(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 211/70 20060101AFI20220419BHJP
C11B 9/00 20060101ALN20220419BHJP
【FI】
C07D211/70
C11B9/00 W
(21)【出願番号】P 2021163896
(22)【出願日】2021-10-05
【審査請求日】2021-10-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591011410
【氏名又は名称】小川香料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100106769
【氏名又は名称】新井 信輔
(72)【発明者】
【氏名】畑野 公輔
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-089295(JP,A)
【文献】米国特許第03725425(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第00436481(EP,A1)
【文献】特開2021-161035(JP,A)
【文献】DEBLANDER, J et al.,New short and general synthesis of three key Maillard flavour compounds: 2-Acetyl-1-pyrroline, 6-acetyl-1,2,3,4-tetrahydropyridine and 5-acetyl-2,3-dihydro-4H-1,4-thiazine,Food Chemistry,2015年,Vol. 168,pp. 327-331
【文献】HARRISON, TJ et al.,An Expeditious, High-Yielding Construction of the Food Aroma Compounds 6-Acetyl-1,2,3,4-tetrahydropyridine and 2-Acetyl-1-pyrroline,The Journal of Organic Chemistry,2005年,Vol. 70,pp. 10872-10874
【文献】HOFMANN, T et al.,Flavor Contribution and Formation of the Intense Roast-Smelling Odorants 2-Propionyl-1-pyrroline and 2-Propionyltetrahydropyridine in Maillard-Type Reactions,Journal of Agricultural and Food Chemistry,1998年,Vol. 46,pp. 2721-2726
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A23L
C11B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒中でプロリン、1,3-ジヒドロキシアセトン及び亜硫酸水素ナトリウムを攪拌混合して反応させることによって2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物を製造する方法であって、
(a)有機溶媒の常圧での沸点(X℃)と攪拌混合させる反応温度(Y℃)の差(X-Y)が70℃以上200℃以下になるように有機溶媒及び反応温度を選択すること、及び、(b)攪拌混合させる反応温度を50℃を超えて80℃以下の範囲内で選択すること、
を特徴とし、
ここで、2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物は、2-アセチル-3,4,5,6-テトラヒドロピリジン、2-アセチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリジンのいずれか一方又は双方を含むこと、
を特徴とする2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物の製造方法。
【請求項2】
常圧での沸点が150℃以上300℃以下である有機溶媒を選択することを特徴とする、請求項1に記載の2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物の製造方法。
【請求項3】
比誘電率が30以上100以下である有機溶媒を選択することを特徴とする、請求項1又は2に記載の2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物の製造方法。
【請求項4】
有機溶媒が、N,N-ジメチルホルムアミド、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド及びN,N-ジメチルアセトアミドからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1~3のいずれか1項に記載の2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法で製造された2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物を、さらに単蒸留によって精製することを特徴とする2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料成分として有用な2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物の工業的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物の製造方法として、いくつかの方法が存在するが、いずれも自然発火性物質、禁水性物質、自己反応性物質など危険物に指定される原料を使用する、製造工程数が多い、収率が低く経済性が低いなど、工業的に製造する上で課題があった。
【0003】
たとえば、特許文献1記載の方法は、亜硫酸水素ナトリウム、L-プロリン、1,3-ジヒドロキシアセトンを紛体混合して、80~100℃で30分間反応させることを特徴とするが、紛体で混合するため反応中に原料が固化するため収率が低いという課題があった。特許文献1に倣って当該化合物を合成したところ、単蒸留後の収率は1.8%、純度は80.5%であった。
【0004】
特許文献2記載の方法は、発火性原料を使用するため製造上の問題があり、収率も低いという課題があった。
特許文献3記載の方法は、発火性原料を使用するため製造上の問題があり、反応の工程数が多く、収率も低いという課題があった。
特許文献4記載の方法は、発火性原料を使用するため製造上の課題があった。
【0005】
非特許文献1記載の方法は、発火性原料を使用するため製造上の課題があった。
