(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】戸パネルの支持構造
(51)【国際特許分類】
E05D 15/06 20060101AFI20220420BHJP
【FI】
E05D15/06 119
(21)【出願番号】P 2017196127
(22)【出願日】2017-10-06
【審査請求日】2020-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390021153
【氏名又は名称】株式会社SKB
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】赤木 隆宏
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-072577(JP,A)
【文献】特開2009-138458(JP,A)
【文献】特開平10-220098(JP,A)
【文献】特開平10-002330(JP,A)
【文献】特開昭54-128144(JP,A)
【文献】特開2016-211332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 15/00 - 15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口枠(1)に装着されるガイドレール(2)と、該ガイドレール(2)で移行案内される4輪構造の吊車型のランナー(6)とからなる戸パネルの支持構造であって、
ランナー(6)は、ランナー本体(15)と、同本体(15)に隣接配置した一対のローラー軸(16)と、各ローラー軸(16)で支持される大径ローラー(17)および小径ローラー(18)と、戸パネル(P)を吊下げ支持する吊持軸(19)とを備えており、
一対のローラー軸(16)は、ランナー本体(15)の水平の前後中心軸に対して互いに逆向きに傾斜する状態で傾斜されており、ローラー軸(16)の傾斜上端側に大径ローラー(17)が支持され、ローラー軸(16)の傾斜下端側に小径ローラー(18)が支持されており、
ガイドレール(2)は、断面C字状のレール本体(10)と、大径ローラー(17)を移行案内する前後一対の第1レール壁(11)と、第1レール壁(11)より上側に設けられて、小径ローラー(18)を移行案内する前後一対の第2レール壁(12)を備えており、
大径ローラー(17)が第1レール壁(11)で支持された状態において、小径ローラー(18)のローラー周面(18a)と前後の第2レール壁(12)は、クリアランス(C1)を間にして対向しており、
大径ローラー(17)が第1レール壁(11)で支持された状態において、大径ローラー(17)および小径ローラー(18)のローラー周面(17a・18a)とレール本体(10)の前後壁(10a・10b)は、クリアランス(C2)を間にして対向しており、
外力を受けたランナー本体(15)が、クリアランス(C1)を越えて前後傾動および左右傾動するのを第2レール壁(12)で規制し、
外力を受けたランナー本体(15)が、吊持軸(19)の回りにクリアランス(C2)を越えて回転傾動するのをレール本体(10)の前後壁(10a・10b)で規制して、
ランナー(6)がクリアランス(C1・C2)を越えて3次元方向へ揺れ動くのを規制していることを特徴とする戸パネルの支持構造。
【請求項2】
大径ローラー(17)
を収容するローラー収容部(20)と、小径ローラー(18)を収容するローラー収容部(21)が、ローラー軸(16)を支持する中央壁(22)を間にして、ランナー本体(15)の前後面に凹み形成されている請求項1に記載の戸パネルの支持構造。
【請求項3】
第2レール壁(12)の張出し寸法を第1レール壁(11)の張出し寸法より小さく設定して、大径ローラー(17)の上周面が、第2レール壁(12)の上面より上方に位置している請求項
1または2に記載の戸パネルの支持構造。
【請求項4】
ローラー収容部(20・21)に収容した大径ローラー(17)および小径ローラー(18)のローラー周面(17a・18a)のうち、対応する第1レール壁(11)および第2レール壁(12)で移行案内される側の周面が、ランナー本体(15)の外郭線の外に露出されている請求項
2または3に記載の戸パネルの支持構造。
【請求項5】
ガイドレール(2)の第1レール壁(11)と第2レール壁(12)が、それぞれレール本体(10)から水平に張出し形成されており、
大径ローラー(17)および小径ローラー(18)はそれぞれ円錐台状に形成されて、テーパー面からなるローラー周面(17a・18a)を備えており、
大径ローラー(17)と小径ローラー(18)は、それぞれローラー周面(17a・18a)の小径端側がランナー本体(15)を間にして背中合わせ状に隣接する状態でローラー軸(16)に支持されている請求項
1から4のいずれかひとつに記載の戸パネルの支持構造。
