(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】損傷部位の深さを決定するシステムの作動方法及び組織の画像を生成するシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20220419BHJP
A61B 1/045 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
A61B1/00 511
A61B1/045 610
A61B1/00 551
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020122029
(22)【出願日】2020-07-16
(62)【分割の表示】P 2016530211の分割
【原出願日】2014-11-14
【審査請求日】2020-08-12
(32)【優先日】2013-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592005010
【氏名又は名称】ザ・ジョージ・ワシントン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】THE GEORGE WASHINGTONUNIVERSITY
(73)【特許権者】
【識別番号】519262397
【氏名又は名称】460メディカル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】460Medical, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【氏名又は名称】田中 光雄
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・エイ・マーキャダー
(72)【発明者】
【氏名】ナリン・サーバジャン
(72)【発明者】
【氏名】テランス・ジェイ・ランズベリー
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・シー・アームストロング
(72)【発明者】
【氏名】オマール・アミラナ
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0079645(US,A1)
【文献】国際公開第2012/038824(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/135961(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00
A61B 1/045
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
損傷部位の深さを決定するシステムの作動方法であって、上記方法は、
コントローラにより、1つ又は複数の損傷を含む損傷部位を有する照射された組織から
のミトコンドリアのニコチンアミドアデニンジヌクレオチド水素(NADH)蛍光
の強度を
示すデータを受信することと、
上記コントローラにより、上記損傷部位のNADH蛍光の検出された強度から、上記損傷部位のディジタル画像であって、上記1つ又は複数の損傷の深さについての情報を含むディジタル画像を生成することと、
上記コントローラにより、上記NADH蛍光
の強度に基づいて、
上記ディジタル画像にわたる第1の直線に沿った上記
1つ又は複数の損傷の深さの2次元(2D)マップを生成することと、
上記コントローラにより、上記NADH蛍光
の強度に基づいて、
上記ディジタル画像にわたる第2の直線に沿った上記
1つ又は複数の損傷の深さの2Dマップを生成することと、
上記コントローラにより、上記第1の直線に沿った2Dマップ及び上記第2の直線に沿った2Dマップから上記損傷部位の3次元(3D)画像を構成すること
とを含む方法。
【請求項2】
損傷部位の深さを決定するシステムの作動方法であって、上記方法は、
コントローラにより、1つ又は複数の損傷を含む損傷部位を有する照射された組織から
のミトコンドリアのニコチンアミドアデニンジヌクレオチド水素(NADH)蛍光の強度を
示すデータを受信することと、
上記コントローラにより、上記損傷部位のNADH蛍光の検出された強度
から、上記損傷部位のディジタル画像であって、上記
1つ又は複数の損傷の深さについての情報を含むディジタル画像を生成することと、
上記コントローラにより、上記損傷部位のNADH蛍光の検出された強度のディジタル画像を解析して、上記損傷部位のNADH蛍光の検出された強度のディジタル画像にわたる複数の直線に沿った上記損傷部位の
1つ又は複数の損傷の深さの複数の2次元(2D)マップを生成することにより、上記損傷部位の深さについての情報を抽出することと、
上記コントローラにより、上記複数の直線に沿った上記複数の2Dマップから、上記ディジタル画像における上記損傷部位の1つ又は複数の損傷の
深さの3次元(3D)画像を構成することと、
上記コントローラにより
、上記損傷部位の
1つ又は複数の損傷の深さの3D画像をディスプレイに表示することとを含む方法。
【請求項3】
上記組織は心臓組織である請求項2記載の方法。
【請求項4】
上記組織は、心外膜組織、心内膜組織、心房組織、及び心室組織からなるグループから選択される請求項2記載の方法。
【請求項5】
上記取得するステップは、アブレーション装置によって形成された損傷部位を有する組織から、上記NADH蛍光を取得することをさらに含む請求項1~4のうちの1つに記載の方法。
【請求項6】
上記取得するステップは、
上記照射された組織からのNADH蛍光を検出することと、
上記NADH蛍光から、上記損傷部位の複数の画素を含むディジタル画像を生成することと、
上記損傷部位にわたる直線に沿った複数の画素のNADH蛍光強度を決定することとを含む請求項1~5のうちの1つに記載の方法。
【請求項7】
上記損傷部位及び健康な組織からの上記NADH蛍光の量に基づいて、上記ディジタル画像における上記損傷部位及び上記健康な組織を識別することと、
上記健康な組織を表す画素の上記NADH蛍光
の強度に基づいて上記ディジタル画像を正規化することとをさらに含む請求項6記載の方法。
【請求項8】
上記検出するステップは、435nm及び485nmの間の帯域通過フィルタを用いて上記NADH蛍光をフィルタリングすることを含む請求項6記載の方法。
【請求項9】
上記健康な組織はより明るい外観を有し、上記損傷部位はより暗い外観を有する請求項7記載の方法。
【請求項10】
上記生成するステップは、上記損傷部位にわたる直線に沿った上記NADH蛍光
の強度をプロットして、上記損傷部位の深さの上記2Dマップを生成することを含む請求項1~9のうちの1つに記載の方法。
【請求項11】
上記方法は、上記損傷部位の幅にわたる垂直直線に沿って、複数回にわたって、上記取得するステップ、生成するステップ、及び決定するステップを繰り返すことをさらに含み、
上記深さの2Dマップのそれぞれは、上記損傷部位の長さに沿った上記第1の直線に平行であり、
上記方法は、垂直直線における上記損傷部位の深さの各2Dマップのそれぞれを統合して、上記損傷部位の深さの3D画像を再構成することを含む請求項1~10のうちの1つに記載の方法。
【請求項12】
上記決定するステップは、完全な黒色から完全な白色までの範囲を有する画素グレースケールを適用することを含む請求項1~11のうちの1つに記載の方法。
【請求項13】
照射装置はUV光を発生する請求項1~12のうちの1つに記載の方法。
【請求項14】
レーザにより発生されたUV光は、300nmから400nmの波長を有する請求項13記載の方法。
【請求項15】
組織の画像を生成するシステムであって、上記システムは、
1つ又は複数の損傷を含む損傷部位を有する組織に照射して、上記組織におけるミトコンドリアのニコチンアミドアデニンジヌクレオチド水素(NADH)を励起するように構成された照射装置と、
上記照射された組織からのNADH蛍光を検出するように構成された画像生成装置と、
上記画像生成装置と通信するコントローラとを備え、
上記コントローラは、
上記損傷部位を有する上記照射された組織から
の上記NADH蛍光
の強度を
示すデータを受信することと、
上記損傷部位のNADH蛍光の検出された強度から、上記損傷部位のディジタル画像であって、上記1つ又は複数の損傷の深さについての情報を含むディジタル画像を生成することと、
上記NADH蛍光
の強度に基づいて、
上記ディジタル画像にわたる第1の直線に沿った上記損傷部位の
1つ又は複数の損傷の深さの2次元(2D)マップを生成することと、
上記NADH蛍光
の強度に基づいて、
上記ディジタル画像にわたる第2の直線に沿った上記損傷部位の
1つ又は複数の損傷の深さの2Dマップを生成することと、
上記第1の直線に沿った2Dマップ及び上記第2の直線に沿った2Dマップから、上記損傷部位の
1つ又は複数の損傷の深さを表すように上記損傷部位の3次元(3D)画像を構成することとを行うようにプログラミングされたシステム。
【請求項16】
組織の画像を生成するシステムであって、上記システムは、
組織における1つ又は複数の損傷を有する損傷部位に近接して位置するように構成された遠位端を有するカテーテルであって、上記カテーテルの遠位端まで延在するように構成された遠位端を有する1つ又は複数の光ファイバを含むカテーテルと、
上記光ファイバの近位端に接続され、損傷を有する組織を照射して上記組織におけるミトコンドリアのニコチンアミドアデニンジヌクレオチド水素(NADH)を励起するように構成された照射装置と、
上記光ファイバの近位端に接続され、上記照射された組織からのNADH蛍光を検出するように構成された画像生成装置と、
上記画像生成装置と通信するコントローラとを備え、上記コントローラは、
上記照射された組織から
の上記NADH蛍光の強度を
示すデータを受信することと、
上記損傷部位のNADH蛍光の
強度から、上記損傷部位のディジタル画像であって、上記損傷部位の
1つ又は複数の損傷の深さについての情報を含むディジタル画像を生成することと、
上記損傷部位のNADH蛍光の検出された強度のディジタル画像を解析して、上記NADH蛍光の検出された強度に基づいて上記損傷部位のディジタル画像にわたる複数の直線に沿った上記損傷部位の
1つ又は複数の損傷の深さの複数の2次元(2D)マップを生成することにより、上記損傷部位の
1つ又は複数の損傷の深さについての情報を抽出することと、
上記複数の直線に沿った上記複数の2Dマップから、上記ディジタル画像における上記損傷部位の1つ又は複数の損傷の
深さの3次元(3D)画像を構成することとを行うようにプログラミングされ、
上記システムは
、上記損傷部位の
1つ又は複数の損傷の深さの3D画像を表示するように構成されたディスプレイをさらに備えるシステム。
【請求項17】
上記組織は心臓組織である請求項16記載のシステム。
【請求項18】
上記組織は、心外膜組織、心内膜組織、心房組織、及び心室組織からなるグループから選択される請求項16記載のシステム。
【請求項19】
上記照射装置はUVレーザである請求項15~18のうちの1つに記載のシステム。
【請求項20】
上記画像生成装置は、カメラと、上記カメラから上記照射されている組織まで延在するファイバースコープとを備える請求項15~19のうちの1つに記載のシステム。
【請求項21】
上記画像生成装置は、カメラ及びファイバースコープの間に配置された、435nm及び485nmの間の帯域通過フィルタをさらに含む請求項15~20のうちの1つに記載のシステム。
【請求項22】
上記コントローラは、
上記照射された組織からの上記NADH蛍光を検出することと、
上記NADH蛍光から、上記損傷部位の複数の画素を含むディジタル画像を生成することと、
上記損傷部位にわたる直線に沿った複数の画素のNADH蛍光
の強度を決定することとを行うようにさらにプログラミングされる請求項15~21のうちの1つに記載のシステム。
【請求項23】
上記コントローラは、上記損傷部位の幅にわたる垂直直線に沿って、複数回にわたって処理を繰り返すようにさらにプログラミングされ、
