(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】回転電機および軸受ブラケット
(51)【国際特許分類】
H02K 5/16 20060101AFI20220419BHJP
【FI】
H02K5/16 Z
(21)【出願番号】P 2020505563
(86)(22)【出願日】2018-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2018009456
(87)【国際公開番号】W WO2019175925
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古田 洋士
(72)【発明者】
【氏名】林 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】片原田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】和田 怜
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6906440(US,B1)
【文献】特開2012-191718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に延びた回転子シャフトと、前記回転子シャフトの径方向外側に取り付けられた回転子鉄心と、を有する回転子と、
前記回転子鉄心の径方向外側に前記回転子鉄心を囲むように設けられた固定子鉄心と、前記固定子鉄心内を軸方向に貫通する固定子巻線とを有する固定子と、
軸方向に前記回転子鉄心を挟んで前記回転子シャフトの両側で前記回転子シャフトを回転可能に支持する2つの軸受と、
前記固定子鉄心の径方向外側に配されて、前記回転子鉄心と前記固定子鉄心を収納するフレームと、
前記フレームの軸方向の両端に取り付けられ、それぞれが、前記軸受のそれぞれを静止支持する2つの軸受ブラケットと、
を備える回転電機であって、
前記軸受ブラケットのそれぞれは、中央に前記軸受を支持する円形の開口を有し、
前記軸受ブラケットの下半部は、
前記回転子の回転軸を含み鉛直方向に延びる面を挟んで対称に配された第1区画と第2区画とを有
し、
前記第1区画および前記第2区画のそれぞれにおいて、
板状部と、
第1端部から第2端部まで延びて径方向最内部と径方向最外部とを結ぶように形成された部分を有し、前記板状部に取り付けられた補強部と、
を具備し、
前記径方向最内部の周方向角度位置と前記径方向最外部の周方向角度位置の差は、所定の周方向角度位置差最小値以上である、
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記第1区画に配された部分と、前記第2区画に配された部分とは、互いに結合していることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記補強部は、
前記回転軸を含む鉛直平面上で下方に延びた1つの中間部材を有し、
前記第1区画に配された部分と前記第2区画に配された部分は、前記中間部材を介して互いに結合している、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項4】
前記補強
部は、
当該補強
部が存在しない場合の応力分布において引張応力または圧縮応力が他の部分より高い部分において当該引張応力に抗する方向に配されている部分を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項5】
水平方向に延びた回転子シャフトと、前記回転子シャフトの径方向外側に取り付けられた回転子鉄心と、を有する回転子と、
前記回転子鉄心の径方向外側に前記回転子鉄心を囲むように設けられた固定子鉄心と、前記固定子鉄心内を軸方向に貫通する固定子巻線とを有する固定子と、
前記回転子鉄心を挟んで前記回転子シャフトの軸方向の両側で前記回転子シャフトを回転可能に支持する2つの軸受と、
前記固定子の径方向外側に配されて、前記回転子鉄心と前記固定子を収納するフレームと、
を備える回転電機の前記フレームの軸方向の両端に取り付けられ、それぞれが前記軸受を静止支持する軸受ブラケットであって、
前記軸受ブラケットのそれぞれは、中央に円形の開口を有し、
前記回転子の回転軸を含み鉛直方向に延びる面を挟んで対称に配された第1区画と第2区画とを有
し、
前記第1区画および前記第2区画のそれぞれにおいて、
板状部と、
