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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】カバー形材を備えた引出し側壁
(51)【国際特許分類】
   A47B 88/95 20170101AFI20220419BHJP
   A47B 88/925 20170101ALI20220419BHJP
【FI】
A47B88/95
A47B88/925
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020534397
(86)(22)【出願日】2018-12-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 AT2018060296
(87)【国際公開番号】W WO2019119000
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-07-15
(31)【優先権主張番号】A51065/2017
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルーム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Julius Blum GmbH
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1, 6973 Hoechst, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マークス イアガング
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター シュヴァーツマン
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06412893(US,B1)
【文献】特表2014-500074(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102058255(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第03167760(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/00-88/994
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引出し側壁(1)であって、カバー形材(2)と、当該引出し側壁(1)に前板(4)を解離可能に固定するための固定装置(3)とを備えており、前記固定装置(3)は少なくとも大部分が、前記カバー形材(2)の内部に配置されている、引出し側壁(1)において、
前記カバー形材(2)は、内壁(5)を有しており、当該引出し側壁(1)は、前記カバー形材(2)および前記固定装置(3)とは別個の多機能構成部材(6)を有しており、前記多機能構成部材(6)は、少なくとも部分的に、前記カバー形材(2)の前記内壁(5)と前記固定装置(3)との間に配置されており、前記固定装置(3)は、それ自体閉鎖された機能ユニットを形成しており、これによって前記前板(4)に取り付けるべき家具用金具(11)が、前記多機能構成部材(6)とは無関係に前記固定装置(3)を用いて解離可能に固定可能であり、かつさらに以下の構成グループ、すなわち、
前記多機能構成部材(6)は、当該引出し側壁(1)の長手延在方向(7)に対して横方向に互いに間隔をおいて配置された少なくとも2つの支持構造体(8,9)を有していて、該支持構造体(8,9)に前記カバー形材(2)が支持されているという構成、
前記多機能構成部材(6)は、前記固定装置(3)内への、前記前板(4)に取り付けるべき前記家具用金具(11)の挿入を容易にするための、固定すべき前記前板(4)の方向に向いている接合装置(10)を有しているという構成、
前記カバー形材(2)は、カバー部材(13)によって覆うことができる開口(12)を有していて、前記多機能構成部材(6)は、前記カバー部材(13)が前記開口(12)を覆っている場合に該カバー部材(13)を支持可能な支持構造体(14)を含んでいるという構成、
前記固定装置(3)は、当該引出し側壁(1)に対する前記前板(4)の位置を調節するための少なくとも1つの調節装置(15,16)、および/または前記固定装置(3)に前記前板(4)をロックしかつ/または前記固定装置(3)から前記前板(4)を解離するための装置(17)を有しており、前記多機能構成部材(6)は、前記少なくとも1つの調節装置(15,16)、もしくは前記前板(4)のロックおよび/または解離のための前記装置(17)の使用者による操作を容易にするための、線(18)から成る操作指示を含んでいるという構成、
