IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許-電気化学セル用の混合複合材固体電解質 図1
  • 特許-電気化学セル用の混合複合材固体電解質 図2
  • 特許-電気化学セル用の混合複合材固体電解質 図3
  • 特許-電気化学セル用の混合複合材固体電解質 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】電気化学セル用の混合複合材固体電解質
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/056 20100101AFI20220419BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20220419BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20220419BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20220419BHJP
   H01M 50/411 20210101ALI20220419BHJP
   H01M 50/497 20210101ALI20220419BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220419BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220419BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20220419BHJP
   H01B 1/08 20060101ALI20220419BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
H01M10/056
H01M50/446
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/411
H01M50/497
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01B1/06 A
H01B1/08
H01B13/00 503Z
H01B13/00 503C
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2020512503
(86)(22)【出願日】2018-08-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 US2018047234
(87)【国際公開番号】W WO2019046041
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-04-28
(31)【優先権主張番号】62/552,703
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ダン シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ノートン
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-505961(JP,A)
【文献】特開2005-310795(JP,A)
【文献】特開平03-129603(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0079485(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0222262(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0037061(KR,A)
【文献】独国特許出願公開第102015111806(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0187063(US,A1)
【文献】特開2010-192258(JP,A)
【文献】Zhizhen Zhang et al,A ceramic/polymer composite solid electrolyte for sodium batteries,journal of Materials Chemistry A,Vol.4,Issue41,英国,2016年09月23日,15823-15828,DOI:10.1039/c6ta07590h
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/056
H01M50/409
H01B1/06、1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
純粋なイオン伝導性セラミック材料が散在するイオン伝導性ポリマーの混合物を含む、固体電解質であって、前記混合物が、前記イオン伝導性セラミック材料の重量と前記イオン伝導性ポリマーの重量との比が90/10~40/60の範囲にあるように構成され
前記イオン伝導性ポリマーが、アタクチックポリプロピレンオキシドである、固体電解質。
【請求項2】
前記イオン伝導性セラミック材料の重量と前記イオン伝導性ポリマーの重量との比が、80/20~75/25の範囲にある、請求項1記載の固体電解質。
【請求項3】
前記固体電解質が、膜厚を有するセパレータ膜であり、かつ
前記イオン伝導性セラミック材料が、前記膜厚の40パーセント以下の中央粒径を有する、請求項1または2記載の固体電解質。
【請求項4】
前記中央粒径の標準偏差が、前記中央粒径の1パーセント以下である、請求項3記載の固体電解質。
【請求項5】
前記イオン伝導性セラミック材料が、二峰性の粒径分布を有し、
前記イオン伝導性セラミック材料が、第1モードの粒径分布を規定する第1の中央粒径を有する第1セットの粒子を含み、前記第1の中央粒径が、前記膜厚の40パーセント以下であり、かつ
前記イオン伝導性セラミック材料が、第2モードの粒径分布を規定する第2の中央粒径を有する第2セットの粒子を含み、前記第2の中央粒径が、前記膜厚の20パーセント以下であり、
ここで、前記第1セットの粒子が、総重量の66.6重量パーセントの前記イオン伝導性セラミック材料を提供し、前記第2セットの粒子が、総重量の33.3重量パーセントの前記イオン伝導性セラミック材料を提供する、請求項3記載の固体電解質。
【請求項6】
前記イオン伝導性セラミック材料が、三峰性の粒径分布を有し、
前記イオン伝導性セラミック材料が、第1モードの粒径分布を規定する第1の中央粒径を有する第1セットの粒子を含み、前記第1の中央粒径が、前記膜厚の40パーセント以下であり、
前記イオン伝導性セラミック材料が、第2モードの粒径分布を規定する第2の中央粒径を有する第2セットの粒子を含み、前記第2の中央粒径が、前記膜厚の20パーセント以下であり、かつ
前記イオン伝導性セラミック材料が、第3モードの粒径分布を規定する第3の中央粒径を有する第3セットの粒子を含み、前記第3の中央粒径が、前記膜厚の10パーセント以下であり、
ここで、前記第1セットの粒子が、総重量の50重量パーセントの前記イオン伝導性セラミック材料を提供し、前記第2セットの粒子が、総重量の30重量パーセントの前記イオン伝導性セラミック材料を提供し、前記第3セットの粒子が、総重量の20重量パーセントの前記イオン伝導性セラミック材料を提供する、請求項3記載の固体電解質。
