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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】半導体製造装置用部材
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20220419BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20220419BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALN20220419BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
H01L21/302 101G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022502265
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 JP2021037206
【審査請求日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2021016207
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹林 央史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 丈予
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-172056(JP,A)
【文献】特開2018-123348(JP,A)
【文献】特開2003-264223(JP,A)
【文献】特開2016-171185(JP,A)
【文献】実公平06-036583(JP,Y2)
【文献】特開2010-021559(JP,A)
【文献】特開2017-163157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ載置面を有し、電極を内蔵していないセラミック製の上部プレートと、
前記上部プレートのうち前記ウエハ載置面とは反対側の面に設けられ、静電電極及びRF電極として用いられる導電材製の中間プレートと、
前記中間プレートのうち前記上部プレートが設けられた面とは反対側の面に接合されたセラミック製の下部プレートと、
を備え
前記中間プレートの直径は、前記上部プレートの直径よりも大きい、
半導体製造装置用部材。
【請求項2】
前記上部プレートの厚みは、0.05mm以上1.5mm以下である、
請求項1に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項3】
前記下部プレートは、ヒータ電極を内蔵している、
請求項1又は2に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項4】
前記下部プレートは、前記中間プレートが設けられている面と前記ヒータ電極との間にシールド電極を内蔵する、
請求項3に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項5】
前記中間プレートのうち外部に露出している面は、絶縁膜によって覆われている、
請求項1~のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項6】
前記中間プレートは、金属とセラミックとの複合材料製又は金属製であり、前記下部プレートは、前記上部プレートと同じセラミック製である、
請求項1~のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材であって、
前記半導体製造装置用部材を厚み方向に貫通する貫通穴
を備え、
前記貫通穴には、放電防止処理が施されている、
半導体製造装置用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置用部材及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置用部材として、静電電極及びヒータ電極を内蔵するセラミック製の上部プレートと、上部プレートのウエハ載置面とは反対側の面に第1金属接合層を介して接合された金属マトリクス材料製の中間プレートと、中間プレートの上部プレートと接合された面とは反対側の面に第2金属接合層を介して接合されたセラミック製の下部プレートと、を備えたものが知られている(例えば特許文献1)。特許文献1では、上部パックプレートが上部プレートに相当し、下部パックプレートが中間プレートに相当し、バッキングプレートが下部プレートに相当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2018-518833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した半導体製造装置用部材では、静電電極が上部プレートに内蔵されているため、上部プレートのうち静電電極よりも上側の部分(誘電体層)の厚みにばらつきが生じるおそれがあった。具体的には、静電電極は上部プレートのうちウエハ載置面側に埋設されることや静電電極と上部プレートを構成するセラミックとの熱膨張係数に差があること等によって、上部プレートの面を研削する際に上部プレートが変形して誘電体層の厚みにばらつきが生じることがあった。誘電体層の厚みが面内でばらつくと、ウエハ吸着力が面内でばらついたりプラズマを発生させた場合にプラズマ密度が面内でばらつくため好ましくない。誘電体層の厚みが薄いとこれらが顕著になりやすい。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、上部プレートと中間プレートと下部プレートとを接合した半導体製造装置用部材において、上部プレートが薄くても上部プレートの厚みの均一性が良好なものを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体製造装置用部材は、
