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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】高温用途向けの偽造防止ラベル
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20220419BHJP
   C08L 33/08 20060101ALI20220419BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220419BHJP
   G09F 3/02 20060101ALI20220419BHJP
   C08L 33/24 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
C08J5/18 CEY
C08L33/08
C08K3/013
G09F3/02 A
C08L33/24
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021549934
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 EP2020053181
(87)【国際公開番号】W WO2020173686
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-10-26
(31)【優先権主張番号】19159619.6
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】319013746
【氏名又は名称】レーム・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Deutsche-Telekom-Allee 9, 64295 Darmstadt, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】513245819
【氏名又は名称】レーム アメリカ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Roehm America LLC
【住所又は居所原語表記】299 Jefferson Road, Parsippany, NJ 07054-0677, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジルメイ セイオム
(72)【発明者】
【氏名】マルクス パルーゼル
(72)【発明者】
【氏名】キム シュトルーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン コスタ
(72)【発明者】
【氏名】クロード グエナンタン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート ヘーリング
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-531922(JP,A)
【文献】特表2018-517003(JP,A)
【文献】特開2015-033851(JP,A)
【文献】特開昭59-025836(JP,A)
【文献】米国特許第05710216(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 33/24
C08J 5/18
C08L 33/08
C08K 3/013
G09F 3/02
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偽造防止ラベルで使用するためのポリ(メタ)アクリルイミドフィルムであって、前記ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムは、前記ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して、
ポリ(メタ)アクリルイミドを30.0重量%~92.5重量%と、
1つ以上の耐衝撃性改良剤を2.5重量%~40.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレートを0.0重量%~30.0重量%と、
1つ以上の無機フィラーを5.0重量%~40.0重量%と、
1つ以上のUV吸収剤を0.0重量%~5.0重量%と、
1つ以上のUV安定剤を0.0重量%~5.0重量%と
を含み、前記ポリ(メタ)アクリルイミドは、式(I)
【化1】
[式中、
およびRは、水素およびメチル基から独立して選択され、
は、水素、またはC~Cアルキル基である]の繰返し単位を、前記ポリ(メタ)アクリルイミドの重量に対して少なくとも50重量%含み、
前記ポリ(メタ)アクリルイミド、ポリアルキル(メタ)アクリレートおよび前記耐衝撃性改良剤の累積含有量は、前記ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して60.0重量%~95.0重量%であり、
前記ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の耐衝撃性改良剤の含有量(重量%)nimは、以下の関係:
0.5×n≦nim≦1.8×n
[ここで、nは、前記ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の無機フィラーの含有量(重量%)である]で表される、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム。
【請求項2】
前記ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムが、
15.0μm~120.0μmの厚さと、
厚さ50.0μmの箔で、DIN EN ISO 527-3/2/100(2003)に準拠して測定した場合に、3.0%~30%の公称破断点伸びと、
厚さ50.0μmの箔で、DIN EN ISO 527-3/2/100(2003)に準拠して測定した場合に、20.0MPa~70.0MPaの引張応力と
を有する、請求項1記載のポリ(メタ)アクリルイミドフィルム。
【請求項3】
前記ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムが、厚さ50.0μmの箔で、ASTM D1938(2014)に準拠して測定した場合に、0.01N/mm~1.50N/mmの引裂伝搬抵抗力を有する、請求項1または2記載のポリ(メタ)アクリルイミドフィルム。
【請求項4】
前記ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の耐衝撃性改良剤の含有量(重量%)nimが、以下の関係:
0.6×n≦nim≦1.5×n
[ここで、nは、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の無機フィラーの含有量(重量%)である]で表される、請求項1から3までのいずれか1項記載のポリ(メタ)アクリルイミドフィルム。
【請求項5】
前記1つ以上の無機フィラーが、二酸化チタン、シリカ、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、カーボンブラック、三水酸化アルミニウム、または炭酸カルシウムから選択される、請求項1から4までのいずれか1項記載のポリ(メタ)アクリルイミドフィルム。
【請求項6】
前記ポリ(メタ)アクリルイミドが、標準物質としてポリメチルメタクリレートを用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した場合に、80000g/モル~200000g/モルの平均分子量Mwを有する、請求項1から5までのいずれか1項記載のポリ(メタ)アクリルイミドフィルム。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載のポリ(メタ)アクリルイミドフィルムを含む、偽造防止ラベル。
【請求項8】
前記偽造防止ラベルが、記載された順序で少なくとも以下の層:
a)請求項1から6までのいずれか1項記載のポリ(メタ)アクリルイミドフィルムからなる層であって、40.0μm~60.0μmの厚さを有する層と、
b)接着層であって、20.0μm~30.0μmの厚さを有する層と、
c)剥離コーティング層であって、0.6μm~0.8μmの厚さを有する層と、
d)支持層であって、30.0μm~50.0μmの厚さを有する層と
を含み、
かつ/または前記偽造防止ラベルが、50.0μm~300.0μmの厚さを有する、請求項7記載の偽造防止ラベル。
【請求項9】
請求項7または8記載の偽造防止ラベルを製造するための積層体であって、前記積層体は、少なくとも以下の層:
a)ライナー層であって、厚さ50.0μmの箔で、ASTM D1004(2013)に準拠して測定した場合に、50N~500Nの初期引裂抵抗を有する、ライナー層と、
b)請求項1から6までのいずれか1項記載のポリ(メタ)アクリルイミドフィルムからなる層と
を含む、積層体。
【請求項10】
前記ライナー層が、実質的に、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリエチレンテレフタレートからなる群から選択されるポリマー材料からなる、請求項9記載の積層体。
【請求項11】
請求項9または10記載の積層体の製造方法であって、少なくとも以下のステップ:
i)押出機を用いて、請求項1から6までのいずれか1項記載のポリ(メタ)アクリルイミドフィルムを製造し、前記ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムを得るステップと、
ii)ステップi)で得られた前記ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムに、前記押出機の下流でライナー層を結合するステップと
を含む、方法。
【請求項12】
ステップii)で得られた前記積層体を複数のロールの間に通し、少なくとも前記ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの側面に面するロールが、冷却されたロールである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
請求項7または8記載の偽造防止ラベルの製造方法であって、少なくとも以下のステップ:
i)押出機を用いて、請求項1から6までのいずれか1項記載のポリ(メタ)アクリルイミドフィルムを製造するステップと、
ii)ステップi)で得られた前記ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムに、前記押出機の下流でライナー層を結合して、積層体を得るステップと、
iii)ステップii)で得られた前記積層体上に接着層、任意に剥離コーティング層および支持層を結合して、ラベルストックを得るステップと、
iv)ステップiii)で得られた前記ラベルストックをキスカットし、生じた余分なマトリックスを除去して、支持層上に存在する複数の個々の粘着偽造防止ラベルを得るステップと
を含む、方法。
【請求項14】
チップカード、文書、偽造防止ラベル、電子製品識別ラベル、自動車のボンネット下ラベル、文書シール、または値札を製造するための、請求項7または8記載の偽造防止ラベルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温用途向けの偽造防止ラベルに使用するためのポリ(メタ)アクリルイミドフィルム、および該フィルムを含む偽造防止ラベルに関する。本フィルムは、押出成形によって有利に製造することができ、使用目的に応じて、透明、半透明、または完全に不透明、例えば白色となるように設計することができる。理想的には、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムおよび該フィルムを含む偽造防止ラベルは、スリットや孔などの意図的な破断箇所を有しない。
【0002】
本発明の偽造防止ラベルは、優れた耐薬品性、耐高温性、および高い耐候性を有する。特に、本ラベルは、自動車分野で一般的に使用される様々な化学物質の存在下で優れた耐薬品性を示す。これらの理由により、本発明の偽造防止ラベルは、いかなる寸法においても収縮の兆候を示すことなく、100℃を超える温度上昇が起こり得る用途において有利に使用することができる。このような用途には、とりわけ、電子製品識別ラベル、高温で動作するチップ、電気エンジンおよび発光デバイスなどの電子モジュールのラベル、様々な自動車のボンネット内ラベル、道路税ステッカー、文書シール、製品盗難防止用ラベルなどが挙げられる。
【0003】
先行技術
偽造防止ラベルは、セキュリティラベルまたは模倣品対策ラベルとしても知られ、模倣品との戦いにおいてますます重要性を増している。通常、ラベル付けされた基材へのそれらの結合強度は、ラベル自体の強度(曲げ強度または引裂強度)よりも高い。したがって、理想的には、そのようなラベルを、ラベル付けされた物品から破壊せずに剥離することはできない。
【0004】
破壊せずには剥離することができない偽造防止ラベルは、チップカード、パスポート、道路税ステッカー、製品盗難防止用ラベル、または値札などの文書の保護など、様々な用途で使用されている。典型的な先行技術のチップカードは、最大12個の個々の部品からなり、最大30個の個々のプロセスステップで組み立てられ、プログラムされる。このような操作では、支持層、磁気ストリップを有する層、および別個のラミネートが各機能に適用される。通常、適切な耐候性、引掻き傷の防止、およびUV保護を実現するには、1つ以上の層が必要である。さらなる層では、模倣品対策セキュリティを実現するために、破壊せずには除去することができないセキュリティ層が施与される。最後に、上記の他の層は印刷が難しいため、印刷は、しばしば別の外層に見られる。
【0005】
高温用途向けの従来のラベルは、一般に、PET、PVC、PE、またはBOPP製の任意に印刷可能な支持層を含む。耐候性を安定させるために、片面に感圧接着剤を使用してこの層に積層された第2の層が必要である。この第2の層は通常、ポリカーボネート、PET、またはPVCから構成されている。この種の層は、特に処理を改善する目的で、限られた脆性を有しなければならないため、これらのラベルを破壊せずには除去することができないようにするには、切り込みやミシン目による追加の構造化が必要となる。残念ながら、上記の材料は、以前から広い温度範囲で望ましくない収縮の兆候を示す傾向がある。特に、押出フィルムは、縦方向、すなわち押出方向に大幅に収縮することが多い。収縮により読み取り不能になるおそれがあるため、ラベルにバーコードなどの機械可読記号が付いている場合には、この挙動は特に不利である。
【0006】
実質的にニートなPVCフィルム製の偽造防止ラベルも、特に白色フィルムの形態で知られている。これらのフィルムは、望ましいことに低い初期引裂強度を有する。ただし、残念ながら、PVCフィルムは比較的高い引裂伝搬抵抗力を有する。これは、PVCフィルムが、特定の状況下で、許可されていない人によって、ラベル付けされた基材から、わずかなほとんど目立たない裂け目のみを伴って剥離されるおそれがあることを意味する。さらに、PVCフィルムの熱安定性は限られている。
【0007】
偽造防止ラベルは非常に脆いため、工業規模での製造および取扱いは、一般的な粘着ラベルの製造および取扱いよりもはるかに困難である。例えば、偽造防止ラベルに使用されるアクリルフィルムなどのフィルムが押出成形により製造された場合には、破れたり裂けたりし易くなり得るため、そのようなフィルムの取扱いや使用に支障をきたす。
【0008】
この課題を克服するために、米国特許第6,280,835号明細書では、支持体として使用されるポリエチレンテレフタレート箔を、熱可塑性アクリル樹脂を適切な溶媒に溶解させて無機フィラーと混合して得られる液体混合物でコーティングすることにより脆性アクリルフィルムを製造することが提案されている。したがって、押出成形ステップが回避され、ポリエチレンテレフタレートフィルムは、得られる多層材料に適切な機械的安定性を提供する。さらに、得られたフィルムにおける残留溶媒は可塑剤として機能し、それによってフィルムがより柔軟になる。しかし、このようなフィルムの熱的および化学的安定性は限定的である。
【0009】