【請求項6】
ガイドレール(2)の
前後の第1レール壁(11)
および前後の第2レール壁(12)が、それぞれ
ローラー軸(16)の傾斜角度と一致する状態で、互いに逆向きに傾斜する状態で傾斜されており、
大径ローラー(17)および小径ローラー(18)
が、それぞれ円形ローラー状に形成されて、円弧面からなるローラー周面(17a・18a)を備えており、
大径ローラー(17)と小径ローラー(18)は
、ランナー本体(15)を間にして背中合わせ状に隣接する状態でローラー軸(16)に支持されている請求項1から
4のいずれかひとつに記載の戸パネルの支持構造。
【請求項7】
大径ローラー(17)がローラー軸(16)に装着したベアリング(23)で回転自在に支持されている請求項1から
6のいずれかひとつに記載の戸パネルの支持構造
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸パネルを支持するための吊車型のランナーを備えている戸パネルの支持構造に関する。本発明に係る戸パネルの支持構造は、引き戸、折り戸、回転ドアなどに適用することができる。
【背景技術】
【0002】
本発明に係る戸パネルの支持構造を構成するランナーは、ランナー本体の前面一側と後面他側に互い違い状にローラーを配置して、レール断面積やランナーの小形化を図っているが、この種のランナーは特許文献1の吊車装置に公知である。そこでは、横長のランナー本体の前後に車軸を配置し、各車軸の前側一側と後側他側においてローラーを回転自在に軸支して、ランナーを2輪構造としている。ローラーは内輪、外輪、およびボールを備えたベアリング構造になっている。
【0003】
本発明に係る戸パネルの支持構造を構成するランナーでは、ローラー軸を斜めに傾斜させるが、こうしたランナー構造は、特許文献2の戸車に公知である。そこでは、斜めに傾斜する支持板で車軸体を回転自在に軸支し、車軸体の傾斜下端に走行輪を固定している。走行輪はそろばん玉状に形成されており、円錐形状の走行面の下周面が敷居溝で支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-52196号公報(段落番号0018、
図1)
【文献】特開2009-138458号公報(段落番号0018、
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の吊車装置によれば、ランナー本体の前側一側と後側他側にローラーを配置するので、ローラー直径を一定とするときの車軸の隣接間隔を小さくでき、従ってランナーの小形化と構造の簡素化を実現してコストを削減できる。しかし、ローラーがランナー本体に対して互い違い状に配置されているため、戸パネルを開閉するときランナーが前後左右に傾動しやすい。また、ランナーが折り戸に適用される場合には、戸パネルを開放した状態において、ランナーに大きな傾動モーメントが作用するため、片方のローラーが走行面から浮き離れて、戸パネルの開閉を適正に行えないことがある。
【0006】
特許文献2の戸車は、走行輪をそろばん玉状に形成し、その円錐状の走行面の下周面を敷居溝で支持することにより、走行輪が敷居溝から脱輪するのを防止している。しかし、走行輪が取付フレーム(ランナー本体)に対して互い違い状に配置されているため、特許文献1の吊車装置と同様に建具を開閉するとき傾動しやすい。
【0007】
上記のように、2輪構造のランナーは4輪構造のランナーに比べて、構造を簡素化して小形化を図るうえで有利であり、さらに軽快に開閉移動できる利点があるが、ランナーが傾動しやすく安定した状態で走行させることが難しい。また、4輪構造のランナーは、4個のローラーがレール壁で同時に移行案内されている間は、ランナーを安定した状態で走行できるものの、外力を受けたランナー本体が前後、左右、あるいは吊持軸の回りに大きく傾動することがあり、そうした場合に走行状態が不安定になる。本発明者は、上記のような2輪構造のランナーと4輪構造のランナーの特長と欠点を再検討し、両者の特長を生かせるランナー構造を模索した結果、本発明を提案するに至ったものである。
【0008】
本発明の目的は軽快に開閉移動でき、ランナー本体が前後、左右、あるいは吊持軸の回りに傾動した場合であっても、安定した走行特性を発揮できる戸パネルの支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る戸パネルの支持構造は、開口枠1に装着されるガイドレール2と、ガイドレール2で移行案内される4輪構造の吊車型のランナー6とからなる。ランナー6は、ランナー本体15と、同本体15に隣接配置した一対のローラー軸16と、各ローラー軸16で支持される大径ローラー17および小径ローラー18と、戸パネルPを吊下げ支持する吊持軸19とを備えている。
