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特許7060685体動依存型ラジアル又はスパイラルk空間サンプリングを使用するMRイメージング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】体動依存型ラジアル又はスパイラルk空間サンプリングを使用するMRイメージング
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20220419BHJP
【FI】
A61B5/055 311
A61B5/055 382
A61B5/055 376
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020520257
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2018077181
(87)【国際公開番号】W WO2019072719
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】17195606.3
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ドネヴァ マリヤ イワノワ
(72)【発明者】
【氏名】ウエルベルン ヤン ヘンドリク
(72)【発明者】
【氏名】べック ガブリエル マリアンヌ
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/173437(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/009391(WO,A1)
【文献】特表2016-536045(JP,A)
【文献】国際公開第2016/069602(WO,A1)
【文献】特開2010-172473(JP,A)
【文献】米国特許第7693569(US,B1)
【文献】特表2008-536556(JP,A)
【文献】特開2004-237109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/20 -33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴(MRデバイスの検査ボリューム内に置かれた物体のMRイメージング方法であって、
前記物体の瞬間的体動によって誘発された変位を検出するステップaと、
検出された前記変位を1つの体動状態に帰属させるステップbであって、各体動状態が変位の複数の連続範囲のうちの1つの範囲に対応する、前記ステップbと、
初期角度座標から開始して、各体動状態について個別に角度座標をインクリメントすることによって、ラジアルk空間プロファイル又はスパイラルk空間プロファイルの前記角度座標を決定するステップcであって、異なる初期角度座標が各体動状態に帰属している、前記ステップcと、
k空間プロファイルを収集するステップdと、
前記ステップa~dを何回か繰り返すステップと、
少なくとも前記体動状態のうちの1つに帰属する前記k空間プロファイルからMR画像を再構成するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記体動状態のうちの少なくとも1つに帰属する収集されたk空間プロファイルのすべてが、k空間における十分に密にサンプリングされた円形又は球状領域に広がり、そこから前記MR画像が再構成されるまで、前記ステップa~dは繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ラジアルk空間プロファイルは、前記k空間プロファイルが平面内で回転される当該平面に垂直なスライス方向に沿って隣接位置に配置された多数の平行スライスから収集される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記角度座標は、黄金角方式に従ってインクリメントされる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記瞬間的体動によって誘発された変位は、固有のナビゲータ信号として以前の反復において収集されたk空間プロファイルから導出される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記瞬間的体動によって誘発された変位は、ナビゲータ信号を収集することによって検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記瞬間的体動によって誘発された変位は、動きセンサを使用することによって検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記MR画像は、少なくとも2つの前記体動状態に帰属するMR信号から再構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
