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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】発泡成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/08 20060101AFI20220420BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20220420BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20220420BHJP
   B29C 51/30 20060101ALI20220420BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20220420BHJP
【FI】
B29C44/08
B29C44/00 E
B29C51/10
B29C51/30
B29K101:12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017176128
(22)【出願日】2017-09-13
(65)【公開番号】P2018058352
(43)【公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2016193531
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】山崎 芳裕
(72)【発明者】
【氏名】玉田 輝雄
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 優
(72)【発明者】
【氏名】南川 佑太
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-115952(JP,A)
【文献】特開平10-156916(JP,A)
【文献】特開2013-071309(JP,A)
【文献】特開2016-172438(JP,A)
【文献】特開2000-229349(JP,A)
【文献】特開2006-068919(JP,A)
【文献】特開2010-269510(JP,A)
【文献】特開2010-280141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00-44/60;67/20
B29C 51/00-51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融状態の発泡樹脂をスリットから押し出して垂下させて形成した1枚の発泡樹脂シートを第1及び第2金型間に配置する配置工程と、
前記発泡樹脂シートの厚さよりも大きい隙間が第1及び第2金型の間に設けられるように第1及び第2金型を近づけた状態で第1及び第2金型の両方によって前記発泡樹脂シートを減圧吸引することによって、前記発泡樹脂シートを前記隙間の厚さにまで膨張させる膨張工程を備え、
前記配置工程の後に前記発泡樹脂シートが加熱されることなく、前記膨張工程が行われ、
前記膨張工程は、第1吸引工程と、金型近接工程と、第2吸引工程をこの順に備え、
第1吸引工程では、第1金型により前記発泡樹脂シートを減圧吸引して前記発泡樹脂シートを第1金型のキャビティに沿った形状に賦形し、
前記金型近接工程では、前記隙間が第1及び第2金型の間に設けられるように第1及び第2金型を近接させ、
第2吸引工程では、第1及び第2金型により前記発泡樹脂シートを減圧吸引することによって前記発泡樹脂シートを前記隙間の厚さにまで膨張させる、発泡成形体の製造方法。
【請求項2】
前記膨張工程では、前記発泡樹脂シートのうち前記発泡成形体となる部位の全体が膨張される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1及び第2金型のキャビティは、前記発泡樹脂シートのうち前記発泡成形体となる部位の全体において前記隙間が略一定となるように構成される、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
溶融状態の発泡樹脂をスリットから押し出して垂下させて形成した1枚の発泡樹脂シートを第1及び第2金型間に配置する配置工程と、
