(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】改変されたAPRIL結合抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/24 20060101AFI20220419BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220419BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20220419BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220419BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220419BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220419BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
C07K16/24 ZNA
C12N15/13
C12P21/02 C
A61K39/395 D
A61P35/00
A61P29/00
A61P37/00
(21)【出願番号】P 2021002780
(22)【出願日】2021-01-12
(62)【分割の表示】P 2017554648の分割
【原出願日】2016-01-08
【審査請求日】2021-02-05
(32)【優先日】2015-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】517240252
【氏名又は名称】アデュロ バイオテック ホールディングス ヨーロッパ ベスローテン フエンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ファン エーネンナーム ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ファン エルサス アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】メデマ ヤン パウル
(72)【発明者】
【氏名】ルチェ フュルシク ダーフィット
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-519198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i
)SEQ ID NO:30
の配列を有する、免疫グロブリン軽鎖、ならびに
(ii
)SEQ ID NO:40
の配列を有する、免疫グロブリン重鎖
を含む、免疫グロブリン結合ドメインを含む、タンパク質であって、該免疫グロブリン結合ドメインを介してヒト「増殖誘導リガンド(a proliferation-inducing ligand)」(「APRIL」)タンパク質に結合する、前記タンパク質。
【請求項2】
免疫グロブリン軽鎖が、SEQ ID NO:50
の配列を有し、かつ免疫グロブリン重鎖が、SEQ ID NO:52
の配列を有する、請求項1記載のタンパク質。
【請求項3】
二重特異性抗体である、請求項
1または2のいずれか一項記載のタンパク質。
【請求項4】
抗体Fab断片である、請求項
1または2のいずれか一項記載のタンパク質。
【請求項5】
抗体Fc領域を含む、請求項
1または2のいずれか一項記載のタンパク質。
【請求項6】
IgG4である、請求項
5記載のタンパク質。
【請求項7】
IgG3である、請求項
5記載のタンパク質。
【請求項8】
IgG2である、請求項
5記載のタンパク質。
【請求項9】
IgG1である、請求項
5記載のタンパク質。
【請求項10】
請求項1に記載の免疫グロブリン結合ドメインを2つ含む、請求項
6~9のいずれか一項記載のタンパク質。
【請求項11】
一本鎖Fv抗体である、請求項
1または2のいずれか一項記載のタンパク質。
【請求項12】
担体または希釈剤と組み合わせて請求項1~
11のいずれか一項記載のタンパク質を含む、組成物。
【請求項13】
治療における使用のための、請求項1~
11のいずれか一項記載のタンパク質。
【請求項14】
前記治療が、
a)癌の処置;
b)自己免疫疾患の処置;
c)炎症性疾患の処置;または
d)IgA腎症、および他の形態の糸球体腎症、セリアック病、類天疱瘡、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、およびIg沈着に関連する他の自己免疫疾患の処置
から選択される1つまたは複数を目的とする、請求項
13記載のタンパク質。
【請求項15】
請求項1記載のタンパク質の発現をもたらすように構成された調節配列に機能的に連結された、請求項1記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項16】
a)請求項
15記載の発現ベクターを含む宿主細胞を、タンパク質が発現される条件下の培地中で培養し、それによって、請求項1記載のタンパク質を生成する工程;および
b)宿主細胞または培地からタンパク質を回収する工程
を含む、請求項1記載のタンパク質を生成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒトAPRILに結合する、抗体断片を含む単離された抗体、そのような抗体をコードするポリヌクレオチド、および前記抗体を産生する宿主細胞に関する。該抗体は、癌を処置するのに、免疫細胞増殖を阻害するのに、そして自己免疫疾患、炎症性疾患または免疫グロブリンの過剰産生に関連する疾患などの免疫細胞増殖のそのような阻害により利益を受け得る状態を阻害するのに用いることができる。加えて、該抗体は、免疫細胞増殖および/または生存の阻害のための診断ツールおよびインビトロ薬として用いることができる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
APRILは、II型膜貫通タンパク質として発現されるが、他のほとんどのTNFファミリーメンバーと異なり、それは主に分泌タンパク質として処理されてゴルジ体内で切断され、そこでフューリン転換酵素(furin convertase)によって切断されて、可溶性活性形態を放出する(Lopez-Fraga et al., 2001, EMBO Rep 2:945-51)。APRILは、タンパク質フォールドにおいて複数の他のTNFファミリーリガンドと類似の構造的相同性を有する非共有結合でつながったホモトリマーとして構成される(Wallweber et al., 2004, Mol Biol 343, 283-90)。APRILは、2つのTNF受容体:B細胞成熟抗原(BCMA)、ならびに、膜貫通型活性化因子およびカルシウム調節因子およびシクロフィリンリガンド相互作用因子(TACI)に結合する(Kimberley et al., 2009, J Cell Physiol. 218(1) :1-8において論評)。加えて、APRILは近年になり、ヘパリン硫酸プロテオグリカン(HSPG)に結合することが示された(Hendriks et al., 2005, Cell Death Differ 12, 637-48)。APRILは、B細胞シグナル伝達における役割を担い、インビトロでヒトおよびマウスB細胞の増殖および生存の両方を引き起こすことが示された(Kimberley et al., 2009, J Cell Physiol. 218(1) :1-8において論評)。
【0003】
APRILは主に、単球、マクロファージ、樹状細胞、好中球、B細胞およびT細胞などの免疫細胞サブセットによって発現され、それらの多くは、BAFFも発現する。加えて、APRILは、破骨細胞、上皮細胞および様々な腫瘍組織などの非免疫細胞によって発現され得る(Kimberley et al., 2009, J Cell Physiol. 218(1):1-8において論評)。事実、APRILは元々、癌細胞内での発現に基づいて同定された(Hahne et al., 1998, J Exp Med 188, 1185-90)。APRIL mRNAの高レベルの発現が、一連の腫瘍細胞株およびヒト原発腫瘍、例えば結腸およびリンパ球の癌腫において見出された。
【0004】
慢性リンパ球性白血病(CLL)患者95名での後向き研究で、血清中のAPRILレベル上昇が示され、それは疾患進行および全患者生存率に相関し、APRIL血清レベルの高い患者で予後不良であった(Planelles et al., 2007, Haematologica 92, 1284-5)。同様にAPRIL(のレベル上昇)が、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)および多発性骨髄腫(MM)において発現されることが示された(Kimberley et al., 2009, J Cell Physiol. 218(1):1-8において論評) 。DLBCL患者(NHL)における後向き研究から、癌病変における高発現のAPRILが、生存率低下に相関することが示された(Schwaller et al., 2007, Blood 109, 331-8)。近年になり、大腸癌に罹患した患者の血清中APRILレベルが、正の診断値を有することが示された(Ding et al., 2013, Clin. Biochemistry, http://dx.doi.org/10.1016/j .clinbiochem.2013.06.008)。
【0005】
B細胞の生物学における役割によって、APRILは、多くの自己免疫疾患における役割も担う。血清中高レベルのAPRILが、多くのSLE患者において報告された(Koyama et al., 2005, Ann Rheum Dis 64, 1065-7)。後向き分析から、血清中APRILレベルが抗dsDNA抗体力価と相関する傾向があることが明らかとなった。同じく炎症性関節炎患者の滑液において、骨関節炎などの非炎症性関節炎に罹患した患者の滑液に比較して有意なAPRILレベル上昇が検出された(Stohl et al., 2006, Endocr Metab Immune Disord Drug Targets 6, 351-8; Tan et al., 2003, Arthritis Rheum 48, 982-92)。
【0006】
複数の研究が、より広範囲の全身免疫性リウマチ疾患(現在は、シェーグレン症候群、ライター症候群、乾癬性関節炎、多発性筋炎、および強直性脊椎炎も含む)に罹患した患者の血清中APRILの存在に焦点をあてており、これらの患者において有意に上昇したAPRILレベルを見出しており、これらの疾患におけるAPRILの重要な役割も示唆される(Jonsson et al., 1986, Scand J Rheumatol Suppl 61, 166-9; Roschke et al., 2002, J Immunol 169, 4314-21)。加えて、血清中APRILレベルの上昇が、アトピー性皮膚炎に罹患した患者の血清中で検出された(Matsushita et al., 2007, Exp. Dermatology 17, 197-202)。同じく、血清中APRILレベルは、敗血症において上昇しており、重篤疾患患者の死亡率を予測させる(Roderburg et al., J. Critical Care, 2013, http: //dx.doi. org/10.1016/j . jcrc.2012.11.007)。さらに血清中APRILレベルは、IgA腎症に罹患した患者において上昇することが見出された(McCarthy et al., 2011, J. Clin. Invest. 121 (10): 3991-4002)。
【0007】
最後に、APRIL発現の増加は、多発性硬化症(MS)にも関連づけられている。APRIL発現は、正常対照に比較して、MS罹患者の星状細胞で増加することが見出された。これは、グリオブラストーマ中、およびグリオブラストーマ患者の血清中での記載されたAPRIL発現と一致する(Deshayes et al., 2004, Oncogene 23, 3005-12; Roth et al., 2001, Cell Death Differ 8, 403-10)。
【0008】
APRILは、複数のB細胞悪性腫瘍、そして潜在的に一部の固形腫瘍においても、生存および増殖能において重要な役割を担う。APRILはまた、炎症性疾患または自己免疫性におけるキープレイヤーとして浮上してきた。したがってAPRILをアンタゴナイズする方策が、複数のこれらの疾患にとっての治療目標である。実際、TACI-Fc(アタシセプト)でAPRILを標的にする臨床試験が、複数の自己免疫疾患の処置について現在続行中である。しかしTACI-Fcは、正常なB細胞の維持に関与する因子BAFFも標的にする。APRILに対する抗体が、WO9614328、WO2001/60397、WO2002/94192、WO9912965、WO2001/196528、WO9900518およびWO2010/100056に記載されている。WO2010/100056には、APRILを特異的に標的にする抗体が記載されている。WO2010/100056の抗体は、TACIへのAPRILの結合を完全に遮断し、BCMAへの結合は少なくとも部分的に遮断する。抗体hAPRIL.01Aは、BCMAおよびTACIの両方への結合を完全に遮断する。hAPRIL.01A抗体は、インビトロおよびインビボでのB細胞の増殖、生存および抗原特異性免疫グロブリン分泌を阻害した(Guadagnoli et al., 2011, Blood 117 (25): 6856-65)。加えて、hAPRIL.01Aは、ヒトのCLLおよびMM疾患を表すインビトロおよびインビボでの悪性腫瘍細胞の増殖および生存を阻害した(Guadagnoli et al., 2011, Blood 117 (25): 6856-65; Lascano et al., 2013, Blood 122(24): 3960-3; Tai et al., 2014, ASH poster 2098)。最後に、hAPRIL.01Aは、抗原特異性IgAの分泌を阻害した(Guadagnoli et al., 2011, Blood 117 (25): 6856-65)。これらの独特の結合特性を鑑みれば、このマウス抗体は、独特の医薬的効用を有する。しかし、マウス起源であるゆえ、ヒトの医薬におけるこの抗体の医薬的効用には特定の欠点も存在する。それゆえ本発明は、ヒト医薬における使用により適する改変hAPRIL.01A抗体を提供することを対象とする。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、VHおよびVLドメインのフレームワーク領域の特定の置換を含むhAPRIL.01A類似体を提供する。驚くべきことに、hAPRIL.01Aの抗原結合部位において、hAPRIL.01AのVHドメインのフレームワーク領域が、SEQ ID NO:12、14、16または18から選択されるVHアミノ酸配列由来のフレームワーク領域で置換され、hAPRIL.01AのVLドメインのフレームワーク領域がSEQ ID NO:30から選択されるVLアミノ酸配列のフレームワーク領域で置換された場合に、機能的hAPRIL.01A類似体が得られることが見出された。ヒト起源である代替的VHおよびVLフレームワーク配列の限定的組み合わせのみが、ヒトAPRILへのhAPRIL.01A CDRの適当な結合を補助し得ること、つまり機能的なhAPRIL.01A類似体をもたらし得ることが、本発明の発明者らによる研究で示されたという事実を鑑みて、これは驚くべきことである。加えて、本発明の発明者らは、hAPRIL.01類似体のさらなる改善が特定の特異的アミノ酸置換を導入することによって得られる可能性を示した。特に、選択されたVHアミノ酸配列における、R72Sのアミノ酸置換および/またはV68Aと組み合わせたR67Kの二重置換である。
【0010】
したがって第一の態様による本発明は、WO2010/100056に開示されたモノクローナル抗体hAPRIL.01AなどのhAPRIL.01Aの抗原結合部位を有する抗体と同じヒトAPRILエピトープに結合するAPRIL結合抗体に関し、前記ヒトAPRIL結合抗体は、VHおよびVLドメインを含む複数の抗原結合部位を含み、抗原結合部位において、VHドメインのフレームワーク配列は、SEQ ID NO:12、14、16または18から選択されるVHアミノ酸配列のフレームワーク配列と、好ましくはSEQ ID NO:14または18の該フレームワーク配列と、最も好ましくはSEQ ID NO:18の該フレームワーク配列と少なくとも70%の配列類似性を有し、VLドメインのフレームワーク配列は、SEQ ID NO:30から選択されるVLアミノ酸配列のフレームワーク配列と少なくとも70%の配列類似性を有する。
【0011】
本発明のさらなる態様は、本発明の抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードする、単離された形態のポリヌクレオチド、複数の該ポリヌクレオチドを含む発現単位、ならびに該発現単位および/または複数の該ポリヌクレオチドを含む宿主細胞に関する。
【0012】
本発明のさらなる態様は、本発明の抗体を生成する方法であって、