第1端部から第2端部まで延びて径方向最内部と径方向最外部とを結ぶように形成された部分を有し、前記板状部に取り付けられた補強部と、
を具備し、
前記径方向最内部の周方向角度位置と前記径方向最外部の周方向角度位置の差は、所定の周方向角度位置差最小値以上である、
ことを特徴とする軸受ブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機およびこれに用いる軸受ブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
通常の回転電機は、回転子と、固定子と、フレームと、2つの軸受を備える。回転子は、軸方向に延びた回転子シャフトと回転子シャフトの径方向外側に取り付けられた回転子鉄心を有する。固定子は、回転子鉄心の径方向外側に配された固定子鉄心と固定子鉄心を貫通する固定子巻線を有する。フレームは、固定子鉄心の径方向外側に配されて回転子鉄心および固定子鉄心を収納する。2つの軸受は、回転子シャフトの軸方向の両側を回転可能に支持する。
【0003】
フレームの軸方向の両端は、通常、それぞれ軸受ブラケットにより閉止されている。軸受ブラケットは、軸受を固定支持している。回転状態にある回転子からの荷重は、軸受から、軸受ブラケットを介してフレームに、そして、最終的には、回転電機の基礎に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転子からの自重あるいは振動による荷重の伝達経路の中では、軸受ブラケットとフレームは、板状の部分で構成されているため、そのままでは剛性が低いため、通常、補強を加えている(特許文献1参照)。フレームは、形状的に補強を加えるスペースを有しているが、軸受ブラケットは、薄い円盤状であることから、補強を加えられるスペースに制約がある。
【0006】
図12は、回転電機の軸受ブラケットの下半部の従来の構成例を示す平面図であり、また、
図13は、正面図である。軸受ブラケット50は、軸受の重量による荷重を支持するため、特に下半部の剛性を確保する必要がある。従来は、
図12および
図13に示すように、軸受ブラケット50の下半部は、上半部と同様に、板状部51と、これを補強するための補強部52を有する。補強部52としては、軸中心から放射状に延びて互いに周方向に間隔をおいて配された径方向補強部材52aを採用していた。さらに、大きな剛性を有する構造とするためには、従来のような径方向に延びた補強に加えて、周方向に延びた周方向補強部材52b(
図5)を追加する必要がある。したがって、従来の構造では、剛性を向上させるためには、工数や重量が増加する課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、回転電機において、より簡素化された構成で軸受ブラケットの剛性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明は、水平方向に延びた回転子シャフトと、前記回転子シャフトの径方向外側に取り付けられた回転子鉄心と、を有する回転子と、前記回転子鉄心の径方向外側に前記回転子鉄心を囲むように設けられた固定子鉄心と、前記固定子鉄心内を軸方向に貫通する固定子巻線とを有する固定子と、軸方向に前記回転子鉄心を挟んで前記回転子シャフトの両側で前記回転子シャフトを回転可能に支持する2つの軸受と、前記固定子鉄心の径方向外側に配されて、前記回転子鉄心と前記固定子鉄心を収納するフレームと、前記フレームの軸方向の両端に取り付けられ、それぞれが、前記軸受のそれぞれを静止支持する2つの軸受ブラケットと、を備える回転電機であって、前記軸受ブラケットのそれぞれは、中央に前記軸受を支持する円形の開口を有し、前記軸受ブラケットの下半部は、前記回転子の回転軸を含み鉛直方向に延びる面を挟んで対称に配された第1区画と第2区画とを有し、前記第1区画および前記第2区画のそれぞれにおいて、板状部と、第1端部から第2端部まで延びて径方向最内部と径方向最外部とを結ぶように形成された部分を有し、前記板状部に取り付けられた補強部と、を具備し、前記径方向最内部の周方向角度位置と前記径方向最外部の周方向角度位置の差は、所定の周方向角度位置差最小値以上である、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、水平方向に延びた回転子シャフトと、前記回転子シャフトの径方向外側に取り付けられた回転子鉄心と、を有する回転子と、前記回転子鉄心の径方向外側に前記回転子鉄心を囲むように設けられた固定子鉄心と、前記固定子鉄心内を軸方向に貫通する固定子巻線とを有する固定子と、前