前記固定装置(3)は、当該引出し側壁(1)に対して相対的に可動の少なくとも1つの部材(19)を有していて、前記多機能構成部材(6)は、前記可動の部材(19)の当該引出し側壁(1)に対する相対的な移動時に、前記可動の部材(19)を少なくとも部分的に覆うためのカバー(20)を含んでいるという構成、および
前記カバー形材(2)は、載着要素(22)を取り付けるための少なくとも1つの接続箇所(21)を有しており、前記接続箇所(21)は、前記カバー形材(2)における開口(23)を含んでいて、かつ前記多機能構成部材(6)は、第1の位置において前記開口(23)を閉鎖しかつ第2の位置において前記開口(23)を開放する、可動に支持されたカバー部材(24)を含んでいるという構成
から選択された少なくとも2つの構成を備えている
ことを特徴とする、引出し側壁(1)。
【請求項2】
少なくとも、前記カバー形材(2)は、カバー部材(13)によって覆うことができる開口(12)を有していて、前記多機能構成部材(6)は、前記カバー部材(13)が前記開口(12)を覆っている場合に該カバー部材(13)を支持可能な支持構造体(14)を含んでいるという構成を備えており、かつ少なくとも、前記カバー形材(2)は、載着要素(22)を取り付けるための少なくとも1つの接続箇所(21)を有しており、前記接続箇所(21)は、前記カバー形材(2)における開口(23)を含んでいて、かつ前記多機能構成部材(6)は、第1の位置において前記開口(23)を閉鎖しかつ第2の位置において前記開口(23)を開放する、可動に支持されたカバー部材(24)を含んでいるという構成を備えている、
請求項1記載の引出し側壁(1)。
【請求項3】
少なくとも、前記多機能構成部材(6)は、当該引出し側壁(1)の長手延在方向(7)に対して横方向に互いに間隔をおいて配置された少なくとも2つの支持構造体(8,9)を有していて、該支持構造体(8,9)に前記カバー形材(2)が支持されているという構成を備えており、かつ1つのばね要素(25)が設けられていて、該ばね要素(25)に前記両支持構造体(8,9)のうちの一方の支持構造体が配置されていて、前記ばね要素(25)は、前記一方の支持構造体(9)に、前記カバー形材(2)の内壁(27)へ向けて力を加える、
請求項2記載の引出し側壁(1)。
【請求項4】
少なくとも、前記多機能構成部材(6)は、前記固定装置(3)内への、前記前板(4)に取り付けるべき前記家具用金具(11)の挿入を容易にするための、固定すべき前記前板(4)の方向に向いている接合装置(10)を有しているという構成を備えており、かつ前記接合装置(10)は、当該引出し側壁(1)の長手延在方向(7)に対して斜めに配置されている少なくとも1つの逸らせ輪郭部(28)を含んでいる、
請求項1から3までのいずれか1項記載の引出し側壁(1)。
【請求項5】
少なくとも、前記カバー形材(2)は、カバー部材(13)によって覆うことができる開口(12)を有していて、前記多機能構成部材(6)は、前記カバー部材(13)が前記開口(12)を覆っている場合に該カバー部材(13)を支持可能な支持構造体(14)を含んでいるという構成を備えており、かつ前記多機能構成部材(6)は、少なくとも1つのばね要素(29)を有していて、該ばね要素(29)を介して前記多機能構成部材(6)は、当該引出し側壁(1)の位置固定の部分(30)に支持されていて、かつ前記ばね要素(29)は、前記カバー形材(2)の前記開口(12)の方向へ力を加えることができる、
請求項1から4までのいずれか1項記載の引出し側壁(1)。
【請求項6】
少なくとも、前記固定装置(3)は、当該引出し側壁(1)に対する前記前板(4)の位置を調節するための少なくとも1つの調節装置(15,16)、および/または前記固定装置(3)に前記前板(4)をロックしかつ/または前記固定装置(3)から前記前板(4)を解離するための装置(17)を有しており、前記多機能構成部材(6)は、前記少なくとも1つの調節装置(15,16)、もしくは前記前板(4)のロックおよび/または解離のための前記装置(17)の使用者による操作を容易にするための、線(18)から成る操作指示を含んでいるという構成を備えており、かつ前記線(18)は、前記多機能構成部材(6)にエンボス加工されているか、または彫り込まれている、
請求項1から5までのいずれか1項記載の引出し側壁(1)。
【請求項7】
少なくとも、前記固定装置(3)は、当該引出し側壁(1)に対して相対的に可動の少なくとも1つの部材(19)を有していて、前記多機能構成部材(6)は、当該引出し側壁(1)に対する前記可動の部材(19)の相対的な移動時に、前記可動の部材(19)を少なくとも部分的に覆うためのカバー(20)を含んでいるという構成を備えており、かつ前記カバー(20)は、前記可動の部材(19)を操作するための、10mmの最大幅(32)を備えた少なくとも1つの操作開口(31)を有している、
