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特許7060860分子内ジスルフィド結合形成能を有するペプチドの利用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】分子内ジスルフィド結合形成能を有するペプチドの利用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/12 20060101AFI20220420BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20220420BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 17/18 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 38/095 20190101ALI20220420BHJP
   C07K 7/52 20060101ALN20220420BHJP
   C07K 7/16 20060101ALN20220420BHJP
【FI】
A61K38/12
A61P25/18
A61K8/64
A61Q19/08
A61P17/16
A61P17/18
A61K38/095
C07K7/52
C07K7/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017162657
(22)【出願日】2017-08-25
(65)【公開番号】P2019038780
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】503152059
【氏名又は名称】株式会社バイオロジカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】穴原 精二郎
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0014487(US,A1)
【文献】粧技誌,2016年,Vol.50,No.2,pp.91-97
【文献】オレオサイエンス,2001年,Vol.1, No.3,pp.237-246
【文献】粧技誌,2002年,Vol.36, No.1,pp.1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00 -38/58
A61P 17/00 -17/18
A61P 25/18
A61K 8/64
A61Q 1/00 -90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元型オキシトシンを有効成分とする、保湿剤。
【請求項2】
還元型オキシトシンを有効成分とする、保湿用皮膚外用組成物。
【請求項3】
有効成分である還元型オキシトシンと、
前記還元型オキシトシンを溶解又は分散する媒体と、
を含む、保湿化粧料キット。
【請求項4】
有効成分である還元型オキシトシンを収容し密閉された包装体を備える、保湿化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、分子ジスルフィド結合形成能を有するペプチドの利用に関する。
【背景技術】
【0002】
グルタチオンは、グルタミン酸、システイン及びグリシンからなるトリペプチドであって、通常の生理的環境下では、概して、チオール基(SH基)が還元された状態で存在している。すなわち、還元型グルタチオン(GSH)として存在している。酸化性環境において、チオール基が酸化されることで、2つのグルタチオンのチオール基からジスルフィド結合(S-S結合)が形成されて酸化型グルタチオン(GSSG)となる。この過程において、還元型グルタチオンは、還元作用、すなわち、抗酸化作用を発揮する。この作用を利用して、グルタチオンを化粧品などに含有させてヒトの皮膚に適用することで、肌における抗酸化作用ひいては抗老化作用が期待されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】再表2015-151867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書は、新たな還元型ペプチドの利用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、チオール基とジスルフィド結合とによる抗酸化用途に着目し、2つのチオール基を有して分子内ジスルフィド結合を形成するペプチドの抗酸化用途への利用を創出した。本発明者は、かかるペプチドとして、生理的環境下でジスルフィド結合を有するペプチドのアミノ酸配列に基づいてジスルフィド結合形成前のペプチドが酸化されることによって十分に効果的に抗酸化作用を発揮することを見出した。こうした知見に基づき、本明細書によれば、以下の手段が提供される。
【0006】