ウエハ載置面を有し、電極を内蔵していないセラミック製の上部プレートと、
前記上部プレートのうち前記ウエハ載置面とは反対側の面に設けられ、静電電極及びRF電極として用いられる導電材製の中間プレートと、
前記中間プレートのうち前記上部プレートが設けられた面とは反対側の面に接合されたセラミック製の下部プレートと、
を備えたものである。
【0007】
この半導体製造装置用部材では、電極が内蔵されていないセラミック製の上部プレートは、静電チャックの誘電体層として機能する。上部プレートは、電極が内蔵されていないため、電極が内蔵されている場合に比べてフラットにしやすい。そのため、上部プレート(すなわち誘電体層)が薄くても上部プレートの厚みの均一性が良好になる。それによって、上部プレートと中間プレートとの接合性が良好になり、接合後の残留応力も低減される。また、中間プレートにRF電圧を印加してプラズマを発生させたときにプラズマ密度が上部プレートの面内でばらつくのを防止することができる。
【0008】
なお、本明細書において、「上」「下」は、絶対的な位置関係を表すものではなく、相対的な位置関係を表すものである。そのため、半導体製造装置用部材の向きによって「上」「下」は「下」「上」になったり「左」「右」になったり「前」「後」になったりする。
【0009】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記上部プレートの厚みは、0.05mm以上1.5mm以下であってもよい。この範囲内で所望の吸脱着特性が得られる厚みに設定することが好ましい。上部プレートの厚みを上述した範囲とすることにより上部プレートの静電容量が大きくなり、それに伴って上部プレートのインピーダンスが小さくなるため、プラズマ生成の観点で有利になる。
【0010】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記下部プレートは、ヒータ電極を内蔵していてもよい。こうすれば、ヒータ電極を内蔵した下部プレートとウエハ載置面との間には中間プレートが介在しているため、熱が中間プレートによって拡散されてウエハに伝わる。そのため、ウエハの均熱性が良好になる。この場合、前記下部プレートは、前記中間プレートが設けられている面と前記ヒータ電極との間にシールド電極を内蔵していてもよい。こうすれば、ヒータ電極にRF電流が流れ込むのをシールド電極が防止するため、RF電流がヒータ電極の温度制御に悪影響を及ぼすのを防止することができる。
【0011】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記中間プレートの直径は、前記上部プレートの直径よりも大きくてもよい。こうすれば、中間プレートの直径が上部プレートの直径と比べて同じか小さい場合に比べて、プラズマ発生領域が広がるため、ウエハを均一にプラズマで処理しやすくなる。
【0012】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記中間プレートのうち外部に露出している面は、絶縁膜によって覆われていてもよい。こうすれば、中間プレートのうち外部に露出している面が腐食するのを防止することができる。なお、本発明の半導体製造装置用部材が、上部プレートと中間プレートとを接合する第1金属接合層や下部プレートと中間プレートとを接合する第2金属接合層を有している場合には、第1金属接合層のうち外部に露出している部分や第2金属接合層のうち外部に露出している部分も絶縁膜によって覆われていることが好ましい。こうすれば、これらの部分が腐食するのを防止することができる。
【0013】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記中間プレートは、金属とセラミックとの複合材料製又は金属製であってもよく、前記下部プレートは、前記上部プレートと同じセラミック製であってもよい。
【0014】
本発明の半導体製造装置用部材は、前記半導体製造装置用部材を厚み方向に貫通する貫通穴を備えていてもよく、前記貫通穴には放電防止処理が施されていてもよい。こうすれば、ウエハを処理している間に貫通穴を介して放電が起きるのを抑制することができる。なお、放電防止処理としては、例えば、貫通穴の内壁のうち導電材が露出している部分を絶縁膜又は絶縁管で被覆する処理や、貫通穴がガス穴の場合にその穴のうち少なくとも上部プレートを貫通している部分に通気性プラグを樹脂で接着固定する処理などが挙げられる。
【0015】
本発明の半導体製造装置用部材の製法は、
(a)ウエハ載置面を有し電極を内蔵していないセラミック製の上部プレートと、セラミック製の下部プレートと、導電材製の中間プレートとを用意する工程と、