請求項1から6までのいずれか1項記載の引出し側壁(1)。
【請求項8】
前記カバー(20)は、8mmの最大幅(32)を備えた前記操作開口(31)を有している、
請求項7記載の引出し側壁(1)。
【請求項9】
少なくとも、前記カバー形材(2)は、載着要素(22)を取り付けるための少なくとも1つの接続箇所(21)を有しており、前記接続箇所(21)は、前記カバー形材(2)における開口(23)を含んでいて、前記多機能構成部材(6)は、第1の位置において前記開口(23)を閉鎖しかつ第2の位置において前記開口(23)を開放する、可動に支持されたカバー部材(24)を含んでいるという構成を備えており、かつばね要素(33)が設けられていて、該ばね要素(33)によって、前記カバー部材(24)に対して、前記第1の位置の方向におけるばね要素(33)の作用方向に予荷重が加えられている、
請求項1からまでのいずれか1項記載の引出し側壁(1)。
【請求項10】
前記多機能構成部材(6)は、前記固定装置(3)を少なくとも部分的に取り囲んでいる、
請求項1からまでのいずれか1項記載の引出し側壁(1)。
【請求項11】
前記多機能構成部材(6)は、前記固定装置(3)に結合されている、
請求項1から10までのいずれか1項記載の引出し側壁(1)。
【請求項12】
前記多機能構成部材(6)は、少なくとも1つのスナップ結合部および/または係止結合部(34)を介して、前記固定装置(3)に結合されている、
請求項11記載の引出し側壁(1)。
【請求項13】
当該引出し側壁(1)は、支持形材(35)を有していて、該支持形材(35)に、前記カバー形材(2)、前記固定装置(3)、および/または前記多機能構成部材(6)が配置されている、
請求項1から12までのいずれか1項記載の引出し側壁(1)。
【請求項14】
前記多機能構成部材(6)は、主としてプラスチックから成っている、
請求項1から13までのいずれか1項記載の引出し側壁(1)。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の少なくとも1つの引出し側壁(1)を備えた引出し。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引出し側壁であって、カバー形材と、引出し側壁に前板を解離可能に固定するための固定装置とを備えており、このとき固定装置は少なくとも大部分が、カバー形材の内部に配置されている、引出し側壁に関する。さらに本発明は、少なくとも1つのこのような引出し側壁を備えた引出しに関する。
【0002】
カバー形材と一体に組み込まれた固定装置とを備えた引出し側壁は、従来技術に基づいて既に公知である。このような引出し側壁には、複数の欠点がある。
【0003】
通常、固定装置は、カバー形材の内壁から間隔をおいて配置されている。これによってカバー形材は、少なくとも前側領域において固定装置に対して遊びを有している。これによって引出し側壁が不安定になる。
【0004】
さらに固定装置内に、前板に取り付けるべき家具用金具を挿入することは、使用者にとって困難であるように構成されている。それというのは、家具用金具は、固定装置の確定された箇所において導入されねばならないからであり、そしてこの動作は、まさに前板が重い場合には、2回または3回の試行において初めて成功する。
【0005】
さらに固定装置は、通常、使用者が操作すべき複数の操作ねじまたはこれに類したものを含んでおり、これらの操作ねじまたはこれに類したものは、外部から接近可能でなくてはならない。これによって多くの場合、美しくない外観が生じることになる。さらに使用者には、使用者がどのように操作ねじを操作する必要があるのかについて、しばしば明らかでない。しかも最後に、固定装置は、通常、可動の部材を含んでおり、これらの可動の部材においては、使用者が指を怪我するおそれがある。
【0006】
さらにまた別の欠点は、引出し側壁が多くの場合、載着要素によって上方に向かって拡大されてしまう点にもある。例えばガラス壁または金属壁の形態の、このような載着要素は、何らかの形式において、引出し側壁に結合されねばならない。このことによっても同様に、美しくない外観が生じることになる。
【0007】
本発明の課題は、従来技術におけるこれらの欠点のうちの少なくとも幾つかの欠点を回避すること、および従来技術に対して改善された引出し側壁、もしくはこのように改善された少なくとも1つの引出し側壁を含む引出しであって、特に、高められた安定性、使用者のための高められた操作快適性、および/または比較的魅力的な外観によって傑出している、引出し側壁もしくは引出しを提供することである。
【0008】
この課題は、独立請求項である請求項1および請求項13記載の特徴によって解決される。
【0009】