個々のMR画像が、少なくとも2つの体動状態のそれぞれについて再構成され、前記個々のMR画像は、レジストレーションアルゴリズムを使用して最終MR画像に組み合わされて、前記体動状態間の前記瞬間的体動によって誘発された変位が補正される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記MR画像は、非デカルトSENSE又は圧縮センシングを使用して再構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
検査ボリューム内に均一な静磁場を発生させる少なくとも1つの主磁石コイルと、前記検査ボリューム内で異なる空間方向に切り替え傾斜磁場を発生させる幾つかの傾斜磁場コイルと、前記検査ボリューム内でRFパルスを発生させる及び/又は前記検査ボリューム内に置かれた物体からの磁気共鳴(MR信号を受信する少なくとも1つのRFコイルと、RFパルス及び切り替え傾斜磁場の時間的連続を制御する制御ユニットと、受信した前記MR信号からMR画像を再構成する再構成ユニットと、を含み、
前記物体の瞬間的体動によって誘発された変位を検出するステップaと、
検出された前記変位を1つの体動状態に帰属させるステップbであって、各体動状態が変位の複数の連続範囲のうちの1つの範囲に対応する、前記ステップbと、
初期角度座標から開始して、各体動状態について個別に角度座標をインクリメントすることによって、ラジアルk空間プロファイル又はスパイラルk空間プロファイルの前記角度座標を決定するステップcであって、異なる初期角度座標が各体動状態に帰属している、前記ステップcと、
k空間プロファイルを収集するステップdと、
前記ステップa~dを何回か繰り返すステップと、
少なくとも前記体動状態のうちの1つに帰属する前記k空間プロファイルからMR画像を再構成するステップと、
含む方法を行う、MRデバイス。
【請求項12】
物体の瞬間的体動によって誘発された変位を検出するステップaと、
検出された前記変位を1つの体動状態に帰属させるステップbであって、各体動状態が変位の複数の連続範囲のうちの1つの範囲に対応する、前記ステップbと、
初期角度座標から開始して、各体動状態について個別に角度座標をインクリメントすることによって、ラジアルk空間プロファイル又はスパイラルk空間プロファイルの前記角度座標を決定するステップcであって、異なる初期角度座標が各体動状態に帰属している、前記ステップcと、
k空間プロファイルを収集するステップdと、
前記ステップa~dを何回か繰り返すステップと、
少なくとも前記体動状態のうちの1つに帰属する前記k空間プロファイルからMR画像を再構成するステップと
を含む方法を行うための、非一時的コンピュータ可読媒体に記憶されたコンピュータ実行可能な命令を含む、磁気共鳴(MR)デバイス上で実行されるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴(MR)イメージングの分野に関する。本発明は、物体のMRイメージング方法に関する。本発明はまた、MRデバイス及びMRデバイス上で実行されるコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日では、2次元又は3次元画像を形成するために磁場と核スピンとの相互作用を利用する画像形成MR方法は、軟組織のイメージングについて、他のイメージング方法よりも多くの点において優れ、電離放射線を必要とせず、また、通常、侵襲的ではないので、特に医療診断分野において広く使用されている。
【0003】
一般的なMR方法では、例えば検査される患者の身体である物体は、強力な均一磁場内に配置される。磁場の方向は、同時に、測定のベースになる座標系の軸(通常はZ軸)を規定する。磁場は、規定された周波数(いわゆるラーモア周波数又はMR周波数)の交流電磁場(RF磁場)の印加によって励起(スピン共鳴)可能である磁場強度に依存して、個々の核スピンの様々なエネルギーレベルを生成する。巨視的観点から、個々の核スピンの分布が全体的な磁化を生成し、全体的な磁化は、適切な周波数の電磁パルス(RFパルス)を印加することにより平衡状態から外れるように偏向可能であり、これにより、磁化は、Z軸の周りで歳差運動を行う。歳差運動は、円錐体の表面を描き、その開口角はフリップ角と呼ばれる。フリップ角の大きさは、印加された電磁パルスの強度及び持続時間に依存する。いわゆる90°パルスの場合、スピンはZ軸から横断面まで偏向される(フリップ角90°)。
【0004】