a)本発明の宿主細胞を、該複数のポリヌクレオチドが発現される条件下の培地中で培養し、それにより該軽鎖および重鎖可変領域を含むポリヌクレオチドを生成すること;ならびに
b)該宿主細胞または培地から該ポリヌクレオチドを回収すること
を含む方法に関する。
【0013】
医薬的に許容し得る担体または希釈剤との、および場合により複数の他の活性化合物との組み合わせで本発明の抗体を含む組成物が、本発明のさらなる態様の主題である。
【0014】
本発明の抗体の治療的および診断的使用が、本発明のさらに別の態様である。
[本発明1001]
hAPRIL.01Aの抗原結合部位を有する抗体断片などの抗体類似体を含む抗体と同じヒトAPRILエピトープへの結合に関して競合する、抗体断片などの抗体類似体を含むAPRIL結合抗体であって、前記APRIL結合抗体が、VHおよびVLドメインを含む複数の抗原結合部位を含み、抗原結合部位において、前記VHドメインのフレームワーク配列が、SEQ ID NO:12、14、16、18、好ましくはSEQ ID NO:14または18から選択されるVHアミノ酸配列のフレームワーク配列と少なくとも70%の配列類似性を有し、かつ前記VLドメインのフレームワーク配列が、SEQ ID NO:30のフレームワークアミノ酸配列と少なくとも70%の配列類似性を有する、APRIL結合抗体。
[本発明1002]
- 前記VHドメインにおいて、CDR1、CDR2、CDR3の少なくとも1つ、好ましくは3つ全てが、それぞれSEQ ID NO:5、6、7、もしくは前記配列のいずれかの変異体からなる群から選択され;かつ/または
- 前記VLドメインにおいて、CDR1、CDR2、CDR3の少なくとも1つ、好ましくは3つ全てが、それぞれSEQ ID NO:8、9および10、もしくは前記配列のいずれかの変異体からなる群から選択される、
本発明1001の抗体。
[本発明1003]
前記VHドメインのアミノ酸配列が、SEQ ID NO:42、44、46、48、好ましくはSEQ ID NO:44または48から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列類似性を有する重鎖アミノ酸配列内にあり、かつ前記VLドメインのアミノ酸配列が、SEQ ID NO:50のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列類似性を有する軽鎖アミノ酸配列内にある、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1004]
前記VHアミノ酸配列において、72位のアミノ酸がSであり、前記VHアミノ酸配列が、好ましくはSEQ ID NO:32、34、36、38または40から選択される、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1005]
少なくとも70%の配列類似性が、少なくとも85%の配列類似性である、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1006]
少なくとも70%の配列類似性が、少なくとも90%の配列類似性である、本発明1001~1004のいずれかの抗体。
[本発明1007]
少なくとも70%の配列類似性が、少なくとも95%の配列類似性である、本発明1001~1004のいずれかの抗体。
[本発明1008]
少なくとも70%の配列類似性が、少なくとも99%の配列類似性である、本発明1001~1004のいずれかの抗体。
[本発明1009]
前記VHアミノ酸配列において、67位のアミノ酸がKであり、かつ68位のアミノ酸がAであり、前記VHアミノ酸配列が、好ましくはSEQ ID NO:40から選択される、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1010]
以下の特色の1つまたは複数を有する、前記本発明のいずれかの抗体:
- ヒトAPRILと約100nM以下のKDで結合する;
- ヒトBCMAおよびヒトTACIへのヒトAPRILの結合を約100nM以下のIC50で遮断する;
- ヒトAPRILへのhAPRIL.01Aの結合を約100nM以下のIC50で遮断する。
[本発明1011]
本発明1001~1010のいずれかの抗体のVHドメインおよび/またはVLドメインをコードする単離されたポリヌクレオチドであって、前記VHドメインをコードするポリヌクレオチド配列が、好ましくは、SEQ ID NO:11、13、15、17、より好ましくはSEQ ID NO:13または17から選択されるポリヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列類似性を有するポリヌクレオチド配列であり、かつ前記VLドメインをコードするポリヌクレオチド配列が、好ましくは、SEQ ID NO:29から選択されるポリヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列類似性を有するポリヌクレオチド配列である、単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1012]
本発明1011の複数のポリヌクレオチドを適切な調節配列の制御下に含む、複数の発現ベクターを含む発現単位であって、複数の前記ポリヌクレオチドが、本発明1001~1010のいずれかの抗体のVHドメインおよびVLドメインをコードし、かつ前記VHドメインをコードするポリヌクレオチド配列が、前記VLドメインをコードするポリヌクレオチド配列と同じまたは異なる発現ベクター上にあり得る、発現単位。
[本発明1013]
本発明1011の複数のポリヌクレオチド、ならびに/または本発明1012の発現単位、好ましくは前記VHドメインをコードするポリヌクレオチド配列および前記VLドメインをコードするポリヌクレオチド配列の両方を含む発現ベクターを含む発現単位を含む、宿主細胞。
[本発明1014]
a)本発明1013の宿主細胞を、複数の前記ポリヌクレオチドが発現される条件下の培地中で培養し、それにより軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含むポリペプチドを生成すること;ならびに
b)前記宿主細胞または培地から前記ポリペプチドを回収すること
を含む、本発明1001~1010のいずれかの抗体を生成する方法。
[本発明1015]
担体または希釈剤、好ましくは医薬的に許容し得る担体または希釈剤との、および場合により複数の他の活性化合物、特に、メルファラン;ビンクリスチン;フルダラビン;クロラムブシル;ベンダムスチン;エトポシド;ドキソルビシン;シクロホスファミド;シスプラチン;例えばデキサメタゾン、プレドニゾロンといったコルチコステロイド、例えばサリドマイド、レナリドミド、ポマリドミドといったサリドマイド類似体などの免疫調整剤;例えばイブルチニブ、イデラリシブといったキナーゼ阻害剤;リツキシマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ(obinotuzumab)などのCD20を標的とする抗体治療薬;アレムツズマブなどのCD52を標的とする抗体治療薬;ダラツムマブなどのCD38を標的とする抗体治療薬;サリルマブ、トシリズマブなどのIL-6もしくはIL-6受容体を標的とする抗体治療薬;エロツズマブなどのCS-1を標的とする抗体治療薬;GSK2857916などのBCMAを標的とする抗体治療薬;タバルムマブ(tabalumab)などのBAFFもしくはBLyssを標的とする抗体治療薬;パミドロナートもしくはゾレドロン酸(zolendronic acid)などのビスホスホナート;またはボルテゾミブから選択されるような複数の治療活性化合物との組み合わせで本発明1001~1010のいずれかの抗体を含む、組成物。
[本発明1016]
治療、好ましくは
a.免疫細胞の増殖および/もしくは生存の阻害;
b.癌の処置;
c.自己免疫疾患の処置;
d.炎症性疾患の処置;または
e.免疫グロブリンレベルの低下が有益となる状態の処置
から選択される1つまたは複数を目的とする治療
における使用のための、本発明1001~1010のいずれかの抗体。
[本発明1017]
本発明1001~1010のいずれかの抗体の治療有効量を投与することを含む、対象、好ましくはヒト対象を処置するための方法。
[本発明1018]
前記処置が、
a.免疫細胞の増殖および/もしくは生存の阻害;
b.癌の処置;
c.自己免疫疾患の処置;
d.炎症性疾患の処置;または
e.免疫グロブリンレベルの低下が有益となる状態の処置
から選択される1つまたは複数を目的とする、本発明1017の方法。
[本発明1019]
診断方法、好ましくはフローサイトメトリー、ウェスタンブロット、酵素免疫測定法(ELISA)または免疫組織化学的検査から選択される診断方法などのエクスビボまたはインビトロ診断方法における、本発明1001~1010のいずれかの抗体の使用。
[本発明1020]
VH11.VL15、VH12.VL15、VH13.VL15、VH14.VL15、VH14_1.VL15、VH14_1C.VL15、VH14_1D.VL15、VH14_1E.VL15、およびVH14_1G.VL15からなる群から選択される重鎖可変領域・軽鎖可変領域対を含む、ヒト化抗体。
[本発明1021]
本発明1020のヒト化抗体をコードするポリヌクレオチド。
[本発明1022]
本発明1020のヒト化抗体の発現をもたらすように構成された調節配列に機能的に連結された前記ヒト化抗体をコードするポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【0015】
配列の簡単な説明
配列表に表された配列は、フレームワーク配列が本発明による抗体内で用いられ得るVHおよびVLドメインの、そして重鎖および軽鎖のアミノ酸配列およびコードDNA配列に関する。加えて、hAPRIL.01AのVHドメインおよびVLドメイン両方のCDRのアミノ酸配列と、該重鎖および軽鎖のアミノ酸配列が、表される。本発明の特定の実施形態によれば、hAPRIL.01AのCDRが、本発明の抗体内で用いられる。以下の表1では、配列IDをそれらの各配列に対応させている。
【0016】
【0017】
SEQ ID NO:11~52は、示されたような改変免疫グロブリンVH、VL、重鎖または軽鎖配列に関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】T細胞非依存性B細胞応答に関するインビボテストにおいてhAPRIL.01Aまたは類似体14_1G.15でAPRILを標的とした結果を示す。トランスジェニックマウス(APRIL-Tg)にNP-Ficoll 250μgをチャレンジし(0日目)、-1日目および3日目にhAPRIL.01Aまたは14_1G.15で処置した。PBSおよび野生型マウス(WT)を、陰性対照として用いた。免疫グロブリン力価(IgA1)を、ELISAにより測定した。14_1G.15は、NP-FicollへのT細胞非依存性免疫応答をhAPRIL.01A類似体よりも有効に阻害した。
【
図1B】T細胞非依存性B細胞応答に関するインビボテストにおいてhAPRIL.01Aまたは類似体14_1G.15でAPRILを標的とした結果を示す。トランスジェニックマウス(APRIL-Tg)にNP-Ficoll 250μgをチャレンジし(0日目)、-1日目および3日目にhAPRIL.01Aまたは14_1G.15で処置した。PBSおよび野生型マウス(WT)を、陰性対照として用いた。免疫グロブリン力価(IgA2)を、ELISAにより測定した。14_1G.15は、NP-FicollへのT細胞非依存性免疫応答をhAPRIL.01A類似体よりも有効に阻害した。
【
図1C】T細胞非依存性B細胞応答に関するインビボテストにおいてhAPRIL.01Aまたは類似体14_1G.15でAPRILを標的とした結果を示す。トランスジェニックマウス(APRIL-Tg)にNP-Ficoll 250μgをチャレンジし(0日目)、-1日目および3日目にhAPRIL.01Aまたは14_1G.15で処置した。PBSおよび野生型マウス(WT)を、陰性対照として用いた。免疫グロブリン力価(IgG)を、ELISAにより測定した。14_1G.15は、NP-FicollへのT細胞非依存性免疫応答をhAPRIL.01A類似体よりも有効に阻害した。
【
図1D】T細胞非依存性B細胞応答に関するインビボテストにおいてhAPRIL.01Aまたは類似体14_1G.15でAPRILを標的とした結果を示す。トランスジェニックマウス(APRIL-Tg)にNP-Ficoll 250μgをチャレンジし(0日目)、-1日目および3日目にhAPRIL.01Aまたは14_1G.15で処置した。PBSおよび野生型マウス(WT)を、陰性対照として用いた。免疫グロブリン力価(IgM)を、ELISAにより測定した。14_1G.15は、NP-FicollへのT細胞非依存性免疫応答をhAPRIL.01A類似体よりも有効に阻害した。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な記載
したがって本発明は、hAPRIL.01Aの抗原結合部位を有する抗体断片などの抗体類似体を含む抗体と同じヒトAPRILエピトープに結合する抗体に関する。抗体hAPRIL.01Aは、VHおよびVLドメインならびにCDRの配列と共にWO2010/100056に開示されている。本発明の発明者らは、hAPRIL.01AのVHおよびVLドメインのマウスフレームワーク領域をヒト代替物によって置換する限定的可能性が存在することを見出した。加えて、選択された代替的フレームワーク配列が、予想外の特色を有する代替的抗ヒトAPRIL抗体をもたらす。選択されたフレームワーク配列が、hAPRIL.01AのヒトAPRILエピトープに結合することに関連する特別な特色を明らかにし、それによりこの状況において広い効用を有すると考えられる。それゆえ本発明は、hAPRIL.01Aと同じエピトープに結合し、VHおよびVLドメインにおいて選択されたフレームワーク配列を含む、任意の抗体(断片および/または誘導体および/または類似体を含む)を対象とする。特定の実施形態において、そのような抗体は、hAPRIL.01AのCDRと異なる代替的CDRを含む。しかし他の実施形態によれば、該抗体は、hAPRIL.01AのCDRと類似または同一のCDRを含む。特定の実施形態によれば、hAPRIL.01AのVHドメインCDR1、CDR2およびCDR3、ならびにVLドメインCDR1、CDR2およびCDR3、または前記配列のいずれかの変異体を含む抗体は、モノクローナル抗体hAPRIL.01Aと同じヒトAPRILエピトープに結合する抗体と見なされなければならない。これは、該抗体がヒトAPRILと約100nM以下のKDで結合する場合、ならびに/またはヒトBCMAおよびTACIへのヒトAPRILの結合を約100nM以下のIC50で遮断する場合に、特にあてはまる。本発明において、好ましい抗体は、ヒトAPRILと約100nM以下のKD値、例えば100~0.001nMから選択される範囲、例えば100~0.010、100~0.050、100~0.100、100~0.150、100~0.200、100~0.250、100~0.300、100~0.350、100~0.400、100~0.450、90~0.500、80~0.550、70~0.600、60~0.650、50~0.700、40~0.750、30~0.800、20~0.850、10~0.900または1.0~0.950nMのKD値で結合する。当業者に理解される通り、50、20、10、1.00nM未満の値など、より低い値がKDに好ましい。そのような範囲のKD値を有する抗体は、臨床用途に適している(例えば、Presta, et al., 2001, Thromb. Haemost. 85:379-389; Yang, et al., 2001, Crit. Rev. Oncol. Hematol. 38:17-23; Carnahan, et al ., 2003, Clin. Cancer Res. (Suppl.) 9: 3982s-3990s参照)。抗体親和性は、例えば実施例の節に例示された通り、当業者に知られる標準的な分析を利用して決定することができる。
【0020】
本発明の抗体が、ヒトBCMAおよびTACIへのヒトAPRILの結合を、約100nM以下のIC50値、例えば100~0.001nMから選択される範囲、例えば100~0.010、100~0.050、100~0.100、100~0.150、100~0.200、100~0.250、100~0.300、100~0.350、100~0.400、100~0.450、90~0.500、80~0.550、70~0.600、60~0.650、50~0.700、40~0.750、30~0.800、20~0.850、10~0.900または1.0~0.950nMのIC50値で遮断する場合が、さらに好ましい。当業者に理解される通り、50、20、10、1.00nM未満の値など、より低い値がIC50に好ましい。
【0021】
