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特許7060855活性成分としてインジルビン誘導体を含有する医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】活性成分としてインジルビン誘導体を含有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/404 20060101AFI20220420BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
A61K31/404
A61P19/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020507967
(86)(22)【出願日】2018-04-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 KR2018004201
(87)【国際公開番号】W WO2018194309
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2020-01-16
(31)【優先権主張番号】10-2017-0049658
(32)【優先日】2017-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519373648
【氏名又は名称】シーケー・リジョン・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カン-イェル・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ギュンヒ・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン-ハ・ファン
(72)【発明者】
【氏名】セヒ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】チャンモク・オ
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02518139(EP,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0131199(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0077173(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0040488(KR,A)
【文献】Chemistry & Biology,2012年,19(11),pp.1423-1436
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の骨疾患又は骨成長障害を処置する方法において使用するための治療用組成物であって、
【化1】
からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤又はその薬学的に許容可能な塩を含み、骨疾患又は骨成長障害が、低身長、低身長症、クレチン症、思春期早発症、骨粗鬆症、骨軟化症、骨髄炎、上皮過形成及びBezzet病からなる群から選択される少なくとも1つの障害である、組成物。
【請求項2】
対象が、動物又はヒトである、請求項1に記載の治療用組成物。
【請求項3】
対象の骨長成長を促進する及び/又は骨密度を増加させる方法において使用するための組成物であって、
【化2】
からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤又はその薬学的に許容可能な塩を含む、組成物。
【請求項4】
骨長成長が、対照と比較した縦方向の骨長の増加によって測定されるか、又は骨厚の増加が、対照と比較した骨密度の増加によって測定される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
対象が細胞、動物及びヒトである、請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項6】
細胞が、軟骨細胞及び骨芽細胞からなる群から選択される細胞の少なくとも1種である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
軟骨細胞増殖を促進し、骨芽細胞の分化を誘発し、並びに/又はβ-カテニン安定化及びβ-カテニンの核移行を活性化する、請求項6に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨長成長障害及び/又は骨密度関連疾患を防止又は処置するための、活性成分としてインジルビン誘導体を含む、骨長成長及び/又は骨厚増加を促進するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
骨は、ヒトの骨格を構成する最も硬い組織であり、体全体にわたって存在するとともに中心的役割を担う多量の骨基質を有する。幼児期から成人期まで、腕及び脚を構成する縦方向の骨は長くなり、我々の身長を決定する。このプロセスは、骨成長板における軟骨細胞によって引き起こされ、成長板は限定的に開かれているので青年期に成長することが重要である。思春期の全体にわたって、成長板は徐々に閉じ、成人期では骨成長はもはや起こらないが、骨は、連続的な代謝プロセスを介して骨厚又は骨密度を維持することによって依然として体を支える。このプロセスにおいて、骨は骨芽細胞及び破骨細胞によってそれぞれ形成及び分解され、これらの2種の細胞の間のバランスが、骨密度を維持するとともに骨折を防止するのに重要である。
【0003】
