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特許7060671オブジェクトを作り出す装置およびそのための半剛体基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】オブジェクトを作り出す装置およびそのための半剛体基板
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/245 20170101AFI20220419BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220419BHJP
   B29C 64/129 20170101ALI20220419BHJP
【FI】
B29C64/245
B33Y30/00
B29C64/129
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020500194
(86)(22)【出願日】2018-07-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 NL2018050448
(87)【国際公開番号】W WO2019009725
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】2019204
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】518460451
【氏名又は名称】アトゥム・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トリストラム・ブデル
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0089610(US,A1)
【文献】特開2017-105075(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0231831(US,A1)
【文献】特開平04-341826(JP,A)
【文献】特開2017-075361(JP,A)
【文献】特表2016-530125(JP,A)
【文献】特開2010-179496(JP,A)
【文献】特開2006-043953(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0046080(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B33Y 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
料の励起、養生、または硬化によりオブジェクトを作り出す
装置であって、
- 基準面を画定している半剛材料の少なくともプレート(1)の基板と、
- 前記基板の上方または下方に焦点が合わせられた励起、養生、または硬化源と、
を含み、
前記基板は、少なくとも1つの弾性もしくは可撓性の支持部または懸架接続部を通じてフレームに装着されており、前記弾性もしくは可撓性の支持部または懸架接続部は、前記フレームと前記基板との間の周囲に沿って配置された骨組みビーズの形式である、装置。
【請求項2】
前記基板は、前記基板を取り巻く周囲圧力を低下させる圧力室内に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
全体ペースト層アプリケータ(7)を含む、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
局所ペースト層アプリケータ(10)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記プレートは可撓性である、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記オブジェクトを製造するための、かつ製造されたオブジェクトの前記プレート(1)からの剥離を容易にするように構成された、前記プレートの面上の剥離コーティング(3)をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項または二項以上に記載の装置。
【請求項7】
前記剥離コーティングは、接着層を使用して前記プレート上に配置されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記剥離コーティングは前記プレートから除去可能である、請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
前記剥離コーティングは前記プレートの一体部分である、請求項6または7に記載の装置。
【請求項10】