hAPRIL.01Aと同じエピトープへの該抗体の結合は、WO2010/100056の実施例2もしくは5に表された方法、または以下に議論されるような当業者に知られる他のクロスブロッキングもしくはエピトープマッピング技術に従い、ヒトAPRILに関する、本発明の抗体と、hAPRIL.01Aの抗原結合部位を有する参照抗体との結合競合を評定することによって、評価することができる。hAPRIL.01Aの抗原結合部位は、SEQ ID NO:3および4に表された通りVHおよびVLドメインによって定義される。したがって、SEQ ID NO:3および4に表されたようなVHおよびVLドメインを含む抗体断片などの抗体類似体を含む任意の抗体を、hAPRIL.01Aと同じヒトAPRILエピトープへの結合を評価するための参照抗体として用いることができる。WO2010/100056に開示された抗体hAPRIL.01Aは、hAPRIL.01Aの抗原結合部位を有する抗体の一例であり、本発明の状況において適した参照抗体である。しかし、hAPRIL.01Aに由来するFab、F(ab)2またはFv断片などの抗体断片もまた、参照抗体として用いることができる。SEQ ID NO:1および2のDNA配列ならびにSEQ ID NO:3および4のアミノ酸配列に基づけば、当業者はそのようなhAPRIL.01A由来の抗体断片を構築および生成することができよう。提供された配列に基づけば、当業者は、SEQ ID NO:3(SEQ ID NO:1によりコードされる)の重鎖可変領域アミノ酸配列をIgG1定常領域(マウスまたは異なる種由来、好ましくはマウス由来)に連結すること、およびSEQ ID NO:4(SEQ ID NO:2によりコードされる)の軽鎖可変領域アミノ酸配列をκ定常領域(マウスまたは異なる種由来、好ましくはマウス由来)に連結することによって、参照抗体として使用するためのhAPRIL.01A類似体を生成することもできる。
【0022】
そのような方法で評価される場合、hAPRIL.01Aと同じヒトAPRILエピトープに結合する抗体は、ヒトAPRILへの、hAPRIL.01A抗原結合部位を有する参照抗体の結合を、約100nM以下のIC50値、例えば100~0.001nMから選択される範囲、例えば100~0.010、100~0.050、100~0.100、100~0.150、100~0.200、100~0.250、100~0.300、100~0.350、100~0.400、100~0.450、90~0.500、80~0.550、70~0.600、60~0.650、50~0.700、40~0.750、30~0.800、20~0.850、10~0.900または1.0~0.950nMのIC50値で遮断することができる。当業者には理解されるであろうが、50、20、10、1.00nM未満の値など、より低い値がIC50に好ましい。
【0023】
したがって本発明の抗体は、以下の特色の1つまたは複数を有し得る:
(i)約100nM以下のKDでヒトAPRILに結合する;
(ii)約100nM以下のIC50でヒトBCMAおよびヒトTACIへのヒトAPRILの結合を遮断する;
(iii)約100nM以下のIC50でヒトAPRILへのhAPRIL.01Aの結合を遮断する。
【0024】
これらの特色は、以下の組み合わせで組み合わせることができる:(i)または(ii)または(iii);(i)および(ii);(i)および(iii);(ii)および(iii);(i)および(ii)および(iii)。
【0025】
本発明によれば、抗体の抗原結合部位のVHドメインのフレームワーク配列は、それらがSEQ ID NO.12、14、16または18から選択されるVHアミノ酸配列のフレームワーク配列と少なくとも70%の配列類似性を有するように選択される。好ましい実施形態によれば、該抗体のVHドメインのフレームワーク配列は、それらがSEQ ID NO.14または18、最も好ましくはSEQ ID NO.18から選択されるVHアミノ酸配列のフレームワーク配列と少なくとも70%の配列類似性を有するように選択される。該抗体の前記抗原結合部位におけるVLドメインのフレームワーク配列は、それらがSEQ ID NO.30から選択されるVLアミノ酸配列のフレームワーク配列と少なくとも70%の配列類似性を有するように選択される。
【0026】
SEQ ID NO.12、14、16または18から選択されるVHアミノ酸配列およびSEQ ID NO.30から選択されるVLアミノ酸配列は、フレームワーク配列とCDR配列の両方を含む。これらのVHおよびVLアミノ酸配列に組み込まれたCDR配列は、hAPRIL.01Aのものであり、SEQ ID NO.5(hAPRIL.01A VH CDR1)、6(hAPRIL.01A VH CDR2)、7(hAPRIL.01A VH CDR3)、8(hAPRIL.01A VL CDR1)、9(hAPRIL.01A VL CDR2)、10(hAPRIL.01A VL CDR3)に対応する。しかし、先に既に言及した通り、本発明の中で選択された通りのVHおよびVLフレームワーク配列の使用は、hAPRIL.01Aの特定のCDRとの組み合わせに制限されない。したがって、特定の実施形態による少なくとも70%の配列類似性は、フレームワーク配列のみに対して考慮されるべきであり、SEQ ID NO:12、14、16、18から選択される完全なVHアミノ酸配列またはSEQ ID NO:30から選択される完全なVLアミノ酸配列に対して考慮されるべきではない。SEQ ID NO:12、14、16、または18で表されるVHアミノ酸配列のフレームワーク配列は、VH CDR以外のこれらの配列の一部、即ちSEQ ID NO.5(hAPRIL.01A VH CDR1)、6(hAPRIL.01A VH CDR2)、7(hAPRIL.01A VH CDR3)と同一の配列部分以外の部分である。SEQ ID NO:30で表されるVLアミノ酸配列のフレームワーク配列は、VL CDR以外のこの配列の一部、即ちSEQ ID NO.8(hAPRIL.01A VL CDR1)、9(hAPRIL.01A VL CDR2)、10(hAPRIL.01A VL CDR3)と同一の配列部分以外の部分である。
【0027】
代わりの実施形態によれば、少なくとも70%の配列類似性は、SEQ ID NO:12、14、16、または18から選択される完全なVHアミノ酸配列およびSEQ ID NO:30から選択される完全なVLアミノ酸配列に対して考慮されなければならない。
【0028】
本発明の記載において、少なくとも70%の配列類似性は、少なくとも80%、例えば少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、例えば少なくとも99%の配列類似性を意味すると理解されなければならない。
【0029】
当業者は、「配列類似性」が個々のヌクレオチド配列またはペプチド配列が類似する度合いを指すことを、理解するであろう。2つの配列間の類似性の度合いは、保存的変化の度合いを組み合わせた同一性の度合いに基づく。「配列類似性」のパーセント値は、同一であるか、または保存的に変化しているアミノ酸またはヌクレオチドのパーセント値、すなわち「配列類似性」=(%配列同一性)+(%保存的変化)である。
【0030】
本発明の目的では、「保存的変化」および「同一性」は、より広範囲の用語「類似性」の一種であると見なされる。したがって、配列「類似性」という用語が用いられる場合は必ず、それは配列の「同一性」および「保存的変化」を包含する。特定の実施形態によれば、保存的変化は無視され、%配列類似性は%配列同一性を指す。
【0031】
用語「配列同一性」は、当業者に知られている。2つのアミノ酸配列によって、または2つの核酸配列によって共有された配列同一性の度合いを決定するために、該配列は、最適比較の目的でアライメントされる(例えば、第二のアミノ酸または核酸配列との最適アライメントのために、ギャップを第一のアミノ酸配列または核酸配列の中に導入し得る)。そのようなアライメントは、比較される配列の全長にわたって実施され得る。あるいは該アライメントは、より短い比較長、例えば約20、約50、約100またはそれよりも長い核酸/塩基またはアミノ酸にわたって実施され得る。
【0032】
その後、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置でのアミノ酸残基またはヌクレオチドが、比較される。第一の配列の位置が、第二の配列内の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有されている場合、分子はその位置で同一である。配列間で共有される同一性の度合いは、典型的には2つの配列間の%同一性に関して表現され、配列内の同一残基によって共有される同一位置の数の関数である(即ち、%同一性=対応する位置での同一残基の数/位置の総数×100)。好ましくは比較される2つの配列は、同一の長さ、または実質的に同一の長さのものである。
【0033】
「保存的変化」のパーセント値は、配列同一性のパーセント値と似たように決定され得る。しかしこの場合、元の残基の機能的性質を保存する可能性があるアミノ酸またはヌクレオチド配列の特定の位置での変化が、変化が全く起こっていないかのごとくスコア付けされる。
【0034】
アミノ酸配列の場合、関連の機能的性質は、アミノ酸の物理化学的性質である。本発明のポリペプチド内のアミノ酸の保存的置換は、そのアミノ酸が属する分類の他のメンバーから選択され得る。例えば、特定のサイズまたは特徴(電荷、疎水性および親水性など)を有するアミノ酸のグループに属するアミノ酸が、特に生物活性に直接関連しないタンパク質の領域において、タンパク質の活性を実質的に改変せずに別のアミノ酸と置換され得ることは、タンパク質生化学の技術分野で周知である(例えば、Watson, et al., Molecular Biology of the Gene, The Benjamin/Cummings Pub. Co., p.224 (4th Edition 1987)参照)。例えば非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンが挙げられる。極性中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられる。正電荷(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リジンおよびヒスチジンが挙げられる。負電荷(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。保存的置換としては、例えば正電荷を維持するためのLysの代わりのArgおよびその逆;負電荷を維持するためのGluの代わりのAspおよびその逆;遊離-OHが維持されるようなSerの代わりのThrおよびその逆;ならびに遊離-NH2が維持されるようなGluの代わりのAsn、が挙げられる。
【0035】
本発明のCD70結合ペプチドのアミノ酸配列内の例示的な保存的置換は、以下に示されるものに従って行われ得る。
【0036】
【0037】
ヌクレオチド配列の場合、関連の機能的性質は、主に転写および/または翻訳機構に関連する配列のオープンリーディングフレーム内で特定のヌクレオチドが担う生物学的情報である。遺伝暗号が縮重(または冗長性)を有すること、および複数のコドンが、それらがコードするアミノ酸に関して同じ情報を担い得ることは、一般に認知されている。例えば特定の種において、アミノ酸ロイシンは、UUA、UUG、CUU、CUC、CUA、CUGコドン(またはDNAではTTA、TTG、CTT、CTC、CTA、CTG)によってコードされ、アミノ酸セリンは、UCA、UCG、UCC、UCU、AGU、AGC(またはDNAではTCA、TCG、TCC、TCT、AGT、AGC)によって特定される。翻訳された情報を改変しないヌクレオチド変化は、保存的変化と見なされる。
【0038】
当業者は、異なる数学的アルゴリズムを用いる複数の異なるコンピュータプログラムが、2配列間の同一性を決定するのに利用可能であることを認識するであろう。例えば、Needleman-Wunschアルゴリズム(Needleman et al. (1970))を用いたコンピュータプログラムを使用することができる。実施形態によれば、該コンピュータプログラムは、Accelrys GCGソフトウエアパッケージ(Accelrys Inc.,米国サンディアゴ所在)内のGAPプログラムである。用いられ得る置換行列は、例えばBLOSUM62行列またはPAM250行列であり、16、14、12、10、8、6、または4のギャップウェイト(gap weight)、および1、2、3、4、5、または6のレングスウェイト(length weight)である。当業者は、これらの異なるパラメータの全てが、わずかに異なる結果を生じるが、2配列の全体的な%同一性が、異なるアルゴリズムを用いた場合に有意に変化しないことを認識するであろう。
【0039】
実施形態によれば、2ヌクレオチド配列間の%同一性は、Accelrys GCGソフトウエアパッケージ(Accelrys Inc.,米国サンディアゴ所在)内のGAPプログラムを用いて決定される。NWSgapdna CMP行列および40、50、60、70、または80のギャップウェイトおよび1、2、3、4、5、または6のレングスウェイトが用いられる。
【0040】
別の実施形態において、2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列の%同一性は、PAM120重量残基表(weight residue table)、ギャップ長ペナルティー12およびギャップペナルティー4を利用し、ALIGNプログラム(バージョン2.0)(フランス、モンペリエ、IGHのGenestreamサーバー:http://xylian.igh.cnrs.fr/bin/align-guess.cgiの配列データを用いてALIGN Queryで入手)に組み込まれたE. MeyersおよびW. Millerのアルゴリズム(Meyers et al.(1989))を用いて決定される。
【0041】
本発明の場合、BLAST(Basic Local Alignment Tool)を利用してヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の%同一性および/または類似性を決定することが、最も好ましい。
【0042】
Altschulら(1990)のBLASTn、BLASTp、BLASTx、tBLASTnおよびtBLASTxプログラムを用いたクエリーは、http://www. ncbi.nlm.nih.govを通して入手可能なBLASTのオンラインバージョンを介して知ることができる。あるいは、NCBIインターネットサイトを介してダウンロード可能なBLASTのスタンドアローンバージョン(例えば、バージョン2.2.29(2014年1月3日公開))を用いることができる。好ましくはBLASTクエリーを、以下のパラメータを用いて実施する。アミノ酸配列間の%同一性および/または類似を決定するために、algorithm:blastp;word size:3;scoring matrix:BLOSUM62;gap costs:Existence:11,Extension:1;compositional adjustments:conditional compositional score matrix adjustment;filter:off;mask:off。ヌクレオチド配列間の%同一性および/または類似性を決定するために、algorithm: blastn; word size: 11; max matches in query range: 0; match/mismatch scores: 2, -3; gap costs: Existence: 5, Extension: 2;filter: low complexity regions; mask: mask for lookup table only。
【0043】
「保存的変化」のパーセント値は、示されたアルゴリズムおよびコンピュータプログラムの助けを借りて配列同一性のパーセント値と似たように決定され得る。幾つかのコンピュータプログラム、例えばBLASTpは、陽性(=類似性)の数/パーセント値および同一性の数/パーセント値を表す。保存的変化のパーセント値は、陽性/類似性のパーセント値から同一性のパーセント値を減算することによって、それから得ることができる(%保存的変化=%類似性-%同一性)。
【0044】
当業者に理解される通り、本発明の抗体は、複数の抗原結合部位を含む。CDR配列と共に選択されたVHおよびVLドメインのアミノ酸配列のフレームワーク配列が、抗原結合部位内で組み合わせられる。本発明で予期されるVHおよびVLドメイン由来のフレームワーク配列の具体的な組み合わせは、以下の表3に表された通りであるが、ここで「X」は、予期されるVHおよびVLドメインの組み合わせの位置に表されている。
【0045】
(表3)フレームワーク配列のV
HおよびV
Lの組み合わせ
【0046】
これらのVHおよびVLドメイン由来のフレームワーク配列の組み合わせは、ヒトAPRILへの機能的結合を有する抗体をもたらす。実験の節でさらに示される通り、本発明の発明者らによって実施されたテストにおいて、本発明のVH配列とSEQ ID NO:30(VL15)のVL配列とを組み合わせた場合だけ、APRIL結合機能性を有する抗体が得られたことに留意すべきである。選択されたVH配列と他のVL配列(VL10~VL14)とのテストされた組み合わせにおいて、得られた抗体は、機能的なAPRIL結合特性を有さなかった。本発明に従って用いられたVH配列とVL配列の組み合わせのさらに驚くべき効果は、実験の節に示される通り、hAPRIL.01A VHおよびVL配列を有する抗体と比較した場合の改善された(熱)安定性である。