さらなる一般的な技術的課題は、ラベルが通常、表面層(表面ストック)、該表面層に接着された接着層、例えば感圧接着剤(PSA)層、任意に剥離コーティング層、および接着層または剥離コーティング層に取り外し可能に接着された支持層を含むラベルストックから製造されるという事実から生じる。ラベルストックは一般に、ロールの形態で提供される。個々のラベルは通常、表面層およびPSA層をダイカット(キスカット)し、次いで周囲の余分なマトリックスを除去して、剥離ライナーに接着した個々のラベルを残すことによって製造される。表面層の材料は非常に脆く、破れたり裂けたりし易いため、余分なマトリックスの除去は、非常に厄介である。
【0010】
ラベルの一般的な製造プロセスは、少なくとも25m/minまたはそれを上回る速度で行われる。速度が上がるとプロセスの安定性が低下し、除去時に余分なマトリックスが破れたり裂けたりするリスクが高まる。しかし、プロセスを遅くする、あるいは余分なマトリックスのウェブ幅を大きくして余分なマトリックスをより良好に除去できるようにすると、コスト的には大幅に不利になり、効率が低下し、効果が失われることがよくある。
【0011】
国際公開第2016/156137号には、ポリ(メタ)アクリレートフィルムを含む高透明性の偽造防止ラベルが記載されている。これらのラベルは耐候性に優れており、パスポート、偽造防止ラベル、道路税ステッカー、値札などの文書での使用に適している。発明者らは、ポリ(メタ)アクリレートフィルムが10重量%以下の耐衝撃性改良剤を含む場合に最良の性能を示すことを報告している。残念ながら、我々のその後の研究において、いくつかのケースで、特にかなりの量の無機フィラーの存在下では、そのようなラベルの製造プロセスがキスカット(ダイカット)のステップを含む場合に、ラベルの製造中にこのような低い耐衝撃性改良剤の含有量が問題となり得ることがわかった。このような状況下では、プロセスが高速で行われた場合に、時として、余分なマトリックスが除去時に破れたり裂けたりすることがある。さらに、そのようなフィルムの熱的および化学的安定性は、しばしば限定的である。
【0012】
原則として、余分なマトリックスの破れや引裂きに付随する課題は、個々のラベル間の距離、すなわち余分なマトリックスのウェブ幅を増やすことによって、少なくとも部分的には軽減することができる。しかし、これにより、ラベルの製造中に発生する廃棄物の量が必然的に増加し、プロセス効率が低下する。したがって、そのようなアプローチは、経済的および環境的観点から実施不可能である。
【0013】
国際公開第2019/042831号には、耐衝撃性改良ポリアルキル(メタ)アクリレート製の脆性アクリルフィルム、およびそれを含む偽造防止ラベルが教示されている。フィルムは、押出成形によって有利に製造することができ、所望の目的に応じて、半透明または完全に不透明、例えば白色となるように設計することができる。理想的には、脆性アクリルフィルム、およびそれを含む偽造防止ラベルは、スリットや孔などの意図的な破断箇所を有しない。
【0014】
欧州特許出願公開第3508323号明細書には、第1のアクリル樹脂層(α1)、芳香族ポリカーボネート樹脂層(β)、および第2のアクリル樹脂層(α2)を含む多層フィルムが記載されている。(α1)層および(α2)層を構成するアクリル樹脂は、とりわけ、ポリ(メタ)アクリルイミド樹脂を含み得る。
【0015】
米国特許第5,710,216号明細書には、以下:
a)半芳香族コポリアミド1~98.5重量%と、
b)ポリメタクリルイミド1~98.5重量%と、
c)脂肪族または芳香族多価アルコールとエピハロヒドリンとの重縮合物0.5~30重量%と
を含む熱可塑性成形材料製のフィルムが教示されている。
【0016】
特開昭59-025836号公報には、以下:
(a)ポリアミド5~95重量%と、
(b)ポリグルタルイミド95~5重量%と
を含む熱可塑性樹脂組成物が記載されている。
【0017】
課題
先行技術に照らして、本発明によって対処される課題は、高温用途向けの耐薬品性が向上した偽造防止ラベルで使用するための脆性フィルムの提供であった。特に、かかるフィルムは、表面層およびPSA層をキスカットして個々のラベルを製造し、次いで周囲の余分なマトリックスを除去して、支持層に接着した個々のラベルを残す、費用効果の高い製造プロセスで使用可能であることが望まれた。既存の押出アクリルフィルムとは対照的に、所望のフィルムは、高温で実質的に収縮の兆候を示さないことが望ましい。
【0018】
より具体的には、本発明によって対処される課題は、偽造防止ラベル製造用の脆性耐熱性フィルムであって、該フィルムは、低い初期引裂強度、低い引裂伝搬抵抗力、および短い引裂経路を有し、これによって、許可なく該フィルムを除去しようとすると完全な破れが促進されるが、裂けることなく製造および処理することができるフィルムを提供することであった。
【0019】
そのさらなる態様において、本発明は、非常に効率的に製造することができ、印刷可能であり、かつ長期間の屋外使用に適した粘着耐熱性偽造防止ラベルを提供するという課題に対処した。
【0020】
最後に、本発明は、上記の脆性耐熱フィルムおよびそれを含む粘着偽造防止ラベルの安全で費用効果の高い製造方法を開発するという課題に対処した。
【0021】
解決策
本発明は、耐衝撃性改良ポリ(メタ)アクリルイミドが、任意にポリアルキル(メタ)アクリレートの存在下で、所望の特性を有する脆性耐熱フィルムの製造に有利に使用できるという驚くべき発見に基づく。目的の用途に応じて、対応するフィルムは、透明、不透明、または実質的に不透明、例えば白色となるように設計することができる。特に、本発明者らは、驚くべきことに、ダイカット(キスカット)プロセスとそれに続く余分なマトリックスのストリッピング中に、フィルムが適切な挙動を示すことを発見した。したがって、本発明のフィルムを含む耐熱偽造防止ラベルは、個々のラベルをキスカットにより製造し、次いで周囲の余分なマトリックスを除去して、剥離ライナーに接着した個々のラベルを残すステップを用いて有利に製造することができる。少なくとも25m/minまたはそれを上回る運転速度でも、余分なマトリックスの望ましくない破壊は発生しない。
【0022】
先行技術のポリアルキル(メタ)アクリレートとは対照的に、本発明のポリ(メタ)アクリルイミドフィルムは、典型的には、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して5.0重量%未満、より好ましくは2.0重量%未満、さらにより好ましくは1.0重量%未満、特に1.0重量%未満の芳香族または脂肪族ポリアミドを含む。
【0023】
当業者であれば容易に理解できるように、以下に特定される本発明のフィルムの組成物は、成形組成物の組成物であり、これから該フィルムの少なくとも1つの層が製造される。
【0024】
本発明の一態様は、偽造防止ラベルで使用するためのポリ(メタ)アクリルイミドフィルムであって、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムは、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して、
ポリ(メタ)アクリルイミドを30.0重量%~98.0重量%と、
1つ以上の耐衝撃性改良剤を2.0重量%~50.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレートを0.0重量%~30.0重量%と、
1つ以上の無機フィラーを0.0重量%~40.0重量%と、
1つ以上のUV吸収剤を0.0重量%~5.0重量%と、
1つ以上のUV安定剤を0.0重量%~5.0重量%と
を含み、ポリ(メタ)アクリルイミドは、式(I)
【化1】
[式中、
およびRは、水素およびメチル基から独立して選択され、RおよびRは、好ましくは、メチル基を表し、
は、水素、またはC~Cアルキル基、好ましくはメチル基である]の繰返し単位を、ポリ(メタ)アクリルイミドの重量に対して少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、最も好ましくは少なくとも70重量%含み、
ポリ(メタ)アクリルイミド、ポリアルキル(メタ)アクリレートおよび耐衝撃性改良剤の累積含有量は、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して75.0重量%~100.0重量%、好ましくは85.0重量%~100.0重量%、より好ましくは95.0重量%~100.0重量%である、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムに関する。
【0025】
本発明のさらなる態様は、偽造防止ラベルで使用するためのポリ(メタ)アクリルイミドフィルムであって、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムは、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して、
ポリ(メタ)アクリルイミドを30.0重量%~92.5重量%と、
1つ以上の耐衝撃性改良剤を2.5重量%~40.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレートを0.0重量%~30.0重量%と、
1つ以上の無機フィラーを5.0重量%~40.0重量%と、
1つ以上のUV吸収剤を0.0重量%~5.0重量%と、
1つ以上のUV安定剤を0.0重量%~5.0重量%と
を含み、ポリ(メタ)アクリルイミドは、式(I)
【化2】
[式中、
およびRは、水素およびメチル基から独立して選択され、RおよびRは、好ましくは、メチル基を表し、
は、水素、またはC~Cアルキル基、好ましくはメチル基である]の繰返し単位を、ポリ(メタ)アクリルイミドの重量に対して少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、最も好ましくは少なくとも70重量%含み、
ポリ(メタ)アクリルイミド、ポリアルキル(メタ)アクリレートおよび耐衝撃性改良剤の累積含有量は、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して60.0重量%~95.0重量%、好ましくは70.0重量%~95.0重量%、さらにより好ましくは80.0重量%~95.0重量%であり、
ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の耐衝撃性改良剤の含有量(重量%)nimは、以下の関係:
0.5×n≦nim≦1.8×n
[ここで、nは、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の無機フィラーの含有量(重量%)である]で表される、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムに関する。
【0026】
本発明のさらなる態様は、上記のポリ(メタ)アクリルイミドフィルムを含む偽造防止ラベルに関する。
【0027】
本発明のさらに別の態様は、前述の偽造防止ラベル製造用の積層体であって、積層体は、少なくとも以下の層:
a)ライナー層であって、好ましくは、厚さ50.0μmの箔で、ASTM D1004(2013)に準拠して測定した場合に、50N~500Nの初期引裂抵抗を有する、ライナー層と、
b)ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムからなる層と
を含む、積層体に関する。
【0028】
本発明のさらに別の態様は、積層体の製造方法であって、少なくとも以下のステップi)およびii):
i)押出機を用いて前記ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムを製造し、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムを得るステップと、
ii)ステップi)で得られたポリ(メタ)アクリルイミドフィルムに、押出機の下流でライナー層を結合するステップと
を含む、方法に関する。
【0029】
本発明のさらに別の態様は、偽造防止ラベルの製造方法であって、少なくとも以下のステップi)~iv):
i)押出機を用いてポリ(メタ)アクリルイミドフィルムを製造するステップと、
ii)ステップi)で得られたポリ(メタ)アクリルイミドフィルムに、押出機の下流でライナー層を結合して、積層体を得るステップと、
iii)ステップii)で得られた積層体上に接着層、任意に剥離コーティング層および支持層を結合して、ラベルストックを得るステップと、
iv)ステップiii)で得られたラベルストックをキスカットし、生じた余分なマトリックスを除去して、支持層上に存在する複数の個々の粘着偽造防止ラベルを得るステップと
を含む、方法に関する。
【0030】
最後に、本発明は、チップカード、文書、偽造防止ラベル、電子製品識別ラベル、自動車のボンネット下ラベル、文書シール、または値札を製造するための偽造防止ラベルの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】キスカットプロセス後の連続ラベルストック1の概略図。後続のプロセスステップでは、余分なマトリックス3を支持層から除去することで、支持層に接着した複数の個々の偽造防止ラベル2を残す。
図2】ライナー層5とポリ(メタ)アクリルイミドフィルムからなる層6とを含む、偽造防止ラベル製造用の積層体4の側面図。
図3】少なくとも以下の層:a)ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムからなる層6、b)接着層7、c)任意に、剥離コーティング層8、およびd)支持層9を含む偽造防止ラベル2の側面図。
【0032】
詳細な説明
本発明のポリ(メタ)アクリルイミドフィルムは、以下の組成を有する:
ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して、
ポリ(メタ)アクリルイミドを30.0重量%~98.0重量%、
1つ以上の耐衝撃性改良剤を2.0重量%~50.0重量%、
ポリアルキル(メタ)アクリレートを0.0重量%~30.0重量%、
1つ以上の無機フィラーを0.0重量%~40.0重量%、
1つ以上のUV吸収剤を0.0重量%~5.0重量%、
1つ以上のUV安定剤を0.0重量%~5.0重量%。
【0033】
ポリ(メタ)アクリルイミドは、式(I)
【化3】
[式中、
およびRは、水素およびメチル基から独立して選択され、RおよびRは、好ましくは、メチル基を表し、
は、水素、またはC~Cアルキル基、好ましくはメチル基である]の繰返し単位を、ポリ(メタ)アクリルイミドの重量に対して少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、最も好ましくは少なくとも70重量%含む。
【0034】
ポリ(メタ)アクリルイミド、ポリアルキル(メタ)アクリレートおよび耐衝撃性改良剤の累積含有量は、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して75.0重量%~100.0重量%、好ましくは85.0重量%~100.0重量%、より好ましくは95.0重量%~100.0重量%である。
【0035】
当業者であれば容易に理解できるように、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して、
- ポリ(メタ)アクリルイミドと、
- 1つ以上の耐衝撃性改良剤と、
- ポリアルキル(メタ)アクリレートと、
- 1つ以上の無機フィラーと、
- 1つ以上のUV吸収剤と、
- 1つ以上のUV安定剤との量の合計は、100重量%である。
【0036】
本発明のフィルムは、必要に応じて、実質的に透明となるように設計することができる。本明細書で使用される場合、「実質的に透明」という用語は、規格ISO 13468-2(2006)に準拠して厚さ50.0μmのサンプルで測定した場合に、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%の透過率(D65)を有する材料を指す。
【0037】
本発明のさらに重要な実施形態では、脆性耐熱フィルムは、実質的に不透明であり、少なくとも1つの無機フィラーを含む。そのようなフィルムを調査したところ、本発明者らは、驚くべきことに、ダイカット(キスカット)プロセスとそれに続く余分なマトリックスのストリッピング中のそれらの挙動が、フィルム中の耐衝撃性改良剤の量と無機フィラーの量との比率に強く依存することを発見した。特に本発明者らは、フィルムの総重量に対する重量%単位で表される、1つ以上の耐衝撃性改良剤の総含有量nimが、以下の関係:
0.5×n≦nim≦1.8×n
[ここで、nは、フィルムの総重量に対する重量%単位で表される、1つ以上の無機フィラーの総含有量である]で表されるポリ(メタ)アクリルイミドフィルムが、キスカットプロセスによる加工に特に適していることを見出した。したがって、本発明のフィルムを含む偽造防止ラベルは、個々のラベルをキスカットにより製造し、次いで周囲の余分なマトリックスを除去して、剥離ライナーに接着した個々のラベルを残すステップを用いて有利に製造することができる。少なくとも25m/minまたはそれを上回る運転速度でも、余分なマトリックスの望ましくない破壊は発生しない。
【0038】
本願において、1つ以上の耐衝撃性改良剤の含有量nimは、ニート耐衝撃性改良剤の含有量である。粒状の耐衝撃性改良剤の場合には、nimは、ニート耐衝撃性改良剤粒子の含有量である。したがって、対応する耐衝撃性改良剤がゴム状粒子である場合、nimは、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中のゴム状粒子の含有量である。対応する耐衝撃性改良剤がコア・シェル型、コア・シェル・シェル型、またはコア・シェル・シェル・シェル型粒子である場合、nimは、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の粒子全体の含有量である。
【0039】
したがって、本発明の一実施形態は、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムであって、
ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して、
ポリ(メタ)アクリルイミドを30.0重量%~92.5重量%と、
1つ以上の耐衝撃性改良剤を2.5重量%~40.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレートを0.0重量%~30.0重量%と、
1つ以上の無機フィラーを5.0重量%~40.0重量%と、
1つ以上のUV吸収剤を0.0重量%~5.0重量%と、
1つ以上のUV安定剤を0.0重量%~5.0重量%と
を含み、
ポリ(メタ)アクリルイミド、ポリアルキル(メタ)アクリレートおよび耐衝撃性改良剤の累積含有量は、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して75.0重量%~95.0重量%、好ましくは85.0重量%~100.0重量%、より好ましくは95.0重量%~100.0重量%であり、
ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の耐衝撃性改良剤の含有量(重量%)nimは、以下の関係:
0.5×n≦nim≦1.8×n
好ましくは0.55×n≦nim≦1.6×n
より好ましくは0.6×n≦nim≦1.5×n
[ここで、nは、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の無機フィラーの含有量(重量%)である]で表される、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムに関する。
【0040】
さらに本発明者らは、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムが、
ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して、
ポリ(メタ)アクリルイミドを40.0重量%~80.0重量%と、
1つ以上の耐衝撃性改良剤を4.0重量%~35.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレートを0.0重量%~25.0重量%と、
1つ以上の無機フィラーを8.0重量%~35.0重量%と、
1つ以上のUV吸収剤を0.0重量%~5.0重量%と、
1つ以上のUV安定剤を0.0重量%~5.0重量%と
を含み、
ポリ(メタ)アクリルイミド、ポリアルキル(メタ)アクリレートおよび耐衝撃性改良剤の累積含有量は、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して65.0重量%~92.0重量%であり、
ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の耐衝撃性改良剤の含有量(重量%)nimは、以下の関係:
0.5×n≦nim≦1.8×n
好ましくは0.55×n≦nim≦1.6×n
より好ましくは0.6×n≦nim≦1.5×n
[ここで、nは、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の無機フィラーの含有量(重量%)である]で表される場合に、一方では、キスカットステップおよびそれに続くその後の余分なマトリックス除去を採用する製造プロセスへの適性と、他方では、偽造防止ラベルを目的の基材から剥離しようとする不正な試みに抵抗する能力とのバランスが特に有利であることを見出した。
【0041】
さらに本発明者らは、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムが、
ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して、
ポリ(メタ)アクリルイミドを45.0重量%~75.0重量%と、
1つ以上の耐衝撃性改良剤を6.0重量%~30.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレートを0.0重量%~20.0重量%と、
1つ以上の無機フィラーを10.0重量%~30.0重量%と、
1つ以上のUV吸収剤を0.0重量%~5.0重量%と、
1つ以上のUV安定剤を0.0重量%~5.0重量%と
を含み、
ポリ(メタ)アクリルイミド、ポリアルキル(メタ)アクリレートおよび耐衝撃性改良剤の累積含有量は、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して70.0重量%~90.0重量%であり、
ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の耐衝撃性改良剤の含有量(重量%)nimは、以下の関係:
0.5×n≦nim≦1.8×n
好ましくは0.55×n≦nim≦1.6×n
より好ましくは0.6×n≦nim≦1.5×n
[ここで、nは、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の無機フィラーの含有量(重量%)である]で表される場合に、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの全体的な特性をさらに改善できることを見出した。
【0042】
ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム
典型的には、本発明のポリ(メタ)アクリルイミドフィルムは、1つの単層からなり、すなわち、単層フィルムである。このようなフィルムは、溶液コーティング、キャスティング、または押出成形などの当業者に知られている方法によって製造することができ、得られるフィルムの高い生産性および有利な特性の観点から、押出成形が特に好ましい。驚くべきことに、本発明のポリ(メタ)アクリルイミドフィルムは非常に脆いにもかかわらず、フィルムは押出成形によって簡便に製造でき、例えばその後顧客に出荷するために保管するか、または偽造防止ラベルの製造に直ちに使用することができる。
【0043】
所望の目的を最適に果たすために、本発明のポリ(メタ)アクリルイミドフィルムは、好ましくは、厚さ50.0μmの箔で、DIN EN ISO 527-3/2/100(2003)に準拠して測定した場合に、20.0MPa~70.0MPaの引張応力を有する。引張応力が20.0MPa未満のフィルムでも本発明による使用には適すると思われるが、フィルムが容易に裂けるおそれがあるため、製造および取扱いの際には細心の注意を払う必要がある。
【0044】
一方で、引張応力が70.0MPaを超える本発明のポリ(メタ)アクリルイミドフィルムは、偽造防止ラベルの製造方法には非常に適しているが、そのようなラベルを使用すると、そのようなラベルが、最初にラベル付けされた基材から薄い鋭利な刃(例えば、かみそりの刃)を用いて取り外され、その後、別の基材に再度接着されるリスクが高まり得る。
【0045】
フィルムの取扱性と脆性とのバランスが良好であるという観点から、初期引裂抵抗は、好ましくは、1.0N~15.0Nの範囲である。ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの引張応力は、規格DIN EN ISO 527-3/2/100(2003)に記載されている方法など、当業者に知られている一般的な方法によって測定することができ、通常は押出方向で測定される。
【0046】
好ましくは、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムは、厚さ50.0μmの箔で、ASTM D1938(2014)に準拠して測定した場合に、0.01N/mm~1.50N/mm、好ましくは0.1N/mm~1.20N/mmの引裂伝搬抵抗力を有する。引裂伝搬抵抗力は、通常、押出方向で測定される。
【0047】
さらに、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの加工性と、最終的な偽造防止ラベルが不正な除去の試みに耐える能力との最適なバランスを確保するために、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムが、厚さ50.0μmの箔で、DIN EN ISO 527-3/2/100(2003)に準拠して測定した場合に、3.0%~30%の範囲の破断点伸びを有することが好ましく、8.0%~25.0%の範囲の破断点伸びが、取扱性の点で特に有利である。
【0048】
破断点伸びが3.0%未満の場合、フィルムの柔軟性が低すぎるため、フィルムの取扱いが困難になり、製造時にフィルムを損傷しないように十分留意すべきである。このような状況では、製造プロセスを低速で行う必要がある場合がある。一方で、破断点伸びが30.0%を超えると、フィルムの脆性が低下する傾向がある。したがって、薄い鋭利な刃で偽造防止ラベルを取り外そうとする際に、フィルムのわずかな(すなわち25%未満の)機械的変形が必ずしもその完全な破れにつながるとは限らない。これにより、経験豊富な熟練者が、十分に薄く鋭利な工具を用いて、偽造防止ラベルを元の基材(例えば、自動車のエンジンの交換部品)から取り外して別の物品(非純正の交換部品)にうまく再接着することができるリスクが高まる。ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの破断点伸びは、規格DIN EN ISO 527-3/2/100(2003)に記載されているような、当業者に知られている一般的な方法によって測定することができる。
【0049】
本発明によれば、様々な影響要因もあり、これらを変えることにより、当業者は、本発明のフィルムの破断点伸びを所望の方向に調整することができる。
【0050】
主な影響要因は、耐衝撃性改良剤および無機フィラーの量である。より具体的には、耐衝撃性改良剤の濃度を高めると破断点伸びも増大し、したがって本発明によれば、耐衝撃性改良剤の減量は、破断点伸びの低下に寄与する。
【0051】
好ましい一実施形態では、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの初期引裂抵抗は、引裂伝搬抵抗力の少なくとも10倍、好ましくは少なくとも50倍、さらにより好ましくは少なくとも100倍高い。これは特に有利であり、偽造防止ラベルを基材から不正に取り外そうとする際に発生するフィルムのわずかな破れでさえ、ラベル全体に急速に伝播し、完全なラベル破壊をもたらすことが保証される。これにより、不正なラベル取り外しのリスクがさらに低減される。
【0052】
有利には、120℃(30分)での本発明の押出フィルムの寸法安定性は、縦方向の配向(押出方向)で、0.7%以下、好ましくは0.5%以下であり、横方向(縦方向に垂直な方向)で、0.5%以下、好ましくは0.3%以下である。本発明のフィルムが押出成形以外の方法で製造される場合、その寸法安定性は、0.5%以下、好ましくは0.3%以下である。
【0053】
寸法安定性は、厚さ50.0μmのフィルムで、規格DIN EN ISO 11501(2004)に準拠して測定することができる。この測定は、120℃で30分間にわたって行うことができる。
【0054】
さらに、本発明のフィルムは、消毒剤、洗浄剤、および作動流体、ブレーキフルード、エンジンオイルなどの路上走行車で一般的に使用される様々な流体などの一般的な化学物質の存在下で優れた耐薬品性を有する。このため、フィルムは、自動車のボンネット下ラベルとしての使用に非常に適している。
【0055】
本発明のポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの厚さは、好ましくは、15.0μm~120.0μmの範囲である。厚さが15.0μm未満の場合、フィルムの製造および取扱いの際には破れないように細心の注意を払うべきである。一方で、フィルムの厚さが120.0μmを超えると、機械的安定性がかなり高くなり、これによってもまた、ラベルを不正に取り外そうとする際にフィルムが破損しないリスクが高まる。さらに、フィルムが厚いと、それを含む偽造防止ラベルが厚くなり、審美的または他の理由で不利になる可能性がある。取扱性と平坦性とのバランスが良好であるという観点から、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの厚さは、好ましくは30.0μm~90.0μmの範囲であり、40.0μm~75.0μmの範囲がさらにより好ましい。
【0056】
本発明のフィルムの厚さは、規格ISO 4593(1993)に準拠して機械的走査によって測定することができる。しかし、好ましくは、本発明のフィルムの厚さは、JEOL JSM-IT300(JEOL GmbH、フライシング、ドイツから市販)などの走査電子顕微鏡を使用して得られた顕微鏡写真を使用して測定される。この目的のために、フィルムサンプルを液体窒素で凍結させ、機械的に破壊し、新たに得られた表面を分析することができる。例えば、測定を、以下のパラメータを使用して行うことができる:
電源:タングステンフィラメント(カソード)からの電子の可変流
真空システム:ロータリーポンプ/オイル拡散ポンプ
XYZ回転傾斜:完全に電動
作動距離(WD):5~70mm(通常:10mm)
サンプルローテーション:360°
サンプルの傾き:(WDに応じて)-5から最大で90°
倍率:10x~300000x
最大解像度:約3nm
検出器:二次電子(SE)
後方散乱電子(BSE、5セグメント)
エネルギー分散型X線分析(EDS)
【0057】
ポリ(メタ)アクリルイミド
本発明で使用されるポリ(メタ)アクリルイミド(PMMI)は、式(I)
【化4】
[式中、
およびRは、水素およびメチル基から独立して選択され、RおよびRは、好ましくは、メチル基を表し、
は、水素、またはC~Cアルキル基、好ましくはメチル基である]の繰返し単位を、ポリ(メタ)アクリルイミドの重量に対して少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、最も好ましくは少なくとも70重量%含む。
【0058】
PMMIの製造方法は、例えば、欧州特許出願公開第216505号明細書、欧州特許出願公開第666161号明細書、または欧州特許出願公開第776910号明細書に開示されており、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
PMMIの製造に使用される出発材料は、メタクリル酸のアルキルエステルから誘導され、かつ総じて50.0重量%を超え、好ましくは80.0重量%を超え、特に好ましくは95.0重量%~100.0重量%の、アルキル基に1~4個の炭素原子を有するメタクリル酸のアルキルエステルの単位から構成されるポリマーを含む。メチルメタクリレートが好ましい。好ましいポリマーは、少なくとも80.0重量%、好ましくは90.0重量%を超える、特に好ましくは95.0重量%を超えるメチルメタクリレートから構成される。使用できるコモノマーには、メチルメタクリレートと共重合可能なすべてのモノマーが含まれ、特に、アルキル基に1~4個の炭素原子を有するアクリル酸のアルキルエステル、アクリロまたはメタクリロニトリル、アクリルまたはメタクリルアミド、スチレン、または無水マレイン酸が含まれる。減少した粘度が20ml/g~92ml/gの範囲、好ましくは50ml/g~80ml/gの範囲(ISO 8257(2006)、パート2で測定)にあるこのタイプの熱可塑加工可能なポリマーが好ましい。それらは、メジアン粒子径が約0.03mm~3mmの粉末またはペレットの形態で使用される。