【請求項7】
前記混合物が、前記イオン伝導性セラミック材料と前記イオン伝導性ポリマーとの間の表面積接触を改善するように構成されたイオン伝導性カップリング剤を含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載の固体電解質。
【請求項8】
電気化学セルのセパレータを形成するように構成された、固体電解質であって、純粋なイオン伝導性セラミック材料が散在するイオン伝導性ポリマーの混合物を含み、ここで、前記混合物が、前記イオン伝導性セラミック材料の重量と前記イオン伝導性ポリマーの重量との比が90/10~40/60の範囲にあるように構成され
前記イオン伝導性ポリマーが、アタクチックポリプロピレンオキシドである、固体電解質。
【請求項9】
前記イオン伝導性セラミック材料の重量と前記イオン伝導性ポリマーの重量との比が、80/20~75/25の範囲にある、請求項記載の固体電解質。
【請求項10】
前記イオン伝導性セラミック材料が、前記セパレータ厚の20パーセント以下の中央粒径を有する、請求項8または9記載の固体電解質。
【請求項11】
前記中央粒径の標準偏差が、前記中央粒径の1パーセント以下である、請求項10記載の固体電解質。
【請求項12】
前記イオン伝導性セラミック材料が、二峰性の粒径分布を有し、
前記イオン伝導性セラミック材料が、第1モードの粒径分布を規定する第1の中央粒径を有する第1セットの粒子を含み、前記第1の中央粒径は、前記セパレータ厚の20パーセント以下であり、かつ
前記イオン伝導性セラミック材料が、第2モードの粒径分布を規定する第2の中央粒径を有する第2セットの粒子を含み、前記第2の中央粒径は、前記セパレータ厚の10パーセント以下であり、
ここで、前記第1セットの粒子が、総重量の66.6重量パーセントの前記イオン伝導性セラミック材料を提供し、前記第2セットの粒子が、総重量の33.3重量パーセントの前記イオン伝導性セラミック材料を提供する、請求項10または11記載の固体電解質。
【請求項13】
前記混合物が、前記イオン伝導性セラミック材料と前記イオン伝導性ポリマーとの間の表面積接触を改善するように構成されたイオン伝導性カップリング剤を含む、請求項10から12までのいずれか1項に記載の固体電解質。
【請求項14】
正極、
負極、および
前記正極と前記負極との間に配置されており、かつイオンを前記正極と前記負極との間で移動させながら前記正極を前記負極から電気的に絶縁する、固体電解質を含む、電気化学セルであって、
前記固体電解質は、純粋な第1のイオン伝導性セラミック材料が散在する第1のイオン伝導性ポリマーの第1の混合物を含み、ここで、前記第1の混合物は、前記第1のイオン伝導性セラミック材料の重量と前記第1のイオン伝導性ポリマーの重量との比が90/10~40/60の範囲になるように構成され前記第1のイオン伝導性ポリマーが、アタクチックポリプロピレンオキシドである、電気化学セル。
【請求項15】
前記第1のイオン伝導性セラミック材料の重量と前記第1のイオン伝導性ポリマーの重量との比が、80/20~75/25の範囲にある、請求項14記載の電気化学セル。
【請求項16】
前記固体電解質が、膜厚を有する膜であり、かつ
前記第1のイオン伝導性セラミック材料が、前記膜厚の40パーセント以下の中央粒径を有する、請求項15記載の電気化学セル。
【請求項17】
前記中央粒径の標準偏差が、前記中央粒径の1パーセント以下である、請求項16記載の電気化学セル。
【請求項18】
前記第1のイオン伝導性セラミック材料が、二峰性の粒径分布を有し、
前記第1のイオン伝導性セラミック材料が、第1モードの粒径分布を規定する第1の中央粒径を有する第1セットの粒子を含み、前記第1の中央粒径は、前記膜厚の40パーセント以下であり、かつ
前記第1のイオン伝導性セラミック材料が、第2モードの粒径分布を規定する第2の中央粒径を有する第2セットの粒子を含み、前記第2の中央粒径は、前記膜厚の20パーセント以下であり、
ここで、前記第1セットの粒子が、総重量の66.6重量パーセントの前記第1のイオン伝導性セラミック材料を提供し、前記第2セットの粒子が、総重量の33.3重量パーセントの前記第1のイオン伝導性セラミック材料を提供する、請求項16記載の電気化学セル。
【請求項19】
前記第1のイオン伝導性セラミック材料が、三峰性の粒径分布を有し、
前記第1のイオン伝導性セラミック材料が、第1モードの粒径分布を規定する第1の中央粒径を有する第1セットの粒子を含み、前記第1の中央粒径が、前記膜厚の40パーセント以下であり、
前記第1のイオン伝導性セラミック材料が、第2モードの粒径分布を規定する第2の中央粒径を有する第2セットの粒子を含み、前記第2の中央粒径が、前記膜厚の20パーセント以下であり、かつ
前記第1のイオン伝導性セラミック材料が、第3モードの粒径分布を規定する第3の中央粒径を有する第3セットの粒子を含み、前記第3の中央粒径が、前記膜厚の10パーセント以下であり、
ここで、前記第1セットの粒子が、総重量の50重量パーセントの前記第1のイオン伝導性セラミック材料を提供し、前記第2セットの粒子が、総重量の30重量パーセントの前記第1のイオン伝導性セラミック材料を提供し、かつ前記第3セットの粒子が、総重量の20重量パーセントの前記第1のイオン伝導性セラミック材料を提供する、請求項16記載の電気化学セル。
【請求項20】
前記第1の混合物が、前記第1のイオン伝導性セラミック材料と前記第1のイオン伝導性ポリマーとの間の表面積接触を改善するように構成されたイオン伝導性カップリング剤を含む、請求項16記載の電気化学セル。
【請求項21】
前記正極および前記負極のうちの1つが、電極活物質および第2の混合物を含む固体電極であり、前記第2の混合物は、第2のイオン伝導性セラミック材料が散在する第2のイオン伝導性ポリマーを含み、ここで、前記第2の混合物は、前記第2のイオン伝導性セラミック材料の重量と前記第2のイオン伝導性ポリマーの重量との比が90/10~40/60の範囲にあるように構成されている、請求項16記載の電気化学セル。
【請求項22】
前記第1のイオン伝導性ポリマーが、前記第2のイオン伝導性ポリマーと同じであり、前記第1のイオン伝導性セラミック材料が、前記第2のイオン伝導性セラミック材料と同じである、請求項21記載の電気化学セル。
【請求項23】
前記第2のイオン伝導性セラミック材料が、前記膜厚の20パーセント以下の中央粒径を有する、請求項21記載の電気化学セル。
【請求項24】
前記中央粒径の標準偏差が、前記中央粒径の1パーセント以下である、請求項23記載の電気化学セル。
【請求項25】
前記第2のイオン伝導性セラミック材料が、二峰性の粒径分布を有し、
前記第2のイオン伝導性セラミック材料が、第1モードの粒径分布を規定する第1の中央粒径を有する第1セットの粒子を含み、前記第1の中央粒径は、前記膜厚の20パーセント以下であり、かつ
前記第2のイオン伝導性セラミック材料が、第2モードの粒径分布を規定する第2の中央粒径を有する第2セットの粒子を含み、前記第2の中央粒径は、前記膜厚の10パーセント以下であり、
ここで、前記第1セットの粒子が、総重量の66.6重量パーセントの前記第2のイオン伝導性セラミック材料を提供し、前記第2セットの粒子が、総重量の33.3重量パーセントの前記第2のイオン伝導性セラミック材料を提供する、請求項23記載の電気化学セル。