【0047】
SEQ ID NO:30のVLフレームワーク配列と、SEQ ID NO:18のVHフレームワーク配列からのVHフレームワーク配列またはそれから得られた配列、例えばSEQ ID NO:32、34、36、38、40との組み合わせが好ましい。これらの好ましい組み合わせは、表3では下線のひかれた「X」で表されている。SEQ ID NO:30由来のVLフレームワーク配列とSEQ ID NO:40由来のVHフレームワーク配列との最も好ましい組み合わせは、表3では太字(および下線付き)の「X」で表されている。驚くべきことに、VLフレームワーク配列とVHフレームワーク配列のこれらの組み合わせが、有益な安定性および/またはヒトAPRILターゲットへの改善された結合をはじめとする追加的な有益な特色を有する抗体をもたらすことが見出された。
【0048】
特定の実施形態によれば、VHドメインにおいて、CDR1、CDR2、CDR3の少なくとも1つは、それぞれSEQ ID NO:5、6、7または前記配列のいずれかの変異体からなる群から選択される。好ましくはVHドメインにおいて、CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれSEQ ID NO:5、6、7または前記配列のいずれかの変異体から選択される。これらのVHドメインCDR配列は、hAPRIL.01AのVHドメインCDRに対応する。
【0049】
特定の実施形態によれば、VLドメインにおいて、CDR1、CDR2、CDR3の少なくとも1つは、それぞれSEQ ID NO:8、9、10または前記配列のいずれかの変異体からなる群から選択される。好ましくはVLドメインにおいて、CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれSEQ ID NO:8、9、10または前記配列のいずれかの変異体から選択される。これらのVLドメインCDR配列は、hAPRIL.01AのVLドメインCDRに対応する。
【0050】
特定の実施形態によれば、該抗体の抗原結合部位において、VHドメインCDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれSEQ ID NO:5、6、7または前記配列のいずれかの変異体から選択され、VLドメインCDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれSEQ ID NO:8、9、10または前記配列のいずれかの変異体から選択される。
【0051】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、本発明で用いられるVHフレームワーク配列とVLフレームワーク配列とを組み合わせた抗体において、さらなる改善が行われ得ることを見出した。特にVHアミノ酸配列における置換R72Sは、ヒトAPRILへの結合の改善をもたらす。
【0052】
加えて、VHアミノ酸配列における置換の組み合わせR67K-V68Aもまた、ヒトAPRILへの結合の改善をもたらす。それゆえ本発明は、特定の実施形態によれば、VHアミノ酸配列において72位のアミノ酸がSである抗体に関する。SEQ ID NO.32、34、36、38、40のVHアミノ酸配列は、72位にS残基を有するそのようなVHアミノ酸配列の例である。他の実施形態によれば、VHアミノ酸配列において67位のアミノ酸がKであり、68位のアミノ酸がAである抗体に関する。3つのアミノ酸置換R72S、R67KおよびV68Aの全ての組み合わせもまた、本発明において予期される。したがって他の実施形態によれば、本発明は、VHアミノ酸配列において72位のアミノ酸がSであり、67位のアミノ酸がKであり、68位のアミノ酸がAである抗体に関する。
【0053】
VHおよびVLドメインとは別に、該抗体は、適切な数のCHドメインおよび適切な数のCLドメインなどのさらなるドメインを含み得る。CHドメインおよびCLドメインは、ヒト起源のものであり得る。そのようなドメインはまた、修飾された(または遮断された)Fc領域を有する抗体を提供して、エフェクター機能の改変を提供するドメインを包含する。例えば、米国特許第5,624,821号;WO2003/086310;WO2005/120571;WO2006/0057702; Presta, 2006, Adv. Drug Delivery Rev.58:640-656;Vincent and Zurini, Biotechnol . J., 2012,7:1444-50;Kaneko and Niwa, Biodrugs, 2011, 25: 1-11を参照されたい。そのような修飾は、免疫系の様々な反応を増進または抑制するために用いることができ、診断および治療における有益な作用を有する可能性がある。Fc領域の改変には、アミノ酸変化(置換、欠失および挿入)、グリコシル化、または脱グリコシル、および複数のFcの付加がある。特定の実施形態によれば、Fcエフェクター機能の低下を示すFc領域を使用することが、好ましい。特定の実施形態による本発明の抗体はまた、ヒトIgG4から出発したFc領域および/またはN297Qグリコシル化欠損突然変異体を含むFc領域を有し得る。CLドメインは、ヒトカッパまたはラムダ定常ドメインから選択され得る。好ましくは、ヒトカッパCLドメインが用いられる。
【0054】
本発明の特定の実施形態によれば、FcおよびCLドメインを含む抗体が提供され、VHドメインアミノ酸配列は、SEQ ID NO:42、44、46、48、52、好ましくはSEQ ID NO:48または52、最も好ましくはSEQ ID NO:52から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列類似性を有する重鎖アミノ酸配列内にあり、VLドメインアミノ酸配列は、SEQ ID NO:50から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列類似性を有する軽鎖アミノ酸配列内にある。
【0055】
本発明により予期されるこれらの重鎖および軽鎖の特定の組み合わせを、以下の表4に表すが、ここで「X」は、予期される重鎖および軽鎖の組み合わせの位置に表されている。
【0056】
【0057】
好ましい組み合わせは、下線のひかれた「X」で示されている。より好ましい組み合わせは、太字(および下線付き)の「X」で示されている。
【0058】
さらなる態様によれば、本発明は、本発明による抗体のVHドメインおよび/またはVLドメインをコードする単離されたポリヌクレオチドに関する。VHドメインをコードするポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:11、13、15、17、31、39、41、43、45、47、51、好ましくはSEQ ID NO:17、31、39、47または51、より好ましくはSEQ ID NO:51から選択されるポリヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列類似性を有するポリヌクレオチド配列である。VLドメインをコードするポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29または49、好ましくはSEQ ID NO:49から選択されるポリヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列類似性を有するポリヌクレオチド配列である。
【0059】
本発明はさらに、本発明による複数のポリヌクレオチドを適切な調節配列の制御下に含む、複数の発現ベクターを含む発現単位に関し、該複数のポリヌクレオチドは、本発明による抗体のVHドメインおよびVLドメインをコードする。VHドメインをコードするポリヌクレオチド配列とVLドメインをコードするポリヌクレオチド配列が、同じ発現ベクター上にあり得るように、発現単位が設計され得る。したがって該発現単位は、1つのベクターを含み得る。あるいはVHドメインをコードするポリヌクレオチド配列とVLドメインをコードするポリヌクレオチド配列が、異なる発現ベクター上にあり得る。そのような実施形態において、該発現単位は、複数の、例えば2つの、発現ベクターを含む。
【0060】
本発明のさらなる態様は、本発明の複数のポリヌクレオチドおよび/または本発明の発現単位を含む宿主細胞に関する。該発現単位は、好ましくはVHドメインをコードするポリヌクレオチド配列と、VLドメインをコードするポリヌクレオチド配列との両方を含む発現ベクターを含む発現単位である。
【0061】
本発明の抗体は、以下のうちの任意の1つであり得る:
- キメラ抗体もしくはその断片;
- ヒト化抗体もしくはその断片;または
- Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、scFv、F(ab’)2、二重特異性mAbおよびジアボディからなる群から選択される抗体断片。hAPRIL.01AのCDRに基づく複数の抗原結合部位を含むヒト化抗体が、好ましい。本発明により選択されたフレームワーク領域がヒト起源のものであり、したがって、特にヒト起源の定常領域と組み合わされた場合に、ヒト化抗体を得るために適切に使用され得ることが、留意されるであろう。
【0062】
そのさらなる態様によれば、本発明は、
a)本発明の複数のポリヌクレオチドおよび/または本発明の発現単位を含む宿主細胞を、ポリヌクレオチドが発現される条件下の培地中で培養し、それにより軽鎖および重鎖可変領域を含むポリペプチドを生成すること;ならびに
b)該宿主細胞または培地からポリペプチドを回収すること
を含む、本発明の抗体を生成する方法に関する。
【0063】
本発明はさらに、医薬的に許容し得る担体または希釈剤と組み合わせて本発明の抗体を含む組成物に関する。一実施形態におけるそのような組成物は、1種を超える抗体を含み得る。一実施形態において、該組成物は、本発明の1種または複数の抗体に加えて1種または複数の他の活性化合物を含む。そのような併用組成物は、例えば癌の処置の際に、併用療法で用いられ得る。その場合、該抗体は、通常の抗癌剤の1種または複数と組み合わせられ得る。他の併用療法では、他の追加的活性化合物が、用いられ得る。併用療法では、同じ組成物中に2種以上の活性化合物を有することが必須ではない。したがって本発明の一部は、抗体と他の活性化合物の併用または逐次的使用であり、ここで抗体および他の活性化合物は、同時または逐次投与される。
【0064】
上記から明白な通り、本発明の抗体は、治療および診断における使用のため、ならびに他の非治療的目的のものであり得る。したがって本発明はさらに、治療および診断における、そして他の非治療目的での該抗体の使用方法に関する。
【0065】
一実施形態において、該治療は、免疫細胞増殖および/または免疫細胞生存の阻害を含む。別の実施形態において、該処置は、癌を処置することを対象とする。一実施形態において、該治療は、自己免疫疾患の処置を含む。一実施形態において、該治療は、炎症性疾患の処置を含む。一実施形態において、該治療は、Ig分泌介在性疾患、特にIgA分泌介在性疾患の処置を含む。本発明の抗体の治療的使用を、以下により詳細に議論する。
【0066】
非治療的用途に用いられる場合の本発明の抗体は、例えばフローサイトメトリー、ウェスタンブロット、酵素免疫測定法(ELISA)および免疫組織化学的検査などのインビトロまたはエクスビボ技術において適用され得る。
【0067】
治療
本発明の抗体がhAPRIL.01Aに類似してヒトAPRILに結合するという事実を鑑みると、本発明の抗体は、hAPRIL.01Aと類似した治療における使用に適しており、先に議論され、そして実験の節で議論される改善を伴う。それゆえ本発明の抗体は、ヒトAPRILとBCMAおよび/またはTACIとの相互作用を遮断することによって改善されることが知られている、またはそれが予測される状態の処置に適する。当該技術分野で既に知られる通り、ヒトAPRILとBCMAおよび/またはTACIとの相互作用を遮断することで、免疫細胞の増殖および/または生存が阻害されるので、遮断はそのような免疫細胞の増殖および/または生存の遮断が有益となる状態、例えば炎症性疾患、Ig分泌が介在する疾患および/または自己免疫疾患の処置にとって価値を有し得る。ヒトAPRILとBCMAおよび/またはTACIとの相互作用を遮断することは、癌の処置においても有益になり得る。
【0068】
本発明の抗体が有益になり得る自己免疫状態は、多発性硬化症、関節リウマチ、1型糖尿病、乾癬、クローン病および他の炎症性腸疾患、例えば潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性脳脊髄炎、重症筋無力症(MG)、橋本甲状腺炎、グッドパスチャー症候群、天疱瘡、グレーブス病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少性紫斑病、抗コラーゲン抗体による強皮症、混合性結合組織病、多発性筋炎(polypyositis)、悪性貧血、特発性アジソン病、自己免疫関連性不妊症、糸球体腎炎、半月形糸球体腎炎、増殖性糸球体腎炎、水疱性類天疱瘡、シェーグレン症候群、乾癬性関節炎、インスリン抵抗性、自己免疫性糖尿病、自己免疫性肝炎、自己免疫性血友病、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、自己免疫性肝炎、自己免疫性血友病、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性網膜ブドウ膜炎、ギランバレー症候群、動脈硬化およびアルツハイマー病から選択され得る。
【0069】
加えて、本発明の抗体は、移植片(移植)拒絶またはアレルギー状態などの免疫応答の低下が有益となる他の関連状態の処置においても有益となり得る。
【0070】
同じく本発明の抗体は、IgA1またはIgA2などのIgA、IgG、IgMレベルなどの免疫グロブリンレベルの低下が有益となる他の状態、例えばIg分泌、特にIgA分泌、Ig過剰産生、例えばIgA1もしくはIgA2などのIgA、IgG、IgMの過剰産生、特にIgA過剰産生、またはIg沈着、特にIgA沈着に関連する状態の処置において有益となり得る。そのような状態の例としては、IgA腎症、および他の形態の糸球体腎症、セリアック病、類天疱瘡、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、ならびにIg沈着に関連する他の自己免疫疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
本発明において、「状態」の処置は、抗ヒトAPRIL抗体の予防的および治癒的使用を含む任意の治療的使用を包含する。それゆえ用語「状態」は、疾患状況だけでなく、生理機能が有害な状況に変化しないような防御的設定における生理学的状況も指し得る。
【0072】
本発明における癌としては、白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄芽球・前骨髄球(myeloblasts promyelocyte)、骨髄単球性単球性赤白血病(myelomonocytic monocytic erythroleukemia)、慢性白血病、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ球性白血病、マントル細胞リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、バーキットリンパ腫および辺縁帯B細胞リンパ腫、真性多血症性リンパ腫(Polycythemia vera Lymphoma)、ホジキン病、非ホジキン病、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、重鎖病、固形腫瘍、肉腫、および癌腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸肉腫、直腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、鼻咽頭癌、食道癌、基底細胞癌、胆道癌、膀胱癌、骨癌、脳および中枢神経系(CNS)癌、子宮頸癌、繊毛癌、大腸癌、結合組織癌、消化器系の癌、子宮内膜癌、食道癌、眼癌、頭頸部癌、胃癌、腹腔内新生物、腎臓癌、喉頭癌、肝臓癌、肺癌(小細胞、大細胞)、黒色腫、神経芽細胞腫、口腔癌(例えば、唇、舌、口および咽頭)、卵巣癌、膵臓癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸癌、呼吸器系の癌、肉腫、皮膚癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、子宮癌、および泌尿器系の癌が挙げられるが、これらに限定されない。特に該当する癌は、B細胞由来の悪性腫瘍、リンパ球もしくは結腸もしくは肺の癌、または多発性骨髄腫(MM)または慢性リンパ球性白血病(CLL)B細胞など、APRILを発現する細胞を有する癌である。
【0073】