【0060】
プロセスのあるステップにおいて、アンモニアがまずイミド化剤として使用され、プロセスの次のステップにおいて、C1~4-アルキルアミン、典型的にはメチルアミンが使用され、使用されるアンモニアと使用されるメチルアミンとのモル比が、1:0.5~1:3、好ましくは1:0.8~1:2.7、特に好ましくは1:0.9~1:1.1であることが重要である。この範囲を下回ると、得られたポリメタクリルイミドにおいてヘイズが増大するおそれがある。使用されるアンモニアに対してモル過剰のメチルアミンが存在する場合、ポリマー中のカルボン酸基の割合が、望ましくないほど増加する。
【0061】
イミド化剤を用いた反応は、ポリマーが完全にイミド化される前に終了することが好ましい。この目的のために、イミド化剤の総使用量は、例えば、基礎となるエステル単位1モルあたり、0.2~2.5モル、好ましくは0.5~1.5モル、特に好ましくは0.8~1.2モルであり得る。しかし、アンモニアとメチルアミンとの所定の定量的比率を常に維持する必要がある。これにより、約20モル%~80モル%の環状メタクリルイミド単位から構成され、かつメタクリル酸単位を5.0重量%未満の少量のみ含むポリマーが得られる。
【0062】
イミド化プロセスは、実質的にそれ自体が知られている方法で、例えば欧州特許出願公開第441148号明細書に記載されているとおりに行うことができる。イミド化は、出発ポリマーの融点を上回る温度、またはISO 306(2014)のビカットB軟化点よりも少なくとも20℃以上高い温度で最もよく進行する。得られるイミド化ポリマーの軟化点よりも少なくとも20℃以上高い反応温度を選択することがより好ましい。イミド化ポリマーのビカット軟化点は、一般的にプロセスの目標変数であり、達成すべきイミド化の度合いはそれに従って定められるため、同様に、必要な最低温度を決定することも容易に可能である。140℃~300℃の温度範囲が好ましく、特に150℃~260℃、特に好ましくは180℃~220℃の温度範囲が好ましい。反応温度が高すぎると、ポリマーの鎖がある程度切断されて粘度が低下することがある。ポリマーの不必要な熱負荷を防ぐために、例えば、反応温度を徐々にまたは段階的に上昇させ、出発ポリマーの融点よりわずかに高い温度から始め、最後の段階でのみ、イミド化された最終生成物の軟化点を少なくとも20℃超えるようにすることができる。反応の各段階では、自生圧力で操作することが好ましく、これは50バール~500バールであってよい。プロセスの各段階では、例えば脱揮のために減圧を行うことができる。ここで反応混合物の温度が下がる可能性があり、その後、必要な値に戻さなければならない。反応条件下でイミド化剤を導入する場合には、このために当然ながら適切な高圧を使用しなければならない。
【0063】
イミド化剤、例えば第一級アミンとの反応によるメタクリル酸のアルキルエステルのポリマーの部分的または完全なイミド化は、例えば、米国特許第2,146,209号明細書に開示されている。ポリマーは、適切な場合、圧力下で、イミド化剤を含む溶媒の存在下または不在下で、140℃~250℃の温度に加熱される。
【0064】
典型的には、本発明において使用するためのPMMIは、標準物質としてPMMAを用いたGPCにより測定した場合に、80000g/モル~200000g/モル、好ましくは90000g/モル~150000g/モルの重量平均分子量Mwを有する。このような材料は、PLEXIMID(登録商標)の商標でEvonik Performance Materials GmbH(ダルムシュタット、ドイツ)から市販されている。適切な製品には、PLEXIMID(登録商標)TT50、PLEXIMID(登録商標)TT70、PLEXIMID(登録商標)8805、PLEXIMID(登録商標)8813、PLEXIMID(登録商標)8817が含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
本発明のフィルムは、典型的には、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して、30.0重量%~98.0重量%、好ましくは30.0重量%~92.5重量%、より好ましくは40.0重量%~80.0重量%、さらにより好ましくは45.0重量%~75.0重量%を含む。
【0066】
ポリアルキル(メタ)アクリレート
本発明のポリ(メタ)アクリルイミドフィルムは、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して、0.0重量%~30.0重量%のポリアルキル(メタ)アクリレートを含み得る。
【0067】
ポリアルキル(メタ)アクリレートは、通常、アルキル(メタ)アクリレート、典型的にはメチルメタクリレート(a)、および少なくとも1つのさらなる(メタ)アクリレート(b)を典型的に含む混合物のフリーラジカル重合によって得られる。これらの混合物は、総じて、モノマーの重量に対して、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、特に好ましくは少なくとも80重量%、さらにより好ましくは少なくとも90重量%のメチルメタクリレート(a)を含む。総じて使用されるメチルメタクリレート(a)の量は、モノマーの重量に対して、50.0重量%~99.9重量%、好ましくは80.0重量%~99.0重量%、特に好ましくは90.0重量%~99.0重量%である。
【0068】
ポリアルキル(メタ)アクリレートを製造するためのこれらの混合物は、メチルメタクリレート(a)と共重合可能な他の(メタ)アクリレート(b)を含むこともできる。本明細書で使用される「(メタ)アクリレート」という用語は、メタクリレート、アクリレート、およびそれらの混合物を包含することを意味する。(メタ)アクリレートは、飽和アルコールから誘導されてよく、例えば、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、および2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートであってよく;また不飽和アルコールから誘導されてもよく、例えば、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート;また、アリール(メタ)アクリレート、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、またはフェニル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えば、3-ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,4-ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;グリコールジ(メタ)アクリレート、例えば、1,4-ブタンジオール(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸のアミドおよびニトリル、例えば、N-(3-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(ジエチルホスホノ)-(メタ)アクリルアミド、1-メタクリロイルアミド-2-メチル-2-プロパノール;多官能性(メタ)アクリレート、例えば、トリメチロイルプロパントリ(メタ)アクリレートであってよい。
【0069】
総じて使用される(メタ)アクリルコモノマー(b)の量は、モノマーの重量に対して、0.1重量%~50.0重量%、好ましくは1.0重量%~20.0重量%、特に好ましくは1.0重量%~10.0重量%であり、ここでの化合物は、個別に、または混合物の形態で使用することができる。
【0070】
重合反応は総じて、既知のフリーラジカル開始剤によって開始される。好ましい開始剤の中には、とりわけ当業者に周知のアゾ開始剤、例えばAIBN、および1,1-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、およびペルオキシ化合物、例えば、メチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、tert-ブチル2-エチルペルヘキサノエート、ケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、tert-ブチル2-エチルペルオキシヘキサノエート、tert-ブチル3,5,5-トリメチルペルオキシヘキサノエート、ジクミルペルオキシド、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、tert-ブチル-ヒドロペルオキシド、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、上記の化合物の2つ以上の相互の混合物、および上記の化合物と言及されていないが同様にフリーラジカルを形成し得る化合物との混合物が含まれる。
【0071】
重合される組成物には、上記のメチルメタクリレート(a)および(メタ)アクリレート(b)だけでなく、メチルメタクリレートおよび上記の(メタ)アクリレートと共重合可能な他の不飽和モノマーも含まれ得る。これらの中で、とりわけ、1-アルケン、例えば、1-ヘキセン、1-ヘプテン;分岐状アルケン、例えば、ビニルシクロヘキサン、3,3-ジメチル-1-プロペン、3-メチル-1-ジイソブチレン、4-メチル-1-ペンテン、ノルボルネン;アクリロニトリル;ビニルエステル、例えば、酢酸ビニル;スチレン、側鎖にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばα-メチルスチレン、およびα-エチルスチレン、環上にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えば、ビニルトルエン、およびp-メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、例えば、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン、およびテトラブロモスチレン;ビニルエーテルおよびイソプレニルエーテル;マレイン酸誘導体、例えば、無水マレイン酸、無水メチルマレイン酸、マレイミド、メチルマレイミド;およびジエン、例えば、ジビニルベンゼンが含まれ得る。
【0072】
総じて使用されるこれらのコモノマー(c)の量は、モノマーの重量に対して、0.0重量%~20.0重量%、好ましくは0.0重量%~15.0重量%、特に好ましくは0.0重量%~10.0重量%であり、ここでの化合物は、個別に、または混合物の形態で使用することができる。
【0073】
重合可能な成分として、以下:
(a)メチルメタクリレートを50.0重量%~99.9重量%と、
(b)C~Cアルコールのアクリル酸エステルを0.1重量%~50.0重量%と、
(c)モノマー(a)および(b)と共重合可能なモノマーを0.0重量%~10.0重量%と
を有する組成物の重合によって得ることができるポリアルキル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0074】
さらに別の実施形態では、85.0重量%~99.5重量%のメチルメタクリレートおよび0.5重量%~15.0重量%のメチルアクリレートから構成されるポリアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、ここで、これらの量は、100重量%の重合可能な成分に対するものである。特に有利なコポリマーは、90.0重量%~99.5重量%のメチルメタクリレートおよび0.5重量%~10.0重量%のメチルアクリレートの共重合によって得られるものであり、これらの量は、100重量%の重合可能な成分に対するものである。例えば、ポリアルキル(メタ)アクリレートは、91.0重量%のメチルメタクリレートおよび9.0重量%のメチルアクリレート、96.0重量%のメチルメタクリレートおよび4.0重量%のメチルアクリレート、または99.0重量%のメチルメタクリレートおよび1.0重量%のメチルアクリレートを含み得る。前記ポリアルキル(メタ)アクリレートのビカット軟化点VSP(ISO 306(2013)、方法B50)は、典型的には少なくとも90℃、好ましくは95℃~112℃である。
【0075】
ポリアルキル(メタ)アクリレートの重量平均分子量Mwは、総じて80000g/モル~300000g/モルの範囲である。特に有利な機械的特性は、いずれの場合もPMMA校正標準物質および溶離液としてのTHFに対するGPCによって測定した場合に、平均分子量Mwが80000g/モル~200000g/モルの範囲、好ましくは100000g/モル~180000g/モルの範囲、より好ましくは120000g/モル~180000g/モルの範囲であるポリアルキル(メタ)アクリレートを有する箔から得られる。
【0076】
本発明のフィルムでの使用に適したポリアルキル(メタ)アクリレートは、PLEXIGLAS(登録商標)の商標でEvonik Performance Materials GmbH(ダルムシュタット、ドイツ)から市販されている。このような製品には、PLEXIGLAS(登録商標)7N、PLEXIGLAS(登録商標)7H、PLEXIGLAS(登録商標)8N、PLEXIGLAS(登録商標)8H、およびPLEXIGLAS(登録商標)Heatresist FT15が含まれるが、これらに限定されない。
【0077】
本発明のフィルムは、典型的には、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して、0.0重量%~30.0重量%、好ましくは0.0重量%~25.0重量%、より好ましくは0.0重量%~20.0重量%のポリアルキル(メタ)アクリレートを含む。
【0078】
耐衝撃性改良剤
本発明で使用するための耐衝撃性改良剤自体は周知であり、異なる化学組成および異なるポリマー構造を有し得る。耐衝撃性改良剤は、架橋されているかまたは熱可塑性であり得る。さらに、耐衝撃性改良剤は、コア・シェル型、コア・シェル・シェル型、またはコア・シェル・シェル・シェル型粒子としての粒状形態であり得る。典型的には、粒状の耐衝撃性改良剤は、20nm~500nm、好ましくは50nm~450nm、より好ましくは100nm~400nm、最も好ましくは150nm~350nmの平均粒径を有する。この文脈での「粒状」とは、総じてコア・シェル型、コア・シェル・シェル型、またはコア・シェル・シェル・シェル型構造を有する架橋された耐衝撃性改良剤を意味する。平均粒径は、当業者に知られている方法、例えば、規格DIN ISO 13321(1996)に準拠した光子相関分光法によって測定することができる。
【0079】
最も単純な場合、粒状の耐衝撃性改良剤は、平均粒径が10nm~150nm、好ましくは20nm~100nm、特に30nm~90nmの範囲にある、乳化重合によって得られる架橋粒子である。これらは総じて、少なくとも20.0重量%、好ましくは20.0重量%~99.0重量%、特に好ましくは30.0重量%~98.0重量%の範囲のブチルアクリレート、および0.1重量%~2.0重量%、好ましくは0.5重量%~1.0重量%の架橋モノマー、例えば多官能性(メタ)アクリレート、例えばアリルメタクリレート、および適切な場合には他のモノマー、例えば、0.0重量%~10.0重量%、好ましくは0.5重量%~5.0%重量%のC~C-アルキルメタクリレート、例えば、エチルアクリレートもしくはブチルメタクリレート、好ましくはメチルアクリレート、または他のビニル重合性モノマー、例えばスチレンから構成される。
【0080】
好ましい耐衝撃性改良剤は、2層または3層のコア・シェル型構造を有することができ、かつ乳化重合によって得られるポリマー粒子である(例えば、欧州特許出願公開第0113924号明細書、欧州特許出願公開第0522351号明細書、欧州特許出願公開第0465049号明細書、および欧州特許出願公開第0683028号明細書参照)。本発明のフィルムは、典型的には、20nm~500nm、好ましくは50nm~450nm、より好ましくは100nm~400nm、最も好ましくは150nm~350nmの範囲の、これらのエマルションポリマーの適切な平均粒径を必要とする。
