(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】床面を処理するための床処理機及びその方法
(51)【国際特許分類】
A47L 9/28 20060101AFI20220420BHJP
A47L 7/00 20060101ALI20220420BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20220420BHJP
【FI】
A47L9/28 E
A47L7/00 A
G05D1/02 H
(21)【出願番号】P 2019547761
(86)(22)【出願日】2017-09-14
(86)【国際出願番号】 EP2017073097
(87)【国際公開番号】W WO2018095605
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-06-18
(32)【優先日】2016-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】519183586
【氏名又は名称】クリーンフィックス・ライニグングスシステーメ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】CLEANFIX REINIGUNGSSYSTEME AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ラモン,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】フルック,ローラント
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-096028(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0041526(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02752726(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/00- 9/32
A47L11/00-11/40
A47L 7/00
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床の表面を処理するための床処理機であって、
ハウジング(2)、2つの駆動車輪(3)、少なくとも1つの支持車輪(4)、駆動装置(5)、制御器(6)、少なくとも1つの障害物認識装置を備え、且つ
前記車輪(3、4)に対する所定の配置を含み且つ走行方向に垂直な処理幅を備える処理領域において、前記床が処理されうることを確実にする床処理装置(9)を備え、
前記制御器(6)は、処理モードを含み、
前記処理モードは、処理される表面で、互いに隣接して走る複数の走行ラインのグループが、前記床処理機(1)の前記処理領域によって掃引されうることを確実にし、
前向き及び後向きを有する処理方向は、前記走行ラインに対して垂直に配列され、
床座標系における前記床処理機(1)の位置及び向きは、位置検出装置によって提供され、
前記走行ライン上の経路セグメントは、それぞれ1の走行方向で始点から終点まで走行されることができ、
隣接する複数の走行ライン上の前記複数の走行方向は、それぞれ反対方向を向いており、
前記障害物認識装置によって検出される現実の障害物又は仮想の障害物によって、走行が前記それぞれの走行ライン上で継続できない場合に、前記終点は確定され、
追従された前記経路セグメントの前記始点及び前記終点の各場合における前記終点に対して、「完全に処理された」状態又は「不完全に処理された」状態のうちの少なくとも1つ、及び少なくとも「不完全に処理された」場合の方向情報が、経路セグメント記憶部に記憶され、前記方向情報が、前記対応する終点から始まって、不完全に処理された領域が存在する前記処理方向の向きを決定し、
輪郭追従運動は、前記運動への応答において前記床処理機が走行ラインに遭遇するまで前記障害物を追跡し、前記複数の終点で、それぞれの場合に新しい複数の始点を見つけるために起動され、
前記輪郭追従運動は、前記処理方向のそれぞれの現在の向きの方向で始まり、
前記経路セグメント記憶部によって未だ追跡されていない経路セグメント上の、前記輪郭追従運動の前に追従されていた前記走行ラインに遭遇する場合、その位置で新たな始点が確立され、且つこの走行ラインの走行方向が選択され、
経路セグメント記憶部によれば未だ追跡されていなかった経路セグメント上の隣接する走行ラインに遭遇する場合、その位置で新たな始点が確立され、且つこの隣接する走行ラインの走行方向が選択され、
前記経路セグメント記憶部に従って既に追跡されている経路セグメント上の隣接走行ラインに遭遇する場合、互いに隣接して走る経路セグメントのグループの終点が確立され、前記制御器(6)は、次に、経路セグメント記憶部内に「不完全に処理された」状態を含む終点を探し、且つ位置探索移動によって前記終点に接近し、この終点に対して記憶された処理方向の向きにおけるこの終点で始めて、「不完全に処理された」状態を含む終点がもはや現在でなくなるまで、互いに隣接して走る新しい経路セグメントのグループに挑む、上記床処理機において、
前記制御器(6)は、処理される床面上で、少なくとも2つのゾーン(23~27)と、各ゾーン(23~27)における第1ノード(23a~27a)と、及び少なくとも1つのゾーン(23~27)から別のゾーンの第1ノード(23a~27a)への接続経路(23d~27d)との決定を可能にする計画モードを含み、1のゾーン(23~27)を決定するために、そのゾーン境界(23b-27b)の少なくとも1つの区画は、仮想障害物として入力されることができ、その結果、前記確立されたゾーン(23~27)の前記第1ノード(23a-27a)と別のゾーン(23~27)の第1ノード(23a~27a)の間の直接的接続は、実際の障害物と仮想の障害物の故に、前記ゾーン境界(23b-27b)の前記入力された区画によって妨害される、及び
前記処理モードは、実際の障害物及び仮想の障害物の故に、前記床処理機(1)の処理中の現在のゾーン(23~27)から処理される別のゾーン(23~27)への変更を防ぎ、且つこのゾーンを通過した後に、「不完全に処理された」状態を有する終点が前記現在のゾーン(23~27)内にもはや存在しない場合に、前記2つのゾーン(23~27)の前記複数の第1ノード(23a~27a)の間の仮想障害物として配設された現在のゾーン(23~27)のゾーン境界(23b~27b)の領域の影響を相殺することによって、処理中のこの現在のゾーン(23~27)から処理される別のゾーン(23~27)の前記第1ノード(23a~27a)への走行を許可するのみであり、処理される別のゾーン(23~27)の第1ノード(23a~27a)に到達した後、処理される前記別のゾーン(23~27)の前記ゾーン境界(23b~27b)の少なくとも1つの領域が、仮想の障害物として入れられ、その結果、処理される前記ゾーン(23~27)から退出することは、それが完全に処理されるまでは防止されることを特徴とする、
上記床処理機(1)。
【請求項2】
前記計画モードは、互いに間隔を空けられ、互いに隣接し、かつ又重なり合うゾーン(23~27)の決定を可能にし、そのゾーン境界(23b~27b)の少なくとも1つの領域、好ましくはゾーン境界(23b~27b)全体もまた、各ゾーン(23~27)の仮想障害物として入力され、且つ各場合において前記現在処理されているゾーン(23~27)の前記仮想障害物のみがアクティブであり、従って別のゾーン(23~27)のゾーン境界(23b~27b)は通過されうることを特徴とする、請求項1に記載の床処理機(1)。
【請求項3】
前記計画モードは、前記対応するゾーン(23~27)内の前記処理モードに対して指定された処理方向を、各第1ノード(23a~27a)、ひいては前記第1ノード(23a~27a)に関連付けられている前記ゾーン(23~27)へ割り当てることを可能にすることを特徴とする、請求項1又は2に記載の床処理機(1)。
【請求項4】
前記処理モードにおいて、前記「不完全に処理された」状態を有する終点が、このゾーン(23-27)を通過した後に前記現在のゾーン(23-27)にはもはや存在せず、従って前記現在のゾーン(23-27)か別のゾーンへの変更が、床処理機(1)を前記現在のゾーン(23~27)の前記第1ノード(23a~27a)から別のゾーン(23~27)の第1ノード(23a~27a)へ駆動することによって実行される場合に、床処理装置(9)は、これら2つの第1ノード(23a~27a)間での駆動中、持ち上げ状態に移され、前記床処理機(1)は、現在の或るゾーン(23~27)の前記第1ノード(23a~27a)に移動されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の床処理機(1)。