非特許文献2、3記載の方法は、いずれも発火性原料を使用するため製造上の問題があり、さらに反応の工程数が多いという課題があった。
非特許文献4、5記載の方法はいずれも高価な原料から合成反応を開始するため、経済的に課題があった。
【0006】
また、特許文献5記載の方法は、プロリン、糖類、穀粉、アルカリ剤、水、食用油を加熱して得られる、2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物を有効成分として含む風味付与剤の製造方法であるが、2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物の収率及び反応後の精製に課題があった。
【0007】
一方、2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物は、香料原料として非常に有益な成分で、この香料成分を安価に大量に製造する方法が望まれていた。
特許文献6には、2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物に風味付与効果があることが記載され、特許文献7には乳風味飲食品のコク味増強効果があることが記載されている。
また、特許文献8には、2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物がデキストリンや加熱臭をマスキングする効果があることが記載されている。
このように、2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物については、香料成分として飲食品に対する様々な効果が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第3,725,425号明細書
【文献】国際公開第2010/149744号
【文献】独国特許出願公開第4217395号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0436481号明細書
【文献】特開2020-89296号公報
【文献】特開2020-89295号公報
【文献】特許第6805477号公報
【文献】特開2017-148021号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】Journal of Organic Chemistry;70,10872-10874(2005)
【文献】Tetrahedron Letters;46,4213-4217(2005)
【文献】Journal of Agricultural and Food Chemistry;46(2),616-619(1998)
【文献】Journal of Organic Chemistry;36(4),609-610(1971)
【文献】Food Chemistry;168,327-331(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従来技術の欠点を解消し、有用化合物である2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物を安価、簡便、安全かつ高い収率で製造する方法を提供することである。
【0011】
本発明者は、従来知られている公知の方法を工業スケールで実施する際の課題について整理した。
表1に示すように、工業原料としては高価な原料の使用、発火性、爆発性のある危険物に分類される原料の使用、製造に特殊な設備が必要、収率の低さなど、いずれの方法でも工業的生産に適さない、すなわち安価で安定的に供給する点において課題があることが明確になった。
【0012】
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、汎用的で発火性のない原料のみを使用して、収率の高い合成方法を検討した。
有機溶媒中で、安価で汎用的な原料で作業安全上の懸念が無い亜硫酸水素ナトリウム、L-プロリン、1,3-ジヒドロキシアセトンのみを原料として使い、これらを加熱反応と蒸留するだけの簡単な合成方法を検討した。
鋭意検討の結果、反応で使用する有機溶媒を検討した結果、下記の条件(a)~(d)に適合する有機溶媒を使用し、反応温度を設定した場合に限り、2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物を収率良く合成できることを見出した。
なお、本発明において、2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物は、2-アセチル-3,4,5,6-テトラヒドロピリジン、2-アセチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリジンのいずれか又は双方を含む化合物である。
【0014】
(a)有機溶媒の常圧での沸点(X℃)と攪拌混合させる反応温度(Y℃)の差(X-Y)が70℃以上200℃以下になるように有機溶媒及び反応温度を選択する。
(b)攪拌混合させる反応温度を50℃を超えて80℃以下の範囲内で選択する。
(c)沸点が150℃以上300℃以下である有機溶媒を選択する。
(d)比誘電率が30以上100以下である有機溶媒を選択する。
【0015】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕有機溶媒中でプロリン、1,3-ジヒドロキシアセトン及び亜硫酸水素ナトリウムを攪拌混合して反応させることによって2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物を製造する方法であって、
(a)有機溶媒の常圧での沸点(X℃)と攪拌混合させる反応温度(Y℃)の差(X-Y)が70℃以上200℃以下になるように有機溶媒及び反応温度を選択すること、及び、
(b)攪拌混合させる反応温度を50℃を超えて80℃以下の範囲内で選択すること、
を特徴とし、
ここで、2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物は、2-アセチル-3,4,5,6-テトラヒドロピリジン、2-アセチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリジンのいずれか一方又は双方を含むこと、
を特徴とする2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物の製造方法。
【0016】
〔2〕常圧での沸点が150℃以上300℃以下である有機溶媒を選択することを特徴とする、上記1の2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物の製造方法。
〔3〕比誘電率が30以上100以下である有機溶媒を選択することを特徴とする、上記1又は2の2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物の製造方法。
【0017】