前記発泡樹脂シートの厚さよりも大きい隙間が第1及び第2金型の間に設けられるように第1及び第2金型を近づけた状態で第1及び第2金型の両方によって前記発泡樹脂シートを減圧吸引することによって、前記発泡樹脂シートを前記隙間の厚さにまで膨張させる膨張工程を備え、
前記配置工程の後に前記発泡樹脂シートが加熱されることなく、前記膨張工程が行われ、
第1金型のキャビティは、凹部を有する形状であり、第2金型のキャビティは、前記凹部内に入り込む形状の凸部を有する形状である、発泡成形体の製造方法。
【請求項5】
前記隙間は、前記発泡樹脂シートの厚さの1.1~3.0倍である、請求項1~請求項4の何れか1つに記載の方法。
【請求項6】
中央層と、その両側に設けられた表面層を備える発泡成形体であって、
前記表面層は、前記発泡成形体の肉厚に対して前記発泡成形体の表面から厚さ10%までの層であり、前記中央層は、前記発泡成形体の肉厚に対して前記発泡成形体の表面から厚さ25~50%の層であり、
前記中央層の平均気泡径は、前記表面層の平均気泡径よりも大きく、
(前記中央層の平均気泡径)/(前記表面層の平均気泡径)の比は、1.2~1.8であり、
前記中央層の平均気泡径は、100~300μmである、発泡成形体。
【請求項7】
前記発泡成形体は、ポリオレフィンで構成される、請求項6に記載の発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の内装部材(例:ドアトリム、天井材)、ラゲッジフロアボード等のボード類、ダクト、エンジンアンダーカバー等の発泡成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、1枚の発泡樹脂シートを再加熱して軟化状態としたものを一対の分割金型の間に配置し、両方の金型から発泡樹脂シートを減圧吸引することによって発泡樹脂シートを二次発泡させて発泡成形体に厚肉部を形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-310380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、予め用意した常温の発泡樹脂シートを、成形時に赤外線ヒータなどの輻射熱により再度加熱して軟化状態にしている。このような方法では、発泡樹脂シートが非常に薄い場合は問題が生じにくいが、発泡樹脂シートの肉厚の増大に伴って発泡樹脂シートの厚さ方向の中央部の軟化が不十分となることにより、賦形性が悪化して金型のキャビティに追従しにくくなる場合がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、発泡樹脂シートの肉厚が大きい場合でも発泡樹脂シートの金型のキャビティに高精度に追従させることができる、発泡成形体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、溶融状態の発泡樹脂をスリットから押し出して垂下させて形成した1枚の発泡樹脂シートを第1及び第2金型間に配置する配置工程と、前記発泡樹脂シートの厚さよりも大きい隙間が第1及び第2金型の間に設けられるように第1及び第2金型を近づけた状態で第1及び第2金型の両方によって前記発泡樹脂シートを減圧吸引することによって、前記発泡樹脂シートを前記隙間の厚さにまで膨張させる膨張工程を備える、発泡成形体の製造方法が提供される。
【0007】
本発明では、常温の発泡樹脂シートを再加熱して軟化させた発泡樹脂シートを用いるのではなく、溶融状態の発泡樹脂をスリットから押し出して垂下させて形成した1枚の発泡樹脂シートを用いる。このようにして形成した発泡樹脂シートは、厚さ方向の中央に向かうほど大気による冷却の影響を受けにくくなるので、厚さ方向の中央に向かうほど温度が上昇して粘度が低下する。このため、本発明によれば、発泡樹脂シートの肉厚が大きい場合でも発泡樹脂シートを金型のキャビティに高精度に追従させることができる。
【0008】
また、従来技術では、発泡樹脂シートの中央部の軟化が不十分な場合には、発泡樹脂シートを一対の金型の両方から減圧吸引したときに主に発泡樹脂シートの表面近傍において二次発泡が起こるために厚肉部の剛性が不十分になりやすかった。一方、本発明では、発泡樹脂シートの厚さ方向の中央に向かうほど粘度が低下するので、発泡樹脂シートを一対の金型の両方から減圧吸引したときに、主に発泡樹脂シートの中央付近での発泡が促進されて発泡樹脂シートが膨張する。このため、本発明によれば、厚さ方向の中央付近の層(中央層)の平均気泡径が大きく、表面近傍の表面層の平均気泡径が小さいという構成の発泡成形体が得られる。このような発泡成形体は、平均気泡径が大きい中央層が平均気泡径が小さい表面層で挟まれたサンドイッチ構造となっているために、軽量且つ高剛性である。
