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7060737インバータ装置およびインバータ装置の制御方法ならびにビレットヒーター
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  • -インバータ装置およびインバータ装置の制御方法ならびにビレットヒーター 図1
  • -インバータ装置およびインバータ装置の制御方法ならびにビレットヒーター 図2
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  • -インバータ装置およびインバータ装置の制御方法ならびにビレットヒーター 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】インバータ装置およびインバータ装置の制御方法ならびにビレットヒーター
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220419BHJP
【FI】
H02M7/48 A
H02M7/48 E
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021034070
(22)【出願日】2021-03-04
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000219004
【氏名又は名称】島田理化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087000
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】石間 勉
(72)【発明者】
【氏名】浜田 深造
(72)【発明者】
【氏名】守上 浩市
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-266601(JP,A)
【文献】特開2004-171931(JP,A)
【文献】国際公開第2020/71081(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列共振負荷に接続して用いるインバータ装置において、
並列共振負荷への出力電圧として予め設定されている基準周波数を記憶する基準周波数記憶手段と、
前記並列共振負荷へ出力される周波数を比較周波数として取得する比較周波数取得手段と、
前記基準周波数記憶手段に記憶した基準周波数と前記比較周波数取得手段が取得した比較周波数との比に基づいて補正係数を取得する補正係数取得手段と、
前記補正係数取得手段が取得した補正係数と前記並列共振負荷への出力電圧として予め設定された設定出力電圧とを乗算する演算を行う演算手段と、
前記演算手段による演算結果と前記並列共振負荷への出力電圧とを比較して、前記演算結果と前記並列共振負荷への出力電圧とが同じ値になるように制御する制御手段と
を有することを特徴とするインバータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインバータ装置において、
前記補正係数取得手段は、補正係数として
基準周波数/比較周波数
を取得する
ことを特徴とするインバータ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のインバータ装置において、
前記補正係数取得手段は、補正係数として
(基準周波数/比較周波数)1.25
を取得する
ことを特徴とするインバータ装置。
【請求項4】
並列共振負荷に接続して用いるインバータ装置において、
並列共振負荷への出力電圧として予め設定されている基準周波数を記憶する基準周波数記憶手段と、
前記並列共振負荷へ出力される周波数を比較周波数として取得する比較周波数取得手段と、
前記基準周波数記憶手段に記憶した基準周波数と前記比較周波数取得手段が取得した比較周波数との比に基づいて補正係数を取得する補正係数取得手段と、
前記補正係数取得手段が取得した補正係数と前記並列共振負荷への出力電圧とを乗算する演算を行う演算手段と、
前記演算手段による演算結果と前記並列共振負荷への出力電圧として予め設定された設定出力電圧とを比較して、前記演算結果と前記設定出力電圧とが同じ値になるように制御する制御手段と
を有することを特徴とするインバータ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のインバータ装置において、
前記補正係数取得手段は、補正係数として
比較周波数/基準周波数
を取得する
ことを特徴とするインバータ装置。
【請求項6】
請求項4に記載のインバータ装置において、
前記補正係数取得手段は、補正係数として
(比較周波数/基準周波数)1.25
を取得する
ことを特徴とするインバータ装置。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6のいずれか1項に記載のインバータ装置において、
前記比較周波数取得手段は、予め設定された時間間隔で比較周波数を取得する
ことを特徴とするインバータ装置。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6または7のいずれか1項に記載のインバータ装置において、
前記並列共振負荷を構成する誘導コイルに投入される負荷は、前記誘導コイルに対して連続して移動する負荷である
ことを特徴とするインバータ装置。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7または8のいずれか1項に記載のインバータ装置において、
前記並列共振負荷における誘導コイルは、誘導加熱用の加熱コイルである
ことを特徴とするインバータ装置。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7または8のいずれか1項に記載のインバータ装置において、
前記並列共振負荷における誘導コイルは、非接触給電用共振負荷における非接触給電用送電回路の非接触給電用送電コイルである
ことを特徴とするインバータ装置。
【請求項11】
並列共振負荷に接続して用いるインバータ装置の制御方法において、
並列共振負荷への出力電圧として予め設定されている基準周波数を記憶し、
前記並列共振負荷へ出力される周波数を比較周波数として取得し、
記憶した基準周波数と取得した比較周波数との比に基づいて補正係数を取得し、
取得した補正係数と前記並列共振負荷への出力電圧として予め設定された設定出力電圧とを乗算する演算を行い、
前記演算の演算結果と前記並列共振負荷への出力電圧とを比較して、前記演算結果と前記並列共振負荷への出力電圧とが同じ値になるように制御する
ことを特徴とするインバータ装置の制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載のインバータ装置の制御方法において、
前記補正係数として
基準周波数/比較周波数
を取得する
ことを特徴とするインバータ装置の制御方法。
【請求項13】
請求項11に記載のインバータ装置の制御方法において、
前記補正係数として
(基準周波数/比較周波数)1.25
を取得する
ことを特徴とするインバータ装置の制御方法。
【請求項14】
並列共振負荷に接続して用いるインバータ装置の制御方法において、
並列共振負荷への出力電圧として予め設定されている基準周波数を記憶し、
前記並列共振負荷へ出力される周波数を比較周波数として取得し、
記憶した基準周波数と取得した比較周波数との比に基づいて補正係数を取得し、
取得した補正係数と前記並列共振負荷への出力電圧とを乗算する演算を行い、
前記演算の演算結果と前記並列共振負荷への出力電圧として予め設定された設定出力電圧とを比較して、前記演算結果と前記設定出力電圧とが同じ値になるように制御する
ことを特徴とするインバータ装置の制御方法。
【請求項15】
請求項14に記載のインバータ装置の制御方法において、
前記補正係数として
比較周波数/基準周波数
を取得する
ことを特徴とするインバータ装置の制御方法。
【請求項16】
請求項14に記載のインバータ装置の制御方法において、
前記補正係数として
(比較周波数/基準周波数)1.25
を取得する
ことを特徴とするインバータ装置の制御方法。
【請求項17】
請求項11、12、13、14、15または16のいずれか1項に記載のインバータ装置の制御方法において、
予め設定された時間間隔で比較周波数を取得する
ことを特徴とするインバータ装置の制御方法。
【請求項18】
請求項11、12、13、14、15、16または17のいずれか1項に記載のインバータ装置の制御方法において、
前記並列共振負荷を構成する誘導コイルに投入される負荷は、前記誘導コイルに対して連続して移動する負荷である
ことを特徴とするインバータ装置の制御方法。
【請求項19】
請求項11、12、13、14、15、16、17または18のいずれか1項に記載のインバータ装置の制御方法において、
前記並列共振負荷における誘導コイルは、誘導加熱用の加熱コイルである
ことを特徴とするインバータ装置の制御方法。
【請求項20】
請求項11、12、13、14、15、16、17または18のいずれか1項に記載のインバータ装置の制御方法において、
前記並列共振負荷における誘導コイルは、非接触給電用共振負荷における非接触給電用送電回路の非接触給電用送電コイルである
ことを特徴とするインバータ装置の制御方法。
【請求項21】
インバータ装置を備えビレットを加熱するビレットヒーターにおいて、
インバータ装置として、請求項1、2、3、4、5、6または7のいずれか1項に記載のインバータ装置を用いた