記剥離コーティングが、シリコン、単結晶シリコン、ポリテトラフルオロエチレン、FEP、金属、ガラス、セラミック、および他の有機/プラスチックコーティングを含む群から選択された材料のいずれか1つ以上を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項11】
前記基板は、シリコン、単結晶シリコン、ポリテトラフルオロエチレン、FEP、金属、ガラス、セラミック、および他の有機/プラスチックコーティングを含む群から選択された材料のいずれか1つ以上を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記骨組みビーズの形式の弾性もしくは可撓性の前記支持部または懸架接続部はゴム製である、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
弾性もしくは可撓性の前記支持部または懸架接続部の高さ外形がその周囲部に沿って変化する、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記フレームに接続された傾斜機構をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば3次元(3D)プリンタを使用する、積層造形に関し、オブジェクトが、基板の上または下での、レイヤーバイレイヤー技術および基準面からのオブジェクトの連続的成長を用いて構築される。
【背景技術】
【0002】
液体/ペースト様材料を使用する積層造形では、製造される、構成される、または構築されるオブジェクト用の基板としての基準面または取付台(carrier)が好ましい。先行技術では、本開示の発明者の知る限り、3Dプリンタにおいてかつ他の用途においても同様に、基準層、取付台、または基板は常に硬い剛性の平坦なプレート等の構成要素である。この基準面は、塗布される層の層厚さおよび表面特性の両方を規定するために使用される。該層が硬化され、かつ/または製造されるオブジェクトに付加されると、層は基準面から剥離されなければならない。殆どの場合、必ずではないが、基準面は、製造されるオブジェクトを作り出すのに必要な層の塗布直後に除去される。
【0003】
基準層上に適正な層を得るために、基準面は公差内で平坦かつ滑らかであるべきであり、また、層が基準面上で硬化されている時に層に付着するべきでなく、それが、硬い剛性で平坦な基準面が基板として常に採用される理由である。例として、ここでは、基板の全体的構造を開示している特許文献1を参照する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2011/089610号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基準面上でオブジェクトを製造した後の段階において、基準面と製造されたオブジェクトとが、それらの界面に互いに完全に一致する硬い剛性の表面を有し、それらの間に殆ど空間がないという問題が生じる。その結果として、基準面とその上で製造されたオブジェクトとは自由にまたは容易に分離されることが不可能である。分離が、通常、真空力(周囲に因る圧力)により阻止される。これらの剥離抵抗力は、積層造形に関して機能的でありかつ基準面からのオブジェクトの剥離を可能にするために、十分に低い必要がある。例えば、該剥離抵抗力が製造されたオブジェクトまたはモデルの引っ張り強さの最弱点よりも高い場合、作り出されたオブジェクトまたはモデルが壊れるかまたは割れる可能性があると考えられる。剥離抵抗力が基準層(または取付台もしくは基板)の強度よりも高い場合、基板は損なわれる可能性があると考えられる。剥離抵抗力が、線形アクチュエータが生成し得る力よりも大きい場合、層は剥離せず、したがってオブジェクトは、それを基板から剥離することができずに構築されることは不可能であり、したがって基板はオブジェクトの一体部分にならなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示による、この問題に対する1つの可能性のある解決策が、基準面が可撓性であるように、少なくとも基準面がゴム様の特性を有すること、または製造されたモデルが可撓性であることを確実にすることである。基準層が可撓性であるように作製された場合、これは、あえて言うならば、基準層が製造されたオブジェクトから剥がされることを可能にする。これらの両提案に関する課題が、限られた数の材料が例えば3Dプリンタに利用可能であること、およびこれらの材料は多くの場合に最終的な所望の特性を示さないことである。例えば、3Dプリンタにより人工歯を製造する場合、製造される最終製品は可撓性であるべきではない。
【0007】
本開示によれば、可撓性基板の特性および/または基板上にある剥離コーティングの特性の形の類似した解決策が示される。上にコーティングする任意の基板が所望の程度の可撓性を与えるのに使用され得る。さらに、剥離層からのオブジェクトの剥離方向が、剥離速度および生成される力を制御するために設定され得るかまたは制御され得る。