【請求項5】
前記計画モードは、2つの第1ノード(23a~27a)の間の経路上の少なくとも1つのさらなるノード(28)及びその順序を決定することを可能にすること、及び、前記処理モードは、現在のゾーン(23~27)から別のゾーン(23~27)への変更を、この順序に従う少なくとも1つのさらなるノード(28)を介して床処理機(1)の駆動によって実行することを可能にすることを特徴とする、請求項4に記載の床処理機(1)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのさらなるノード(28)が
、通過経路上に配置されることができ、且つ前記処理モードは、このさらなるノード(28)で必要とされる場合に、扉を開くこと又はエレベータを用いて移動の起動をすることとを可能にすることを特徴とする、請求項5に記載の床処理機(1)。
【請求項7】
前記計画モードは、2つの第1ノード(23a~27a)間の変更経路を一つの又は両方の接続方向に関連付けることを可能にし、且つ前記処理モードは、前記変更経路を一つの又は両方の接続方向に従って実行することを特徴とする、請求項4~6のいずれか1項に記載の床処理機(1)。
【請求項8】
前記処理モードは、現在の終点に割り当てられている「完全に処理された」状態又は「不完全に処理された」状態が、前記現在の終点から、前記現在の終点を含む走行ラインに直接に隣接する、前記処理方向の現在の向きとは反対である向きに位置する走行ライン上の最も近い始点までの距離によって決定されうることを確実にすることを特徴とし、距離が所定の値を超える場合、前記「不完全に処理された」状態が選択されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の床処理機(1)。
【請求項9】
前記床処理装置(9)は、清掃装置であって、好ましくは、少なくとも1つのブラシ(9a)、洗浄液供給装置、及び吸引装置(12)を備え、必要ならばドライバキューム、又はスプレー吸引装置又は掃除機を備えることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の床処理機(1)。
【請求項10】
床処理機(1)によって床の表面を処理するための方法であって、ハウジング(2)、2つの駆動車輪(3)、少なくとも1つの支持車輪(4)、駆動装置(5)、制御器(6)、少なくとも1つの障害物認識装置を備え、且つ前記車輪(3、4)に対する所定の配置を含み且つ走行方向に垂直な処理幅を備える処理領域において、前記床が処理されうることを確実にする床処理装置(9)を備え、処理される表面での処理モードにおいて、互いに隣接して走る走行ラインのグループが前記処理機の前記処理領域によって掃引され、同時に、
前向き及び後向きを有する処理方向は、前記走行ラインに対して垂直に配列され、
床座標系における前記床処理機の位置及び向きは、位置検出装置によって提供され、
前記走行ライン上の経路セグメントは、それぞれ1の走行方向で始点から終点まで走行され、
隣接する複数の走行ライン上の前記複数の走行方向は、反対方向を向いており、
障害物認識装置によって検出される現実の障害物又は仮想の障害物によって、走行が前記それぞれの走行ライン上で継続できない場合に、前記終点は確定され、
前記終点に対して、追従された前記経路セグメントの前記始点及び前記終点、「完全に処理された」状態又は「不完全に処理された」状態のうちの少なくとも1つ、及び少なくとも「不完全に処理された」場合の方向情報が、経路セグメント記憶部に記憶され、前記方向情報が、前記対応する終点から始まって、不完全に処理された領域が存在する前記処理方向の向きを決定し、
輪郭追従運動は、前記運動への応答において前記床処理機が走行ラインに遭遇するまで前記障害物を追跡し、前記複数の終点で、それぞれの場合に新しい複数の始点を見つけるために起動され、
前記輪郭追従運動は、前記処理方向のそれぞれの現在の向きの方向で始まり、
前記経路セグメント記憶部によって未だ追跡されていない経路セグメント上の、前記輪郭追従運動の前に追従されていた前記走行ラインに遭遇する場合、その位置で新たな始点が確立され、且つこの走行ラインの走行方向が選択され、
経路セグメント記憶部によれば未だ追跡されていなかった経路セグメント上の隣接する走行ラインに遭遇する場合、その位置で新たな始点が確立され、且つこの隣接する走行ラインの走行方向が選択され、
前記経路セグメント記憶部に従って既に追跡されている経路セグメント上の隣接走行ラインに遭遇する場合、互いに隣接して走る経路セグメントのグループの終点が確立され、前記制御器は、次に、経路セグメント記憶部内に「不完全に処理された」状態を含む終点を探し、且つ位置探索移動によって前記終点に接近し、この終点に対して記憶された処理方向の向きにおけるこの終点で始めて、「不完全に処理された」状態を含む終点がもはや現在でなくなるまで、互いに隣接して走る新しい経路セグメントのグループに挑む、上記方法において、
処理される床面上での計画モードにおいて、少なくとも2つのゾーン(23~27)と、各ゾーン(23~27)において第1ノード(23a~27a)、及び少なくとも1つのゾーン(23~27)から別のゾーン(23~27)の第1ノード(23a~27a)への接続経路(23d~27d)が決定され、1のゾーン(23~27)を決定するために、そのゾーン境界(23b-27b)の少なくとも1つの区画は、仮想障害物として入力され、その結果、前記確立されたゾーン(23~27)の前記第1ノード(23a-27a)と別のゾーン(23~27)の第1ノード(23a~27a)の間の直接的接続は、前記決定されたゾーン(23~27)の処理の間、実際の障害物と仮想の障害物の故に、前記ゾーン境界(23b-27b)の前記入力された区画によって妨害される、及び
前記処理モードにおいて、前記床処理機(1)の処理中の現在のゾーン(23~27)から処理される別のゾーン(23~27)への変更は、実際の障害物及び仮想の障害物の故に妨げられ、且つこのゾーンを通過した後に、前記「不完全に処理された」状態を有する終点が前記現在のゾーン(23~27)内にもはや存在しない場合に、処理中のこの現在のゾーン(23~27)から処理される別のゾーン(23~27)の前記第1ノード(23a~27a)への走行は、前記2つのゾーン(23~27)の前記第1ノード(23a~27a)の間の仮想障害物として入力された現在のゾーン(23~27)のゾーン境界(23b~27b)の区画の影響を相殺することによって、許可のみされ、処理される別のゾーン(23~27)の第1ノード(23a~27a)に到達した後、処理される前記別のゾーン(23~27)の前記ゾーン境界(23b~27b)の少なくとも1つの区画が、仮想の障害物として用いられ、その結果、処理される前記ゾーン(23~27)から退出すことは、それが完全に処理されるまでは防止されることを特徴とする、
上記方法。
【請求項11】
前記計画モードにおいて、互いに間隔を空けられ、及び/又は互いに隣接し、及び/又は重なり合うゾーン(23~27)が決定され、そのゾーン境界(23b~27b)の少なくとも区画が、好ましくはゾーン境界全体(23b~27b)もまた、各ゾーン(23~27)の仮想障害物として入れられることができ、各場合において現在処理されているゾーン(23~27)の仮想障害物のみが、アクティブであり、従って、別のゾーン(23~27)のゾーン境界(23b~27b)は通過されうることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記計画モードにおいて、前記対応するゾーン(23~27)内の前記処理モードに対して指定された処理方向を、各第1ノード(23a~27a)、ひいては前記第1ノード(23a~27a)に関連付けられている前記ゾーン(23~27)へ割り当てられることを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記処理モードにおいて、現在の終点に割り当てられる「完全に処理された」状態又は「不完全に処理された」状態が、前記現在の終点から、前記現在の終点を含む走行ラインに直接に隣接する、前記処理方向の現在の向きとは反対である向きに位置する走行ライン上の最も近い始点までの距離によって決定され、距離が所定の値を超える場合、前記「不完全に処理された」状態が選択されることを特徴とする、請求項10~12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文による自動床処理機、及び請求項10の前文による床表面を処理する方法、並びにプログラム制御床処理機に関する請求項14の前文による方法の実行を開始するコンピュータプログラム製品に関する。
【0002】
本発明は特に、床を処理するための機械及び方法に関しており、この床の処理される床面は、固定要素(例えば、床面を画定する壁区画、ドア、通路、又は要素(例えば、柱、内壁区画、又は固定棚)によって限定される。それら固定要素は、床面上に配置され、且つ可能な場合は交換可能な要素によって配置されている。