ことを特徴とするビレットヒーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ装置およびインバータ装置の制御方法ならびにビレットヒーターに関する。さらに詳細には、本発明は、並列共振負荷に接続して用いるインバータ装置およびインバータ装置の制御方法ならびにそれらを用いたビレットヒーターに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、並列共振負荷に接続する電源装置として、例えば、インバータ装置が知られている。
【0003】
なお、本明細書ならびに本特許請求の範囲においては、並列共振負荷に接続するインバータ装置を「並列共振形インバータ装置」と適宜に称する。
【0004】
また、並列共振形インバータ装置に接続される並列共振負荷としては、例えば、誘導加熱用の加熱コイル(誘導コイル)と共振コンデンサとを並列接続して構成される並列共振回路である誘導加熱回路などが挙げられる。
【0005】
また、並列共振形インバータ装置に接続される並列共振負荷には、非接触給電用送電回路および非接触給電用受電回路からなる共振負荷たる非接触給電用共振負荷も含まれる。
【0006】
ここで、一般に、電磁誘導方式による非接触給電用送電回路は、直列共振回路方式あるいは並列共振回路方式などにより構成されており、並列共振回路方式により構成された非接触給電用送電回路を備えた並列共振回路たる非接触給電用共振負荷に対して、電源装置として並列共振形インバータ装置が接続されるものである。
【0007】
一般的に、こうした並列共振形インバータ装置は、交流(AC)電源から供給される交流電力をコンバータ部で直流(DC)電力に変換し、その後に、インバータ部で直流電力を交流電力に変換して、当該並列共振形インバータ装置に接続された並列共振負荷に出力するものである。
【0008】
なお、交流電源としては、例えば、商用交流電源を用いることができ、その場合には、並列共振形インバータ装置は、商用交流電圧を高周波交流電圧に変換して並列共振負荷へ出力して供給する。
【0009】
そして、この並列共振形インバータ装置においては、並列共振負荷へ出力する高周波交流電力の周波数(出力周波数)を共振周波数とすることで、出力インピーダンスが純抵抗に近くなるため出力力率が1に近くなり、並列共振負荷へ出力する高周波交流電力(出力電力)の電流(出力電流)値と電圧(出力電圧)値ならびに伝送損失を低くすることができることが従来より知られている。
【0010】
こうした構成の並列共振形インバータ装置においては、従来より出力電圧値を一定に制御する方法が用いられている。
【0011】
ここで、図1には、出力電圧値を一定に制御するとともに並列共振負荷に接続された従来の並列共振形インバータ装置の全体の構成をあらわす構成説明図が示されている。
【0012】
なお、この図1に示す並列共振形インバータ装置は、交流電源として商用交流電源を用いた例を示している。
【0013】
図1に示すように、並列共振形インバータ装置100は、商用交流電源102から供給される商用交流電圧を所望の電圧の高周波交流電圧に変換して、誘導加熱回路などのような並列共振負荷200へ出力して供給するものである。
【0014】
ここで、並列共振負荷200において、符号200aは誘導コイルであり、符号200bは抵抗であり、符号200cはキャパシタである。
【0015】
こうした並列共振形インバータ装置100は、商用交流電源102から供給される交流電圧を入力して直流電圧に変換して出力するコンバータ回路を有するコンバータ部104と、コンバータ部104から出力された直流電圧を入力して高周波交流電圧に逆変換して出力するインバータ回路を有するインバータ部106と、インバータ部106の出力段に設けられてインバータ部106から出力される出力電圧Vを検出する電圧検出トランス108と、電圧検出トランス108により検出された出力電圧Vと出力電圧設定信号により設定される設定値(設定電圧)とに基づいてコンバータ部104が変換する直流電圧をフィードバック制御する制御部110とを有して構成されている。
【0016】
ここで、制御部110は、電圧検出トランス108からの出力(出力電圧V)を検波する検波回路110aと、検波回路110aからの出力(出力電圧V)を入力する反転入力端子と出力電圧設定信号により設定される設定電圧を入力する非反転入力端子とを備えて入力した両者の電圧差を増幅した電圧を出力する誤差アンプ110bと、誤差アンプ110bからの出力を入力して出力電圧Vが設定電圧と同じ値になるようにコンバータ部104から出力される直流電圧をフィードバック制御する制御信号を出力する出力電圧制御回路110cとを有して構成されている。
【0017】
なお、コンバータ部104のコンバータ回路は、例えば、サイリスタ整流回路やチョッパ回路などにより構成されている。
【0018】
こうしたコンバータ部104は、商用交流電源102から交流電圧を供給されると、制御部110から出力された制御信号に応じて商用交流電圧を直流電圧に変換する制御を行う。
【0019】
また、インバータ部106は、例えば、トランジスタにより構成されるインバータ回路を備えている。
【0020】
こうしたインバータ部106は、コンバータ部104から出力された直流電圧を入力して、入力した直流電圧をトランジスタのON(オン)/OFF(オフ)のスイッチング動作により高周波交流電圧に逆変換して出力する制御を行う。
【0021】
インバータ部106の出力段に設けられた電圧検出トランス108は、インバータ部106から出力される出力電圧Vを検出して、その検出結果を示す出力電圧Vを制御部110の検波回路110aへ出力する。
【0022】
以上の構成において、並列共振形インバータ装置100においては、インバータ部106の出力電圧Vを電圧検出トランス108により検出し、検出した出力電圧Vを制御部110の検波回路110aを通して検波してから誤差アンプ110bの反転入力端子に入力する。
【0023】
また、誤差アンプ110bの非反転入力端子には、出力電圧設定信号により設定される設定電圧が入力される。
【0024】
ここで、誤差アンプ110bは、入力された出力電圧Vと設定電圧とを比較して、両者の電圧差を増幅した電圧を出力電圧制御回路110cへ入力する。
【0025】
そして、出力電圧制御回路110cは、出力電圧Vと設定電圧とが同じ値になるようにコンバータ部104から出力される直流電圧を制御する制御信号を出力する。
【0026】
こうして出力電圧制御回路110cから出力された制御御信号はコンバータ部104へ入力されて、当該制御信号によりコンバータ部104から出力される直流電圧が可変制御され、その結果、インバータ部106の出力電圧Vが一定の値、即ち、設定電圧と一致する電圧値となるようにフィードバック制御される。
【0027】
なお、図1に示す並列共振形インバータ装置100は、出力電圧制御回路110cから出力された制御信号をコンバータ部104へ入力して、コンバータ部104から出力される直流電圧を可変制御するようにしたが、図2に示す並列共振形インバータ装置100’のように、出力電圧制御回路110cから出力された制御信号をインバータ部106へ入力して、制御信号により直接にインバータ部106をフィードバック制御することによって、インバータ部106の出力電圧Vが一定の値、即ち、設定電圧と一致する電圧値となるように制御してもよい。
【0028】
ところで、上記において説明した並列共振形インバータ装置100、100’は、伝送出力(伝送電流、伝送電圧、伝送電力)ならびに伝送損失を低くすることができる利点があるが、上記した出力電圧Vを一定にする制御では、例えば、並列共振負荷200を構成する誘導コイル200aの上や中などに投入される負荷(ワーク)の数が増減した際などに、負荷一つ当たりの投入電力たる負荷投入電力(ワーク投入電力)が変化してしまうため、この変化に起因する不具合が発生するという問題点があった。
【0029】
例えば、複数のコイルを直列接続して各コイルの上や中などにそれぞれ負荷が投入される形状の多連巻きコイルによる誘導コイル200aや、一つのコイルの上や中などに複数の負荷が投入される形状の誘導コイル200aなどにおいて、誘導コイル200aの上や中などに投入される負荷数が増減した際などには、上記した出力電圧Vを一定にする制御を行った場合に誘導コイル200aに流れる誘導電流が変化してしまい、負荷一つ当たりのワーク投入電力が変化することになって、以下に説明するような不具合が発生するという問題点を生ずるものであった。
【0030】
具体的には、並列共振回路200が誘導加熱回路である場合に、誘導コイル200aとして上記した多連巻きコイルを使用した際には、誘導コイル200aに投入する負荷の数が全負荷投入時に比べて減少すると一個当たりの負荷投入電力が低下して、加熱温度が低下していくという不具合が発生していた。
【0031】
例えば、図3(a)(b)(c)に示すように、3個のコイル200a-1、200a-2、200a-3を直列接続して、各コイル200a-1、200a-2、200a-3の上や中などに、それぞれ負荷300a、300b、300cが投入可能な形状の多連巻きコイルを誘導コイル200aとして用いた並列共振回路200たる誘導加熱回路について説明する。
【0032】
この誘導加熱回路においては、図3(a)に示すように、各コイル200a-1、200a-2、200a-3にそれぞれ負荷300a、300b、300cを投入した全負荷投入時には、予め設定した加熱温度により負荷300a、300b、300cを全て加熱することができる(全数加熱)。
【0033】
しかしながら、図3(b)に示すように、コイル200a-1、200a-2にはそれぞれ負荷300a、300bを投入するが、コイル200a-3には負荷を投入しない場合には、全負荷投入時に比べて誘導コイル200aに投入される負荷数が少なくなり、一個当たりの負荷投入電力が低下して加熱温度が低下するものであった(負荷温度低下)。