RFパルスの終了後、磁化は緩和して元の平衡状態に戻る。平衡状態では、Z方向における磁化が、第1の時定数T(スピン格子緩和時間又は縦緩和時間)で再び蓄積され、Z方向に垂直な方向における磁化が、第2の時定数T(スピンスピン緩和時間又は横緩和時間)で緩和する。磁化の変化は、当該磁化の変化がZ軸に垂直な方向に測定されるようにMRデバイスの検査ボリューム内に配置され、方向付けられている受信RFコイルによって検出することができる。横方向磁化の減衰は、例えば90°パルスの印加後、(局所的な磁場の不均一性によって引き起こされる)同位相を有する秩序状態からすべての位相角が均一に分布する状態への核スピンの遷移(ディフェージング)が伴う。ディフェージングは、リフォーカシングパルス(例えば180°パルス)によって相殺することができる。これは、受信コイルにおいてエコー信号(スピンエコー)を生成する。
【0005】
体内における空間分解能を実現するために、3つの主軸に沿って延在する一定傾斜磁場が均一磁場に重畳され、スピン共鳴周波数の線形空間的依存性につながる。このとき、受信コイルにおいて捕捉される信号は、体内の様々な場所に関連付けられる様々な周波数成分を含む。受信コイルを介して得られる信号データは空間周波数領域に対応し、k空間データと呼ばれる。k空間データは、通常、異なる位相エンコーディングで収集された複数のラインを含む。各k空間ラインは、幾つかのサンプルを集めることによってデジタル化される。k空間データのセットは、画像再構成アルゴリズムによってMR画像に変換される。
【0006】
既知のいわゆる3次元(3D)スタックオブスターズ収集方式(例えば国際特許公開WO2013/159044A1を参照)では、多数の空間的非選択的又はスラブ選択的RF励起が印加され、各励起後に1つ以上のMR信号(例えばグラジエントエコー信号)の収集が続く。各MR信号がk空間プロファイルを表す。MR信号は、多数の平行スライスからラジアルk空間プロファイルとして収集される。スライスは、スライス方向に沿って異なる位置に配置される。スライス方向(例えばk方向)において標準的なデカルト位相エンコードが行われる一方で、MR信号は、中心(k=k=0)を中心に回転する放射状の「スポーク」に沿って各スライス内で収集される。これにより、積み重ねられたディスクで構成される円柱状のk空間カバレッジ(「スタックオブスターズ」)がもたらされる。技術的には、これはスライスの面内方向に傾斜磁場を同時に発生させて、それらの振幅を変調することにより実現される。様々な方式を使用して、k空間プロファイル収集ステップの時間的順序を選択することができる。例えばスライス方向に沿ったすべての位相エンコードステップは、異なる角度位置でのk空間プロファイルが収集される前に順次収集することができる。これにより、デカルトサンプリングの時間が短く保たれ、これにより、スライスのスタック内のデータの一貫性が高まり、スタックオブスターズ手法のラジアルサンプリングの一般的な体動ロバスト性が維持される。デカルト位相エンコードステップは、中心スライスからk空間の周辺に(セントリックアウト)、又は、-kz,Maxから+kz,Maxへの線形順序で行われてよい。角度順序付けの場合、イメージングシーケンスは、複数のインターリーブを有する等角距離サンプリング又はいわゆる黄金角方式を使用することができる。等距離方式では、角距離は、ΔΦ=180°/ntotalに従って計算される。ntotalはスポークの総数である。インターリーブは、k空間における時間的コヒーレンスを低減するので、複数のインターリーブ(即ち、「回転」)を使用してスポークを収集することは有益な場合がある。したがって、体動の非一貫性がk空間に広がり、アーチファクトが減衰される。黄金角方式では、k空間プロファイルの角度が、各時点において、180°に黄金比を掛けた値に相当するΔΦ=111.25°ずつ増加される。いわゆる疑似黄金角方式や小さい黄金角方式も知られており、これらはすべて、本明細書では、「黄金角方式」との総括的な用語に分類される。このような黄金角方式では、続いてサンプリングされたスポークは、前にサンプリングされたスポークのセットにおける最大ギャップを埋めながら、常に補足情報を追加する。その結果、収集されたスポークの任意の連続セットは、k空間をほぼ均一にカバーし、このことが、時間サブフレームの再構成を可能にし、黄金角方式をダイナミックイメージング検査によく適したものにする。
【0007】
前述の3Dラジアルスタックオブスターズ方式は、良性エイリアシングアーティファクトやk空間中心の継続更新といった臨床MRイメージングに幾つかの有望な利点を提供する。しかし、その固有の体動ロバスト性にもかかわらず、収集されたMR画像は依然として体動によって多少影響を受ける可能性がある。
【0008】
