IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アウディ アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧 ▶ フオルクスワーゲン・アクチエンゲゼルシヤフトの特許一覧

特許7060759燃料電池用バイポーラプレート、および燃料電池
<>
  • 特許-燃料電池用バイポーラプレート、および燃料電池 図1
  • 特許-燃料電池用バイポーラプレート、および燃料電池 図2
  • 特許-燃料電池用バイポーラプレート、および燃料電池 図3
  • 特許-燃料電池用バイポーラプレート、および燃料電池 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】燃料電池用バイポーラプレート、および燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0258 20160101AFI20220419BHJP
   H01M 8/0267 20160101ALI20220419BHJP
   H01M 8/0228 20160101ALI20220419BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20220419BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20220419BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/0267
H01M8/0228
H01M8/02
H01M8/10 101
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021505642
(86)(22)【出願日】2019-07-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2019068220
(87)【国際公開番号】W WO2020025254
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】102018212878.2
(32)【優先日】2018-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591006586
【氏名又は名称】アウディ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】AUDI AG
(73)【特許権者】
【識別番号】591037096
【氏名又は名称】フオルクスワーゲン・アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】キルシュ,セバスティアン
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-238645(JP,A)
【文献】特開2008-146897(JP,A)
【文献】特表2007-522642(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0011310(US,A1)
【文献】特開2006-351334(JP,A)
【文献】特開2001-338658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池(1)用のバイポーラプレートであって、プレート本体の複数のウェブ(8)の間に形成された反応物用の流れチャネル(6)を有し、冷却剤用の流路(7)を有し、かつ、プレート本体に割り当てられるとともに勾配が形成された親水性構造を有しており、
前記親水性構造の勾配は、流れチャネル(6)の底部に向かって親水性が増加するように、ウェブ(8)に割り当てられており、
流れチャネル(6)へと開口するとともに毛管力を生成するように配置された、流れチャネル(6)への複数のマイクロチャネル(10)が、ウェブ(8)の境界面に形成された、バイポーラプレート。
【請求項2】
親水性材料から形成されることを特徴とする、請求項1に記載のバイポーラプレート。
【請求項3】
前記親水性構造が、前記ウェブ(8)上のコーティングとして形成されることを特徴とする、請求項1または2に記載のバイポーラプレート。
【請求項4】
前記複数のマイクロチャネル(10)の開口部の表面密度が、前記流れチャネル(6)の縁部から底部に向かって増加することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のバイポーラプレート。
【請求項5】
前記マイクロチャネル(10)が、前記境界に対して垂直に配向されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のバイポーラプレート。
【請求項6】
前記流れチャネル(6)の底部が、それらの隣接領域における前記ウェブ(8)よりも親水性であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のバイポーラプレート。
【請求項7】
膜電極配置(3)を有し、反応物用の流れチャネル(6)および冷却剤用の流路(7)を有するバイポーラプレート(5)と、前記膜電極配置(3)および前記バイポーラプレート(5)の間に配置されたガス拡散層(4)と、を備え、
前記バイポーラプレート(5)が、請求項1~6のいずれかに従って設計された、燃料電池。
【請求項8】