(1)少なくとも2個のシステイン残基を有し、前記2個のシステイン残基に由来する2個のチオール基(還元型)を備えており、酸化により前記2個のチオール基は分子内ジスルフィド結合を形成可能であるペプチドを有効成分とする、皮膚外用剤。
(2)前記ペプチドは、前記分子内ジスルフィド結合を形成したとき、オキシトシン活性を有する、(1)に記載の皮膚外用剤。
(3)前記ペプチドは、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する、(2)に記載の皮膚外用剤。
(4)少なくとも2個のシステイン残基を有し、前記2個のシステイン残基に由来する2個のチオール基(還元型)を備えており、酸化により前記2個のチオール基は分子内ジスルフィド結合を形成可能であるペプチドを有効成分とする、保湿剤。
(5)少なくとも2個のシステイン残基を有し、前記2個のシステイン残基に由来する2個のチオール基(還元型)を備えており、酸化により前記2個のチオール基は分子内ジスルフィド結合を形成可能であるペプチドを有効成分とする、抗酸化剤。
(6)少なくとも2個のシステイン残基を有し、前記2個のシステイン残基に由来する2個のチオール基(還元型)を備えており、酸化により前記2個のチオール基は分子内ジスルフィド結合を形成可能であって、前記分子内ジスルフィド結合を形成したとき、オキシトシン活性を有するペプチドを有効成分とする、抗ストレス剤。
(7)少なくとも2個のシステイン残基を有し、前記2個のシステイン残基に由来する2個のチオール基(還元型)を備えており、酸化により前記2個のチオール基は分子内ジスルフィド結合を形成可能であるペプチドを含有する、皮膚外用組成物。
(8)化粧料である、(7)に記載の組成物。
(9)保湿用化粧料である、(8)に記載の組成物。
(10)抗老化用化粧料である、(8)に記載の組成物。
(11)少なくとも2個のシステイン残基を有し、前記2個のシステイン残基に由来する2個のチオール基(還元型)を備えており、酸化により前記2個のチオール基は分子内ジスルフィド結合を形成可能であるペプチドと、
皮膚化粧料と、
を含む、化粧用キット。
(12)少なくとも2個のシステイン残基を有し、前記2個のシステイン残基に由来する2個のチオール基(還元型)を備えており、酸化により前記2個のチオール基は分子内ジスルフィド結合を形成可能であるペプチドを収容し密閉された、1又は2以上のペプチド収容領域を備える、包装体。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書の開示は、少なくとも2個のシステイン残基を有し、前記2個のシステイン残基に由来する少なくとも2個のチオール基(還元型)を備えており、酸化により前記2個のチオール基は分子内ジスルフィド結合形成能を有するペプチド(以下、本明細書において、単に、本ペプチドともいう。)及びその利用に関する。
【0008】
本ペプチドによれば、例えば、ヒトなどの皮膚等に適用したとき、適用された環境においてチオール基からジスルフィド結合を形成することに基づいて、本ペプチド自身が酸化されることにより、適用された環境において抗酸化作用を発揮する。また、ジスルフィド結合の形成に伴い生成する水に基づいて、皮膚等に水分を供給できる(すなわち、保湿作用を発揮する)。
【0009】
また、還元型ペプチドが、ジスルフィド結合形成時においてオキシトシン活性を有するペプチドであるときには、適用された環境において、オキシトシンを生成し、ホルモンとしてのオキシトシン作用を発揮する。すなわち、使用者のストレスを緩和したり、使用者にリラックス感や幸福感をもたらしたり、細胞再生を促進することができる。
【0010】
以下、本ペプチド及びその利用の種々の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において、ペプチドとは、2以上のアミノ酸がペプチド結合によって結合した分子である。
【0011】
また、本明細書において、アミノ酸は、いわゆる必須アミノ酸のほか、ヒドロキシプロリン、サイロキシン、ホスホセリン、デスモシンのアミノ酸、さらには、β-アラニン、サルコシン、オルニチン等のアミノ酸が挙げられる。また、アミノ酸には、L-アミノ酸、D-アミノ酸が含まれる。ペプチドは、L-アミノ酸のみから構成されていてもよいし、D-アミノ酸のみから構成されていてもよいし、L-アミノ酸及びD-アミノ酸から構成されていてもよい。
【0012】
(分子内ジスルフィド結合形成能を有するペプチド及びその誘導体)
本ペプチドは、分子内ジスルフィド結合形成能を有することができる。本ペプチドは、そのアミノ酸配列において、少なくとも2個のシステイン残基を有し、当該2個のシステム残基にそれぞれ由来する2個のチオール基(還元型)を備えることができる。
【0013】
ペプチドを構成するアミノ酸の個数は特に限定するものではない。本明細書においては、水溶性等を考慮すると、例えば、20個以下とすることができ、また例えば16個以下とすることができ、また例えば12個以下とすることができ、また例えば10個以下であってもよい。
【0014】