したがって本発明に係る引出し側壁では、カバー形材は、内壁を有していて、かつ引出し側壁は、カバー形材および固定装置とは別個の多機能構成部材を有しており、多機能構成部材は、少なくとも部分的に、カバー形材の内壁と固定装置との間に配置されており、このとき固定装置は、それ自体閉鎖された機能ユニットを形成しており、これによって前板に取り付けるべき家具用金具が、多機能構成部材とは無関係に固定装置を用いて解離可能に固定可能であり、かつこのときさらに以下の構成グループ、すなわち、
多機能構成部材は、引出し側壁の長手延在方向に対して横方向に互いに間隔をおいて配置された少なくとも2つの支持構造体を有していて、該支持構造体にカバー形材が支持されているという構成、
多機能構成部材は、固定装置内への、前板に取り付けるべき家具用金具の挿入を容易にするための、固定すべき前板の方向に向いている接合装置を有しているという構成、
カバー形材は、カバー部材によって覆うことができる開口を有していて、このとき多機能構成部材は、カバー部材が開口を覆っている場合にカバー部材を支持可能な支持構造体を含んでいるという構成、
固定装置は、引出し側壁に対する前板の位置を調節するための少なくとも1つの調節装置、および/または固定装置に前板をロックしかつ/または固定装置から前板を解離するための装置を有しており、このとき多機能構成部材は、少なくとも1つの調節装置、もしくは前板のロックおよび/または解離のための装置の使用者による操作を容易にするための、線から成る操作指示を含んでいるという構成、
固定装置は、引出し側壁に対して相対的に可動の少なくとも1つの部材を有していて、このとき多機能構成部材は、可動の部材の引出し側壁に対する相対的な移動時に、可動の部材を少なくとも部分的に覆うためのカバーを含んでいるという構成、および
カバー形材は、載着要素を取り付けるための少なくとも1つの接続箇所(Schnittstelle)を有しており、このとき接続箇所は、カバー形材における開口を含んでいて、かつ多機能構成部材は、第1の位置において開口を閉鎖しかつ第2の位置において開口を開放する、可動に支持されたカバー部材を含んでいるという構成
から選択された少なくとも2つの構成を備えることが提案されている。
【0010】
つまり本発明の重要な特徴は、カバー形材および固定装置とは別個の多機能構成部材が設けられており、この多機能構成部材は、少なくとも部分的に、カバー形材の内壁と固定装置との間に配置されており、好ましくはこのとき多機能構成部材は、固定装置を少なくとも部分的に取り囲んでいることにある。この多機能構成部材を用いて、安定性、操作快適性および/または引出し側壁の外観を改善する、少なくとも2つの機能を実現することができる。本発明によれば、全部で6つのこのような機能から成る構成グループが記載され、このときこれらの機能もしくは構成のうちの少なくとも2つの機能もしくは構成が満たされていなくてはならない。好ましくは、すべての機能もしくは構成が備えられている。
【0011】
本発明の好適な実施形態によれば、少なくとも、カバー形材は、カバー部材によって覆うことができる開口を有していて、このとき多機能構成部材は、カバー部材が開口を覆っている場合にカバー部材を支持可能な支持構造体を含んでいるという構成が備えられており、かつ少なくとも、カバー形材は、載着要素を取り付けるための少なくとも1つの接続箇所を有しており、このとき接続箇所は、カバー形材における開口を含んでいて、かつ多機能構成部材は、第1の位置において開口を閉鎖しかつ第2の位置において開口を開放する、可動に支持されたカバー部材を含んでいるという構成を備えていることが提案されている。
【0012】
多機能構成部材が、引出し側壁の長手延在方向に対して横方向に互いに間隔をおいて配置された少なくとも2つの支持構造体を有していて、該支持構造体にカバー形材が支持されているという構成によって、カバー形材の安定化を、特に引出し側壁の、前板に向けられた前側領域において達成することが可能である。
【0013】
このことに関連して述べると、好適な発展形態では、両支持構造体のうちの一方の支持構造体が配置されているばね要素が設けられていて、かつ該ばね要素は、一方の支持構造体に、カバー形材の内壁の方向へ向けて力を加えるようになっている。このばね要素によって、一方では、カバー形材が多機能構成部材の損傷なしに取付け可能であるということが保証され、かつ他方では、ばね要素に配置されている支持構造体が、取り付けられた状態においてカバー形材の内壁に常に接触しているということが保証される。
【0014】
多機能構成部材が、固定装置内への、前板に取り付けるべき家具用金具の挿入を容易にするための、固定すべき前板の方向に向いている接合装置を有しているという構成によって、使用者を家具用金具の挿入時に、家具用金具が固定装置内に挿入されねばならない正しい位置に導くことが可能であり、このとき固定装置またはカバー形材における家具用金具の引っ掛かりまたは傾倒が発生することはない。
【0015】