上述の状態のいずれかの処置を目的とすれば、本発明の抗体は、単独で、または他の治療薬と併用で、対象に直接投薬され得る。それゆえ本発明の特定の実施形態によれば、使用および/または組成物における本発明の抗体は、多発性骨髄腫(MM)、骨髄異形成症候群(MDS)、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、B-CLL、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫およびウェゲナー肉芽腫を処置するのに用いられる化学療法剤、例えばメルファラン、ビンクリスチン、フルダラビン、クロラムブシル、ベンダムスチン、エトポシド、ドキソルビシン、シクロホスファミド、シスプラチンの複数と併用され得る。加えて、使用および/または組成物における本発明の抗体は、コルチコステロイド(デキサメタゾン、プレドニゾロン)、サリドマイド類似体(サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド)などの免疫調整剤の複数と併用され得る。同じく、使用および/または組成物における本発明の抗体は、イブルチニブ、イデラリシブなどの標的指向性キナーゼ阻害剤の複数と併用され得る。さらに、使用および/または組成物における本発明の抗体は、リツキシマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ(obinotuzumab)などのCD20を標的とする抗体治療薬;またはアレムツズマブなどのCD52を標的とする抗体治療薬;またはダラツムマブなどのCD38を標的とする抗体治療薬;またはIL-6もしくはIL-6受容体を標的とする抗体治療薬(サリルマブ、トシリズマブなど);またはCS-1を標的とする抗体治療薬(エロツズマブなど);またはBCMAを標的とする抗体治療薬(GSK2857916など);またはBAFFもしくはBLyssを標的とする抗体治療薬(タバルムマブ(tabalumab)など)の複数と併用され得る。加えて、使用および/または組成物における本発明の抗体は、ビスホスホナート(パミドロナート、ゾレドロン酸(zolendronic acid)など)の複数と併用され得る。APRILがMM細胞をIL-6欠乏、デキサメタゾンおよびボルテゾミブ処置から防御することが、過去に記載されている(Moreaux et al, 2004, Blood 103(8):3148-57; Li et al., 2010, Med Oncol. 27:439-45)。hAPRIL.01Aは、レナリドミドおよびデキサメタゾン処置におけるMM細胞のAPRIL介在生存を逆転させることが示されている(Tai et al., 2014, ASH poster 2098)。当該技術分野におけるこれらの知見を考慮すると、本発明の抗体は、特に、使用および/または組成物において、コルチコステロイド、例えばデキサメタゾン、プレドニゾロン、好ましくはデキサメタゾン、またはサリドマイド類似体、例えばサリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、特にレナリドミド、またはボルテゾミブから選択されるさらなる治療薬と併用され得る。
【0074】
診断
APRILが非限定的に自己免疫疾患、炎症性疾患、および悪性腫瘍などの重要な疾患マーカを代表することから、ヒト対象の血清および/または組織中のAPRILの検出が重要になる。診断用途では、該抗体は典型的には、検出可能な部分で標識される(直接的または間接的のいずれか)。数多くの標識が、入手可能であり、それらは概ね以下の分類に群分けされ得る:ビオチン、蛍光色素、放射性核種、酵素、ヨウ素、および生合成標識。
【0075】
様々な異なる患者の血清および他の体液および/または組織中に存在する可溶性APRILが、患者の疾患重症度と相関することが示された。例えば慢性リンパ球性白血病(CLL)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)および多発性骨髄腫(MM)、DLBCL患者(NHL)、大腸癌、SLE、より広範囲の全身免疫性リウマチ疾患(現在は、シェーグレン症候群、ライター症候群、乾癬性関節炎、多発性筋炎、および強直性脊椎炎も含む)およびアトピー性皮膚炎に罹患した患者は、可溶性APRILの血清レベル増加を示した。加えて、IgA腎炎に罹患した患者の血清APRILレベルは、上昇している(McCarthy et al., 2011, J.Clin . Invest . 121 (10): 3991-4002)。同じく血清APRILレベルは、敗血症において上昇し、重篤疾病患者における死亡率を予測させる(Jonsson et al., 1986, Scand J Rheumatol Suppl 61, 166-9; Roschke et al., 2002, J Immunol 169, 4314-21)。hAPRIL.01Aの実証された結合特性に基づけば、本発明による抗体は、体液および/または組織中の可溶性APRILを検出するための診断ツールとして用いることができる。
【0076】
本発明の抗体は、競合結合アッセイ、間接的および直接的サンドイッチアッセイ、ならびに免疫沈降アッセイなどの任意の公知アッセイ法で用いられ得る。Zola, Monoclonal Antibodies. A Manual of Techniques, pp.147-158 (CRC Press, Inc. 1987)。
【0077】
本発明の抗体はまた、インビボ診断アッセイに用いられ得る。一般に抗原または該抗体を発現する細胞が、イムノシンチグラフィーまたは陽電子放射断層撮影を用いて位置決めされ得るように、該抗体が放射性核種で標識される。
【0078】
非治療的用途
本発明の別の態様によれば、該抗体は、他の非治療的用途を有する。本発明の抗体の非治療的用途としては、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、酵素免疫測定法(ELISA)および免疫組織化学的検査が挙げられる。
【0079】
本発明の抗体は、例えばProtein A-Sepharoseカラムへの固定を通し、アフィニティー精製試薬として用いられ得る。
【0080】
一般的定義
用語「抗体」は、受容体へのリガンドの結合を阻害すること、または受容体のリガンド誘導性シグナル伝達を阻害することなど、所望の生物活性を示す任意の形態の抗体を指す。本発明の例では、生物活性は、受容体BCMAおよび/またはTACIへのAPRILの結合を遮断することを含む。したがって「抗体」は、最も広範囲の意味で用いられ、具体的にはDuobody(登録商標)技術(Genmab)またはHexabody(登録商標)技術(Genmab)または抗体断片に基づくようなモノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)および多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)を含むが、これらに限定されない。
【0081】
「抗体断片」および「抗体結合断片」は、典型的には親抗体の抗原結合領域または可変領域(例えば、1つまたは複数のCDR)の少なくとも一部を含む、抗体の抗原結合断片および類似体を意味する。抗体断片は、親抗体の結合特異性の少なくとも一部を保持する。典型的には抗体断片は、親の結合活性がモル基準で表現される場合、該活性の少なくとも10%を保持する。好ましくは抗体断片は、標的への親抗体結合親和性の少なくとも20%、50%、70%、80%、90%、95%もしくは100%、またはそれ以上を保持する。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片;ジアボディ;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子、例えばsc-Fv、ユニボディ(Genmabの技術);ナノボディ(Ablynxの技術);ドメイン抗体(Domantisの技術)、および抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。改変抗体変異体は、Holliger and Hudson, 2005, Nat. Biotechnol. 23:1126-1136において論評されている。
【0082】
「Fab断片」は、1つの軽鎖と、1つの重鎖のCH1および可変領域と、で構成される。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。
【0083】
「Fc」領域は、抗体のCH1およびCH2ドメインを含む2つの重鎖断片を含む。該2つの重鎖断片は、2つ以上のジスルフィド結合と、CH3ドメインの疎水性相互作用と、によってまとめられている。
【0084】
「Fab’断片」は、1つの軽鎖と、VHドメインおよびCH1ドメイン、そしてCH1ドメインとCH2ドメインの間の領域を含む1つの重鎖の一部と、を含み、鎖間ジスルフィド結合が、2つのFab’断片の2つの重鎖の間に形成されて、F(ab’)2分子を形成することができるようになっている。
【0085】
「F(ab’)2断片」は、2つの軽鎖と、CH1ドメインとCH2ドメインの間の定常領域の一部を含む2つの重鎖と、を含むことで、鎖間ジスルフィド結合が2つの重鎖の間に形成される。したがってF(ab’)2断片は、2つの重鎖の間のジスルフィド結合によってまとめられた2つのFab’断片で構成される。
【0086】
「Fv領域」は、重鎖と軽鎖の両方由来の可変領域を含むが、定常領域を欠く。
【0087】
「一本鎖Fv抗体」(または「scFv抗体」)は、抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインが一本のポリペプチド鎖の中に存在する、抗体断片を指す。一般にFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインの間に、抗原結合に望ましい構造をscFvが形成することを可能にするポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvの論評については、Pluckthun, 1994, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds . Springer-Verlag, New York, pp.269-315を参照されたい。同じく国際特許出願公開第WO88/01649、ならびに米国特許第 4,946,778号および同第5,260,203号も参照されたい。
【0088】
「ジアボディ」は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片である。該断片は、同じポリペプチド鎖内で軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH-VLまたはVL-VH)。短すぎるために同じ鎖上の2つのドメイン間で対合することができないリンカーを用いることによって、ドメインは別の鎖の相補性ドメインと対合して2つの抗原結合部位を作製するように促される。ジアボディは、例えば欧州特許第404,097号;WO93/11161;およびHolliger et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448により完全に記載されている。
【0089】
「Duobody」は、通常のIgG構造を有する二重特異性抗体である(Labrijn et al., 2013, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 110 (13): 5145-5150)。
【0090】
「Hexabody」は、規則的構造および特異性を保持しながら高い殺傷能力を有する抗体である(Diebolder et al., 2014, Science 343 (6176): 1260-3)。
【0091】
「ドメイン抗体断片」は、重鎖の可変領域または軽鎖の可変領域のみを含む免疫学的機能のある免疫グロブリン断片である。幾つかの例において、2つ以上のVH領域がペプチドリンカーと共有結合で連結して、二価ドメイン抗体断片を生成する。二価ドメイン抗体断片の2つのVH領域は、同一または異なる抗原を標的とし得る。
【0092】
本明細書で用いられる抗体hAPRIL.01Aは、重鎖がSEQ ID NO:55のアミノ酸配列を有し、軽鎖がSEQ ID NO:56のアミノ酸配列を有するマウス抗体である。
【0093】
本発明の抗体断片は、例えば通常は重鎖間ジスルフィド結合に関与するヒンジシステインの少なくとも1つが、本明細書に記載された通り改変されている、低いジスルフィド結合能力を有する重鎖の二量体化(または多量体化)を可能にするのに十分な部分の定常領域を含み得る。別の実施形態において、抗体断片、例えばFc領域を含むものは、インタクト抗体中に存在する場合にはFc領域に通常関連する生物学的機能、例えばFcRn結合、抗体半減期調整、ADCC(抗体依存性細胞傷害)機能、および/または補体結合(例えば抗体がADCC機能または補体結合に必要なグリコシル化プロファイルを有する場合)のうちの少なくとも1つを保持する。
【0094】
用語「キメラ」抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の中の対応する配列と同一または相同的であり、同時に鎖(複数可)の残りが、別の種に由来する抗体、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の中の対応する配列と同一または相同的であるような抗体、および所望の生物活性を呈する限りはそのような抗体の断片を指す(例えば、米国特許第4,816,567号およびMorrison et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855参照)。
【0095】
本明細書で用いられる用語「ヒト化抗体」は、非ヒト(例えば、マウス)抗体およびヒト抗体に由来する配列を含む抗体の形態を指す。そのような抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含む。一般にヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、その超可変ループの全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、場合により、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのもの、の少なくとも一部も含む。げっ歯類抗体のヒト化形態は、本質的に親げっ歯類抗体の同じCDR配列を含むが、親和性を上昇させるため、ヒト化抗体の安定性を上昇させるため、または他の理由で、特定のアミノ酸置換が含まれる場合がある。
【0096】
本発明の抗体はまた、改変されたエフェクター機能を提供するように修飾された(または遮断された)Fc領域を有する抗体を包含する。例えば米国特許第5,624,821号;WO2003/086310;WO2005/120571;WO2006/0057702; Presta, 2006, Adv. Drug Delivery Rev. 58:640-656を参照されたい。そのような修飾を利用して、免疫系の様々な反応を増進または抑制し、同時に診断および治療における有益作用を可能にする。Fc領域の改変としては、アミノ酸変化(置換、欠失および挿入)、グリコシル化または脱グリコシル、および複数のFcの付加が挙げられる。Fcの変化はまた、治療抗体の抗体半減期を改変することができ、半減期が長いほど、投与頻度は低くなり、利便性上昇と材料使用減少が同時に適う。Presta, 2005, J. Allergy Clin. Immunol .116 : 731 at 734-35を参照されたい。
【0097】
本発明の抗体はまた、標的細胞において補体依存性細胞傷害(CDC)または抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導する完全なエフェクター機能を提供するインタクトFcを備えた抗体、例えばアイソタイプIgG1の抗体を包含する。
【0098】
該抗体はまた、貯蔵の間の抗体安定性を改善する分子、またはインビボで抗体の半減期を増加させる分子にコンジュゲートされ得る(例えば、共有結合での連結)。半減期を増加させる分子の例は、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)およびポリエチレングリコール(PEG)である。抗体のアルブミン連結誘導体およびPEG化誘導体は、当該技術分野で周知の技術を利用して調製され得る。例えばChapman, 2002, Adv. Drug Deliv. Rev. 54:531-545; Anderson and Tomasi, 1988, J. Immunol. Methods 109:37-42; Suzuki et al., 1984, Biochim. Biophys. Acta 788:248-255;およびBrekke and Sandlie, 2003, Nature Rev. 2:52-62を参照されたい。
【0099】
