させるための別のアプローチは共押出によるものである。表7は、一定の総厚の厚さ比を変えることによって弾性率を変える際に、共押出が非常に実現可能性があることを示す。
【表7】
【0063】
デカルト座標における引張弾性率データvs総計B%をプロットすることにより、
図3に示すように非線形回帰モデルを取得できる。共押出サンプルについて、弾性率は式(3)により評価できる。
E=-0.0039x
3+0.3927x
2+6.2758x+206.72 (3)
(上式中、Eは引張弾性率MPaであり、xは、B層の脂肪族ポリエステルの合計層厚%である)
【0064】
式(3)により、適切なブレンド比を設計して、電子部品と適合性のある望ましい弾性率を実現できる。
【0065】
一般論として、表面エネルギーが高いほど、基材が導電性インクとの許容可能な接着を形成しやすくなる。表8は、主要な成分A及びBの表面エネルギーを示している。基材とその適合ブレンドの両方は、導電性インクで直接プリントするのに適合している。
【表8】
【0066】
基材と電子部品間の弾性率の適合性に加えて、回路全体が特定の伸び率で繰り返し伸張した後に、相互接続は機能を維持する必要がある。
図4は、例9の永久歪みvs20%及び40%のそれぞれの伸び率での延伸数を示す。
【0067】
20%伸び率について、
ε=0.0034*ln(n)+0.0685 (4)
(上式中、εは永久歪みであり、nは20%伸び率でのサイクル数である)
【0068】
40%伸び率について、
ε=0.0074*ln(n)+0.1276 (5)
(上式中、εは永久歪みであり、nは40%伸び率でのサイクル数である)
【0069】
比較例20は、4ミルの白色TPUフィルムサンプル(Bemis Associates Inc.によるSKU TL 644)である。この材料のヤング率はわずか37MPaであり、うまくプリントされそして硬化されるには、より硬いライナーを必要とする。
【0070】
20%伸び率について、
ε=0.0053*ln(n)+0.0457 (6)
(上式中、εは永久歪みであり、nは20%伸び率でのサイクル数である)
【0071】
40%伸び率について、
ε=0.0114*ln(n)+0.0771 (7)
(上式中、εは永久歪みであり、nは40%伸び率でのサイクル数である)
【0072】
【0073】
式(4-7)から、1回目のサイクル直後の永久歪み及び各線形曲線の傾きを表9に示す。1回目のサイクル後の永久歪みはそれぞれ20%及び40%の伸び率で例20よりも大きくなるが、より低い歪み成長速度を有する。例えば、蛇行したプリントパターンを有する伸長性のある導電性インクは、繰り返しの伸長サイクル後も同じ導電性を維持すべきである。
【表9】
【0074】
基材上にプリントされた後のすべての導電性インクは導電性を改善するために熱硬化が必要である。典型的な硬化サイクルは、120~150℃で3~5分である。基材の熱安定性は、回路の寸法安定性を維持するために重要である。TPUはこの温度で熱安定性がなく、電子機器をプリントする前にライナー上での前処理を行わなければならない。
【0075】
図6は例9のTMA収縮曲線であり、サンプルは温度が150℃を超えるまで熱安定であり、電子機器のための導電性インク印刷及び硬化に適している。
【0076】
例9及び比較例20の両方を、120℃及び150℃で熱風オーブンで5分間試験した。サンプルをマニラフォルダーに挟み込み、導電性インク印刷後の硬化サイクルを模倣するために、5分間所望の温度に設定した熱風オーブンに入れた。表10に試験結果を示す。例9のサンプルには、両方の温度で収縮がない。しかしながら、比較例20のサンプルは、120℃でフォルダーの片側に付着し、150℃でフォルダーの両側に融着した。例20のサンプルは、剛性ライナーなしでプリントした後の硬化サイクルで生き残れないだろう。一方、例9のサンプルは、硬化プロセスにライナーを必要としない。
【表10】
【0077】
例21~22及び比較例23~24
例21は、2ミル(50ミクロン)の例9サンプルを、Creative Materials, Ayer, MAから入手可能なAg導電性インク、タイプ124-36を使用して、直線パターンでスクリーン印刷機でプリントしたものである。例22は、2ミル(50ミクロン)の例9のサンプルを、Ag導電性インクを使用して、正弦波パターンでスクリーン印刷したものである。比較例23は、4ミル(50ミクロン)の比較例20サンプルを、直線パターンでAg導電性インクを使用してライナースクリーン印刷したものである。比較例24は、4ミル(50ミクロン)の比較例20サンプルを、正弦波パターンでAg導電性インクを使用してライナースクリーン印刷したものである。フィルムサンプルの寸法は6cmx16cmであり、インクパターンはサンプルの1インチ×6インチの領域に集中している。プリントしたサンプルを、60℃の熱風オーブンで15分間硬化させた。インクは50℃~150℃で硬化できるが、温度が高いほど効果的である。比較の目的で、比較例23~24ではしわがすでに発生していたが、例21~22では歪みがなかったため、すべてのサンプルを60℃で硬化させた。
【0078】
例21~22及び比較例23~24を、インストロン引張試験機(MTS Q-Test)により、2in/分の歪み速度で11.5cmの初期ゲージ長から延伸し、印刷パターンの抵抗率をその場でデジタルマルチメータ(Keithley Instruments Inc.)により測定した。表11は、硬化後の初期抵抗率及び延伸後の最大破損歪みを示している。抵抗率は歪みの増加とともにゆっくりと増加するが、最大破壊ひずみは、抵抗率が急激に上昇するときのものと定義される。直線と正弦波の両方のインクパターンで、例21~22はそれぞれ比較例23~24よりも高い破損歪みを有する。対応するすべてのサンプルを同じ条件でスクリーン印刷及び硬化したため、より高い破損歪みは、例23~24と比較したときのAg導電性インクと例21~22の間の接着力がより良好であることに起因しうる。
【表11】