【背景技術】
【0003】
自動床清掃機が建物の床の清掃過程を独立して実行する場合において、多くの解決策が従来技術から知られていた。それぞれ独自の特徴を有する2つのアプローチが存在する。第1の手法の場合、例えば障害物に衝突したときに方向のランダムな変化が選択されるという点で、床面はランダムに通過される。清掃される部屋の地図、及び有利な清掃ルートの計画が作成されていないという事実のために、必要な記憶容量は小さいが、処理移動のための労力は非常に大きい。多くの領域が数回にわたって通過され、可能な限り完全に清掃するために長い清掃時間が必要とされねばならない。この方法は専門的な清掃には適していない。
【0004】
第2の手法の場合、床面は可能な限り正確にマッピングされ、有利な経路が決定される。経路の計画は、膨大な量の計算作業と結び付いており、時間のかかる学習手順を用いる操作担当者によって作成されなければならない。清掃に対応して計画された経路に従うように制御されねばならない。加えて、障害物を回避するための解決策及び計画された経路の後続の位置を提供する必要がある。これらの解決策は、部屋の地図を保存するため、清掃経路を計画するため、及び清掃された領域を保存するためにグリッドを使用する。グリッドの解像度は可能な限り小さくなければならないという事実のために、それに対応して大量のデータ量が記憶され処理されなければならない。障害物を回避するために必要な仕様は広範囲であり、通常すべての有りうる状況を満足には解決できない。
【0005】
米国特許第5,279,672号明細書は、清掃用ロボットを記載しており、この清掃用ロボットは、ハウジング、2つの駆動車輪、2つの支持車輪、洗浄液供給部を含む回転可能な清掃ブラシを前側に、汚染された洗浄液を取り出す吸引装置を後側に備えている。センサを含む制御装置が、清掃用ロボットの動きを制御するために用いられる。部屋の境界に配置された反射用ターゲットからバーコード情報を読み取る赤外線レーザースキャナーが、清掃用ロボットの上側に設置されている。反射用ターゲットは、清掃用ロボットが三角測量によってその位置及び現在の清掃領域を決定することを可能にする。正確に位置を検出するために、レーザースキャナーは、少なくとも3つの異なるターゲットの角度位置を同時に検出しなければならない。3つのターゲットを認識せずに、上記ロボットは所定の距離を走行し続け、それでも3つのターゲットを同時に検出できない場合は、清掃作業を中止してアラーム信号を送信する。上記ロボットがその位置及び清掃領域を検出しうる場合、ロボットは、事前にプログラムされた清掃計画に従わなければならず、それぞれ調整可能な障害物又は要素に近づく場合、ロボットは上記障害物を回避しようと試みる。この解決策は、バーコードを有するターゲットを最初に取り付けなければならず、さらに各部屋に対して清掃計画を追加的にプログラムしなければならないという欠点を有する。可動要素がターゲットの前に置かれた場合、この清掃ロボットはもはや自動的に清掃することができない。
【0006】
欧州特許第 1 903 413 A2号公報は、地図の作成を記載しており、そこでは占有された点がグリッドに入力され、障害物及び壁の厚さがロボットの拡大に従って増加され、上記ロボットは拡大なしに点として地図上を移動させられうる。部屋の境界が占有されたグリッド点として入力されるマップは、グリッドのセルサイズによる不正確さが常にあり、グリッドは、境界が十分正確な程度に入力されうるように十分に細かくなければならないため、データ量が大きくなる。記載された解決策の別の不利な点は、ロボットの制御装置が処理される領域を通る最も頻繁な線の複雑な決定によって清掃方向を決定することであり、そして規定された経路が所定の清掃方向に従って駆動されなければならないことである。障害物が処理される領域に置かれている場合に、その領域は部分領域に分割される。自由領域の境界が直線から外れている場合に、多くの部分領域が生じ、それらは減らされ及び/又は別の部分領域と結合されなければならない。これらの工程を実行するために、制御装置は、大量のデータ量を記憶しなければならず、かつ膨大な計算をしなければならない。
【0007】
米国特許第8 060 254 B2号明細書は、格子点を得るための部屋の境界についての距離測定を記載している。特徴点は、この境界の格子点から抽出される。位置推定及び特徴点は、位置特定及び地図作成の同時アルゴリズム(SLAM)によって更新される。掃引方向は、境界の最も頻度の多い方向から決定され、格子は掃引方向に従って配置される。部屋の境界が占有格子点として記入されている地図は、格子のセルサイズによる不正確さを常に有し、望ましくないほど大きなデータ量をもたらす。記載された解決策の別の不利な点は、ゾーン及び清掃方向が、高レベルの計算努力と結び付けられている地図の限界点から計算されなければならないことであり、さらに計算した後、セルは再度一緒に接合される必要があるかもしれない。
【0008】
欧州特許第 1 557 730 A1号公報は、処理装置が部屋の格子地図を作成し、部屋の外側輪郭に沿った駆動によって部屋を複数の部分的区画に分割する解決策を記載しており、その部屋はその後、所定の進行方向コース(例えば螺旋状の)を用いて処理される。部分的区画の処理後、決定された位置は重要な誤りにリンクされる。したがって処理装置は、最初に壁追跡移動を実行して、方向変化の順番からその絶対位置を決定し、まだ処理されていない特定の区画にアプローチする。部分領域の処理の間に行われる壁追跡移動は、同時に望まれた処理の進行はなく、多大な努力と結び付けられている。
【0009】
米国特許第5 696 675号明細書は、部屋を3つの異なる特性(すなわち、吸引ノズルでアクセス可能、真空掃除機でアクセス可能、及びアクセス不可能)を有する領域に分割するロボット掃除機用のロボット制御システムを記載している。この制御システムは上記3つの領域を地図上に表し、部屋の境界と領域の座標が入力されなければならない。経路機能は、地図上に上記ロボット掃除機のための経路を作成する。この目的のために、最初に、直行格子が、入力された3つの領域から発生する全体の地図上に、その境界線を延ばすことによって描かれる。同じ特性を持つ隣接する長方形を結合することによって、経路が計画されている領域が生じる。さまざまな領域の経路は、共通の終点又は始点を介して互いに接続される。領域への自動割り当て及び互いに接続された経路の確立のための工程は、非常に複雑である。部屋の中で状況が変わった場合、これらの複雑な自動工程は、何度も繰り返し実行される必要がある。
【0010】
ドイツ国特許(DE 10 2011 003 064 A1)は、ロボット車両によって表面を処理するための方法を記載している。第1の工程において、車両は処理される表面の輪郭に沿って案内され、同時に輪郭地図が作成される。第2の工程において、表面は制御器によって個々のセグメントに分割される。この分割において、制御器は幾何学的基本形状を使用する。ここで、個々のセグメントの数及びサイズは、複数のランダム分類を介して生成される。この場合、大量の処理作業が必要となり、決定された分類は単に処理される表面の形状に依存し、その部分セグメントの特性には依存していない。第3の工程において、部分セグメントのそれぞれの形状は、処理オプションに従って属性クラスの形態で確立される。所定の移動経路に従うこと又はランダムな原則に従って走行することが、処理オプションとして説明されている。第4の工程において、個々のセグメントの処理の順序が、例えば個々のセグメント間の最短経路が達成されるように制御器によって確立される。ランダムな走行方向を有する部分セグメントの場合に、大量の計算努力及び記憶消費に加えて、大きな時間的浪費がまた生じる。
【0011】
国際公開第2016/091312号は、ランダム原理(到達した境界を離れる際のランダム方向)に従う表面上の走行について、到達が困難な領域により良好に到達し、そして再度離れることをランダムな移動を用いて確実にするための表面の部分表面への割り当てについて記載している。部分表面へのランダム移動の制限は、部分表面に関連する滞留時間に対して確立される。ロボットがそれぞれの滞留時間の経過後に意図的に部分表面を離れるために、ワイヤが表面境界に沿って敷設され、ロボットは次の部分表面に到達するまでそれを追跡する。部分表面上に滞留するために設定された滞留時間の代わりに、ユーザ又は充電ステーションが起源の信号もまた、別の部分表面への変更を引き起こしうる。この解決法においては、ランダム原理による部分面の運転、及び面全体の境界に沿う運転よって別の部分面への変更の両方とも時間がかかる。全体表面の縁に沿った駆動を介して別の部分表面に変更することは、到達可能な部分表面への到達を制限する。
【0012】