【0034】
さらに、図3(c)に示すように、コイル200a-1には負荷300aを投入するが、コイル200a-2、200a-3には負荷を投入しない場合には、全負荷投入時に比べて誘導コイル200aに投入される負荷数が一層少なくなり、一個当たりの負荷投入電力がさらに低下することになって、加熱温度がさらに低下するものであった(負荷温度さらに低下)。
【0035】
また、並列共振回路200が誘導加熱回路である場合に、例えば、図4に示すように、一つのコイルの上や中などに複数の負荷400a、400b、400c、400dが投入可能な形状の誘導コイル200aを使用して誘導加熱する際にも、誘導コイル200aに投入する負荷数が少なくなると一個当たりの負荷投入電力が低下して、加熱温度が低下するものであった。
【0036】
あるいは、図5に示すように、並列共振回路200がビレットヒーターの誘導加熱回路である場合に、出力電圧Vを一定にする制御によれば、ビレット500を誘導コイル200aの上や中などに搬送して誘導加熱するスタート時には、誘導コイル200a内に負荷が無い状態でビレット500が挿入されて加熱されはじめるので、誘導コイル200a内の全域にわたってビレット500が挿入されて誘導コイル200a内に全負荷が入るまでは負荷加熱電力が減少することになって、誘導コイル200a内の全域にわたってビレット500が存在する連続搬送時に比較して加熱温度が低下するものであった。
【0037】
このため、誘導コイル200a内に最初に挿入する誘導コイル200aの長さ分のビレット500が、所謂、捨て材料となってしまうという問題点もあった。
【0038】
また、上記した並列共振形インバータ装置100、100’において、並列共振回路200が非接触給電用共振負荷である場合には、非接触給電用共振負荷の非接触給電用受電回路における受電側コイル負荷数が変化すると磁界強度が変化するため、出力電圧Vを一定にする制御をした場合には受電側コイル負荷数の変化に伴う磁界強度の変化に対応することができずに不具合を生ずるという問題点があった。
【0039】
即ち、上記において縷々説明したように、従来の並列共振形インバータ装置による出力電圧Vを一定にする制御では、並列共振形インバータ装置に接続される並列共振負荷の機能が、並列共振負荷に投入される負荷数の増減などにより影響を受けるという不具合や問題点があった。
【0040】
なお、本願出願人が特許出願のときに知っている先行技術は、文献公知発明に係る発明ではないため、本願明細書に記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0041】
本発明は、上記したような従来の技術における種々の不具合や問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、並列共振負荷に接続して用いるインバータ装置に接続される並列共振負荷の機能が、並列共振負荷に投入される負荷数の増減などにより影響を受けることのないようにしたインバータ装置およびインバータ装置の制御方法ならびにビレットヒーターを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0042】
上記目的を達成するために、本発明は、並列共振負荷に接続して用いるインバータ装置の出力の周波数として予め設定された基準となる周波数(基準周波数)と当該インバータ装置の出力の周波数(比較周波数)との比に基づいて、当該インバータ装置の出力を制御(フィードバック制御)することにより、当該インバータ装置の出力を補正するようにしたものである。
【0043】
従って、本発明によれば、並列共振負荷に投入される負荷数が増減などしても、当該負荷数の増減などに応じて変化する比較周波数に応じて、並列共振負荷へのインバータ装置の出力が補正されるので、当該インバータ装置に接続される並列共振負荷の機能が当該負荷数の増減などにより影響を受けることがない。
【0044】
即ち、本発明によるインバータ装置は、並列共振負荷に接続して用いるインバータ装置において、並列共振負荷への出力電圧として予め設定されている基準周波数を記憶する基準周波数記憶手段と、上記並列共振負荷へ出力される周波数を比較周波数として取得する比較周波数取得手段と、上記基準周波数記憶手段に記憶した基準周波数と上記比較周波数取得手段が取得した比較周波数との比に基づいて補正係数を取得する補正係数取得手段と、上記補正係数取得手段が取得した補正係数と上記並列共振負荷への出力電圧として予め設定された設定出力電圧とを乗算する演算を行う演算手段と、上記演算手段による演算結果と上記並列共振負荷への出力電圧とを比較して、上記演算結果と上記並列共振負荷への出力電圧とが同じ値になるように制御する制御手段とを有するようにしたものである。
【0045】
また、本発明によるインバータ装置は、上記した本発明によるインバータ装置において、上記補正係数取得手段は、補正係数として「基準周波数/比較周波数」を取得するようにしたものである。
【0046】
また、本発明によるインバータ装置は、上記した本発明によるインバータ装置において、上記補正係数取得手段は、補正係数として「(基準周波数/比較周波数)1.25」を取得するようにしたものである。
【0047】
また、本発明によるインバータ装置は、並列共振負荷に接続して用いるインバータ装置において、並列共振負荷への出力電圧として予め設定されている基準周波数を記憶する基準周波数記憶手段と、上記並列共振負荷へ出力される周波数を比較周波数として取得する比較周波数取得手段と、上記基準周波数記憶手段に記憶した基準周波数と上記比較周波数取得手段が取得した比較周波数との比に基づいて補正係数を取得する補正係数取得手段と、上記補正係数取得手段が取得した補正係数と上記並列共振負荷への出力電圧とを乗算する演算を行う演算手段と、上記演算手段による演算結果と上記並列共振負荷への出力電圧として予め設定された設定出力電圧とを比較して、上記演算結果と上記設定出力電圧とが同じ値になるように制御する制御手段とを有するようにしたものである。
【0048】
また、本発明によるインバータ装置は、上記した本発明によるインバータ装置において、上記補正係数取得手段は、補正係数として「比較周波数/基準周波数」を取得するようにしたものである。
【0049】
また、本発明によるインバータ装置は、上記した本発明によるインバータ装置において、上記補正係数取得手段は、補正係数として「(比較周波数/基準周波数)1.25」を取得するようにしたものである。
【0050】
また、本発明によるインバータ装置は、上記した本発明によるインバータ装置において、上記比較周波数取得手段は、予め設定された時間間隔で比較周波数を取得するようにしたものである。
【0051】
また、本発明によるインバータ装置は、上記した本発明によるインバータ装置において、上記並列共振負荷を構成する誘導コイルに投入される負荷は、上記誘導コイルに対して連続して移動する負荷であるようにしたものである。
【0052】
また、本発明によるインバータ装置は、上記した本発明によるインバータ装置において、上記並列共振負荷における誘導コイルは、誘導加熱用の加熱コイルであるようにしたものである。
【0053】
また、本発明によるインバータ装置は、上記した本発明によるインバータ装置において、上記並列共振負荷における誘導コイルは、非接触給電用共振負荷における非接触給電用送電回路の非接触給電用送電コイルであるようにしたものである。
【0054】
また、本発明によるインバータ装置の制御方法は、並列共振負荷に接続して用いるインバータ装置の制御方法において、並列共振負荷への出力電圧として予め設定されている基準周波数を記憶し、上記並列共振負荷へ出力される周波数を比較周波数として取得し、記憶した基準周波数と取得した比較周波数との比に基づいて補正係数を取得し、取得した補正係数と上記並列共振負荷への出力電圧として予め設定された設定出力電圧とを乗算する演算を行い、上記演算の演算結果と上記並列共振負荷への出力電圧とを比較して、上記演算結果と上記並列共振負荷への出力電圧とが同じ値になるように制御するようにしたものである。
【0055】
また、本発明によるインバータ装置の制御方法は、上記した本発明によるインバータ装置の制御方法において、上記補正係数として「基準周波数/比較周波数」を取得するようにしたものである。
【0056】
また、本発明によるインバータ装置の制御方法は、上記した本発明によるインバータ装置の制御方法において、上記補正係数として「(基準周波数/比較周波数)1.25」を取得するようにしたものである。
【0057】
また、本発明によるインバータ装置の制御方法は、並列共振負荷に接続して用いるインバータ装置の制御方法において、並列共振負荷への出力電圧として予め設定されている基準周波数を記憶し、上記並列共振負荷へ出力される周波数を比較周波数として取得し、記憶した基準周波数と取得した比較周波数との比に基づいて補正係数を取得し、取得した補正係数と上記並列共振負荷への出力電圧とを乗算する演算を行い、上記演算の演算結果と上記並列共振負荷への出力電圧として予め設定された設定出力電圧とを比較して、上記演算結果と上記設定出力電圧とが同じ値になるように制御するようにしたものである。
【0058】
また、本発明によるインバータ装置の制御方法は、上記した本発明によるインバータ装置の制御方法において、上記補正係数として「比較周波数/基準周波数」を取得するようにしたものである。
【0059】
また、本発明によるインバータ装置の制御方法は、上記した本発明によるインバータ装置の制御方法において、上記補正係数として「(比較周波数/基準周波数)1.25」を取得するようにしたものである。
【0060】