上記深さの2Dマップのそれぞれは、上記損傷部位の長さに沿った第1の直線に平行であり、
上記コントローラは、垂直直線における上記損傷部位の深さの各2Dマップのそれぞれを統合して、上記損傷部位の深さの3D画像を再構成するようにさらにプログラミングされる請求項15~22のうちの1つに記載のシステム。
【請求項24】
上記損傷部位は、2つ以上の損傷及び少なくとも1つの損傷間ギャップを含み、
上記3D画像は、上記2つ以上の損傷及び上記少なくとも1つの損傷間ギャップの深さを示す請求項1~14のうちの1つに記載の方法。
【請求項25】
上記損傷部位は、2つ以上の損傷及び少なくとも1つの損傷間ギャップを含み、
上記3D画像は、上記2つ以上の損傷及び上記少なくとも1つの損傷間ギャップの深さを示す請求項15~23のうちの1つに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、アブレーション(焼灼)エネルギーが身体に与えられて治療上の損傷(lesion)を形成するような医学的処置に関する。特に、本開示は、損傷及び組織の画像を生成して損傷の深さを決定するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、2014年11月14日に出願された米国出願シリアル番号第14/541991号の利益及び優先権を主張し、2013年11月14日に出願された米国仮出願シリアル番号第61/904018号の利益及び優先権を主張し、これら両方の全体は参照によってここに組み込まれる。
【0003】
心房細動(AF)は、何百万もの人々に現在影響する、世界中で最も一般的な持続性不整脈である。米国において、AFは、2050年までに1000万人に影響すると予想される。AFは、増加した死亡率、病的状態、及び損なわれた生活の質(quality of life)に関連付けられ、卒中の独立危険因子である。AFを発症する実質的な生涯リスクは、その病気の公衆衛生負担を強調し、それは、米国のみで、70億ドルを超過する毎年の治療コストに達する。
【0004】
AFをかかえた患者における大部分のエピソードは、肺静脈(PV)へ延在する筋肉スリーブの内部から発生する局所的な電気的活動によってトリガされることが知られている。心房細動は、上大静脈又は他の心房構造物、すなわち心臓伝導系内の他の心臓組織の内部における局所的な活動によってトリガされる可能性もある。これらの局所的なトリガは、リエントラントな電気的活動(又は回転子)によって駆動される心房性頻脈を引き起こす場合がある。これは、その後、心房細動の特性である多数の電気的ウェーブレットへ断片化する可能性がある。さらに、延長されたAFは、心臓の細胞膜において機能変更を引き起こす場合があり、これらの変化は心房細動をさらに永続させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ラジオ波アブレーション(RFA)、レーザアブレーション、及びクライオアブレーションは、医師によって心房細動を治療するために使用される、カテーテルに基づいたマッピング及びアブレーションシステムの最も一般的な技術である。医師は、焦点のトリガを破壊するように、又は、トリガを心臓の残りの伝導系から隔離する電気的隔離ラインを形成するように、エネルギーを方向付けるためのカテーテルを使用する。後者の技術は、一般的に、肺静脈隔離(PVI)と呼ばれるもので使用される。しかしながら、AFアブレーション処置の成功率は比較的停滞したままであり、処置後1年の再発推定率が30%から50%の高さになった。カテーテルアブレーション後の再発の最も一般的な理由は、PVIラインにおける1つ又は複数のギャップにある。ギャップは、通常は、影響がないか不完全な損傷の結果であり、これは、処置中に一時的に電気的信号を阻止するが、時間がたつと回復し、心房細動の再発を助長する可能性がある。
【0007】
従って、適切な損傷を形成して検証する際に、蛍光透視の時間を短縮し、不整脈発生のレートを低減し、これにより、結果を改善し、コストを削減する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のいくつかの態様によれば、損傷部位の深さを決定する方法が提供される。
上記方法は、
損傷部位を有する心臓組織に照射することと、
上記照射された心臓組織から、上記損傷部位にわたる第1の直線に沿って、ミトコンドリアのニコチンアミドアデニンジヌクレオチド水素(NADH)蛍光強度を取得することと、
上記NADH蛍光強度に基づいて、上記第1の直線に沿った上記損傷部位の深さの2次元(2D)マップを作成することと、
上記2Dマップから上記第1の直線に沿った選択された点における上記損傷部位の深さを決定することとを含む。
より低いNADH蛍光強度は上記損傷部位におけるより大きな深さに対応し、より高いNADH蛍光強度はアブレーションされていない組織に対応する。
【0009】
いくつかの実施形態では、上記方法は、アブレーションによって上記心臓組織において上記損傷部位を形成することをさらに含む。
上記取得するステップは、
照射された組織からのNADH蛍光を検出することと、
上記NADH蛍光から、上記損傷部位の複数の画素を含むディジタル画像を作成することと、
上記損傷部位にわたる直線に沿った複数の画素のNADH蛍光強度を決定することとを含んでもよい。
いくつかの実施形態では、上記方法は、
上記損傷部位及び健康な組織からの上記NADH蛍光の量に基づいて、上記ディジタル画像における上記損傷部位及び上記健康な組織を識別することと、
上記健康な組織を表す画素の上記NADH蛍光強度に基づいて上記ディジタル画像を正規化することとをさらに含んでもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、検出するステップは、約435nm及び485nmの間の帯域通過フィルタを用いて上記NADH蛍光をフィルタリングすることを含む。
いくつかの実施形態では、上記健康な組織はより明るい外観を有し、上記損傷部位はより暗い外観を有する。
上記作成するステップは、上記損傷部位にわたる直線に沿った上記NADH蛍光強度をプロットして、上記損傷部位の深さの上記2Dマップを作成することを含んでもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、上記方法は、
上記照射された心臓組織から、上記損傷部位にわたる第2の直線に沿って、NADH蛍光強度を取得することと、
上記NADH蛍光強度に基づいて、上記第2の直線に沿った上記損傷部位の深さの2Dマップを作成することと、
上記第1の直線に沿った2Dマップ及び上記第2の直線に沿った2Dマップから上記損傷部位の3次元(3D)画像を構成することとをさらに含む。
いくつかの実施形態では、上記取得するステップ、作成するステップ、及び決定するステップは、上記損傷部位の幅にわたる垂直直線に沿って、複数回にわたって繰り返されてもよい。
上記深さの2Dマップのそれぞれは、上記損傷部位の長さに沿った上記第1の直線に平行である。
垂直直線における上記損傷部位の深さの各2Dマップのそれぞれを統合して、上記損傷部位の深さの3D画像を再構成する。
【0012】
上記決定するステップは、完全な黒色から完全な白色までの範囲を有する画素グレースケールを適用することを含んでもよい。
上記方法は、心外膜組織、心内膜組織、心房組織、及び心室組織を分析するために使用されてもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、上記照射するステップは、レーザにより発生されたUV光で上記心臓組織に照射することを含む。
上記レーザにより発生されたUV光は、約300nmから約400nmの波長を有してもよい。
【0014】
本開示のいくつかの態様によれば、心臓組織の画像を生成するシステムが提供される。
上記システムは、
損傷部位を有する組織に照射して、上記組織におけるミトコンドリアのニコチンアミドアデニンジヌクレオチド水素(NADH)を励起するように構成された照射装置と、
上記照射された組織からのNADH蛍光を検出するように構成された画像生成装置と、
上記画像生成装置と通信するコントローラとを含む。
上記コントローラは、
上記照射された組織から、上記損傷部位にわたる第1の直線に沿って、NADH蛍光強度を取得することと、
上記NADH蛍光強度に基づいて、上記第1の直線に沿った上記損傷部位の深さの2次元(2D)マップを作成することと、
上記2Dマップから上記第1の直線に沿った選択された点における上記損傷部位の深さを決定することとを行うようにプログラミングされる。
より低いNADH蛍光強度は上記損傷部位におけるより大きな深さに対応し、より高いNADH蛍光強度はアブレーションされていない組織に対応する。
【0015】
本開示のいくつかの態様によれば、心臓組織の画像を生成するシステムが提供される。
上記システムは、
遠位領域及び近位領域を有するカテーテルと、
光源と、
上記光源から上記カテーテルの遠位領域へ延在する光ファイバであって、上記カテーテルの遠位端の近傍における損傷部位を有する組織に照射して、上記組織におけるミトコンドリアのニコチンアミドアデニンジヌクレオチド水素(NADH)を励起する光ファイバと、
上記照射された組織からのNADH蛍光を検出する画像バンドルと、
画像バンドルに接続されたカメラであって、上記照射された組織からの上記NADH蛍光を受信し、上記照射された組織の複数の画素を含むディジタル画像を生成するように構成されたカメラと、
上記カメラと通信するコントローラとを含む。
上記コントローラは、
上記ディジタル画像から、上記損傷部位にわたる第1の直線に沿った複数の画素のNADH蛍光強度を決定することと、
上記NADH蛍光強度に基づいて、上記第1の直線に沿った上記損傷部位の深さの2Dマップを作成することと、
上記2Dマップから上記第1の直線に沿った選択された点における上記損傷部位の深さを決定することとを行うように構成される。
より低いNADH蛍光強度は上記損傷部位におけるより大きな深さに対応し、より高いNADH蛍光強度はアブレーションされていない組織に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】本開示の実施形態に係るシステムのシステムアーキテクチャ図である。
【
図1B】本開示の実施形態に係るシステムのブロック図である。
【
図1C】本開示の方法及びシステムでの使用に適している例示的なコンピュータシステムを示す図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る特製カテーテルの図である。
【
図3】本開示の態様に係る膨張したカテーテルバルーン及び先端のクローズアップ写真である。
【
図4A】本開示に係る方法のフローチャートである。
【
図4B】本開示に係る方法のフローチャートである。
【
図4C-4F】本開示に係る単一の直線に沿って実行された深度分析を示す。
【
図4G】本開示に係る、fNADHによって画像生成された、アブレーションによる2つの損傷と損傷間のギャップとを含む、3Dの深度分析を示す。
【
図4H】本開示に係る、fNADHによって画像生成された、アブレーションによる2つの損傷と損傷間のギャップとを含む、3Dの深度分析を示す。
【
図5】健康な心臓の組織(
図5A)及びアブレーションされた心臓の組織(
図5B)の蛍光波長の互いに並んだプロットである。
【
図6】白色光の照射を受けた場合(
図6A)と、UV光の照射に起因するNADH蛍光の場合(
図6B)とについて、心臓の損傷の画像を互いに並べた比較である。
【
図7】
図7Aは、UV照射の下で見た損傷の直径の測定値を示す心外膜の画像の写真である。
図7Bは、
図7Aと同じ損傷であるが、トリフェニルテトラゾリウム塩素酸塩(TTC)で染色された損傷の直径の測定値の写真である。
図7Cは、蛍光を発した損傷とTTCで染色された損傷とについての損傷サイズの直径の測定値の相関を示すプロットである。
【
図8】
図8Aは、NADH蛍光に対する損傷の深さの相関を示すプロットである。