〔4〕有機溶媒が、N,N-ジメチルホルムアミド、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド及びN,N-ジメチルアセトアミドからなる群より選ばれた少なくとも1種である上記1~3のいずれかに記載の2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物の製造方法。
【0018】
〔5〕上記の方法で製造された2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物を、さらに単蒸留によって精製することを特徴とする上記1~4のいずれかに記載の2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物の製造方法。
〔6〕上記1~5のいずれかに記載の方法で製造された2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物を有効成分とする香料組成物。
【発明の効果】
【0019】
本発明の方法によれば、香料成分、特に飲食品用香料として有用な2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物を安価、簡便、安全かつ高い収率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物の製造方法について、詳細に説明する。
〔1〕原材料
2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物を合成するため使用する原材料は、プロリン、1,3-ジヒドロキシアセトン及び亜硫酸水素ナトリウムである。
プロリンは、アミノ酸として市販されている工業用途のL-プロリンを適宜使用することができる。
1,3-ジヒドロキシアセトンは、市販されている工業用途の1,3-ジヒドロキシアセトンを適宜使用することができ、同様に亜硫酸水素ナトリウムについても市販されている工業用途の亜硫酸水素ナトリウムを適宜使用することができる。
【0021】
各原材料の配合比は、好ましくは、1,3-ジヒドロキシアセトン1モルに対し、プロリンが1~5モル、亜硫酸水素ナトリウムが1~5モルとなるように使用する。
より好ましくは1,3-ジヒドロキシアセトン1モルに対し、プロリンが1~3モル、亜硫酸水素ナトリウムが2~4モルであり、更に好ましくは1,3-ジヒドロキシアセトン1モルに対し、プロリン1.5~2.5モルと亜硫酸水素ナトリウム2~3モルとなるように使用する。
【0022】
〔2〕有機溶媒
本発明で使用する有機溶媒は、常圧での沸点が150℃以上300℃以下である有機溶媒が好ましい。
さらに、20~40℃の比誘電率が30以上100以下である有機溶媒を使用することが好ましい。ここで、物質のなかの電気変位(電束密度)Dと電場Eの関係D=εEで与えられる係数εを誘電率といい、真空の誘電率ε0との比(ε/ε0)を比誘電率という。
【0023】
上記の条件を満たす好適な有機溶媒として、N,N-ジメチルホルムアミド(沸点153℃;比誘電率36.7(25℃))、エチレンカーボネート(沸点248℃;比誘電率89.8(40℃))、ジメチルスルホキシド(沸点189℃;比誘電率46.5(25℃))、N,N-ジメチルアセトアミド(沸点165℃;比誘電率37.8(25℃))があり、これらを1種又は2種以上併用することができる。
【0024】
有機溶媒の使用量は、好ましくは1,3-ジヒドロキシアセトン1モルに対し1~10L、より好ましく1,3-ジヒドロキシアセトン1モルに対し1~6L、さらに好ましくは1,3-ジヒドロキシアセトン1モルに対し1~3Lとなるように使用する。
【0025】
〔3〕反応条件
攪拌混合させる反応温度を50℃を超えて80℃以下の範囲で選択する。
有機溶媒の沸点と反応温度の差が70℃以上200℃以下になるように選択した有機溶媒と、亜硫酸水素ナトリウム、L-プロリン、1,3-ジヒドロキシアセトンを所定量混合し加熱撹拌する。
攪拌装置は、特に限定されないが、一般的なマグネティックスターラー、メカニカルスターラーや、ニーダー、ディスパーザー、混合ミル、ラインミキサー、乳化機等、特に限定されず使用できる。
【0026】
加熱攪拌する時間は、好ましくは0.5~5時間で、より好ましくは0.5~3時間、さらに好ましくは1~2時間が好ましい。
また、50℃以下では合成反応が進まず、80℃を超えると副反応が起こるため2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物の収率が低くなる。したがって、反応温度は50℃を超えて80℃以下が好ましく、より好ましくは55℃~80℃、さらに好ましくは60℃~80℃が好ましい。
【0027】
〔4〕精製条件
2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物を含む反応混合物に抽出溶媒と水および中和用の塩基を添加し、反応混合物に含まれる水溶性成分と2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物を含む非水溶性成分を液液分離する。
この抽出溶媒は水と混和しない溶媒であればよく、炭化水素系やエーテル系溶媒が好ましい、より好ましくは炭化水素系溶媒が好ましく、さらに好ましくは、ヘキサンである。
【0028】
水溶性成分と非水溶性成分を液液分離した後、2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物を含む非水溶性の抽出溶媒画分を減圧留去することで、より純度の高い2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物を得る。
得られた2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物はこのままで使用することもできるが、香料用途の場合は、さらに精製して純度を高めることが好ましい。
具体的には、公知の蒸留設備を用いる蒸留による精製が好適である。蒸留法として、単蒸留、精留、フラッシュ蒸留、短工程蒸留などが挙げられる。
【0029】
蒸発温度は、収率の低下を防ぐために80℃以下で行うが、好ましくは70℃以下、より好ましくは40~60℃で留出させることが望ましい。
そのため、減圧下で蒸留する必要があるが、減圧用の装置は、真空ポンプの他に、油回転ポンプ、メカニカルブースターポンプ、拡散ポンプなどの装置を使うことができる。
【0030】
蒸留時の減圧度は、80℃以下で2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物が留出する圧力であれば限定されないが、より低圧で蒸留することが望ましく、2000Pa以下が好ましく、1000Pa以下がより好ましく、さらに好ましくは500Pa以下である。
また、蒸留時の重合による収率低下を防ぐために、トリアセチンやトリエチルシトレートなどの溶媒で希釈して蒸留しても良いし、トコフェロールやBHTなどの酸化防止剤を適宜使用しても良い。