前記バイポーラプレート(5)は、その複数のウェブ(8)における、ガス拡散層(4)と面した領域において、前記ガス拡散層(4)よりも高い親水性を有することを特徴とする、請求項7に記載の燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレート本体の複数のウェブの間に形成された反応物用の流れチャネルを有し、冷却剤用の流路(lines)を有し、かつ、プレート本体に割り当てられるとともに、勾配が形成された親水性構造を有する、燃料電池用のバイポーラプレートに関する。さらに本発明は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、通常は水素である燃料と、通常は空気である酸素含有ガスとの間の電気化学反応による電気エネルギーを供給するために使用される。燃料電池は、アノードが膜の片側に形成され、カソードがその反対側に形成される膜電極配置を有する。水素ガスはアノードに供給され、空気はカソードに供給される。電極への反応物の整然とした供給を行うように、反応物のための流れチャネルに加えて冷却剤のための流路も有する、バイポーラプレートが使用される。
【0003】
電気化学反応中に生成水が生成されることに留意する必要があり、これは、燃料電池に存在する機能層、すなわち膜電極配置、およびバイポーラプレートと膜電極との間に配置されたガス拡散層にフラッディングが生じた場合、燃料電池の性能を低下させる可能性がある。結果として、流れチャネル内の流れの断面積が減少し、反応物の均一な分布に対するガス拡散層の適合性も損なわれる。
【0004】
機能層に溢れているその水を除去するために、操作条件を調整することによって、すなわち、例えば、ガスの体積流量を増やすことによって、水の溢れている機能層を解放するのが通例であったが、それは燃料電池効率の低下、または圧力や温度などの他の動作パラメータの調整時の劣化現象をもたらす。
【0005】
特許文献1は、燃料電池用のバイポーラプレートを親水性にすることを提案しており、これは、親水性プレートがチャネル内の水に薄膜を形成させ、その膜はチャネルのグループ化(grouping)に沿った流れ分布を変化させる傾向が少ないためである。親水性は、外側の金属酸化物コーティングによって生成される。
【0006】
特許文献2から、主請求項のプリアンブルによるバイポーラプレートが知られており、そのバイポーラプレートは、その平面に垂直に配向された親水性構造の勾配を有する。
【0007】
特許文献3では、超親水性表面に関して、表面に落下した水滴が所定のマイクロチャネルに吸い込まれ、毛管力によってこれらのマイクロチャネルに沿って輸送されることが指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許第112006000613号明細書
【文献】米国特許出願公開第2005/0221139号明細書
【文献】独国特許出願公開第102008034546号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、機能層のフラッディングの防止が改善されるように、冒頭で述べた種類のバイポーラプレートを設計することである。本発明の別の目的は、改良された燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1の特徴を有するバイポーラプレート、および請求項7の特徴を有する燃料電池によって達成される。本発明の便利なさらなる改良を伴う有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0011】
本発明によるバイポーラプレートは、改善された水管理を特徴としており、その力は特に、水がバイポーラプレートの縁部(edge)から流れチャネルの底部へと移動することを確実にする、異なる物理的効果によって提供される。特にマイクロチャネルが、その割り当てられた流れチャネルの方向に先細り状になっている場合、毛管力が、水の流れチャネルへの直接的な輸送を生じさせることが特に認識される。
【0012】
基本的に、バイポーラプレートは親水性材料で形成されている可能性がある。しかしながら、本発明は、バイポーラプレートが疎水性材料から形成される場合にも使用することが可能であり、すなわち、ウェブ上のコーティングとして親水性構造を形成することによって使用することができる。一例として、次に、金属酸化物の粒子の適切な配置を有する金属酸化物層を参照することができる。
【0013】
複数のマイクロチャネルの開口部(mouths)の表面密度が流れチャネルの縁部から底部に向かって増加する場合、それによりバイポーラプレートの縁部領域から流れチャネルの底部への水の輸送が促進されるため、好都合である。複数のマイクロチャネルが流れチャネルの境界に対して垂直に配向されている場合、製造の観点から便利かつ好ましいことが示されている。
【0014】
ウェブから流れチャネルへの液体の水の輸送を促進するために、流れチャネルの底部がそれらの隣接領域のウェブよりも親水性である場合、有利である。
【0015】
燃料電池が本発明によるバイポーラプレートを備えている場合、バイポーラプレートに隣接する機能層、すなわち膜電極配置およびガス拡散層からの生成水は、迅速に運び去られるため、燃料電池の改善された水管理が利用可能であり、反応ガスの体積流量により流れチャネルから水を排出するように最適な動作条件から逸脱する必要がないため、燃料電池の効率が向上する。
【0016】
水管理の改善はまた、ガス拡散層に面するそのウェブの領域において、バイポーラプレートがガス拡散層よりも高い親水性を有するという効果を有する。このような方法により、その後、本発明によるバイポーラプレートの改善された水管理を利用するために、水をガス拡散層からウェブへとターゲット方式で導くことができるためである。