挿入はさらに、接合装置が、引出し側壁の長手延在方向に対して斜めに配置されている少なくとも1つの逸らせ輪郭部を含んでいることによって、容易にすることができる。
【0016】
カバー形材が、カバー部材によって覆うことができる開口を有していて、このとき多機能構成部材が、カバー部材が開口を覆っている場合にカバー部材を支持可能な支持構造体を含んでいるという構成によって、極めて薄い、ひいては視覚的に魅力的なカバー部材を実現することが可能である。それというのは、カバー部材は、多機能構成部材の支持構造体に直接支持されることができ、かつカバー部材のための別体の固定装置が必要ないからである。
【0017】
このことに関連して、好適であることが判明している実施形態では、多機能構成部材は、少なくとも1つのばね要素を有していて、該ばね要素を介して多機能構成部材は、引出し側壁の位置固定の部分に支持されていて、かつばね要素は、カバー形材の開口の方向へ力を加えることができる。これによって、多機能構成部材は、カバー形材の開口の方向において押圧され、多機能構成部材の支持構造体とカバー形材の、開口が配置されている壁部分との間における遊びを最小にするという目標設定が達成され、これによって、カバー部材がカバー形材に対して滑ることなしに、カバー部材は確実に支持される。
【0018】
固定装置が、引出し側壁に対する前板の位置を調節するための少なくとも1つの調節装置、および/または固定装置に前板をロックしかつ/または固定装置から前板を解離するための装置を有しており、かつ多機能構成部材が、少なくとも1つの調節装置、もしくは前板のロックおよび/または解離のための装置の使用者による操作を容易にするための、線から成る操作指示を含んでいるという構成によって、使用者には、調節装置、もしくは固定装置に前板をロックしかつ/または固定装置から前板を解離するための装置の操作時における助けを与えることが可能である。これによって、使用者のための操作快適性が高められる。
【0019】
このことに関連して、好適であることが判明している実施形態では、線は、周囲の材料に対する凹部または隆起部の形態で形成されていて、かつ/または多機能構成部材にエンボス加工されているか、または彫り込まれている。
【0020】
固定装置が、引出し側壁に対して相対的に可動の少なくとも1つの部材を有していて、かつ多機能構成部材が、引出し側壁に対する可動の部材の相対的な移動時に、可動の部材を少なくとも部分的に覆うためのカバーを含んでいるという構成によって、使用者に対する、例えば指における怪我のおそれを減じることが可能である。このことは、高められた操作快適性に伴って得られる。
【0021】
このとき、カバーは、可動の部材を操作するための、10mm、好ましくは8mmの最大幅を備えた少なくとも1つの操作開口を有していることが提案される。これによって、小さな直径を有する指、例えば子供の指でさえも、引出し側壁に対して相対的な可動の部材の相対移動によって損傷されないことが保証される。
【0022】
カバー形材が、載着要素を取り付けるための少なくとも1つの接続箇所を有しており、接続箇所は、カバー形材における開口を含んでいて、かつ多機能構成部材は、第1の位置において開口を閉鎖しかつ第2の位置において開口を開放する、可動に支持されたカバー部材を含んでいるという構成によって、引出し側壁に載着要素が載着されているか否かとは無関係に、常に、引出し側壁の魅力的な外観を得ることが可能である。
【0023】
この効果は、ばね要素が設けられていて、該ばね要素によって、カバー部材に、第1の位置の方向におけるばね要素の作用方向に予荷重が加えられていることによって、促進することができる。これによって、載着要素が存在しない場合には、開口は自動的に覆われる。
【0024】
多機能構成部材を固定するために、好適な実施形態によれば、多機能構成部材は、好ましくは少なくとも1つのスナップ結合部および/または係止結合部を介して、固定装置に結合されていることが提案されていてよい。
【0025】
本発明のその他の好適な実施形態では、引出し側壁は、支持形材を有していて、該支持形材に、カバー形材、固定装置、および/または多機能構成部材が配置されており、かつ/または多機能構成部材は、主としてプラスチックから成っている。
【0026】
次に本発明のさらなる詳細および利点について、図面を参照しながら図面の記載を用いて詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】引出し側壁を示す斜視図である。
図2a】引出し側壁の前側部分と、該引出し側壁に対して間隔をおいて配置された家具用金具とを示す斜視図である。
図2b】引出し側壁の前側部分と、固定装置にロックされた家具用金具とを示す斜視図である。
図3a】引出し側壁を前板の方向から見た平面図であって、このとき固定装置の部分が省かれている平面図である。
図3b】多機能構成部材を示す斜視図である。