【実施例】
【0031】
安価に香料原料を製造する条件として、合成反応の収率が20%以上で、精製操作が簡単な単蒸留による精製後の純度が90%以上になるように、有機溶媒の最適化を検討した。
ここで、以下の実施例および比較例に記載の収率は、原料1,3-ジヒドロキシアセトン(MW=90.08)に対する生成物2-アセチルテトラヒドロピリジン(MW=125.171)のモル割合を意味する。
【0032】
〔実施例1〕
N,N-ジメチルホルムアミド240.0g、亜硫酸水素ナトリウム120.0g、L-プロリン80.0g、1,3-ジヒドロキシアセトン40.0gを加熱撹拌し、60℃にて2時間反応させて反応混合物を得た。
上記反応混合物を冷却後、それに水320g、16%水酸化ナトリウム水溶液1300gを順次加えた後、ヘキサン1300gを加えて、2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物を抽出した。
抽出物に含まれるヘキサンを減圧留去後、単蒸留による精製を行い、2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物13.2g(収率23.7%)を純度99.6%で得た。
【0033】
〔実施例2〕
実施例1の反応温度を80℃に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物を23.1g(収率41.5%)と高収率で得ることができたが、純度が98.2%であった。
【0034】
〔実施例3〕
実施例1で使用したN,N-ジメチルホルムアミドの代わりに、エチレンカーボネートを用いて同様の操作を行った。2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物12.3g(収率22.1%)を純度98.8%で得た。
【0035】
〔実施例4〕
実施例1で使用したN,N-ジメチルホルムアミドの代わりに、ジメチルスルホキシドを用いて同様の操作を行った。2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物14.5g(収率26.0%)を純度99.4%で得た。
【0036】
〔実施例5〕
実施例1で使用したN,N-ジメチルホルムアミドの代わりに、N,N-ジメチルアセトアミドを用いて同様の操作を行った。2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物12.0g(収率21.6%)を純度98.6%で得た。
【0037】
〔比較例1〕
実施例1の反応温度を100℃に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物8.8g(収率15.8%)を得ることができたが、純度が32.2%であった。
【0038】
〔比較例2〕
実施例1の反応温度を50℃に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物1.1g(収率1.9%)と低収率であったが、純度が99.7%であった。
【0039】
〔比較例3〕
実施例1で使用したN,N-ジメチルホルムアミドの代わりに、水に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物は合成できなかった。
【0040】
〔比較例4〕
実施例1で使用したN,N-ジメチルホルムアミドの代わりに、アセトニトリルに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物は4.6g(収率8.3%)と低収率であったが、純度が96.6%であった。
【0041】
〔比較例5〕
実施例1で使用したN,N-ジメチルホルムアミドの代わりにニトロメタンに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物は0.7g(収率1.3%)と低収率で、純度が88.2%であった。
【0042】
〔比較例6〕
実施例1で使用したN,N-ジメチルホルムアミドの代わりに、アセトンに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物は0.3g(収率0.5%)と低収率で、純度が49.5%であった。
【0043】
〔比較例7〕
実施例1で使用したN,N-ジメチルホルムアミドの代わりに、テトラヒドロフランに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物は0.3g(収率0.5%)と低収率で、純度が40.5%であった。
【0044】
〔比較例8〕
実施例1で使用したN,N-ジメチルホルムアミドの代わりに、酢酸エチルに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物は0.5g(収率0.9%)と低収率で、純度が83.0%であった。
【0045】
〔比較例9〕
実施例1で使用したN,N-ジメチルホルムアミドの代わりに、クロロホルムに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物は0.9g(収率1.6%)と低収率で、純度が92.0%であった。
【0046】
〔比較例10〕
実施例1で使用したN,N-ジメチルホルムアミドの代わりに、t-ブチルアルコールに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物は3.3g(収率5.9%)と低収率で、純度が80.7%であった。
【0047】
上記実施例1~5、比較例1~10を表2に示す。
【0048】
【0049】
ミルクフレーバー(小川香料株式会社製)に実施例1で得られた2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物を添加し、香料組成物を作成した。その香料組成物をミルク入りコーヒーに添加したところ、乳感が向上することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の方法によれば、有機溶媒中でプロリン、1,3-ジヒドロキシアセトン、亜硫酸水素ナトリウムを攪拌混合した後、単蒸留することによって、高純度の2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物を高い収率で容易に製造することができる。
特に、本発明の方法は、発火性の高い原料を使用しないので安全性に優れ、製造工数も少ないという点で経済性に極めて優れている。
【要約】
【課題】2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物を安価にかつ簡便に製造する方法を提供すること。
【解決手段】特定の有機溶媒中でプロリン、1,3-ジヒドロキシアセトン及び亜硫酸水素ナトリウムを特定の反応温度で攪拌混合して反応させることを特徴とする2-アセチルテトラヒドロピリジン化合物の製造方法。
【選択図】なし