【0081】
コアと2つのシェルとを備えた3層または3相構造は、次のように製造することができる。最も内側の(ハード)シェルは、例えば、主にメチルメタクリレート、少量のコモノマー、例えば、エチルアクリレート、およびある割合の架橋剤、例えば、アリルメタクリレートから構成することができる。中央の(ソフト)シェルは、例えば、ブチルアクリレートおよび必要に応じてスチレンを含むコポリマーから構成することができ、最も外側の(ハード)シェルは、実質的にマトリックスポリマーと同じであるため、マトリックスとの相容性および良好な結合が得られる。
【0082】
2層または3層のコア・シェル型構造の耐衝撃性改良剤のコアまたはシェル中のポリブチルアクリレートの割合は、耐衝撃性改良作用にとって非常に重要であり、耐衝撃性改良剤の総重量に対して、好ましくは20.0重量%~99.0重量%の範囲、特に好ましくは30.0重量%~98.0重量%の範囲、さらにより好ましくは40.0重量%~97.0重量%の範囲である。
【0083】
ブチルアクリレートのコポリマーを含む粒状の耐衝撃性改良剤に加えて、シロキサンを含む耐衝撃性改良剤の使用も可能である。しかし、そのような改良剤の使用は、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムにおけるそれらの存在がフィルムの印刷適性にとって不利になる傾向があるため、さほど有利ではない。
【0084】
メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)コア・シェル型耐衝撃性改良剤もまた、PMMIとの相容性が優れているため、本発明のフィルムでの使用に非常に適している。対応する耐衝撃性改良剤は、いくつかのメーカーから市販されており、例えば、Arkema FranceからClearstrength(登録商標)の商標で市販されており、これには、Clearstrength(登録商標)XT100、Clearstrength(登録商標)140、Clearstrength(登録商標)223、Clearstrength(登録商標)303H、Clearstrength(登録商標)320、Clearstrength(登録商標)350、Clearstrength(登録商標)859などの製品が含まれる。同様に適切であるのは、PARALOID(商標)の商標でThe Dow Chemical Companyにより製造されているMBSコア・シェル型耐衝撃性改良剤であり、例えば、PARALOID(商標)EXL-2620、PARALOID(商標)EXL(商標)2650J、PARALOID(商標)EXL-2690、PARALOID(商標)EXL-2691、PARALOID(商標)EXL-2668、およびPARALOID(商標)EXL-3361の製品である。これらの耐衝撃性改良剤を使用すると、ヘイズ値が特に低くかつ光学的透明性に優れたPMMIフィルムを製造することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、コア・シェル・シェル・シェル型耐衝撃性改良剤の使用は、本発明のフィルムの機械的特性に関して有利である。対応する耐衝撃性改良剤は、国際公開第2014/035608号に詳細に記載されており、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0086】
熱可塑性耐衝撃性改良剤は、粒状の耐衝撃性改良剤とは異なる作用機序を有する。それらは総じて、マトリックス材料と混合される。例えば、ブロックコポリマーを使用した場合に生じるようにドメインが形成される場合、例えば電子顕微鏡で測定できるドメインの好ましいサイズは、コア・シェル型粒子の好ましいサイズに相当する。
【0087】
熱可塑性耐衝撃性改良剤には様々なクラスがある。その一例は、脂肪族TPU(熱可塑性ポリウレタン)であり、例えばCovestro AGから市販されているDesmopan(登録商標)製品である。例えば、TPUであるDesmopan(登録商標)WDP 85784A、WDP 85092A、WDP 89085A、およびWDP 89051Dは、すべて1.490~1.500の屈折率を有し、耐衝撃性改良剤として特に適している。
【0088】
耐衝撃性改良剤として本発明の箔で使用するのに適したさらなるクラスの熱可塑性ポリマーは、メタクリレート-アクリレートブロックコポリマーであり、特に、PMMA-ポリ-n-ブチルアクリレート-PMMAトリブロックコポリマーを含み、かつKurarayからKurarity(登録商標)の製品名で市販されているアクリル系TPEである。ポリ-n-ブチルアクリレートブロックは、ポリマーマトリックス内に10nm~20nmのサイズのナノドメインを形成する。
【0089】
上記の熱可塑性耐衝撃性改良剤に加えて、PVDFを含む熱可塑性耐衝撃性改良剤の使用も可能である。しかし、そのような改良剤の使用は、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムにおけるそれらの存在がフィルムの印刷適性を悪化させる傾向があるため、さほど有利ではない。
【0090】
本発明のフィルムは、典型的には、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して、2.0重量%~50.0重量%、好ましくは2.5重量%~40.0重量%、より好ましくは4.0重量%~35.0重量%、さらにより好ましくは6.0重量%~30.0重量%を含む。
【0091】
さらに、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中のポリ(メタ)アクリルイミド、ポリアルキル(メタ)アクリレート、および耐衝撃性改良剤(以下、「耐衝撃性改良ポリ(メタ)アクリルイミド」という)の累積含有量は、通常、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して、60重量%~100重量%、より好ましくは65.0重量%~90.0重量%、さらにより好ましくは70.0重量%~85.0重量%、さらにより好ましくは75.0重量%~80.0重量%、さらにより好ましくは85.0重量%~100.0重量%、さらにより好ましくは90.0重量%~100.0重量%、さらにより好ましくは95.0重量%~100.0重量%となるように調整される。
【0092】
無機フィラー
本発明のポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の無機フィラーの存在は、いくつかの目的に役立つ。ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムが、外観に光沢がない粗い表面を有し、かつ容易に印刷可能であるのは、指定された量の無機フィラーの存在によるものである。印刷は主に、レーザー印刷、インクジェット印刷、フレキソグラフィック印刷、デジタル印刷またはスクリーン印刷などの先行技術で知られている任意の方法によって達成することができる。
【0093】
さらに、無機フィラーの存在により、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムを所望の色および透明度にすることができる。例えば、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中に二酸化チタンが存在すると、フィルムは白色になり、実質的に不透明になる。
【0094】
最後に、すでに上記で説明したように、驚くべきことに、無機フィラーの量は、取扱い時のフィルムの挙動、特に偽造防止ラベルの製造時のキスカットステップ後の余分なマトリックスの挙動に強い影響を与えることが判明した。
【0095】
製造時のポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの良好な取扱い、および偽造防止ラベルの製造におけるそのさらなる使用を保証するためには、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の耐衝撃性改良剤の含有量(重量%)nimが、以下の関係:
0.5×n≦nim≦1.8×n
[ここで、nは、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の無機フィラーの含有量(重量%)である]に従うことが最も重要である。
【0096】
ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の耐衝撃性改良剤の含有量nimが0.5×nより低い場合、フィルムは、原則的には依然として偽造防止ラベルでの使用に適しているであろう。しかし、表面層およびPSA層をキスカットし、次いで周囲の余分なマトリックスを除去して、支持層(剥離ライナー)に接着した複数の個々のラベルを残すプロセスによって、支持層に並べて接着した複数の個々の偽造防止ラベルを製造することは、不可能となるであろう。そのような試みは、余分なマトリックスの破れを招くであろう。
【0097】
一方で、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の耐衝撃性改良剤の含有量nimが1.8×n[ここで、nは、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の無機フィラーの含有量である]より高い場合、フィルムの脆性はかなり低くなる。結果として、元の基材から偽造防止ラベルが不正に取り外されるリスクが大幅に増加する。
【0098】
さらに、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの加工性と得られた偽造防止ラベルの感度とのさらにより良好なバランスを達成するためには、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の耐衝撃性改良剤の含有量(重量%)nimが、以下の関係:
0.55×n≦nim≦1.6×n
[ここで、nは、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の無機フィラーの含有量(重量%)である]に従うことが特に有益である。
【0099】
さらに、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの加工性と得られた偽造防止ラベルの感度とのさらにより良好なバランスを達成するためには、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の耐衝撃性改良剤の含有量(重量%)nimが、以下の関係:
0.6×n≦nim≦1.5×n
[ここで、nは、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の無機フィラーの含有量(重量%)である]に従うことが特に有利である。
【0100】
本発明で使用するための無機フィラーは、特に限定されず、例えば、二酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、カーボンブラック、シリカ、硫酸バリウム、三水酸化アルミニウム、もしくは炭酸カルシウム、またはそれらの混合物などのフィラーから選択することができる。
【0101】
理想的には、無機フィラーが示す45μmのスクリーン残留物は0.1重量%以下であり、すなわち、45μmを超える粒子径を有する凝集物は実質的に存在せず、これは、本発明による使用に非常に有利である。これにより、大きなフィラー凝集体が存在することなく、無機フィラーをポリ(メタ)アクリレートフィルムのマトリックスに特に均一に分散させることができるため、得られるフィルムは実質的に均一な外観を示すとともに、適切な機械的特性を有する。総じて言えば、フィルム内にかなりの量のより大きなフィラー凝集物が存在することは、そのような凝集物がフィルム亀裂を開始する傾向があり、それによってフィルムのランダムな位置での初期引裂強度が低下するため、不利である。
【0102】
好ましい実施形態では、無機フィラーは、0.05μm~10.0μm、より好ましくは0.1μm~5.0μm、特に好ましくは0.1μm~1.0μm、さらにより好ましくは0.1μm~0.5μmの範囲の重量平均粒径d50を有する。重量平均粒径d50は、当業者に公知の適切な方法によって決定することができ、例えば、Beckman Coulter Inc製N5 Submicron Particle Size Analyzerなどの市販の機器を用いて、規格DIN ISO 13321(1996)に準拠して光子相関分光法によって、または1.0μmを超えるサイズの粒子の場合は、Horiba Scientific Ltd.製SZ-10 Nanoparticle Analyzerなどの機器を用いた静的光散乱法によって決定することができる。
【0103】
ポリ(メタ)アクリレート系マトリックス材料における無機フィラー粒子の特に均一な分散性を保証するためには、無機フィラーの吸油量が5g/100gフィラー以上、好ましくは10g/100gフィラー以上、特に好ましくは15g/100gフィラー以上であることがさらに有利である。無機フィラーの吸油量が100g/100gフィラー以下、好ましくは70g/100gフィラー以下、特に好ましくは50g/100gフィラー以下であることがさらに有益である。吸油量は、規格DIN EN ISO 787-5(1995)に準拠して測定することができる。
【0104】
例えば、フィルムの白色の呈色が望まれる場合には、二酸化チタンをフィラーとして有利に使用することができる。典型的には、ルチルまたはアナターゼの形態の二酸化チタンを使用することができ、その際、ルチルの形態の二酸化チタンは、その低い光触媒活性ゆえに特に好ましい。そのような材料は、塩化物法によって製造され、例えばKRONOS TITAN GmbH(レーバークーゼン、ドイツ)などの様々な供給業者から市販されている。
【0105】
適切な二酸化チタンフィラーは、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、または他の薬剤の非水溶性酸化物で修飾されていてもいなくてもよく、これらの薬剤材料は、特性を改善するために特別に導入され、そのために顔料が使用される。二酸化チタンフィラーは、理想的には、硫酸バリウム、クレイ、ケイ酸マグネシウム、チョークなどの体質顔料を含まないことが望ましい。特に好ましいのは、分類ASTM D476(2015)によるタイプII、III、およびIVの二酸化チタンフィラーである。
【0106】
本発明のフィルムは、通常、1つ以上の無機フィラーを、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して、0.0重量%~40.0重量%、好ましくは5.0重量%~40.0重量%、より好ましくは8.0重量%~35.0重量%、さらにより好ましくは10.0重量%~30.0重量%含む。
【0107】
UV吸収剤およびUV安定剤
本発明のフィルムで使用するためのUV吸収剤およびUV安定剤は周知であり、例えば、Hans Zweifel, Plastics Additives Handbook, Hanser Verlag, 5th Edition, 2001, p. 141 ffに詳説されている。UV安定剤には、UV安定剤およびフリーラジカル捕捉剤が含まれると理解される。
【0108】
UV吸収剤は、例として、置換ベンゾフェノン、サリチル酸エステル、ケイ皮酸エステル、オキサニリド、ベンゾオキサジノン、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、トリアジン、またはベンジリデンマロネートの群から誘導することができる。UV安定剤/フリーラジカル捕捉剤の最もよく知られている代表物は、立体障害アミン(hindered amine light stabilizer、HALS)の群によって提供される。
【0109】
有利には、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムで使用されるUV吸収剤とUV安定剤との組み合わせは、以下の成分:
成分A:ベンゾトリアゾールタイプのUV吸収剤、
成分B:トリアジンタイプのUV吸収剤、
成分C:UV安定剤(HALS化合物)
から構成される。