(b)前記中間プレートの上面と前記上部プレートの前記ウエハ載置面とは反対側の面との間に第1金属接合材を配置すると共に、前記中間プレートの下面と前記下部プレートの上面との間に第2金属接合材を配置し、その状態で加圧加熱したあと室温に戻すことにより接合体を得る工程と、
を含むものとしてもよいし、
(a)セラミック製の上部プレートを導電材製の中間プレートの上面に溶射により形成する工程と、
(b)前記中間プレートの下面とセラミック製の下部プレートの上面との間に金属接合材を配置し、その状態で加圧加熱したあと室温に戻すことにより接合体を得る工程と、
を含むものとしてもよい。
【0016】
こうした半導体製造装置用部材の製法は、上述した半導体製造装置用部材を製造するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】半導体製造装置用部材10の断面図。
図2】ウエハ載置面22の平面図。
図3】ヒータ電極44の一例を示す平面図。
図4】半導体製造装置用部材10を冷却装置50に取り付けた様子を示す断面図。
図5】半導体製造装置用部材10の製造工程図。
図6】半導体製造装置用部材110の断面図。
図7】半導体製造装置用部材210の断面図。
図8】半導体製造装置用部材310の断面図。
図9】貫通穴34に放電防止処理を施した一例を示す部分断面図。
図10】貫通穴34に放電防止処理を施した一例を示す部分断面図。
図11】貫通穴34に放電防止処理を施した一例を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。図1は半導体製造装置用部材10の断面図(部材10の中心を通る垂直面で切断したときの断面図)、図2はウエハ載置面22の平面図、図3はヒータ電極44の一例を示す平面図である。
【0019】
半導体製造装置用部材10は、図1に示すように、上部プレート20と、中間プレート30と、下部プレート40と、第1及び第2金属接合層31,32とを備えている。
【0020】
上部プレート20は、プラズマ処理を施すシリコン製のウエハWと同径の円盤状でセラミック(例えばアルミナや窒化アルミニウム)製のプレートであり、電極を内蔵していない。上部プレート20の直径は特に限定するものではないが、例えば250~350mmとしてもよい。上部プレート20の上面は、ウエハ載置面22となっている。ウエハ載置面22には、図2に示すように、外縁に沿ってシールバンド22aが形成され、全面に複数の円形突起22bが形成されている。シールバンド22a及び円形突起22bは同じ高さであり、その高さは例えば数μm~数10μmである。
【0021】
中間プレート30は、円盤状のプレートであり、その直径は、上部プレート20及び下部プレート40の直径よりも大きい。中間プレート30は、上部プレート20のウエハ載置面22とは反対側の面23に第1金属接合層31を介して接合されている。中間プレート30の材料としては、導電材料(複合材料や金属など)が挙げられる。複合材料としては、金属マトリックス複合材料(メタル・マトリックス・コンポジット(MMC)ともいう)などが挙げられる。MMCとしては、Si,SiC及びTiを含む材料(SiSiCTiともいう)やSiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料などが挙げられる。金属としては、TiやMoなどが挙げられる。
【0022】
中間プレート30は、図示しない給電端子を介して外部の直流(DC)電源70(図4参照)によりDC電圧を印加可能となっている。上部プレート20は誘電体層として機能する。上部プレート20の厚みは、ウエハWを吸着する力を考慮して所定の厚み(例えば50~500μm)に調整されている。中間プレート30にDC電圧が印加されると上部プレート20のウエハ載置面22に載置されたウエハWはウエハ載置面22に吸着固定され、DC電圧の印加を解除するとウエハWのウエハ載置面22への吸着固定が解除される。ウエハ載置面22に吸着されたウエハWの裏面は、シールバンド22aの上面及び円形突起22bの上面に接触する。また、ウエハWの裏面とウエハ載置面22のうちシールバンド22aや円形突起22bが設けられていない部分との間には空間が生じる。この空間には、半導体製造装置用部材10を上下方向に貫通する図示しないガス供給路を通じて伝熱ガス(例えばHeガス)が供給される。この伝熱ガスによって上部プレート20とウエハWとの熱交換が効率よく行われる。
【0023】
中間プレート30は、図示しない給電端子を介して外部の高周波(RF)電源74(図4参照)によりRF電圧を印加可能となっている。半導体製造装置用部材10のウエハ載置面22の上方には、ウエハ載置面22と間隔を空けて図示しないシャワーヘッドを備えた上部電極が配置される。上部電極は、グランドに接続されており、ウエハ載置面22と上部電極との間の空間に反応ガスを供給する。この空間に反応ガスを供給しながら中間プレート30にRF電圧を印加すると、上部プレート20と上部電極との間でプラズマが発生する。
【0024】
下部プレート40は、上部プレート20と同径の円板状でセラミック製のプレートであり、ヒータ電極44を内蔵している。下部プレート40は、中間プレート30のうち上部プレート20と接合された面とは反対側の面に第2金属接合層32を介して接合されている。ヒータ電極44は、図3に示すように、下部プレート40を平面視したときの領域のほぼ全面にわたって一端44aから他端44bまで一筆書きの要領でパターン形成され、電圧を印加すると発熱してウエハWを加熱する。ヒータ電極44が配線された領域は、平面視で円形領域である。ヒータ電極44は、一端44a及び他端44bに接続された図示しない給電端子を介してヒータ電源により電圧を印加可能となっている。