【0009】
以上のように、本発明によれば、発泡樹脂シートの肉厚が大きい場合でも発泡樹脂シートを金型のキャビティに高精度に追従させることができ、かつ軽量且つ高剛性である発泡成形体を製造することができる。
【0010】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記膨張工程は、第1吸引工程と、金型近接工程と、第2吸引工程をこの順に備え、第1吸引工程では、第1金型により前記発泡樹脂シートを減圧吸引して前記発泡樹脂シートを第1金型のキャビティに沿った形状に賦形し、前記金型近接工程では、前記隙間が第1及び第2金型の間に設けられるように第1及び第2金型を近接させ、第2吸引工程では、第1及び第2金型により前記発泡樹脂シートを減圧吸引することによって前記発泡樹脂シートを前記隙間の厚さにまで膨張させる。
好ましくは、前記膨張工程では、前記発泡樹脂シートのうち前記発泡成形体となる部位の全体が膨張される。
好ましくは、第1及び第2金型のキャビティは、前記発泡樹脂シートのうち前記発泡成形体となる部位の全体において前記隙間が略一定となるように構成される。
好ましくは、第1金型のキャビティは、凹部を有する形状であり、第2金型のキャビティは、前記凹部内に入り込む形状の凸部を有する形状である。
好ましくは、前記隙間は、前記発泡樹脂シートの厚さの1.1~3.0倍である。
【0011】
本発明の別の観点によれば、中央層と、その両側に設けられた表面層を備える発泡成形体であって、前記表面層は、前記発泡成形体の肉厚に対して前記発泡成形体の表面から厚さ10%までの層であり、前記中央層は、前記発泡成形体の肉厚に対して前記発泡成形体の表面から厚さ25~50%の層であり、前記中央層の平均気泡径は、前記表面層の平均気泡径よりも大きい、発泡成形体が提供される。
好ましくは、(前記中央層の平均気泡径)/(前記表面層の平均気泡径)の比は、1.2~10である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態の発泡成形体の製造方法で利用可能な発泡成形機1の一例を示す。
図2図2(a)は、図1の第1及び第2金型21,22及び発泡樹脂シート23の近傍の拡大断面図であり、図2(b)は、図2(a)の状態から、第1金型21によって発泡樹脂シート23を減圧吸引して、発泡樹脂シート23を第1金型21のキャビティ21bに沿った形状に賦形した状態を示す、図2(a)に対応する断面図である。
図3図3(a)~(b)は、図2(a)に対応する断面図であり、図3(a)は、図2(b)の状態から金型21,22を互いに近接させた状態を示し、図3(b)は、図3(a)の状態から、第2金型22によって発泡樹脂シート23を減圧吸引して発泡樹脂シート23を金型21,22の間の隙間Gの厚さにまで膨張させた状態を示す。
図4図4(a)~(b)は、図2(a)に対応する断面図であり、図4(a)は、図3(b)の工程で得られたバリ23bのついた発泡成形体24を示し、図4(b)は、図4(a)の状態からバリ23bを除去した後の状態を示す。
図5】本発明の実施例で得られた発泡成形体24の断面写真を示す。
図6】仮平均気泡径の算出方法を説明するための気泡の形態の一例を示す。
図7】ヒンジ部33で連結されたダクト半体31,32の構造を示す斜視図である。
図8】ダクト半体31,32を接合して形成されたダクト30を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0014】
1.発泡成形機1の構成
最初に、図1図4を用いて、本発明の一実施形態の発泡成形体の製造方法の実施に利用可能な発泡成形機1について説明する。発泡成形機1は、樹脂供給装置2と、Tダイ18と、金型21,22を備える。樹脂供給装置2は、ホッパー12と、押出機13と、インジェクタ16と、アキュームレータ17を備える。押出機13とアキュームレータ17は、連結管25を介して連結される。アキュームレータ17とTダイ18は、連結管27を介して連結される。
以下、各構成について詳細に説明する。
【0015】
<ホッパー12,押出機13>