【0008】
この解決策はトップダウン式3Dプリンタとボトムアップ式3Dプリンタの両方に適用可能である。
【0009】
可撓性ガラス様材料を基板として具体的に使用することが可能であり、これは、できる限り僅かな阻害でレーザなどの励起を通過させるために高度に光透過性である、非晶質セラミック材料である。この特定の材料は、それが極度に平坦でありバルク状態で非常に剛性であるため使用される。適切な薄型基板を適用することにより、それがそのように薄いことが、システムに十分な可撓性を与え、改善された許容可能な剥離を実現する。
【0010】
秘訣が、基板が十分に可撓性であるように十分に薄いことであるが、十分に剛性であるように十分に厚いことである。代替案では、コーティングが剛性の非可撓性材料上に配置されて、所望の程度の可撓性を与えることができる。したがって、本開示は、それ自体本質的に可撓性である基板、および/または所望の程度の可撓性を実現するコーティングを可能にする。
【0011】
基板および/またはその上にあるコーティングの可撓性が、剥離力の減少を可能にする。ある程度の剛性が、層の形成中の適正な幾何学的形状、および潜在的に製造後の巧みな操作ももたらし、基板により保持されていると同時に、洗浄処理ステップおよび分断処理ステップ中、形成されるオブジェクトが操られることを可能にする。
【0012】
硬化されたオブジェクトおよびより詳細には基板上のオブジェクトの接触層が基板から引き離された場合、基板は基本的に剥離の方向に曲がり、該層を基板から剥がす。
【0013】
該原理は、用途に応じて、多くの異なる種類の基板を使用することにより達成され得る。基板の選択は、励起放射または一定の化学薬品に対する透過性に基づくことが可能である。例として、単結晶シリコンが十分に薄い層において使用されることが可能であり、取り扱いに関して強く、基板からのオブジェクトの分断に関して可撓性でもある。シリコンは電磁スペクトルの一定の波長領域に対して透過性である。
【0014】
想定される用途では、そのUV透過特性を求めてガラス様材料を使用することが可能である。プラスチック、金属、セラミック、および元素などの他の材料もこの目的のために使用され得ると考えられる。
【0015】
基板の表面形状はあらゆる付加層のベース形状としての機能を果たす。特定の実施形態では、極度に平坦な基板表面が必要とされる可能性がある。
【0016】
第1の層が基板上で硬化された場合、それは基板の幾何学的形状に適合され、2つの表面が化学的結合を有さないとしても、それらは小さい力および真空により共に保持される。比較的大きい表面積と、多くの比較的小さい力および真空と、の組合わせは、結果として、大きい合力をもたらし、基板および作り出されたオブジェクトを共に維持し、作り出されたオブジェクトの基板からの剥離に抵抗する。
【0017】
多くの小さい力を無視した場合、真空力は単独でAtm圧力*表面積に等しい。実践において、これは、オブジェクトが、何らかの点で10×10cmまたは100cm2の接触断面積を有するマクロスケールで製造された場合に、二重の硬表面剥離中に生成される力はおおよそ100kgとなることを意味する。言うまでもなく、積層造形機械および製造されるオブジェクトをオブジェクトの全体的な構築中にそのような大きな力に繰り返し晒すことは、大きな複雑な問題を生じる。
【0018】
しかし、本開示によれば、この真空力は、単に基板を作り出されたオブジェクトの基層の縁部から剥がすことにより克服され得る。随意に、基板を取り巻く圧力が低下させられて、基板の剥離を容易にし得る。この目的のために、基板は、圧力が基板の周囲で低下し得る圧力室内に配置され得る。
【0019】
したがって、層が基板からが引き離された場合、基板は、縁部から中心へ剥がす剥離の方向に向かって曲がる。この剥がしは、簡単な機構に因り、基板を曲げるのに必要な力が中心においてよりも基板の縁部に向かってより大きいために、実施される。
【0020】
基板の表面エネルギーは、基板に塗布されている剥離コーティングにより決定される。特定の実施形態では、テフロン(登録商標)コーティング、例えばFEP、等が配置され得る。この材料は非常に低い特定の表面エネルギーを有し、該材料自体は、一般に、非常に化学的に安定している。そのような材料の欠点が、この材料がそれほど傷つきにくくない可能性があることであるとしても、それは取替え可能な剥離コーティングを形成するのに十分役立つ可能性がある。
【0021】
テフロン(登録商標)層の低表面エネルギーに因り、この材料が、積層造形システムの実施形態において使用される可能性がある任意の材料とのいかなる結合または引付けも形成する可能性は極めて低い。
【0022】
他のコーティングがそれらの特性のために使用されてもよい。これは、金属コーティングまたはセラミックコーティングおよび他の有機/プラスチックコーティングであり得る。例えば本願を考慮して、比較的類似した光学特性を有するにも関わらず、より化学的に不活性でないが、より傷つきにくいPETが使用されることが可能である。