また、本発明によるインバータ装置の制御方法は、上記した本発明によるインバータ装置の制御方法において、予め設定された時間間隔で比較周波数を取得するようにしたものである。
【0061】
また、本発明によるインバータ装置の制御方法は、上記した本発明によるインバータ装置の制御方法において、上記並列共振負荷を構成する誘導コイルに投入される負荷は、上記誘導コイルに対して連続して移動する負荷であるようにしたものである。
【0062】
また、本発明によるインバータ装置の制御方法は、上記した本発明によるインバータ装置の制御方法において、上記並列共振負荷における誘導コイルは、誘導加熱用の加熱コイルであるようにしたものである。
【0063】
また、本発明によるインバータ装置の制御方法は、上記した本発明によるインバータ装置の制御方法において、上記並列共振負荷における誘導コイルは、非接触給電用共振負荷における非接触給電用送電回路の非接触給電用送電コイルであるようにしたものである。
【0064】
また、本発明によるビレットヒーターは、インバータ装置を備えビレットを加熱するビレットヒーターにおいて、インバータ装置として、上記した本発明によるインバータ装置を用いたものである。
【発明の効果】
【0065】
本発明は、以上説明したように構成されているので、並列共振負荷に接続して用いるインバータ装置に接続される並列共振負荷の機能が、並列共振負荷に投入される負荷数の増減などにより影響を受けることがないインバータ装置およびインバータ装置の制御方法ならびにビレットヒーターを提供することが可能になるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1図1は、出力電圧値を一定に制御するとともに並列共振負荷に接続された従来の並列共振形インバータ装置の全体の構成をあらわす構成説明図である。
図2図2は、出力電圧値を一定に制御するとともに並列共振負荷に接続された従来の並列共振形インバータ装置の他の例の全体の構成をあらわす構成説明図である。
図3図3(a)(b)(c)は、図1ならびに図2に示す従来の並列共振形インバータ装置における動作を示す模式的な説明図である。
図4図4は、図1ならびに図2に示す従来の並列共振形インバータ装置における動作を示す模式的な説明図である。
図5図5は、図1ならびに図2に示す従来の並列共振形インバータ装置における動作を示す模式的な説明図である。
図6図6は、並列共振負荷に接続された本発明の実施の形態の一例による並列共振形インバータ装置(第1の実施の形態)の全体の構成をあらわす構成説明図である。
図7図7は、並列共振負荷に接続された本発明の実施の形態の一例による並列共振形インバータ装置(第1の実施の形態)の変形例の全体の構成をあらわす構成説明図である。
図8図8は、並列共振負荷に接続された本発明の実施の形態の一例による並列共振形インバータ装置(第2の実施の形態)の全体の構成をあらわす構成説明図である。
図9図9は、並列共振負荷に接続された本発明の実施の形態の一例による並列共振形インバータ装置(第2の実施の形態)の変形例の全体の構成をあらわす構成説明図である。
図10図10は、並列共振負荷に接続された本発明の実施の形態の一例による並列共振形インバータ装置(第3の実施の形態)の全体の構成をあらわす構成説明図である。
図11図11は、並列共振負荷に接続された本発明の実施の形態の一例による並列共振形インバータ装置(第3の実施の形態)の変形例の全体の構成をあらわす構成説明図である。
図12図12は、並列共振負荷に接続された本発明の実施の形態の一例による並列共振形インバータ装置(第4の実施の形態)の全体の構成をあらわす構成説明図である。
図13図13は、並列共振負荷に接続された本発明の実施の形態の一例による並列共振形インバータ装置(第4の実施の形態)の変形例の全体の構成をあらわす構成説明図である。
図14図14は、本発明の実施の形態の一例によるビレットヒーターを模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明によるインバータ装置およびインバータ装置の制御方法ならびにビレットヒーターの実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0068】
なお、以下の「発明を実施するための形態」の項の説明においては、図1乃至図5の各図を参照しながら説明した構成ならびに作用、あるいは、図6以下の各図を参照しながら説明する構成ならびに作用と同一あるいは相当する構成ならびに作用については、図1乃至図5、あるいは、図6以下の各図において用いた符号と同一の符号をそれぞれ付して示すことにより、その詳細な構成ならびに作用の説明は省略する。
【0069】
(I)本発明の第1の実施の形態
【0070】
(I-1)構成ならびに作用
【0071】
図6には、並列共振負荷に接続された本発明の実施の形態の一例による並列共振形インバータ装置(第1の実施の形態)の全体の構成をあらわす構成説明図が示されている。
【0072】
符号10は、本発明の第1の実施の形態による並列共振形インバータ装置であり、この並列共振形インバータ装置10は、制御部110に補正回路12を備えるとともに定電流モード設定スイッチ14を備えている点において、従来の並列共振形インバータ装置100とは異なっている。
【0073】
ここで、定電流モード設定スイッチ14は、誘導コイル200aの上や中などに投入される負荷(ワーク)に関わらず、誘導コイル200aに出力される電流値を一定値に制御する際にオン操作されるものであり、定電流モード設定スイッチ14がオンのときは、誘導コイル200aの上や中などに投入される負荷に関わらず誘導コイル200aに出力される電流値は一定値となる(定電流モード)。
【0074】
一方、定電流モード設定スイッチ14がオフのときは、誘導コイル200aの上や中などに投入される負荷に関わらず誘導コイル200aに出力される電流値を一定値とするような制御は行われない。
【0075】
また、上記した補正回路12は、周波数カウンタ12aと、周波数記録部12bと、第1演算部12cと、第2演算部12dとを有して構成されている。
【0076】
ここで、周波数カウンタ12aは、電圧検出トランス108で検出された出力電圧Vから、並列共振形インバータ装置10の出力の周波数(比較周波数)fを計測して取得するものである。
【0077】
次に、周波数記録部12bは、定電流モード設定スイッチ14がオンされて定電流モードのときにおける並列共振形インバータ装置10の出力の基準となる周波数(基準周波数)fs、即ち、並列共振形インバータ装置10の出力の周波数として予め設定された基準となる周波数(基準周波数)fsを記憶しているものである。
【0078】
また、第1演算部12cは、周波数カウンタ12aにより取得された比較周波数fと周波数記録部12bに記録された基準周波数fsとを用いて、(基準周波数/比較周波数)、即ち、fs/fの演算を行うものである。
【0079】
さらに、第2演算部12dは、第1演算部12cの演算結果であるfs/fと出力電圧設定信号vにより設定される設定値(設定出力)たる設定電圧vとを乗算(掛け算)する演算を行って、その演算結果である「v×fs/f」(v・fs/f)を誤差アンプ110bの非反転入力端子に入力する。
【0080】
即ち、並列共振形インバータ装置10においては、第2演算部12dの演算結果である「v×fs/f」(v・fs/f)が誤差アンプ110bの非反転入力端子へ入力され、検波回路110aからの出力(出力電圧V)が誤差アンプ110bの反転入力端子へ入力されるものである。
【0081】
上記した並列共振形インバータ装置10の出力電圧制御においては、基準周波数fsを誘導コイル200aの上や中などに第1の負荷(負荷1)が投入されたときの周波数とし、比較周波数fを同一の誘導コイル200aの上や中などに負荷1とは異なる第2の負荷(負荷2)が投入されたときの周波数とすると、出力電圧設定信号vの補正係数としてfs/fを出力電圧設定信号vに乗算して誤算アンプ110bへの一方の入力とし、検波回路110aからの出力電圧Vを誤算アンプ110bへの他方の入力とすることによって、誘導コイル200aに負荷1が投入された場合と負荷2が投入された場合とにおいて、誘導コイル200aに出力される電流値を一定値に制御することができる。
【0082】
ここで、並列共振形インバータ装置に接続される誘導コイルの中や誘導コイル上などに負荷が投入されるとき、その投入される負荷が負荷1であるか負荷2であるかの条件の違いによって、コイルインダクタンスL1、L2が変化するため、共振周波数が変わることが知られている。
【0083】
これを式で表すと、
f2=f1×(L1/L2)1/2 ・・・ 式1
となる。
【0084】
なお、
f1:誘導コイルに負荷1が投入されたときの共振周波数
f2:誘導コイルに負荷2が投入されたときの共振周波数
L1:誘導コイルに負荷1が投入されたときのコイルインダクタンス
L2:誘導コイルに負荷2が投入されたときのコイルインダクタンス
である。
【0085】
また電流と電圧の関係は、
I=V/(ω×L)
であり、ここで
ω=2πf
である。
【0086】
並列共振では、通常は誘導コイルに流れる電圧(コイル電圧)を一定に制御するので、以下の式2および式3のようになる。
I1=V/(ω1×L1) ・・・ 式2
I2=V/(ω2×L2) ・・・ 式3
【0087】
なお、
I1:誘導コイルに負荷1が投入されたときに誘導コイル流れる電流(コイル電流)
I2:誘導コイルに負荷2が投入されたときに誘導コイル流れる電流(コイル電流)
ω1:誘導コイルに負荷1が投入されたときのω
ω2:誘導コイルに負荷2が投入されたときのω
である。
【0088】
式1、式2および式3より、電流値と周波数との関係は
I2/I1=f2/f1 ・・・ 式4