ホッパー12は、原料樹脂11を押出機13のシリンダ13a内に投入するために用いられる。原料樹脂11の形態は、特に限定されないが、通常は、ペレット状である。原料樹脂は、例えばポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂であり、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物などが挙げられる。原料樹脂11は、ホッパー12からシリンダ13a内に投入された後、シリンダ13a内で加熱されることによって溶融されて溶融樹脂になる。また、シリンダ13a内に配置されたスクリューの回転によってシリンダ13aの先端に向けて搬送される。スクリューは、シリンダ13a内に配置され、その回転によって溶融樹脂を混練しながら搬送する。スクリューの基端にはギア装置が設けられており、ギア装置によってスクリューが回転駆動される。シリンダ13a内に配置されるスクリューの数は、1本でもよく、2本以上であってもよい。
【0016】
<インジェクタ16>
シリンダ13aには、シリンダ13a内に発泡剤を注入するためのインジェクタ16が設けられる。インジェクタ16から注入される発泡剤は、物理発泡剤、化学発泡剤、及びその混合物が挙げられるが、物理発泡剤が好ましい。物理発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系物理発泡剤、およびブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤、さらにはそれらの超臨界流体を用いることができる。超臨界流体としては、二酸化炭素、窒素などを用いて作ることが好ましく、窒素であれば臨界温度-149.1℃、臨界圧力3.4MPa以上、二酸化炭素であれば臨界温度31℃、臨界圧力7.4MPa以上とすることにより得られる。化学発泡剤としては、酸(例:クエン酸又はその塩)と塩基(例:重曹)との化学反応により炭酸ガスを発生させるものが挙げられる。化学発泡剤は、インジェクタ16から注入する代わりに、ホッパー12から投入してもよい。
【0017】
<アキュームレータ17、Tダイ18>
原料樹脂と発泡剤が溶融混練されてなる発泡樹脂は、シリンダ13aの樹脂押出口から押し出され、連結管25を通じてアキュームレータ17内に注入される。アキュームレータ17は、シリンダ17aとその内部で摺動可能なピストン17bを備えており、シリンダ17a内に発泡樹脂が貯留可能になっている。そして、シリンダ17a内に発泡樹脂が所定量貯留された後にピストン17bを移動させることによって、連結管27を通じて発泡樹脂をTダイ18内に設けられたスリットから押し出して垂下させて発泡樹脂シート23を形成する。
【0018】
<第1及び第2金型21,22>
発泡樹脂シート23は、第1及び第2金型21,22間に導かれる。図1図3に示すように、第1金型21には、多数の減圧吸引孔21aが設けられており、発泡樹脂シート23を減圧吸引して第1金型21のキャビティ21bに沿った形状に賦形することが可能になっている。キャビティ21bは、凹部21cを有する形状になっており、凹部21cを取り囲むようにピンチオフ部21dが設けられている。第2金型22には、多数の減圧吸引孔22aが設けられており、発泡樹脂シート23を減圧吸引して第2金型22のキャビティ22bに沿った形状に賦形することが可能になっている。キャビティ22bは、凹部21cに入り込む形状の凸部22cを有する形状になっており、凸部22cを取り囲むようにピンチオフ部22dが設けられている。なお、第2金型22のキャビティ22bが凹部を有する形状で、第1金型21のキャビティ21bが凹部に入り込む凸部を有する形状であってもよい。
【0019】
2.発泡成形体の製造方法
ここで、図2図4を用いて、本発明の一実施形態の発泡成形体の製造方法について説明する。本実施形態の方法は、配置工程と膨張工程を備える。以下、詳細に説明する。
【0020】
2.1 配置工程