【0023】
テフロン(登録商標)単独で、積層造形に必要な特性を示さない可能性がある。より詳細には、所望の表面形状を作り出すために、必要な剛性をもたらす十分に厚い層内に設けられた場合、適正な波長を有さない光がそこを通過しない可能性がある。テフロン(登録商標)は高度に透過性であるが、それはかなりの散乱特性も有する。しかし、十分に薄いコーティングが塗布された場合、表面特性を保持しながら、光散乱特性はもはや優勢ではない。テフロン(登録商標)が基板に塗布されるか、またはそれを形成する場合、基板のバルク特性は表面形状に関して優勢のままであり、一方、コーティングの化学的特性は表面化学に関して優勢である。
【0024】
必要な表面化学をもたらすこの構造において、多くの異なる材料が使用され得ることは明らかであるが、一方、様々なしかし大きな材料群がこの構造において基板として使用され得る。
【0025】
コーティングを基板に結合するために、接着層が使用され得る。コーティングおよび基板の両方の物理的特性および化学的特性には互換性がない可能性があると考えられるので、第3のかつ可能性のある第4の層がコーティングを基板に結合するのに必要である可能性がある。結果として得られる構造が、中間金属コーティングが使用されることが多く、最終的なコーティングを基板の表面に接着する金属コーティング産業における実践との何らか互換性を示す可能性がある。
【0026】
結合層が十分に薄い場合、化学的特性のみが優勢になる。より厚い結合層が適用された場合、追加の特性がシステムに与えられ、バルク特性がより広く行き渡るようになることを可能にする。
【0027】
テフロン(登録商標)および/またはより詳細にはFEPに基づく実施形態では、剥離コーティングまたは基板は、表面を活性化させるためにオゾンプラズマで処理され、シリコーン接着層がこの酸化表面に塗布されてもよく、このシステムは、次いで、半剛基板に積層され、潜在的に、特殊テープとしてのテフロン(登録商標)/シリコン薄膜が使用され得る。
【0028】
極秘実験は、基板と別個の剥離コーティングと中間接着層とを備えたシステムにおいて、接着層が十分に厚い、それが結合するコーティングよりも10倍厚い場合、これはシリコーンゴムであるので、追加の可撓性/表面の柔軟性が獲得され得ることを示している。好適な実施形態では、接着層はごく僅かなバルク特性を有するのに十分薄い。
【0029】
基板材料のバルク特性を完全に実施することを可能にするために、それが浮遊性であることが理想的である。これは非実用的であるので、基板は、ゴム様材料を使用して、フレームの上または下に懸架され得る。
【0030】
ゴム様材料は比較的柔軟であるので、それは、基板をフレームに対して所定の位置に保つと同時に、基板が自由に曲がる(flex and bend)ことを可能にする。
【0031】
基板をフレームの下に懸架するかまたは上に担持するのに使用される支持部、または懸架部の特性は、このようにシステムの全体的特性に関与し得る。この材料がより剛性である場合、それは基板の曲がりに対してより大きな抵抗を示すと考えられ、逆の場合も同様であり、支持部または懸架部がより剛性でない場合、それは基板がより容易に曲がることを可能にすると考えられる。
【0032】
コントラスト材料特性(contrasting material properties)または相互増強材料特性(mutually augmenting material properties)を用いることにより、剥離の正味の特性はシステム全体の全層の総和、および存在する場合、基板をフレームに接続する懸架部または支持部により形成される。
【0033】
接着層の作用が材料特性および幾何学的形状の関数であるので、考慮されるべき別の事実が、接着層の構造特性への接着層の幾何学的形状の影響である。したがって、2つの硬い表面、例えば平坦な面を備えた2つのブロック状の金属、間に挟まれた柔軟なゴム様材料の場合には、2つの層間の弾力性の程度、および中間のゴム層により設けられる、2つのブロック間の間隔を変化させるのに必要な力の量はゴム層の幾何学的形状の関数であるのに対して、ゴムの厚さはより大きく、ゴム層の弾性特性はシステム全体においてより広く行き渡っていると考えられる。逆の場合も同様に、非常に薄いゴム層を使用して、例えば100nmの層が、結果として全システムに対してごく僅かな追加の弾性をもたらすと考えられる。
【0034】
接着層に特定の幾何学的形状を付与することにより、例えば等しい幅のゴム様材料の骨組みビーズが基板をフレームの真下に懸架する。次に、他方の側の反対側の、フレームの一方の側の高さを大幅に変化させる。懸架部または支持部は次いで、その周囲に沿って変化する。これは、システムがより低い外形を有しかつより剛性である別の側の反対側の、懸架部または支持部がより高い一方の側においてより可撓性であるシステムをもたらす。
【0035】