となり、コイル電流と周波数とは比例して変化する。
【0089】
従って、式4から、並列共振形インバータ装置10の出力電圧制御において、出力電圧設定信号vに、共振周波数f1と共振周波数f2との周波数比の逆数を掛け算するような補正を行えば、負荷の条件が変わったとしても一定のコイル電流となり、コイル電流が一定になれば電磁誘導で必要な磁界強度(磁界強度は、コイル電流に比例する。)として一定値が得られることになる。
【0090】
上記について、図6を参照しながら具体的に説明すると、出力電圧設定信号vは、制御部110の補正回路12を通してから誤差アンプ110bの非反転入力端子へ入力されることになる。
【0091】
より詳細には、補正回路12においては、周波数カウンタ12aは、電圧検出トランス108から出力された検出信号(出力電圧V)を計測して、出力電圧Vから周波数(比較周波数)fを取得し、取得した比較周波数fを周波数記録部12bと第1演算部12cとへ出力する。
【0092】
また、周波数記録部12bは、定電流モードにおける並列共振形インバータ装置10の出力の周波数として、予め設定された設定条件における基準となる周波数(基準周波数)を記録するものであるが、具体的には、定電流モード設定スイッチ14がオンされて定電流モードのときに、上記設定条件により設定された負荷を並列共振回路200の誘導コイル200aに投入したときの並列共振形インバータ装置10の出力の比較周波数fを周波数カウンタ12aで計測し、周波数カウンタ12aで計測した比較周波数fを基準周波数fsとして記録するものである。
【0093】
上記のようにして周波数記録部12bに記録された基準周波数fsは、第1演算部12cへ出力される。
【0094】
第1演算部12cは、式4におけるf2/f1の逆数であるfs/fを演算し、その演算結果を出力電圧設定信号vの補正係数として取得して、取得した補正係数fs/fを第2演算部12dへ出力する。
【0095】
なお、式4のf1はfsに対応し、また、f2はfに対応するので、式4におけるf2/f1の逆数であるf1/f2はfs/fとなる。
【0096】
第2演算部12dは、補正係数fs/fを出力電圧設定信号vに掛け算して「v×fs/f」(v・fs/f)を取得して、v・fs/fを補正回路電圧として誤差アンプ110bの非反転入力端子へ出力する。
【0097】
誤差アンプ110bは、補正回路12から出力された補正回路電圧と電圧検出トランス108で検出された出力電圧Vを検波した電圧とを比較して、その比較結果を出力電圧制御回路110cへ出力する。
【0098】
出力電圧制御回路110cは、誤差アンプ110bから出力された比較結果に基づいて、補正回路12から出力された補正回路電圧と電圧検出トランス108で検出された出力電圧Vを検波した電圧とが同じ値になるようにコンバータ部104を制御する制御信号を生成して、当該制御信号をコンバータ部104へ出力してコンバータ部104をフィードバック制御する。
【0099】
なお、出力電圧制御回路110cには、例えば、差動アンプの出力フィルタ回路なども含まれるものではあるが、説明や図示を簡潔化して本発明の理解を容易にするために、その説明や図示は省略する。
【0100】
(I-2)具体的な動作(操作)
【0101】
次に、上記した並列共振形インバータ装置10の具体的な動作(操作)について説明する。
【0102】
並列共振形インバータ装置10において、定電流モード設定スイッチ14をオンにして定電流モードにしてから、予め設定された設定条件における基準となる負荷(例えば、負荷1である。)を並列共振回路200の誘導コイル200aに投入したときの状態(条件1)において定電流モードでインバータ動作させると、制御部110の補正回路12における周波数記録部12bは、周波数カウンタ12aを介して電圧検出トランス108で検出された出力電圧Vの信号から取得した比較周波数fを基準周波数fsとして自動的に記録するとともに、周波数カウンタ12aを介して電圧検出トランス108で検出された出力電圧Vの信号の周波数たる比較周波数fを第1演算部12cへ出力する。
【0103】
そして、第1演算部12cは補正係数としてfs/fを演算して第2演算部12dへ出力し、第2演算部12dはfs/fに出力電圧設定信号vに掛け算する演算を行い、その演算結果であるv・fs/fを誤差アンプ110bの非反転入力端子へ出力する。
【0104】
上記したインバータ動作の最初の状態(条件1)においては、
f=fs
であるので、補正係数fs/fは「1」である。
【0105】
次に、並列共振回路200の誘導コイル200aにおける負荷の状態(コイル負荷状態)を任意の状態、即ち、任意の負荷(例えば、負荷2である。)を並列共振回路200の誘導コイル200aに投入したときの状態(条件2)にして、上記と同様にして比較周波数fを計測するとともに補正係数fs/fを演算して取得し、取得したfs/fに出力電圧設定信号vに掛け算する演算を行って、その演算結果であるv・fs/fを誤差アンプ110bの非反転入力端子へ出力する。
【0106】
これにより、条件2におけるコイル電流値が条件1の場合と同じコイル電流値、即ち、
I=Is
I:条件2におけるコイル電流値
Is:条件1におけるコイル電流値
となるような、出力電圧になる。
【0107】
即ち、並列共振回路200の誘導コイル200aに投入される負荷が初期の負荷(例えば、負荷1である。)から当該初期の負荷とは異なる負荷(例えば、負荷2である。)に変わったとしても、当該初期の負荷のときのコイル電流と同じコイル電流となるので、並列共振回路200の誘導コイル200aに投入される負荷が初期の負荷から当該初期の負荷とは異なる負荷に変わっても、初期状態と同じ誘導磁界強度を保つことができることになる。
【0108】
なお、一旦、定電流モードスイッチ14をオンにしておけば、その後は、例えば、予め設定された時間間隔などで比較周波数fを計測して、当該計測した比較周波数fを用いて補正係数fs/fを取得することによって、任意の負荷条件において定電流動作である定電流モードを継続して維持することができる。
【0109】
なお、誘導コイル200aを交換した場合などにおいても、誘導コイル200aの交換後に上記した動作と同じ動作を行うことにより、任意の負荷条件において定電流動作である定電流モードを実現することができる。
【0110】
また、誘導コイル200aとして複数の誘導コイルが設けられている場合には、複数の誘導コイルをシーケンサなどでテーブル化して、テーブルを参照しながら複数の誘導コイルを順次あるいは適宜に選択して、選択した誘導コイルについて上記した動作と同じ動作を行えばよい。
【0111】
そして、並列共振形インバータ装置10によれば、図3(a)(b)(c)ならびに図4に示す例において、図3(a)ならびに図4に示すように誘導コイル200aに全ての負荷が投入されている状態(全数負荷時)の周波数を基準周波数fsとして設定すると、
(1)負荷が少なくなるとコイルインダクタンスが大きくなって比較周波数fが下がる、
(2)fs/fは大きくなる、
(3)誤差アンプ110bにおける比較設定電圧であるv・fs/fは大きくなる、
(4)出力電圧はアップする、
(5)コイル電流もアップする、
(6)負荷が少なくなったときの温度低下を防止することができる、
という作用効果が生ずる。
【0112】
また、並列共振形インバータ装置10によれば、図5に示す例において、ビレット500を誘導コイル200aへ搬送して誘導加熱するスタート時における誘導コイル200a内に負荷が無い状態(無負荷時)の周波数を基準周波数fsとして設定すると、
(1)負荷が入ってくるとコイルインダクタンスが小さくなって比較周波数fが上がる、
(2)fs/fは小さくなる、
(3)誤差アンプ110bにおける比較設定電圧であるv・fs/fは小さくなる、
(4)出力電圧は下がる、
(5)コイル電流も下がる、
(6)負荷が入ってきても温度上昇していくことが防止することができるため、スタート時から同じ加熱温度となる、
という作用効果が生ずる。
【0113】
(I-3)変形例
【0114】
なお、図6に示す並列共振形インバータ装置10は、出力電圧制御回路110cから出力された制御信号をコンバータ部104へ入力して、コンバータ部104から出力される出力電圧たる直流電圧を可変制御するようにしたが、図7に示す並列共振形インバータ装置10’のように、出力電圧制御回路110cから出力された制御信号をインバータ部106へ入力して、制御信号により直接にインバータ部106をフィードバック制御することによって、コイル電流値が一定となるようにインバータ部106の出力電圧Vを可変制御するようにしてもよい。
【0115】
(II)本発明の第2の実施の形態
【0116】
(II-1)構成ならびに作用
【0117】
図8には、並列共振負荷に接続された本発明の実施の形態の一例による並列共振形インバータ装置(第2の実施の形態)の全体の構成をあらわす構成説明図が示されている。
【0118】
符号20は、本発明の第2の実施の形態による並列共振形インバータ装置であり、この並列共振形インバータ装置20は、制御部110に補正回路22を備えるとともに投入電力一定モード設定スイッチ24を備えている点において、従来の並列共振形インバータ装置100と異なっている。
【0119】
ここで、投入電力一定モード設定スイッチ24は、誘導コイル200aの上や中などに投入される負荷(ワーク)の数に関わらず、並列共振負荷200に出力されるワーク1個あたりの投入電力値を一定値に制御する際にオン操作されるものであり、投入電力一定モード設定スイッチ24がオンのときは、誘導コイル200aに投入される負荷に関わらず並列共振負荷200に出力されるワーク1個あたりの投入電力値は一定値となる(投入電力一定モード)。
【0120】