【0110】
個々の成分は、個々の物質の形態で、または混合して使用することができる。
【0111】
ベンゾトリアゾールタイプのUV吸収剤は、先行技術で知られており、典型的には、2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールである。対応する化合物には、特に、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(5’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3’-sec-ブチル-5’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクチルオキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’,5’-ジ-tert-アミル-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’,5’-ビス-(α,α-ジメチルベンジル)-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-5’-[2-(2-エチルヘキシルオキシ)-カルボニルエチル]-2’-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-メトキシカルボニルエチル)フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-metH-オキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-5’-[2-(2-エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル]-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-ドデシル-2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-イソオクチルオキシカルボニルエチル)フェニルベンゾトリアゾール、2,2’-メチレン-ビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-ベンゾトリアゾール-2-イルフェノール];2-[3’-tert-ブチル-5’-(2-メトキシカルボニルエチル)-2’-ヒドロキシフェニル]-2H-ベンゾトリアゾールとポリエチレングリコール300のエステル交換生成物;[R-CH2CH2-COO-CH2CH2-であり、ここで、R=3’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシ-5’-2H-ベンゾトリアゾール-2-イルフェニル、2-[2’-ヒドロキシ-3’-(α,α-ジメチルベンジル)-5’-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェニル]-ベンゾトリアゾール;2-[2’-ヒドロキシ-3’-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-5’-(α,α-ジメチルベンジル)-フェニル]ベンゾトリアゾールが含まれる。使用できるベンゾトリアゾールタイプのUV吸収剤のさらなる例は、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ジ(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-sec-ブチル-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、および2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、フェノール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)]である。
【0112】
これらの化合物は、BASF SE(ルートヴィヒスハーフェン、ドイツ)から、例えばTinuvin(登録商標)360およびTinuvin(登録商標)234として市販されている。
【0113】
ベンゾトリアゾールタイプのUV吸収剤の使用量は、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して、0.1重量%~5.0重量%、好ましくは0.2重量%~3.0重量%、非常に特に好ましくは0.5重量%~2.0重量%である。ベンゾトリアゾールタイプの異なるUV吸収剤の混合物を使用することも可能である。
【0114】
トリアジンタイプのUV吸収剤は、通常、2-(2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジンである。好ましく使用される2-(2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジンには、とりわけ、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-プロピルオキシフェニル)-6-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-4,6-ビス(4-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-トリデシルオキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-ヒドロキシ-4-(2-ヒドロキシ-3-ブチルオキシプロポキシ)フェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-ヒドロキシ-4-(2-ヒドロキシ-3-オクチルオキシプロピルオキシ))フェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-(ドデシルオキシ/トリデシルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-ヒドロキシ-4-(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロポキシ)フェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ)フェニル-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス[2-ヒドロキシ-4-(3-ブトキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン、2-{2-ヒドロキシ-4-[3-(2-エチルヘキシル-1-オキシ)-2-ヒドロキシプロピルオキシ]フェニル}-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(4-[2-エチルヘキシルオキシ]-2-ヒドロキシフェニル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジンが含まれる。2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノールのようなトリアジンタイプのUV吸収剤も使用できる。
【0115】
これらの化合物は、例えば、BASF SE(ルートヴィヒスハーフェン、ドイツ)から、Tinuvin(登録商標)1600、Tinuvin(登録商標)1577、またはTinuvin(登録商標)1545の商標で市販されている。
【0116】
トリアジンタイプのUV吸収剤の量は、フィルムの重量に対して、0.1~5.0重量%、好ましくは0.2~3.0重量%、非常に特に好ましくは0.5~2.0重量%である。異なるトリアジンタイプのUV吸収剤の混合物を使用することも可能である。
【0117】
本発明のフィルムは、典型的には酸化防止剤、ラジカル捕捉剤などとして作用する1つ以上のUV安定剤をさらに含み得る。特に好ましいUV安定剤は、立体障害フェノールおよびHALSタイプの添加剤である。
【0118】
立体障害アミン、すなわちHALS(Hindered Amine Light Stabilizer)UV安定剤自体は知られている。これらは、塗料およびプラスチック、特にポリオレフィンプラスチックにおいて老化現象を抑制するために使用することができる(Kunststoffe, 74 (1984) 10, pp. 620-623; Farbe + Lack, Volume 96, 9/1990, pp. 689-693)。HALS化合物中に存在するテトラメチルピペリジン基が、安定化効果の要因である。このクラスの化合物は、ピペリジン窒素上に置換基を有することができず、またピペリジン窒素上にアルキル基またはアシル基による置換基を有することもできない。立体障害アミンは、UV領域で吸収しない。立体障害アミンは、形成されたフリーラジカルを捕捉するが、一方で、UV吸収剤はこれを行うことができない。安定化効果があり、混合物の形態でも使用できるHALS化合物の例は、以下のとおりである:ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ(4,5)-デカン-2,5-ジオン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)スクシネート、ポリ(N-β-ヒドロキシエチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジンスクシナート)、またはビス(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート。
【0119】
これらの化合物は、例えばBASF SE(ルートヴィヒスハーフェン、ドイツ)から、Tinuvin(登録商標)123、Tinuvin(登録商標)144、またはTinuvin(登録商標)292の商標で市販されている。
【0120】
フィルム中のHALS化合物の使用量は、典型的には、フィルムの重量に対して、0.0~5.0重量%、好ましくは0.1~3.0重量%、非常に特に好ましくは0.2~2.0重量%である。異なるHALS化合物の混合物を使用することも可能である。
【0121】
総じて言えば、本発明のフィルムは、通常、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して、0.0重量%~5.0重量%の1つ以上のUV吸収剤および0.0重量%~5.0重量%の1つ以上のUV安定剤を含む。
【0122】
本発明のフィルムを製造するために好ましく使用されるラインの詳細な構成
本発明により使用されるポリ(メタ)アクリルイミドフィルムは、好ましくは、押出成形プロセスによって製造される。溶液コーティングプロセスによって製造されたフィルムとは対照的に、押出ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムは、溶媒などの揮発性有機化合物を実質的に含まず、これは毒物学的および環境的理由から非常に有利である。
【0123】
ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの上記の成分は、押出成形ステップの前、またはさらにはその間にブレンドすることができる。
【0124】
ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの押出成形には、少なくとも以下の成分を有するラインを使用することができる:
押出機、
溶融ポンプ、
任意の溶融ろ過設備、
任意の静的混合要素、
フラットフィルムダイ、
研磨スタックまたはチルロール、および
ワインダ
【0125】
ポリマーを押出成形によりフィルムとすることは広く知られており、例えばKunststoffextrusionstechnik II, Hanser Verlag, 1986, p. 125 ffに記載されている。
【0126】
本発明の方法において、ホットメルトが、押出機のダイから2つの研磨ロールの間のニップまたはチルロール上に押し出される。最適な溶融温度は、例えば混合物の組成に依存するため、広範囲で変化し得る。ダイ入口点までの成形組成物の好ましい温度は、170℃~320℃の範囲であり、より好ましくは200℃~290℃の範囲であり、非常に好ましくは220℃~280℃の範囲である。研磨ロールの温度は、好ましくは150℃以下、より好ましくは60℃~140℃である。
【0127】
一実施形態では、ダイの温度は、ダイ入口前の混合物の温度よりも高い。ダイの温度は、ダイ入口前の混合物の温度よりも好ましくは10℃、より好ましくは20℃、非常に好ましくは30℃高く設定される。したがって、ダイの好ましい温度は、160℃~330℃、より好ましくは190℃~300℃の範囲である。
【0128】
研磨スタックは、2つまたは3つの研磨ロールから構成されていてよい。研磨ロールは当技術分野で広く知られており、高光沢を得るために使用される。しかし、研磨ロール以外のロール、例えば艶消しロールも本発明の方法で使用することができる。最初の2つの研磨ロールの間のニップはシートを形成し、これを同時に冷却することでフィルムになる。
【0129】
代わりに使用されるチルロールも当業者に知られている。ここで、溶融物のシートは、それをさらに輸送する冷却された単一のロール上に堆積させることができる。チルロールは、研磨スタックの上に配置することが好ましい。
【0130】
あるいは、米国特許出願公開第2016/0159995号明細書および米国特許出願公開第2017/0306188号明細書に記載されている装置を使用して特に有利に押出成形を実施することができ、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0131】
フィルムの特に良好な表面品質は、クロム表面を有するダイおよびロールによって、特に、0.10μm未満、好ましくは0.08μm未満の粗さRa(DIN 4768(1990)に準拠)を有するこれらのクロム表面によって保証され得る。
【0132】
ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムが実質的に不純物を含まないことを保証するために、溶融物がダイに入る前に任意にフィルタを配置することができる。フィルタのメッシュサイズは、総じて使用される出発材料によって決まるため、広範囲で変化し得る。メッシュサイズは総じて、300μm~20μmの範囲である。メッシュサイズの異なる2つ以上のスクリーンを備えたフィルタを、ダイ入口点の前に配置することもできる。これらのフィルタは市販されている。さらに、高品質のフィルムを得るには、特に純粋な原材料を使用することが有利である。
【0133】
任意に、さらに、フラットフィルムダイの上流に静的混合要素を設置することができる。この混合要素を使用して、顔料、安定剤、添加剤などの成分をポリマー溶融物に混合することができ、また最大で5重量%の第2のポリマーであって、例えば溶融物の形態であるものを、第2の押出機から材料に混合することもできる。
【0134】
溶融した混合物をダイに押し込む圧力は、例えば、スクリュの速度により制御することができる。この圧力は通常、40バール~300バールの範囲内であるが、これにより本発明の方法が制限されるものではない。したがって、本発明によりフィルムを得ることができる速度は、総じて5m/minを上回り、より具体的には10m/minを上回る。
【0135】
溶融物の特に均一な運搬を保証するために、フラットフィルムダイの上流にさらに溶融ポンプを設置することができる。
【0136】
本発明の押出ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの取扱性をさらに改善するために、ステップi)で得られたポリ(メタ)アクリルイミドフィルム6に、押出機の下流で、ポリ(メタ)アクリルイミドのガラス転移温度より低い温度でライナー層5を結合して、積層体4を得ることが有利である。
【0137】
得られる積層体4は、通常、以下の2つの層からなる(図2参照):
ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムによって形成された層6;および
ライナー層5
【0138】
一実施形態では、ライナー層は粘着性である。このような粘着ライナーは、典型的には、艶消し表面を有するポリ(メタ)アクリルイミドフィルム6にライナーを結合するために有利に使用することができる接着層を有する。
【0139】