記回転子鉄心を挟んで前記回転子シャフトの軸方向の両側で前記回転子シャフトを回転可能に支持する2つの軸受と、前記固定子の径方向外側に配されて、前記回転子鉄心と前記固定子を収納するフレームと、を備える回転電機の前記フレームの軸方向の両端に取り付けられ、それぞれが前記軸受を静止支持する軸受ブラケットであって、前記軸受ブラケットのそれぞれは、中央に円形の開口を有し、前記回転子の回転軸を含み鉛直方向に延びる面を挟んで対称に配された第1区画と第2区画とを有し、前記第1区画および前記第2区画のそれぞれにおいて、板状部と、第1端部から第2端部まで延びて径方向最内部と径方向最外部とを結ぶように形成された部分を有し、前記板状部に取り付けられた補強部と、を具備し、前記径方向最内部の周方向角度位置と前記径方向最外部の周方向角度位置の差は、所定の周方向角度位置差最小値以上である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回転電機において、より簡素化された構成で軸受ブラケットの剛性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る回転電機の構成を示す縦断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る回転電機の軸受ブラケット下半部の構成を示す平面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る回転電機の軸受ブラケット下半部の構成を示す正面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る回転電機の軸受ブラケットの効果を説明するための概念的な第1の正面図である。
【
図5】第1の実施形態に係る回転電機の軸受ブラケットの効果を説明するための概念的な第2の正面図である。
【
図6】第1の実施形態に係る回転電機の軸受ブラケットの効果を説明するための概念的な第3の正面図である。
【
図7】第2の実施形態に係る回転電機の軸受ブラケット下半部の構成を示す平面図である。
【
図8】第2の実施形態に係る回転電機の軸受ブラケット下半部の構成を示す正面図である。
【
図9】第2の実施形態に係る回転電機の軸受ブラケットの効果を説明するための軸受ブラケット下半部に補強がない場合の応力分布図である。
【
図10】第3の実施形態に係る回転電機の軸受ブラケット下半部の構成を示す平面図である。
【
図11】第3の実施形態に係る回転電機の軸受ブラケット下半部の構成を示す正面図である。
【
図12】回転電機の軸受ブラケットの下半部の従来の構成例を示す平面図である。
【
図13】回転電機の軸受ブラケットの下半部の従来の構成例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る回転電機および軸受ブラケットについて説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る回転電機の構成を示す縦断面図である。回転電機200は、回転子10、固定子20、軸受30、フレーム40、および軸受ブラケット100を有する。
【0014】
回転子10は、水平方向に延びた回転子シャフト11と、回転子シャフト11の径方向外側に取り付けられた円筒状の回転子鉄心12とを有する。回転子シャフト11は、回転子鉄心12の軸方向の両外側においてそれぞれ軸受30により、回転軸CLを中心に回転可能に支持されている。
【0015】
固定子20は、回転子鉄心12の径方向外側にギャップ18を介して配された円筒形の固定子鉄心21と、固定子鉄心21内を貫通する固定子巻線22を有する。固定子巻線22は、固定子鉄心21の径方向の内側表面に周方向に互いに間隔をおいて形成され軸方向に延びた複数のスロット(図示せず)内に収納された部分と、その軸方向外側で互いに結合され、あるいは外部と結合された部分とを有する。
【0016】
固定子鉄心21の径方向外側には、フレーム40が設けられている。フレーム40は、回転子鉄心12および固定子鉄心21を収納する。フレーム40の軸方向の両端には、それぞれ軸受ブラケット100が取り付けられている。軸受ブラケット100のそれぞれは、軸受30のそれぞれを静止支持している。それぞれの軸受ブラケット100は、上下に2分割されており、上側の軸受ブラケット上半部100aと、下側の軸受ブラケット下半部101とを有する。軸受ブラケット上半部100aと軸受ブラケット下半部101とは、水平な結合部において、例えばボルト、ナット等により互いに結合され、全体として、中央に軸受30が貫通する開口が形成された円板状である。なお、軸受ブラケット100は、上下に分割されている場合には限定されず、上下一体で形成されていてもよい、この場合も、一体で形成されている軸受ブラケット100の上半分の部分と下半分の部分をそれぞれ軸受ブラケット上半部100aと軸受ブラケット下半部101と呼ぶこととする。