このように、骨は、我々の体の全体的発達に関与し、体の形状を構造的に維持し、内臓を保護し、それらの血中レベルを生理的に維持し、カルシウム及びリン等の鉱物のリザーバーとして新たな血液を供給する。そのため、異常な骨発達又は代謝異常は、思春期早発症、低身長症、骨粗鬆症、くる病、骨軟化症、骨髄炎、上皮過形成及びBezett病等の様々な疾患に至ることがある。骨形成プロセスは、1)軟骨細胞によって引き起こされる長さ増加、並びに2)骨芽細胞及び破骨細胞のバランスを保つことによる骨密度増加に分けられることを理解することが必要である。これらの2つのプロセスは異なり、長さの増加は人の身長を決定し、一方、骨密度の増加は多くの代謝性骨疾患と関連する。
【0004】
現在では、骨疾患のためのこれらの処置のほとんどは、ホルモン薬に限定される。骨長に関連する身長成長促進剤は、臨床的に使用されている成長ホルモンのみであり、骨密度と関連する骨粗鬆症の処置は、使用されている副甲状腺ホルモンのみである。しかしながら、成長ホルモン注入は、正常のホルモン分泌を有する小児に適当ではなく、むしろ甲状腺機能不全及び過形成等の有害作用を有し、高価であるとともに使用が簡単でない。加えて、骨粗鬆症のための臨床的に利用可能な治療剤は、FDA承認の組換え副甲状腺ホルモン薬及びそれの類似体のみであり、これはその上、重度の脊椎骨粗鬆症を有する患者に限定される。更に、副甲状腺ホルモンは、それが体におけるカルシウムの代謝に対して大きな効果を有するので、高カルシウム血症の発症についての懸念により、2年という最大処置期間の制限を有する。
【0005】
そのため、現存の骨疾患処置の欠点を克服するために新たな治療が開発される必要があり、したがって、小分子化合物に基づく薬物も開発される必要がある。従来のホルモン剤又は合成ペプチド剤は経口的に摂取できないので、それらは厄介なことに注入によって投与され、小分子化合物と比較して高価である。骨関連の疾患及び異常性のために適用され得る小分子化合物は、それらが経口的に投与され得るとともにコスト競争力を有するという点で、治療市場における有望な新たな薬物であり得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Bri J. Haemato、130:.. 681~690、2005 Nature Cell Biol、1:. 60~67、1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものである。本発明の目的は、優れた骨長成長促進効果を示すが生体内にて毒性をほとんど有さない、活性成分としてインジルビン誘導体を含有する組成物を提供することである。
【0008】
加えて、本発明の他の目的は、優れた骨疾患防止又は処置効果を示すが生体内にてほとんど毒性を有さない、活性成分としてインジルビン誘導体を含む、骨疾患を防止又は処置するための医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、活性成分として、以下の式(1)又は(2)によって表されるインジルビン誘導体を含む、骨長成長及び/又は骨厚増加を促進するための組成物を提供する。
【0010】
【化1】
【0011】
【化2】
【0012】
該組成物は、骨芽細胞においてβ-カテニンの安定化及び核局在化を介してWnt/b-カテニンシグナル伝達を活性化することによって軟骨細胞の増殖、骨芽細胞の分化を促進することを特徴とする。
【0013】
骨長は縦方向の骨の長さであり、骨厚は骨密度である。
【0014】
上記別の目的を達成するため、本発明は、活性成分として以下の式(1)又は(2)によって表されるインジルビン誘導体を含む、骨長成長障害及び/又は骨疾患を防止又は処置するための医薬組成物を提供する。
【0015】
【化3】
【0016】
【化4】
【0017】
骨長成長障害は、低身長症及び思春期早発症からなる群から選択されるいずれか1つ又は複数であり、骨疾患は、骨粗鬆症、くる病、骨軟化症、骨髄炎、上皮過形成及びBezzet病からなる群から選択されるいずれか1つ又は複数である。本発明は、上記別の目的を達成するため、活性成分として以下の式(1)又は(2)によって表されるインジルビン誘導体を含む、骨長成長障害及び/又は骨疾患を防止又は改善するための医薬組成物を提供する。
【0018】
【化5】
【0019】
【化6】
【発明の効果】
【0020】
本発明による、骨長成長を促進する組成物は、軟骨細胞の増殖及び骨芽細胞の分化の両方に対する促進効果を有し、それによって、骨長及び骨厚(骨密度)の両方を増加させる。そのため、それは様々な年齢群のための広範囲の処方という利点を有するので、それは、骨長及び骨厚の成長を促進することができる医薬組成物として有用に使用することができる。
【0021】
本発明によるインジルビン誘導体は、経口投与によって優れた防止的又は治療的効果を有し、従来のホルモンベースの治療剤とは異なり価格において競争力がある。
【0022】
加えて、骨疾患を防止又は処置するための本発明の医薬組成物は、従来の治療剤とは異なり人体に対してほとんど毒性を有していないとともに確認された有害作用を有していないことが見出された安定な化合物であり、優れた治療的有効性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例1、2及び比較例1、8、9、10~12において、生体外で培養され、インジルビン誘導体で処置された場合の縦方向の骨成長の写真である。
図2図1において測定された縦方向の骨の長さにおける変化を示すグラフ及び表である。インジルビン誘導体は、培養培地において6日間、それぞれ0.5μMとして処置された。
図3A】比較例6において、生体外で培養され、6-ブロモインジルビン-3'-オキシムで処置された場合の縦方向の骨成長の写真(左)、及びこの成長を定量的に示すグラフ(右)である。