欧州特許第2 752 726 B1号公報は、例えば、展示スタンド、案内標識、パレット、容器、又は製品が異なるように何度も何度も配置されている商店の床面を清掃する解決策を記載している。それぞれ新しい状況を自動清掃のためにマッピングする必要はない。交換可能な対象物及び床の境界も障害物として扱われ、したがって床処理機がそれらに遭遇したときに常に検出される。表面の処理のために処理方向が設定され、そこから互いに垂直な離間した運転ラインが生じ、隣接する運転ライン上の移動方向は反対方向に向けられている。出発点から終点までの経路区画は、それぞれの場合に障害物に到達するまでは運転ライン上をたどる。終点において、輪郭追従運動が新たな始点を見つけるために起動され、その間に床処理機はそれが走行ラインに遭遇するまで障害物を追従する。走行ラインに沿って移動するとき、及び輪郭追従運動中、床処理機の現在の位置及び向きは位置検出装置によって提供される。
【0013】
欧州特許第2 752 726 B1号公報による解決策は、処理されるまとまりのある表面の標準的な処理によく適していることが示されている。したがって、処理される表面はまとまりがなく、かつ清掃順序を時間仕様及び/又は部分面毎の異なる清掃要件に適合させる必要がある場合、これは作業努力の増大につながる。
【0014】
自動床処理は、清掃に限定されない。例えば、床表面を磨くこと又は表面コーティングの塗布などの処理が、自動床処理機によりまた実施されうる。床処理という用語はまた、それぞれ床表面を制御すること、又は床表面全体に対して測定を実行することを含んでいる。そのような測定は、選択された場所での処理と関連付けることができる。床表面とは、室内の表面だけでなく、外側の面のことでもあり、その場合、位置決め領域は、壁、柱又は他の方向要素の代わりに位置決定のために確実に設けられうる。距離測定を行うことができる。屋外の床処理は、芝刈り、土作業、施肥、播種、雑草処理、収穫から金属部品さらには地雷の探索まで、あらゆるものが含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明による課題は、検出、記憶、及び処理運動のための最小の可能な努力に関する簡単な解決法を見出すことである。さらに上記解決策は、処理される領域がまとまりのない場合、及び/又は、清掃順序が、時間的な仕様及び/又は領域により異なる清掃要件若しくは空間的条件に適合させられる必要のある場合にも、わずかな操作労力で用いられうることである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題は、請求項1の特徴を含む床処理機、請求項10の特徴を含む方法、及び請求項14の特徴を含むコンピュータプログラム製品によって解決される。従属請求項はそれぞれ、別の課題を解決する代替の又は有利な実施形態の代替案を記載する。
【0017】
上記課題を解決する場合に、本質的に一方向に進行する処理手順では、表面は単純に処理できないという多くの状況があることが認識された。例えば、大きな販売面が異なる製品を有する領域を含む場合に、新鮮な製品が朝に1つの領域で棚に充填され、したがってこの時点で清掃機の移動は充填作業を妨げ、及び/又は上記清掃機はこの充填作業によって十分な進展が妨げられることがありえる。補充作業のない領域において清掃機ははるかに効率的に使用することができ、これらの領域は、補充作業のない販売面の領域によっても、同じ建物内の他の部屋によっても形成されうる。さらに、例えば汚れは補充された製品に由来するので、床領域は補充作業の後に清掃されなければならないことがありうる。
【0018】
障害物のない大きなまとまりのある床面(例えば、ハンドボールのゴール前の円形の体育館の領域)でも、汚れが異なる領域が発生する可能性がある。このような領域では、清掃が2回又は複数回なされる必要がある。本発明の範囲内において、表面全体を等しく激しく清掃することなく、特定の領域をより徹底的に清掃することが可能になることが認識されている。通過可能な最小限の障害物(例えば、盲人用の突出した案内線)を有する床面に対して、通過する間に床にぶつかる処理領域上の乱れが生じうるので、本発明による解決策は通過する清掃動作を回避することである。
【0019】
上記の例で必要とされる処理の柔軟性にとって、継続して処理されるゾーンを決定できることが重要であることが認識されていた。さらに、本発明の範囲内において、制御器が決定されたゾーンの各々に大きな労力で最適化された経路を計算する必要がない場合、ゾーンの処理に必要な労力は可能な限り少ないままであることが認識されていた。ランダムな原則に従ってゾーンを通過することは、長い時間がかかるので除外される。本発明による解決策は、ゾーン形成、ゾーン内部の走行解、及び1つのゾーンから別のゾーンへの変更を含んでいる。
【0020】
本処理機の本発明による制御器、及び本発明による方法、並びに1の方法を実行することを可能にするコンピュータプログラム製品の各々は、処理される床面上の少なくとも2つのゾーンの決定、各ゾーンの第1ノードの決定、及び少なくとも1つのゾーンから別のゾーンの第1ノードへの接続経路の決定を可能にする計画モードを含む。ゾーンを決定するために、そのゾーン境界の少なくとも1つの区画は仮想障害物として入力され得、その結果、上記決定されたゾーンの上記第1ノードと別のゾーンの第1ノードとの間の直接接続は、現実の障害物及び仮想の障害物の故に、上記ゾーン境界の上記入力された区画から妨害される。
【0021】
上記処理機又は上記処理方法の処理モードは、実際の障害物及び仮想の障害物の故に、処理中の現在のゾーンから処理される別のゾーンへの上記床処理機の変更を防げる。この現在のノードから処理される別のゾーンの第1ノードへの走行は、現在のゾーンが本質的に完全に処理されたときに始めて可能にされる。その後、上記2つのゾーンの第1ノードの間に仮想障害物として配置された現在のゾーンのゾーン境界の区画の影響は、キャンセルされうる。完全な処理に加えて、現在のゾーンから他への走行を許容するための追加の基準、例えば特定の時間が設けられうることは明らかである。
【0022】
制御器によって確立される経路を有しないゾーンの効率的で完全な処理は、以下の手順を用いて達成されうる。ゾーンのノード点から出発して、互いに間隔を空けられ且つこのゾーンの処理方向に垂直な走行ラインが確立される。ここで、上記走行方向は、隣接する走行ライン上で反対方向に向けられている。始点から終点までの経路セグメントは、障害物に達するまで、走行ラインの各々をたどる。経路セグメントの終点で、その始点、その終点、及び「完全に処理された」状態又は「不完全に処理された」状態のうちの1つ、さらに少なくとも「不完全に処理された」場合はさらに方向情報が、記憶される。対応する終点から進んでどの方向に不完全に処理された領域が存在するかは、上記方向情報から推測されうる。
【0023】
現在の終点に関連させられる「完全に処理された」状態又は「不完全に処理された」状態は、好ましくは、上記現在の終点から上記現在の終点を持つ上記走行ラインの前方に直接に上記処理方向の上記現在の向きに置かれた走行ライン上の最も近い始点までの距離に基づいて決定される。ここで、「不完全に処理された」状態は、指定された値を超える距離の場合に選択される。指定された値は、少なくとも上記床処理機の進行方向に対する横方向の広がりに対応するので、上記床処理機が上記現在の終点と、上記現在の終点を持つ上記走行ラインの前方にある走行ライン上の上記最も近い始点との間を通過するのに十分なスペースを有する場合に、「不完全に処理された」が選択される。この可能な通過走行は、上記処理方向の上記現在の向きに基づいて未だ探求されていない。上記現在の終点で実行された仕様「不完全に処理された」及び方向情報(この情報から、上記現在の終点から進んでどの方向に不完全処理領域が存在するかを推測することができる)の記憶を用いて、上記未処理領域は、後ほど、この終点から修正された方向において接近されうる。
【0024】
終点において、上記床処理機が上記障害物を追従し走行ラインに遭遇するまで、輪郭追従運動が、新たな始点を見つけるために起動される。ここで、上記輪郭追従運動は、上記処理方向の上記それぞれの現在の向きの方向に始まる。輪郭追従運動の前に駆動された上記走行ラインが未だたどられていない経路セグメントに遭遇するこの場合、新たな始点がそこで確立され、この走行ラインの走行方向が維持される。隣接する走行ラインが未だ走行していない経路セグメントに遭遇した場合、新たな始点がそこで確立され、この隣接走行ラインの上記走行方向が選択される。走行ラインが既にたどられている経路セグメントに遭遇した場合、互いに隣接して延びる経路セグメントのグループの上記終点が確立され、そして、上記「完全に処理された」状態を有する終点が、上記「不完全に処理された」状態を有する終点がもはや存在しなくなるまで、上記終点に対して記憶された上記処理方向の向きにおけるこの終点から、互いに隣接して延びる経路区画の新たなグループに係合するよう求められる。
【0025】