図3c図3bとは異なる方向から見て多機能構成部材を示す斜視図である。
図3d】多機能構成部材を上から見た平面図である。
図4a】引出し側壁の前側部分と概略的に示された家具用金具とを断面して示す斜視図であって、家具用金具がエラー位置にある場合を示す斜視図である。
図4b】引出し側壁の前側部分と概略的に示された家具用金具とを断面して示す斜視図であって、家具用金具が目標位置にある場合を示す斜視図である。
図5a】カバー部材を備えた引出し側壁の前側部分を、カバー形材と共に、断面して示す斜視図である。
図5b】カバー部材を備えた引出し側壁の前側部分を、カバー形材なしに、断面して示す斜視図である。
図5c図5aに破線で略示された横断平面に沿って断面して、図5aに示された引出し側壁を示す断面図である。
図6a】多機能構成部材を示す斜視図である。
図6b】多機能構成部材を側方から見た平面図である。
図7】引出し側壁の前側部分を、カバー部材なしに、側方から見た平面図である。
図8a】引出し側壁と載着要素とから成るアセンブリを示す斜視図である。
図8b図8aにおいて円でマーキングされた部分を拡大して示す図であって、載着要素と引出し側壁との相対的な1つの位置を示す図である。
図8c図8aにおいて円でマーキングされた部分を拡大して示す図であって、載着要素と引出し側壁との相対的な別の位置を示す図である。
図8d図8aにおいて円でマーキングされた部分を拡大して示す図であって、載着要素と引出し側壁との相対的なさらに別の位置を示す図である。
図9a】固定装置の取付けプレートと多機能構成部材とから成るアセンブリを、取付けプレートと多機能構成部材とが互いに間隔をおいた位置において、側方から見た平面図である。
図9b】固定装置の取付けプレートと多機能構成部材とから成るアセンブリを、取付けプレートと多機能構成部材とが固定された位置において、側方から見た平面図である。
【0028】
図1には、カバー形材2と、引出し側壁1に前板を解離可能に固定するための固定装置3とを含む引出し側壁1が示されており、このとき固定装置3は、カバー形材2の内部に配置されている。図示の実施例では、カバー形材2は横断面で見てほぼU字形に形成されている。
【0029】
固定装置3は、引出し側壁1の、前板に向けられた前側領域に配置されている。引出し側壁1は、その他に、背壁が固定可能である背壁ホルダ36を備えた後端部も含んでいる。
【0030】
引出し側壁1の長手延在方向には、符号7が付されている。
【0031】
引出し側壁1の前端部の拡大された部分から看取できるように、引出し側壁1はさらにまた多機能構成部材6を含んでおり、この多機能構成部材6は、カバー形材2および固定装置3とは別個に形成されている。多機能構成部材6は、一方では前板に向けられた端面から、かつ他方ではカバー形材2の側壁における開口12を通して認識可能である。多機能構成部材6の詳細については、後続の図面を用いて詳しく記載する。
【0032】
引出し側壁1はさらに、カバー形材2、固定装置3、および多機能構成部材6が配置されている支持形材35を含んでいる。
【0033】
図2aおよび図2bから看取できるように、固定装置3は、引出し側壁1に前板4(図2aにおいて破線で略示)を解離可能に固定するために働く。そのために家具用金具11が、例えばプラグ37を介して前板4に取り付けられる。家具用金具11は、内部にピン38が配置されているU字形材39を含んでいてよい。家具用金具11は、解離された位置(図2a参照)またはロックされた位置(図2b参照)に配置可能である。
【0034】
図3a~図3dは特に、多機能構成部材6が、引出し側壁1の長手延在方向7に対して横方向に互いに間隔をおいて配置された少なくとも2つの支持構造体によって形成される支持輪郭部8,9を有していて、これらの支持輪郭部8,9にカバー形材2が支持されているという構成を説明している。
【0035】
両支持輪郭部のうちの、符号8が付されている一方の支持輪郭部は、面状に形成されていて、かつカバー形材2の内壁5(例えば図2a参照)に接触している。他方の支持輪郭部9は、ばね要素25の自由端部に配置されていて、かつカバー形材2の、向かい合って位置している内壁27(例えば図4a参照)に支持されている。つまり多機能構成部材6に関してのカバー形材2の位置は、正確に確定されている。
【0036】
同時に多機能構成部材6は、一方では固定装置3の取付けプレート40に結合されており(図9aおよび図9bの記載参照)、このとき固定装置3自体は、支持形材35に不動に結合されている。他方において多機能構成部材6は、2つのばね要素29を介して、引出し側壁1の位置固定の部分30に、もしくは具体的に図示された実施例では支持形材35の位置固定の部分30に支持されている。これによって固定装置3もしくは支持形材35に対して相対的な多機能構成部材6の位置は決定されている。全体的に見ると、これによってしかしながらまた、支持形材35に対して相対的なカバー形材2の位置も決定されており、これによって引出し側壁全体を安定させることができる。