図3B】比較例6において6-ブロモインジルビン-3'-オキシムで処置された縦方向の骨の長さにおける低減が軟骨細胞の生存能に対する効果に関連するかを検証するための、異なるブロモインジルビン-3'-オキシム濃度による軟骨細胞のMTT分析のグラフである。
図4】実施例1における5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム、実施例2の5-メトキシルインジルビン-3'-オキシム、比較例1~5及び12におけるインジルビン誘導体で処置された細胞におけるALP活性を示すグラフ及び表である。
図5】β-カテニン安定化に対する、実施例1における5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム(A3051)及び実施例2における5-メトキシルインジルビン-3'-オキシム(A3334)の効果を検査するための、MC3T3-E1細胞(骨芽細胞)から得られたタンパク質抽出物についてのウエスタンブロット分析の結果を示す図である。
図6】免疫細胞化学を介して、実施例1における5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム(A3051)及び実施例2における5-メトキシルインジルビン-3'-オキシム(A3334)で処置されたATDC5細胞におけるβ-カテニンの発現及び局在化を確認する写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の様々な態様及び実施例をより詳細に記載する。
【0025】
本発明の一態様は、式1又は式2によって表される活性成分としてのインジルビン誘導体を含む、骨成長を促進する医薬組成物に関する。
【0026】
【化7】
【0027】
【化8】
【0028】
インジルビンは、インジゴと非常に同様の化学構造を有する、赤い色を呈するインジゴイド化合物である。一般に、少量のインジルビンは、アイ(polygonum tinctorium)及びホソバタイセイ(isatis tinctoria)を使用する青色染料のインジゴを生成するプロセスにおいて副生成物として生成される。伝統的な中医処方のDanggui Longhui Wanは、慢性白血病を処置するために使用されてきた11種類の薬からなる。それらの中で、インジルビンは有効な薬物であることが見出され、近年、それは慢性白血病及びアルツハイマー等の神経変性疾患を処置するための細胞周期阻害剤として最も有望な薬物であることが知られている(BriJ. Haemato、130:.. 681~690、2005 Nature Cell Biol、1:. 60~67、1999)。前駆体としてのインジルビンは、インジルビンオキシム誘導体、インジルビンヒドラゾン誘導体、インジルビンN-アセチル誘導体及びインジルビンアミン誘導体等の様々な誘導体を形成することができる。
【0029】
本発明において、インジルビン誘導体の中でも、活性成分としての5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム(式1)及び5-メトキシオキシインジルビン-3'-オキシム(式2)は、従来のホルモン剤の投与によって起こり得る副作用を最小化し、骨芽細胞及び軟骨細胞に対して毒性でなく、長骨の長さを対照群に相対して約2倍(180%)増加させるという有意な効果を有し、細胞の増殖及び骨芽細胞の分化を促進することによって骨密度、つまり骨厚を増加させる。
【0030】
加えて、本発明によると、式1又は式2によって表されるインジルビン誘導体は、生体外培養系におけるSB415286(Sigma aldrich社)と比較して37 3/4倍を超えて、縦方向の骨の長さを増加させる。
【0031】
そのため、本発明による式(1)によって表される5-メトキシルインジルビン-3'-オキシムは、骨成長、骨厚、又は両方に対して効力を有し得るので、他の薬物とは異なり、異なる年齢の患者に適用することができ、これらの効果は、他のインジルビン誘導体のものよりも30%を超えて、より有意である。
【0032】
具体的に、5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム又は5-メトキシルインジルビン-3'-オキシムは、下記の実験例に記載されている通り、骨芽細胞において軟骨細胞の増殖、骨芽細胞の分化及びβ-カテニン安定化を促進する。
【0033】
具体的に、新たな小分子の化合物としての、本発明における式1又は式2のインジルビン誘導体(5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム又は5-メトキシルインジルビン-3'-オキシム)は、生体外培養系における脛骨の長さ、及び骨芽細胞分化系を介する骨密度増加のための重要なマーカーのALPの活性を促進する。加えて、軟骨細胞及び骨芽細胞における骨形成に重要であるWnt/β-カテニンシグナリング系の鍵となる成分のβ-カテニンは、これらの薬物の処置後に安定化、活性化及び核局在化されることが確認された。
【0034】
そのため、この研究の組成物は、骨粗鬆症、ムスコーシス(muskosis)、くる病、骨軟化症、骨髄炎、上皮過形成、Bezette病、及び骨長成長障害、例えば低身長、低身長症、クレチン症及び思春期早発症からなる骨疾患に対して優れた効力を示す医薬組成物として利用することができる。
【0035】
式1によって表されるインジルビン誘導体(5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム)及び式2によって表されるインジルビン誘導体(5-メトキシルインジルビン-3'-オキシム)が毒性研究のためにマウスに経口投与された場合、それらは安全な物質であると考えられ、なぜならば、それらの50%致死用量(LD50)は少なくとも1,000mg/kgであるからである。