このゾーンを走行した後、上記「不完全に処理された」状態を有する終点が上記現在のゾーンにもはや存在しない場合、現在のゾーンは本質的に完全に処理されたので、この現在のゾーンから処理される別のゾーンの第1ノードへの走行が可能になる。処理される別のゾーンの第1ノードに到達した後、上記処理される別のゾーンのゾーン境界の少なくとも1つの領域が、仮想障害物として用いられ、その結果、完全に処理されるまで、上記処理される別のゾーンからの出口が妨げられる。上記新しい現在のゾーンの処理の開始は、任意選択的に、さらに別の条件、例えば指定された時間にも依存させられうる。
【0026】
本発明による解決策は、自由に選択しうるゾーンに対する床処理を可能にし、処理される表面上の経路を計算せず、またランダムな経路を実行しない。継続したゾーンの簡単で安全な処理が、最小限の走行と記憶の工程によって可能にされる。床面の境界とそれぞれの現在のゾーンのゾーン境界とは、実際の障害物又は仮想障害物として扱われ、従って床処理機は、それに遭遇した場合に常に検出される。
【0027】
実際の障害物、ひいては上記床境界はまた、好ましくは上記床処理機の走査センサによる距離測定によって検出され、上記走査センサは、特に上記駆動車輪の前方に、実質的には上記駆動車輪の高さ領域に配置される。好ましい実施形態の場合において、270°の角度範囲に対応するレーザースキャナーが使用される。
【0028】
走査センサを用いて高さ領域を横切って延びていない実際の障害物又は床境界も検出されるように、他のセンサもまた、好ましくは障害物を認識するために使用される。上記床処理機は、例えば超音波センサ及び/又は赤外線センサを備えている。上記超音波センサは、好ましくは床面から離れて床面の内部に対して延びる障害物を検出するように配向される。上記赤外線センサは、好ましくは床の方向に向けられ、その結果、特定の工程において床の中の障害物を検出する。
【0029】
障害物を認識するために、上記床処理機はまた、少なくとも1つの接触センサを含むこともでき、好ましくは少なくとも1つのたわみセンサが、走行方向前方に置かれているシャーシとハウジング領域との間に配設される。障害物が正面に置かれるハウジング領域に接触する場合に、上記障害物は認識され、上記床処理機は停止され、上記検出された障害物は迂回される。
【0030】
物理的障害物に加えて、障害物はまた、仮想の障害物(例えば、通過されない上記ゾーン境界又は開放ドアの上述の領域)を含む。好ましい実施形態の場合において、上記仮想障害物は、上記床処理機用の制御器を介して入力され、実際の障害物と同じ効果を有する。
【0031】
走行ラインに沿う駆動中、上記輪郭追従運動中、及び別のゾーンの第1ノードへの駆動中、床処理機の現在位置及び向きは、位置検出装置によって提供される。走行ラインに沿う駆動の間、現在位置情報が現在の走行ライン上の位置と一致するかどうかがチェックされる。逸脱した場合には、それに応じて駆動運動が修正される。上記輪郭追従運動の間、位置情報の現在の項目が、走行ラインとの遭遇を検出するために用いられる。上記輪郭追従運動中は現在の又は次の走行ラインのみに遭遇することができるので、2本の走行ラインに関する情報の項目のみが提供されればよい。障害物の輪郭をたどる場合に、さらに、障害物に関するデータ又はその検出が使用されねばならない。
【0032】
上記床処理機が輪郭追従運動中に遭遇点で走行ラインに遭遇した場合、この遭遇点が既に走行した経路セグメント上に位置するか否かがチェックされなければならない。この目的のために、上記経路セグメント記憶部の現在の情報項目を用いて、遭遇点が一対の記憶された始点と終点との間のライン上にあるか否かをチェックすることができる。経路セグメント記憶部の少量のデータの故に、記憶された始点と終点との間のその可能な位置に関して遭遇点をチェックするための読み取り及び比較の労力もまた非常に小さい。
【0033】
走行ラインに沿って走行中、輪郭追従運動の案内中、及び別のゾーンへの走行中、記憶サイズ及び計算能力に対する要求は低い。何故なら、現在位置のみが線方程式及び少数の点の対に関連させられるだけだからである。
【0034】
1の好ましい実施形態によれば、上記計画モードにおいて、上記処理モードで使用される処理方向は、各第1ノード、ひいては上記第1ノードに関連付けられている上記ゾーンへ割り当てられうる。走行ラインはそれぞれ処理方向に対して垂直に延びる。上記第1ノードの位置及び関連する処理方向は、オペレータを必要とせずに全ゾーンの処理を可能にする。ゾーン内の最良の処理方向は、それぞれゾーン境界に対して平行又は垂直に延びていると仮定される。しかし、異なる配向をされた外側境界を有する大きな交換可能な要素がゾーンの内側に配置されている場合、これらの要素に適合された処理方向もまた最適である可能性がある。本発明による解決策は、オペレータが自分の経験と、上記ゾーン境界及び存在する可能性のある交換可能な要素を考慮したゾーンの大まかな判断とを用いて、計画モードにおいて最適な処理方向を確立することができるという利点を有する。
【0035】
計画モードは、互いに間隔を空けられ、互いに隣接し、且つまた重なり合うゾーンを決定することを可能にする。ここで、そのゾーン境界の少なくとも1つの区画、好ましくは上記ゾーン境界全体もまた、各ゾーンに対する仮想障害物として入力され得、且つ上記仮想障害物の各場合において、上記現在処理されているゾーン境界のみがアクティブであり、従って別のゾーンのゾーン境界が通過されうる。
【0036】
処理モードにおいて、上記床処理機は、現在のゾーンの第1ノードから進むように移動される。この現在のゾーンを走行した後、「不完全に処理された」状態を有する終点がもはや現在のゾーンには存在しない場合に、上記処理機は、好ましくは現在のゾーンの第1ノードへ移動する。現在のゾーンから別のゾーンへの変更は、現在のゾーンの第1ノードから別のゾーンの第1ノードへの床処理機の移動によって行われ、上記床処理装置はこれら2つの第1ノード間での移動中、持ち上げられた状態にあり、従って乱されることなく凹凸を通過しうる。
【0037】
通過可能な最小障害物(例えば、盲人用の突出案内ライン)を有する床面に対して、好ましくは少なくとも1つのゾーン境界、しかし好ましくはそれぞれ片側に置かれた2つのゾーンの境界は、これら最小障害物に沿って置かれ、その結果、これらはゾーン変更中、持ち上げられた床処理装置を伴い通過のみがなされうる。このようにして擾乱が回避される。
【0038】
1つの有利な実施形態において、上記計画モードは、少なくとも1つの別のノード及び2つの第1ノードの間の経路上のその順序を決定することを可能にし、処理モードは、少なくとも1つのさらなるノードを介した床処理機の走行によって、現在のゾーンから別のゾーンへの変更を実行する。さらなるノード及びシーケンスの決定で、それに従いそれらは接近され、別のゾーンへのより長い又はより困難な経路もまた可能にされうる。さらなるノードが、通過経路上に、特に処理される全てのゾーンの外側に置かれうる。処理モードにおいて、ドアを開くこと又はエレベータを使用しての走行の起動は、これら別のノードでおそらく達成されうる。処理シーケンスの開始後、床処理機は、シーケンス計画において処理されるゾーンとして設定された全ての建築領域を処理する。処理済みゾーンから次のゾーンへの変更にオペレータは必要ではない。
【0039】
計画モードにおいて、2つの第1ノード間の変更経路は、一つ又は両方の接続方向に関連付けることができ、処理モードにおいては、従って変更経路は一つ又は両方の接続方向に走行させられうる。連続して処理されるゾーンのさまざまな順序(これは計画モードにおいて作成される)を保存することは容易に可能である。これらの順序は処理モードに関する選択に利用可能であり、例えばタッチスクリーンを介してオペレータにより選択可能である。本発明による解決策は、最小限の仕様及び計算で、最大限可能な処理信頼性を確実にする。
【0040】
床処理機、又は上で挙げた走行工程及び記憶された情報をそれぞれ含む方法は、必要とされる場合には特に、始点及び終点、並びに制御への応答入力おける走行ラインに対する位置及び向きを記憶するときに、床処理機の位置及び向きが決定されうる場合に、うまく動作させられうる。
【0041】
本発明の最も一般的な実施形態によると、位置及び向き検出装置は、要求されると現在の位置及び向きを提供する。それにより、先行技術から知られている任意の位置及び向き検出装置が用いられうる。
【0042】
自動目標捕捉及び目標追跡(例えば、Leica iCON ロボット50として知られる標準製品)を含む総合ステーションが、測量技術から知られている。このような総合ステーションが処理される床表面の領域内で静止するように配置されている場合には、上記床処理機は必要ならば、無線接続を介して総合ステーションからその位置及び向きを得ることができる。上記床処理機が例えば2つのプリズムを含み、それらが総合ステーションによって追跡され、それらの上側にオフセットされるように配置されている場合に、上記床処理機の位置及び向きは、これら2つのプリズムの位置から決定されうる。