図8Bは、TTCで染色することによって現れた2つの損傷の直径測定の写真である。
図8Cは、f
NADHで可視化された損傷の直径測定の写真である。
図8Dは、
図8Cの反転信号である。
【
図9】反転したNADH蛍光強度に対して損傷の深さを比較する、まとめられたデータのプロットである。
【
図11】アブレーション継続時間(時間)を変化させるときの、損傷の深さに対するNADH蛍光強度のプロットである。
【
図12A】クライオアブレーションによって形成された損傷を示す。
【
図12B】クライオアブレーションによって形成された損傷の3Dプロットを示す。
【
図12C】ラジオ波アブレーションによって形成された損傷を示す。
【
図12D】ラジオ波アブレーションによって形成された損傷の3Dプロットを示す。
【
図12F】3つの異なる損傷の対応する深さの物理的関係を示す3Dプロットを示す。3D再構成画像において損傷間のギャップを示す。
【
図13A】クライオプローブによって形成された損傷の画像である。
【
図13C】
図13Aのクライオプローブによって形成された損傷の3Dプロットである。
【
図14】TTC分析によって測定される実際の損傷の深さと逆に相関する心外膜fNADHの強度のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここに開示した実施形態は、添付の図面を参照してさらに説明される。複数の図の全体にわたって、同様の構造は同様の数字によって示される。示した図面は必ずしも縮尺どおりではなく、その代わりに、概して、ここに開示した実施形態の原理を示す際に強調されている。
【0018】
上記の図面はここに開示する実施形態を示すが、議論の中で注意するように、他の実施形態も意図される。本開示は、例示の実施形態を限定ではなく代表として提示する。当業者は、ここに開示した実施形態の原理の範囲及び精神に含まれる、多数の他の変更及び実施形態を考えることができる。
【0019】
本開示は概して、ラジオ波アブレーション、レーザ、クライオアブレーションのエネルギーが身体に与えられて治療上の損傷を形成するような医学的処置に関する。特に、本開示は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド水素(NADH)蛍光(fNADH)を用いて心臓の損傷及び組織の画像を生成することができるシステム及び方法に関する。本システム及び方法は、心房細動(AF)の治療中に使用されてもよい。特に、本開示は、NADH蛍光強度データを分析して損傷の深さを決定することにより、損傷深度マップを生成するシステム及び方法に関する。いくつかの実施形態では、本システム及び方法は、心臓の組織(心内膜、心外膜、心房、及び心室の組織)における損傷の深さを決定するために使用されてもよい。しかしながら、ここに開示した方法及びシステムは、他の組織のタイプにおける損傷を分析することにも適用可能である可能性があるかもしれない。分析される損傷は、アブレーション処置の間にアブレーションによって作成されてもよい。いくつかの実施形態では、アブレーション又は他の手段によって作成された既存の損傷が、本明細書に開示した方法及びシステムを用いて分析されてもよい。
【0020】
本開示の態様によれば、心臓の組織における内在性NADH(fNADH)の蛍光の画像をリアルタイムで生成して、アブレーションされた領域及びアブレーションされていない領域を識別することができる。fNADH画像生成(画像化)を用いて、アブレーションされた領域間のギャップを識別することができ、次に、このギャップのアブレーションを行うことができる。画像生成は、アブレーション処置の間に実行可能であり、造影剤、トレーサ、又は染料のような、追加の化学薬品を必要としない。
【0021】
いくつかの実施形態では、蛍光の強度を測定してプロットすることができ、最も弱い蛍光(最も暗い部分)は最も深くアブレーションされた損傷に対応し、最も強い蛍光(最も明るい部分)はアブレーションされていない組織又は健康な組織に対応する。明及び暗の極値の間における任意レベルのグレーは、概して、組織の損傷の深さの程度に対応する。ここに開示したシステム及び方法は、組織のアブレーションを行ってfNADHシステムで組織の画像を生成した後に得られた画素の強度に基づいて、損傷の深さを決定するために使用可能である。いくつかの実施形態では、相関した深さデータを、1つ又は複数の損傷の3D再構成物へ統合することができ、損傷の幾何学的形状及び質に関する適時のフィードバックを医師に与えることができる。したがって、本開示は、処置の際に損傷の深さの情報を医師へ提供することにより、今日の既知の技術及び方法において損傷の質のフィードバックが欠如していることに対処する。例えば、深さ情報を有することは、後の診断及び治療で使用されるかもしれない。アブレーション処置、特に肺静脈隔離処置を実行する際に、多数の目標の中でもとりわけ少なくとも1つの目標は、高耐久性の結果を生じさせて処置の成功を強化させるように、十分に深いアブレーション損傷を生じさせることにある。処置の間に、複数のアブレーション損傷にギャップが存在せず、各損傷が適切な深さをカバーしていることが最適である。これは、心臓の外部の組織へダメージを与えたり、心臓に孔をあけたりすることのない、経壁損傷と呼ばれる。これにより、適切な結果及びより高耐久性の結果をもたらすのに十分に深い、より良好な損傷をオペレータが生成することを支援することにより、深さ情報は処置の際に使用される。さらに、生成される損傷は、大部分は、使用されるアブレーションツール、すなわち、RFA(標準対潅流)、クライオ(カテーテル対バルーン)、及びレーザに依存する可能性がある。これらのツールのすべては異なる形状の損傷を生成する。生成される損傷が使用されるアブレーションツールに依存し、これにより、各アブレーションツールによって可変な深さを有することになり、一部が他のものよりも深くなる、ということの克服は、1つの挑戦である。アブレーション処置を実行する際に、最小深さの数は存在せず、それは、例えば、アブレーションが行われている領域で心房が心室よりも薄いこと、又は他の何らかのファクタのような、複数のファクタに依存する可能性がある。例えば、2mmの深さは心房の組織には申し分ないかもしれないが、心室の組織には不十分かもしれない。しかし、各患者は、異なる厚さの組織を有し、特定の配慮を要する。
【0022】
上で注意したように、良質かつ検証可能な損傷は、アブレーション処置の成功及び再発の回避のための鍵のうちの少なくとも一部となりうる。良質な損傷は、適切な深さを有してもよく、心臓以外の構造物へのダメージを最小化しながら、心臓の心内膜の面から心外膜の面へ(すなわち経壁で)完全に細胞壊死を生じさせてもよい。しかしながら、ここに開示したマッピングシステムと、システム及び方法の他の態様とは、アブレーションによって引き起こされた細胞の傷害の程度についてのフィードバックを提供するとともに、実際に損傷の完全性を検証する。したがって、ここに開示した実施形態は、他のことの中でもとりわけ、損傷の可視化を行うとともに、処置の際に損傷の深さの情報を医師へ提供することにより、今日の既知の技術において損傷の質のフィードバックが欠如していることに対処する。
【0023】
図1A及び
図1Bに関して、本開示のアブレーション可視化システム(AVS)は、
患者の身体の外部にあるUVレーザのような光源130Aと、光源から患者の身体の内部へ光を伝送するための光デバイス又は光伝送ファイバ130Bと、
必要であれば適切なフィルタリングを行う、カメラ135Aと、
カメラに接続された画像バンドル135Bと、
1つ又は複数のディスプレイ140A(技術者用)及び140B(医師用)を有し、そのプロセッサ又はコントローラにおける画像処理ソフトウェアを備えるコンピュータシステム140とを含むことが可能である。
【0024】
図1Cは、例示として、本開示の方法及びシステムに関連して使用可能である典型的な処理アーキテクチャの図を示す。コンピュータ処理装置200は、グラフィカル出力用のディスプレイ212に接続されることが可能である。プロセッサ202は、ソフトウェアを実行可能なコンピュータプロセッサ204であってもよい。典型的な例は、コンピュータプロセッサ(Intel(登録商標)又はAMD(登録商標)のプロセッサなど)、ASIC、マイクロプロセッサなどであってもよい。プロセッサ204はメモリ206に接続されることが可能である。それは、典型的には、プロセッサ204の実行中に命令及びデータを格納するための揮発性RAMメモリであってもよい。プロセッサ204は記憶装置208にも接続されることが可能である。それは、ハードドライブ、FLASH(登録商標)ドライブ、テープドライブ、DVDROM、又は同様の装置のような、不揮発性記憶媒体であってもよい。図示しないが、コンピュータ処理装置200は、典型的には、さまざまな形態の入力及び出力を含む。I/Oは、ネットワークアダプタ、USBアダプタ、ブルートゥース(登録商標)無線、マウス、キーボード、タッチパッド、ディスプレイ、タッチスクリーン、LED、振動装置、スピーカ、マイクロホン、センサ、又はコンピュータ処理装置200とともに使用するための他の入力もしくは出力装置を含んでもよい。プロセッサ204は、プロセッサ204のようなプロセッサにコンピュータ可読命令を提供可能である電子的、光学的、磁気的、又は他の記憶装置又は伝送装置を含むがそれらに限定されない、他のタイプのコンピュータ可読媒体にも接続されることが可能である。他の様々な形態のコンピュータ可読媒体は、有線及び無線の両方で、ルータ、専用もしくは公衆ネットワーク、又は他の伝送装置もしくはチャネルを含むコンピュータに命令を送信又は伝送することができる。命令は、例えば、C、C++、C#、Visual Basic、Java(登録商標)、Python、Perl、及びJavaScript(登録商標)を含む、任意のコンピュータプログラミング言語からのコードを含んでもよい。
【0025】
プログラム210は、命令及び/又はデータを含むコンピュータプログラム又はコンピュータ可読コードであってもよく、記憶装置208上に格納可能である。命令は、例えば、C、C++、C#、Visual Basic、Java、Python、Perl、及びJavaScriptを含む、任意のコンピュータプログラミング言語からのコードを含んでもよい。典型的なシナリオにおいて、プロセッサ204は、プログラム210の命令及び/又はデータの一部又はすべてを実行のためにメモリ206にロードしてもよい。プログラム210は、ウェブブラウザ166、ブラウザアプリケーション164、アドレス登録処理156、アプリケーション142、又は他のコンピュータアプリケーションもしくは処理を含むがこれらに限定されない、任意のコンピュータプログラム又は処理であってもよい。プログラム210は様々な命令及びサブルーチンを含んでもよく、それらは、メモリ206にロードされてプロセッサ204によって実行されたとき、プロセッサ204に様々な動作を実行させ、その一部又はすべては、本明細書に開示された医療を管理する方法を実施してもよい。プログラム210は、ハードドライブ、着脱可能なドライブ、CD、DVD、又は他の任意のタイプのコンピュータ可読媒体などを含むがこれらに限定されない、任意のタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体上に格納されてもよい。
【0026】
光源130Aはカート132を含んでもよい。いくつかの実施形態では、システムは、可膨張性バルーン105Bを備える特製カテーテル105Aをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、画像バンドル135B及び光伝送ファイバは、カテーテルの外部からバルーン105Bの内部のカテーテルの遠位領域へ延在してもよい。上述の開示されたシステムに追加された各構成要素の複数の構成要素が存在してもよいことが意図される。システムは、カテーテル105Cのガイドワイヤー、EP蛍光透視システム160、スティーラブルシース(steerable sheath)165A、スティーラブルシース165Bのためのガイドワイヤー、挿入器シースキット165C、インデフレータ170、及び経中隔キット180をさらに含んでもよい。