この問題を解決するために、特定の所定の呼吸ゲートウィンドウ内で収集されたMR信号データのみを受け入れるゲート技術が開発されている。潜在的なドリフト問題に対処するために、1つの所定のゲートウィンドウではなく、幾つかの個別の体動状態(ビン)を使用するマルチゲートウィンドウ手法(PAWSと呼ばれる。米国特許第7,039,451Bl号を参照)が提案されている。体動状態のそれぞれは、検査下の体動によって誘発された変位の複数の連続範囲の1つの範囲に対応する。PAWSの最後のMR画像は、MR信号サンプルの完全なセットが最初に収集された体動状態に帰属するMR信号データから再構成される。その後、他のMR信号データはすべて破棄される。
【0009】
黄金角方式と組み合わせたラジアル収集のMR信号データは、PAWS手法と同様に、体動状態に遡及的に帰属する(attributed to)可能性があることが更に知られている。その場合、最大量のMR信号データが収集された体動状態に帰属するMR信号データからMR画像を再構成することができる。或いは、異なる体動状態間の相関を使用して、すべての体動状態のMR画像を同時に再構成する制約付き再構成が適用されてもよい。この手法は、すべての収集データを利用して、100%の走査効率につながる。
【0010】
黄金角サンプリングは、任意の収集間隔内でラジアルk空間プロファイルの準均一角度分布を提供するが、各呼吸体動状態に帰属するMR信号データは、必ずしも十分に分布しているとは限らない。複数の時間間隔からのMR信号データを組み合わせると、収集されたラジアルk空間プロファイルの角度サンプリングが適切に分散されるという保証はない。潜在的なクラスタリングとラジアルプロファイル間の大きなギャップが、再構成されたMR画像の画質を低下させる可能性がある。
【0011】
国際特許公開WO2016/069602は、適応型リアルタイムラジアルk空間サンプリング軌道(ARKS)に関連する。ARKS収集は、生理学的フィードバック信号に応答して、体動の影響を低減する。新しいラジアル投影を収集するための指示が、生理学的信号分析から送信される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述から、MRイメージング技術の改良の必要性があることが容易に理解されるであろう。本発明は、ラジアル(又はスパイラル)収集方式を使用して体動アーチファクトが低減されるMRイメージングを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、MRデバイスの検査ボリューム内に置かれた物体のMRイメージング方法が開示される。方法は、以下の一連のステップを含む。即ち、
物体の瞬間的体動によって誘発された変位を検出するステップaと、
検出された変位を1つの体動状態に帰属させるステップbであって、各体動状態が変位の複数の連続範囲のうちの1つの範囲に対応する、ステップbと、
初期角度座標から開始して、各体動状態について個別に角度座標をインクリメントすることによって、ラジアル又はスパイラルk空間プロファイルの角度座標を決定するステップcであって、異なる初期角度座標が各体動状態に帰属している、ステップcと、
k空間プロファイルを収集するステップdと、
ステップa~dを何回か繰り返すステップと、
少なくとも体動状態のうちの1つに帰属するk空間プロファイルからMR画像を再構成するステップとを含む。
【0014】
本発明は、MR信号収集中に、検査される患者の体動を連続的に検出することを提案する。(例えば瞬間的な呼吸相を検出するために患者の横隔膜上に配置されたペンシルビーム形状のボリュームから)例えばナビゲータ信号を収集することによって、瞬間的体動によって誘発される変位を検出することができる。或いは、瞬間的体動によって誘発される変位は、カメラといった動きセンサ、ECGセンサ又は呼吸ベローズを使用して検出することもできる。更に、既に利用可能である収集済みMR信号データの固有の体動情報を使用して、瞬間的な動きの様相を導出することができる。(k空間の原点を通過する)各ラジアル又はスパイラルk空間プロファイルは、1次元の「固有の」ナビゲータを提供する。瞬間的体動によって誘発される変位は、このような固有のナビゲータ信号から導出することもできる。
【0015】
本発明の意図におけるk空間プロファイルは、k空間内の所与の(ラジアル又はスパイラル)軌道に沿って収集されたMR信号である。k空間プロファイルは、2次元又は3次元で収集することもできる。
【0016】
本発明の体動依存型ラジアル又はスパイラルk空間サンプリング手法は、スタックオブスターズ収集ストラテジ又はスタックオブスパイラルズ収集ストラテジと有利に組み合わせることができる。ラジアル又はスパイラルk空間プロファイルは、k空間プロファイルがその中で回転される平面に垂直なスライス方向に沿って隣接位置に配置された多数の平行スライスから収集される。