【0036】
骨長は縦方向の骨の長さを意味し、骨厚は骨密度を意味する。
【0037】
本発明における一般式(1)又は式(2)のインジルビン誘導体は、毒性及び有害作用がほとんどないので、長時間の間使用することができる組成物である。
【0038】
本発明の組成物は、好ましくは、組成物の総質量に対して、式1又は式2によって表されるインジルビン誘導体0.1質量部から50質量部を含むが、これらに限定されない。
【0039】
本発明の別の態様は、骨長成長障害及び骨疾患を防止又は処置するための活性成分として式1又は式2によって表されるインジルビン誘導体を含む医薬組成物に関する。
【0040】
【化9】
【0041】
【化10】
【0042】
式(1)又は(2)のインジルビン誘導体の記載において、上記記載と重複する記載は省かれる。
【0043】
本発明において使用される用語「骨疾患の防止又は処置」は、本発明による組成物を投与することによって達成される骨疾患の防止及び完全な又は部分的な処置を含む。それは、骨疾患の症状を低減又は改善し、疼痛を軽減し、骨疾患の発生率を低減し、処置の予後を増加させる患者におけるいかなる変化も含む。
【0044】
骨長成長障害は、低身長症及び思春期早発症からなる群から選択されるいずれか1つ又は複数であってよい。
【0045】
骨疾患は、骨粗鬆症、くる病、骨軟化症、骨髄炎、上皮過形成及びBezzete病からなる群から選択されるいずれか1つ又は複数であってよい。
【0046】
本発明の医薬組成物は、骨長成長障害及び/又は骨疾患を防止又は処置するための医薬組成物である。式1によって表される5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム及び式2によって表される5-メトキシルインジルビン-3'-オキシムは、骨芽細胞におけるβ-カテニンの安定化及び核局在化を活性化することによって、軟骨細胞の増殖及び骨芽細胞の分化を促進し、骨長成長障害若しくは骨疾患又は両方に対して優れた予防又は治療効果を有する。
【0047】
言い換えると、それらは、骨長成長若しくは骨厚増加、又は両方に対する効果を有し得るので、様々な年齢の患者に適用することができ、これらの効果は、他のインジルビン誘導体よりも有意な数値範囲にわたって優れた効果を有することが確認された。
【0048】
本発明の医薬組成物は、医薬組成物の調製において共通して使用される適当な担体、賦形剤及び希釈剤を更に含むことができる。本発明の式1又は式2のインジルビン誘導体の医薬剤形は、それらの薬学的に許容される塩の形態で使用することもできる。
【0049】
本発明の式(1)又は式(2)のインジルビン誘導体は、毒性及び有害作用がほとんどないので、長時間の間使用することができる組成物である。本発明の医薬組成物は、好ましくは、組成物の総質量に対して、式1又は式2によって表されるインジルビン誘導体0.1質量部から50質量部を含むが、これらに限定されない。
【0050】
本発明の医薬組成物は、経口剤形、外用製剤、坐剤、及び滅菌注入可能溶液、例えば粉末、顆粒、錠剤、カプセル、懸濁液、エマルジョン、シロップ及びエアロゾルの形態で、それぞれ従来の方法に従って使用することができる。式1のインジルビン誘導体を含む組成物に含むことができる担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油を挙げることができる。製剤化される場合、希釈剤又は賦形剤、例えば共通して使用される層化剤、増量剤、バインダー、湿潤剤、崩壊剤及び界面活性剤が使用される。経口投与のための固体調製物としては、錠剤、丸剤、粉末、顆粒及びカプセル等が挙げられ、こうした固体調製物は、少なくとも1種の賦形剤、例えばデンプン、炭酸カルシウム、又は上記の式1若しくは式2のインジルビン誘導体を含む。それは、(炭酸カルシウム)、スクロース又はラクトース及びゼラチン等を混合することによって調製される。単純な賦形剤に加えて、ステアリン酸マグネシウム及びタルク等の滑沢剤も使用される。経口使用のための液体調製物は、懸濁液、溶液、エマルジョン及びシロップを含み、共通して使用される単純な希釈液である流動パラフィンに加えて、様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味料、芳香及び保存料を含むことができる。非経口投与のための製剤は、滅菌水溶液、非水性溶媒、懸濁液、エマルジョン、凍結乾燥調製物、坐剤を含む。非水性溶媒及び懸濁剤として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、オレイン酸エチル等の注入可能なエステル等が使用され得る。坐剤のベースとして、ウイテプゾール、マクロゴール、ツイーン61、カカオ脂、ラウリンバター及びグリセロゼラチン等が使用され得る。
【0051】
本発明の医薬組成物の好ましい投与量は、患者の状態及び体重、疾患の程度、薬物の形態、投与の経路及び持続期間に依存して変動し、科学技術の関連分野における技能者によって適切に選択することができる。しかしながら、所望の効果のため、本発明の組成物は、1日当たり0.0001mg/kgから2000mg/kg、好ましくは0.001mg/kgから1000mg/kgで投与される。式1又は式2のインジルビン誘導体の濃度は、1nMから1M、又は1μMから1mM、又は0.1mMから0.2mM、又は0.05μMから5μMの範囲であるが、これに限定されない。薬物療法は、1日1回又は数回投与することができる。上記の投与量は、いかなる態様における本発明の範囲も限定しない。
【0052】
本発明の医薬組成物は、哺乳動物、例えばラット、マウス、家畜、ヒトに、様々な経路によって投与することができる。投与の全てのモードは、例えば、経口、直腸又は静脈内、筋肉内、皮下、子宮内硬膜又は脳室内の注入が予想され得る。