【0027】
図1Bは、本開示に係る例示的なシステムのブロック図である。AVSシステムは、光源130Aと、必要であれば適切なフィルタリングを行う、カメラ135Aと、1つ又は複数のディスプレイ140Aを有し、画像処理ソフトウェアを備えるコンピュータシステム(図示せず)とを有する体外機器125を含む。AVSシステムは、アブレーション装置140、照射装置130B、及び画像生成装置135Bを含む体内機器を含み、体内構成要素は、カテーテル105Aに関連付けられた体内バルーン105Bの内部にある。可膨張性バルーンカテーテル105Bを有するカテーテル105Aを含む体内機器が体外機器125に接続されることに注意する。いくつかの実施形態では、照射装置130B及び画像生成装置135Bは、治療された組織への光及びその組織からの光を伝送するために光ファイバ導波路を利用してもよい。
【0028】
図1A及び
図1Bをなお参照すると、光源130Aは、心筋の照射のための光源であるレーザを含んでもよい。レーザの出力波長は、健康な心筋の細胞において蛍光を引き起こすために、ターゲット蛍光団(この場合NADH)の吸収範囲内にあってもよい。いくつかの実施形態において、レーザはUVレーザであってもよい。
【0029】
図1A及び
図1Bのいくつかの態様によれば、レーザにより発生されたUV光は、照射のためにずっと大きなパワーを提供してもよく、その波長は、ナノメートルを単位として、必要とされる可能性がある1つの値のみを有する可能性がある。1つよりも多くの波長で放射することは、他の分子(NADH以外)に蛍光を生じさせる可能性があり、また、反射範囲における反射により画像にノイズを発生させたり悪化させたりして、NADHの反射信号を埋没させる可能性があるという点で問題となる可能性がある。所望の照射帯域において放射可能な市販のレーザ源があり、それらは50~200mWの近傍及びそれよりも高い多くの電力設定で利用可能である。本システムは、いくつかの実施形態において、最大で150mWまでの調整可能なパワーを有するレーザを使用する。
【0030】
照射源における波長の範囲は、関心対象の解剖学的構造によって決まる境界を有してもよく、具体的には、NADHの蛍光を最大化するが、わずかに長い波長でのみ活性化されるコラーゲンの蛍光をあまり生じさせない波長を選択することによって決まる境界を有してもよい。いくつかの実施形態では、レーザは300nmから400nmの波長を有する。いくつかの実施形態では、レーザは330nmから370nmの波長を有する。いくつかの実施形態では、レーザは330nmから355nmの波長を有する。いくつかの実施形態では、355nmが使用されてもよい。これは、NADH励起のピークの近くであり、コラーゲン励起の直下であったからである。レーザの出力パワーは、復元可能な蛍光データを生成するのに十分な大きさを有するが、細胞にダメージを与えるほど高くないようにされてもよい。
【0031】
図1A及び
図1Bをなお参照すると、カテーテル105Aは、管のナビゲーション、血液の移動、光源130Aから心筋までの光の伝搬、及び蛍光光の画像収集を含むがこれらに限定されない、多数の機能を実行するために使用可能である。適切なカテーテルの一例は、本願と同じ出願人による特許文献1に開示され、その全体はここに組み込まれる。いくつかの実施形態では、アブレーション技術は、システム及びカテーテル実施形態で収容されるか、又はシステム及びカテーテル実施形態の内部に組み込まれる。
【0032】
図2及び
図3を参照すると、カテーテル105Aは、カテーテル105Aの遠位端における、又はその近くにおける、バルーン105Bを含んでもよい。血液が照射波長及び蛍光波長を吸収するので、バルーン105Bは心筋の面から血液を移動させてもよい。これを達成するために、バルーン105Bは、解剖学的構造物、特に肺静脈の内部にうまく填まるように拡張可能かつ可撓性を有してもよい。バルーン105Bを膨張させるために使用される媒体は、光学的に透明であってもよいが、ただし理想的には、ナビゲーション目的のために蛍光透視法では不透明であってもよい。適切な膨張媒体は、これら両方の要件を満たす重水素(重水)及びCO
2を含むが、これらに限定されない。バルーン105Bは、少なくとも、心筋の照射及び蛍光の両方に関する波長において光学的にクリアである材料から構成されてもよい。バルーン105Bは、可撓性をもたないが肺静脈及び他の構造物の内部に最もうまくフィットする最適の可変サイズを有する材料からなってもよく、又は、シリコーン又はウレタンのような可撓性の材料からなってもよい。いくつかの実施形態では、バルーン105Bは、330nmから370nmのUV範囲において光学的に透明であってもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、バルーン105Bは、UV照射の場合には330nmから370nmにおいて、また、蛍光波長の場合には400nmから500nmにおいて、光学的にクリアである。バルーンに適したUV透明材料は、シリコーン及びウレタンを含むがこれらに限定されない。
【0034】
図2及び
図3をなお参照すると、カテーテル105Aは、UVレーザ光及びオプションで白色光のような照射光を、外部光源からバルーン105Bへ、及びバルーン105Bから心筋へ効率的に伝送するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、レーザ伝送ファイバは、UVレーザ光源から照射光を伝送するために使用されてもよく、通常は、UV効率及び小さな直径のために石英からなる。
【0035】
図2及び
図3のカテーテルは、照射された組織からNADH蛍光光を集めて体外のカメラ(
図1A及び
図1Bを参照)に転送するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、これは、カテーテルの遠位領域から体外のカメラへ延在する画像生成ファイババンドル(
図1Aを参照)を用いて達成されてもよい。いくつかの実施形態では、画像バンドルは、画像の完全性を保持するとともに、それをカテーテルの全長にわたってカメラ及び必要であればフィルタまで送る、1つ又は複数の個別の単一モードファイバを含んでもよい。画像生成バンドルは、柔軟でありかつ小さな直径を有するが、バルーンによって覆われたターゲット組織領域の画像を生成するために十分な視界を実現可能であってもよい。
【0036】
カメラは、見るためにコンピュータシステム(
図1Aを参照)に接続されてもよく、また、NADH蛍光に対応する波長で高い量子効率を有してもよい。そのような1つのカメラはAndor iXon DV860である。NADH蛍光放射帯域外の光を阻止するために、画像生成バンドル及びカメラの間において、435nm及び485nmの間の光学的帯域通過フィルタ、いくつかの実施形態では460nmの光学的帯域通過フィルタが挿入されてもよい。いくつかの実施形態では、画像生成されている組織のピーク蛍光に従って選択されたNADH蛍光放射帯域外の光を阻止するために、画像生成バンドル及びカメラの間において、他の光学的帯域通過フィルタが挿入されてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、カメラによって生成されたディジタル画像は、2D及び3Dの再構成を行うために使用される。いくつかの実施形態では、画像バンドルはカメラに接続されてもよく、カメラはNADH蛍光(fNADH)からディジタル画像を生成してもよく、それはコンピュータ上に表示可能である。コンピュータプロセッサ/コントローラは、ディジタル画像を形成する画素の画素強度のデータを有し、したがって、コンピュータプロセッサ/コントローラは、深さ相関性プロットを生成するための1つ又は複数の2D又は3Dプログラムを使用してもよい。いくつかの実施形態では、NADH蛍光は、コンピュータプロセッサ/コントローラに直接的に伝送されてもよい。
【0038】
図4Aを参照して、本開示のシステムの動作を示す。最初に(ステップ410)、カテーテルは、肺静脈/左心房の接合部又は心臓の他の領域のような、心房細動によって影響を受ける心臓の組織の領域に挿入される。血液は、例えばバルーンによって、視野から除去される。心房細動アブレーションの場合、肺静脈/左心房の接合部における血液を移動させるために、光ファイバ導波路を囲む透明なバルーンを使用可能である。影響を受ける領域は、光源及び光ファイバ又は他の照射装置からの紫外光によって照射されてもよい(ステップ415)。照射された領域における組織は、照射の前又は後に、アブレーション装置を用いてアブレーションされてもよい(ステップ420)。本開示のシステムを用いて、ポイントツーポイントのRFアブレーション又はクライオアブレーション又は、レーザ又は他の既知のアブレーション処置が使用されてもよい。アブレーションは、先端をカテーテルの中央の管腔に通すことにより、又はカテーテルの外部で進行する。処置の後、アブレーション先端は引き込まれてもよい。いくつかの実施形態では、アブレーション先端は、本明細書に開示されたカテーテルに組み込まれてもよい。
【0039】
図4Aをなお参照すると、画像生成バンドル及びカメラの組み合わせによって、照射された領域の画像が生成される(ステップ425)。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の還元体であるNADHの蛍光放射の画像生成に依存する。NAD+は、すべての生きた細胞の好気性代謝の酸化還元反応において重要な役割を果たす補酵素である。それは、クエン酸回路(三カルボン酸回路)から電子を受けることで酸化剤として作用する。このことはミトコンドリアにおいて生じる。したがってこの処理によって、NAD+は還元される。NADH及びNAD+は、細胞の呼吸装置であるミトコンドリアではとても豊富にあるが、さらに細胞質の中にもある。NADHは、ミトコンドリアにおける電子及び陽子の供与体であり、これにより、細胞の代謝を調整し、DNAの修復及び転写を含む多数の生物学的処理に参加する。
【0040】
UVによって引き起こされた組織の蛍光を測定することによって、組織の生化学的状態について学習することができる。NADH蛍光は、細胞の代謝活性及び細胞死をモニタリングする際の使用について研究されている。生体外及び生体内の複数の研究は、細胞死(アポトーシス又は壊死のいずれか)のモニタリングの固有バイオマーカーとしてNADH蛍光強度を使用する可能性を調査した。いったんNADHがダメージを受けた細胞のミトコンドリアから放出されるか、その酸化体(NAD+)に変換されたとき、その蛍光は著しく減退するので、それはダメージを受けた組織から健康な組織を区別するのに非常に有用である。NADHは、酸素が利用可能ではない虚血状態において細胞に蓄積される可能性があり、蛍光の強度を増大させる。しかしながら、死細胞の場合には、NADHの存在はすべて消える。以下の表に、NADH蛍光に起因する相対強度の異なる状態をまとめる。
【0041】
【0042】
図4Aをなお参照すると、NAD+及びNADHの両方がUV光を非常に容易に吸収しているが、NADHはUV励起に応じた自己蛍光であるのに対して、NAD+はそうではない。NADHは、約350~360nmのUV励起ピーク及び約460nmの蛍光ピークを有する。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、約330~約370nmの間の励起波長を使用してもよい。したがって、適切な装置を用いることで、関心対象の領域内の壊死組織に加えて、低酸素症のリアルタイム測定として蛍光波長の画像を生成することができ。さらに、NADH蛍光に比例するグレースケールによって相対的計量を実現することができる。
【0043】
低酸素状態の下では、酸素レベルは減退する。後のfNADH蛍光信号の強度が増大する可能性があり、これは、ミトコンドリアのNADHの過剰を示す。低酸素症がチェックされないままにされる場合、影響を受けた細胞がそれらのミトコンドリアとともに死ぬとき、最終的に、信号の完全な減衰が生じる。NADHレベルの高いコントラストは、致死的なダメージを受けたアブレーションされた組織の周囲を識別するために使用されてもよい。