この工程では、図1及び図2(a)に示すように、溶融状態の発泡樹脂をTダイ18のスリットから押し出して垂下させて形成した1枚の発泡樹脂シート23を金型21,22間に配置する。本実施形態では、Tダイ18から押し出された発泡樹脂シート23をそのまま使用するダイレクト真空成形が行われるので、発泡樹脂シート23は、成形前に室温にまで冷却されて固化されることがなく、固化された発泡樹脂シート23が成形前に加熱されることもない。また、本実施形態の発泡樹脂シート23は、スリットから押し出された直後は全体がほぼ均一の温度であり、垂下されている間に大気によって表面から徐々に冷却されるものである。そして、発泡樹脂シート23の厚さ方向の中央に向かうほど大気による冷却の影響を受けにくくなるので、本実施形態の発泡樹脂シート23は、厚さ方向の中央に向かうほど温度が上昇して粘度が低くなるという性質を有する。発泡樹脂シート23の肉厚は、特に限定されないが、例えば、0.5~5mmであり、好ましくは、1~3mmである。この肉厚は、具体的には例えば、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0021】
2.2 膨張工程
この工程では、図2(b)~図3(b)に示すように、発泡樹脂シート23の厚さよりも大きい隙間Gが金型21,22の間に設けられるように金型21,22を近づけた状態で金型21,22の両方によって発泡樹脂シート23を減圧吸引することによって、発泡樹脂シート23を隙間Gの厚さにまで膨張させる。
【0022】
本実施形態では、金型21,22にピンチオフ部21d,22dが設けられており、ピンチオフ部21d,22dが当接するまで金型21,22を近接させると、ピンチオフ部21d,22dで囲まれる空間が密閉空間Sとなる。発泡樹脂シート23のうち密閉空間S内にある部位23aが発泡成形体24となる。一方、発泡樹脂シート23のうち密閉空間S外にある部位はバリ23bとなる。
【0023】
金型21,22のキャビティ21b,22bは、発泡樹脂シート23のうち発泡成形体24となる部位(つまり、密閉空間S内にある部位)の全体に渡って、金型21,22の間の隙間Gが略一定となるように構成されている。この状態で金型21,22によって発泡樹脂シート23を減圧吸引すると発泡樹脂シート23が隙間Gの厚さに膨張して発泡成形体24が形成される。なお、ピンチオフ部21d,22dは、必須の構成ではなく、金型21,22の間に隙間Gが形成されるように金型21,22を非接触で近接させてもよい。但し、ピンチオフ部21d,22dを当接させて密閉空間Sを形成した状態で金型21,22による減圧吸引を行うと密閉空間S内の圧力が低下されやすいので、発泡樹脂シート23が膨張されやすいというメリットがある。
【0024】
隙間Gの厚さは、特に限定されないが、発泡樹脂シート23の厚さの1.1~3.0倍であることが好ましい。(隙間Gの厚さ)/(発泡樹脂シート23の厚さ)は、具体的には例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0025】
金型21,22による減圧吸引は、第1金型21による減圧吸引を先に開始してもよく、第2金型22による減圧吸引を先に開始してもよく、金型21,22による減圧吸引を同時に開始してもよい。また、第1金型21による減圧吸引を先に停止してもよく、第2金型22による減圧吸引を先に停止してもよく、金型21,22による減圧吸引を同時に停止してもよい。金型21,22による減圧吸引は、金型21,22を近接させる前に開始してもよく、近接させた後に開始してもよい。
【0026】
金型21,22の両方によって発泡樹脂シート23を減圧吸引すると、発泡樹脂シート23の発泡が促進されて発泡樹脂シート23が膨張する。発泡樹脂シート23は厚さ方向の中央付近での粘度が最も低い(流動性が最も高い)ので、厚さ方向の中央付近での発泡が特に促進されて発泡樹脂シート23が膨張する。その結果、厚さ方向の中央付近の層(中央層)での平均気泡径が大きく、表面近傍の表面層の平均気泡径が小さいという構成の発泡成形体24が得られる。このような発泡成形体24は、平均気泡径が大きい中央層が、平均気泡径が小さい表面層で挟まれたサンドイッチ構造となっているために、軽量且つ高剛性である。
【0027】
本実施形態の方法によって得られる発泡成形体24は、図5の断面写真に示すように、発泡成形体24に肉厚に対して、発泡成形体24の表面から厚さ10%までの層を表面層とし、発泡成形体の表面から厚さ25~50%の層を中央層とすると、中央層の平均気泡径が表面層の平均気泡径よりも大きくなる。(中央層の平均気泡径)/(表面層の平均気泡径)の比は、特に限定されないが、例えば、1.2~10である。この比は、具体的には例えば、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、7、8、9、10であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0028】