一方、投入電力一定モード設定スイッチ24がオフのときは、誘導コイル200aの上や中などに投入される負荷(ワーク)に関わらず並列共振負荷200に出力される投入電力値を一定値とするような制御は行われない。
【0121】
また、上記した補正回路22は、周波数カウンタ22aと、周波数記録部22bと、第1演算部22cと、第2演算部22dとを有して構成されている。
【0122】
ここで、周波数カウンタ22aは、電圧検出トランス108で検出された出力電圧Vから、並列共振形インバータ装置10の出力の周波数(比較周波数)fを計測して取得するものである。
【0123】
次に、周波数記録部22bは、投入電力一定モード設定スイッチ24がオンされて投入電力一定モードのときにおける並列共振形インバータ装置10の出力の基準となる周波数(基準周波数)fs、即ち、並列共振形インバータ装置10の出力の周波数として予め設定された基準となる周波数(基準周波数)fsを記憶しているものである。
【0124】
また、第1演算部22cは、周波数カウンタ22aにより取得された比較周波数fと周波数記録部22bに記録された基準周波数fsとを用いて、(基準周波数/比較周波数)1.25、即ち、(fs/f)1.25の演算を行うものである。
【0125】
さらに、第2演算部22dは、第1演算部22cの演算結果である(fs/f)1.25と出力電圧設定信号vにより設定される設定値(設定出力)たる設定電圧vとを乗算(掛け算)する演算を行って、その演算結果である「v×(fs/f)1.25」(v・(fs/f)1.25)を誤差アンプ110bの非反転入力端子に入力する。
【0126】
即ち、並列共振形インバータ装置20においては、第2演算部22dの演算結果である「v×(fs/f)1.25」(v・(fs/f)1.25)が誤差アンプ110bの非反転入力端子へ入力され、検波回路110aからの出力(出力電圧V)が誤差アンプ110bの反転入力端子へ入力されるものである。
【0127】
上記した並列共振形インバータ装置20の出力電圧制御においては、基準周波数fsを誘導コイル200aの上や中などに第1の負荷(負荷1)が投入されたときの周波数とし、比較周波数fを同一の誘導コイル200aの上や中などに負荷1とは異なる第2の負荷(負荷2)が投入されたときの周波数とすると、出力電圧設定信号vの補正係数として(fs/f)1.25を出力電圧設定信号vに乗算して誤算アンプ110bへの一方の入力とし、検波回路110aからの出力電圧Vを誤算アンプ110bへの他方の入力とすることによって、誘導コイル200aに負荷1が投入された場合と負荷2が投入された場合とにおいて、並列共振負荷200に出力される電力値を一定値に制御することができる。
【0128】
ここで、並列共振形インバータ装置に接続される誘導コイルの中や誘導コイル上などに負荷が投入されるとき、その投入される負荷が負荷1であるか負荷2であるかの条件の違いによって、コイルインダクタンスL1、L2が変化するため、共振周波数が変わることが知られている。
【0129】
これを式で表すと、
f2=f1×(L1/L2)1/2 ・・・ 式1
となる。
【0130】
なお、
f1:誘導コイルに負荷1が投入されたときの共振周波数
f2:誘導コイルに負荷2が投入されたときの共振周波数
L1:誘導コイルに負荷1が投入されたときのコイルインダクタンス
L2:誘導コイルに負荷2が投入されたときのコイルインダクタンス
である。
【0131】
また電流と電圧の関係は、
I=V/(ω×L)
であり、ここで
ω=2πf
である。
【0132】
並列共振では、通常は誘導コイルに流れる電圧(コイル電圧)を一定に制御するので、以下の式2および式3のようになる。
I1=V/(ω1×L1) ・・・ 式2
I2=V/(ω2×L2) ・・・ 式3
【0133】
なお、
I1:誘導コイルに負荷1が投入されたときに誘導コイル流れる電流(コイル電流)
I2:誘導コイルに負荷2が投入されたときに誘導コイル流れる電流(コイル電流)
ω1:誘導コイルに負荷1が投入されたときのω
ω2:誘導コイルに負荷2が投入されたときのω
である。
【0134】
式1、式2および式3より、電流値と周波数との関係は
I2/I1=f2/f1 ・・・ 式4
となり、コイル電流と周波数とは比例して変化する。
【0135】
上記した本発明の第1の実施の形態による並列共振形インバータ装置10においては、式4に基づいて、コイル電流、即ち、コイル磁界を一定にする技術内容を説明したが、負荷自身に周波数特性がある場合には、出力電圧をさらに補正することが望ましい。
【0136】
ここで、誘導コイルと誘導負荷の高周波等価抵抗は、一般的に周波数の平方根に比例することが知られている。
R2=R1×(f2/f1)1/2 ・・・ 式5
【0137】
なお、
R1:誘導コイルに負荷1が投入されたときの高周波等価抵抗
R2:誘導コイルに負荷2が投入されたときの高周波等価抵抗
である。
【0138】
負荷1と負荷2とへ出力する電力(出力電力)は、
P2=I2×R2 ・・・ 式6
P1=I1×R1 ・・・ 式7
である。
【0139】
なお、
P1:誘導コイルに負荷1が投入されたときの出力電圧
P2:誘導コイルに負荷2が投入されたときの出力電圧
である。
【0140】
従って、
P2/P1=(I2/I1)×R2/R1
=(f2/f1)×(f2/f1)0.5
=(f2/f1)2.5 ・・・ 式8
となる。
【0141】
電流または電圧は出力電力の平方根に比例するので、
V2/V1=(f2/f1)1.25 ・・・ 式9
となる。
【0142】
従って、式9から、並列共振形インバータ装置20の出力電圧制御において、出力電圧設定信号vに、共振周波数f1と共振周波数f2との周波数比の逆数の1.25乗を掛け算するような補正を行えば、負荷の条件が変わったとしても、並列共振負荷200に供給されるワーク1個あたりの投入電力は一定値が得られることになる。
【0143】
上記について、図8を参照しながら具体的に説明すると、出力電圧設定信号vは、制御部110の補正回路22を通してから誤差アンプ110bの非反転入力端子へ入力されることになる。
【0144】
より詳細には、補正回路22においては、周波数カウンタ22aは、電圧検出トランス108から出力された検出信号(出力電圧V)を計測して、出力電圧Vから周波数(比較周波数)fを取得し、取得した比較周波数fを周波数記録部22bと第1演算部22cとへ出力する。
【0145】
また、周波数記録部22bは、投入電力一定モードにおける並列共振形インバータ装置20の出力の周波数として、予め設定された設定条件における基準となる周波数(基準周波数)を記録するものであるが、具体的には、投入電力一定モード設定スイッチ24がオンされて投入電力一定モードのときに、上記設定条件により設定された負荷を並列共振回路200の誘導コイル200aに投入したときの並列共振形インバータ装置10の出力の比較周波数fを周波数カウンタ22aで計測し、周波数カウンタ22aで計測した比較周波数fを基準周波数fsとして記録するものである。
【0146】
上記のようにして周波数記録部22bに記録された基準周波数fsは、第1演算部22cへ出力される。
【0147】
第1演算部22cは、式9から式4におけるf2/f1の逆数であるfs/fを1.25乗する演算を行って、その演算結果を出力電圧設定信号vの補正係数として取得して、取得した補正係数(fs/f)1.25を第2演算部12dへ出力する。
【0148】
なお、式4のf1はfsに対応し、また、f2はfに対応するので、式4におけるf2/f1の逆数であるf1/f2はfs/fとなる。
【0149】
第2演算部22dは、補正係数(fs/f)1.25を出力電圧設定信号vに掛け算して「v×(fs/f)1.25」(v・(fs/f)1.25)を取得して、v・(fs/f)1.25を補正回路電圧として誤差アンプ110bの非反転入力端子へ出力する。
【0150】
誤差アンプ110bは、補正回路22から出力された補正回路電圧と電圧検出トランス108で検出された出力電圧Vを検波した電圧とを比較して、その比較結果を出力電圧制御回路110cへ出力する。
【0151】
出力電圧制御回路110cは、誤差アンプ110bから出力された比較結果に基づいて、補正回路22から出力された補正回路電圧と電圧検出トランス108で検出された出力電圧Vを検波した電圧とが同じ値になるようにコンバータ部104を制御する制御信号を生成して、当該制御信号をコンバータ部104へ出力してコンバータ部104をフィードバック制御する。
【0152】
なお、出力電圧制御回路110cには、例えば、差動アンプの出力フィルタ回路なども含まれるものではあるが、説明や図示を簡潔化して本発明の理解を容易にするために、その説明や図示は省略する。
【0153】
また、並列共振形インバータ装置20の具体的な動作(操作)については、上記における「(I-2)具体的な動作(操作)」の項で説明した並列共振形インバータ装置10の具体的な動作(操作)と同様であるので、説明を簡潔化して本発明の理解を容易にするためにその説明は省略する。
【0154】
そして、並列共振形インバータ装置20によれば、図3(a)(b)(c)ならびに図4に示す例において、図3(a)ならびに図4に示すように誘導コイル200aに全ての負荷が投入されている状態(全数負荷時)の周波数を基準周波数fsとして設定すると、
(1)負荷が少なくなるとコイルインダクタンスが大きくなって比較周波数fが下がる、
(2)fs/fは大きくなる、
(3)誤差アンプ110bにおける比較設定電圧であるv・(fs/f)1.25は大きくなる、
(4)出力電圧はアップする、
(5)コイル電流もアップする、
(6)負荷が少なくなったときの温度低下を防止することができる、
という作用効果が生ずる。
【0155】