【請求項26】
第2の混合物が、第2のイオン伝導性セラミック材料と第2のイオン伝導性ポリマーとの間の表面積接触を改善するように構成されたイオン伝導性カップリング剤を含む、請求項1記載の固体電解質。
【請求項27】
固体電解質の形成方法であって、
アタクチックポリプロピレンオキシドであるイオン伝導性ポリマーと、純粋なイオン伝導性セラミック材料とを混合して混合物を形成する工程であって、前記混合物は、前記イオン伝導性セラミック材料の重量と前記イオン伝導性ポリマーの重量との比が90/10~40/60の範囲にあるように構成されている工程;
液体有機溶媒を混合物に加えてスラリーを形成する工程;
前記スラリーを板状にキャストする工程;
前記キャストされたスラリーを乾燥させてシートを形成する工程であって、該シートは、前記イオン伝導性ポリマーにイオン伝導性セラミック材料が散在する固体混合複合材電解質シートである工程
を含む、方法。
【請求項28】
前記スラリーをキャストする工程が、厚さが20ミクロン以下である仕上げられたシートを形成することを含み、前記「仕上げられた」という用語は、シートが乾燥かつカレンダー加工された状態を指す、請求項27記載の方法。
【請求項29】
固体電解質の形成方法であって、
アタクチックポリプロピレンオキシドであるイオン伝導性ポリマーと、純粋なイオン伝導性セラミック材料とを混合して混合物を形成する工程であって、前記混合物は、前記イオン伝導性セラミック材料の重量と前記イオン伝導性ポリマーの重量との比が90/10~40/60の範囲にあるように構成されている工程;
前記混合物を処理して流動性材料を形成する工程;
前記流動性材料を板状に押し出す工程;
キャストされたスラリーを乾燥させてシートを形成する工程であって、該シートは、前記イオン伝導性ポリマーにイオン伝導性セラミック材料が散在する固体混合複合材電解質シートである工程
を含む、方法。
【請求項30】
前記混合物を処理する工程が、前記材料を加熱することを含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記混合物を処理する工程が、液体有機溶媒を前記混合物に添加して流動性材料を形成することを含む、請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記流動性材料を押し出す工程が、厚さが20ミクロン以下の仕上げられたシートを形成することを含み、前記「仕上げられた」という用語は、が乾燥し、かつカレンダー加工された状態を指す、請求項29記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
電気化学セルは、負極、正極、およびこれらの電極間で電池内のイオンで連絡する電解質を含む。電極は、通常、イオンの移動を可能にするが、電子の移動はできないようにする、何らかの形のセパレータによって直接接触しないようになっている。電気化学セルまたは電池には、通常、電池に保存された電気エネルギーを利用するために外部電気回路に接続できる集電体が装備されている。再充電可能な電気化学セルまたは電池の場合、同じ集電体が、電池またはセルの再充電に役立つ。
【0002】
いくつかのセルは、固体高分子電解質を利用しており、この電解質は、セパレータの機能も提供し、別個のセパレータは省略されている。このタイプの電気化学セルの主な利点は、可燃性の液体電解質溶媒がなく、軽量であるため、固有の安全性が高いことである。固体高分子電解質/セパレータを含めた欠点の1つは、ポリマーのイオン移動特性を「活性化」するために、得られたセルを、動作中に比較的高温(少なくとも摂氏60度)に加熱しなければならないことである。セルに固体高分子電解質/セパレータを大規模に実装する際の最大の課題の1つは、高い動作温度要件を室温(摂氏約25度)に近いものに下げることである。
【0003】
固体高分子電解質/セパレータを使用することの代替策は、セラミック電解質/セパレータを使用することである。セラミック電解質/セパレータをセルにおいて使用することは比較的新しいため、固体高分子電解質/セパレータの使用に遅れをとっている。しかしながら、セラミック電解質/セパレータを含むセルは、固体高分子電解質/セパレータよりもはるかに室温に近い温度で動作する能力を示した。しかしながら、セラミック電解質/セパレータの内部抵抗が高くなることがあり、このことは得られたセルの出力能力に悪影響を及ぼし得る。
【0004】
概要
いくつかの態様では、固体電解質は、イオン伝導性セラミック材料が散在するイオン伝導性ポリマーの混合物を含む。混合物では、イオン伝導性セラミック材料の重量とイオン伝導性ポリマーの重量との比は、90/10~40/60の範囲にある。
【0005】
いくつかの実施形態では、イオン伝導性セラミック材料の重量とイオン伝導性ポリマーの重量との比は、80/20~75/25の範囲にある。
【0006】
いくつかの実施形態では、固体電解質は、膜厚を有するセパレータ膜であり、イオン伝導性セラミック材料は、膜厚の40パーセント以下の中央粒径を有する。
【0007】
いくつかの実施形態では、中央粒径の標準偏差は、中央粒径の1パーセント以下である。
【0008】
いくつかの実施形態では、イオン伝導性セラミック材料は、二峰性の粒径分布を有する。イオン伝導性セラミック材料は、第1モードの粒径分布を規定する第1の中央粒径を有する第1セットの粒子を含み、第1の中央粒径は、膜厚の40パーセント以下である。加えて、イオン伝導性セラミック材料は、第2モードの粒径分布を規定する第2の中央粒径を有する第2セットの粒子を含み、第2の中央粒径は、膜厚の20パーセント以下である。第1セットの粒子は、総重量の66.6重量パーセントのイオン伝導性セラミック材料を提供し、第2セットの粒子は、総重量の33.3重量パーセントのイオン伝導性セラミック材料を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態では、イオン伝導性セラミック材料は、三峰性の粒径分布を有する。イオン伝導性セラミック材料は、第1モードの粒径分布を規定する第1の中央粒径を有する第1セットの粒子を含み、第1の中央粒径は、膜厚の40パーセント以下である。イオン伝導性セラミック材料は、第2モードの粒径分布を規定する第2の中央粒径を有する第2セットの粒子を含み、第2の中央粒径は、膜厚の20パーセント以下である。加えて、イオン伝導性セラミック材料は、第3モードの粒径分布を規定する第3の中央粒径を有する第3セットの粒子を含み、第3の中央粒径は、膜厚の10パーセント以下である。第1セットの粒子は、総重量の50重量パーセントのイオン伝導性セラミック材料を提供し、第2セットの粒子は、総重量の30重量パーセントのイオン伝導性セラミック材料を提供し、第3セットの粒子は、総重量の20重量パーセントのイオン伝導性セラミック材料を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、イオン伝導性ポリマーは、アタクチックポリプロピレンオキシドである。
【0011】