【0044】
図4Aをなお参照すると、蛍光画像生成を始めるために、オペレータは、カテーテルの遠位部分のまわりに設けられるバルーンを配備してもよい。次に、NADHは、UVレーザのような光源からのUV光によって励起される。組織標本におけるNADHは、光の励起波長を吸収し、より長い波長の光を放射する。放射光が集められてカメラに送られてもよく、画像生成された照射された領域の表示がディスプレイ上に生成されてもよく(ステップ430)、これは、NADH蛍光を用いて、画像生成された領域におけるアブレーションされた組織及びアブレーションされていない組織を識別するために使用される(ステップ435)。その後、追加の組織のアブレーションを行う必要がある場合、処理はアブレーションステップに戻って繰り返されてもよい。
図4Aは逐次に実行されているステップを示すが、ステップのうちの多くが同時に又はほとんど同時に実行されてもよく、又は、
図4Aに示すものとは異なる順序で実行されてもよいことが認識されるべきである。例えば、アブレーション、画像生成、及び表示が同時に行われる可能性があり、また、組織のアブレーションを行いながら、アブレーションされた組織及びアブレーションされていない組織の識別が行われる可能性がある。
【0045】
プロセッサ又はコンピュータによってコンピュータシステムにおいて実行されるアプリケーションソフトは、医師へのインターフェースをユーザに提供することができる。主な機能のうちのいくつかは以下のものを含むことが可能である。
レーザ制御、カメラ制御、画像取り込み、画像調整(明るさ及びコントラスト調整など)、損傷識別、損傷深度分析、処置イベント記録、及びファイル操作(作成、編集、削除など)。
【0046】
図4Bは、損傷深度処理を決定するフローチャートを示す。ステップ440は、コンピュータディスプレイから、アプリケーションソフトにより、NADH蛍光を用いて、画像生成された領域におけるアブレーションされた組織及びアブレーションされていない組織を識別することを開示する。ステップ445は、1つ又は複数の損傷に特有の1つ又は複数の関心対象画像を識別して損傷深度分析を開始することを開示する。ステップ450は、損傷の関心対象画像の内部における健康な組織の領域を識別することを開示する。非限定的な例示として、
図6A及び
図6Bを参照すると、心臓におけるNADHの画像生成蛍光は、蛍光の欠如に起因した暗い外観を有する損傷部位と、正常な蛍光に起因する明るい外観を有するギャップと、損傷部位を包囲するより明るい光ぼけ型の外観を有する任意の虚血組織との生理学的表示を生成することができる(
図6A及び
図6Bを参照)。いったん1つ又は複数の損傷が識別されたとき、それらは損傷深度分析のために選択される。
【0047】
ステップ455は、識別された健康な組織で観察されたNADH蛍光強度に対する各画素で観察されたNADH蛍光強度の比を用いて、画像全体を正規化することを開示する。ステップ460は、結果として得られた正規化画像データを、予め確立されたデータセットから導出されたアルゴリズムであって、正規化された強度の比を損傷の深さに相関させるアルゴリズムを用いて処理することを開示する。損傷の深さは、損傷を有する組織の蛍光に対する健康な組織の蛍光の比を用いて計算可能である。最初に、ユーザは、画像内の健康な組織の領域を識別する。次いで、アプリケーションソフトウェアは、識別された健康な組織で観察されたNADH蛍光強度に対する各画素で観察されたNADH蛍光強度の比を用いて、画像全体を正規化する。次いで、結果として得られた正規化画像データは、予め確立されたデータセットから導出されたアルゴリズムであって、正規化された強度の比を損傷の深さに相関させるアルゴリズムを用いて処理される。対照として患者自身の心筋のNADH蛍光を使用することによって、本方法は、患者間の絶対NADH蛍光の変動の影響を大幅に低減し、さらに、照射及び画像生成システムにおける光損失と、鏡面反射及び拡散反射に起因する光強度の変動と、他の光学的な非理想的状態とを大幅に低減する。
【0048】
ステップ465は、損傷にわたる1つの直線に沿って行われた深度分析が完了することを開示する。これは、単一の場所、直線、又は領域からの情報から複数の損傷におけるただ1つ場所について実行可能である可能性がある。
図4C-4Fは、単一の直線に沿って実行された深度分析を示す。例えば、
図4Cは、6回のアブレーションが行われた犬の心臓の画像を示す。正方形は単一アブレーションの損傷を包含する。
図4Dは、血液を潅流した犬の心臓の同じ領域から取得されたNADH蛍光(fNADH)画像を右上に示す。
図4Eは、単一の直線に沿って実行された2d深度マップであって、
図4Dのディジタル画像に基づいて、すなわちディジタル画像を形成する画素の強度から生成された2d深度マップである。
図4Fは、ヘマトキシロン及びエオシンで染色され、同じ直線に沿って切断された犬の心臓の組織であり、これは、損傷(正方形は損傷の境界を示す)の実際の深さを示し、最も深い領域は
図4Dの最も暗いスポット及び
図4Eの最も低いfNADHに対応する。
【0049】
ステップ470は、最初の直線に平行な複数の異なる直線に沿ってステップ460~470を繰り返し、各直線の深度データから、1つ又は複数の損傷部位の3D再構成モデルを構成することを開示する。損傷にわたる単一の直線に沿って実行された深度分析処理は、最初の直線に平行な複数の異なる直線に沿って、必要に応じて何度でも繰り返し可能であり、各直線の深度データから、損傷部位の3D再構成モデルを構成することができる。
【0050】
非限定的な例示として、
図4Gは、fNADHによって画像生成された、アブレーションによる2つの損傷と損傷間のギャップとのディジタル画像を示す。
図4Hは、
図4Gのディジタル画像の画素強度からの3D再構成物を示す。上述したように、さらなる診断又は治療のために2Dデータ及び3Dデータの両方が使用されてもよい。
【0051】
カメラによって検出された蛍光の強度を測定してプロットすることができ、最も弱い蛍光(最も暗い部分)は最も深い損傷に対応し、最も強い蛍光(最も明るい部分)はアブレーションされていない組織又は健康な組織に対応する。明及び暗の極値の間における任意レベルのグレーは、概して、組織の損傷の深さの程度に対応する。カメラセンサの感度は、完全な黒色及び完全な白色の間のグレーレベルの個数を決める。そのようなアプリケーションでは、8ビット及び16ビットの分解能にそれぞれ対応する256レベル及び65536レベルを含むいくつかの2進数が一般的である。8ビットの感度の場合には、0は完全な黒色であり、255は完全な白色であり、それらの間に254レベルのグレーがある。このグレースケール画像を使用すると、適切な深度マップを評価することができる。いくつかの実施形態では、24ビットの分解能が使用されてもよい。
【0052】
fNADH画像生成は、アブレーションによる心臓の損傷の直径及び深さを、確実かつ再生可能な方法で予測できるということに注意する。fNADH強度の喪失は、複数のRF損傷の実際の測定された直径及び深さに対して、より大きな96%及び79%の相関係数でそれぞれ相関した。UV照射が2mmよりも深く心臓の組織に確実に貫入できないことに起因して、2mmを超える損傷の深さで相関が失われる可能性がある。さらに深い損傷では、さらなるfNADHを検出できない可能性があり、従って、約2mmの損傷の深さにおいて、fNADH信号強度の再現可能なプラトーが観察された。しばしばアブレーションのターゲットになる左心房の場所における平均の左心房壁厚は、CTスキャンによって測定すると、1.85mmである。従って、RF損傷にわたるfNADH信号強度の観察された最下点及びプラトーは、十分な損傷深さを明確かつ絶対的に決定するための妥当性のあるモデルとして作用する。
【0053】
本明細書に開示した方法、システム、及び装置は、さまざまな治療処置に使用加納である。本明細書に開示した方法、システム、及び装置を利用可能である例示的な処置は、心臓中の診断及び治療処置と、例えば上室性不整脈及び心室性不整脈のような、不整脈の治療と、心房細動の治療と、肺静脈のマッピング及びアブレーションとを含むがこれらに限定されない。アブレーションされた組織は、心筋(心外膜又は心内膜の心筋)であってもよいが、本明細書に開示した方法は、骨格筋、肝臓、腎臓、及びNADHに富んだミトコンドリアが有意に存在する他の組織に対しても同じ効果を有するはずである。
【0054】
ここに開示した方法は、2次元(2D)から3次元(3D)へのマッピングプロトコルとともに使用可能である。複数の2D画像を、心臓を含む組織又は器官の3D再構成画像の上に重ね合わせることができる。多くの不整脈処置は、処置の間に患者の特定の解剖学的構造物の再構成された3次元画像を使用することを含む。コンピュータ断層撮影(CT)、核磁気共鳴映像法(MRI)、超音波、及びNAVX及びCARTOのような電気解剖学的マッピングを用いるシステムを含むさまざまな画像診断療法が使用される。すべての場合において、3次元解剖学的画像又は面は、患者の特定の解剖学的構造を提示して、組織のターゲット領域の治療を支援する。すべての場合において、損傷が形成される正確な場所と、損傷が存在しない正確な場所、例えば損傷集合における「ギャップ」又は中断部)を可視化する能力は、治療の結果を最適化するように処置をガイドするだろう。2D画像から3D画像へのマッピングは、3次元的かつ回転可能な対話型の仮想環境において、患者の特定の解剖学的構造を有する組織の単一又は複数の画像(損傷の存在又は不在を示す可能性がある)の重ね合わせ、空間的な登録、及び/又はテクスチャマッピングをシステムにより行うことを可能にする。
【0055】
いくつかの実施形態では、本開示のシステム及び方法は、MRI画像、コンピュータ断層撮影(CT)画像、超音波映像、及びそれらの3次元再構成物のような他の画像診断療法を使用して見られるような患者の特定の解剖学的構造物上に、システムによって生成された画像の登録及び/又はオーバレイを行うことを可能にする。いくつかの実施形態では、本開示のシステム及び方法は、他の電気解剖学的マッピング、解剖学的再構成、及びNAVX及びCARTOのようなナビゲーションシステムを用いて見られるような患者の特定の解剖学的構造物上に、システムによって生成された画像の登録及び/又はオーバレイを行うことさらに含んでもよい。登録及びオーバレイは、処置の間にリアルタイムで実行されてもよい。再構成された心内膜の面の上へNADH画像のテクスチャマッピングを行うことは、治療部位の可視化を可能にする。例えば、損傷の複数のNADHスナップショットは、肺静脈開口部全体又は複数の肺静脈の完全なパノラマ画像を作成することができる。カテーテルの先端における位置決めセンサは、複数のNADH画像を互いに組み合わせて3D再構成画像を作成することを可能にする情報を提供することができる。
【0056】
本開示のシステム及び方法を使用する例を以下に提示する。これらの例は、単に代表的なものであり、本開示の範囲を限定するために使用されるべきではない。本明細書に開示した方法及び装置には、種々様々の代替設計が存在する。従って、選択した例は、ほとんど、本明細書に開示した装置及び方法の原理を実証するために使用される。
【実施例】
【0057】
損傷深度分析の方法を開発するために、アブレーションされた損傷及び損傷画像を生成する機能的に等価なシステムを用いて実験が行われた。実験セットについて以下に説明する。
【0058】
365nmのピーク波長を有するLEDスポットライトを用いて心外膜の面を照射するNADH蛍光システムが提供された(PLS-0365-030-07-S,Mightex Systems)。放射された光は、460nm±25nmにおいて帯域通過フィルタリングされ、低倍率レンズが取り付けられたCCDカメラ(Andor Ixon DV860)を用いて画像生成された。心外膜組織の状態をモニタリングするために、NADHの蛍光(fNADH)の画像が生成された。
【0059】