【0043】
レーザートラッカーに基づく位置及び向きの決定(例えば6DoF Leica Absolute Tracker AT901)はまた、ロボット制御から知られている。レーザートラッカーは床処理機に統合され得、高精度で位置と向きの決定を確実にしうる。
【0044】
云うまでもなく、床処理機を検出するための静止位置決定装置、及び床処理機に配置され且つ静止要素を追跡する測定システムが、用いられうる。天井の識別マークの視認が広い部屋の領域の大部分から可能であるという事実によって、床処理機上に配設された測定システム(それは、床処理機自体を又は座標系を夫々に天井の識別マークによって配向している)は、適している。
【0045】
好ましい実施形態において、位置及び向き検出装置の静止部品は不要である。これは、あらゆる種類の床面に使用できる完全に自律的な装置を作り出す。ここで、個々の固定要素(例えば、床面又は要素を囲む壁部分、柱、内壁区画、又は固定棚)は、上記床面上に配設され且つ位置決め領域として用いられものであって、上記床面に割り当てられねばならない。位置及び向きを決定するために、上記床処理機の制御器は、検出モードが実行されうることを確実にし、その検出モードにおいては、位置決め領域の検出が、床面に割り当てられた床座標系において、走査センサの距離測定から且つ駆動車輪からの走行情報から実行されうる。
【0046】
床面が床面処理機によって処理されうる前に、床面処理機は、検出モードにおいて床面の異なる領域を横切って案内されなければならず、その結果、床面処理機は位置決め領域を検出できる。位置決め領域を検出するために、上記検出モードは、線分が床座標系において決定されることを確実にする。ここで、決定された線分は、連続線の区画として曲線方程式のパラメータを含む位置決め領域での測定された距離点を表す。
【0047】
処理モードにおいて、床処理機は、検出された位置決め領域と、現在位置に関して検出された走査センサからの距離測定値とから、床座標系においてその位置及び向きが決定されうることを確実にする。必要であれば、駆動車輪からの走行情報もまた、床処理機の現在位置及び向きを決定するために使用される。例えば、少なくとも2つの位置決め領域の良好な相関関係から得られる正確な位置決定と、現在位置に対して検出される距離測定とに基づいて、経路をたどっているとき、又は駆動車輪からの走行情報を使用しているそれぞれの場合に、たとえ走行中に位置決めエリアが見えない場合でさえも、走行を継続しながら比較的正確な位置及び向きも決定されうる。
【0048】
好ましい実施形態において、ハウジングの有効な拡張及び/又はホイールに対する処理領域の有効な位置が考慮され、できる限り正確である通過、及び障害物での処理領域の案内は、それにより障害物までの有効な距離測定によって達成される。
【0049】
好ましい床処理装置は、清掃装置として具体化され、好ましくは少なくとも1つのブラシ、洗浄液供給源及び吸引装置を含むが、必要ならば乾燥バキューム、又はスプレー吸引装置又は掃除機を含む。洗浄液用に少なくとも1つのタンクと少なくとも1つのポンプが設けられなければならない。好ましくは、それぞれ洗浄剤を含む液体又は水を洗浄するための1つのタンク、及び水に添加される洗浄剤用の1つのタンクがある。頻繁に洗浄液を交換する必要がないように、このタンクに膜が割り当てられている。膜は淡水と汚水との間の柔軟な壁として働き、利用可能な空間は必要に応じて淡水と汚水とに分けられる。駆動装置は、少なくとも1つの電池と少なくとも1つの駆動モータとを備える。制御器は、ディスプレイ及び入力装置、好ましくはタッチスクリーンを含む。緊急の場合に迅速に床処理機の電源を切ることができるように、見やすい非常停止スイッチも設けられている。
【0050】
図面は例示的な実施形態によって本発明を説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図3】
図1による図面を示すが、ハウジング前面が揺動可能に開かれている。
【
図4】揺動可能に開かれうる上記ハウジング前面の斜視図である。
【
図6】上記自動清掃機の制御器、センサ、及び駆動装置の最も重要な要素の概略の構成図である。
【
図14】座標系で示された線分を示す図であり、それは、検出モードにおいて、走査センサからの距離測定値と駆動車輪から位置決め領域までの走行情報とから決定される。
【
図15】
図14による座標系で示された線分、この線分と重なり合う上記床処理機の指示された位置から検出された距離点、及び上記距離点を介して配置されうる現在の要素の線を示す図である。
【
図16】計画モードにおいて作成された計画の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
床処理機の1例として、
図1~
図3及び
図5は、床面を処理するための清掃機1を示しており、この清掃機1は、ハウジング2、2つの駆動車輪3、2つの旋回可能な支持車輪4、各駆動車輪3のためのモータをそれぞれに含む各々の駆動装置5、タッチスクリーン形態の表示及び入力装置7を備える制御器6、少なくとも1つの走査センサ8(これは距離測定が、所定の角度領域を介して実質的に水平面内で実行されうることを確実にする)、及び床処理装置9であって、床が、上記車輪3、4に対する所定の配置を含み且つ上記走行方向に直角な処理幅を含む処理領域において処理されうることを確実にするものを備えている。
【0053】
図示された清掃機の床処理装置9は、2つ又は3つの交換可能なブラシ又はパッド9aを備え、これらは垂直軸の周りを回転し、これらは横方向にオフセットされるように配置されている。ブラシ9aは、ブラシ駆動部9bによって回転させられる。図示されていない洗浄液供給部によって、洗浄液は、ポンプによって第1タンク10からブラシ9aの領域に供給される。第2タンク11から、洗浄剤が洗浄液に導入されうる。ブラシ9aが床を処理した後、床に残っている洗浄液は吸引装置12によって吸い上げられて、第1タンク10に供給される。洗浄液の頻繁な取り換えをしないために、第1タンク10内の望ましくない構成要素を保持する膜が、第1タンクに割り当てられている。全ての電気的に動作する構成要素の電気エネルギーは、少なくとも1つの充電式バッテリー13から生じ、それはプラグ13aを介して充電装置に接続されうる。取出装置12は、更新接続部12aを介してわずかに旋回可能であるようにシャーシ14上に配置されることが好ましく、吸引装置12は、湾曲部の周りを走行するときでさえも常に湿った床面に割り当てられる。
【0054】
ブラシ12は、清掃機の走行方向において中心軸に対して1つの側にわずかにオフセットされるように配置されているという事実によって、清掃は、実質的に駆動車輪3を含む領域内のこの側で行われる。駆動車輪3の駆動効果が洗浄液によって影響されないように、スクレーパ15は清掃機1の中心に対して洗浄液を偏らせる。
【0055】
障害物又は壁境界であって、走査センサ8を有する高さ領域を横切って延在していないものも検出されるように、好ましくは他のセンサも、障害物の認識のために用いられる。図示された実施形態において、複数の超音波センサ16がハウジング2の正面領域に設置される。ここで、2つの異なる高さへの設置と、いずれかの超音波センサ16から超音波パルスを送信する可能性と、及びいずれかの超音波センサ16でそれらを受信することは、床面の内側へ、或る間隔で床まで延在する障害物の良好な検出を確実にする。床内に在る障害物、特に階段は、2つの赤外線センサ17によって検出され、これらセンサはいずれの場合も正面側方に設置され、床の方へ向けられている。
【0056】
障害物を認識するために、シャーシ14と走行方向前方に位置するハウジング領域2aとの間に配置される少なくとも1つの接触センサ18が、たわみセンサの形で設けられている。障害物が正面に置かれるハウジング領域2aと接触すると、障害物は、シャーシ14に対してハウジング領域2aを偏向させ、これは偏向センサによって検出される。
【0057】
保守作業のために清掃機の内部への容易なアクセスを得るために、シャーシ14は、ピボット接続19を介して前方に置かれるハウジング領域2aを保持するためのハウジングブラケット20へ接続されている。障害物との接触時に、上記ハウジング領域2aがそこから偏向させられる平衡位置にあり、前方に位置するハウジング領域2aを保持するばね接続部21が、ハウジングブラケット20と前方に位置するハウジング領域2aとの間に設置されている。ここで、ハウジングブラケット20と前方に位置するハウジング領域2aとの間の接触センサ18が、この撓みを検出する。走査センサ8が走査領域において遮られない視野を有するように、ハウジング領域2aは通過スロット2bを取り囲む。警告灯及び/又は非常停止スイッチ22が、ハウジング2の上面に設置されている。
【0058】