いくつかの実施形態では、混合物は、イオン伝導性セラミック材料とイオン伝導性ポリマーとの間の表面積接触を改善するように構成されたイオン伝導性カップリング剤を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、イオン伝導性ポリマーは、4,000,000以下の分子量を有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、イオン伝導性ポリマーは、1,500,000~2,500,000の範囲にある分子量を有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、イオン伝導性セラミック材料は、双方の材料が混合物全体に散在するようにイオン伝導性ポリマーと混合される。
【0015】
いくつかの態様では、固体電解質は、活物質と組み合わされて電気化学セルの電極を形成するように構成されている。電気化学セルは、固体電解質セパレータを含み、セパレータは、セパレータ厚を有する。電極を形成する固体電解質は、イオン伝導性セラミック材料が散在するイオン伝導性ポリマーの混合物を含む。混合物は、イオン伝導性セラミック材料の重量とイオン伝導性ポリマーの重量との比が90/10~40/60の範囲にあるように構成されている。
【0016】
いくつかの実施形態では、イオン伝導性セラミック材料の重量とイオン伝導性ポリマーの重量との比は、80/20~75/25の範囲にある。
【0017】
いくつかの実施形態では、イオン伝導性セラミック材料は、セパレータ厚の20パーセント以下の中央粒径を有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、中央粒径の標準偏差は、中央粒径の1パーセント以下である。
【0019】
いくつかの実施形態では、セラミック材料は、二峰性の粒径分布を有する。セラミック材料は、第1モードの粒径分布を規定する第1の中央粒径を有する第1セットの粒子を含み、第1の中央粒径は、セパレータ厚の20パーセント以下である。加えて、セラミック材料は、第2モードの粒径分布を規定する第2の中央粒径を有する第2セットの粒子を含み、第2の中央粒径は、セパレータ厚の10パーセント以下である。第1セットの粒子は、総重量の66.6重量パーセントのセラミック材料を提供し、第2セットの粒子は、総重量の33.3重量パーセントのセラミック材料を提供する。
【0020】
いくつかの実施形態では、イオン伝導性ポリマーは、900,000以下の分子量を有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、イオン伝導性ポリマーは、450,000~750,000の範囲の分子量を有する。
【0022】
いくつかの実施形態では、混合物は、イオン伝導性セラミック材料とイオン伝導性ポリマーとの間の表面積接触を改善するように構成されたイオン伝導性カップリング剤を含む。
【0023】
いくつかの態様では、電気化学セルは、正極、負極、および固体電解質を含み、固体電解質は、正極と負極との間に配置されており、イオンを正極と負極との間で移動させながら正極を負極から電気的に絶縁する。固体電解質は、第1のイオン伝導性セラミック材料が散在する第1のイオン伝導性ポリマーの第1の混合物を含む。第1の混合物は、第1のイオン伝導性セラミック材料の重量と第1のイオン伝導性ポリマーの重量との比が90/10~40/60の範囲にあるように構成されている。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1のイオン伝導性セラミック材料の重量と第1のイオン伝導性ポリマーの重量との比は、80/20~75/25の範囲にある。
【0025】
いくつかの実施形態では、固体電解質は、膜厚を有する膜であり、第1のイオン伝導性セラミック材料は、膜厚の40パーセント以下の中央粒径を有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、中央粒径の標準偏差は、中央粒径の1パーセント以下である。
【0027】
いくつかの実施形態では、第1のイオン伝導性セラミック材料は、二峰性の粒径分布を有する。第1のイオン伝導性セラミック材料は、第1モードの粒径分布を規定する第1の中央粒径を有する第1セットの粒子を含み、第1の中央粒径は、膜厚の40パーセント以下である。加えて、第1のイオン伝導性セラミック材料は、第2モードの粒径分布を規定する第2の中央粒径を有する第2セットの粒子を含み、第2の中央粒径は、膜厚の20パーセント以下である。第1セットの粒子は、総重量の66.6重量パーセントの第1のイオン伝導性セラミック材料を提供し、第2セットの粒子は、総重量の33.3重量パーセントの第1のイオン伝導性セラミック材料を提供する。
【0028】
いくつかの実施形態では、第1のイオン伝導性セラミック材料は、三峰性の粒径分布を有する。第1のイオン伝導性セラミック材料は、第1モードの粒径分布を規定する第1の中央粒径を有する第1セットの粒子を含み、第1の中央粒径は、膜厚の40パーセント以下である。第1のイオン伝導性セラミック材料は、第2モードの粒径分布を規定する第2の中央粒径を有する第2セットの粒子を含み、第2の中央粒径は、膜厚の20パーセント以下である。加えて、第1のイオン伝導性セラミック材料は、第3モードの粒径分布を規定する第3の中央粒径を有する第3セットの粒子を含み、第3の中央粒径は、膜厚の10パーセント以下である。第1セットの粒子は、総重量の50重量パーセントの第1のイオン伝導性セラミック材料を提供し、第2セットの粒子は、総重量の30重量パーセントの第1のイオン伝導性セラミック材料を提供し、第3セットの粒子は、総重量の20重量パーセントの第1のイオン伝導性セラミック材料を提供する。
【0029】
いくつかの実施形態では、第1のイオン伝導性ポリマーは、アタクチックポリプロピレンオキシドである。
【0030】
いくつかの実施形態では、第1のイオン伝導性ポリマーは、4,000,000以下の分子量を有する。
【0031】
いくつかの実施形態では、第1のイオン伝導性ポリマーは、1,500,000~2,500,000の範囲の分子量を有する。
【0032】
いくつかの実施形態では、第1の混合物は、第1のイオン伝導性セラミック材料と第1のイオン伝導性ポリマーとの間の表面積接触を改善するように構成されたイオン伝導性カップリング剤を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、正極および負極のうちの1つは、電極活物質および第2の混合物を含む固体電極である。第2の混合物は、第2のイオン伝導性セラミック材料が散在する第2のイオン伝導性ポリマーを含む。第2の混合物は、第2のイオン伝導性セラミック材料の重量と第2のイオン伝導性ポリマーの重量との比が90/10~40/60の範囲にあるように構成されている。
【0034】
いくつかの実施形態では、第1のイオン伝導性ポリマーは、第2のイオン伝導性ポリマーと同じであり、第1のイオン伝導性セラミック材料は、第2のイオン伝導性セラミック材料と同じである。
【0035】
いくつかの実施形態では、第2のイオン伝導性セラミック材料は、膜厚の20パーセント以下の中央粒径を有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、中央粒径の標準偏差は、中央粒径の1パーセント以下である。
【0037】