前述されている1次元においてではなく、2次元または3次元において同様に、幾何学的形状を修正することにより、かつ例えば接着層中に気泡を可変的に誘導してバルク材料特性を局所的に修正することによって接着層の密度を修正することにより、追加の変数がシステムに付加され得る。
【0036】
システム全体に亘るこの変数は、次いで、作り出されたオブジェクトの基層を基板から剥離している時に、剥離を導くのに用いられ得る。
【0037】
簡単な例において、基板が剥離の方向に向かってより容易に曲がる場合、この面はシステムのより剛性の面よりも長くオブジェクトの基層上に留まることが予想され、したがって剥離の方向配向を引き起こす。
【0038】
この原理は、力分布に因り、傾斜基板の正味の効果が、物理的傾斜が起こることさえもなく生み出される仮想傾斜として説明され得る。
【0039】
システムは剥がし効果を高め、剥離をより厳密に方向付ける傾斜機構を含み得る。
【0040】
基板を保持しているフレームは次いで一方の側に保持され、一方、反対側は、例えば図1の矢印Aによる旋回経路に沿って、所定の距離で自由に機械的に移動することが可能にされる。
【0041】
作り出された製品の基層の所望の剥離は、大気条件または加圧条件下での、前述されている選択または全ての特性の組合わせにより達成される。
【0042】
層と基板との分離により生成される剥離力を減少させる別の補助が、周囲圧力を減少させることである。生成される正味の力は、当然、周囲の液体の粘性の結果であるが、システムの周囲圧力の結果でもある。この目的のために、基板は、圧力が基板の周囲で低下され得る圧力室内に配置され得る。
【0043】
基板上で硬化された基層と該基板との間の距離が事実上ゼロであるので、引き離された場合、高い真空が生み出され、その力は表面積×圧力差である。したがって、周囲圧力を低下させることが、生成される真空力を大幅に減少させ得る。
【0044】
ある実施形態に固有のペーストコーティングシステムが、かなりの制限に直面する。該システムは限られた量の空間内に嵌合しなければならず、信頼性がなければならず、コスト効率が高くなければならない。
【0045】
殆どの他のシステムが、コストのかかる嵩張る配置を必要とし、機械のいくつかの実施形態では適合せず、通常の要件に適合するのに十分化学的に不活性でない。
【0046】
影響を及ぼしている他の要因が、汚染リスクおよび使い易さである。
【0047】
さらに、励起を使用して固体化させるかまたは硬化させるための比較的低粘度の液体を使用することしかできない先行システムと比較して、本開示のシステムは、高粘度の液体およびチキソトロピー性液体の使用を可能にし、それにより、材料は一般に自由流動性であり得る。この有益な効果は、レーザなどの養生または硬化(curing or hardening)励起を全体アプリケータおよび/または局所アプリケータと組み合わせることにより、達成され得る。
【0048】
本開示によるシステムがモジュラー設計を有していてもよく、基板が浸される液体を保持する標準的な容器が、このペーストコーティング付加機能性などの別のシステムと容易に交換され得る。
【0049】
特定の実施形態では、本開示によるシステムが、両移動方向に、材料厚さで、本質的に基板全体を覆って適切な層を塗布する双方向スクイージまたは全体ペースト層アプリケータを使用し得る。移動長さの終端部付近で、このスクイージは、層の塗布中にスクイージの前方に移動する材料の体積の上方に、機械的に持ち上げられる。
【0050】
製造工程中、スクイージの前で移動する超過量は監視され、必要に応じて、より多くの材料が追加される。
【0051】
硬化励起を展開することにより、製造されるオブジェクトに層が効果的に付加される前に、1つまたは複数の構成要素を局所的に適用することにより、基板の上方または下方の高さで層のかつさらには層内の色などの特性をより精密に修正するために、追加のまたは代替的局所アプリケータが設けられてもよい。同様に、全体アプリケータは、層ごとに異なる材料、および/または異なる色の材料の幾重もの層を形成するように構成されていてもよい。詳細には、随意に可撓性懸架部も含む、レーザなどの硬化励起とのアプリケータの組み合わせは特許文献1を越えて新規であり、該特許文献において、基板は、トップダウン式またはボトムアップ式3Dプリンタ用の硬化材料槽内で、いかなる弾性または可撓性もなく固定して取り付けられているのに対して、アプリケータが、一般的に、プリントヘッドからの噴出に基づいて硬化する印刷材料のみのために使用されるため、当業者は局所または全体層アプリケータを、配置された励起と組み合わせることを考慮しなかったと考えられ、該アプリケータは本開示の全体または局所アプリケータに相当し得るが、機能は焦点を合わせられたかまたは集中した硬化励起を伴わない。さらにこれは、より低い精度という結果になると予測されたと考えられるので、基板の懸架部において弾性/可撓性を与えることが当業者の偏見に反するが、それにより基板にかけられる任意の力または圧力が基板の変位のリスクなしで吸収されることから、局所および/または全体アプリケータの配置を容易にすると同時に、製品の剥離の観点から、後段で検討される利益をもたらす可能性がある。そのような弾性は、決して、特許文献1から既知の傾斜接続または蝶番接続として具現化されないが、基板のフレームが蝶番に接続され得る。本開示では、懸架部の弾性または可撓性は、下段で検討される通り、より容易な剥離、および設けられていれば、局所または全体アプリケータによりかけられる力の圧力下での基板の降伏を可能にする。