【0053】
本発明の別の態様は、活性成分として式1又は式2によって表されるインジルビン誘導体を含む、骨長成長障害及び/又は骨疾患を防止又は改善するための保存料又は改善食品組成物に関する。
【0054】
本発明において使用される「改善」という用語は、症状の程度等、処置されるべき状態と関連するパラメータのレベルを低減するあらゆる作用を意味する。
【0055】
本発明の食品組成物は、骨長成長障害若しくは骨疾患又は両方を処置するための薬物、食品及び飲料等、様々なやり方で使用することができる。本発明の化合物が添加され得る食品としては、例えば、様々な食品、飲料、ガム、紅茶、複合ビタミン剤及び健康補助食品等が挙げられ、粉末、顆粒、錠剤、カプセル又は飲料の形態で使用することができる。
【0056】
本発明の食品又は飲料における該化合物の量は、一般に、総食品の0.01質量%から15質量%まで食品組成物に添加され、健康飲料組成物は、100mlに基づき0.02gから5g、好ましくは0.3gから1gである。
【0057】
発明の食品組成物は、飲料として製造される場合、基本的に、表示されている率であり、普通の飲料等の液体組成物に対する特定の制限がなく、追加の成分としていくつかの香味剤又は天然炭水化物を含有することができる。上に記載されている天然炭水化物の例は、単糖類(例えば、グルコース及びフルクトース等)、二糖類(例えば、マルトース及びスクロース等)、及び多糖類(例えばデキストリン及びシクロデキストリン、並びに共通の糖、例えばキシリトール、ソルビトール及びエリスリトール)である。上に記載されているもの以外の香味剤として、天然香味剤(例えば、タウマチン、ステビア抽出物、例えば煙霧ベースA及びグリチルリチン、並びに合成香味剤、例えばサッカリン、アスパルテーム)が有利には使用され得る。上記天然炭水化物の比は、本発明の組成物100ml当たり一般に約1gから20g、好ましくは約5gから12gである。
【0058】
上記に加えて、本発明の組成物は、様々な栄養素、ビタミン、鉱物(電解質)、香味、例えば合成香味及び天然香味、着色剤及び中和剤(チーズ、チョコレート等)、ペクチン酸及びそれの塩、アルギン酸及びそれの塩、有機酸、保護コロイド性増粘剤、pH調整剤、安定剤、保存料、グリセリン、アルコール、並びに炭酸飲料において使用される炭酸化剤等を含む。
【0059】
本発明の組成物は、天然果汁、果汁飲料及び野菜飲料を生成するためにパルプを含有することもできる。これらの成分は、独立して又は組合せて使用することができる。こうした添加剤の割合は、それほど重大ではないが、一般に、本発明の組成物100質量部当たり0質量部から約20質量部の範囲で選択される。
【実施例
【0060】
本発明は、下記の実施例によってより詳細に説明するが、本発明の範囲及び内容が、縮小又は限定されると解釈することはできない。加えて、本発明は、その結果が具体的に表されていなくても、それが以下の実施のいずれかを含む本発明の手引きに基づく限り、通常の技術者によって簡単に実施され得ること、及びこれらの変更形態が特許請求の範囲の範囲内であることは、明らかである。
【0061】
加えて、下記に表されている実験結果は、上記の実施例及び比較例の実験結果の代表であるだけであり、下記で明白に説明されていない本発明の各種実施形態の各効果は、対応するセクションにおいて詳細に記載されている。
【0062】
(実施例1)
5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム(A3051)の合成
(1)中間体5',6'-ジクロロ-[2,3'-ビインドリシリジン]-2'3-ジオン(5',6'-ジクロロ-[2,3'-ビオドリデン]-2',3-ジオン]の合成
【0063】
【化11】
【0064】
MeOH(92.80ml)を溶解し、ホスホキシルアセテート(405.48mg、2.315mmol)及び炭酸ナトリウム(Na2CO3)(637.83mg、6.02mmol)を12時間の間65℃で添加する。TLC(Rf=0.4;酢酸エチル/ヘキサン=1/2(v/v))を使用して、反応の終了をチェックし、結晶性塊が形成されるまで氷中で生成物を冷却する。結晶が形成した時に、それらを濾出し、溶媒を除去し、濾液を捨て、生成物を溶媒(エタノール/水=1/1(v/v))で数回濯ぐ。生成物を真空ポンプ中で濾過乾燥させ、更に精製することなく次のステップで使用した。
【0065】
(2)A3051の合成
【0066】
【化12】
【0067】
5'6'-ジクロロ-[2,3'-ビオジニリジン]-2'3-ジオン(5',6'-ジクロロ-[2,3'-ビエドリニリデン]-2',3-ジオン(600mg、1.81mmol)を100ml丸底フラスコに入れ、次いで、ピリジン(151ml)を入れる。H2NOCH3.HCl(3026.4mg、36.24mmol)を添加し、12時間の間120℃で撹拌する。TLC(Rf=0.4及び酢酸エチル/ヘキサン=1/1(v/v))を使用して反応の終了を検証し、反応溶液の温度を室温に低減する。生成物の全てのピリジン溶媒を蒸発させた後、水及び酢酸エチルを添加して、30分間超音波を使用して生成物を溶解する。それを酢酸エチル等で2回抽出する。それをNaHCO3の飽和溶液で洗浄する。抽出溶液を無水硫酸マグネシウムで取った後、溶媒を蒸発させ、メタノール及び核酸を使用してそれをリセットする。生成物を真空ポンプ中で乾燥させると、赤色の固体A3051を47.94%(326mg)の収率で得ることができる。1H NMR(400 MHz, DMSO-d6) δ 11.36 (s, 2H), 8.80 (s, 1H), 8.08 (d, 1H, J = 7.7 Hz), 7.46 - 7.41 (m, 2H), 7.07 - 6.99 (m, 2H), 4.38 (s, 3H).