【0037】
ここで付言しておくと、支持輪郭部9が配置されているばね要素25は、支持輪郭部9にカバー形材2の内壁27の方向26において力を加える。
【0038】
図4aおよび図4bは特に、多機能構成部材6が有している、固定すべき前板4の方向に向いている接合装置10であって、前板4に取り付けるべき家具用金具11の固定装置3内への挿入を容易にするための接合装置10を説明している。
【0039】
固定装置3は、特に、可動の部材19を含んでおり、この可動の部材19は、ばね荷重が加えられていてかつ回転可能に支持されたキャッチレバーとして形成されていて、このキャッチレバーは、家具用金具11のピン38を掴み、かつ引出し側壁1の後端部の方向に引っ張る。次いでピン38、ひいては家具用金具11はロックされる。家具用金具11を再び固定装置3から解離したい場合には、そのためにキャッチレバー19を、ドライバまたはこれに類したものを用いてキャッチ回転方向とは逆向きに旋回させることが必要である。これによって全体的に、固定装置3は、固定装置3に前板4をロックしかつ固定装置3から前板4を解離するための装置17を含んでいる。
【0040】
前板4もしくは該前板4に取り付けられた家具用金具11をロックするためには、家具用金具11を、固定装置3に対して相対的な予め確定された位置にもたらすことが必要である。このことは、常に1回の試行において成功するわけではなく、すなわち家具用金具11は、固定装置3に対して相対的にエラー位置をとり、これによって従来技術では固定装置3における家具用金具11の、かつ/またはカバー形材2のクランプロックまたは引っ掛かりを生ぜしめることがある。このことを阻止するために、かつ家具用金具11もしくは前板4を、予め確定された位置の方向に移動させるために、多機能構成部材6は、逸らせ輪郭部28を備えた接合装置10を含んでおり、逸らせ輪郭部28は、引出し側壁1の長手延在方向7に対して斜めに配置されている。つまりこの接合装置10によって、使用者のための操作容易性が高められる。
【0041】
図5a~図5cは特に、カバー形材2が、カバー部材13によって覆うことができる開口12を有していて、このとき多機能構成部材6が、カバー部材13が開口12を覆っている場合にカバー部材13を支持可能な支持構造体14を有しているという構成を説明している。
【0042】
カバー部材13は、カバー形材2における開口12を覆うために働き、この開口12によって使用者には、固定装置3に前板4をロックしかつ固定装置3から前板4を解離するための装置17への接近、および引出し側壁1に対する前板4の位置を調節するための調節装置15,16(図7も参照)への接近が可能になる。通常、これらの装置15,16,17は、まれにしか必要とされない。いずれにせよ、出入り口は、美観的な理由から覆われることが望まれている。このときカバー要素13は、カバー形材2の、開口12が形成されている側面上に可能な限り僅かしか突出していないことが望まれており、これによって、引出しにおける対象物の配置を可能な限り僅かしか損なわないことが可能になる。
【0043】
これらの要求を満たすために、カバー部材13を極めて薄く形成すること、および以下のように引出し側壁1に解離可能に固定することが提案される。カバー部材13は、一方では取付け位置において下縁部に2つの当付け舌片41を有しており、両当付け舌片41は、一方ではカバー形材2の内壁5に、かつ他方では多機能構成部材6の支持構造体14に接触している(図5cの拡大された部分B参照)。他方においてカバー部材13は、取付け位置において上縁部に2つのスナッパ42を有しており、両スナッパ42は、開口12の縁部の後ろ側においてカバー形材2の内壁5にスナップ式に結合する(図5cの拡大された部分A参照)。
【0044】
既に図3a~図3dとの関係において述べたように、多機能構成部材6には、引出し側壁1の位置固定の部分30に接触している2つのばね要素29を介して、カバー形材2の開口12の方向に力が加えられる。
【0045】
工具または使用者の指の爪を導入することができるスリット43を介して、カバー部材13を再び開口12から取り外すことができる。
【0046】
図6aおよび図6bは特に、固定装置3が、引出し側壁1に対する前板4の位置を調節するための少なくとも1つの調節装置15,16、および/または固定装置3に前板4をロックしかつ/または固定装置3から前板4を解離するための装置17を有していて、このとき多機能構成部材6が、少なくとも1つの調節装置15,16、もしくは前板4をロックしかつ/または前板4を解離するための装置17の操作を示唆するための、線18から成る操作指示を有しているという構成を説明している。
【0047】