【0017】
以下、回転電機200の回転子シャフト11の延びる方向をz方向、回転子シャフト11の回転軸から径方向外側に向かう方向をr方向、回転子シャフト11の回転する周方向をθ方向(
図3)と呼ぶこととする。
【0018】
図2は、第1の実施形態に係る回転電機の軸受ブラケット下半部の構成を示す平面図であり、また、
図3は、正面図である。軸受ブラケット下半部101は、回転軸CLを含む鉛直平面に関して互いに対称な第1区画101aと第2区画101bとに分割されている。第1区画101aおよび第2区画101bは、
図2および
図3において、それぞれ右側の領域および左側の領域である。
【0019】
軸受ブラケット下半部101は、半円状の板状部110と、補強部120とを有する。
【0020】
板状部110には、中央に半円形の開口111が形成されている。開口111は、軸受ブラケット上半部100aの開口部とともに、軸受30が貫通する軸受ブラケット100の円形の開口を形成する。
【0021】
補強部120は、第1区画101aに配された斜向部材121a、第2区画101bに配された斜向部材121b、および回転軸CLを含む鉛直平面上で下方に延びた1つの中間部材127を有する。
【0022】
斜向部材121aおよび斜向部材121bは、互いに同一の形状であり、中間部材127を間に挟んで、互いに対称な位置に配されている。それぞれの斜向部材121aは、第1端部122から第2端部123まで延びている。斜向部材121aは、第1端部122において中間部材127と結合している。斜向部材121bも同様に中間部材127と結合している。
【0023】
補強部120のそれぞれの部材は、軸方向に幅を有し、また、その幅方向に折れ曲がった形状である。なお、断面形状は、必ずしもこのように折れ曲がっていなくともよい。補強部120のそれぞれの部材は、板状部110に、溶接、あるいはロー付により固定されている。なお、ボルト等により固定することでもよい。なお、たとえば、一体鋳造によって、補強部120のそれぞれの部材が、板状部110と一体に形成されていてもよい。この場合は、板状部110から突出して、補強部に相当する部分を補強部120と呼ぶこととする。
【0024】
以下、説明は、斜向部材121aについて行う。以下説明する内容は、斜向部材121bについても同様である。
【0025】
図3に示すように、斜向部材121aの第1端部122は、斜向部材121aにおいて回転軸CLから最も離れた径方向最外部125である。すなわち、回転軸CLから径方向最外部125である第1端部122までの距離が最大値r-maxである。また、斜向部材121aにおいて回転軸CLに最も近い径方向最内部124は、第1端部122と第2端部123との間に存在する。すなわち、回転軸CLから径方向最内部124までの距離が最小値r-minである。
【0026】
ここで、径方向最外部125である第1端部122は、周方向には周方向角度位置θbにある。また、径方向最内部124は周方向には周方向角度位置θaにある。周方向角度位置θaと、周方向角度位置θbとは、約45度程度離れている。
【0027】
図4は、第1の実施形態に係る回転電機の軸受ブラケットの効果を説明するための概念的な第1の正面図、また、
図5は、概念的な第2の正面図である。
図4は、従来方式に基づく場合を概念的に示している。
【0028】
概念的な第1の正面図である
図4は、
図13に示す従来の軸受ブラケットの構成を、概念的に示している。すなわち、軸受ブラケット50は、板状部51と、補強部52として、板状部51上に放射状に周方向に互いに間隔をおいて配されている、複数の径方向補強部材52aを有する。
【0029】
概念的な第2の正面図である
図5は、さらに剛性を上げるために従来の軸受ブラケットにさらに補強を増やした場合を概念的に示す。軸受ブラケット50aは、板状部51と、補強部52として、複数の径方向補強部材52aおよび周方向補強部材52bを有する。周方向補強部材52bは、互いに周方向に間隔をおいて配された複数の径方向補強部材52aを互いに連結させることにより、軸受ブラケット50aの剛性を向上させる。
【0030】