標準的な臨床RF発生器(Boston ScientificによるEPT1000アブレーションシステム)でRFAが実行されるRFAシステムが提供された。発生器は、損傷を生じさせるために、4mmの冷却されたBlazer(登録商標)アブレーションカテーテル(Boston Scientific)を介して動物に電気的に接続された。接地パッドは、アブレーションの際に使用された。発生器は温度制御モードに設定された。液体窒素に浸漬されたカスタムメイドの金属プローブを用いて、又は、MedtronicによるFreezor(登録商標)MAX心臓クライオアブレーションカテーテルを用いることによって、クライオアブレーションが実行された。
【0060】
図5A及び
図5Bを参照すると、まず、健康な心臓の組織におけるNADH励起及び蛍光スペクトルについてベースラインデータが取得された。
図5A及び
図5Bは、組織の励起-蛍光マトリックスを示す。NADHの存在に起因して、健康な組織は、330nmから370nmの範囲で励起されたとき、450nm及び470nmの間で強く放射する。NADHに関連付けられた大きなピークは、アブレーションされた組織には存在しない。
【0061】
図6A及び
図6Bに、典型的なRFA損傷の一例を示す。左側の画像は白色光の照射を使用して取り込まれ、一方,右側のfNADH画像は460nmのフィルタを有するUV励起を用いて取り込まれている。
【0062】
すべての動物プロトコルは、ジョージワシントン大学医学部の動物実験委員会によってレビューされて承認され、動物研究のガイドラインに適合された。
【0063】
最初に、生体外の実験は、ラット(200-300gのスピローグドーリー)から摘出された血液なしの心臓を用いて行われた。動物は、標準的な処置を用いてヘパリン処理されて麻酔された。胸部は正中切開を用いて開かれた。その後、心臓は摘出され、大動脈にカニューレが挿入され、定圧でランゲンドルフ潅流された。心臓は、RFAアブレーション中に、接地パッドの上に配置され、摂氏37度のタイロード液中に浸漬された。代替として、クライオプローブが、心外膜の表面に直接的にあてがわれた。
【0064】
異なるサイズのRFA損傷を生成するために温度及び継続時間を変化させながら、摘出された血液なしのラットの心室の心外膜にラジオ波エネルギーが印加された。2グラムの一様な接触力が、較正されたはかりによって測定された。RF印加の温度(摂氏50、60、及び70度)及び時間(10、20、30、40、50秒)を変化させることにより、異なるサイズの損傷が生成された。6つの異なるラット心臓の標本において、合計で12個のRFA損傷が生成された。
【0065】
損傷及び周囲の組織のNADH蛍光は、Mightex Precision LEDスポットライトを用いて、365nmのUV光で心外膜の表面を照射することにより測定された。fNADHに対応する光は、460/25nmの帯域通過フィルタを用いて選択され、高感度電荷結合素子カメラを用いて画像生成された。損傷はさらに、損傷のサイズを測定するための巻き尺に隣接させて、明るい光で画像生成された。その後、fNADH画像は、ImageJソフトウェアへインポートされることで、サイズが測定され、また、各損傷の暗度プロファイルが分析された。暗度プロファイルは、各fNADHの画像生成されたアブレーション損傷の中心を通るように直線状の関心対象領域(ROI)を配置して、損傷の周囲にわたる各点における画素強度を測定することで評価された。その後、心室組織は、組織の壊死について評価するために、トリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)を含むタイロード液で逆行潅流された。心外膜の病変は、組織傷害の肉眼的及び組織学的測定のために切除された。
【0066】
生体内の実験は、犬の開胸のモデルを使用して行われた。動物は、全身麻酔の誘入の後に開胸手術を受けた。4mmのラジオ波アブレーションカテーテルを用いて、様々な継続時間及び温度で複数の損傷が心外膜の表面に与えられた。その後、心臓の心外膜の表面は、365nmのUV光(Mightex precision LEDスポットライト)で照射され、対応するfNADHは、460/25nmフィルタを介して、高い量子効率の蛍光カメラ(Andor Ixon DV860カメラ)に接続された。損傷は、損傷のサイズを測定するための巻き尺とともに、明るい白色光の下で画像生成された。
【0067】
ラット実験の後で、動物の心臓がTTCで染色されて検死が行われた。TTCは、急性の壊死を評価するための標準的な処置である。これは、テトラゾリウム塩と反応してホルマザン顔料を形成する、脱水素酵素酵素及びNADHの能力に依存する。代謝的に活性の組織は深紅色に見え、その一方で、壊死組織は白色に見えた。TTCの染色後に、損傷は、対応するROIにわたる損傷の深さを測定するために、画素強度分析の前に定義された中央の直線状ROIにおいて二分された。損傷の形態論、幅、長さ、及び深さは、肉眼的検査で決定されて記録された。
【0068】
犬の実験では、複数の心外膜の損傷の切片は、長手方向に二分され、組織学的な染色(ヘマトキシロン-エオシン)に供された。その後、標本は40倍の光顕微鏡検査の下で分析され、熱によって生じた細胞ダメージ及び壊死の程度を決定するために形態の変化が特徴づけられた。
【0069】
統計分析は、2つの独立な読み取り装置がfNADH及びTTCの染色によって損傷サイズを測定し、平均及び標準偏差を記録することを含むものであった。fNADH及びTTCの染色による損傷サイズの相関係数も取得されて記録した。
【0070】
その結果は、まず、心外膜のfNADHが損傷サイズに関連づけられたことを含む。ラットモデルにおいて、心外膜の表面における合計で12個の損傷が生成され、fNADH及びトリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)の染色を用いて2つの独立な読み取り装置によって測定された(
図7A、
図7B、及び図を7C参照)。
図7Aに、典型的なfNADH画像を示し、
図7Bに、TTCの染色を使用する実際の損傷直径の測定を示す。TTCを用いた損傷の直径の長さ(上側亜画像、7A)は、対応するfNADH画像から得られた損傷の直径(下側画像、7B)と相関した。
図7Cは、損傷サイズ対アブレーション実行回数の概要のグラフを示す。すべての損傷サイズについて、心外膜のfNADHは、TTCの染色によって決定されるような実際の損傷の直径を正確に予測した。平均のNADH及びTTCの直径は、96%の相関係数で、それぞれ7.9±1.85mm及び8.2±1.95mmであった。
【0071】
ラットの心臓において、心外膜の表面で変化する深さを有する多数の損傷を得るために、温度及び損傷生成回数が変更された。その後、心外膜のfNADHの強度は、損傷の中心線に沿って複数回にわたって測定された。
図8A、
図8B、
図8C、及び
図8Dに例示的な損傷の集合を示す。上パネル(
図8A)では、
図8Cの損傷#1にわたる直線についてfNADHを示す。
図8Bは、同じ損傷にわたるTTCで染色された心臓から得られた、測定された深さを示す。
図8Dは、グラフ(
図8A)で使用されたfNADHの反転画像を示す。これは、より高い強度の反転したfNADHが、図示した損傷の深さと相関し、同様の形状を有するように実行された。
【0072】
図9及び
図10を参照すると、損傷の深さは、
図9にまとめてプロットした、反転したfNADH信号強度に比較された。さらに、損傷は、摂氏50度において10、20、30、40、及び50秒間かけてそれぞれ生成された。変化する温度で同様の比較が行われ、同様のことがわかった(
図9及び
図10を参照)。
【0073】
図11を参照すると、変化する温度及び損傷継続時間で生成された損傷を用いて、指定された温度で、複数の異なる継続時間について、線形の相関係数が取得された。
図11は、摂氏60度において、相関係数がアブレーションの継続時間に依存して0.84から0.97までの範囲を有する結果を示す。
【0074】
損傷の深さの3D再構成物は、fNADHの個々のマップから損傷にわたる5つの平行線のみを用いてグレースケールを収集し、3Dグラフ表示プログラムを用いて値をプロットすることにより、犬の心外膜の画像から取得された。
【0075】
図12A及び
図12B、
図12C及び
図12D、及び
図12E及び
図12Fは、低温による損傷(cryolesion)、ラジオ波による損傷、及び低温による複数の損傷の3D再構成物をより高い分解能でそれぞれ示す。複数の損傷を表示するプロットにおいて損傷の深さの変動が見えることに注意する。
【0076】
実験結果は、心外膜の損傷のサイズの正確な測定値として、かつ、損傷の深さの予測子として、fNADHを確認する。深さの3D再構成は、アブレーション画像を通る複数の直線に沿って上述した方法の繰り返して、その結果を組み合わせることにより可能である(
図10、
図12A、
図12B、及び図を12C参照)。
【0077】
図13Aは、例えば、クライオアブレーションカテーテルを用いて作成されたアブレーションされた損傷のfNADH画像を示し、
図13Bは、上に注意したように、同じものの拡大画像である。
図13Cは、アブレーションされた同じ損傷の3D深度再構成相関プロットを示す。主な相違は、
図12がRFAで作成されたいくつかのアブレーション損傷を含み、RFA及び低温による損傷が3Dでは異なる外観を有するということである。
【0078】
図14を参照すると、RFA損傷は、それらが周囲のより健康な心筋と比較して非常に低いか又は検知不可能なfNADHを示したので、生組織から優れた分解能で検知可能かつ識別可能であった。fNADHによって画像生成されたとき、損傷の直径は、TTCによる測定された損傷サイズ(平均のNADHの直径7.9±1.85mm、平均のTTCの直径8.2±1.95mm、相関係数[CC]96%)に正確に相関した。心外膜fNADHの強度は、TTC分析によって測定された実際の損傷の深さと逆に相関した。この関係は、最大で1.8mmの損傷の深さまでのすべてのRFA変数について79%を超えるCCで再現され(有意性p<0.0001)、それを越えると、
図14に示すように、fNADH信号強度は飽和してプラトーが生じた。
【0079】
心外膜のfNADHに対する損傷の深さの関係は、統計的有意性を有して再現可能であった。異なるサイズの複数の損傷が、RF継続時間及び温度を変化させることで、ラットの心室の心外膜に生成された。これらの複数の損傷について、fNADH信号強度を反転させて損傷の深さの分析が行われた。fNADH強度の喪失は、78%のピアソン相関係数で損傷の深さと相関し、最大で約2mmの損傷の深さまで高い有意性を有していた(p<0.0001)。2mmを超えると、関係はその有意性を失い、fNADH値にプラトーが生じた。
【0080】
いくつかの実施形態では、アブレーションされた組織及びアブレーションされていない組織の画像を生成するシステムは、
紫外線(UV)レーザ光源と、
UVレーザガイド及び画像ガイドを含む可膨張性バルーンカテーテルと、
カテーテルに接続された体外蛍光カメラと、
ディスプレイを備え、カメラに接続されたコンピュータと、
画像生成ソフトウェアとを備える。
【0081】
いくつかの実施形態では、カテーテルは、カテーテルナビゲーション、及び/又は、ラジオ波電極、レーザアブレーション能力、又はクライオアブレーション能力を含むアブレーション治療技術のためのガイドワイヤーポートをさらに含む。
いくつかの実施形態では、バルーンは、シリコーン又はウレタンのような可撓性の材料からなってもよく、330nmから370nmのUV範囲において光学的に透明であってもよく、430nmから490nmの蛍光光範囲において光学的に透明であってもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、損傷の深さを推定する方法は、
組織のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド水素(NADH)蛍光データを取得して表示するステップと、