また、並列共振形インバータ装置20によれば、図5に示す例において、ビレット500を誘導コイル200aへ搬送して誘導加熱するスタート時における誘導コイル200a内に負荷が無い状態(無負荷時)の周波数を基準周波数fsとして設定すると、
(1)負荷が入ってくるとコイルインダクタンスが小さくなって比較周波数fが上がる、
(2)fs/fは小さくなる、
(3)誤差アンプ110bにおける比較設定電圧であるv・(fs/f)1.25は小さくなる、
(4)出力電圧は下がる、
(5)コイル電流も下がる、
(6)負荷が入ってきても温度上昇していくことが防止することができるため、スタート時から同じ加熱温度となる、
という作用効果が生ずる。
【0156】
(II-2)変形例
【0157】
なお、図8に示す並列共振形インバータ装置20は、出力電圧制御回路110cから出力された制御信号をコンバータ部104へ入力して、コンバータ部104から出力される出力電圧たる直流電圧を可変制御するようにしたが、図9に示す並列共振形インバータ装置20’のように、出力電圧制御回路110cから出力された制御信号をインバータ部106へ入力して、制御信号により直接にインバータ部106をフィードバック制御することによって、並列共振負荷200に出力されるワーク1個あたりの投入電力値が一定となるようにインバータ部106の出力電圧Vを可変制御するようにしてもよい。
【0158】
(III)本発明の第3の実施の形態
【0159】
(III-1)構成ならびに作用
【0160】
図10には、並列共振負荷に接続された本発明の実施の形態の一例による並列共振形インバータ装置(第3の実施の形態)の全体の構成をあらわす構成説明図が示されている。
【0161】
符号30は、本発明の第3の実施の形態による並列共振形インバータ装置であり、この並列共振形インバータ装置30は、並列共振形インバータ装置10における補正回路12に対応する構成として補正回路32を備えている。
【0162】
補正回路32は、第1演算部12cに代えて第1’演算部32cを備えるとともに、第2演算部12dに代えて第2’演算部32dを備える点において、並列共振形インバータ装置10における補正回路12と異なっている。
【0163】
また、並列共振形インバータ装置30においては、検波回路110aからの出力(出力電圧V)は第2’演算部32dへ入力される。
【0164】
そして、並列共振形インバータ装置30においては、出力電圧設定信号vは誤差アンプ110bの非反転入力端子へ入力される。
【0165】
ここで、第1’演算部32cは、(基準周波数/比較周波数)、即ち、fs/fの演算を行う第1演算部12cとは異なり、(比較周波数/基準周波数)、即ち、f/fsの演算を行う。
【0166】
そして、第2’演算部32dは、第1’演算部32cの演算結果であるf/fsと検波回路110aから入力された出力電圧Vとを乗算する演算を行い、その演算結果である「V×f/fs」(V・f/fs)が誤算アンプ110bの反転入力端子へ入力される。
【0167】
なお、並列共振形インバータ装置10においては、検波回路110aからの出力電圧Vが直接に誤算アンプ110bの反転入力端子へ入力されるとともに、補正回路12により出力電圧設定信号vを補正係数fs/fにより補正したv・fs/f(フィードバック信号)が誤算アンプ110bの非反転入力端子へ入力されるように構成されている。
【0168】
一方、並列共振形インバータ装置30においては、出力電圧設定信号vが直接に誤算アンプ110bの非反転入力端子へ入力されるとともに、検波回路110aからの出力電圧Vを補正係数f/fsにより補正したV・f/s(フィードバック信号)が誤算アンプ110bの反転入力端子へ入力されるように構成されている。
【0169】
即ち、並列共振形インバータ装置10と並列共振形インバータ装置30とでは、補正回路により補正する対象が出力電圧Vと出力電圧設定信号vとで逆になっているため、並列共振形インバータ装置10の補正係数がfs/fであるのに対して、並列共振形インバータ装置30の補正係数はf/fsとなる。
【0170】
従って、並列共振形インバータ装置30によれば、並列共振形インバータ装置10と同様に、負荷の条件が変わったとしても一定のコイル電流となり、コイル電流が一定になれば電磁誘導で必要な磁界強度(磁界強度は、コイル電流に比例する。)として一定値が得られることになる。
【0171】
そして、並列共振形インバータ装置30によれば、図3(a)(b)(c)ならびに図4に示す例において、図3(a)ならびに図4に示すように誘導コイル200aに全ての負荷が投入されている状態(全数負荷時)の周波数を基準周波数fsとして設定すると、
(1)負荷が少なくなるとコイルインダクタンスが大きくなって比較周波数fが下がる、
(2)f/fsは小さくなる、
(3)誤差アンプ110bにおけるフィードバック電圧であるV・f/fsも小さくなる、
(4)出力電圧を大きくする出力制御がはたらき出力はアップする、
(5)コイル電流もアップする、
(6)負荷が少なくなったときの温度低下を防止することができる、
という作用効果が生ずる。
【0172】
(III-2)変形例
【0173】
なお、図10に示す並列共振形インバータ装置30は、出力電圧制御回路110cから出力された制御信号をコンバータ部104へ入力して、コンバータ部104から出力される出力電圧たる直流電圧を可変制御するようにしたが、図11に示す並列共振形インバータ装置30’のように、出力電圧制御回路110cから出力された制御信号をインバータ部106へ入力して、制御信号により直接にインバータ部106をフィードバック制御することによって、コイル電流値が一定となるようにインバータ部106の出力電圧Vを可変制御するようにしてもよい。
【0174】
(IV)本発明の第4の実施の形態
【0175】
(IV-1)構成ならびに作用
【0176】
図12には、並列共振負荷に接続された本発明の実施の形態の一例による並列共振形インバータ装置(第4の実施の形態)の全体の構成をあらわす構成説明図が示されている。
【0177】
符号40は、本発明の第4の実施の形態による並列共振形インバータ装置であり、この並列共振形インバータ装置40は、並列共振形インバータ装置20における補正回路22に対応する構成として補正回路42を備えている。
【0178】
補正回路42は、第1演算部22cに代えて第1’演算部42cを備えるとともに、第2演算部22dに代えて第2’演算部42dを備える点において、並列共振形インバータ装置20における補正回路22と異なっている。
【0179】
また、並列共振形インバータ装置40においては、検波回路110aからの出力(出力電圧V)は第2’演算部42dへ入力される。
【0180】
そして、並列共振形インバータ装置40においては、出力電圧設定信号vは誤差アンプ110bの非反転入力端子へ入力される。
【0181】
ここで、第1’演算部42cは、(基準周波数/比較周波数)1.25、即ち、(fs/f)1.25の演算を行う第1演算部22cとは異なり、(比較周波数/基準周波数)1.25、即ち、(f/fs)1.25の演算を行う。
【0182】
そして、第2’演算部42dは、第1’演算部42cの演算結果である(f/fs)1.25と検波回路110aから入力された出力電圧Vとを乗算する演算を行い、その演算結果である「V×(f/fs)1.25」(V・(f/fs)1.25)が誤算アンプ110bの反転入力端子へ入力される。
【0183】
なお、並列共振形インバータ装置20においては、検波回路110aからの出力電圧Vが直接に誤算アンプ110bの反転入力端子へ入力されるとともに、補正回路22により出力電圧設定信号vを補正係数(fs/f)1.25により補正したv・(fs/f)1.25(フィードバック信号)が誤算アンプ110bの非反転入力端子へ入力されるように構成されている。
【0184】
一方、並列共振形インバータ装置40においては、出力電圧設定信号vが直接に誤算アンプ110bの非反転入力端子へ入力されるとともに、検波回路110aからの出力電圧Vを補正係数(f/fs)1.25により補正したV・(f/fs)1.25(フィードバック信号)が誤算アンプ110bの反転入力端子へ入力されるように構成されている。
【0185】
即ち、並列共振形インバータ装置20と並列共振形インバータ装置40とでは、補正回路により補正する対象が出力電圧Vと出力電圧設定信号vとで逆になっているため、並列共振形インバータ装置20の補正係数が(fs/f)1.25であるのに対して、並列共振形インバータ装置40の補正係数は(f/fs)1.25となる。
【0186】
従って、並列共振形インバータ装置40によれば、並列共振形インバータ装置20と同様に、負荷の条件が変わったとしても、並列共振負荷200に供給されるワーク1個あたりの投入電力は一定値が得られることになる。
【0187】
そして、並列共振形インバータ装置40によれば、図3(a)(b)(c)ならびに図4に示す例において、図3(a)ならびに図4に示すように誘導コイル200aに全ての負荷が投入されている状態(全数負荷時)の周波数を基準周波数fsとして設定すると、
(1)負荷が少なくなるとコイルインダクタンスが大きくなって比較周波数fが下がる、
(2)f/fsは小さくなる、
(3)誤差アンプ110bにおけるフィードバック電圧であるV・(f/fs)1.25も小さくなる、
(4)出力電圧を大きくする出力制御がはたらき出力はアップする、
(5)コイル電流もアップする、
(6)負荷が少なくなったときの温度低下を防止することができる、
という作用効果が生ずる。
【0188】
(IV-2)変形例
【0189】