いくつかの実施形態では、第2のイオン伝導性セラミック材料は、二峰性の粒径分布を有する。第2のイオン伝導性セラミック材料は、第1モードの粒径分布を規定する第1の中央粒径を有する第1セットの粒子を含み、第1の中央粒径は、膜厚の20パーセント以下である。加えて、第2のイオン伝導性セラミック材料は、第2モードの粒径分布を規定する第2の中央粒径を有する第2セットの粒子を含み、第2の中央粒径は、膜厚の10パーセント以下である。第1セットの粒子は、総重量の66.6重量パーセントのセラミック材料を提供し、第2セットの粒子は、総重量の33.3重量パーセントの第2のイオン伝導性セラミック材料を提供する。
【0038】
いくつかの実施形態では、第2のイオン伝導性ポリマーは、900,000以下の分子量を有する。
【0039】
いくつかの実施形態では、第2のイオン伝導性ポリマーは、450,000~750,000の範囲の分子量を有する。
【0040】
いくつかの実施形態では、第2の混合物は、第2のイオン伝導性セラミック材料と第2のイオン伝導性ポリマーとの間の表面積接触を改善するように構成されたイオン伝導性カップリング剤を含む。
【0041】
いくつかの態様では、固体電解質の形成方法は、以下の方法工程:イオン伝導性ポリマーとイオン伝導性セラミック材料とを混合して混合物を形成する工程であって、混合物は、イオン伝導性セラミック材料の重量とイオン伝導性ポリマーの重量との比が90/10~40/60の範囲にあるように構成されている工程;十分な量の液体有機溶媒を混合物に加えてスラリーを形成する工程;スラリーを板状にキャストする工程;およびキャストされたスラリーを乾燥させてシートを形成する工程であって、該シートは、イオン伝導性ポリマーにイオン伝導性セラミック材料が散在する固体混合複合材電解質シートである工程を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、スラリーをキャストする工程は、厚さが20ミクロン以下である仕上げられたシートを形成することを含み、「仕上げられた」という用語は、シートが乾燥かつカレンダー加工された状態を指す。
【0043】
いくつかの態様では、固体電解質の形成方法は、以下の方法工程:イオン伝導性ポリマーとイオン伝導性セラミック材料とを混合して混合物を形成する工程であって、混合物は、イオン伝導性セラミック材料の重量とイオン伝導性ポリマーの重量との比が90/10~40/60の範囲にあるように構成されている工程;混合物を処理して流動性材料を形成する工程;流動性材料を板状に押し出す工程;およびキャストされたスラリーを乾燥させてシートを形成する工程であって、該シートは、イオン伝導性ポリマーにイオン伝導性セラミック材料が散在する固体混合複合材電解質シートである工程を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、混合物を処理する工程は、材料を加熱することを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、混合物を処理する工程は、十分な量の液体有機溶媒を混合物に添加して流動性材料を形成することを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、流動性材料を押し出す工程は、厚さが20ミクロン以下の仕上げられたシートを形成することを含み、「仕上げられた」という用語は、膜が乾燥し、カレンダー加工された状態を指す。
【0047】
いくつかの実施形態では、電気化学セルは、固体電解質を含み、これはセパレータとしても機能することができ、かつポリマーとイオン伝導性セラミック材料との混合複合材である。混合複合材固体電解質では、イオンの流れを可能にするために必要な温度を下げるために、セラミック材料は、ポリマー(例えば、ポリエチレンオキシド(PEO))に使用される。いくつかの実施形態では、セラミック材料は、ポリマー材料に構造的完全性を与えるために現在使用されているブロックコポリマーを置き換えることができる。混合物中のセラミック材料の量は、重量で混合物の全固形分の40%から90%の間であり得ると考えられる。
【0048】
ポリマーおよびイオン伝導性セラミック材料は、双方の材料が全体に散在した複合材材料が得られるように、混合物として組み合わされる(例えば、ブレンドまたは混合される)。これは、ポリマーなどの第1の材料の層をイオン伝導性セラミック材料などの第2の材料の層にグラフトするいくつかのハイブリッド固体電解質複合材と比較でき、得られた複合材は積層体である。
【0049】
本開示は、固体電解質を提供する、ポリマーとセラミック材料との混合複合材に関する。混合複合材ポリマーおよびセラミック固体電解質は、双方の材料の利点を生み出すために、固体高分子電解質と固体セラミック電解質とのハイブリッドである。混合複合材で使用されるセラミック材料は、ポリマーよりも低い温度でイオン伝導体として役立ち、構造(例えば、剛性)をもたらし、樹状突起に曲がりくねった経路をもたらし得る。加えて、混合複合材で使用されるポリマー材料は、柔軟性をもたらし、セラミック粒子を結合するのに役立ち得る。一部では、特定のポリマーについて、セラミックの表面に高伝導性ポリマーの「中間相」が形成され、これが比較的低温での伝導性を高めると理論づけられている。したがって、電解質は、実質的に純粋な固体高分子電解質/セパレータよりもはるかに室温近くで動作する能力を有し、かつ実質的に純粋な固体セラミック電解質よりも高い延性を有し得る。さらに、本開示は、一方の材料のみを使用することから他方を使用することへの移行方法と考えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1図1は、正極、負極、および混合複合材固体電解質を含む電気化学セルの電極アセンブリの概略図である。
図2図2は、ポリマー
【表1】
とイオン伝導性セラミック材料
【表2】
とを混合して、ポリマーにイオン伝導性セラミック材料が散在する混合物を形成する図である。
図3図3は、イオン伝導性セラミック材料
【表3】
が散在するポリマー
【表4】
を示す混合複合材固体電解質シートの概略的な断面図である。
図4図4は、混合複合材固体電解質シートの形成方法を示すフローチャートである。
【0051】
詳細な説明
図1を参照すると、電気化学セル2は、カソード3、アノード6および固体材料10を含み、固体材料10は、アノードとカソードとの間に配置され、電解質とセパレータとの双方として機能し、かつ電気化学セル2のイオン電気活性種の通路を提供する。電解質10は、以下で詳細に説明するように、混合ポリマーおよびセラミック複合材で形成された固体電解質である。カソード3およびアノード6は、固体電解質10によって直接接触することを防止され、これにより、電子ではなくイオン性電気活性種の移動が可能になる。いくつかの実施形態では、固体電解質10に加えて別個のセパレータ(図示せず)が設けられてもよく、セパレータは、固体電解質を物理的に支持する。セル2は、集電体12、14を含み、これらの集電体は、それぞれのカソード3およびアノード6とセルハウジング16の外部との間に延在し、電池によって生成される電気エネルギーを利用するために外部電気回路に接続することができる。再充電可能な電気化学セルまたは電池の場合、同じ集電体12、14は、電池またはセルの再充電に役立つ。
【0052】