【0052】
好適な実施形態では、白いセラミックスラリが使用されて、薄いコーティングのベースを作り出す。次に、噴射または噴霧ヘッドが例えば顔料を局所的に塗布する。このように、フルカラーの高密度セラミックオブジェクトが作り出され得る。同じラインにおいて、様々な材料が層ごとに局所的に塗布されて、様々な材料特性を誘導し得る。
【0053】
本開示の範囲がそれに限定されない添付図面では、類似したまたは同一の要素、構成要素、および態様が同一のまたは対応する参照符号を用いて指定されている。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】3Dプリンタを使用する一連の製造ステップの図である。
図2図1の実施形態に対して僅かに修正された構造の図である。
図3】3Dプリンタを使用する一連の製造ステップの図である。
図4】3Dプリンタを使用する一連の製造ステップの図である。
図5】3Dプリンタを使用する一連の製造ステップの図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1では、基準層を具現化している基板1、2、3が、例えばゴムの、少なくとも1つの可撓性支持部または懸架接続部4を介して、例えばガラスまたは金属の、フレーム5内に取り付けられている。基板はプレート1と接着層2と剥離コーティング3とを含む。プレート1は従来硬く、平坦で、それ自体剛性もしくは可撓性であり、または少しだけ可撓性であり、かつしたがって半剛性であり得る。剥離コーティング3は、製造されたオブジェクト(図示略)の、テフロン(登録商標)、FEP、PETなどのプレート1からのより容易な剥離を促すために設けられている。剥離コーティングの材料特性は、製造されるオブジェクト用の材料によって決まり、レーザ作用(lasers influence)、熱などの、オブジェクトを作り出す機構に合う可能性があり、剥離コーティング用の適切な材料の選択が、例えば3Dプリンタ用の基材の当該分野の専門家の普通の技能の範囲内に入る。
【0056】
プレートから垂下する位置でオブジェクトが製造される場合、添付図面の層2およびコーティング3に加えて、または代替案として、添付図面の接着層2および剥離コーティング3はプレート1の下面上に配置され得る。
【0057】
接着層2が、剥離コーティング3をプレート1上に永久的に、または一時的に固定するために設けられており、剥離コーティングをプレートに固定する他の方法が展開されてもよいため、随意である。
【0058】
プレート1が硬く、剛性で、堅く、平坦であり、再利用されるように設計されている場合、接着層2は、剥離コーティング3をプレート1に一時的に固定して、製造された製品(図示略)が、製造された製品上の剥離コーティング3と共にプレート1から分離されることを可能にし得る。そのような実施形態では、プレート1は接続部4および接着層2に直接取り付けられていてもよく、剥離コーティング3はプレート1の接続部4への取付けの範囲内で延在し得る。それに対して、プレート1が可撓性または半可撓性である場合、接着層2は剥離コーティング3をプレート1に永久的に取り付けるのに役立つ可能性があり、接着層2および剥離コーティング3は、添付図面に示されているように、プレート1と接続部4との間に延在し得る。
【0059】
例えばゴムの可撓性接続部4が、結果として、フレーム5およびプレート1により形成される取付台に与えられた要件に関する当業者の仮定と対立する構造をもたらし、この可撓性接続部はいくらかの遊びを、その結果として不正確さも可能にするように思われるので、詳細にはプレート1は(本開示においてさらに後述される)アプリケータ7、10に対して変位することが意図されている。また、アプリケータ7、10が固定されたプレート1に対して移動した場合、結果として、機械振動が同様の不正確さをもたらす可能性がある。したがって、組立体を3Dプリンタ内で可能な限り頑丈に非可撓性に構成することは、常に当業者の生まれながらの性向であり、先入観である。
【0060】
フレーム5は蝶番機構11を用いて接続され、フレーム5が矢印Aに沿って傾斜することを可能にする。概略的に示された蝶番機構11は蝶番12と接続ロッド13とを含み得る。
【0061】
図2は、図1の接続部4の均一の高さの代わりに、例えばゴムの接続部6の可変高さを有する構造を示す。図2の左側において、接続部6は右側よりも高い。