発泡成形体24の厚さ方向全体の平均気泡径は、例えば、100~2000μmである。この平均気泡径は、具体的には例えば、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。表面層の平均気泡径は、例えば、80~500μmである。この平均気泡径は、具体的には例えば、80、100、150、200、250、300、350、400、450、500μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。中央層の平均気泡径は、例えば、100~2000μmである。この平均気泡径は、具体的には例えば、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0029】
平均気泡径は、以下の方法で測定する。
・まず、発泡成形体24について図5に示すように拡大倍率50倍で断面写真を撮影する。
・次に、断面写真中で厚さ方向に延びる5本の基準線R1~R5を引く。基準線の間の間隔は500μmとする。
・各基準線について、測定対象の層(表面層、中央層、又は厚さ方向全体)において、基準線が通過する気泡の数をカウントする。
・各気泡について厚さ方向の最大長さ(厚さ方向の長さが最長となる部位での長さ)を測定する。
・式1に従って、各基準線について仮平均気泡径を算出する。さらに、各基準線について算出した仮平均気泡径を算術平均することによって、平均気泡径を算出する。
(式1)仮平均気泡径=カウントした全ての気泡についての最大長さの合計/カウントした気泡数
【0030】
例えば、図6の例では、中央層において基準線Rが通過する気泡の数が6個であり、各気泡についての厚さ方向の最大長さは、L1~L6である。このため、この例では、中央層の仮平均気泡径は、(L1+L2++L3+L4+L5+L6)/6によって算出される。
【0031】
膨張工程は、好ましくは、第1吸引工程と、金型近接工程と、第2吸引工程をこの順で実行することによって行う。第1吸引工程では、図2(b)に示すように、第1金型21により発泡樹脂シート23を減圧吸引して発泡樹脂シート23を第1金型21のキャビティ21bに沿った形状に賦形する。金型近接工程では、図3(a)に示すように、隙間Gが金型21,22の間に設けられるように金型21,22を近接させる。第2吸引工程では、図3(b)に示すように、金型21,22により発泡樹脂シート23を減圧吸引することによって発泡樹脂シート23を隙間Gの厚さにまで膨張させる。
【0032】
金型21,22を近接させた後に金型21,22による減圧吸引を開始すると、発泡樹脂シート23が賦形される前に発泡樹脂シート23が金型22の凸部22cに当接してしまう。通常は、金型21,22の温度は発泡樹脂シート23の温度よりも低いので、発泡樹脂シート23が金型22の凸部22cに当接すると発泡樹脂シート23が冷却されてその粘度が上昇し、金型21,22のキャビティ21b,22bへの追従性が悪化する。一方、第1吸引工程と、金型近接工程と、第2吸引工程をこの順で実行することによって膨張工程を行う場合、発泡樹脂シート23が第1金型21のキャビティ21bに沿った形状に賦形される前に発泡樹脂シート23が金型21,22に接触することが最小限に抑えられるので、発泡樹脂シート23の粘度が上昇することが抑制され、発泡樹脂シート23を金型21,22のキャビティに高精度に追従させることができる。
【0033】
2.3 仕上げ工程
膨張工程の後、金型21,22を開いて、図4(a)に示すように、バリ23bのついた発泡成形体24を取り出し、バリ23bを切除して、図4(b)に示す発泡成形体24が得られる。
【0034】
以上のように、本実施形態の方法によれば、発泡樹脂シート23の肉厚が大きい場合でも発泡樹脂シート23を金型のキャビティに高精度に追従させることができ、かつ軽量且つ高剛性である発泡成形体24を製造することができる。
【0035】
3.用途
本発明の発泡成形体24は、軽量且つ高剛性であるために、そのような物性が好適である種々の用途に利用可能である。また、発泡成形体24の片面又は両面に不織布などの通気性部材で構成された表皮材を設けることができる。表皮材は、図2の状態で、発泡樹脂シート23と金型21の間と、発泡樹脂シート23と金型22の間の一方又は両方に配置した状態で、上記と同様に金型21、22によって発泡樹脂シート23の減圧吸引を行うことによって、発泡成形体24の片面又は両面に一体成形することができる。