【0017】
本発明のさらなる利点、特徴、および詳細は、特許請求の範囲、好ましい実施形態の以下の説明、および図面に基づいて明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】燃料電池の断面の概略図である。
図2図1に対応する従来技術の燃料電池を示す図である。
図3】ウェブから流れチャネルへの親水性の増加を示す概略図である。
図4図3に対応するウェブに割り当てられた先細り状のマイクロチャネルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1では、燃料電池が、燃料電池スタックの一部として示され、燃料電池スタックは、積層方向に積み重ねられた複数の燃料セルから形成されていることに留意されたい。
【0020】
燃料セル1は、アノードおよびカソード、ならびにアノードをカソードから分離するプロトン伝導性膜2を含み、これらは、膜電極配置3に組み合わされる。膜2は、ポリマから形成され、好ましくはスルホン化テトラフルオロエチレンポリマ(PTFE)またはパーフルオロスルホン酸(PFSA)のポリマから形成される。代替的に、膜2は炭化水素膜として形成されうる。
【0021】
触媒をアノードおよび/またはカソードにさらに添加することができ、膜2は、好ましくは、その第1の側および/またはその第2の側に、貴金属、または白金、パラジウム、ルテニウムなどの貴金属を含む混合物から構成される触媒層がコーティングされ、それぞれの燃料電池の反応において反応促進剤として機能する。
【0022】
水素含有燃料が、燃料セル1のアノードコンパートメントに供給される。高分子電解質膜燃料電池(PEM燃料電池)では、水素がアノードでプロトンと電子とに分かれる。膜2はプロトンを通過させるが、電子は透過しない。プロトンが膜2を通過してカソードに到達する一方、電子はカソードに伝達されるか、または外部回路を介してエネルギー貯蔵部に伝達される。
【0023】
酸素または酸素を含む空気が燃料セル1のカソードコンパートメントに供給され、それによりカソード側で次の反応が生じる:O2+4H++4e-→H2O。
【0024】
燃料セル1で発生する電気化学反応により、生成水が生じる。
【0025】
膜電極配置3の両側において、燃料セル1は、一方ではガス拡散層4を有するとともに他方ではバイポーラプレート5を有しており、そのバイポーラプレートには、反応物のための流れチャネル6および冷却剤のための流路7が形成される。したがって、バイポーラプレート5は、水素および酸素を膜電極配置3に伝達し、ガス拡散層4の助けを借りてそれらを均一に分配するために使用される。
【0026】
本発明の根底にある問題を説明するために、従来技術から知られている燃料セル1を図2に概略的に示しており、ここではドットとして記号化された液体水9がバイポーラプレート5のウェブ8の下に蓄積し、それによりガス拡散層4でのガス輸送が遮断されている。
【0027】
図1は、本発明によるバイポーラプレート5が使用された燃料セル1を示しており、そのバイポーラプレートには、ウェブ8に割り当てられた、勾配(gradient)に形成された親水性構造が存在する。この文脈において、図3は、ウェブ8からチャネル6への親水性の増加を示しており、その結果、液体水9に作用する力が生じ、液体水9を流れチャネル6の底部へと導く。
【0028】
この勾配は、対応する酸化物をプレートブランクに吹き付けるときに、金属バイポーラプレート5に生成することができる。グラファイトバイポーラプレート5の場合、成形されたバイポーラプレート5への対応する酸化物の化学的堆積(chemical deposition)の際に、異なる湿潤時間が用いられる。
【0029】
図4は、たとえ親水性が一定であっても、ウェブ8から流れチャネル6へと向かう力が提供されることを示しており、これはすなわち、マイクロチャネル10を先細り状にすることによって提供され、それらのマイクロチャネルは、レーザーによる機械的除去、機械加工、または、鋳造またはプレス機械の対応する幾何学的特徴により、バイポーラプレート5に形成される。
【0030】
本発明は、図3および4に示されるそれらの2つの効果の重ね合わせを提供し、図4は、マイクロチャネル10が、そのマイクロチャネル10の開口部(mouths)の一定の表面密度で、流れチャネル6の境界に対して垂直に配向されることを示す。また、水輸送に有利な方向を特徴付けるために、マイクロチャネル10の開口部の表面密度が、流れチャネル6の縁部から底部に向かって増加する可能性も考えられる。
【0031】
図1に象徴的に示されるように、流れチャネル6の底部は、それらの隣接領域のウェブ8よりも親水性であり、それにより、ガス流と共に水の排出を促進するために、液体水9が流れチャネル6の底部に輸送されることももたらされる。
【0032】
ガス拡散層4に面するそれらのウェブ8の領域において、バイポーラプレート5は、フラッディングのリスクのある機能層の的を絞ったリスクの軽減を行ない、かつ改良されたバイポーラプレート5の利点を水管理に合わせて利用することができるように、ガス拡散層4よりも高い親水性を有することにも留意されたい。
【符号の説明】
【0033】
1…燃料セル
2…膜
3…膜電極配置
4…ガス拡散層
5…バイポーラプレート
6…流れチャネル(flow channel)
7…流路(line)
8…ウェブ(web)
9…液体水
10…マイクロチャネル
図1
図2
図3
図4