【0025】
上部プレート20及び下部プレート40の材料がアルミナの場合、中間プレート30の材料はSiSiCTiか金属Tiが好ましい。上部プレート20の材料がアルミナの場合、上部プレート20の厚みは0.05mm以上0.65mm以下が好ましく、0.2mm以上0.4mm以下がより好ましい。上部プレート20及び下部プレート40の材料が窒化アルミニウムの場合、中間プレート30の材料はSiC多孔質体にSiを含浸させた材料か金属Moが好ましい。上部プレート20の材料が窒化アルミニウムの場合、上部プレート20の厚みは0.1mm以上1.5mm以下が好ましく、0.3mm以上0.7mm以下がより好ましい。
【0026】
第1及び第2金属接合層31,32は、例えばAl-Si-Mg系又はAl-Mg系材料などのAl含有材料で構成されている。第1及び第2金属接合層31,32の厚みは、特に限定するものではないが、1~300μmが好ましく、50~150μmがより好ましい。また、第1金属接合層31の外周は上部プレート20の外周からはみ出していないことが好ましく、第2金属接合層32の外周は下部プレート40の外周からはみ出していないことが好ましい。第1及び第2金属接合層31,32は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。
【0027】
次に、半導体製造装置用部材10の使用例について説明する。図4は半導体製造装置用部材10を冷却装置50に取り付けた様子を示す断面図である。まず、半導体製造装置用部材10を、図示しない真空チャンバ内に設置された冷却装置50に取り付ける。冷却装置50は、アルミニウムなどの金属製の円盤部材であり、内部に冷媒を循環可能な冷媒通路52を有している。冷却装置50の上面の中央には、円形溝54が設けられている。円形溝54には、下部プレート40が挿入される。冷却装置50は、円形溝54の周囲を取り囲む環状面56を有している。半導体製造装置用部材10は、中間プレート30の下面の外周部と環状面56との間にリング状のシール部材57を配置して円形溝54に下部プレート40を挿入した状態で、クランプリング60によって冷却装置50に固定される。シール部材57の外径は、円形溝54の直径よりも大きく中間プレート30の直径よりも小さい。シール部材57としては、例えば金属ガスケットなどが挙げられる。クランプリング60は、冷却装置50の環状面56に配置される。クランプリング60の内周面には段差62が設けられ、この段差62が中間プレート30の外周部の上面を上から押さえる。また、クランプリング60は、ネジ65を挿通可能な縦穴64やネジ67と螺合可能なネジ穴66を有する。ネジ65は、縦穴64に上方から挿入されて冷却装置50の環状面56に設けられたネジ穴58に螺合される。ネジ67は、冷却装置50を上下方向に貫通するネジ挿入穴59に下方から挿入されてクランプリング60の裏面に設けられたネジ穴66に螺合される。こうしたネジ65,67は、クランプリング60の周方向に等間隔に複数(例えば8個)設けられている。これにより、円形溝54と下部プレート40とシール部材57によって囲まれた空間Sは密閉される。密閉された空間Sには、伝熱シート又は伝熱ガスが充填される。このように、半導体製造装置用部材10の中間プレート30のうち上部プレート20や下部プレート40から外側にはみ出した部分は、冷却装置50に装着するためのフランジとして用いられる。その後、中間プレート30を、フィルタ回路72を介してDC電源70に接続すると共に、フィルタ回路76を介してRF電源74に接続する。フィルタ回路72は、中間プレート30からRF電流がDC電源70へ流れ込むのを防止する。フィルタ回路76は、中間プレート30からDC電流がRF電源74へ流れ込むのを防止する。
【0028】
冷却装置50に半導体製造装置用部材10を取り付けた後、ウエハWをウエハ載置面22に載置する。そして、真空チャンバ内を真空ポンプにより減圧して所定の真空度になるように調整し、中間プレート30にDC電源70を用いてDC電圧をかけてウエハWをウエハ載置面22に吸着固定する。ウエハWは隙間なくウエハ載置面22のシールバンド22aや円形突起22b(図2参照)に密着する。これにより、ウエハWの裏面とウエハ載置面22のうちシールバンド22aや円形突起22bが設けられていない部分との間の空間は、密閉される。この空間には伝熱ガスが供給される。伝熱ガスは封入されるため、上部プレート20とウエハWとの間で効率よく熱伝導が行われる。次に、真空チャンバ内を所定圧力(例えば数10~数100Pa)の反応ガス雰囲気とする。反応ガスは、図示しない上部電極のシャワーヘッドから供給される。この状態で、中間プレート30にRF電源74を用いてRF電圧をかけて上部電極と上部プレート20との間にプラズマを発生させる。そして、発生したプラズマによってウエハWの表面のエッチングを行う。図示しないコントローラは、ウエハWの温度が予め設定された目標温度となるように、ヒータ電極44へ供給する電力を制御する。
【0029】