さらなる実施形態では、ライナー層は、接着層の代わりにポリエチレンコポリマーの層を有する。このようなライナーは、光沢のある表面を有するポリ(メタ)アクリルイミドフィルム6に有利に使用される。
【0140】
良好な機械的安定性、特に積層体4の高い引裂強度を保証するためには、ライナー層が、好ましくは、ASTM D1004(2013)に準拠して測定した場合に、50N~500Nの初期引裂抵抗を有することが有利である。ライナー層が十分な引裂抵抗を有し、かつ以下のいずれかから選択できる限り、ライナー層の材料は特に限定されない:ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、またはそれらの混合物、その際、二軸延伸ポリプロピレンまたは二軸延伸ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0141】
後続のプロセスステップで、積層体を、接着層、任意に剥離コーティング層および支持層を結合して、ラベルストックを得るステップに供する。これらのプロセスステップは当業者に周知であり、例えば米国特許出願公開第2004/0091657号明細書および米国特許出願公開第2011/0132522号明細書で詳細に説明されている。
【0142】
通常、接着層は、実質的に感圧接着剤(PSA)からなる。支持層は、通常、紙またはプラスチックフィルム材料を含み、剥離コーティング層でコーティングすることができる。米国特許第6,406,787号明細書に記載されているものなど、様々な剥離コーティング組成物が知られている。特に、フォーム支持層が多孔性(例えば、紙)であり、フォーム基材がラベルの非表示面に露出されている実施形態には、非PSA接着剤組成物を使用することもできる。
【0143】
本発明に適切なPSAは、好ましくは、アルキルアクリレートポリマーおよびコポリマー;アルキルアクリレートとアクリル酸とのコポリマー;アルキルアクリレート、アクリル酸、およびビニルラクテートのターポリマー;アルキルビニルエーテルポリマーおよびコポリマー;ポリイソアルキレン;ポリアルキルジエン;アルキルジエン-スチレンコポリマー;スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー;ポリジアルキルシロキサン;ポリアルキルフェニルシロキサン;天然ゴム;合成ゴム;塩素化ゴム;ラテックスクレープ;ロジン;クマロン樹脂;アルキドポリマー;およびポリアクリレートエステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される。例には、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、またはブタジエン-スチレンコポリマー、およびそれらの混合物(そのようなポリマーおよびコポリマーは、好ましくは、反応性部分を有しない、すなわち、空気の存在下で酸化されない);シリコーン系化合物、例えば、ポリジメチルシロキサン、ならびに他の樹脂および/または油と組み合わせたポリメチルフェニルシロキサンが含まれる。
【0144】
他の適切なPSAには、粘着付与剤を含有する熱可塑性樹脂および粘着付与剤を含有する熱可塑性エラストマーも含まれ、粘着付与剤は、組成物の粘着性を増加させる1つ以上の化合物を含む。攻撃的なPSAとして有用である、粘着付与剤を含有する熱可塑性樹脂の一例は、商品名VYNATHENE EY 902-30(Quantum Chemicals、シンシナティ、オハイオ州から入手可能)で知られている酢酸ビニル/エチレンコポリマーと、実質的に等量の、商品名PICCOTEX LC(ビニルトルエンとα-メチルスチレンモノマーとの共重合によって生成された、環球法による軟化点が約87℃~95℃である無色透明の熱可塑性樹脂、Hercules Incorporated、ウィルミントン、デラウェア州から入手可能)およびWINGTACK 10(Goodyear Chemicalから入手可能な液体脂肪族C5石油炭化水素樹脂)で知られる粘着付与剤と、トルエンなどの有機溶媒との組み合わせである。攻撃的なPSAとして有用である、粘着付与剤を含有する熱可塑性エラストマーの一例は、商品名KRATON G1657(Shell Chemicalsから入手可能)で知られるスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-スチレンブロックコポリマーと、商品名REGALREZ(Hercules製)で知られる1つ以上の低分子量炭化水素樹脂と、トルエンなどの有機溶媒との組み合わせである。これらの配合物は双方とも、ナイフコーターを使用してコーティングして風乾するか、または風乾した後にオーブン乾燥することができる。当然のことながら、本発明は、熱可塑性樹脂と、熱可塑性エラストマーと、粘着付与剤とのこれらの特定の組み合わせの使用に限定されるものではない。
【0145】
ここでのいくつかの好ましいPSAは、延長された貯蔵寿命および大気条件下での脱粘着に対する耐性を示し、米国特許番号RE24,906号に開示されるようなアクリル系コポリマー接着剤を含む。このようなアクリル系コポリマーの一例は、95.5:4.5(それぞれの重量部で測定)のイソオクチルアクリレート/アクリル酸コポリマーである。別の好ましい接着剤は、これら2つのモノマーの組み合わせの重量比90:10のコポリマーである。さらに他の好ましい接着剤は、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、およびアクリル酸のターポリマー;イソオクチルアクリレートとアクリルアミドとのコポリマー;およびイソオクチルアクリレート、酢酸ビニル、およびアクリル酸のターポリマーである。
【0146】
アクリル系PSAは、ヘプタン:イソプロパノール溶媒混合物などの有機溶媒を含むコーティング可能な組成物からコーティングすることができ、その後、溶媒を蒸発させると感圧接着剤コーティングが残る。基材が再帰反射シート材料である場合、この層は、好ましくは、約0.038センチメートル(cm)~約0.11cm(5~15ミル)の厚さである。
【0147】
本発明において有用なPSAはまた、約10~約1000g/cm、より好ましくは少なくとも約50g/cmの範囲の180°引きはがし粘着力を有することを特徴とし得る。攻撃的なPSAの場合、180°引きはがし粘着力は通常、標準的な試験手順により測定した場合に、約200g/cm~約600g/cmの範囲である。この手順では、PSAコーティングした基材を試験基材から剥離する際に、PSAコーティングした基材を試験基材から取り除く(すなわち剥離する)のに必要な力を「引きはがし粘着力」値と呼ぶ。溶媒を使用して、標準的なガラスプレートを洗浄する(例えば、ジアセトンアルコールで1回洗浄した後、n-ヘプタンで3回洗浄する)。次に、非常にわずかな張力をかけて、PSAバックサイズコーティングを施したサンプルを、PSA側を下にして標準的なガラスプレートの中央に沿って施与する。次に、サンプルを2.04kgのハンドローラーで1回ロールがけする。次に、標準的なガラスプレートを、商品名「IMASS」で知られているような標準的な引きはがし粘着力試験機の水平プレートに固定する。次に、サンプルの一方の端部を、引きはがし粘着力試験機の一部であるフックに取り付ける。プレートを228.6cm/minの速度で水平に動かすことにより、サンプルを標準的なガラスプレートから180°の角度で剥がし(つまり、サンプルの一方の端部をもう一方の端部に向かって引っ張り)、必要な力を、様々な滞留時間でのg/cmサンプル幅の単位で記録する。
【0148】
剥離コーティング層8は、典型的にはシロキサンコーティングであり、これは、接着層7と支持層9との接着を低減する目的を果たす。典型的には、剥離コーティング層8によって、規格ASTM D1894(2014)に準拠して測定した場合に、0.35未満、好ましくは0.25未満の動摩擦係数を達成することができる。
【0149】
最後に、ラベルストックをキスカットに供して、支持層9に結合された複数の個々の粘着偽造防止ラベルを形成する。キスカットは、米国特許出願公開第2011/0132522号明細書に記載されている機械的なダイカットによって、またはレーザーを使用して行うことができる。次のステップでは、個々の粘着偽造防止ラベルの周囲の余分なマトリックスを、破れのリスクなしに支持層から剥離する。
【0150】
廃棄物の形成を最小限に抑えるために、個々のラベル間の距離(つまり、余分なマトリックスのストリップの幅)は、1.0mm~10.0mm、より好ましくは2.0mm~8.0mm、さらにより好ましくは3.0mm~5.0mmの範囲に保たれる。上記で説明したように、望ましくない余分なマトリックスの破れは生じない。通常、この操作中の剥離力は、tesa SE(ノルダーシュテット、ドイツ)製tesaband(登録商標)7475テープを使用したTピール試験を用いて測定した場合に、30g/インチ未満、好ましくは20g/インチ未満、さらにより好ましくは1g/インチ~10g/インチである。
【0151】
偽造防止ラベル
本発明の偽造防止ラベル2は、記載された順序で少なくとも以下の層を含む(図3参照):
a)上記の押出ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムからなる層6;
b)接着層7;
c)剥離コーティング層8、および
d)支持層9
【0152】
典型的には、本発明の偽造防止ラベルは、50.0μm~300.0μm、より好ましくは100.0μm~200.0μmの厚さを有する。
【0153】
典型的な一実施形態では、
- PMMI層6は、20μm~100μm、より好ましくは30μm~75μm、さらにより好ましくは40μm~60μmの厚さを有することができ;
- 接着層7は、10μm~40μm、より好ましくは20μm~30μmの厚さを有することができ;
- 剥離コーティング層8は、0.01~1.5μm、好ましくは0.5μm~1.2μm、より好ましくは0.6μm~0.8μmの厚さを有することができ;
- 支持層9は、20μm~70μm、好ましくは30μm~50μmの厚さを有することができる。
【0154】
偽造防止ラベルのサイズは、原則として自由に選択でき、その製造に使用される押出ダイおよび/または研磨スタックの寸法によってのみ制限される。これは、フォーマットを実質的に自由に選択できることを意味する。
【0155】
ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムのトリミングおよびキスカットは、好ましくは、ダイカット、カット、レーザーカット、またはレーザーダイカットによって達成される。レーザーカットまたはレーザーダイカットが特に有利である。
【0156】
必ずしも必要というわけではないが任意に、本発明により製造されたポリ(メタ)アクリルイミドフィルムは、それを不正に取り外そうとする際のラベルの破壊をさらに容易にするために、隆起、切れ目、スリット、または孔、またはノッチをさらに備えることができる。ただし、そのような追加の手段は必須ではない。
【0157】
偽造防止ラベルは、電子製品識別ラベル、自動車のボンネット下ラベル、チップカード、耐熱文書、およびシールの製造に非常に適している。使用例の1つは、例えば、自動車エンジンの様々な部品のバーコードラベルである。ラベルは、目立った収縮なしにエンジンの動作温度に耐えることができ、さらにはブレーキフルード、作動流体、エンジンオイルなどの流体に対する耐薬品性を有する。ラベルは、それを交換可能な非純正エンジン部品に移すためにエンジン部品から不正に剥がそうとすると、破壊される。
【0158】
さらなる一例として、本発明のラベルには、車両識別番号を付与することができ、車両のボンネット下で有利に使用することができる。ラベルを別の車両に取り付けるために車両からラベルを不正に取り外そうとすると、ラベルが破壊される。
【0159】
要約すると、本発明の以下の態様および実施形態{1}~{15}は、特に有利であることが示された:
{1}偽造防止ラベルで使用するためのポリ(メタ)アクリルイミドフィルムであって、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムは、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して、
ポリ(メタ)アクリルイミドを30.0重量%~98.0重量%と、
1つ以上の耐衝撃性改良剤を2.0重量%~50.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレートを0.0重量%~30.0重量%と、
1つ以上の無機フィラーを0.0重量%~40.0重量%と、
1つ以上のUV吸収剤を0.0重量%~5.0重量%と、
1つ以上のUV安定剤を0.0重量%~5.0重量%と
を含み、ポリ(メタ)アクリルイミドは、式(I)
【化5】
[式中、
およびRは、水素およびメチル基から独立して選択され、RおよびRは、好ましくは、メチル基を表し、
は、水素、またはC~Cアルキル基、好ましくはメチル基である]の繰返し単位を、ポリ(メタ)アクリルイミドの重量に対して少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、最も好ましくは少なくとも70重量%含み、
ポリ(メタ)アクリルイミド、ポリアルキル(メタ)アクリレートおよび耐衝撃性改良剤の累積含有量は、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して60.0重量%~100.0重量%である、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム。
【0160】
{2} ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムは、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して、
ポリ(メタ)アクリルイミドを30.0重量%~92.5重量%と、
1つ以上の耐衝撃性改良剤を2.5重量%~40.0重量%と、
ポリアルキル(メタ)アクリレートを0.0重量%~30.0重量%と、
1つ以上の無機フィラーを5.0重量%~40.0重量%と、
1つ以上のUV吸収剤を0.0重量%~5.0重量%と、
1つ以上のUV安定剤を0.0重量%~5.0重量%と
を含み、
ポリ(メタ)アクリルイミド、ポリアルキル(メタ)アクリレートおよび耐衝撃性改良剤の累積含有量は、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの重量に対して60.0重量%~95.0重量%であり、
ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の耐衝撃性改良剤の含有量(重量%)nimは、以下の関係:
0.5×n≦nim≦1.8×n
[ここで、nは、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の無機フィラーの含有量(重量%)である]で表される、{1}記載のポリ(メタ)アクリルイミドフィルム。
【0161】
{3} ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムが、
15.0μm~120.0μmの厚さと、
厚さ50.0μmの箔で、DIN EN ISO 527-3/2/100(2003)に準拠して測定した場合に、3.0%~30%の公称破断点伸びと、
厚さ50.0μmの箔で、DIN EN ISO 527-3/2/100(2003)に準拠して測定した場合に、20.0MPa~70.0MPaの引張応力と
を有する、{1}または{2}記載のポリ(メタ)アクリルイミドフィルム。
【0162】
{4} ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムが、厚さ50.0μmの箔で、ASTM D1938(2014)に準拠して測定した場合に、0.01N/mm~1.50N/mmの引裂伝搬抵抗力を有する、{1}から{3}までの少なくとも1つ記載のポリ(メタ)アクリルイミドフィルム。
【0163】
{5} ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の耐衝撃性改良剤の含有量(重量%)nimが、以下の関係:
0.6×n≦nim≦1.5×n
[ここで、nは、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルム中の1つ以上の無機フィラーの含有量(重量%)である]で表される、{1}から{4}までの少なくとも1つ記載のポリ(メタ)アクリルイミドフィルム。