固定装置3は、既に述べた、固定装置3に前板4をロックしかつ固定装置3から前板4を解離するための装置17の他に、さらに、引出し側壁1に対する前板4の位置を調節するための2つの調節装置15,16をも含んでいる(図7も参照)。このとき調節装置15は、鉛直方向における引出し側壁1に対する前板4の相対的な位置を調節するために働き、調節装置16は、水平方向における引出し側壁1に対する前板4の相対位置を調節するために働く。使用者に装置15,16,17の操作を容易にするために、多機能構成部材6は線18から成る操作指示を含んでいる。これらの操作指示は、多機能構成部材6にエンボス加工されているか、または彫り込まれていてよい。
【0048】
図7は特に、固定装置3が、引出し側壁1に対して相対的に可動の少なくとも1つの部材19を有しており、このとき多機能構成部材6は、引出し側壁1に対する可動の部材19の相対的な移動時に、可動の部材19を少なくとも部分的に覆うためのカバー20を含んでいるという構成を説明している。
【0049】
既に図4aおよび図4bとの関係において述べたように、固定装置3は、ばね荷重を加えられたキャッチレバーの形態の可動の部材19を含んでいる。この部材19は、位置固定の引出し側壁1に対して相対的に移動するので、従来技術では、使用者が例えば指を怪我することがある。このことを回避するために、多機能構成部材6は、引出し側壁1に対する相対的な移動時に可動の部材19を覆うカバー20を有している。
【0050】
同時にしかしながらまた、可動の部材19を外側から操作する可能性が望まれていることもある。したがって多くの場合に操作開口31が必要になる。これらの要求からの妥協策として、カバー20は、可動の部材19を操作するための、10mm、好ましくは8mmの最大幅32を備えた少なくとも1つの操作開口31を有していることが提案されていてよい。
【0051】
図8a~図8dは特に、カバー形材2が、載着要素22を取り付けるための少なくとも1つの接続箇所21を有しており、このとき接続箇所21は、カバー形材2における開口23を含んでいて、かつ多機能構成部材6は、第1の位置において開口23を閉鎖しかつ第2の位置において開口23を開放する、可動に支持されたカバー部材24を含んでいるという構成を説明している。
【0052】
図8aには、載着要素22を備えた引出し側壁1が斜め前から見た斜視図で示されている。開口23は、図示の実施例では、引出し側壁1もしくはカバー形材2の前端部に配置されている。載着要素22は、開口23内に導入可能なピン44を含んでいる。カバー部材24は、開口23内へのピン44の導入によって、開口23を覆う閉鎖位置を起点として、ばね要素33のばね作用に抗して、開口23を開放する開放位置に可動である。載着要素22が中実の装飾プレート(例えばガラス製の)を有しているような場合には、ピン44は、装飾プレートに結合可能なアダプタ部材に配置されていてよい。
【0053】
図8bには、図8aの円で囲まれた領域が拡大されて示されており、このとき載着要素22の、開口23内に導入すべきピン44が見える。このときカバー部材24は、開口23を覆う閉鎖位置にある。図8cにおいてピン44は、カバー部材24に接触しており、下方に向かってのピン44の継続的な移動によって、ピン44はカバー部材24を、ばね要素33のばね作用に抗して、開口23を開放する開放位置に押圧する(図8dに示されているように)。つまり載着要素22のピン44は、取付け位置において開口23内に係合し、これによって引出し側壁1に対して相対的な載着要素22の横方向および/または鉛直方向の移動が、阻止されているかまたは制限されている。載着要素22は、ピン44のための固定装置(図示せず)を含んでいてもよく、この固定装置によってピン44は、引出し側壁1に対して相対的に形状結合式にまたは力結合式に固定可能である。ピン44が再び開口23から取り外される場合には、カバー部材24は、ばね要素33の作用によって自動的に、閉鎖位置にスナップ式に戻り、この閉鎖位置において開口23は、カバー部材24によって閉鎖されている。このようにして一方では、魅力的な外観が得られ、かつ他方では、引出し側壁1の内部への汚れの侵入を阻止することもできる。
【0054】
最後に図9aおよび図9bには、固定装置3の取付けプレート40と多機能構成部材6の結合が示されている。図示の実施例ではこの結合は、スナップ兼係止結合部34を介して行われ、このスナップ兼係止結合部34は、多機能構成部材6に形成された2つのフック45によって実現されていて、両フック45は、取付けプレート40の対応する開口46内にスナップ式に結合もしくは係止する。もちろんまた、フック45が取付けプレート40に、かつ対応する開口46が多機能構成部材6に配置されているような構成も、同様に良好に可能である。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図7
図8a
図8b
図8c
図8d
図9a
図9b