【0062】
図1図2の両方において、フレーム5およびプレート1は、オブジェクト(図示略)が中でまたは上で、レイヤーバイレイヤーでまたは全体として作り出され得る収容設備を画定しており、例えば、図5に示されているように底部または上方から、熱、レーザビーム等の硬化励起または硬化活性化を展開する。断面側面図における構造を示す添付図面から明白であるように、プレート1およびフレーム5により画定される収容設備は、本質的にカップ形状である。しかし、任意の上面図の形状、例えば矩形、四角形、楕円形等、が採用され得る。
【0063】
図3は、製造される製品(図示略)の基層を形成するために剥離コーティング3上に硬化可能な材料の少なくとも初期層8を配置する全体ペースト層アプリケータ7を示す。アプリケータ7は、互いに積み重なった硬化可能な材料8の複数の層を配置し得る。硬化可能な材料が硬化される正確な位置は、図5に示されている通り、レーザ、熱等の、上方または下方からの硬化励起により決定される。所望のパターンおよび硬化可能な材料の層8の部分を硬化させるために、硬化励起または他の刺激を局所的に適用することにより、製造されるオブジェクトはレイヤーバイレイヤーで作り出される。同様に、製造される製品は、例えば交差するレーザビーム(図示略)を用いて硬化された材料を構成することにより、全体として作り出されることが可能である。図3の場合のような硬化可能な材料の完全な層8を塗布することが結果として材料の損失をもたらす場合、または何か他の理由で、より局所的に配向された局所ペースト層アプリケータ10が、硬化可能な材料を局所的に供給する追加または代替案として配置されてもよく、励起は、製造されるオブジェクトを作り出すために、材料を硬化させると予想される。これは、全体ペースト層アプリケータ7による図3の場合のような完全な層8を必要としない。完全な層を積むアプリケータ7と局所アプリケータ10との組合わせまたは両方のうちのどちらかが本開示の範囲内に包含される。
【0064】
同様に、少なくともプレート1とフレーム5とにより画定されている収容設備を浸すことも包含され、異なる方向からの複数の少なくとも2つの硬化活性化または硬化励起の交差が、硬化可能な材料がどこで硬化させられるかを決定し、交差するレーザビームなどの励起の各々は、単独でこの硬化(curing or setting)を達成するのに不十分である。そのような実施形態では、収容設備は、全体的な層8の設備のためのアプリケータ7および/または材料9の硬化(curing, setting or hardening)が起こると予想される位置により焦点を合わせられている、硬化可能な材料9の設備のための追加のアプリケータ10を有するシステムなしで、硬化可能なかつ硬化用材料の槽内で浸されてもよい。
【0065】
上記の開示に基づき、当業者は、通常の技能を展開することにより本開示を実施するための十分な理解を見出し、範囲は添付の特許請求の範囲において以下に定められ、本開示は添付図面の前述の実施形態に限定されず、実施形態の説明に対する代替案および追加の実施形態を含む。例えば、剥離コーティングはプレートの下面上にあってもよく、オブジェクトの製造は、プレートと剥離コーティングとの組合わせから懸架されたオブジェクトで実施される。接着層が随意である。製造されるオブジェクトを作り出す、励起、材料を硬化させること(hardening or curing)が、レーザ、熱等の任意の刺激を用いて実施され得る。さらに、プレートおよび剥離コーティングが、可撓性および/または製造中に製造されるべき製品への接着性、および/または剥離特性、および/または任意のさらなる所望の特性を示す適切な材料の単一のプレートとして具現化されてもよいことが留意される。随意の接着層および剥離コーティングは、オブジェクトの製造後、さらなるオブジェクトの後続の製造のために交換されるように、プレートから除去され、廃棄され得る。プレートは、次いで、すぐに再利用され得る。
【符号の説明】
【0066】
1 プレート(従来、硬く、平坦で、それ自体剛性もしくは可撓性であるか、または少しだけ可撓性でありかつしたがって半可撓性である可能性がある)、基板
2 接着層、基板
3 剥離コーティング、基板
4 可撓性支持部、懸架接続部、ゴム接続部
5 フレーム(金属またはガラス等の)
6 ゴム接続部(異なる厚さの)
7 アプリケータ(硬化可能なペースト材料を堆積させる)、全体ペースト層アプリケータ
8 薄膜(アプリケータ7により堆積した硬化可能なペーストの)、硬化可能な材料の少なくとも初期層、硬化可能な材料、硬化可能な材料の層
9 局所的に堆積した硬化可能なペースト材料
10 追加アプリケータ(例えば噴霧堆積、インクジェット堆積、粉末堆積、粉末気化、滴下堆積等のために、硬化可能なペースト材料を局所的に堆積させる)、局所ペースト層アプリケータ
11 蝶番機構
12 蝶番
13 接続ロッド
A 矢印
図1
図2
図3
図4
図5