【0017】
本発明の意図では、既知のPROPELLERイメージング技術で収集されたk空間プロファイルも、ラジアルk空間プロファイルと見なされる。PROPELLER概念では、MR信号は、k空間においてN個のストリップで収集される。各ストリップは、デカルトベースのk空間サンプリング方式におけるL個の最低周波数位相エンコードラインに対応するL個の平行k空間プロファイルで構成される。k空間ブレードとも呼ばれる各ストリップは、k空間において、例えば180°/Nの回転角度、即ち、黄金角だけ回転させられて、したがって、MR信号の合計セットはk空間において円形に広がる。したがって、本発明の意図では、ラジアルk空間プロファイルは、同様にk空間ブレードでもある。
【0018】
或いは、球体(「クッシュボール(Koosh Ball)」)に等方的に分布するラジアルk空間プロファイルが収集されてもよい。
【0019】
本発明の意図におけるスパイラルk空間プロファイルもまた、いわゆる葉序のスパイラルk空間軌道を包含する。
【0020】
同様に、本発明の意図における角度座標は、(2次元又はスタックオブスターズ若しくはスタックオブスパイラルズの場合は)回転角又は(「クッシュボール」式収集の場合は)ポーラー回転角及びアジマス回転角のセットとして定義することができる。
【0021】
本発明によれば、既知のPAWS技術と同様に、検出された瞬間的体動によって誘発された変位は、幾つかの体動状態のうちの1つに帰属する。本発明によって、体動状態に応じてk空間収集を制御することにより、各体動状態に帰属するラジカル又はスパイラルk空間プロファイルの分布が向上される。このために、収集されるそれぞれのk空間プロファイルの角度座標は、各体動状態について個々のインクリメントによって決定される。換言すれば、各体動状態について、既に収集されたk空間プロファイルの角度座標のブックキーピングが行われ、次のk空間プロファイルの決定は、検出された体動に基づいて行われる。これにより、各体動状態でのk空間プロファイルの(完全な)分布が向上され、最終的に再構成されるMR画像の品質が向上される。更に、各体動状態について、k空間の異なる初期角度座標が使用されることで、k空間がより効率的にサンプリングされる。本発明のサンプリング手法は、例えば時間的に不規則である又は大きい変位が伴う極端な体動状態によりうまく対処することができることが見出された。
【0022】
1つの可能な実施形態では、k空間プロファイルの角度座標が黄金角方式に従ってインクリメントされて、均一なk空間カバレッジが得られる。各体動状態について、異なる初期角度座標を使用することができる。この手法は、例えば異なる呼吸状態間の相関を利用する複数体動状態再構成に有利である。これは、異なる初期回転角によって、異なる体動状態に帰属するk空間プロファイル間で角度位置が確実に繰り返されないからである。
【0023】
本発明の1つの可能な実施形態では、体動状態の少なくとも1つについて収集されたk空間プロファイルの合計が、k空間における十分に密にサンプリングされた円形(又は球形)領域に広がるまで上記ステップa~dが繰り返され、そこからMR画像が再構成される。
【0024】
提案される適応型k空間サンプリング方式を使用して、例えば個々の体動状態における黄金角サンプリングパターンが得られる。MR画像再構成は、最大数のk空間プロファイルが取得された体動状態のみに帰属するMR信号データに対して行われても、又は、各体動状態のMR信号データに対して個別に行われてもよい。後者の場合、プロファイル数が減少するにつれて、アーチファクト(ストリーキング)レベルが増加した画像が生成される。前述したように、本発明の方法を行って、異なる体動状態からのk空間プロファイルを組み合わせる際に準均一なk空間カバレッジを確実とすることができるので、この影響を軽減するためには、2つ以上の体動状態のk空間プロファイルを画像再構成において組み合わせることができる。
【0025】
1つの可能な実施形態では、異なる体動状態間の相関を利用する正則化項を同時に使用して、すべての体動状態のk空間データから、単一のMR画像を再構成することができる。
【0026】
別の可能な実施形態によれば、少なくとも2つの体動状態のそれぞれについて個々のMR画像が再構成され、個々のMR画像は、適切な(弾性)レジストレーションアルゴリズムを使用して最終的なMR画像に組み合わされて、体動状態間の体動によって誘発された変動が補正される。この実施形態では、個々の単一の体動状態のMR画像は、画像領域において高画質のアーチファクトフリーの単一の臨床MR画像に融合される。
【0027】