図6は、制御器6の少なくとも一部分が、センサと駆動装置の全てに実質的に接続されていることを示している。ナビゲーションのために、「汎用制御器ボード」の形態の制御器6の部分は、「ナビゲーションボード」へ接続され、このナビゲーションボードは、図示の実施形態において、走査センサ「レーザースキャナー」に直接に接続されている。走査センサなしで動作するナビゲーション解決策(例えば、総合ステーション又はレーザートラッカーによる位置決め)も使用できることは言うまでもないが、ここでは、走査センサ「レーザースキャナー」は、障害物を検出するための「汎用制御器ボード」へ直接に接続されている。
【0059】
障害物を検出するために、「汎用制御器ボード」は、走査センサである「レーザースキャナー」、超音波センサである「超音波センサ」、赤外線センサである「ホール検出器」、接触センサである「機械的バンパ」のグループのうちに少なくとも1つのセンサに接続される。障害物又は緊急事態それぞれが、接触センサの「機械的バンパ」、赤外線センサ「ホール検出器」、又は非常停止スイッチによってのみ検出される場合に、これらの要素が駆動車輪の即時停止を起動できる安全制御器「安全制御器」に直接に接続されているとき、損傷を避けるために有益である。安全制御器及び制御器6は、互いに接続され且つ駆動装置へ接続されており、駆動装置は好ましくは、両方の駆動車輪に対してそれぞれ1つのモータを備えている。
【0060】
制御器6の一部分は、表示入力装置である「タッチスクリーン」へ接続されている。図示された実施形態において、床処理装置9のための制御器は、清掃用制御器の「清掃ユニット制御器」に配設され、それは、床処理装置9のための、制御器6と作動要素の「清掃用アクチュエータ」とセンサの「清掃用センサ」に接続されている。制御器は、十分に大きい表示画面を有するコンピュータ(図示せず)上で動作する計画モード用の一部分を含むことが好ましい。ゾーン境界、第1ノード、処理方向、及びゾーン間の接続経路は、コンピュータ(図示せず)に入力され、「汎用制御器ボード」への系列としてアクセス可能にされうる。
【0061】
図7~12は、重要な工程とゾーン上の可能な経路の情報を説明するために、1つの例を用いる。これらの図は、ゾーン境界内での床処理の継続した状況を示している。
図13のフローチャートは、経路に最低限必要とされる制御、決定、及び走行の各工程を結び付けている。
【0062】
床処理又は経路のそれぞれの開始時で(
図7)、床処理機は、第1ノードにあり、そのことは「開始」で示されている。実線矢印で示された走行方向は、前向き及び逆向きを有する、計画モードにおいて規定された処理方向から生じる。経路に関して、互いに隣接して置かれる3本の走行ラインに関する情報を、制御、決定、及び保存される値のために提供することが可能でなければならない。走行ライン(
図7の点線)は、床座標系において、所定の間隔で互いに隣接して配置され、且つ好ましくは直線として又は一次方程式によって決定される。
【0063】
床処理機が処理モードにおいて1つの走行ライン上の途中にあるとき、この走行ラインとその両側に配置されているそれら走行ラインは、上記処理装置の前向きに配置された、以前の、現在の、及び次の走行ラインとして識別される。途中、床処理機は、走行ライン上の経路セグメントを始点から終点まで駆動する。ここで、異なる走行ライン上の互いに直接続く経路セグメントの走行方向は、常に反対方向に固定される。終点は、それぞれの走行ラインを進むことが障害物のために不可能であるときに決定される。始点は、床処理機がこの走行ライン上の経路セグメントを通過し始める場合に、走行ライン上の点として決定される。始点と終点の座標を記憶することによって、床面の処理された領域が記録されうる。
【0064】
図13に載せられている初期化工程である「ゾーンを初期化」において、処理方向の決定を有するゾーンの第1ノードで、この第1ノード上の床処理機の位置が制御され、そして規定された処理方向が記憶部から取り出される。続いて、始点が固定され、且つ始点「始点を追加」として記憶される。この第1の始点から始まって、第1の経路セグメントは現在の走行ライン上で駆動され、そのことは
図13において「現在の掃引ラインに沿って周回」と示されている。障害物に衝突すると、現在の走行ライン上の1つの終点が確定され且つ記憶される。それは
図13において「終点を追加」で示され、且つ
図8においては円形の点で示されている。終点の座標に加えて、「完全に処理された」状態又は「不完全に処理された」状態のうちの1つの決定及び記憶も終点の記憶に属し、そして「不完全に処理された」場合においては、方向情報の記憶も終点の記憶に属する。ここで、このゾーンにおける不完全に処理された領域が、この対応する終点で始まりどの方向に在るかということは、上記方向情報に従う。
【0065】
未だ処理されていない床面の領域に、処理方向の現在の向きとは反対である方向で近づきうる場合、現在の終点から以前の走行ライン上の最も近い始点までの距離が、所定の通過間隔(これは床処理機によって通過可能な領域の最小必要幅に実質的に対応する)よりも広く取られている。
図8の最初の経路セグメントの終点から出発すると、以前の走行ラインが通過していないので、始点は以前の走行ライン上には見つからない。最初の終点から既存でない点までの距離は、所定の通過間隔よりも大きくなるように決定され、したがって、「不完全に処理された」状態が、まだ処理されていない領域に、現在の処理方向とは反対である清掃方向の向きで、現在の終点から接近しなければならないという情報(そのことは、
図8において、最初の終点の場合に左を指す点線の矢印で示されている)と共に、最初の終点に関して記憶される。
【0066】
終点で遭遇した障害物は、各場合に輪郭追従運動を引き起こし、それは、
図13において「輪郭を追跡」と示される。上記輪郭追従運動の間、床処理機は、現在の走行ライン又は次の走行ラインに遭遇するまで、処理方向のそれぞれの現在の向きの方向に障害物をたどる。これは、
図13において「現在の掃引ラインに遭遇か?」又は「次の掃引ラインに遭遇か?」でそれぞれ示されている。輪郭追従運動がまだ通過していない走行ラインの位置に遭遇するその位置で、新しい始点が決定される(
図13、「始点を追加」)。新たな始点が、現在の走行ライン上又は輪郭追従運動が通過する走行ライン上にそれぞれ位置する場合、この現在の走行ラインの走行方向は維持される。新しい始点-輪郭追従運動の前に通過している走行ラインに基づく-が次の走行ライン上に置かれた場合に、この次の走行ラインは、現在の走行ラインになり、そして走行方向は、前の走行ラインと比較して180°回転され、即ち反対方向に向けられる。さらに、輪郭追従運動の以前の走行ラインが前の走行ラインとなり、新しい次の走行ラインが決定される。それは、
図13において「掃引ラインをシフト」で示されている。
【0067】
図8によれば、床処理機は、最初の10個の終点をたどる輪郭追従運動に応答して次の走行ラインに常に遭遇し、それに応じて、走行ライン上を互いに直接にたどる経路セグメントは、常に反対の走行方向を持つ。この終点は、床面の境界によって最初に与えられる。従って、この複数の終点とそれぞれの先行走行ライン上のそれぞれの最も近い始点との間の複数の距離は所定の通過距離よりも小さいので、「完全に処理された」状態がこれらの複数の終点に記憶される。第7番目の終点は、床面の内側にある黒い印の障害物によって与えられる。この第7番目の終点の場合、前の走行ライン上の最も近い出発点までの距離は、「閾値より広い間隙」で同定される所定の通過距離よりも大きい。したがって、「不完全に処理された」状態は、未だ処理されていない領域が処理方向の現在の方向とは反対の方向である清掃方向(これは、
図8においては、第7番目の終点において左側を向く点線の矢印によって示されている)で現在の終点から接近されなければならないという情報と共に、第7番目の終点について記憶される。
【0068】
第11番目の終点から始まって、輪郭追従運動は、黒でマークされている障害物の後で現在の走行ラインに再び遭遇する。それに応じて、現在の走行ライン上の新しい経路セグメントは、それぞれ次の、即ち第12番目の終点に導く。この第12番目の終点の場合、前の走行ライン上の最も近い始点までの距離は、所定の通過間隔よりも大きい。したがって、点線の矢印による方向情報(それは
図8において左側を向く)を含む「不完全に処理された」状態が、第12番目の終点に対して記憶される。
【0069】
第14番目の終点に続く輪郭追従運動は、既に処理された経路セグメントに遭遇するのみである。未だ通過されていない走行ラインの区間は見つけることが出来ない。これにより、隣り合って走る経路区間の最初のグループが完成される。
【0070】
互いに隣接して走る複数の経路区間の別のグループを通過することが、
図9~
図12に示されている。