次に、半導体製造装置用部材10の製造例について説明する。図5は半導体製造装置用部材10の製造工程図である。以下には、上部プレート20及び下部プレート40の材料がアルミナで、中間プレート30の材料がSiSiCTiの場合を例に挙げて説明する。
【0030】
まず、上部プレート20と、中間プレート30と、下部プレート40とを用意する(図5A参照)。この工程を工程(a)と称する。
【0031】
上部プレート20は、以下のようにして製造することができる。ここでは、アルミナ製の上部プレート20の製造例について説明する。まず、円盤状のアルミナ製のMCシートを準備する。MCとは、モールドキャストの略であり、セラミック原料粉末(ここではアルミナ原料粉末)とモールド化剤とを含むセラミックスラリーを成形型内に注入し、その成形型内でモールド化剤を化学反応させてセラミックスラリーをモールド化させることにより成形体を得る周知の方法をいう。モールド化剤としては、例えば、イソシアネート及びポリオールを含み、ウレタン反応によりモールド化するものとしてもよい。次にMCシートをホットプレス法により焼成することによりアルミナ焼結体を得る。得られたアルミナ焼結体の両面に研削加工又はブラスト加工等を施すことにより形状や厚みを調整し、平板状の上部プレート20を得る(図5A参照)。この時点では、ウエハ載置面22にシールバンド22aや円形突起22bは形成しない。なお、アルミナ製のMCシートの代わりに、グリーンシートを用いてもよい。
【0032】
中間プレート30は、以下のようにして製造することができる。ここでは、SiSiCTi製の中間プレート30の製造例について説明する。まず、SiSiCTi製の円盤部材を作製する。例えば、平均粒径が10μm以上25μm以下の炭化珪素原料粒子を39~51質量%含有すると共に、Ti及びSiが含まれるように選択された1種以上の原料を含有し、炭化珪素を除く原料に由来するSi及びTiについてSi/(Si+Ti)の質量比が0.26~0.54である粉体混合物を作製する。原料としては、例えば炭化珪素と金属Siと金属Tiとを用いることができる。その場合、炭化珪素を39~51質量%、金属Siを16~24質量%、金属Tiを26~43質量%となるように混合するのが好ましい。次に、得られた粉体混合物を一軸加圧成形により円盤状の成形体を作製し、その成形体を不活性雰囲気下でホットプレスにより1370~1460℃で焼結させることにより、SiSiCTi製の円盤部材を得る。なお、ホットプレス時のプレス圧は、例えば50~300kgf/cm2に設定する。次に、得られた円盤部材を研削加工等により形状や厚みを調整し、中間プレート30を得る(図5A参照)。中間プレート30の具体的な製造条件については、例えば特許第5666748号公報に記載されている条件を参考にして設定すればよい。
【0033】
下部プレート40は、以下のようにして製造することができる。ここでは、アルミナ製の下部プレート40の製造例について説明する。まず、円盤状のアルミナ製の第1及び第2MCシートを準備する。次に、第2MCシートの表面にヒータ電極44を形成する。ヒータ電極44の形成方法としては、例えばスクリーン印刷、PVD、CVD、メッキなどを用いることができる。次に、第2MCシートのヒータ電極44が形成された面に、第1MCシートを積層して積層体とする。次に、積層体をホットプレス法により焼成することによりヒータ電極44を内蔵したアルミナ焼結体を得る。得られたアルミナ焼結体の両面に研削加工又はブラスト加工等を施すことにより形状や厚みを調整し、平板状の下部プレート40を得る(図5A参照)。なお、アルミナ製のMCシートの代わりに、グリーンシートを用いてもよい。
【0034】
次に、下部プレート40の上面に、下部プレート40と同径の平板状の第2金属接合材302を載せ、その上に中間プレート30を載せ、更に中間プレート30の上面に上部プレート20と同径の平板状の第1金属接合材301を載せ、上部プレート20の下面が第2金属接合材302と接触するように載せる。これにより、上部プレート20と下部プレート40との間に、中間プレート30が各金属接合材301,302を介して挟まれた状態のサンドイッチ積層体が得られる。次に、第1及び第2金属接合材301,302の固相線温度以下(例えば、固相線温度から20℃引いた温度以上固相線温度以下)の温度でサンドイッチ積層体を加圧して、上部プレート20と中間プレート30と下部プレート40とをTCB接合し(図5B参照)、その後室温に戻す。これにより、第1金属接合材301が第1金属接合層31になり、第2金属接合材302が第2金属接合層32になった接合体80が得られる(図5C参照)。この工程を工程(b)と称する。第1及び第2金属接合材301,302としては、Al-Mg系接合材やAl-Si-Mg系接合材を使用することができる。例えば、Al-Si-Mg系接合材(88.5重量%のAl、10重量%のSi、1.5重量%のMgを含有し、固相線温度が約560℃)を用いてTCB接合する場合、真空雰囲気下、540~560℃(例えば550℃)に加熱した状態で上部プレート20を0.5~2.0kg/mm2 (例えば1.5kg/mm2)の圧力で数時間かけて加圧する。第1及び第2金属接合材301,302は厚みが100μm前後のものを用いるのが好ましい。
【0035】
次に、接合体80の上部プレート20のウエハ載置面22に、シールバンド22a及び円形突起22bを形成するためのパターンマスクを貼り付け、ブラストメディアを噴射してブラスト加工を行う。ブラスト加工によりウエハ載置面22にはシールバンド22aや円形突起22bが形成される。この工程を工程(c)と称する。その後、マスクを外し、半導体製造装置用部材10を得る(図5D参照)。