画像内の健康な組織の領域を識別するステップと、
識別された健康な組織で観察されたNADH蛍光強度に対する画像の各画素で観察されたNADH蛍光強度の比を用いて、画像全体を正規化するステップと、
アブレーションされた組織の1つ又は複数の領域を識別するステップと、
結果として得られた正規化された画像を損傷の深さに相関させるためのアルゴリズムの適用するステップとを含んでもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、相関アルゴリズムは、予め確立されたデータセットであるデータを使用し、正規化された強度の比を損傷の深さに相関させる。
いくつかの実施形態では、損傷の深さの推定値は、対照として患者自身の心筋のNADH蛍光を使用する。
いくつかの実施形態では、アブレーションは、以下の技術、ラジオ波アブレーション、レーザアブレーション、又はクライオアブレーションのうちの1つ又は複数を使用することで実行される。
組織は心臓の組織であってもよい。
いくつかの実施形態では、推定された損傷の深さの横断面のプロットは、ユーザによって示された直線に沿って作られる。
いくつかの実施形態では、推定された損傷の深さの3Dプロットは、一連の横断面のプロットを組み合わせることで作られる。
【0084】
いくつかの実施形態では、心房細動を治療する方法は、
肺静脈の口のような、心臓の組織の所定の領域においてNADH蛍光データを取得して表示することと、
画像にわたって損傷の深さを分析することと、
健康な心臓の組織を識別することと、
適切な損傷を識別することと、
もしあれば、不完全な損傷を識別することと、
もしあれば、虚血ゾーン(損傷しているが壊死していない組織)を識別することと、
損傷の直線における識別されたギャップを埋めるため、不完全な損傷を完全にするため、あるいは虚血ゾーンに橋状に連結するために、必要な場合、アブレーション治療を再び行うことと、
修復された組織を再取得して表示するために必要な場合、上述のステップを繰り返すことと、
残りの肺静脈、左心房の他の部分、又はさらに、上大静脈を含む右心房の特定の領域のような、心臓の他の領域に対して上述のステップを繰り返すこととを含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、アブレーションされた心内膜の心臓筋組織、肺静脈/左心房の接合部におけるアブレーションされていないギャップ、及び近位端及び遠位端を有する損傷の深さの画像を生成するカテーテルは、
光を伝送可能な透明な流体で膨張される、UVで透明な材料からなる可膨張性の透明な可撓性又は非可撓性のバルーンであって、遠位端においてNADH蛍光の可視化を可能にするために周囲の血液を移動させるために使用されるバルーンと、
遠位端において、UV光を伝送可能なファイバを用いて肺静脈及び左心房の組織のミトコンドリアのNADHを励起する紫外線照射装置と、
遠位端において、照射された肺静脈及び左心房の組織からNADH蛍光を検出するマイクロファイバースコープと、
近位端において、マイクロファイバースコープに接続され、検出されたNADH蛍光から画像を作成する蛍光カメラであって、マイクロファイバースコープによって取り込まれた照射された肺静脈及び左心房の組織からNADH蛍光を検出するために460nm±25nmの帯域通過フィルタを含む蛍光カメラとを備え、
検出された蛍光データは、蛍光の欠如に起因した暗い外観を有する損傷部位と、正常な蛍光に起因した明るい外観を有するギャップと、損傷部位を包囲するより明るい光ぼけ型の外観を有する任意の虚血組織との生理機能を示し、
カテーテルは、損傷部位の長さにわたる直線に沿った検出された蛍光強度をプロットすることで、当該直線に沿った損傷部位の深さを決定するモジュールを備え、
最も弱い蛍光強度の測定値は損傷部位の最も深い点に対応し、最も強い蛍光はアブレーションされていない組織に対応する。
【0086】
いくつかの実施形態では、モジュールは、完全な黒色から完全な白色までの範囲を有する画素グレースケールであって、0が完全な黒色であり、最も深い点であり、255が完全な白色であり、最も浅い点であり、256(0~255)レベルのグレーを提供する画素グレースケールを適用し、これにより、直線に沿った損傷部位の深さの2Dマップを作成する。
アブレーションされた組織の深さの2Dマップは絶対測定値であり、fNADH信号強度は、以前に確立されたfNADH/深度のグレー値スケールに正規化される。
【0087】
いくつかの実施形態では、アブレーションされた組織の深さの2Dマップは、損傷部位の幅にわたる垂直の直線に沿って複数回にわたって繰り返され、
深さの2Dマップのそれぞれは損傷部位の長さに沿った直線に平行であり、
垂直の直線において、アブレーションされた組織の深さの各2Dマップのそれぞれを統合し、
アブレーションされた組織の深さの3D画像を再構成する。
【0088】
いくつかの実施形態では、カテーテルは、柔軟なガイドワイヤーを挿入するためのガイドワイヤー管腔をさらに備える。
カメラは高い量子効率を有するCCDカメラであってもよい。
いくつかの実施形態では、マイクロファイバースコープが光学的画像生成バンドルである。
いくつかの実施形態では、UV照射は、330~370nmの間、より具体的には355nmにおけるレーザ光源によって提供される。
いくつかの実施形態では、UV照射ファイバの先端は、UV光を屈折させて拡散するための発散レンズで覆われている。
【0089】
いくつかの実施形態では、アブレーションされた心内膜の心臓筋組織、肺静脈及び左心房の接合部におけるアブレーションされていないギャップ、及び損傷の深さのリアルタイム画像を取得する方法は、
光を伝送可能な透明な流体で膨張される、UVで透明な材料からなる可膨張性の透明な可撓性のバルーンであって、遠位端においてNADH蛍光の可視化を可能にするために周囲の血液を移動させるために使用されるバルーンと、
肺静脈及び左心房の組織のミトコンドリアNADHを励起するための紫外線の光で照射することと、
光学的画像生成バンドルを用いて、照射された肺静脈及び左心房の組織からNADH蛍光を検出することと、
検出されたNADH蛍光を460nmの帯域通過フィルタでフィルタリングすることにより、蛍光カメラで画像を作成することとを含み、
検出された蛍光データは、蛍光の欠如に起因した暗い外観を有する損傷部位と、正常な蛍光に起因した明るい外観を有するギャップと、損傷部位を包囲するより明るい光ぼけ型の外観を有する任意の虚血組織との生理機能を示し、
本方法は、損傷部位の長さにわたる直線に沿った検出された蛍光強度をプロットすることで、当該直線に沿った損傷部位の深さを決定するモジュールを備える。
最も弱い蛍光強度の測定値は損傷部位の最も深い点に対応し、最も強い蛍光はアブレーションされていない組織に対応する。
いくつかの実施形態では、モジュールは、完全な黒色から完全な白色までの範囲を有する画素グレースケールであって、0が完全な黒色であり、最も深い点であり、255が完全な白色であり、最も浅い点であり、256(0~255)レベルのグレーを提供する画素グレースケールを適用し、これにより、直線に沿った損傷部位の深さの2Dマップを作成する。
アブレーションされた組織の深さの2Dマップは絶対測定値であり、fNADH信号強度は、以前に確立されたfNADH/深度のグレー値スケールに正規化される。
いくつかの実施形態では、アブレーションされた組織の深さの2Dマップは、損傷部位の幅にわたる垂直の直線に沿って複数回にわたって繰り返され、
深さの2Dマップのそれぞれは損傷部位の長さに沿った直線に平行であり、
垂直の直線において、アブレーションされた組織の深さの各2Dマップのそれぞれを統合し、
アブレーションされた組織の深さの3D画像を再構成する。
いくつかの実施形態では、組織のアブレーションを行うためにラジオ波、クライオアブレーション、又はレーザカテーテルが使用されている間に、照射、画像生成、および生成が実行される。
いくつかの実施形態では、照射及び画像生成は、管腔カテーテルの先端に接続され、紫外光源から照射される組織へ紫外線を伝送する光ファイバ導波路を用いて実行される。
いくつかの実施形態では、アブレーションは、ラジオ波カテーテル、クライオアブレーションカテーテル、又はレーザアブレーションカテーテルのうちの1つを用いることで実行される。
【0090】
いくつかの実施形態では、システムは遠位端及び近位端を有するカテーテルを備え、アブレーションされた肺静脈及び左心房の心臓組織と、アブレーションされていないギャップとの画像を生成し、
本システムは、
透明な流体で膨張される可膨張性の可撓性又は非可撓性のバルーンであって、遠位端においてNADH蛍光の可視化を可能にするために周囲の血液を移動させるバルーンと、
遠位端において、組織を照射するための紫外線照射装置と、
遠位端において、照射された組織を検出するマイクロファイバースコープと、
近位端において、ファイバースコープに接続され、ファイバースコープによって取り込まれた照射された組織からの紫外線放射を伝送するように構成されたフィルタを含む、2D画像を作成する蛍光カメラと、
検出された2D画像は、蛍光の欠如に起因した暗い外観を有する損傷部位と、正常な蛍光に起因した明るい外観を有するギャップと、損傷部位を包囲するより明るい光ぼけ型の外観を有する任意の虚血組織とを示し、
本システムは、
遠位端において、検出された2D画像に基づいて心臓組織のアブレーションを行うアブレーション装置と、
損傷部位の長さにわたる直線に沿った検出された蛍光強度をプロットすることで、当該直線に沿った損傷部位の深さを決定するモジュールとを備える。
最も弱い蛍光強度の測定値は損傷部位の最も深い点に対応し、最も強い蛍光はアブレーションされていない組織に対応する。
いくつかの実施形態では、モジュールは、完全な黒色から完全な白色までの範囲を有する画素グレースケールであって、0が完全な黒色であり、最も深い点であり、255が完全な白色であり、最も浅い点であり、256(0~255)レベルのグレーを提供する画素グレースケールを適用し、これにより、直線に沿った損傷部位の深さの2Dマップを作成する。
アブレーションされた組織の深さの2Dマップは絶対測定値であり、fNADH信号強度は、以前に確立されたfNADH/深度のグレー値スケールに正規化される。
いくつかの実施形態では、アブレーションされた組織の深さの2Dマップは、損傷部位の幅にわたる垂直の直線に沿って複数回にわたって繰り返され、
深さの2Dマップのそれぞれは損傷部位の長さに沿った直線に平行であり、
垂直の直線において、アブレーションされた組織の深さの各2Dマップのそれぞれを統合し、
アブレーションされた組織の深さの3D画像を再構成する。
いくつかの実施形態では、体外のカメラに接続されたディスプレイは、検出された2D画像を示す。
いくつかの実施形態では、アブレーション装置は、近位端及び遠位端を有するアブレーションカテーテルである。
いくつかの実施形態では、アブレーションカテーテルは、レーザ伝送カテーテル、ラジオ波伝送カテーテル、又はクライオアブレーションカテーテルである。
【0091】
いくつかの実施形態では、アブレーションされた心外膜の心臓筋組織及びアブレーションされていなギャップの画像を生成するカテーテルであって、近位及び遠位端を有するカテーテルは、
心外膜の心臓筋組織のミトコンドリアNADHを励起する紫外線照射装置と、
遠位端において、照射された心外膜の心臓組織からNADH蛍光を検出するファイバースコープと、
近位端において、ファイバースコープに接続され、検出されたNADH蛍光から画像を作成する蛍光カメラであって、ファイバースコープによって取り込まれたNADH蛍光を検出するために460nmの帯域通過フィルタを含む蛍光カメラとを備え、
検出された2D画像は、蛍光の欠如に起因した暗い外観を有する損傷部位と、正常な蛍光に起因した明るい外観を有するギャップと、損傷部位を包囲するより明るい光ぼけ型の外観を有する任意の虚血組織とを示し、
本カテーテルは、損傷部位の長さにわたる直線に沿った検出及び測定された蛍光強度をプロットすることで、当該直線に沿った損傷部位の深さを決定するモジュールを備え、