いくつかの実施形態では、カソード3は、層状構造を有し、かつスラリーコーティングプロセス、印刷プロセスまたは他の適切なプロセスで第1の導電性シート5の1つの表面に適用されるカソード活物質4を含む。例えば、第1の導電性シート5は、アルミニウムまたは他の適切な材料で形成され得る。カソード活物質4は、バインダー(図示せず)を使用して第1の導電性シート5の表面に固定され得る。いくつかの実施形態では、カソード活物質4は、リチウム化された金属リン酸塩である。いくつかの実施形態では、カソード活物質4は、リチウム化された金属酸化物である。
【0053】
いくつかの実施形態では、アノード6は、層状構造を有し、かつスラリーコーティングプロセス、印刷プロセスまたは他の適切なプロセスで第2の導電性シート8の1つの表面に適用されるアノード活物質7を含む。例えば、第2の導電性シート8は、銅または他の適切な材料で形成され得る。アノード活物質7は、バインダー(図示せず)を介して第2の導電性シート9の表面に固定され得る。アノード活物質7は、リチウムイオンを可逆的に挿入できる物質であり得る。いくつかの実施形態では、アノード活物質7は、金属リチウム(すなわち、リチウム箔)またはリチウム合金である。いくつかの実施形態では、アノード活物質7は、グラファイト材料である。いくつかの実施形態では、アノード活物質7は、純粋なシリコンである。いくつかの実施形態では、アノード活物質7は、グラファイト材料とシリコンとの複合材である。
【0054】
電解質は、ポリマーとイオン伝導性セラミック材料との複合材である固体電解質である。
【0055】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、イオン伝導性ポリマーまたはイオン伝導性コポリマーである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリエチレンオキシドである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリプロピレンオキシドである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、代替的なポリオレフィンオキシドである。
【0056】
いくつかの実施形態では、イオン伝導性ポリマーは、イオン伝導性ポリマーブロックとしてポリ(プロピレンオキシド)(PPO)を含む。例えば、PPOは、アタクチック非対称モノマーであり得る。アタクチックモノマーは、ラセモダイアド、トライアッド、または他の高次置換基を実質的に有していない。ポリマー鎖に沿った置換基のランダムな配置により、特に80℃未満の温度で結晶化度の低いポリマーが生成され、それにより以前の固体電解質よりも低い温度で良好なイオン伝導性が維持される。いくつかの実施形態では、イオン伝導性は、80℃で少なくとも10-3S/cmである。いくつかの実施形態では、アタクチックPPOは、15%以下の結晶化度を有する。いくつかの実施形態では、電解質材料は、少なくとも1種の直鎖状ブロックコポリマーを含み、これは第1のポリマーブロックとは異なる第2のポリマーブロックに共有結合した第1のポリマーブロックを含む。第1のポリマーブロックは、イオン伝導性アタクチックポリ(プロピレンオキシド)ブロックであり得る。イオン伝導性アタクチックポリ(プロピレンオキシド)ブロックは、塩と組み合わされて、電解質材料を通るイオン伝導経路を提供するように構成されたイオン伝導性ドメインを提供し得る。第2のポリマーブロックは、電解質材料に構造ドメインを提供するように構成された構造ポリマーブロックであり得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、イオン伝導性セラミック材料は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ガドリニウムドープセリア(GDC)、ランタンストロンチウムガレートマグネサイト(LSGM)、ベータアルミナおよび/またはベータ」アルミナなどのいわゆる高速イオン伝導体セラミックを含み得る。いくつかの実施形態では、イオン伝導性セラミック材料は、リチウムランタンジルコニウムオキシド(LLZO)、リチウムスズリンスルフィド(LSPS)、抗ペロブスカイト(例えば、LiOCl、LiOBr)、リチウムホスホネートオキシド(LiPON)、およびリチウムホスフェートであってよく、これらは、Li金属に対して安定であり得るセラミック材料の例である。いくつかの実施形態では、アノードとセパレータとの間にLiPONなどの第2のイオン伝導層が存在し得る。これらの場合、イオン伝導性セラミック材料は、Liまたはグラファイトに対して不安定なセラミック、例えば、ランタンリチウムチタネート(LLTO)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LATP)、およびリチウム超イオン伝導体(LATSP)を含み得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、イオン伝導性セラミック材料は、純粋なイオン伝導性セラミック材料である。いくつかの実施形態では、イオン伝導性セラミック材料は、イオン伝導性セラミック材料とイオン伝導性ガラス材料との混合物である。一部のセラミックのみ完全になくすことができない細孔および/または粒界を有しており、この細孔および/または粒界が存在すると、次に伝導性が低下し得るので、イオン伝導性セラミックとガラスとの組み合わせを使用することが有利であり得る。場合により、ガラスセラミックには細孔がなく、粒界が改善され、その結果、より高い伝導性を有する固体電解質が提供される。また、ガラスのように、ガラスセラミックは、薄膜を含むさまざまな形状に容易に形成され得ると考えられている。
【0059】
図2~4を参照すると、固体電解質の形成方法は、以下の工程を含む。いくつかの実施形態では、ポリマーおよびイオン伝導性セラミック材料は、乾燥した形で、例えば、粉末としてまたは粒子の形で提供される(工程200)。乾燥ポリマーおよびイオン伝導性セラミック材料は、例えば容器20内で一緒にブレンドまたは混合されて、複合材混合物を形成する(工程202)。結果として、ポリマーおよびイオン伝導性セラミック材料は、得られた複合材材料に双方の材料が全体にわたり散在するように組み合わされる。いくつかの実施形態では、ポリマー材料に構造的完全性を与えるために、セラミック材料は、現在使用されているブロックコポリマーを置き換え得ると考えられる。
【0060】
ポリマーおよびイオン伝導性セラミック材料は、伝導性を高め、かつ/または取り扱いおよび製造性を促進する比較的少量の他の成分とさらに混合される。例えば、塩が添加されて、ブレンドされた材料全体のイオン伝導性を高め得る。所望の樹脂材料にリチウムイオン伝導性を付与するために慣用的に使用されている任意の種類のリチウム塩が使用され得る。いくつかの実施形態では、塩は、リチウム化塩である。例示的なリチウム化塩は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドであり、しばしば単にLiTFSIと呼ばれている。LiTFSIは、化学式LiCNOの親水性塩である。いくつかの実施形態では、塩は、リチウム化フッ素化塩である。例示的なリチウム化フッ素化塩は、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)である。使用され得る他の可能性のあるリチウム塩には、LiN(SOCF、LiN(SO、LiBFおよびLiClOが含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