本発明の方法は、従来のビューシェアリング、キーホール又はk-tサンプリング技術と簡単に組み合わせることができる。k空間プロファイルは、ハーフスキャンといった加速技術又は(非デカルト)SENSEといったパラレルイメージング技術を使用して収集されてMR画像に再構成することができる。
【0028】
特定の体動状態に帰属するMR信号データは、本発明の方法において、少なくともk空間の周辺において、アンダーサンプリングされてよい。したがって、圧縮センシング(CS)をMR画像の再構成に有利に使用することができる。CS理論は、信号データを大幅に削減できる大きな可能性があることが知られている。CS理論では、変換領域でスパース表現を持つ信号データセットは、適切な正則化アルゴリズムを適用することにより、アンダーサンプリングされた測定値から復元することができる。CSは、信号サンプリング及び再構成の数学的枠組みとして、k空間サンプリング密度がナイキスト基準をはるかに下回る場合でも、信号データセットを正確に又は少なくとも高画質で再構成することができる条件を規定し、また、そのような再構成のための方法も提供する(M. Lustig他による「CoMpressed sensing MRI」、IEEE signal processing Magazine、2008年、第25巻、第2号、72~82ページを参照)。
【0029】
これまでに説明した本発明の方法は、検査ボリューム内で均一な静磁場を発生させる少なくとも1つの主磁石コイルと、検査ボリューム内で異なる空間方向に切り替え傾斜磁場を発生させる幾つかの傾斜磁場コイルと、検査ボリューム内でRFパルスを生成するか及び/又は検査ボリューム内に置かれた物体からMR信号を受信する少なくとも1つのRFコイルと、RFパルス及び切り替え傾斜磁場の時間的連続を制御する制御ユニットと、受信したMR信号からMR画像を再構成する再構成ユニットとを含むMRデバイスによって行うことができる。本発明の方法は、例えばMRデバイスの再構成ユニット及び/又は制御ユニットの対応するプログラミングによって実施することができる。
【0030】
本発明の方法は、現在臨床使用されているほとんどのMRデバイスにおいて有利に行うことができる。このためには、本発明の上記方法ステップを行うようにMRデバイスを制御するコンピュータプログラムを利用するだけでよい。コンピュータプログラムは、MRデバイスの制御ユニットにインストールするためにダウンロードされるように、データ媒体上に存在しても、データネットワーク内に存在してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
同封の図面は、本発明の好適な実施形態を開示する。ただし、図面は、本発明の限定の定義としてではなく、例示のみを目的としてデザインされていることを理解されたい。
【0032】
図1図1は、本発明の方法を実行するMRデバイスを示す。
図2図2は、本発明に従って採用されるPAWSゲート方式を説明する図を示す。
図3図3は、本発明の体動依存型ラジアルk空間収集ストラテジの第1の実施形態を示す。
図4図4は、本発明の体動依存型ラジアルk空間収集ストラテジの第2の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1を参照すると、MRデバイス1が示されている。デバイスは、実質的に均一で時間的に一定の主磁場が、検査ボリュームを通るZ軸に沿って生成されるように超電導又は抵抗主磁石コイル2を含む。
【0034】
磁気共鳴発生及び操作システムが、一連のRFパルス及び切り替え傾斜磁場を印加して、核磁気スピンを反転又は励起させ、磁気共鳴を誘導し、磁気共鳴をリフォーカスさせ、磁気共鳴を操作し、磁気共鳴を空間的及び他の方法でエンコードし、スピンを飽和させる等して、MRイメージングを行う。
【0035】
より具体的には、傾斜磁場パルス増幅器3が、検査ボリュームのX軸、Y軸及びZ軸に沿った全身傾斜磁場コイル4、5及び6のうちの選択された傾斜磁場コイルに電流パルスを印加する。デジタルRF周波数送信器7が、送受信スイッチ8を介して、RFパルス又はパルスパケットを全身ボリュームRFコイル9に送信して、RFパルスを検査ボリューム内に送り込む。典型的なMRイメージングシーケンスは、短い持続時間のRFパルスセグメントのパケットから構成され、これらは、任意の印加された傾斜磁場と共に、核磁気共鳴の選択された操作を達成する。RFパルスを使用して、共鳴を飽和させ、共鳴を励起させ、磁化を反転させ、共鳴をリフォーカスさせ又は共鳴を操作して、検査ボリューム内に配置される身体10の一部を選択する。MR信号は全身ボリュームRFコイル9によっても捕捉される。
【0036】
身体10の限定領域のMR画像を生成するために、局所アレイRFコイル11、12、13のセットが、イメージング用に選択される領域に隣接して置かれる。アレイコイル11、12、13を使用して、身体コイルRF送信によって誘導されるMR信号を受信することができる。