本明細書で用いられる用語「超可変領域」は、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、配列アライメントによって定義される「相補性決定領域」または「CDR」由来のアミノ酸残基、例えば軽鎖可変ドメイン内の残基24~34(L1)、50~56(L2)および89~97(L3)、重鎖可変ドメイン内の31~35(H1)、50~65(H2)および95~102(H3)(Kabat et al., 1991, Sequences of proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md.参照)、ならびに/または構造的に定義された通り「超可変ループ」(HVL)由来のそれらの残基、例えば軽鎖可変ドメイン内の残基26~32(L1)、50~52(L2)および91~96(L3)、重鎖可変ドメイン内の26~32(H1)、53~55(H2)および96~101(H3)(Chothia and Leskl, 1987, J. Mol. Biol. 196:901-917参照)を含む。
【0100】
「フレームワーク」または「FR」残基または配列は、本明細書に定義されたCDR残基以外の可変ドメイン残基または配列である。
【0101】
特定の実施形態による本発明の抗体は、単離された抗体であり得る。「単離された」抗体は、自然環境の成分から同定され、分離および/または回収されたものである。自然環境の混入成分は、抗体の診断的および治療的使用を妨害する材料であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質を挙げることができる。幾つかの実施形態において、該抗体は、(1)ローリー法による測定で抗体の95重量%を超えるまで、最も好ましくは99重量%を超えるまで、(2)スピニングカップ配列決定装置(spinning cup sequenator)の使用によって、N-末端もしくは内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な度合いまで、または、(3)クーマシーブルー染色もしくは好ましくは銀染色を利用して、還元条件下もしくは非還元条件下でのSDS-PAGEによって均質になるまで、精製される。単離された抗体は、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないことから、組換え細胞内のインサイチュの抗体を包含する。しかし通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0102】
「単離された」核酸分子は、通常は抗体核酸の天然供給源の中で会合している少なくとも1種の混入核酸分子から同定および分離された核酸分子である。単離された核酸分子は、天然に見出される形態または配置以外である。それゆえ単離された核酸分子は、天然細胞内に存在する核酸分子と区別される。しかし単離された核酸分子は、例えば核酸分子が天然細胞のものと異なる染色体位置にあるような抗体を通常、発現する細胞に含まれる核酸分子を包含する。
【0103】
本明細書で用いられる用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を指し、即ち、該集団を含む個々の抗体は、わずかに存在し得る可能な天然由来の突然変異以外は同一である。モノクローナル抗体は、単一抗原部位に対して高特異性である。さらに、典型的には、異なる決定基(エピトープ)に対して異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の1つの決定基に対するものである。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特別な方法による抗体生成を必要とすると解釈すべきではない。例えば、本発明に従って用いられるモノクローナル抗体は、Kohler et al., 1975, Nature 256:495に初めて記載されたハイブリドーマ法によって作製することができ、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号参照)によって作製することができる。該「モノクローナル抗体」は、例えばClackson et al., 1991, Nature 352:624-628およびMarks et al., 1991, J. Mol. Biol. 222:581-597に記載された技術を利用してファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。本明細書におけるモノクローナル抗体は、具体的には「キメラ抗体」を包含する。
【0104】
本明細書で用いられる用語「免疫細胞」は、造血性起源の細胞、および免疫応答における役割を担う細胞を包含する。免疫細胞としては、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー細胞などのリンパ球、単球、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、好塩基球、および顆粒球などの骨髄細胞が挙げられる。
【0105】
本明細書で用いられる「イムノコンジュゲート」は、細菌毒素、細胞傷害性剤、または放射性毒素などの治療部分にコンジュゲートされた抗ヒトAPRIL抗体またはその断片を指す。毒素部分は、当該技術分野で利用可能な方法を利用して本発明の抗体にコンジュゲートされ得る。
【0106】
本明細書で用いられる配列の「変異体」または「変異体配列」は、1個または複数個のアミノ酸残基が開示の配列と異なるが親分子の生物活性を保持する配列を指す。本発明は、様々な配列によって明白に開示された抗体の変異体を包含する。VHドメインCDR1、CDR2およびCDR3配列では、幾つかの実施形態によれば、変異体配列は、CDR1、CDR2およびCDR3配列全体で6個までのアミノ酸置換、例えば1、2、3、4、5または6個のアミノ酸置換を含み得る。同様にVLドメインCDR1、CDR2およびCDR3配列では、幾つかの実施形態によれば、変異体配列は、CDR1、CDR2およびCDR3配列全体で6個までのアミノ酸置換、例えば1、2、3、4、5または6個のアミノ酸置換を含み得る。
【0107】
「保存的に修飾された変異体」または「保存的アミノ酸置換」は、当業者に知られるアミノ酸置換を指し、一般には得られた分子の生物活性を改変させずに作製され得る。一般に、ポリペプチドの非本質的領域における単一アミノ酸置換が、生物活性を実質的に改変しないことを、当業者は認識している(例えば、Watson, et al., Molecular Biology of the Gene, The Benjamin/Cummings Pub. Co., p.224 (4th Edition 1987)参照)。そのような例示的置換は、好ましくは先の表2に示されたものに従って作製される。
【0108】
本明細書で用いられる用語「約」は、当業者によって決定される特定の値の許容し得る誤差範囲内の値を指し、一部として値が測定または決定される方法、即ち測定システムの限界に依存する。例えば「約」は、当該技術分野での実践あたり1以内または1よりも大きい標準偏差を意味し得る。あるいは「約」または「本質的に~で構成される」は、20%までの範囲を意味し得る。さらに、特に生物学的系または工程に関して、該用語は、値の桁まで、または5倍までを意味し得る。特定の値が、本出願および特許明細書において提供されている場合、他に断りがなければ、「約」または「本質的に~で構成される」の意味は、特定の値の許容し得る誤差範囲内であると推測されなければならない。
【0109】
用語「複数の」は、1つまたは複数を意味すると理解されなければならない。「複数の」は、その用途の状況に応じて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10から選択される任意の適切な数を指し得る。特定の実施形態によれば、「複数の」は、「多数の」の意味を有し得る。「多数の」は、その用途の状況に応じて、2、3、4、5、6、7、8、9、10から選択される任意の適切な数を指し得る。
【0110】
「特異的に」結合するとは、リガンド/受容体、抗体/抗原、または他の結合対を参照する場合には、異種タンパク質集団および/または他の生物体における当該タンパク質、例えばAPRIL、の存在を決定する結合反応を示す。したがって設定された条件下では、明記されたリガンド/抗原は、特定の受容体/抗体に結合し、試料中に存在する他のタンパク質へ顕著な量では結合しない。
【0111】
動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、臓器、または生体液へ適用される「投与」、「治療」および「処置」は、動物、ヒト、対象、細胞、組織、臓器、または生体液への外因性の医薬用、治療用、診断用の薬剤または組成物の接触を指す。「投与」、「治療」および「処置」は、例えば治療法、薬物動態法、診断法、研究法および実験法を指し得る。細胞の処置は、細胞への試薬の接触、および細胞に接触している液体への試薬の接触を包含する。「投与」、「治療」および「処置」はまた、例えば細胞の、試薬による、診断薬による、結合組成物による、または別の細胞によるインビトロおよびエクスビボ処置を意味する。本発明の本明細書において、用語「インビトロ」および「エクスビボ」は、類似の意味を有し、互換的に用いられ得る。
【0112】
抗体DNAは、例えば相同性マウス配列の代わりにヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列で置換することによっても(米国特許第4,816,567号;Morrison, et al., 1984, Proc. Natl Acad. Sci. USA, 81:6851)、または非免疫グロブリン材料(例えば、タンパク質ドメイン)のコード配列の全てもしくは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合で連結することによっても、修飾され得る。典型的にはそのような非免疫グロブリン材料は、抗体の定常ドメインに取って代わり、または抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに取って代わり、抗原への特異性を有する1つの抗原結合部位と、異なる抗原への特異性を有する別の抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作製する。
【0113】
本発明の抗ヒトAPRIL抗体のアミノ酸配列変異体は、適切なヌクレオチド変化をコードDNAに導入することによって、またはペプチド合成によって調製される。そのような変異体としては、例えば抗APRIL抗体に関して示されたアミノ酸配列内の残基からの欠失、および/または該残基への挿入、および/または該残基の置換が挙げられる。最終的な構築物が所望の特性を有することを条件に、最終的構築物に到達するのに、欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせが行われる。アミノ酸変化は、グリコシル化部位の数または位置を変化させるなど、抗APRIL抗体の翻訳後工程を改変することもできる。
【0114】
突然変異誘発のための好ましい位置である抗APRIL抗体ペプチドの特定の残基または領域の有用な同定方法は、Cunningham and Wells, 1989, Science 244: 1081-1085に記載される通り、「アラニンスキャニング突然変異導入」と呼ばれる。この場合、1つの残基または標的残基群が同定され(例えば、Arg、Asp、His、Lys、およびGluなどの電荷残基)、中性または負電荷アミノ酸(最も好ましくはアラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられ、該アミノ酸とAPRIL抗原との相互作用に影響を及ぼす。その後、置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸残基が、さらなる変異体または別の変異体を置換部位においてまたは置換部位に対して導入することによって、純化される。したがってアミノ酸変異を導入する部位は、予め決めるが、突然変異の性質自体は、予め決める必要はない。例えば、所与の部位での突然変異の性能を分析するために、Alaスキャニングまたはランダム突然変異誘発を、標的コドンまたは領域で実施し、発現した抗APRIL抗体の変異体を、所望の活性についてスクリーニングする。
【0115】
通常、抗APRIL抗体のアミノ酸配列変異体は、重鎖または軽鎖いずれかの元の抗体アミノ酸配列と少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、98%または99%のアミノ酸配列類似性を有するアミノ酸配列を有する。この配列に関する類似性または相同性は、先に定義された通りである。
【0116】
本明細書において望ましいとして同定された特性を有する抗体は、インビトロでの生物活性または適切な結合親和性の上昇についてスクリーニングされ得る。hAPRIL.01Aと同じヒトAPRILエピトープに結合する抗体についてスクリーニングするために、Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow and David Lane(1988)に記載されたものなどの所定のクロスブロッキングアッセイを実施し得る。同じエピトープに結合する抗体は、そのようなアッセイにおいてクロスブロッキングする可能性があるが、クロスブロッキングは、オーバーラッピングエピトープまたは付近の非オーバーラッピングエピトープに結合する抗体の立体障害により生じ得るため、全てのクロスブロッキング抗体が、必ずしも正確に同じエピトープで結合するわけではない。
【0117】
あるいは、抗体が該当するエピトープに結合するか否かを決定するために、例えばChampe et al., 1995, J. Biol. Chem. 270:1388-1394に記載された、エピトープマッピングが実施され得る。Cunningham and Wells, 1989, Science 244: 1081-1085に記載された「アラニンスキャニング突然変異導入」または他の形態の、ヒトAPRIL中アミノ酸残基の点突然変異誘発を用いて、本発明の抗APRIL抗体の機能的エピトープを決定することもできる。
【0118】
抗体エピトープをマッピングする他の方法は、Slootstraら(Slootstra et al., 1996, Mol. Diversity 1: 87-96)およびTimmermanら(Timmerman et al., 2007, J. Mol. Recognit. 20: 283-299)によって記載された通り、クレジットカード形式のミニPEPSCANカードを用いてスクリーニングされ得る合成直鎖状およびCLIPSペプチドへの抗体の結合を試験することである。各ペプチドへの抗体の結合は、PEPSCANに基づく酵素免疫測定法(ELISA)で測定される。
【0119】
hAPRIL.01Aと同じエピトープに結合するさらなる抗体は、例えばエピトープへの結合についてAPRILに対して生じた抗体をスクリーニングすることによって、またはエピトープ配列を含むヒトAPRILの断片を含むペプチドで動物を免疫処理することによって、得ることができる。同じ機能的エピトープに結合する抗体は、類似のAPRIL結合、ならびにBCMAおよびTACI遮断活性などの類似の生物活性を呈すると予測され得、そのような活性は、抗体の機能的アッセイによって確認され得る。
【0120】
該抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA、およびIgEを含む免疫グロブリンの任意のクラスから選択され得る。好ましくは該抗体は、IgG抗体である。IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含むIgGの任意のアイソタイプを、用いることができる。IgGアイソタイプの変異体もまた、企図される。該抗体は、1つよりも多くのクラスまたはアイソタイプに由来する配列を含み得る。所望の生物活性を生成するのに必要となる定常ドメイン配列の最適化は、実施例に記載された生物アッセイにおいて抗体をスクリーニングすることよって即座に実現される。
【0121】
同様に、軽鎖のいずれかのクラスを、本明細書の組成物および方法で用いることができる。具体的には、カッパ、ラムダ、またはその変異体が、本発明の組成物および方法において有用である。
【0122】
本発明の抗体および抗体断片はまた、細胞傷害性剤などの細胞傷害性ペイロードまたは99Tc、90Y、111In、32P、14C、125I、3H、131I、11C、15O、13N、18F、35S、51Cr、57To、226Ra、60Co、59Fe、57Se、152Eu、67Cu、217Ci、211At、212Pb、47Sc、109Pd、234Th、および40K、157Gd、55Mn、52Trおよび56Feなどの放射性核種とコンジュゲートされ得る。そのような抗体コンジュゲートは、表面にターゲット(抗体の場合には抗原)を発現する細胞を選択的に標的にして、それを殺傷する免疫療法で用いられ得る。例示的な細胞傷害性剤としては、リシン、ビンカアルカロイド、メトトレキサート、シュードモナス・エキソトキシン、サポリン、ジフテリア毒素、シスプラチン、ドキソルビシン、アブリン毒素、ゲロニン、およびヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質が挙げられる。
【0123】