図5に示すように、従来の構成を基にして、さらに軸受ブラケットの剛性を上げようとすると、補強部材すなわち、径方向補強部材52aおよび周方向補強部材52bの量が増加する。これは、軸受ブラケット50aの重量の増加ももたらし好ましくない。
【0031】
図5で示す構成において、軸受ブラケット50aの剛性を向上させている要因は、径方向および周方向に分散した各部分が、径方向補強部材52aおよび周方向補強部材52bによって互いに結合されている点である。
【0032】
図6は、第1の実施形態に係る回転電機の軸受ブラケットの効果を説明するための概念的な第3の正面図である。本実施形態による補強部120としての斜向部材121a、121bを実線で示している、また、対比のために、従来方式による補強部52としての径方向補強部材52aおよび周方向補強部材52bをそれぞれ破線で示している。
【0033】
斜向部材121aは、
図3を引用しながら説明したように、周方向角度位置がθaである径方向最内部124と、周方向角度位置がθbである径方向最外部125を有し、それぞれの角度位置が互いに異なっている。このため、斜向部材121aもまた、従来の方式と同様に、径方向および周方向に分散した各部分を、互いに結合させており、従来方式で径方向補強部材52aに加えて周方向補強部材52bを設けた場合と同様の効果を有する。以下、同様に斜向部材121aについて説明するが、斜向部材121bについても同様である。
【0034】
ここで、回転軸CLと径方向最外部125との間隔すなわち径方向最外部125の径方向位置rbと、回転軸CLと径方向最内部124との間隔すなわち径方向最内部124の径方向位置raとの差は、所定の径方向位置差最小値Δr以上とする。ここで、径方向位置差最小値Δrは、従来方式で必要とされる周方向補強部材52bの設置状況に基づいて決定される。
【0035】
たとえば、従来方式において、軸受ブラケットの径方向の幅Dの中で、周方向補強部材52bがN本必要とされている場合、Δr=D/(N+1)として径方向位置差最小値Δrを設定することができる。
図6においては、N=1なので、この方法によれば、Δr=D/2となる。あるいは、径方向位置差最小値Δrを、幅Dに1より小さな正の値αを乗じた値、たとえば、α=0.3としΔr=0.3Dとする等としてもよい。この場合、αの値は、応力解析結果等に基づいて適切な値を設定することができる。
【0036】
また、径方向最外部125の周方向角度位置θbと、径方向最内部124の周方向角度位置θaとの差は、所定の周方向角度位置差最小値Δθ以上とする。ここで、周方向角度位置差最小値Δθは、従来方式で必要とする径方向補強部材52aの設置状況に基づいて決定される。
【0037】
たとえば、従来方式で必要とする径方向補強部材52aが配されている角度間隔ΔΦを周方向角度位置差最小値Δθとしてもよい。
図6に示す例では、径方向補強部材52aが配されている周方向の角度間隔
ΔΦは30度であるので、この方法によれば周方向角度位置差最小値Δθは30度となる。あるいは、周方向角度位置差最小値Δθを、90度に1より小さな正の値βを乗じた値、たとえば、β=0.5としΔ
θを45度とする等としてもよい。この場合、βの値は、応力解析結果等に基づいて適切な値を設定することができる。
【0038】
なお、軸受ブラケット100には、軸受30を介して回転子10の自重および回転子10の回転に伴う変形モードによる遠心力などが負荷される。特に、回転子10の自重については、軸受ブラケット下半部101でこれを支持することから、斜向部材121a、121bの方向は、斜向部材121a、121bに引張力が負荷される方向とする。具体的には、回転軸CLの直下に近い側に径方向最外部125が、また、これより水平方向に離れた位置に径方向最内部124が配されるように設定する。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、回転電機200において、より簡素化された構成で軸受ブラケット100の剛性を確保することができる。
【0040】
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施形態に係る回転電機の軸受ブラケット下半部の構成を示す平面図であり、
図8は、正面図である。本実施形態は、第1の実施形態の変形である。
【0041】
第2の実施形態における軸受ブラケット下半部102は、補強部120として、回転軸CLを含む鉛直平面に関して互いに対称に配された2つの斜向部材121a、121bを有する。
【0042】
本第2の実施形態においては、第1の実施形態とは異なり、2つの斜向部材121a、121bは、互いに接続されていない。