【0036】
以上詳述した半導体製造装置用部材10では、電極が内蔵されていないセラミック製の上部プレート20は、静電チャックの誘電体層として機能する。上部プレート20は、電極が内蔵されていないため、電極が内蔵されている場合に比べてフラットにしやすい。そのため、上部プレート20(すなわち誘電体層)が薄くても上部プレート20の厚みの均一性が良好になる。それによって、上部プレート20と中間プレート30との接合性が良好になり、接合後の残留応力も低減される。また、中間プレート30にRF電圧を印加してプラズマを発生させたときにプラズマ密度が上部プレート20の面内でばらつくのを防止することができる。
【0037】
また、上部プレート20の厚みは、0.05mm以上1.5mm以下とし、この範囲内で所望の吸脱着特性が得られる厚みに設定することが好ましい。ここで、中間プレート30から上部プレート20及びプラズマ雰囲気を経由して図示しない上部電極に至るRF経路において、上部プレート20が厚いと静電容量Cが小さくなる。静電容量Cが小さくなると、上部プレート20のインピーダンスZは1/(jωC)の項を含むため高くなる。そのため、上部プレート20が厚いとRF損失が大きくなり、プラズマ生成の観点では不利になる。これに対して、上部プレート20の厚みを上述した範囲内で設定すると、RF損失が小さくなり、プラズマ生成の観点では有利になる。上部プレート20の厚みを吸脱着特性及び電気的絶縁性を得るための最低限の厚みとした場合も、これと同様である。なお、周波数が小さいほどωが小さくなり1/(jω)の値が大きくなるため、静電容量Cの影響が顕著になる。
【0038】
更に、セラミック製の下部プレート40は、ヒータ電極44を内蔵している。ヒータ電極44を内蔵した下部プレート40とウエハ載置面22との間には中間プレート30が介在しているため、熱が中間プレート30によって拡散されてウエハWに伝わる。そのため、ウエハWの均熱性が良好になる。
【0039】
更にまた、中間プレート30の直径は、上部プレート20の直径よりも大きい。そのため、中間プレート30の直径が上部プレート20の直径と比べて同じか小さい場合に比べて、プラズマ発生領域が広がる。その結果、ウエハWを均一にプラズマで処理しやすくなる。
【0040】
そして更に、半導体製造装置用部材10の製法は、(a)ウエハ載置面22を有し電極が内蔵されていない上部プレート20と、ヒータ電極44が内蔵された下部プレート40と、導電材製の中間プレート30とを用意する工程と、(b)中間プレート30の上面と上部プレート20の下面(ウエハ載置面22とは反対側の面)との間に第1金属接合材301を配置すると共に、中間プレート30の下面と下部プレート40の上面との間に第2金属接合材302を配置し、その状態で加圧加熱したあと室温に戻すことにより接合体80を得る工程と、を含む。この製法は、上述した半導体製造装置用部材10を製造するのに適している。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0042】
例えば、図6に示す半導体製造装置用部材110のように、下部プレート40にシールド電極46を内蔵してもよい。図6では、上述した実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付した。シールド電極46は、下部プレート40の上面(中間プレート30が設けられている面)とヒータ電極44との間に内蔵されている。こうすれば、ヒータ電極44にRF電流が流れ込むのをシールド電極46が防止するため、RF電流がヒータ電極44の温度制御に悪影響を及ぼすのを防止することができる。
【0043】
あるいは、図7に示す半導体製造装置用部材210のように、中間プレート30のうち外部に露出している面や第1及び第2金属接合層31,32のうち外部に露出している部分は、絶縁膜33によって覆われていてもよい。図7では、上述した実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付した。絶縁膜33としては、例えばセラミック溶射膜などが挙げられる。こうすれば、中間プレート30のうち外部に露出している面や第1及び第2金属接合層31,32のうち外部に露出している部分が腐食するのを防止することができる。
【0044】
あるいは、図8に示す半導体製造装置用部材310のように、上部プレート20を中間プレート30の上面に第1金属接合層31を介さずに設けてもよい。図8では、上述した実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付した。具体的には、中間プレート30の上面にセラミック溶射膜を形成し、そのセラミック溶射膜を上部プレート20としてもよい。セラミック溶射膜としては、例えばアルミナ溶射膜やイットリア溶射膜などが挙げられる。半導体製造装置用部材310の製法の一例としては、(a)上部プレート20を中間プレート30の上面に溶射により形成する工程と、(b)中間プレート30の下面と下部プレート40の上面との間に金属接合材を配置し、その状態で加圧加熱したあと室温に戻すことにより接合体を得る工程と、を含む製法が挙げられる。
【0045】