本発明の抗体および抗体断片はまた、希土類キレートなどのフルオロフォア、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、イソチオシアナート、フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアデヒド(o-phthaladehyde)、フルオレスカミン、152Eu、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェリン、ルミナル標識、イソルミナル標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識、シュウ酸エステル標識、エクオリン標識、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、ビオチン/アビジン、スピン標識、および安定したフリーラジカルを含む蛍光または化学発光標識とコンジュゲートされ得る。
【0124】
Hunter et al., 1962, Nature 144:945; David et al., 1974, Biochemistry 13:1014; Pain et al., 1981, J. Immunol. Meth. 40:219;および Nygren, J., 1982, Histochem. and Cytochem. 30:407に記載された方法を含む、本発明の抗体分子またはタンパク質分子を様々な部分にコンジュゲートするための当該技術分野で知られる任意の方法を用いることができる。抗体およびタンパク質をコンジュゲートする方法は、当該技術分野では従来通りで、周知である。
【0125】
抗体精製
組換え技術を利用する場合、該抗体は、細胞内のペリプラズム空間内で産生され得、または直接培地に分泌され得る。抗体が、最初のステップとして細胞内で産生される場合、宿主細胞断片または溶解した断片である微粒子片が、例えば遠心分離または限外濾過によって、除去される。Carter et al., 1992, Bio/Technology 10:163-167には、大腸菌のペリプラズム空間に分泌される抗体を単離する手順が記載される。手短に述べると、細胞ペーストを酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTAおよびフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)の存在下、約30分間にわたって解凍する。細胞残屑は、遠心分離によって除去することができる。抗体が培地に分泌される場合、そのような発現系からの上清を、一般には最初、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを利用して濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を前述のステップのいずれかにおいて含ませて、タンパク質分解を阻害することができ、抗生物質を含ませて、偶発的混入物の増殖を予防することができる。
【0126】
細胞から調製された抗体組成物は、例えばヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、およびアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製することができ、アフィニティークロマトグラフィーが好ましい精製技術である。アフィニティーリガンドとしてのプロテインAの適切さは、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFc領域の種およびアイソタイプに依存する。プロテインAを用いて、ヒトIgガンマ1、Igガンマ2、またはIgガンマ4重鎖に基づく抗体を精製することができる(Lindmark et al., 1983, J. Immunol. Meth. 62:1-13)。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプおよびヒトガンマ3に推奨される(Guss et al., 1986, EMBO J 5:1567-1575)。アフィニティーリガンドが付着したマトリックスは、最も多くはアガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。
【0127】
コントロールド・ポアガラス(controlled pore glass)またはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定したマトリックスは、アガロースで実行され得るよりも急速な流速および短い処理時間を可能にする。抗体が、CH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J. T. Baker、ニュージャージー州フィリップスバーグ所在)が、精製に有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿法、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(商標)でのクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、および硫安沈殿法などのタンパク質精製のための他の技術もまた、回収される抗体に応じて利用可能である。
【0128】
一実施形態において、レクチン基質(例えば、レクチンアフィニティーカラム)へ吸着させ、調製物からフコース含有糖タンパク質を除去し、それによりフコース不含糖タンパク質を濃縮することを利用して、糖タンパク質を精製することができる。
【0129】
医薬配合剤
本発明は、抗ヒトAPRIL抗体の医薬配合剤を含む。医薬組成物または滅菌組成物を調製するために、抗体、詳細には抗体またはその断片を医薬的に許容し得る担体または賦形剤と混和するが、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences and U.S. Pharmacopeia: National Formulary, Mack Publishing Company, Easton, PA (1984)を参照されたい。治療薬および診断薬の配合剤は、例えば凍結乾燥粉末、スラリー、水溶液または懸濁液の形態の、生理学的に許容し得る担体、賦形剤、または安定化剤と混合することによって調製され得る(例えば、Hardman, et al., 2001, Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, McGraw-Hill, New York, NY; Gennaro, 2000, Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott, Williams, and Wilkins, New York, NY; Avis, et al.(eds.), 1993, Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications, Marcel Dekker, NY; Lieberman, et al. (eds.), 1990, Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets, Marcel Dekker, NY; Lieberman, et al. (eds.), 1990, Pharmaceutical Dosage Forms: Disperse Systems, Marcel Dekker, NY; Weiner and Kotkoskie, 2000, Excipient Toxicity and Safety, Marcel Dekker, Inc., New York, NY参照)。
【0130】
単独で投与される、または通常の抗癌剤などの別の薬剤と併用で投与される、抗体組成物の毒性および治療有効性は、例えばLD50(母集団の50%に致命的となる用量)およびED50(母集団の50%に治療有効性となる用量)を決定するための、細胞培養物または実験動物での標準的医薬手順によって決定され得る。毒性作用と治療効果との用量比が、治療指数であり、それはLD50とED50の比率として表すことができる。これらの細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータは、ヒトでの使用のための投与量範囲を配合する際に用いられ得る。そのような化合物の投与量は、好ましくはほとんどまたは全く毒性を伴わずにED50を含む血中濃度の範囲内にある。該投与量は、用いられる投与剤型および利用される投与経路に応じてこの範囲内で変動し得る。
【0131】
適切な投与経路としては、筋肉内、静脈内または皮下投与などの非経口投与、および経口投与が挙げられる。本発明の医薬組成物中で用いられる、または本発明の方法を実践するために用いられる抗体の投与は、様々な従来法、例えば経口摂取、吸入、局所適用または皮膚、皮下、腹腔内、非経口、動脈内、または静脈内注射で実施され得る。一実施形態において、本発明の抗体は、静脈内に投与される。別の実施形態において、本発明の抗体は、皮下に投与される。
【0132】
あるいは全身的手法というよりむしろ局所において、例えば、多くの場合はデポまたは持続放出配合剤中で、作用部位への直接の抗体注射を介して、投与され得る。さらに、標的指向性薬物送達システム中で抗体を投与することができる。
【0133】
抗体、サイトカイン、および小分子の適切な用量を選択することにおけるガイダンスは、入手可能である(例えば、Wawrzynczak, 1996, Antibody Therapy, Bios Scientific Pub. Ltd, Oxfordshire, UK; Kresina (ed.), 1991, Monoclonal Antibodies, Cytokines and Arthritis, Marcel Dekker, New York, NY; Bach (ed.), 1993, Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases, Marcel Dekker, New York, NY; Baert, et al., 2003, New Engl. J. Med. 348:601-608; Milgrom, et al., 1999, New Engl . J. Med. 341:1966-1973; Slamon, et al., 2001, New Engl. J. Med. 344:783-792; Beniaminovitz , et al., 2000, New Engl. J. Med. 342:613-619; Ghosh, et al., 2003, New Engl. J. Med. 348:24-32; Lipsky, et al., 2000, New Engl. J. Med. 343:1594-1602参照)。
【0134】
適切な用量の決定は、例えば処置に影響を及ぼすことが当該技術分野で知られている、もしくは疑われる、または処置に影響を及ぼすことが予測されるパラメータまたは因子を利用して、臨床医によって行われる。一般に該用量は、最適容量よりも若干低い量で開始され、所望の、または最適な効果が任意の負の副作用と相対的に実現されるまで、その後、用量を少量の増分で増加させる。重要な診断尺度としては、例えば炎症の症状の尺度、または産生された炎症性サイトカインのレベルが挙げられる。
【0135】
好ましい投与プロトコルは、顕著で望ましくない副作用を回避する最大用量または投与頻度を含むものである。1週あたりの総用量は一般に、少なくとも0.05μg/kg体重、より一般には少なくとも0.2μg/kg、最も一般には少なくとも0.5μg/kg、典型的には少なくとも1μg/kg、より典型的には少なくとも10μg/kg、最も典型的には少なくとも100μg/kg、好ましくは少なくとも0.2mg/kg、より好ましくは少なくとも1.0mg/kg、最も好ましくは少なくとも2.0mg/kg、最適には少なくとも10mg/kg、より最適には少なくとも25mg/kg、最も最適には少なくとも50mg/kgである(例えば、Yang, et al., 2003, New Engl. J. Med. 349:427-434; Herold, et al., 2002, New Engl. J. Med. 346:1692-1698; Liu, et al., 1999, J. Neurol. Neurosurg. Psych. 67:451-456; Portielji, et al., 2003, Cancer Immunol. Immunother. 52:133-144参照)。小分子治療薬、例えばペプチド模倣薬、天然生成物、または有機化学物質の所望の用量は、モル/kg基準で抗体またはポリペプチドの場合とほぼ同量である。
【0136】
本明細書で用いられる「阻害する」または「処置する」または「処置」は、疾患に関連する症状の発症の延期、および/または前記疾患によって発症する、もしくは発症すると予測されるそのような症状の重症度の軽減を包含する。該用語はさらに、既存の症状の改善、さらなる症状の予防、およびそのような症状の根底にある原因の改善または予防を包含する。したがって該用語は、有益な結果が、疾患を有する脊椎動物対象に付与されたことを示す。
【0137】
治療目的での本発明の抗体は、治療有効量で投与される。本明細書で用いられる用語「治療有効量」または「有効量」は、細胞、組織もしくは対象に単独で投与された場合、またはさらなる治療薬と併用で投与された場合に処置される疾患または状態を予防または改善するのに有効となる、抗APRIL抗体またはその断片の量を指す。治療有効用量はさらに、症状の改善、例えば関連する医学的状態の処置、治癒、予防もしくは改善、またはそのような状態の処置、治癒、予防もしくは改善の速度上昇をもたらすのに十分な化合物量を指す。単独で投与される個々の有効成分に適用される場合、治療有効用量は、該成分のみを指す。併用物に適用される場合、治療有効用量は、併用で投与されるか、連続で投与されるか、または同時に投与されるにかかわらず、治療効果をもたらす有効成分の合わせた量を指す。治療薬の有効量は、症状を、典型的には少なくとも10%、通常は少なくとも20%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも40%、および最も好ましくは少なくとも50%軽減する。
【0138】
第二の治療薬との共投与または処置の方法は、当該技術分野で周知であり、例えばHardman, et al. (eds.), 2001, Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 10th ed., McGraw-Hill, New York, NY; Poole and Peterson (eds.), 2001, Pharmacotherapeutics for Advanced Practice : A Practical Approach, Lippincott, Williams & Wilkins, Phila., PA; Chabner and Longo (eds.), 2001, Cancer Chemotherapy and Biotherapy, Lippincott, Williams & Wilkins, Phila., PAを参照されたい。
【0139】
本発明の医薬組成物はまた、非限定的に細胞傷害性剤、化学療法剤、細胞分裂阻害剤、血管新生抑制剤、代謝拮抗剤、腫瘍標的指向剤、免疫刺激剤、免疫調整剤、または細胞傷害性剤に、細胞分裂阻害剤にもしくは他の毒性剤にコンジュゲートされた抗体を含む他の薬剤を含有し得る。該医薬組成物はまた、手術、化学療法および放射線照射などの他の治療モダリティーと共に用いられ得る。
【0140】
ここに、以下の非限定的実験を参照しながら、本発明をさらに例示および裏づけする。
【実施例】
【0141】
実験
実験1
抗APRILヒト化抗体の設計
CDRの移植
ヒトAPRILに結合する独特の抗体hAPRIL.01A(WO2010/100056)は、過去に同定されている。マウスhAPRIL.01A抗体を、CDR移植技術によってヒト化した(例えば、米国特許第5,225,539号およびWilliams, D.G. et al., 2010, Antibody Engineering, volume 1, Chapter 21参照)。最初、IgBLASTを用いてヒト生殖系列配列を同定する方策を設計した(Ye J. et al., 2013, Nucleic Acids Res. 41:W34-40)。hAPRIL.01A VHでは、ヒト生殖系列配列IGHV1-3*01(70.4%同一性)を、そしてhAPRIL.01A VLでは、ヒト生殖系列配列IGKV1-16*01(65.3%同一性)を同定した。
【0142】
次に、IMGTデータベース(公開201222-4:161905エントリー、2012年6月4日索引付け)において利用可能な全てのヒト成熟配列を含むデータベースを構築し(Lefranc, M.-P. et al., 1999, Nucleic Acid Res. 27:209-212)、90,401の個々の配列を同定した。これらの配列は、TBLASTN(2.2.26+)を用いて問合せて、hAPRIL.01A VHおよびVL配列(それぞれSEQ ID.3および4)に対する同一性が最も高かったテンプレート配列を同定した。80%以上の類似性スコアを示し、それぞれhAPRIL.01A VH CDR1、CDR2、CDR3(SEQ ID.5~7)およびVL CDR1、CDR2およびCDR3(SEQ ID.8~10)のものと類似のCDR長、好ましくは同一CDR長を示した3つのVHおよび7つのVL配列を選択した。