【0068】
(実施例2)
5-メトキシルインジルビン-3'-オキシム(A3334)の合成
(1)中間体5'-メトキシ-[2,3'-ビンドリニリジン]-2',3-ジオン(5'-メトキシ-[2,3'-ビオジレン]-2',3-ジオン)の合成
【0069】
【化13】
【0070】
5-メトキシイサチン(1000mg、5.65mmol)を250ml丸底フラスコの中に添加し、それをMeOH(225ml)中に溶解する。酢酸インドキシル(989mg、5.65mmol)及び炭酸ナトリウム(Na2CO3)(1496mg、14.11mmol)を添加して、65℃で12時間の間撹拌する。TLC(Rf=0.4;酢酸エチル/ヘキサン=1/2(v/v))を使用して反応の終了をチェックし、結晶性塊が形成されるまで氷中で生成物を冷却する。結晶が形成した後、それらを濾出し、溶媒を除去し、濾液を捨て、生成物を溶媒(エタノール/水=1/1(v/v))で数回濯ぐ。発生した水を真空ポンプ中で濾過乾燥させ、次いで、更に精製することなく次のステップで使用した。
【0071】
(2)A3334の合成
【0072】
【化14】
【0073】
5'-メトキシ-[2,3'-ビンドリニリジン]-2",3-ジオン(5'-メトキシ-[2,3'-ビンドリルイデン]-2',3-ジオン(670mg、2.29mmol)を100ml丸底フラスコに入れ、それをピリジン(フィリジン)(27ml)中に溶解する。H2NOH.HCl(3186mg、45.85mmol)を添加し、12時間の間120℃で撹拌する。TLC(Rf=0.5及び酢酸エチル/ヘキサン=1/1(v/v))を使用して、反応の終了を検証し、反応溶液の温度を室温に低減する。生成物の全てのピリジン溶媒を蒸発させた後、水及び酢酸エチルを添加して、30分間超音波を使用して生成物を溶解する。それを酢酸エチル等で2回抽出する。それをNaHCO3の飽和溶液で洗浄する。抽出溶液を無水硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を蒸発させ、メタノール及び核酸を使用してそれをリセットする。生成物を真空ポンプ中で乾燥させると、赤色の固体A3334を59%(420mg)の収率で得ることができる。1H NMR(400 MHz, DMSO-d6) δ 13.52 (s, 1H), 11.79 (s,1H), 10.54 (s, 1H), 8.35 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 8.26 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.41 (d, J = 2.8 Hz, 2H), 7.08 - 7.00 (m, 1H), 6.82 - 6.71 (m, 2H), 3.78 (s, 3H).
【0074】
(比較例1~12)
インジルビン誘導体の合成
5-クロロインジルビン-3'-メトキシム、5-ブロモインジルビン-3'-オキシム、5-ブロモインジルビン-3'-メトキシム、5-ブロモインジルビン-3'-エトキシム、6-ブロモインジル-3'-オキシム、6-クロロ-5-ニトロインジルビン、6-クロロ-5-ニトロインジルビン-3'-オキシム、6-クロロインジルビン-3'-メトキシム、5,6-ジクロロインジルビン、5,6-ジクロロインジルビン-3'-オキシム、5,6-ジクロロインジルビン-3'-プロピルオキシムを、5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム又は5-メトキシオキシインジルビン-3'-オキシムと同じ方式で合成し、硫化ジメチル(DMSO)中に溶解し、実験に適用した。それを順番に比較例1~12と名付けた。
【0075】
【表1A】
【0076】
【表1B】
【0077】
<実験の器具及び方法>
1.細胞培養
1)ATDC5細胞培養
5%ウシ胎児血清(FBS)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地、Gibco社、Grand Island、NYC)中で、37℃及び5%のCO2の条件下にて、ATDC5細胞(マウス定常細胞株)を培養した。
【0078】
2)MC3T3-E1細胞培養
37℃及び5%のCO2の条件下にて、10%出生前血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含有する最小必須培地(α-MEM)(Gibco社)で、MC3T3-E1細胞(マウス骨芽細胞株)を培養した。分化誘発の試験のため、50μg/mlのアスコルビン酸及び100mMのβ-グリセロホスフェートを含有するα-MEM培地中で、細胞を培養した。
【0079】
2.MTT低減分析
5×103のATDC5細胞を96ウェルプレート中に固着させた後に細胞が安定して付着されたら、薬物(ここでは、6-ブロモインジルビン-3'-オキシムである)を処置した。24時間後、100μg/mlのMTT [3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)]を含有する培地に移し、細胞を2時間の間インキュベートした後に成長培地を除去する。紫色ホルマザンに還元したMTTをDMSOで溶解し、次いで、吸光度測定によって540nmで排出する。
【0080】
3.ウエスタンブロット分析。
ウエスタンブロット分析のため、薬物(ここでは、5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム、5-メトキシルインジルビン-3'-オキシムである)を24時間処置し、MC3T3-E1細胞を培養し、100%集密度に達するように培養皿中に採取した。電気泳動法後の抗体を使用するSDA-ページゲルを使用して、細胞溶解後のタンパク質を定量化するため、免疫ブロットのための試料の採取を行った。