なお、図12に示す並列共振形インバータ装置40は、出力電圧制御回路110cから出力された制御信号をコンバータ部104へ入力して、コンバータ部104から出力される出力電圧たる直流電圧を可変制御するようにしたが、図13に示す並列共振形インバータ装置40’のように、出力電圧制御回路110cから出力された制御信号をインバータ部106へ入力して、制御信号により直接にインバータ部106をフィードバック制御することによって、並列共振負荷200に出力されるワーク1個あたりの投入電力値が一定となるようにインバータ部106の出力電圧Vを可変制御するようにしてもよい。
【0190】
(V)その他の実施の形態および変形例の説明
【0191】
なお、上記した実施の形態は例示に過ぎないものであり、本発明は他の種々の形態で実施することができる。即ち、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0192】
例えば、上記した実施の形態は、以下の(V-1)乃至(V-7)に示すように変形するようにしてもよい。
【0193】
(V-1)上記した実施の形態においては、詳細な説明は省略したが、本発明による並列共振形インバータ装置10(10’、20、20’、30、30’、40、40’)は、図5に示すように、誘導コイル200aの上や中などを当該誘導コイル200aに対して連続して移動する負荷(例えば、ビレットヒーターにおけるビレットなどである。)に対しても適用することができる。
【0194】
以下において、並列共振形インバータ装置10(20)を例にして、詳細に説明することとする。
【0195】
(V-1-1)並列共振インバータ装置10に適用する場合の説明
【0196】
並列共振インバータ装置10について説明すると、誘導コイル200aの上や中などを当該誘導コイル200aに対して連続して移動する負荷に対して並列共振インバータ装置10を動作させるには、まず、無負荷時の基準周波数fsを周波数記録部12bにおいて記録しておく。
【0197】
その後に、任意の負荷を連続的に移動して投入することになるが、その際には,例えば、予め定められた時間間隔などにおいて、移動中の負荷のそのときの位置における比較周波数fを周波数カウンタ12aにより計測して取得し、第1演算部12cにおいて補正係数fs/fを演算して取得し、第1演算部12cにおいて取得した演算結果である補正係数fs/fを第2演算部12dへ出力する。
【0198】
第2演算部12dは、出力電圧設定信号vに周波数比たる補正係数fs/fを掛け算して補正し、その演算結果であるv・fs/fを誤差アンプ110bの非反転入力端子へ入力する。
【0199】
誤差アンプ110bの反転入力端子へは、検波回路110aにより検波された出力電圧Vを入力することにより、誘導コイル200aの上や中などを連続して移動する負荷に対しても、誘導コイル200aの電流値を一定に制御することができる。
【0200】
(V-1-2)並列共振インバータ装置20に適用する場合の説明
【0201】
並列共振インバータ装置20について説明すると、誘導コイル200aの上や中などを当該誘導コイル200aに対して連続して移動する負荷に対して並列共振インバータ装置20を動作させるには、まず、無負荷時の基準周波数fsを周波数記録部22bにおいて記録しておく。
【0202】
その後に、任意の負荷を連続的に移動して投入することになるが、その際には,例えば、予め定められた時間間隔などにおいて、移動中の負荷のそのときの位置における比較周波数fを周波数カウンタ22aにより計測して取得し、第1演算部22cにおいて補正係数(fs/f)1.25を演算して取得し、第1演算部22cにおいて取得した演算結果である補正係数(fs/f)1.25を第2演算部22dへ出力する。
【0203】
第2演算部22dは、出力電圧設定信号vに周波数比たる補正係数(fs/f)1.25を掛け算して補正し、その演算結果であるv・(fs/f)1.25を誤差アンプ110bの非反転入力端子へ入力する。
【0204】
誤差アンプ110bの反転入力端子へは、検波回路110aにより検波された出力電圧Vを入力することにより、誘導コイル200aの上や中などを連続して移動する負荷に対しても、並列共振負荷200に供給されるワーク1個あたりの投入電力は一定値が得られることになる。
【0205】
(V-2)上記した実施の形態においては、詳細な説明は省略したが、本発明における並列共振負荷200における誘導コイル200aは、誘導加熱用の加熱コイルとして用いてよいことは勿論である。
【0206】
誘導加熱用の加熱コイルとして並列共振負荷200における誘導コイル200aを用いることにより、被加熱物(負荷)の数の増減に関わることなしに、被加熱物の温度低下を抑止して被加熱物を加熱することができる。
【0207】
(V-3)上記した実施の形態においては、詳細な説明は省略したが、本発明における並列共振負荷200における誘導コイル200aは、非接触給電用共振負荷における非接触給電用送電回路の非接触給電用送電コイルとして用いてよいことは勿論である。
【0208】
このように、誘導コイル200aを非接触給電用共振負荷における非接触給電用送電回路の非接触給電用送電コイルとして用いる場合には、誘導コイル200aにおける負荷は、非接触給電用共振負荷における非接触給電用受電回路の非接触給電用受電コイルとなる。
【0209】
(V-4)上記した実施の形態においては、詳細な説明は省略したが、本発明による並列共振インバータ装置10(10’、20、20’、30、30’、40、40’)は、図14に示すように、ビレットを500を加熱するためのビレットヒーター50のインバータ装置として用いてよい。
【0210】
ビレットヒーター50のインバータ装置として本発明による並列共振インバータ装置10(10’、20、20’)を用いると、ビレットヒーター内を連続して移動するビレット500に対して、電流値を一定にして加熱制御することができる。
【0211】
また、ビレットヒーター50のインバータ装置として本発明による並列共振インバータ装置30(30’、40、40’)を用いると、ビレットヒーター内を連続して移動するビレット500に対して、ワーク1個あたりの投入電力を一定にして加熱制御することができる。
【0212】
(V-5)上記した実施の形態においては、各構成における具体的な回路構成などは説明を省略したが、各構成に対応する従来より公知の回路構成を用いてよいことは勿論である。
【0213】
(V-6)上記した実施の形態においては、各構成における具体的な回路定数などの説明を省略したが、各構成に対応する従来より公知の回路定数を用いてよいことは勿論である。
【0214】
(V-7)上記した各実施の形態ならびに上記した(V-1)乃至(V-6)に示す各実施の形態や変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0215】
本発明は、誘導加熱回路や非接触給電用共振負荷などのような並列共振負荷に接続する電源装置たるインバータ装置に利用することができ、特に、ビレットヒーターなどのインバータ装置に用いると極めて有用である。
【符号の説明】
【0216】
10 並列共振形インバータ装置(インバータ装置)
10’ 並列共振形インバータ装置(インバータ装置)
12 補正回路
12a 周波数カウンタ(比較周波数取得手段)
12b 周波数記録部(基準周波数記憶手段)
12c 第1演算部(補正係数取得手段)
12d 第2演算部(演算手段)
14 定電流モード設定スイッチ
20 並列共振形インバータ装置(インバータ装置)
20’ 並列共振形インバータ装置(インバータ装置)
22 補正回路
22a 周波数カウンタ(比較周波数取得手段)
22b 周波数記録部(基準周波数記憶手段)
22c 第1演算部(補正係数取得手段)
22d 第2演算部(演算手段)
24 投入電力一定モード設定スイッチ
30 並列共振形インバータ装置(インバータ装置)
30’ 並列共振形インバータ装置(インバータ装置)
32 補正回路
32c 第1’演算部(補正係数取得手段)
32d 第2’演算部(演算手段)
40 並列共振形インバータ装置(インバータ装置)
40’ 並列共振形インバータ装置(インバータ装置)
42 補正回路
42c 第1’演算部(補正係数取得手段)
42d 第2’演算部(演算手段)
50 ビレットヒーター
100 並列共振形インバータ装置(インバータ装置)
100’ 並列共振形インバータ装置(インバータ装置)
102 商用交流電源
104 コンバータ部
106 インバータ部
108 電圧検出トランス
110 制御部(制御手段)
110a 検波回路
110b 誤差アンプ(制御手段)
110c 出力電圧制御回路(制御手段)
200 並列共振負荷
200a 誘導コイル
200a-1 コイル
200a-2 コイル
200a-3 コイル
200b 抵抗
200c キャパシタ
300a 負荷
300b 負荷
300c 負荷
400a 負荷
400b 負荷
400c 負荷
400d 負荷
500 ビレット
【要約】
【課題】並列共振負荷に接続して用いるインバータ装置に接続される並列共振負荷の機能が、並列共振負荷に投入される負荷数の増減などにより影響を受けることのないようにする。
【解決手段】並列共振負荷への出力電圧として予め設定されている基準周波数を記憶する基準周波数記憶手段と、並列共振負荷へ出力される周波数を比較周波数として取得する比較周波数取得手段と、基準周波数記憶手段に記憶した基準周波数と比較周波数取得手段が取得した比較周波数との比に基づいて補正係数を取得する補正係数取得手段と、補正係数取得手段が取得した補正係数と並列共振負荷への出力電圧として予め設定された設定出力電圧とを乗算する演算を行う演算手段と、演算手段による演算結果と並列共振負荷への出力電圧とを比較して、演算結果と並列共振負荷への出力電圧とが同じ値になるように制御する制御手段とを有するようにした。
【選択図】 図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14