上述した実施形態において、半導体製造装置用部材10は、図9図11に示すように半導体製造装置用部材10を厚み方向に貫通する貫通穴34を備え、その貫通穴34には放電防止処理が施されていてもよい。例えば、図9に示すように、貫通穴34の内壁のうち第1金属接合層31、中間プレート30及び第2金属接合層32が露出している部分を絶縁膜35で被覆してもよい。また、図10に示すように、貫通穴34に絶縁管36を挿入して、貫通穴34の内壁のうち第1金属接合層31、中間プレート30及び第2金属接合層32が露出している部分を絶縁管36で被覆してもよい。このとき、絶縁管36の外周面を樹脂で接着固定してもよい。また、貫通穴34がガス穴の場合には、図11に示すように、貫通穴34のうち少なくとも上部プレート20を貫通している部分に絶縁材からなる通気性プラグ37を挿入してもよい。このとき、通気性プラグ37の周囲を樹脂で接着固定してもよい。図9図11の構成を採用すれば、ウエハWを処理している間に貫通穴34を介して放電が起きるのを抑制することができる。なお、図9図11では、上述した実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付した。また、図9及び図10の貫通穴34は、特に用途を限定するものではなく、例えばリフトピン穴でもよいしガス穴でもよい。
【0046】
上述した実施形態では、上部プレート20と中間プレート30との間に第1金属接合層31を設け、中間プレート30と下部プレート40との間に第2金属接合層32を設けたが、これらの金属接合層31,32の代わりに樹脂接合層を設けてもよい。樹脂接合層としては、シリコーン系樹脂などが挙げられる。樹脂接合層は、ペースト材を用いて形成してもよいし、シート材を用いて形成してもよい。
【0047】
上述した実施形態では、工程(a)で用意した上部プレート20にはシールバンド22a及び円形突起22bを形成しなかったが、この段階で上部プレート20にシールバンド22a及び円形突起22bをブラスト加工により形成してもよい。その場合、工程(c)は不要となる。
【0048】
上述した実施形態では、上部プレート20の直径をウエハWの直径と同じにしたが、上部プレート20の直径をウエハWの直径よりも大きくしてもよいし、上部プレート20の直径をウエハWの直径よりも小さくしてもよい。
【0049】
上述した実施形態では、ヒータ電極44は下部プレート40を平面視した領域のほぼ全面を覆うように設けたが、下部プレート40を平面視した領域を中央の円形ゾーンとその外側の環状ゾーンとに分け、ゾーンごとにヒータ電極を設けてもよい。また、環状ゾーンを更に複数のゾーンに分割し、分割したゾーンごとにヒータ電極を設けてもよい。
【0050】
上述した実施形態において、下部プレート40にヒータ電極44を1層設けたが、下部プレート40にヒータ電極44を多層(上下方向に多段)に設けてもよい。
【0051】
上述した実施形態では、下部プレート40にヒータ電極44を内蔵したが、下部プレート40に電極を内蔵しなくてもよい。
【実施例
【0052】
以下に本発明の好適な実施例について説明する。本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。実験例1~10が本発明の実施例に相当する。それらの結果を表1及び表2に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
[実験例1]
上述した実施形態の半導体製造装置用部材10を、上述した製法により製造した。上部プレート20、中間プレート30及び下部プレート40の材質や寸法は表1に示した通りである。上部プレート20、中間プレート30及び下部プレート40をそれぞれ作製したあと、上部プレート20と中間プレート30との間に第1金属接合材301を配置すると共に下部プレート40と中間プレート30との間に第2金属接合材302を配置し、TCBにより上部プレート20と中間プレート30と下部プレート40とを接合した。第1及び第2金属接合材301,302としてはAl-Si-Mg系接合材を用いた。なお、実験例1では、ウエハWの吸脱着特性及び電気的絶縁性を得るため、アルミナ製の上部プレート20の厚みを0.3mmとした。
【0056】
上部プレート20は、電極を内蔵していないため、接合前における上部プレート20の変形はみられず、その後のTCB接合時の接合性も良好であり、接合後の残留応力も解消された。また、静電電極及びRF電極として機能する中間プレート30から上部プレート20の上面までの距離の管理が簡素化された。更に、中間プレート30から上部プレート20及びプラズマ雰囲気を経由して図示しない上部電極に至るRF経路において、上部プレート20の静電容量が大きくなったため、RF損失が小さくなった。そのため、低周波RFの印加にも対応可能となった。なお、上部プレート20の厚みを0.3mmから3mmに変更した実験では、上部プレートの静電容量が実験例1の10%しかなかったため、RF損失が大きくなった。
【0057】
[実験例2~4]
実験例2~4では、上部プレート20の厚みを表1のように変更したこと以外は、実験例1と同様にして半導体製造装置用部材10を作製した。実験例2~4においても、上部プレート20は、電極を内蔵していないため、接合前における上部プレート20の変形はみられず、その後のTCB接合時の接合性も良好であり、接合後の残留応力も解消された。また、静電電極及びRF電極として機能する中間プレート30から上部プレート20の上面までの距離の管理が簡素化された。更に、中間プレート30から上部プレート20及びプラズマ雰囲気を経由して図示しない上部電極に至るRF経路において、上部プレート20の静電容量が大きくなったため、RF損失が小さくなった。そのため、低周波RFの印加にも対応可能となった。但し、実験例4では、上部プレート20の厚みが1.5mmを超えていたため、実験例1~3と比べると静電容量が小さくなった。そのため、上部プレート20の厚みは0.05mm以上1.5mm以下が好ましい。