【0081】
4.免疫細胞化学
薬物(ここでは、5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム、5-メトキシルインジルビン-3'-オキシムである)を24時間の間処置し、この時、細胞は1ウェル当たり2.5×104細胞の密度で12ウェルプレート中に置かれたカバーガラスに安全に付着されていた。細胞をリン酸緩衝溶液で清浄し、4%パラホルムアルデヒドを添加することによって20分間室温で固定し、次いで、細胞中に発現されたタンパク質が、透過処理、遮断及び免疫蛍光のプロセスを介して観察された。
【0082】
5.ALP活性アッセイ
5×104のMC3T3-E1細胞を24ウェルプレート上にて2日間インキュベートし、固着させた。細胞が100%集密度に達したことを確認した後、薬物療法(実施例1における5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム)を分化培地中で48時間の間処置した。細胞をリン酸緩衝溶液で清浄し、採取された試料を、50mMトリス-塩素酸、100mMグリシン(glisin)及びp-ニトロフェニルホスフェートを含有する緩衝溶液(pH10.3)で、細胞溶解後に処置した。分析のため、3M水酸化ナトリウムを処置し、吸光度を405nmで測定した。Bradford Analyzerを使用してタンパク質濃度を測定することによって、ALP活性を定量化した。
【0083】
6.組織培養及び試薬
縦方向の骨を15.5胎生日齢のC57BL/6マウスから単離し、24ウェル組織培養皿中で7日間インキュベートした。培地は、10%ウシ胎児血清(FBS)、1mMベータポリグリセロール二ナトリウムホスフェート、50ng/mlアスコルビン酸、0.3g/L-グルタミン、0.2%のBSA、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンを含むMinimal Essential Medim(α-MEM、Gibco社)として使用した。縦方向の骨をマウスから分離させた後、培地から単離された縦方向の骨を24時間の間インキュベートし、薬物を処置した。培地及び薬物(ここでは、実施例1、実施例2、比較例1、7~9、及び10~12のインジルビン誘導体である)を隔日毎に変えた。薬物を用いる処置の前後に、縦方向の骨の長さを測定した。薬物処置後の縦方向の骨の組織をPBSでマーチし(marched)、4%ホルムアルデヒドを使用して固定した。
【0084】
生体外での縦方向の骨の培養に対する、本発明の実施例1又は実施例2におけるインジルビン誘導体及び他のインジルビン誘導体の効果を、より正確に決定するために、様々なインジルビン誘導体(実施例1及び2及び比較例1、8、9、10~12のインジルビン誘導体)を実験方法6における通りに処置し、縦方向の骨の長さを測定した。
【0085】
図1は、実施例1、実施例2、及び比較例1、8、9、10~12においてインジルビン誘発で処置された場合の、各々生体外で培養された縦方向の骨の写真である。図2は、図1における測定された縦方向の骨の長さの変動を示すグラフ及び表である。この場合において、垂下するインジルビン誘導体は、0.5μMで同一であり、培養培地中で6日間処置した。
【0086】
実施例1における5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム及び実施例2における5-メトキシルインジルビン-3'-オキシムによるこれらの効果は、比較例8、9及び比較例10~12のインジルビン誘導体によるものよりも有意に優っていることが確認され得る。具体的に、縦方向の骨の長さは、本発明によるこれらの2つの分子によって約54%有効に増加されることが見出された。長骨の長さにおけるこの差異は、非常に有意な改善であり、縦方向の骨を成長させることができると予想される従来のホルモン剤よりもずっと速い。対照群(対照)は、該薬物の代わりにDMSO溶液で処置された長骨の長さの尺度である。
【0087】
我々は、生体外での縦方向の骨の培養に対する6-ブロモインジルビン-3'-オキシム(比較例6)の効果をより正確に決定しようとした。図3Aは、生体外での縦方向の骨培養の写真(左)及び比較例6の6-ブロモインジルビン-3'-オキシムで処置された場合の数値を示すグラフ(右)である。その時、0.5μMの6-ブロモインジルビン-3'-オキシムを培養培地中で6日間処置した。対照は、薬物の代わりにDMSO溶液で処置された縦方向の骨である。
図3Aに示されている通り、生体外での縦方向の骨の長さは、対照群と比較して、比較例6における6-ブロモインジルビン-3'-オキシムの処置によって低減された。
【0088】
図3Bは、比較例6における6-ブロモインジルビン-3'-オキシムで処置された縦方向の骨の長さの低減が軟骨細胞の生存率に対する効果であるかを確認するための、6-ブロモインジルビン-3'-オキシムの異なる濃度の処置後の軟骨細胞のMTT還元分析のグラフである。
【0089】
MTT還元アッセイは、生細胞におけるミトコンドリア酵素反応によって引き起こされた黄色MTTから紫色ホルマザンへの還元による吸光度における差異を分析することによって細胞の生存能を測定するための方法である。
【0090】
図3Bに示されている通り、6-ブロモインジルビン-3'-オキシム(比較例6)は、1μM以上の濃度で処置された場合に軟骨細胞の成長を阻害し、これらの細胞の生存率は、5μMの6-ブロモインジルビン-3'-オキシムによって50%未満減少することが確認された。つまり、それは、比較例6における6-ブロモインジルビン-3'-オキシムが軟骨細胞に対して毒性を有することを示唆している。言い換えると、6-ブロモインジルビン-3'-オキシムは、縦方向の骨の長さを抑制し、細胞に対して毒性であるので、この薬物が骨疾患又は骨成長障害のための処置として使用されることは問題であり得る。