ここでいう、分子内ジスルフィド結合形成能とは、ペプチドが適用される環境において酸化によって分子内ジスルフィド結合を形成する能力をいう。例えば、ペプチドが水性媒体などの水性環境内に溶質として存在する場合が挙げられる。具体的には、例えば、ペプチドが水性媒体に溶解している環境が挙げられる。また例えば、ヒトなどの動物の皮膚に対して水性媒体とともに適用された環境が挙げられる。また例えば、水分を含むヒトなどの粘膜等表面に固体電解質状態のペプチドが適用されてその場において、水性媒体にペプチドが溶解する環境が挙げられる。なお、こうした水性環境において、強力な抗酸化剤が存在してチオール基の酸化を抑制している場合において、ペプチドが分子内ジスルフィド結合を形成しないが、抗酸化剤が存在しない場合に、チオール基が酸化された分子内ジスルフィド結合を形成する場合には、分子内ジスルフィド結合形成能を有しているといえる。
【0015】
こうした水性環境としては、例えば、概して中性pH5~9、また例えばpH5.5~8.5、また例えばpH6~8の水を主体とする水性媒体からなる水性環境が挙げられる。水性媒体としては、例えば、リン酸緩衝生理食塩水などの動物の生理的条件に適合する緩衝液を適宜適用することができる。
【0016】
分子内ジスルフィド結合は、ペプチド内の2つのシステイン残基の2つのチオール基間で形成される架橋構造である。こうしたジスルフィド結合を形成する天然由来のタンパク質としては、例えば、オキシトシン、γ-グロブリン、血清アルブミンのほか、各種の分泌タンパク質、細胞膜タンパク質等が挙げられる。当業者であれば、こうしたタンパク質のアミノ酸配列を参照することで、分子内ジスルフィド結合形成能を発揮するアミノ酸配列を種々規定することができる。
【0017】
こうしたペプチドとしては、例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するオキシトシンが挙げられる。また、例えば、オキシトシンのアミノ酸配列(配列番号1)に基づいて、例えば、オキシトシン活性を有し、ジスルフィド結合を形成可能なアミノ酸配列が公開されている(例えば、特表2002-525337号公報)。一方、オキシトシンのアミノ酸配列に基づいてオキシトシン活性を抑制又は回避しつつ、ジスルフィド結合を形成可能なアミノ酸配列を当業者であれば取得できる。
【0018】
また、本ペプチドの誘導体としては、例えば、天然においてジスルフィド結合を形成可能なあるいは形成しているペプチドのアミノ酸配列の1又は2以上のアミノ酸残基に対してアミノ酸以外の有機官能基を導入することが挙げられる。かかる有機官能基としては、水溶性を向上させるためのカルボキシル基、水酸基などの酸性基、アミノ基などの塩基性基、脂溶性を向上させるための鎖状、分枝状若しくは環状のアルキル基又はアルケニル基(例えば、鎖状又は分枝状の場合、炭素数1以上10以下程度、環状の場合、炭素数5以上12以下程度)などの炭化水素基、アルキル基又はアルケニル基を備えるアルカノイル基(アシル基)やアルキルオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0019】
こうしたペプチド誘導体の例として、オキシトシンの一部に疎水性基を導入してオキシトシンとしての持続性を高めたものなどが挙げられる(例えば、国際公開第2016/002926号に開示されるオキシトシン誘導体等)。
【0020】
(本ペプチドの用途)
本明細書によれば、本ペプチドを有効成分とする粘膜又は皮膚外用剤(以下、単に本外用剤という。)が提供される。本外用剤等によれば、本ペプチドが、前記分子内ジスルフィド結合を形成して、本ペプチド自身が酸化されることにより、皮膚や粘膜等において抗酸化作用を発揮する。また、ジスルフィド結合の形成に伴い生成する水に基づいて、皮膚や粘膜に水分を供給でき、保湿作用を発揮することができる。すなわち、本ペプチドは保湿剤として機能することができ、本ペプチドを有効成分とする保湿剤も提供される。さらに、本ペプチドを有効成分とする、保湿等のための化粧料等も提供される。
【0021】
また、本ペプチドが、ジスルフィド結合形成時においてオキシトシン活性を有するペプチドであるときには、皮膚や粘膜において、オキシトシンを生成し、ホルモンとしてのオキシトシン作用を発揮する。オキシトシンは、皮膚や粘膜を介して、使用者に取り込まれて使用者のストレスを緩和したり、使用者に幸福感をもたらしたり、細胞再生を促進することができる。すなわち、本ペプチドは、外用剤としてのストレス緩和剤、細胞再生剤、幸福感の提供剤等として機能することができ、本ペプチドを有効成分とする、ストレス緩和剤、細胞再生剤、幸福感提供剤等が提供される。さらに、本ペプチドを有効成分とする、ストレス緩和や抗老化等のための化粧料等も提供される。
【0022】
本外用剤及び化粧料は、使用時組成物として、例えば、0.01~10%程度の範囲となるように用い、これに他の成分を含有して皮膚外用剤又は化粧料とすることができる。
【0023】