【0164】
{6} 1つ以上の無機フィラーが、二酸化チタン、シリカ、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、カーボンブラック、三水酸化アルミニウム、または炭酸カルシウムから選択される、{1}から{5}までの少なくとも1つ記載のポリ(メタ)アクリルイミドフィルム。
【0165】
{7} ポリ(メタ)アクリルイミドが、80000g/モル~200000g/モル、好ましくは90000g/モル~150000g/モルの平均分子量Mwを有する、{1}から{6}までの少なくとも1つ記載のポリ(メタ)アクリルイミドフィルム。
【0166】
{8} {1}から{7}までの少なくとも1つ記載のポリ(メタ)アクリルイミドフィルムを含む、偽造防止ラベル。
【0167】
{9} 偽造防止ラベルが、記載された順序で少なくとも以下の層:
a){1}から{7}までの少なくとも1つ記載のポリ(メタ)アクリルイミドフィルムからなる層であって、好ましくは40.0μm~60.0μmの厚さを有する層と、
b)接着層であって、好ましくは20.0μm~30.0μmの厚さを有する層と、
c)剥離コーティング層であって、好ましくは0.6μm~0.8μmの厚さを有する層と、
d)支持層であって、好ましくは30.0μm~50.0μmの厚さを有する層と
を含み、
かつ/または偽造防止ラベルが、50.0μm~300.0μmの厚さを有する、{8}記載の偽造防止ラベル。
【0168】
{10} {8}または{9}記載の偽造防止ラベルを製造するための積層体であって、積層体は、少なくとも以下の層:
a)ライナー層であって、好ましくは、厚さ50.0μmの箔で、ASTM D1004(2013)に準拠して測定した場合に、50N~500Nの初期引裂抵抗を有する、ライナー層と、
b){1}から{7}までの少なくとも1つ記載のポリ(メタ)アクリルイミドフィルムからなる層と
を含む、積層体。
【0169】
{11} ライナー層が、実質的に、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリエチレンテレフタレートからなる群から選択されるポリマー材料、好ましくは二軸延伸ポリプロピレンまたは二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる、{10}記載の積層体。
【0170】
{12} {10}または{11}記載の積層体の製造方法であって、少なくとも以下のステップ:
i)押出機を用いて、{1}から{7}までの少なくとも1つ記載のポリ(メタ)アクリルイミドフィルムを製造し、ポリ(メタ)アクリルイミドフィルムを得るステップと、
ii)ステップi)で得られたポリ(メタ)アクリルイミドフィルムに、押出機の下流でライナー層を結合するステップと
を含む、方法。
【0171】
{13} ステップii)で得られた積層体を複数のロールの間に通し、少なくともポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの側面に面するロールが、冷却されたロールである、{12}記載の方法。
【0172】
{14} {8}または{9}記載の偽造防止ラベルの製造方法であって、少なくとも以下のステップ:
i)押出機を用いて、{1}から{7}までの少なくとも1つ記載のポリ(メタ)アクリルイミドフィルムを製造するステップと、
ii)ステップi)で得られたポリ(メタ)アクリルイミドフィルムに、押出機の下流でライナー層を結合して、積層体を得るステップと、
iii)ステップii)で得られた積層体上に接着層、任意に剥離コーティング層および支持層を結合して、ラベルストックを得るステップと、
iv)ステップiii)で得られたラベルストックをキスカットし、生じた余分なマトリックスを除去して、支持層上に存在する複数の個々の粘着偽造防止ラベルを得るステップと
を含む、方法。
【0173】
{15} チップカード、文書、偽造防止ラベル、電子製品識別ラベル、自動車のボンネット下ラベル、文書シール、または値札を製造するための、{8}または{9}記載の偽造防止ラベルの使用。
【0174】
実施例
例1(比較)
以下の組成の配合混合物を使用して、全厚50μmのPMMAフィルムを製造した:
a)ブチルアクリレートベースのコア・シェル・シェル型アクリル系耐衝撃性改良剤を47.0重量%含む材料30.0重量%、
b)Evonik Performance Materials GmbHから入手可能なPLEXIGLAS(登録商標)7N 48.67重量%、および
c)KRONOS TITAN GmbHから入手可能な二酸化チタン21.33重量%
【0175】
押出成形を、以下の条件下で、Dr. Collin GmbH(エーバースベルク、ドイツ)製の直径35mmの単軸スクリュ押出機を使用して、7.3m/minの押出速度で行った:
押出機のスクリュ温度:240℃~270℃
ダイ温度:240℃~260℃
ダイでの溶融物の温度:240℃~260℃
ロール温度:50℃~120℃
【0176】
押出フィルムは、押出方向に4~6%の破断点伸びを有していた。
【0177】
続いて、この押出フィルムを使用して、MPS Systems B.V.(アルンヘム、オランダ)製ラベル製造機MPS EF Flexoを用いて粘着偽造防止ラベルを製造した。
【0178】
このフィルムを、粘着偽造防止ラベルの製造にうまく使用することができた。余分なマトリックスの望ましくない破れは生じなかった。
【0179】
引裂抵抗試験を、Zwick GmbH & Co.KG(ウルム、ドイツ)から入手可能な試験システムZwick Roell Z005を使用して4つの同一のサンプルで行い、各サンプルに対して5回の試験を行った。
【0180】
フィルムの押出方向で規格ASTM D1004(2013)に準拠して10mm~20mmの幅のサンプルを使用して測定された初期引裂抵抗は、5.8N~7.0Nであった。
【0181】
規格EN ISO 11501(2004)に準拠して120℃(30分)で測定されたサンプルの収縮は、押出方向で6.6%、横方向で1.1%であった。高温でこのように高い収縮を示す材料は、通常、このような温度に達する可能性のある車両の部品へのラベル付けには適さない。
【0182】
例2(本発明による)
以下の組成の配合混合物を使用して、全厚50μmのフィルムを製造した:
a)ブチルアクリレートベースのコア・シェル・シェル型アクリル系耐衝撃性改良剤を47重量%含む材料30.0重量%、
b)以下を含む材料55.0重量%:
KRONOS TITAN GmbHから入手可能な二酸化チタン40重量%、および
Evonik Performance Materials GmbHから入手可能なPLEXIMID(登録商標)TT50 60重量%
c)Evonik Performance Materials GmbHから入手可能なPLEXIMID(登録商標)TT50 15.0重量%
【0183】
押出成形を、以下の条件下で、Dr. Collin GmbH(エーバースベルク、ドイツ)製の直径35mmの単軸スクリュ押出機を使用して、7.3m/minの押出速度で行った:
押出機のスクリュ温度:270℃~285℃
ダイ温度:270℃~275℃
ダイでの溶融物の温度:270℃~275℃
ロール温度:50℃~120℃
【0184】
押出フィルムは、押出方向で7.4%の公称破断点伸びおよび59.1MPaの引張強度を有していた。
【0185】
続いて、この押出フィルムを使用して、MPS Systems B.V.(アルンヘム、オランダ)製ラベル製造機MPS EF Flexoを用いて粘着偽造防止ラベルを製造した。
【0186】
このフィルムを、粘着偽造防止ラベルの製造にうまく使用することができた。余分なマトリックスの望ましくない破れは生じなかった。
【0187】
規格EN ISO 11501(2004)に準拠して120℃(30分)で測定されたサンプルの収縮は、押出方向で0.3%、横方向で0.2%であった。このラベルを、そのような温度で動作する車両部品へのラベル付けに有利に使用することができる。
【0188】
例3(本発明による)
以下の組成の配合混合物を使用して、全厚50μmのフィルムを製造した:
a)ブチルアクリレートベースのコア・シェル・シェル型アクリル系耐衝撃性改良剤15.0重量%、
b)以下を含む材料55.0重量%:
KRONOS TITAN GmbHから入手可能な二酸化チタン40重量%、および
Evonik Performance Materials GmbHから入手可能なPLEXIMID(登録商標)TT50 60重量%
c)Evonik Performance Materials GmbHから入手可能なPLEXIMID(登録商標)TT50 30.0重量%
【0189】
押出成形を、以下の条件下で、Dr. Collin GmbH(エーバースベルク、ドイツ)製の直径35mmの単軸スクリュ押出機を使用して、7.3m/minの押出速度で行った:
押出機のスクリュ温度:270℃~285℃
ダイ温度:270℃~275℃
ダイでの溶融物の温度:270℃~275℃
ロール温度:50℃~120℃
【0190】
押出フィルムは、押出方向で11.1%の公称破断点伸びおよび54.5MPaの引張強度を有していた。
【0191】
続いて、この押出フィルムを使用して、MPS Systems B.V.(アルンヘム、オランダ)製ラベル製造機MPS EF Flexoを用いて粘着偽造防止ラベルを製造した。
【0192】
このフィルムを、粘着偽造防止ラベルの製造にうまく使用することができた。余分なマトリックスの望ましくない破れは生じなかった。
【0193】
規格EN ISO 11501(2004)に準拠して120℃(30分)で測定されたサンプルの収縮は、押出方向で0.1%、横方向で0.1%であった。このラベルを、そのような温度で動作する様々な車両部品へのラベル付けに有利に使用することができる。
【0194】
例4(本発明による)
以下の組成の配合混合物を使用して、全厚50μmのフィルムを製造した:
a)ブチルアクリレートベースのコア・シェル・シェル型アクリル系耐衝撃性改良剤20.0重量%、
b)以下を含む材料55.0重量%:
KRONOS TITAN GmbHから入手可能な二酸化チタン40重量%、および
Evonik Performance Materials GmbHから入手可能なPLEXIMID(登録商標)TT50 60重量%
c)Evonik Performance Materials GmbHから入手可能なPLEXIMID(登録商標)TT50 25.0重量%
【0195】
押出成形を、以下の条件下で、Dr. Collin GmbH(エーバースベルク、ドイツ)製の直径35mmの単軸スクリュ押出機を使用して、7.3m/minの押出速度で行った:
押出機のスクリュ温度:270℃~285℃
ダイ温度:270℃~275℃
ダイでの溶融物の温度:270℃~275℃
ロール温度:50℃~120℃
【0196】
押出フィルムは、押出方向で12.8%の公称破断点伸びおよび50.3MPaの引張強度を有していた。
【0197】
続いて、この押出フィルムを使用して、MPS Systems B.V.(アルンヘム、オランダ)製ラベル製造機MPS EF Flexoを用いて粘着偽造防止ラベルを製造した。
【0198】
このフィルムを、粘着偽造防止ラベルの製造にうまく使用することができた。余分なマトリックスの望ましくない破れは生じなかった。
【0199】
規格EN ISO 11501(2004)に準拠して120℃(30分)で測定されたサンプルの収縮は、押出方向で0.2%、横方向で0.1%であった。このラベルを、そのような温度で動作する様々な車両部品へのラベル付けに有利に使用することができる。
【0200】
例5(本発明による)
以下の組成の配合混合物を使用して、全厚50μmのフィルムを製造した:
a)ブチルアクリレートベースのコア・シェル・シェル型アクリル系耐衝撃性改良剤25.0重量%、
b)以下を含む材料55.0重量%:
KRONOS TITAN GmbHから入手可能な二酸化チタン40重量%、および
Evonik Performance Materials GmbHから入手可能なPLEXIMID(登録商標)TT50 60重量%
c)Evonik Performance Materials GmbHから入手可能なPLEXIMID(登録商標)TT50 20.0重量%
【0201】
押出成形を、以下の条件下で、Dr. Collin GmbH(エーバースベルク、ドイツ)製の直径35mmの単軸スクリュ押出機を使用して、7.3m/minの押出速度で行った:
押出機のスクリュ温度:270℃~285℃
ダイ温度:270℃~275℃
ダイでの溶融物の温度:270℃~275℃
ロール温度:50℃~120℃
【0202】
押出フィルムは、押出方向で18.2%の公称破断点伸びおよび45.2MPaの引張強度を有していた。
【0203】
続いて、この押出フィルムを使用して、MPS Systems B.V.(アルンヘム、オランダ)製ラベル製造機MPS EF Flexoを用いて粘着偽造防止ラベルを製造した。
【0204】
このフィルムを、粘着偽造防止ラベルの製造にうまく使用することができた。余分なマトリックスの望ましくない破れは生じなかった。
【0205】
規格EN ISO 11501(2004)に準拠して120℃(30分)で測定されたサンプルの収縮は、押出方向で0.4%、横方向で0.1%であった。このラベルを、そのような温度で動作する様々な車両部品へのラベル付けに有利に使用することができる。
【0206】
例6(本発明による)
以下の組成の配合混合物を使用して、全厚50μmのフィルムを製造した:
a)ブチルアクリレートベースのコア・シェル・シェル型アクリル系耐衝撃性改良剤10.0重量%、
b)Evonik Performance Materials GmbHから入手可能なPLEXIMID(登録商標)TT50 90.0重量%
【0207】
押出成形を、以下の条件下で、Dr. Collin GmbH(エーバースベルク、ドイツ)製の直径35mmの単軸スクリュ押出機を使用して、7.3m/minの押出速度で行った:
押出機のスクリュ温度:270℃~285℃
ダイ温度:270℃~275℃
ダイでの溶融物の温度:270℃~275℃
ロール温度:50℃~120℃
【0208】
押出フィルムは、押出方向で5.6%の公称破断点伸びおよび85.1MPaの引張強度、ならびに横方向で4.5%の公称破断点伸びおよび54.8MPaの引張強度を有していた。
【0209】
フィルムのヘイズは、12.60%であった。
【0210】
例7(本発明による)
以下の組成の配合混合物を使用して、全厚50μmのフィルムを製造した:
a)ブチルアクリレート系コア・シェル型耐衝撃性改良剤10.0重量%、
b)Evonik Performance Materials GmbHから入手可能なPLEXIMID(登録商標)TT50 90.0重量%
【0211】
押出成形を、以下の条件下で、Dr. Collin GmbH(エーバースベルク、ドイツ)製の直径35mmの単軸スクリュ押出機を使用して、7.3m/minの押出速度で行った:
押出機のスクリュ温度:270℃~285℃
ダイ温度:270℃~275℃
ダイでの溶融物の温度:270℃~275℃
ロール温度:50℃~120℃
【0212】
押出フィルムは、押出方向で5.4%の公称破断点伸びおよび48.7MPaの引張強度、ならびに横方向で4.0%の公称破断点伸びおよび11.0MPaの引張強度を有していた。
【0213】
フィルムのヘイズは、7.22%であった。
【0214】
例8(本発明による)
以下の組成の配合混合物を使用して、全厚50μmのフィルムを製造した:
a)MBS系コア・シェル型耐衝撃性改良剤10.0重量%、
b)Evonik Performance Materials GmbHから入手可能なPLEXIMID(登録商標)TT50 90.0重量%
【0215】
押出成形を、以下の条件下で、Dr. Collin GmbH(エーバースベルク、ドイツ)製の直径35mmの単軸スクリュ押出機を使用して、7.3m/minの押出速度で行った:
押出機のスクリュ温度:270℃~285℃
ダイ温度:270℃~275℃
ダイでの溶融物の温度:270℃~275℃
ロール温度:50℃~120℃
【0216】
押出フィルムは、押出方向で10.2%の公称破断点伸びおよび73.5MPaの引張強度、ならびに横方向で5.2%の公称破断点伸びおよび54.4MPaの引張強度を有していた。
【0217】
フィルムのヘイズは、5.51%であった。
図1
図2
図3