【0091】
骨ミネラル密度に対する実施例1における5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム及び実施例2における5-メトキシルインジルビン-3'-オキシムの効果を決定するための実験方法5として、ALP活性分析を行った。図4は、細胞におけるALP活性を示す測定グラフを示す表、並びに本発明による実施例1の5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム、実施例2の5-メトキシルインジルビン-3'-オキシム、比較例1~5及び12のインジルビン誘導体で処置された細胞におけるALP活性の程度を示す表である。対照は、薬物処置前の細胞におけるALP活性である。
【0092】
図4に示されている通り、分化状態における骨形成のための重要なマーカーのALP(アルカリホスファターゼ)の活性を分析した場合、ALP活性は、実施例1の5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム及び実施例2の5-メトキシルインジルビン-3'-オキシムで処置された群において、他の群よりも有意に高かった。
【0093】
この効果は、現存インジルビン誘導体(比較例1~5、12)によって確認することができない非常に驚くべき効力であり、具体的に、ALP活性は実施例1及び2のインジルビン誘導体によって2倍近く増加されたが、ALP活性は従来のインジルビン誘導体によって最大1.5倍までしか増加されなかった。
【0094】
言い換えると、本発明による実施例1の5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム又は実施例2の5-メトキシルインジルビン-3'-オキシムの場合において、骨形成において最も重要な役割を担うALP活性は、30 3/4から100%高く改善され、それによって、それらが最も有効な治療剤であることを確認している。
【0095】
Wnt/β-カテニンシグナル伝達は、脊椎動物における発達、成長及び恒常性において必須の役割を担う。特に、異常性は、Wnt/β-カテニンシグナル伝達が調節不全であるならばヒトを含む動物における骨形成プロセスにおいて発生することが見出された。β-カテニンは、この経路において鍵となるシグナル伝達分子であり、細胞質において安定化及び蓄積し、次いで核中に移動して、骨長及び骨密度の増加に関連する様々な遺伝子の発現を促進する。
【0096】
図5は、β-カテニンの安定性に対する実施例1の5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム及び実施例2の5-メトキシインジルビン-3'-オキシムの効果を確認するための、MC3T3-E1細胞(骨芽細胞)を使用するウエスタンブロットの結果である。
【0097】
図5に示されている通り、実施例1の5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム及び実施例2の5-メトキシルインジルビン-3'-オキシムは、β-カテニンの安定化を有意に誘発した。
【0098】
我々は、実施例1の5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム及び実施例2の5-メトキシルインジルビン-3'-オキシムによるβ-カテニン安定化が、核中に移動するβ-カテニンの量の増加へ有意に最終的に至るかを確認した。
【0099】
図6は、免疫細胞化学によって、実施例1の5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム及び実施例2の5-メトキシルインジルビン-3'-オキシムで処置されたATDC5細胞におけるβ-カテニン濃度を確認する写真である。言い換えると、ATDC5細胞におけるβ-カテニンの発現及び局在化がICCを介して確認された。
【0100】
図6に示されている通り、本発明による実施例1の5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム及び実施例2の5-メトキシインジルビン-3'-オキシムは、β-カテニン安定化を誘発し、核中への安定化β-カテニンの移動性を増加させる。言い換えると、実施例1の5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム及び実施例2の5-メトキシルインジルビン-3'-オキシムの処置は、β-カテニンの全体的な量及び核中へ移動されるβ-カテニンの量を増加させる。
【0101】
実験結果を介して、実施例1の5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム又は実施例2の5-メトキシインジルビン-3'-オキシムは、低い濃度でさえβ-カテニンの安定化を改善し、核中に移動されるβ-カテニンの量を増加させ、それによって、様々な骨形成関連遺伝子の発現を増加させ、骨長と同様に骨密度を改善する。
【0102】
結論として、上記結果は、実施例1の5,6-ジクロロインジルビン-3'-メトキシム及び実施例2の5-メトキシルインジルビン-3'-オキシムは、骨長及び密度を増加させることによって、様々な骨疾患の有効な処置であり得ることを示唆している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6