【0043】
一方の斜向部材121aについてみると、径方向最内部124の周方向角度位置θa、および径方向最外部125の周方向角度位置θbは、それぞれ、第1の実施形態におけるそれぞれの周方向角度位置より小さい値であり、斜向部材121aの回転軸CLを含む鉛直平面となす角度が小さい。すなわち、第1の実施形態における斜向部材に比べて、鉛直方向に近づいている。その他の点では、第1の実施形態と同様である。
【0044】
図8において破線で囲まれたA部は、解析により、補強部が軸受ブランケット上半部のみに設けられ、軸受ブランケット下半部には補強部120が設けられていない場合に、最大の応力が発生することが示されている部分である。応力は、引張応力である。後述するように、斜向部材121a、121bは、この引張応力の方向に沿った部分を有しており、引張応力に対して有効に機能する。なお、他の部分の応力に対して応力の高い部分の応力が、引張応力ではなく圧縮応力の場合であっても、同様に、その圧縮応力の方向に沿った部分を有するように補強部120の部材を配することは有効である。
【0045】
図9は、第2の実施形態に係る回転電機の軸受ブラケットの効果を説明するための軸受ブラケット下半部に補強がない場合の解析結果による応力分布図である。軸受ブラケット100の構成が、
図6において左右対称なので、応力分布も左右対称である。
【0046】
応力は、色が薄いほど高いことを示しており、破線で囲まれたA部において、応力が大きくなっている。A部において、矢印の方向が、引張応力の方向である。したがって、
図8の斜向部材121a、121bのように、この方向に沿って、補強部120が設けられていれば、効率的に補強を施すことができる。
【0047】
[第3の実施形態]
図10は、第3の実施形態に係る回転電機の軸受ブラケット下半部の構成を示す平面図であり、
図11は、正面図である。本第3の実施形態は、第1の実施形態の変形である。
【0048】
本第3の実施形態における軸受ブラケット下半部103は、補強部120として、曲状部材128を有する。曲状部材128は、回転軸CLを含む鉛直平面に関して対称であり、緩いU字形に形成されている。その他の点では、第1の実施形態と同様である。
【0049】
曲状部材128は、回転軸CLの直下の部分が、径方向最内部128aであり、水平方向に最外部が、径方向最外部128bである。
【0050】
本実施形態の補強部120である曲状部材128は、
図9に示した最大応力発生部分であるA部を、カバーしている。また、補強部120である曲状部材128が、曲線的に配されていることから、構造的に不連続分が少なくなり、効率のよい補強をなすことができる。
【0051】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。たとえば、実施形態では、軸受ブラケット100が、上下に2分割された構成の場合を例にとって示したが、これに限定されない。すなわち、3つ以上に分割された場合でもよい。あるいは、分割されておらずに、軸受ブラケットが一体をなしている場合であってもよい。
【0052】
実施形態では、回転子が2つの軸受に支持されている場合を例にとって示したが、これに限定されず、たとえば、1つの軸受を他の機械と共用している場合でもよい。また、実施形態では、軸受ブラケットがフレームの軸方向の両端に設けられている場合を例にとって示したが、フレームの軸方向の一方にしか取り付けられていない場合であってもよい。
【0053】
また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。さらに、実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
10…回転子、11…回転子シャフト、12…回転子鉄心、18…ギャップ、20…固定子、21…固定子鉄心、22…固定子巻線、30…軸受、40…フレーム、50、50a…軸受ブラケット、51…板状部、52…補強部、52a…径方向補強部材、52b…周方向補強部材、100…軸受ブラケット、100a…軸受ブラケット上半部、101、102、103…軸受ブラケット下半部、101a…第1区画、101b…第2区画、110…板状部、111…開口、112…接続部、120…補強部、121a、121b…斜向部材、122…第1端部、123…第2端部、124…径方向最内部、125…径方向最外部、127…中間部材、128…曲状部材、128a…径方向最内部、128b…径方向最外部、200…回転電機