最も弱い蛍光強度の測定値は損傷部位の最も深い点に対応し、最も強い蛍光はアブレーションされていない組織に対応する。
いくつかの実施形態では、モジュールは、完全な黒色から完全な白色までの範囲を有する画素グレースケールであって、0が完全な黒色であり、最も深い点であり、255が完全な白色であり、最も浅い点であり、256(0~255)レベルのグレーを提供する画素グレースケールを適用し、これにより、直線に沿った損傷部位の深さの2Dマップを作成する。
アブレーションされた組織の深さの2Dマップは絶対測定値であり、fNADH信号強度は、以前に確立されたfNADH/深度のグレー値スケールに正規化される。
いくつかの実施形態では、アブレーションされた組織の深さの2Dマップは、損傷部位の幅にわたる垂直の直線において繰り返され、損傷の長さに沿った直線に平行であり、
垂直の直線において、アブレーションされた組織の各深さのそれぞれを統合し、
アブレーションされた組織の深さの3D画像を再構成する。
【0092】
いくつかの実施形態では、近位端及び遠位端を有し、アブレーションされた心外膜の心臓筋組織及びアブレーションされていないギャップの画像を生成するカテーテルは、
遠位端において、心外膜の心臓筋組織のミトコンドリアNADHを励起する紫外線照射装置と、
遠位端において、照射された心外膜の心臓筋組織からのNADH蛍光を検出するために460nmの帯域通過フィルタを含み、検出されたNADH蛍光から画像を作成する蛍光カメラと、
検出された蛍光データは、蛍光の欠如に起因した暗い外観を有する損傷部位と、正常な蛍光に起因した明るい外観を有するギャップと、損傷部位を包囲するより明るい光ぼけ型の外観を有する任意の虚血組織との生理機能を示し、
本カテーテルは、損傷部位の長さにわたる直線に沿った検出及び測定された蛍光強度をプロットすることで、当該直線に沿った損傷部位の深さを決定するモジュールを備える。
最も弱い蛍光強度の測定値は損傷部位の最も深い点に対応し、最も強い蛍光はアブレーションされていない組織に対応する。
いくつかの実施形態では、モジュールは、完全な黒色から完全な白色までの範囲を有する画素グレースケールであって、0が完全な黒色であり、最も深い点であり、255が完全な白色であり、最も浅い点であり、256(0~255)レベルのグレーを提供する画素グレースケールを適用し、これにより、直線に沿った損傷部位の深さの2Dマップを作成する。
アブレーションされた組織の深さの2Dマップは絶対測定値であり、fNADH信号強度は、以前に確立されたfNADH/深度のグレー値スケールに正規化される。
いくつかの実施形態では、アブレーションされた組織の深さの2Dマップは、損傷部位の幅にわたる垂直の直線において繰り返され、損傷の長さに沿った直線に平行であり、
垂直の直線において、アブレーションされた組織の各深さのそれぞれを統合し、
アブレーションされた組織の深さの3D画像を再構成する。
【0093】
上で注意したように、本システム及び方法は、アブレーション処置の成功及び再発の回避のための少なくとも1つの態様となりうる、良質かつ検証可能な損傷を提供する。良質な損傷は、適切な深さを有してもよく、心臓以外の構造物へのダメージを最小化しながら、心臓の心内膜の面から心外膜の面へ(すなわち経壁で)完全に細胞壊死を生じさせてもよい。ここに開示したシステム及び方法は、アブレーションによって引き起こされた細胞の傷害の程度に関するフィードバックを提供し、実際に損傷の完全性を検証する。ここに開示した実施形態は、処置の際に損傷の可視化を行って損傷の深さの情報を医師に提供することで損傷の質のフィードバックの欠如に対処することにより、既知の技術の課題のうちの少なくとも一部を克服する。この情報は、適切な損傷を形成して検証する際に、蛍光透視の時間を短縮し、不整脈発生のレートを低減し、これにより、結果を改善し、コストを削減するという点で有用であることがわかるはずである。
【0094】
実施形態によれば、本開示のシステム及び方法は、NADH蛍光を用いてアブレーション中の損傷及びギャップのリアルタイムの直接的な可視化を提供する。ここに開示したシステム及び方法は、生存できないアブレーションされた心筋と生きている心筋との間の蛍光のコントラストを検出することで動作する。本開示は、処置の際に、損傷の深さの情報を医師へリアルタイムで提供する。
【0095】
本開示のいくつかの態様によれば、開示したシステム及び方法は、組織のアブレーションを行ってfNADHシステムで組織の画像を生成した後に得られた画素の強度に基づいて、損傷の深さを決定するために使用可能である。アブレーションされた損傷の深さの評価は、fNADHシステムによって提供された画像の強度を損傷の深さへ相関させることで行うことができる。このことは、相関した深さデータを、1つ又は複数の損傷の3D再構成物へ統合することができ、損傷の幾何学的形状及び質に関する適時のフィードバックを医師に与えられることを意味する。
【0096】
本開示のいくつかの態様によれば、損傷部位の深さを決定する方法が提供される。
上記方法は、
損傷部位を有する心臓組織に照射することと、
上記照射された心臓組織から、上記損傷部位にわたる第1の直線に沿って、ミトコンドリアのニコチンアミドアデニンジヌクレオチド水素(NADH)蛍光強度を取得することと、
上記NADH蛍光強度に基づいて、上記第1の直線に沿った上記損傷部位の深さの2次元(2D)マップを作成することと、
上記2Dマップから上記第1の直線に沿った選択された点における上記損傷部位の深さを決定することとを含む。
より低いNADH蛍光強度は上記損傷部位におけるより大きな深さに対応し、より高いNADH蛍光強度はアブレーションされていない組織に対応する。
【0097】
いくつかの実施形態では、上記方法は、アブレーションによって上記心臓組織において上記損傷部位を形成することをさらに含む。
上記取得するステップは、
照射された組織からのNADH蛍光を検出することと、
上記NADH蛍光から、上記損傷部位の複数の画素を含むディジタル画像を作成することと、
上記損傷部位にわたる直線に沿った複数の画素のNADH蛍光強度を決定することとを含んでもよい。
いくつかの実施形態では、上記方法は、
上記損傷部位及び健康な組織からの上記NADH蛍光の量に基づいて、上記ディジタル画像における上記損傷部位及び上記健康な組織を識別することと、
上記健康な組織を表す画素の上記NADH蛍光強度に基づいて上記ディジタル画像を正規化することとをさらに含んでもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、検出するステップは、約435nm及び485nmの間の帯域通過フィルタを用いて上記NADH蛍光をフィルタリングすることを含む。
いくつかの実施形態では、上記健康な組織はより明るい外観を有し、上記損傷部位はより暗い外観を有する。
上記作成するステップは、上記損傷部位にわたる直線に沿った上記NADH蛍光強度をプロットして、上記損傷部位の深さの上記2Dマップを作成することを含んでもよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、上記方法は、
上記照射された心臓組織から、上記損傷部位にわたる第2の直線に沿って、NADH蛍光強度を取得することと、
上記NADH蛍光強度に基づいて、上記第2の直線に沿った上記損傷部位の深さの2Dマップを作成することと、
上記第1の直線に沿った2Dマップ及び上記第2の直線に沿った2Dマップから上記損傷部位の3次元(3D)画像を構成することとをさらに含む。
いくつかの実施形態では、上記取得するステップ、作成するステップ、及び決定するステップは、上記損傷部位の幅にわたる垂直直線に沿って、複数回にわたって繰り返されてもよい。
上記深さの2Dマップのそれぞれは、上記損傷部位の長さに沿った上記第1の直線に平行である。
垂直直線における上記損傷部位の深さの各2Dマップのそれぞれを統合して、上記損傷部位の深さの3D画像を再構成する。
【0100】
上記決定するステップは、完全な黒色から完全な白色までの範囲を有する画素グレースケールを適用することを含んでもよい。
上記方法は、心外膜組織、心内膜組織、心房組織、及び心室組織を分析するために使用されてもよい。
【0101】
いくつかの実施形態では、上記照射するステップは、レーザにより発生されたUV光で上記心臓組織に照射することを含む。
上記レーザにより発生されたUV光は、約300nmから約400nmの波長を有してもよい。
【0102】
本開示のいくつかの態様によれば、心臓組織の画像を生成するシステムが提供される。
上記システムは、
損傷部位を有する組織に照射して、上記組織におけるミトコンドリアのニコチンアミドアデニンジヌクレオチド水素(NADH)を励起するように構成された照射装置と、
上記照射された組織からのNADH蛍光を検出するように構成された画像生成装置と、
上記画像生成装置と通信するコントローラとを含む。
上記コントローラは、
上記照射された組織から、上記損傷部位にわたる第1の直線に沿って、NADH蛍光強度を取得することと、
上記NADH蛍光強度に基づいて、上記第1の直線に沿った上記損傷部位の深さの2次元(2D)マップを作成することと、
上記2Dマップから上記第1の直線に沿った選択された点における上記損傷部位の深さを決定することとを行うようにプログラミングされる。
より低いNADH蛍光強度は上記損傷部位におけるより大きな深さに対応し、より高いNADH蛍光強度はアブレーションされていない組織に対応する。
【0103】
本開示のいくつかの態様によれば、心臓組織の画像を生成するシステムが提供される。
上記システムは、
遠位領域及び近位領域を有するカテーテルと、
光源と、
上記光源から上記カテーテルの遠位領域へ延在する光ファイバであって、上記カテーテルの遠位端の近傍における損傷部位を有する組織に照射して、上記組織におけるミトコンドリアのニコチンアミドアデニンジヌクレオチド水素(NADH)を励起する光ファイバと、
上記照射された組織からのNADH蛍光を検出する画像バンドルと、
画像バンドルに接続されたカメラであって、上記照射された組織からの上記NADH蛍光を受信し、上記照射された組織の複数の画素を含むディジタル画像を生成するように構成されたカメラと、
上記カメラと通信するコントローラとを含む。
上記コントローラは、
上記ディジタル画像から、上記損傷部位にわたる第1の直線に沿った複数の画素のNADH蛍光強度を決定することと、
上記NADH蛍光強度に基づいて、上記第1の直線に沿った上記損傷部位の深さの2Dマップを作成することと、
上記2Dマップから上記第1の直線に沿った選択された点における上記損傷部位の深さを決定することとを行うように構成される。
より低いNADH蛍光強度は上記損傷部位におけるより大きな深さに対応し、より高いNADH蛍光強度はアブレーションされていない組織に対応する。
【0104】
心房細動(AF)を治療するためのシステム、カテーテル、及び方法が提供される。
UV照射源及びUVを伝送可能なファイバを備え、バルーンによってガイドされたカテーテルと、NADH蛍光を検出する画像生成バンドル及び光学的帯域通過フィルタに接続された蛍光を検出可能なカメラとを用いて、心臓組織における内在性NADH(fNADH)の蛍光画像が生成され、アブレーションされた領域及びアブレーションされていない領域が識別される。fNADH画像生成を用いて、アブレーションされた領域間のギャップを識別することができ、次に、このギャップのアブレーションを行うことができる。fNADH画像のグレースケール表示を用いて、アブレーションされた損傷の深さが予測され、不適切な深さの損傷に追加の損傷を生じさせることができる。画像生成は、アブレーション処置の間に実行可能であり、造影剤、トレーサ、又は染料のような、追加の化学薬品を必要としない。
【0105】
以上の開示は、単に、本開示の様々な非限定的な実施形態を説明するために示され、限定することを意図していない。本開示の精神及び物質を組み込んだ本開示の実施形態の修正が当業者によって考えられてもよいので、ここに開示した実施形態は、添付した特許請求の範囲及びその等価物の範囲内のすべてを含むように解釈されるべきである。