【0143】
重鎖では、GenBank(Benson, D. A. et al., 2013, Nucleic Acids Res. 41(D1):D36-42)アクセション番号AF022000、AB363149、およびAB063827によってコードされたフレームワークが、hAPRIL.01A VH CDRの線状移植(straight grafting)に選択され、それぞれ以下のcDNA構築物:SEQ ID.11、13、および15をもたらした。軽鎖では、GenBankアクセション番号AX375917、DD272023、AB363267、AJ241396、DI152527、およびDQ840975によってコードされたフレームワークが、hAPRIL.01A VL CDRの線状移植に選択され、それぞれ以下のcDNA構築物:SEQ ID.19、21、23、25、27および29をもたらした。
【0144】
さらなる重鎖配列を、TBLASTNの結果から得られた25の最良にマッチした配列(E値5e-46~9e-43)のアライメントからのコンセンサス配列に基づいて設計し、以下のcDNA構築物:SEQ ID 17をもたらした。
【0145】
フレームワーク残基のヒト化の構造的影響を測定するために、hAPRIL.01A抗体の相同性モデルを、WHATIFを用いて作製した(Krieger E. et al., 2003, Methods Biochem Anal. 44:509-23)。それぞれVHおよびVL鎖のテンプレート:2GKI(Kim Y.R. et al., 2006, J.Biol.Chem. 281: 15287-15295)および2AEQ(Venkatramani L. et al. 2006, J.Mol.Biol. 356: 651-663)を、Protein Databank(www.rcsb.org, release June 2012; Berman H.M. et al., 2000, Nucleic Acids Res. 28:235-242)を用い、BLASTPサーチ (Altschul, S.F. et al., 1990, J. Mol. Biol. 215:403-410)によって同定した。VHおよびVL鎖を、MUSTANGアライメント(Konagurthu A.S. et al., 2006, Proteins 64:559-574)を用いてFab断片として組み合わせ、2AEQテンプレートによって誘導した。ヒト化の影響を受け、ヒト化構築物の機能性に影響を及ぼし得る残基を選択するのに、hAPRIL.01Aの構築された相同性モデルを用い、選択された残基を置換すべきか否かを評価し、6番目のVLテンプレート(VL15)では、VL残基Y49およびY87をより小さなS49およびF87と置換することを決定した。
【0146】
シグナルペプチドの同定
NCBI IgBlast(BLASTN)(Ye J. et al., 2013, Nucleic Acids Res. 41(Web Server issue):W34-40)を用いて、マウスhAPRIL.01A VHおよびVLとマッチするヒト生殖系列レパトアを同定し、VHおよびVLに関する分泌リーダー:生殖系列IGHV1-3
*01(NCBIアクセション番号X62107)に基づくVH、および生殖系列IGKV16
*01(NCBIアクセション番号X62109)に基づくVLを選択するために用いた。以下の、SEQ ID NO:57によってコードされるVH分泌リーダー配列
およびSEQ ID NO:59によってコードされるVL分泌リーダー配列
が、全てのヒト化VHおよびVL構築物を発現するのに用いられた。
【0147】
セリン241(Kabat番号付け)がプロリンに変換されている、安定化Adair突然変異(Angal S. et al., 1993, Mol Immunol. 30: 105-108)を含むヒト化抗体のIgG4バージョンを、産生した。
【0148】
実験2
合成、サブクローニング、発現、結合
合成
ヒト化VHおよびVL構築物をコードするcDNA:SEQ ID 11、13、15、17、21、23、25、27、29を、OptGeneソフトウエア(バージョン2.0.6.0)を用いてコドン最適化し、 Baseclearによって化学合成した。次に、5’- HindIIIおよび3’-ApaI(VH)または3’-BsiWI(VL) 制限エンドヌクレアーゼ切断部位を利用して、配列をpUC57ベクター(BaceClear)にクローニングした。
【0149】
サブクローニング
ヒト化VH構築物を、EcoRIおよびHindIII制限エンドヌクレアーゼ切断部位を利用して、EcoRIおよびHindIII制限エンドヌクレアーゼ部位にクローニングされたヒトIgG4定常ドメイン(CH1~CH3、GenBankアクセション番号K01316)を含有するpcDNA3.1(+)ベクター(Invitrogen)にクローニングした。ヒト化VL構築物を、HindIIIおよびEcoRI制限エンドヌクレアーゼ切断部位を利用して、HindIIIおよびEcoRI制限エンドヌクレアーゼ部位にクローニングされたヒトCL(カッパ)ドメイン(GenBankアクセション番号J00241)を含有するpcDNA3.1(+)ベクター(Invitrogen)にクローニングした。構築物を、Subcloning efficient DH5αコンピーテントセル(Invitrogen)内で、製造業者の使用説明書に従って形質転換させた。プラスミドDNAを、Qiagen Plasmid Midi Kit(QIAGEN)を用いて、製造業者のプロトコルに従って単離した。該構築物の完全性を、DNAシーケンシング(Macrogen) によって確認した。
【0150】
発現および結合
VHおよびVL構築物をコードするプラスミドを、1:3比(総量4μg)で混合して、Lipofectamine 2000トランスフェクション試薬(Invitrogen)を用い、製造業者の使用説明書に従ってHEK293Tヒト胎児由来腎臓細胞(HEK293T/17、ATCC-CRL-11268)内へのトランスフェクションによって一過性に発現させた。細胞上清を5日後に回収し、酵素免疫測定法(ELISA)を利用して抗体の発現およびAPRILへの結合についてテストした。これらのELISAにおいて、全てのインキュベーションステップの後、PBST(0.01%Tween 20を含むPBS)での洗浄ステップを行った。Maxisorb96ウェルプレート(Nunc)を0.5μg/ml抗FLAG(Sigma)または抗IgG4(Jackson laboratories)でコーティングして、4℃で一晩インキュベートした。次に、抗FLAGコーティングされた96ウェルプレートを、FLAG標識ヒトAPRILと共に室温で1時間インキュベートした。次に、上清およびその希釈物を1時間インキュベートし、次にマウス抗ヒトIgG HRPコンジュゲート(Southern Biotechnology)と共に1時間インキュベートした。
【0151】
免疫反応をTMB Stabilized Chromagen(Invitrogen)100μlで視覚化した。反応を0.5M H2SO4 100μlで停止して、吸光度を450nmおよび620nmで測定した。
【0152】
実験3
精製および安定性
精製
先に記載されたヒト化抗体のサブセットを、さらなる分析のために選択した。再度、VHおよびVL構築物をコードするプラスミドを、1:3比(32μg)で混合して、Lipofectamine 2000トランスフェクション試薬(Invitrogen)を用いて、製造業者の使用説明書に従い、HEK293Tヒト胎児由来腎臓細胞(HEK293T)(8×106)内へのトランスフェクションによって一過性に発現させた。上清を回収して(10ml)、抗体を、MabSelect Sure Protein A樹脂を用い、製造業者の使用説明書(GE Healthcare)に従って精製した。Zeba脱塩カラム(Thermo Scientific)を用いて、緩衝液でPBSを交換した。精製抗体の濃度を、OD280(Nanodrop ND-1000)に基づいて測定した。APRILへの精製抗体の結合を、上記のAPRIL ELISAを利用して確定した。BCMAおよびTACI受容体によるヒト化抗体の遮断能力を、競合ELISAでテストした。これらのELISAにおいて、全てのインキュベーションステップの後、PBST(0.01%Tween 20を含むPBS)での洗浄ステップを行った。Maxisorb96ウェルプレート(Nunc)を0.5μg/ml Fc-BCMA(R&D Systems)またはFc-TACI(R&D Systems)でコーティングして、4℃で一晩インキュベートした。次に、ヒト化抗体およびその希釈物をインキュベートし、FLAG標識APRILと1時間プレミックスして、抗FLAG HRPコンジュゲート(Sigma)と共に1時間インキュベートした。免疫反応をTMB Stabilized Chromagen(Invitrogen)100μlで視覚化した。反応を0.5M H2SO4 100μlで停止して、吸光度を450nmおよび620nmで測定した。全ての結合シグナルまたは遮断の50%が観察された濃度を表す計算されたEC50およびIC50を、表5に表す。
【0153】
(表5)EC50値(APRILへの結合)。IC50(BCMA-Fcに対するAPRIL結合の遮断)。C4-hAPRIL.01Aを各ELISAにおける実験参照として用いた。n.c.は、阻害を示すが、IC50は、フィッティングが不適切であったため、計算することができなかった。
【0154】
TACI-Fcに対するAPRIL結合の遮断について、類似の遮断効果が観察された。
【0155】
驚くべきことに、VH11~VH14とVL10~VL14の組み合わせは、ナノモルまたはマイクロモルのEC50値を示さず、選択されたVHフレームワーク配列とVL15のフレームワーク配列との組み合わせのみが、機能的APRIL結合特性を有する抗体をもたらした。
【0156】
安定性
抗体の安定性に及ぼすヒト化の影響を測定するために、ヒト化抗体を一定範囲の温度に10分間暴露した。精製抗体をPBSで3.16μg/mlおよびその希釈物に希釈した。次に、これらの溶液を65℃または70℃に暴露し、抗体の加熱処理後の残存する結合を、先に記載された通りFLAG標識APRIL ELISAアッセイを利用して測定した(表6参照)。
【0157】
(表6)ELISAによって測定された、FLAG-APRILへの抗体(ヒト化)の残存結合。結合を、3種の濃度:3.16、1および0.316μg/mlで測定する。65℃または70℃での%結合率を、室温でのそれぞれの抗体(=100%)に対して、観察された%結合率として表す。
【0158】
実験4
復帰突然変異およびバーニア残基による結合、遮断および安定性の改善
復帰突然変異による結合および遮断の改善
配列および構造レベルの分析を、異なるVH/VL組の結合および遮断における違いに関して分子基準で理解するために実施した。ヒト化抗体の相同性モデルを、先に記載された通り作製した。VHおよびVLの両方について選択されたテンプレートが、3HC4であった(Jordan J.L. et al., 2009, Proteins 77: 832-841)。作製されたモデルの注意深い分析に基づいて、本発明の発明者らは、選択されたVH鎖中の残基S72が、CDR2ループの方向づけに重要であると推測した。この推測を検討するために、突然変異R72SをVH14に導入して、SEQ ID 31のヌクレオチド配列によってコードされる VH 14_1(SEQ ID 32)を得た。抗体14_1.15を、先に記載された通り結合および遮断についてテストした。表7に表される通り、抗体14_1.15の結合および遮断が、表5に示された抗体14.15の結合に比較して改善されている。
【0159】
(表7)抗体14_1.15による、APRILへの結合およびBCMA-Fcに対するAPRIL結合の遮断。hAPRIL.01AおよびC4-hAPRIL.01Aを、各ELISAにおける実験参照として用いた。
【0160】
TACI-Fcに対するAPRIL結合の遮断については、類似したIC50値が得られた。
【0161】
バーニア残基
配列および構造レベルについての分析を実施して、抗体14_1.15の結合および遮断をさらに改善した。このhAPRIL.01A類似体の相同性モデルを、先に記載された通り作製した。VH鎖に選択されたテンプレートは、2GKIであり、VL鎖では4GMTであり(Lee P.S. et al., 2012, PNAS 109: 17040-17045)、それをテンプレート2AEQにより誘導されたFab断片として組み合わせた。
【0162】
CDRに近接した残基は、ループコンフォメーションに影響を及ぼし得るため、詳細に試験した。この分析において、本発明者らは、複数の潜在的に関連するバーニア残基を同定した(Foote J. et al., 1992, J. Mol. Biol. 224:487-499)。関連性を評価するために、それらをマウスアミノ酸で置換した。
【0163】
突然変異M70Iの導入によりVH14_1C(SEQ ID 33、34)が得られ、突然変異T74KはVH14_1D(SEQ ID 35、36)内に存在し、突然変異Q1EはVH14_1E(SEQ ID 37、38)をもたらした。R67KとV68Aの突然変異の組み合わせは、VH14_1G(SEQ ID 39、40)をもたらした。抗体を、先に記載された通り、結合、遮断および安定性についてテストした。表8に表された通り、意外にも結合および遮断は、因子2~3で改善される。特に抗体VH14_1G.VL15内に導入された突然変異は、驚くべきことに相当な改善を示す。
【0164】
(表8)抗体14_1.15およびバーニアゾーン突然変異体の結合および遮断。hAPRIL.01Aを各ELISAにおける実験参照として用いた。
【0165】
加えて、置換されたヒト化抗体の安定性は、実施例3に記載された熱安定性試験を利用して測定すると、改善されていた(表9参照)。
【0166】
(表9)ELISAによって測定された、FLAG-APRILへの抗体(ヒト化)の残存結合。結合を、3種の濃度:3.16、1および0.316μg/mlで測定する。65℃または70℃での%結合率を、室温でのそれぞれの抗体(=100%)に対して、観察された%結合率として表す。
【0167】
実験5
14_1G.15はインビボ阻害により有効であることを示す
APRIL機能に及ぼすAPRIL類似抗体のインビボ遮断効果を実証するために、本発明者らは、マウスにおけるNP-Ficoll誘導性体液性応答を遮断する該抗体の能力を検査した。用いられたマウスは、8~10週齢APRILトランスジェニック(TG)マウスおよび野生型(WT)同腹仔で、両者ともC57BL/6バックグランドであった。APRILトランスジェニックマウスは、トランスジーン発現を成熟胸腺細胞および末梢Tリンパ球に指示するLck遠位プロモーターの下で、ヒトAPRILを発現する(Stein et al., 2002, J Clin Invest 109, 1587-98)。マウスは、Academic Medical Centerの動物施設で飼育され、実験は、施設内倫理委員会によって認可された。マウスを複数の群に分け、以下の通り処置した:WTマウスをPBS(200μl)で処置し、APRILトランスジェニックマウスの3群を以下の分子で処置した:hAPRIL.01Aもしくは14_1G.15(-1日目および3日目に200μl PBS中で200μg/マウス)またはPBS。0日目にマウスをNP-Ficollで免疫処理した(0日目に免疫原250μgを100μl i.p.)。-1、3、7、10日目に、血液を尾静脈から採取した。抗(4-ヒドロキシニトロフェナセチル)(NP)特異性抗体(IgM、IgGおよびIgAa/2)を、過去に記載された通り希釈された血清を用いてELISAによりアッセイした(Hardenberg et al., Immunol Cell Biol, 86(6): 530-4, (2008); Guadagnoli et al., 2011, Blood 117 (25): 6856-65)。手短に述べると、96ウェルELISAプレート(Greiner)に、炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.6)中の5μg/ml NP-BSA(Biosearch Technologies)を4℃で一晩コーティングした。ウェルを1%BSAにより37℃で1時間遮断し、希釈された血清と共に室温で2時間インキュベートした。HRPコンジュゲートアイソタイプ特異性抗体(Southern Biotechから入手したヤギ抗マウスIgG、IgAおよびIgM)を、顕在化抗体(revealing antibodies)として用いた。希釈物は全て、PBS/BSA 1%/Tween20 0.05%中で作製した。
図1から明白な通り、hAPRIL.01Aおよび14_1G.15は両者とも、インビボでT細胞非依存性のB細胞応答を阻害した。hAPRIL.01Aは、この応答を、14_1G.15より低い有効性で阻害した。PBS、およびアイソタイプ適合対照としてのマウスIgG1は、IgA、IgMおよびIgG抗NP応答に影響を及ぼさなかった。
【配列表】