【0036】
本発明の発泡成形体24は、例えば、ドアトリムや天井材などの自動車用内装部材、ラゲッジフロアボード等のボード類、ダクト、エンジンアンダーカバー等に利用可能である。発泡成形体24を自動車用内装部材として利用する場合、発泡成形体24の片面に表皮材を一体成形することが好ましい。例えば、従来技術では、天井材は、ポリウレタンのシートに表皮材を接着剤等で貼着していたが、本発明によれば、表皮材を発泡成形体24に一体成形することができるので、表皮材を貼着する手間を省くことができると共に、接着剤を用いずにアンカー効果(樹脂が表皮材に滲み込むことによって表皮材が樹脂に固定される効果)によって表示材を発泡成形体24に固定することができる。
【0037】
図7図8に示すように、ダクト30は、一対のダクト半体31,32を接合して筒状にすることによって形成することができる。ダクト半体31,32は、ヒンジ部33で互いに連結されている。ダクト半体31,32及びヒンジ部33は、上記の製造方法で一体成形することができる。ダクト半体31,32には、それぞれ、接合面31a,32aが設けられている。ヒンジ部33を中心にしてダクト半体31,32を相対回転させ、接合面31a,32aを互いに当接させた状態で、ダクト半体31,32を互いに接合することによって、ダクト30を形成することができる。ダクト半体31,32は、ネジ、リベット、タッカーなどを用いて接合することができる。
【実施例
【0038】
図1に示す発泡成形機1を用いて、発泡成形品(ドアトリム)を作製した。押出機13のシリンダ13aの内径は50mmであり、L/D=34であった。原料樹脂には、ポリプロピレン系樹脂A(ポレアリス社(Borealis AG)製、商品名「Daploy WB140」)と、ポリプロピレン系樹脂B(日本ポリプロ株式会社製、商品名「ノバテックPP・BC4BSW」)を質量比60:40で混合し、樹脂100質量部に対して、核剤として20wt%の炭酸水素ナトリウム系発泡剤を含むLDPEベースマスターバッチ(大日精化工業株式会社製、商品名「ファインセルマスターP0217K」)を1.0重量部、および着色剤として40wt%のカーボンブラックを含むLLDPEベースマスターバッチ1.0重量部を添加したものを用いた。発泡樹脂シート23の温度が190~200℃になるように各部位の温度制御を行った。スクリューの回転数は、60rpmとし、押出量は、20kg/hrとした。発泡剤は、Nガスを用い、インジェクタ16を介して注入した。注入量は、0.4[wt.%](N注入量/樹脂押出量)とした。発泡樹脂シート23は、厚さが2mmになるようにTダイ18の制御を行った。
【0039】
以上の条件で形成された発泡樹脂シート23を金型21,22の間に配置した。次に、第1金型21によって発泡樹脂シート23の減圧吸引を行って発泡樹脂シート23を第1金型21のキャビティに沿った形状に賦形した。次に、金型21,22の間の隙間Gが3mmになるように金型21,22の距離を近づけた状態で、金型21,22による発泡樹脂シート23の減圧吸引を行って発泡樹脂シート23の厚さが隙間Gの厚さになるように発泡樹脂シート23を膨張させて発泡成形体24を得た。金型21,22による減圧吸引は、-0.1MPaで行った。
【0040】
発泡成形体24は、一般的な発泡成形体に比べて軽量且つ高剛性であった。発泡成形体24の断面写真を図5に示す。発泡成形体24の表面層及び中央層の平均気泡径を測定したところ、それぞれ、132.3μm及び184.2μmであり、(中央層の平均気泡径)/(表面層の平均気泡径)の比は、1.39であった。
【符号の説明】
【0041】
1 :発泡成形機
2 :樹脂供給装置
11 :原料樹脂
12 :ホッパー
13 :押出機
13a :シリンダ
16 :インジェクタ
17 :アキュームレータ
17a :シリンダ
17b :ピストン
18 :Tダイ
21 :第1金型
21a :減圧吸引孔
21b :キャビティ
21c :凹部
21d :ピンチオフ部
22 :第2金型
22a :減圧吸引孔
22b :キャビティ
22c :凸部
22d :ピンチオフ部
23 :発泡樹脂シート
23a :部位
23b :バリ
24 :発泡成形体
25 :連結管
27 :連結管
30 :ダクト
31,32:ダクト半体
31a,32a:接合面
33 :ヒンジ部
G :隙間
S :密閉空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8