本外用剤及び化粧料には上述の必須成分の他に、必要に応じて通常皮膚外用剤や化粧料に配合される任意成分、すなわち、油剤、アルコール類、粉体、水溶性高分子、皮膜形成剤、界面活性剤、油溶性ゲル化剤、有機変性粘土鉱物、樹脂、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、香料、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤等を含有することができる。
【0024】
本外用剤又は化粧料の製造方法は、特に限定されないが、例えば、本ペプチドを凍結乾燥品として取得する。必要に応じて残余の成分と混合して凍結乾燥品とすることができる。こうした本ペプチド粉末は、適宜、剤形等に応じた任意成分とともに、用時に開封する形態、特に限定するものではないが、使い切り又は単回投与又は単回使用のため密封容器等に包装することができる。なお、本ペプチドの酸化を防ぐために、例えば、抗酸化剤を用いることが好ましく、また、包装体内に、ヘリウムガス、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスを充填又は置換することも好適である。
【0025】
例えば、本外用剤又は化粧料は、本ペプチドを収容し密閉された1又は2以上のペプチド収容領域、例えば、単回投与又は単回使用のための収容領域を、1又は2以上を備える包装体の形態を採ることもできる。かかる包装体においては、例えば、複数のペプチド収容領域を、マトリックス状に配置されていてもよい。ペプチド領域は、いずれも、不活性ガスが充填等されていることが好ましい。また、こうした包装体は、医薬品製剤又は化粧品における単回投与又は単回使用の分量ごとの包装体と同様に製造することができる。
【0026】
本外用剤又は化粧料は、用時に本ペプチドを溶解する媒体、分散する基剤等とともにキット化されていてもよい。例えば、本ペプチドを皮膚に適用するのに好適な、生理食塩緩衝液、化粧水等の水性媒体、乳液などのエマルジョン状媒体、水性ゲル等のゲル状媒体、油性又は水性クリームなどのクリーム状媒体などと組合せられていてもよい。例えば、本ペプチドと皮膚化粧料又は皮膚外用剤(本ペプチドを含まない)とを組み合わせることができる。
【0027】
本外用剤の用途は、外用液剤、外用ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、リニメント剤、ローション剤、ハップ剤、硬膏剤、噴霧剤、エアゾール剤等法等が挙げられる。
【0028】
化粧料の用途は、化粧水、乳液、クリーム、アイクリーム、美容液、マッサージ料、パック料、ハンドクリーム、ボディクリーム、日焼け止め化粧料等のスキンケア化粧料や、パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、フェイスパウダー、化粧用下地化粧料、白粉、コンシーラー、アイシャドウ等のメーキャップ化粧料を例示することができる。またその使用法は、手や指で使用する方法、スキンケア化粧料の場合では不織布等に含浸させて使用する方法等が挙げられる。
【実施例
【0029】
以下、本明細書の開示をより具体的に説明するために具体例としての実施例を記載する。以下の実施例は、本明細書の開示を説明するためのものであって、その範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0030】
(オキシトシン還元体の包装体の作製)
96穴プレートを準備し、オキシトシン還元体濃度0.2mg/ml(蒸留水)の溶液10μlを各ウェルに投入し、減圧乾燥し、各ウェル内にオキシトシン還元体の凍結乾燥粉末を取得した。この96穴プレートを、アルゴンガスで置換した雰囲気内で、各ウェルが気密状態となるようにシールを行った。
【実施例2】
【0031】
(オキシトシン還元体の使用例)
実施例1で作製したオキシトシン還元体包装体の1ウェルのシールを剥がして密封を解き、ウェル内に蒸留水100μlを注入して、オキシトシン還元体を溶解した。この溶液のすべてを被験者(女性68才)の一方の頬の中心の10cm四方の範囲に塗布した。引き続き、当該女性の他方の頬に同量の蒸留水を同一の範囲に塗布して、室内で10分間程度放置した。その後、両頬のオキシトシン還元体溶液及び蒸留水の塗布範囲にける保湿状態について比較した。その結果、還元型オキシトシンを塗布した頬の塗布範囲はしっとりしていたのに対し、他方の頬の蒸留水の塗布範囲はかさついてしまった。以上のことから、還元型オキシトシンは、皮膚表面において保湿効果を奏することができることがわかった。なお、対照として、非還元型オキシトシンの同濃度の溶液を前記被験者の頬に同様に塗布したところ、蒸留水と同様、保湿感を呈することはなかった。
【0032】
また、実施例1で作製した還元体包装体の1ウェルのシールを剥がして密封を解いて、内部のオキシトシン還元体をそのまま上記被験者の片頬の上記範囲に塗布して、頬表面の水分でオキシトシン還元体が溶解するようにした。室内で安静にしたまま30分間程度放置すると、幸福感ないしリラックス感を感じることができた。
【0033】
以上のことから、還元型オキシトシンは、肌など皮膚に適用することで、保湿効果を奏するとともに、肌から吸収等されて幸福感ないしリラックス感を感じることができることがわかった。