【0037】
結果として得られるMR信号は、全身ボリュームRFコイル9及び/又はアレイRFコイル11、12、13によって捕捉され、好適には前置増幅器(図示せず)を含む受信器14によって復調される。受信器14は、送受信スイッチ8を介して、RFコイル9、11、12及び13に接続される。
【0038】
ホストコンピュータ15が、傾斜磁場パルス増幅器3及び送信器7を制御して、エコープラナーイメージング(EPI)、エコーボリュームイメージング、グラジエント及びスピンエコーイメージング、高速スピンエコー(TSE)イメージング等といった複数のMRイメージングシーケンスのいずれか1つを生成する。受信器14は、選択されたシーケンスについて、各RF励起パルスに続いて、単一又は複数のMRデータラインを高速連続で受信する。データ収集システム16が、受信信号のアナログ-デジタル変換を行い、各MRデータラインを、更なる処理に適したデジタル形式に変換する。最新のMRデバイスでは、データ収集システム16は、生画像データの収集に特化した単独のコンピュータである。
【0039】
最終的に、デジタル生画像データは、再構成プロセッサ17によって画像表現に再構成される。再構成プロセッサ17は、フーリエ変換又は他の適当な再構成アルゴリズムを適用する。MR画像は、患者の平面スライス、平行平面スライスのアレイ、3次元ボリューム等を表す。その後、MR画像は画像メモリに保存される。画像メモリは、画像表現のスライス、投影又は他の部分を、例えば結果として得られたMR画像の人間が読み取り可能な表示を提供するビデオモニタ18を介する視覚化に適した形式に変換するためにアクセスされる。
【0040】
図1を引き続き参照し、また、図2から図4を更に参照して、本発明のイメージング手法の実施形態について説明する。
【0041】
図2は、本発明に従って採用される既知のPAWSゲート方式を示す。図1に示すMRイメージング装置1を用いて呼吸ナビゲータ信号が検出される。ナビゲータ信号から、身体10の瞬間的体動によって誘発された変位Δが導出される。図示する実施形態では、変位Δは、患者の横隔膜の位置を反映し、したがって、時間の関数として呼吸運動を示す。検出された変位Δは、4つの体動状態M1~M4のうちの1つに帰属する。体動状態M1~M4のそれぞれは、変位Δの複数の連続範囲のうちの1つの範囲に対応する。
【0042】
図3は、本発明に従って適用されるラジアルk空間収集を示す。各ラジアルk空間プロファイルを収集する前に、検出された瞬間的変位Δに帰属する体動状態M1~M4に依存して、それぞれのk空間プロファイルの回転角が決定される。このために、回転角は、体動状態について個別にインクリメントされる。1つの可能な実施形態では、回転角は、その後に検出される体動状態M1~M4のそれぞれについてMNψだけインクリメントされ、ここで、M(図示する実施形態ではM=1、…、4)は、対応する体動状態のインデックスであり、Nは、1つの体動状態につき収集されるk空間プロファイルの最大数であり、ψは、黄金角である。この方式は、各体動状態において均一なk空間サンプリングパターンを提供する。k空間サンプリングパターンは、体動状態毎に異なる。これは、異なる呼吸相間の相関関係を利用する複数呼吸フレーム再構成に有利である。これは、異なる体動状態M1~M4間で確実に回転角の繰り返しがないようにされるからである。図3に示す例では、最大数Nのk空間プロファイルは、第1の体動状態M1についてしか収集されない。より高い体動状態は、不完全にしかサンプリングされない。MR画像は、体動状態M1に帰属するk空間プロファイルからしか再構成されない。MR画像はまた、k空間データの組み合わせM1+M2、M1+M2+M3、又は、M1+M2+M3+M4から再構成されてもよい。図3から分かるように、本発明の適応サンプリング方式により、これらの組み合わせのそれぞれは、準均一k空間カバレッジをもたらす。
【0043】
図4に示す実施形態では、図3の例と同じラジアル黄金角k空間サンプリングが適用される。しかし、図4では、k空間プロファイルは、5つの異なる体動状態M1~M5に帰属する。更に、体動状態M1~M5のそれぞれについて、最大数Nのk空間プロファイルが収集される。図4はまた、各体動状態について同数のk空間プロファイルを含み、冗長的にサンプリングされる回転角を含まない、すべての体動状態M1~M5について組み合わされたk空間データを示す。この組み合わされたデータは、高品質の臨床MR画像の再構成に使用される。図3の例のように、異なる体動状態間の相関関係を使用する制約付き再構成が使用される。説明した手法は、収集したすべてのデータを利用して100%の走査効率がもたらされる。
図1
図2
図3
図4