【0058】
[実験例5]
上述した半導体製造装置用部材310(図8参照)を、表1の実験例5に示した条件を採用して製造した。実験例5では、上部プレート20を中間プレート30の上面に溶射により形成し、その中間プレート30の下面と下部プレート40の上面との間に金属接合材を配置してTCB接合を行った。
【0059】
実験例5でも、上部プレート20は、電極を内蔵していないため、接合前における上部プレート20の変形はみられず、その後のTCB接合時の接合性も良好であり、接合後の残留応力も解消された。また、静電電極及びRF電極として機能する中間プレート30から上部プレート20の上面までの距離の管理が簡素化された。更に、中間プレート30から上部プレート20及びプラズマ雰囲気を経由して図示しない上部電極に至るRF経路において、静電容量が大きくなったため、RF損失が小さくなった。そのため、低周波RFの印加にも対応可能となった。なお、アルミナ溶射膜の上部プレート20の厚みを0.05,1.5,1.6mmに変更した半導体製造装置用部材310を実験例5に準じて作製して評価したところ、実験例2~4と同様の結果が得られた。
【0060】
[実験例6]
上述した実施形態の半導体製造装置用部材10を、表2の実験例6に示した条件を採用して、実験例1と同様にして製造した。なお、実験例6では、ウエハWの吸脱着特性及び電気的絶縁性を得るため、AlN製の上部プレート20の厚みを0.5mmとした。
【0061】
実験例6でも、上部プレート20は、電極を内蔵していないため、接合前における上部プレート20の変形はみられず、その後のTCB接合時の接合性も良好であり、接合後の残留応力も解消された。また、静電電極及びRF電極として機能する中間プレート30から上部プレート20の上面までの距離の管理が簡素化された。更に、中間プレート30から上部プレート20及びプラズマ雰囲気を経由して図示しない上部電極に至るRF経路において、静電容量が大きくなったため、RF損失が小さくなった。そのため、低周波RFの印加にも対応可能となった。なお、上部プレート20の厚みを0.5mmから3mmに変更した実験では、静電容量が実験例6の17%程度しかなかったため、RF損失が大きくなった。
【0062】
[実験例7~10]
実験例7~10では、上部プレート20及び下部プレート40の材質としてAlNを用い、上部プレート20の厚みを表2のように変更したこと以外は、実験例5と同様にして半導体製造装置用部材310を作製した。実験例7~10においても、上部プレート20は、電極を内蔵していないため、接合前における上部プレート20の変形はみられず、その後のTCB接合時の接合性も良好であり、接合後の残留応力も解消された。また、静電電極及びRF電極として機能する中間プレート30から上部プレート20の上面までの距離の管理が簡素化された。更に、中間プレート30から上部プレート20及びプラズマ雰囲気を経由して図示しない上部電極に至るRF経路において、上部プレート20の静電容量が大きくなったため、RF損失が小さくなった。そのため、低周波RFの印加にも対応可能となった。但し、実験例10では、上部プレート20の厚みが1.5mmを超えていたため、実験例6~9と比べると静電容量が小さくなった。そのため、上部プレート20の厚みは0.05mm以上1.5mm以下が好ましい。
【0063】
本出願は、2021年2月4日に出願された日本国特許出願第2021-16207号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、ウエハを処理するウエハ処理装置などの半導体製造装置用部材に利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
10,110,210,310 半導体製造装置用部材、20 上部プレート、22 ウエハ載置面、22a シールバンド、22b 円形突起、30 中間プレート、31 第1金属接合層、32 第2金属接合層、33 絶縁膜、34 貫通穴、35 絶縁膜、36 絶縁管、37 通気性プラグ、40 下部プレート、44 ヒータ電極、44a 一端、44b 他端、46 シールド電極、50 冷却装置、52 冷媒通路、54 円形溝、56 環状面、57 シール部材、58 ネジ穴、59 ネジ挿入穴、60 クランプリング、62 段差、64 縦穴、65 ネジ、66 ネジ穴、67 ネジ、70 DC電源、72 フィルタ回路、74 RF電源、76 フィルタ回路、80 接合体、301 第1金属接合材、302 第2金属接合材。
【要約】
半導体製造装置用部材10は、ウエハ載置面22を有し、電極を内蔵してないセラミック製の上部プレート20と、上部プレート20のうちウエハ載置面22とは反対側の面に設けられ、静電電極として用いられる導電材製の中間プレート30と、中間プレート30のうち上部プレート20が設けられた面とは反対側の面に接合されたセラミック製の下部プレート40と、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11