図9には、第7番目の終点から始まって、どのようにして黒色でマークされた障害物の後の左向きにマークされた処置方向の向きを含む輪郭追従運動が、現在の走行ラインに再び遭遇するかが示されている。現在の走行ライン上の新たな経路セグメントは、したがって次の終点に至り、その終点で、右側に位置する走行ライン上の又は以前の走行ライン上のそれぞれに最も近い出発点までの距離は、所定の通過間隔よりも大きい。したがって、「不完全に処理された」状態は、
図9の右側を指す矢印に従った方向情報と共にこの終点に対して格納される。引き続く輪郭追従運動の後、床処理機は、経路セグメント(これは既に処理されている)に遭遇し、そして
図10に従って、「不完全に処理された」状態を含む最も近い端点に移動する。そこから、黒でマークされている障害物の上方の領域が処理され、そして最後の輪郭追従運動が次の走行ライン(これは処理方向の同じ向きですでに処理されている)に到達するので、上端に位置する終点の状態は、
図11に従って「完全に処理された」状態にシフトすることができ、「不完全に処理された」状態を含む最後の終点、即ち最初の端点に近づきうる。
図12は、床面全体は、床面処理の開始点の右側への床面処理の後に処理されたことを示している。
【0071】
互いに隣接して配置されている経路セグメントのグループ間の位置探索移動は、それぞれ
図9~
図12に手書きの線で示されている。接近される地点について、始点と終点との間の有利な経路がそれぞれの場合に計算され、障害物との衝突はこれら障害物の迂回をもたらす。
【0072】
「不完全に処理された」状態を含む終点が常にそのようなグループの最後に求められ、位置検索移動でアプローチされるという点で、互いに隣接して走る経路セクションのすべての作成されたグループは継続的に処理される。好ましくは、「不完全に処理された」状態を含む最も近い終点が選択され、このことは
図13においては「最も近い自由端点へ移動」で示される。
図13は、用語「自由端点が残っている」でこの反復処理を示す。「不完全に処理された」状態を含む端点で、現在の、以前の、及び次の運転線がそれぞれの場合に決定され(
図13、「掃引ラインを更新」)、そしてこの端点から出発して端点に記憶された方向へ進む。互いに隣接して走る新しい経路区画のグループは、「不完全に処理された」状態を含む端点がこれ以上なくなるまで取り組まれる。次にゾーン全体が処理され、床処理機はこのゾーンの最初のノードに移動する。
図13において、これは「第1ノードへ移動」及び「ゾーン範囲処理完了」と示されている。処理される次のゾーンの最初のノードへのその後の変更は、「次のゾーンの第1ノードへ転送」及びその後に実行される「ゾーンを初期化」で示されている。
【0073】
ゾーンの完全な処理を確実にするために、少数のデータのみ、すなわち通過される経路セグメントの始点及び終点、並びに終点での方向情報を含む処理状態が、記憶されなければならない。さらに、大まかに計算される少数の位置検索移動を除いて経路を計画する必要はなく、最小の計算労力で済む。ゾーンが完全に処理された場合、次に処理されるゾーンの第1ノードへの駆動が行われ、それからこの次のゾーンの処理が生じる。
【0074】
図14及び
図15は、位置及び向き検出装置の静止構成品を無視する1の実施形態によって実行される工程を表す。個々の固定された要素、例えば、床面を縁取る壁区画、又は床面に配置され且つ位置決め領域として用いられる要素、柱、内壁区画、又は固定棚、が、床面に対して割り当てられる。
【0075】
位置及び向きの決定を提供するために、床処理機のための制御器は、検出モードを含み、その場合、
図14に示されている、床面に割り当てられる床座標系上の位置決め領域は、走査センサの距離測定値と駆動車輪からの走行情報とから決定される。床面が床処理機によって処理されうる前に、床処理機は、検出モードにおいて床面の異なる領域を横切って案内されなければならず、それによって床処理機は位置決め領域を検出しうる。位置決め領域を検出するために、検出モードは床座標系における線分を決定し、決定された線分は曲線方程式のパラメータ、好ましくは直線を連続線の部分として含む位置決め領域における測定距離点を表す。図示された直線の区画は、座標軸に対する角度で、位置情報及び長さ情報、又は端点の座標を用いて決定されうる。
【0076】
図15は、現在位置に対して検出された走査センサの距離測定値と検出された位置決め領域との重なりを示しており、線上(特に直線上)に位置する距離点は、線分A、B、C、D、E及びFで示される。線分A、B、及びFと位置決め領域との図示された対応関係から、床処理機の位置及び向きは、処理モードにおける床座標系において決定することができる。線分C、D、及びEは、検出モードを実行するときには存在しなかった可変要素(障害物)に由来する。適用可能であれば、駆動車輪からの走行情報もまた、床処理機の現在位置及び向きを決定するために用いられる。位置を決定するために用いうる全ての情報は、好ましくは、カルマンフィルタ技術による誤差推定を用いて位置及び向きの決定に変換される。例えば、少なくとも2つの位置決め領域の良好な相関関係から得られる正確な位置決定と、現在位置に対して検出される対応する距離測定値とに基づいて、例え走行中に位置決め領域が見えなくても、ルートをたどっているとき又は駆動車輪からの駆動情報を持っているときには、それぞれ駆動を継続しながら、比較的正確な位置及び向きが決定されうる。
【0077】
図16は、5つのゾーン23~27を有する計画ゾーン内に作成された計画を示している。第1ノード23a~27aは、各ゾーン23~27内に配置される。ゾーン境界23b~27bは、1~5点でゾーン23~27の系列に従って識別され、それらが壁又は他の障害物によって形成されていない場所では固定されなければならない。ゾーン境界23b~27bのうち、領域毎に少なくとも1つが、仮想障害物として使用可能であり、処理モードにおいて、或るゾーンの第1ノードと別のゾーンの第1ノードとの間の直接の接続は、ゾーンが完全に処理されるまでは現実の障害物及び仮想の障害物の故に、ゾーン境界の入力領域によって遮断される。仮想障害物は、その後、少なくともゾーン境界の或る領域においてキャンセルされ得て、床処理機は、この領域を通って別のゾーンの第1ノードへと通過しうる。
【0078】
ゾーンの対23と24そしてまた24と25は、それぞれ境界で幾分重なるように固定されている。重なる領域においては、例えば、ゾーン境界24bはゾーン23内にあり、ゾーン境界23bはゾーン24内にある。ゾーン27は完全にゾーン23の内側にある。ゾーン26は、他のすべてのゾーン23、24、25、及び7から離されている。いずれの場合も、現在処理されているゾーンの仮想障害物のみが活動的であるので、他のゾーンのゾーン境界は通過されうる。このことは、重なるゾーンの場合において、完全な処理が重なる境界の領域において確実にされ得ること、及び/又は未処理の狭いストリップ状領域が生じないことを確実にする。
【0079】
計画モードにおいて、処理方向は、各第1ノード、ひいては上記第1ノードが配置されているゾーンに関連付けられる。そこへ垂直に延びる間隔を空けられた走行ラインは処理方向から導き出されることができ、走行方向は隣接する走行ライン上で反対方向に向けられる。
図16において、処理方向から導出された走行方向23c~26c及び27cが、第1ノードで示されており、それに従って、上記機械は、処理モードにおいて第1ノードから離れるように駆動する。このようにして、処理方向の決定は、第1ノードでの走行方向23c~27cの決定、及びゾーン処理の開始時の処理方向が、第1ノードで走行方向に関連して右方向又は左方向のどちらに向けられているかに関する情報に対応する。ゾーン境界の指定、上記ゾーンの第1ノードの位置の指定、及び関連する処理方向又は走行方向の指定は、別のゾーンでの開始に必要なオペレータがいなくても、全てのゾーンの処理を可能にする。
【0080】
各後続ゾーンの第1ノード24a~27aへの接続経路23d~26dは、それぞれの現在のゾーンの第1ノードから始まり、各々は、2つの連続するゾーンのゾーン境界の領域を通過する。現在のゾーンの第1ノードと次のゾーンの第1ノードとの間の直接接続が容易に走行できない場合、少なくとも1つのさらなるノード28が、このようにして計画モードにおける2つの第1ノード間の経路上に決定されうる。2つ以上のさらなるノード28が決定される場合、それが駆動されるシーケンスは、さらなるノード28に割り当てられる。処理モードは、少なくとも1つのさらなるノード28を介して床処理機の駆動によって現在のゾーンから次のゾーンへの変更を実行する。別のゾーンへのより長い又はより困難な経路もまた、さらなるノードの決定及びそれらが接近される順序によって可能にされうる。
図16によれば、ゾーン26からの経路は、処理される全てのゾーンの外側、例えばゾーン27への回廊に延在する。ドアを開けること又はエレベータを用いて走行することがさらなるノード28でト起動される可能性がある場合に、したがって、この目的のために必要な情報が、上記さらなるノード28に割り当てられることができ、その結果、上記処理機は信号を出力し、可能になり次第ドアを通り抜け又はエレベータの中へ入る。