添加される塩の量は、飽和するのに十分であるが、沈殿物を形成するには不十分である。いくつかの実施形態では、混合する前に、ポリマー、イオン伝導性セラミック材料、またはポリマーとイオン伝導性セラミック材料との双方を、塩で前処理することが必要であり得る。
【0062】
別の例として、可塑性および柔軟性を生成または促進して脆性を低減するために、可塑剤が添加され得る。可塑剤は、可塑化塩、溶媒、または双方の組み合わせの形であり得る。例示的な可塑化塩には、LiN(CFSOが含まれ、例示的な可塑化溶媒には、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチルおよびフタル酸ジメチルグリコールが含まれる。
【0063】
他の添加剤が、必要に応じて含まれ得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、複合材混合物は、40重量パーセント~90重量パーセントの範囲の量のイオン伝導性セラミック材料と、60重量パーセント~10重量パーセントの範囲の量のイオン伝導性ポリマーとを含む。加えて、複合材混合物は、約10重量パーセントの範囲の他の材料(塩、可塑剤、および必要に応じて他の添加剤)を含む。いくつかの実施形態では、他の材料の量は、10パーセントよりわずかに多く(例えば、10~15パーセントの間)または10パーセントよりわずかに少なく(例えば、5パーセント~10パーセントの間)、イオン伝導性ポリマーおよび/またはイオン伝導性セラミック材料の量は、それに応じて調整される。
【0065】
複合材混合物が主としてイオン伝導性セラミック材料で構成されている一例では、複合材混合物は、約90パーセントのイオン伝導性セラミック材料と、約10パーセントのイオン伝導性ポリマーおよび他の材料(例えば、イオン伝導性ポリマーと他の材料との合計重量は、混合物の総重量の約10パーセントである)とを含む。
【0066】
複合材混合物が主としてイオン伝導性セラミック材料で構成されている別の例では、複合材混合物は、約80パーセントのイオン伝導性セラミック材料と、約20パーセントのイオン伝導性ポリマーおよび他の材料(例えば、イオン伝導性ポリマーと他の材料との合計重量は、混合物の総重量の約20パーセントである)とを含む。
【0067】
別の例では、複合材混合物は、約50パーセントのイオン伝導性セラミック材料と、約50パーセントのイオン伝導性ポリマーおよび他の材料(例えば、イオン伝導性ポリマーと他の材料との合計重量は、混合物の総重量の約50パーセントである)とを含む。
【0068】
複合材混合物が主としてイオン伝導性ポリマーで構成されている別の例では、複合材混合物は、少なくとも40パーセントのイオン伝導性セラミック材料と、約60パーセントのイオン伝導性ポリマーおよび他の材料(例えば、イオン伝導性ポリマーと他の材料との合計重量は、混合物の総重量の約50パーセントである)とを含む。混合物が、約40パーセント未満のイオン伝導性セラミック材料を含む場合、セラミック粒子が、離れすぎて界面接触が少なすぎることがあり、したがって混合物から得られる固体電解質が、イオン伝導性および/または構造的完全性を高められないことがあると理論づけられている。
【0069】
いくつかの実施形態では、セラミックとポリマーとの間の表面積接触を改善するために、イオン伝導性カップリング剤が、セラミック/ポリマーブレンドに添加される。本明細書で使用される「カップリング剤」という用語は、分子が、有機材料および無機材料の双方と結合する官能基を含む、化合物を指す。カップリング剤は、有機材料を無機材料に結合する中間体の一種として機能する。この特性により、カップリング剤は、複合材材料の機械的強度を向上させ、接着性を向上させ、かつ表面改質するのに有用である。混合物で使用する場合、カップリング剤は、得られた膜の機械的強度および柔軟性も向上させる。例えば、セラミック材料は、カップリング剤で前処理され、次いでポリマーとブレンドされ得る。代替的に、カップリング剤は、セラミックの導入前にポリマー溶液に添加され得る。
【0070】
イオン伝導性セラミック材料の重量とイオン伝導性ポリマーの重量との所与の比について、混合物の特性は、混合物を形成するために使用されるセラミック粒子のサイズおよび分布ならびに混合物を形成するために使用されるポリマーの分子量によっても決定される。セラミック粒子のサイズおよび分布、ならびにポリマーの分子量については、ここで詳細に説明される。
【0071】
混合物に使用されるセラミック粒子のサイズは、混合物から形成される膜の厚さに対して定義される。すなわち、混合物が固体電解質セパレータ膜を形成するために使用される場合、セラミック粒子のサイズは、膜厚に関して定義される。さらに、混合物で使用されるセラミック粒子のサイズは、D50値を使用して定義されており、ここで、D50という用語は、一連の粒子の中央粒径を指す。混合物を使用して固体電解質セパレータ膜を形成する場合、イオン伝導性セラミック材料は、膜厚の40パーセント以下のD50値を有する。加えて、D50値の標準偏差は、D50値の1パーセント以下である。
【0072】
いくつかの実施形態では、イオン伝導性セラミック材料は、二峰性の粒径分布を有する。二峰性分布では、イオン伝導性セラミック材料は、第1モードの粒径分布を規定する第1の中央粒径を有する第1セットの粒子を含む。加えて、イオン伝導性セラミック材料は、第2モードの粒径分布を規定する第2の中央粒径を有する第2セットの粒子を含む。二峰性分布で粒子を提供することは、粒子を2つのサイズで提供することと考えることができ、これにより混合物内の粒子充填が改善される。粒子充填の改善により、得られる固体電解質内のイオン伝導が改善される。いくつかの実施形態では、二峰性分布において、第1の中央粒径は、膜厚の40パーセント以下であり、第2の中央粒径は、膜厚の20パーセント以下である。加えて、第1セットの粒子は、総重量の66.6重量パーセントのイオン伝導性セラミック材料を提供し、第2セットの粒子は、総重量の33.3重量パーセントのイオン伝導性セラミック材料を提供する。
【0073】
いくつかの実施形態では、イオン伝導性セラミック材料は、三峰性の粒径分布を有し、これにより、得られる固体電解質内のイオン伝導がさらに改善される。三峰性分布では、イオン伝導性セラミック材料は、次のように3セットの粒子を含む:イオン伝導性セラミック材料は、第1モードの粒径分布を規定する第1の中央粒径を有する第1セットの粒子、第2モードの粒径分布を規定する第2の中央粒径を有する第2セットの粒子、および第3モードの粒径分布を規定する第3の中央粒径を有する第3セットの粒子を含む。いくつかの実施形態では、三峰性分布において、第1の中央粒径は、膜厚の40パーセント以下であり、第2の中央粒径は、膜厚の20パーセント以下であり、第3の中央粒径は、膜厚の10パーセント以下である。加えて、第1セットの粒子は、総重量の50重量パーセントのイオン伝導性セラミック材料を提供し、第2セットの粒子は、総重量の30重量パーセントのイオン伝導性セラミック材料を提供し、かつ第3セットの粒子は、総重量の20重量パーセントのイオン伝導性セラミック材料を提供する。
【0074】
混合物を形成するために使用されるポリマーの分子量は、分子量に関して規定される。本明細書で使用される場合、分子量は、ポリマー鎖の長さを指す単位のない値である。いくつかの実施形態では、混合物が固体電解質セパレータ膜を形成するために使用される場合、イオン伝導性ポリマーは、4,000,000以下の分子量を有する。いくつかの実施形態では、混合物を使用して固体電解質セパレータ膜を形成する場合、イオン伝導性ポリマーは、1,500,000~2,500,000の範囲の分子量を有する。
【0075】
いくつかの実施形態では、カソード活物質4を第1の導電性シート5に固定するために使用されるバインダーは、カソード液に置き換えられ、カソード3は、固体カソードである。同様に、いくつかの実施形態では、アノード活物質7を第2の導電性シート8に固定するために使用されるバインダーは、アノード液に置き換えられ、アノード6は、固体アノードである。本明細書で使用される場合、「カソード液」および「アノード液」という用語は、ポリマーとイオン伝導性セラミック材料との比率を除いて、上記の固体電解質セパレータ膜を形成するために使用される混合物のものと同様のそれぞれの組成物を指す。この配置で、混合物は、カソードおよび/またはアノード活物質に有利に統合され、イオン伝導はよりよく促進される。混合物を使用してバインダーを置換かつ/または電極コーティングを形成するいくつかの実施形態では、イオン伝導性セラミック材料の重量とイオン伝導性ポリマーの重量との比は、前述のように維持される。すなわち、複合材混合物は、10重量パーセント~90重量パーセントの範囲の量のイオン伝導性セラミック材料と、90重量パーセント~10重量パーセントの範囲の量のイオン伝導性ポリマー材料とを含む。加えて、複合材混合物は、約10重量パーセントの範囲の他の材料(塩、可塑剤、および必要に応じて他の添加剤)を含む。いくつかの実施形態では、他の材料の量は、10パーセントよりわずかに多く(例えば、10~15パーセントの間)または10パーセントよりわずかに少なく(例えば、5パーセント~10パーセントの間)、イオン伝導性ポリマーおよび/またはイオン伝導性セラミック材料の量は、それに応じて調整される。
【0076】
混合物が電極活物質と組み合わされて固体電極を形成する場合、混合物に使用されるセラミック粒子のサイズは、カソードからアノードを分離するために使用されるセパレータ膜の厚さに対して規定されている。いくつかの実施形態では、イオン伝導性セラミック材料は、膜厚の20パーセント以下のD50値を有する。また、D50値の標準偏差は、D50値の1パーセント以下である。いくつかの実施形態では、イオン伝導性セラミック材料は、二峰性の粒径分布を有する。いくつかの実施形態では、二峰性分布において、第1の中央粒径は膜厚の20パーセント以下であり、第2の中央粒径は膜厚の10パーセント以下である。加えて、第1セットの粒子は、総重量の66.6重量パーセントのイオン伝導性セラミック材料を提供し、第2セットの粒子は、総重量の33.3重量パーセントのイオン伝導性セラミック材料を提供する。
【0077】
混合物が固体電極用のコーティングを形成するために使用される場合、イオン伝導性ポリマーは、900,000以下の分子量を有する。いくつかの実施形態では、混合物が固体電極用のコーティングを形成するために使用される場合、イオン伝導性ポリマーは、450,000~750,000の範囲の分子量を有する。
【0078】
ここで方法に戻ると、複合材混合物が形成されると、複合材混合物は、次いで液体と組み合わされてスラリーを形成する(工程204)。液体は、例えば、有機溶媒であり得る。適切な有機溶媒の例には、シクロヘキサノンおよびアセトニトリルが含まれるが、これらに限定されない。スラリーは、シートとしてキャストされ(工程206)、乾燥され(工程208)、固体複合材電解質シートを形成する。いくつかの実施形態では、シートは、非常に薄く、例えば、厚さが20ミクロン未満であり、したがって膜であると見なすことができる。いくつかの実施形態では、シートは、仕上げられた形で厚さが約10ミクロン~15ミクロンであり、「仕上げられた」という用語は、膜が乾燥され、カレンダー加工された状態を指す。
【0079】
いくつかの実施形態では、キャスティングの代替として、混合物は、シートまたは膜として押し出される。混合物を押し出す方法では、押し出し前に混合物を処理して流動性材料を提供する。混合物を処理する工程は、例えば、混合物を加熱すること、十分な量の液体有機溶媒を混合物に加えて流動性材料を形成すること、または流動性材料を得る他の従来の方法を含み得る。加えて、流動性材料を押し出すことは、仕上げられた形で厚さが20ミクロン以下である、仕上げられたシートを形成することを含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、得られた電解質シートは、ポリマーとイオン伝導性セラミック材料との均質な混合物を含む。他の実施形態では、得られた電解質シートは、ポリマーとイオン伝導性セラミック材料との非層状不均質混合物である。
【0081】
電極アセンブリを形成するために、固体複合材電解質シート10は、カソード3とアノード6との交互のシートの間に積み重ねられる。いくつかの実施形態では、スタックは、カソード3、第1の固体複合材電解質シート10、アノード6、および第2の固体複合材電解質シート10を含む。いくつかの実施形態では、スタックは、複数の積み重ねられたサブスタックを含み、各サブスタックは、カソード3、第1の固体複合材電解質シート10、アノード6、および第2の固体複合材電解質シート10を含む。スタックは、熱を加えながら積層方向に沿って圧力を加えることにより互いに積層される。この工程は、電解質シート10が隣接する層との接続を形成し、各層の間の界面で良好な接触が存在することを保証するのに役立つ。
【0082】
いくつかの実施形態では、イオン伝導性カップリング剤が、セラミック/ポリマーブレンドに添加されて、セラミックとポリマーとの間の表面積接触を改善する。本明細書で使用される「カップリング剤」という用語は、分子が、有機材料および無機材料の双方と結合する官能基を含む、化合物を指す。カップリング剤は、有機材料を無機材料に結合する中間体の一種として機能する。この特性により、カップリング剤は、複合材材料の機械的強度を向上させ、接着性を向上させ、かつ表面改質するのに有用である。混合物で使用する場合、カップリング剤は、得られた膜の機械的強度および柔軟性も向上させる。例えば、セラミック材料は、カップリング剤で前処理され、次いでポリマーとブレンドされ得る。代替的に、カップリング剤は、セラミックの導入前にポリマー溶液に添加され得る。
【0083】
セル、電解質および方法の選択的で例示的な実施形態は、上記でいくらか詳細に説明されている。これらのデバイスを明確にするために必要と考えられる構造のみが本明細書に記載されており、方法を明確にするために必要と考えられる工程のみが本明細書に記載されていることを理解されたい。他の従来の構造および方法の工程、ならびにセルおよび電解質の付随および補助要素のものについては、当業者に公知であり、かつ理解されていると想定される。さらに、セル、電解質、および方法の実施例について上記で説明したが、セル、電解質、および方法は、上記の実施例に限定されないが、特許請求の範囲に記載されたデバイスおよび方法から逸脱することなく様々な設計変更を実施することができる。
図1
図2
図3
図4