図1に示すように、一対のローラー軸16は、ランナー本体15の水平の前後中心軸に対して互いに逆向きに傾斜する状態で傾斜されており、ローラー軸16の傾斜上端側に大径ローラー17が支持され、ローラー軸16の傾斜下端側に小径ローラー18が支持されている。ガイドレール2は、断面C字状のレール本体10と、大径ローラー17を移行案内する前後一対の第1レール壁11と、第1レール壁11より上側に設けられて、小径ローラー18を移行案内する前後一対の第2レール壁12を備えている。
大径ローラー17が第1レール壁11で支持された状態において、小径ローラー18のローラー周面18aと前後の第2レール壁12は、クリアランスC1を間にして対向している。大径ローラー17が第1レール壁11で支持された状態において、大径ローラー17および小径ローラー18のローラー周面17a・18aとレール本体10の前後壁10a・10bは、クリアランスC2を間にして対向している。外力を受けたランナー本体15が、クリアランスC1を越えて前後傾動および左右傾動するのを第2レール壁12で規制する。さらに、外力を受けたランナー本体15が、吊持軸19の回りにクリアランスC2を越えて回転傾動するのをレール本体10の前後壁10a・10bで規制して、ランナー6がクリアランスC1・C2を越えて3次元方向へ揺れ動くのを規制する。
【0011】
大径ローラー17を収容するローラー収容部20と、小径ローラー18を収容するローラー収容部21が、ローラー軸16を支持する中央壁22を間にして、ランナー本体15の前後面に凹み形成されている。
【0012】
第2レール壁12の張出し寸法を第1レール壁11の張出し寸法より小さく設定して、大径ローラー17の上周面が、第2レール壁12の上面より上方に位置している。
【0013】
ローラー収容部20・21に収容した大径ローラー17および小径ローラー18のローラー周面17a・18aのうち、対応する第1レール壁11および第2レール壁12で移行案内される側の周面を、ランナー本体15の外郭線の外に露出させる。
【0014】
ガイドレール2の第1レール壁11と第2レール壁12は、それぞれレール本体10から水平に張出し形成されている。大径ローラー17および小径ローラー18はそれぞれ円錐台状に形成されて、テーパー面からなるローラー周面17a・18aを備えている。大径ローラー17と小径ローラー18は、それぞれローラー周面17a・18aの小径端側がランナー本体15を間にして背中合わせ状に隣接する状態でローラー軸16に支持されている。
【0015】
ガイドレール2の前後の第1レール壁11および前後の第2レール壁12は、
図10に示すように、それぞれローラー軸16の傾斜角度と一致する状態で、互いに逆向きに傾斜する状態で傾斜させてある。大径ローラー17および小径ローラー18は、それぞれ円形ローラー状に形成されて、円弧面からなるローラー周面17a・18aを備えている。大径ローラー17と小径ローラー18は、ランナー本体15を間にして背中合わせ状に隣接する状態でローラー軸16に支持されている。
【0016】
大径ローラー17はローラー軸16に装着したベアリング23で回転自在に支持されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明では4輪構造の吊車型のランナー6において、一対のローラー軸16を互いに逆向きに傾斜する状態で傾斜させ、同軸16の傾斜上端側で大径ローラー17を支持し、傾斜下端側で小径ローラー18を支持するようにした。また、ガイドレール2は、レール本体10と、大径ローラー17を移行案内する前後一対の第1レール壁11と、第1レール壁11より上側に設けられて、小径ローラー18を移行案内する前後一対の第2レール壁12を備えるようにした。
【0018】
こうした戸パネルの支持構造によれば、定常状態においては、一対の大径ローラー17が第1レール壁11に沿って走行移動することで戸パネルPを開閉できる。しかし、外力を受けたランナー本体15が前後あるいは左右に傾動する状態では、小径ローラー18のローラー周面18aを第2レール壁12で受止めて、ランナー本体15が前後傾動し、あるいは左右傾動するのを第2レール壁12で規制する。さらに、外力を受けたランナー本体15が吊持軸19を中心にして回転傾動する状態では、大径ローラー17または小径ローラー18のローラー周面17a・18aをレール本体10の前後壁10a・10bで受止めて、ランナー本体15が回転傾動するのを前後壁10a・10bで規制できる。従って、4輪構造のランナー6であるにも拘らず、2輪構造のランナーと同等の軽快な開閉機能を発揮しながら、ランナー本体15が大きく傾動した状態で開閉移動されるのを解消して、常に安定した走行特性を発揮するランナー6を備えた戸パネルの支持構造を提供できる。
【0019】
小径ローラー18のローラー周面18aと前後の第2レール壁12が、クリアランスC1を間にして対向し、大径ローラー17および小径ローラー18のローラー周面17a・18aとレール本体10の前後壁10a・10bが、クリアランスC2を間にして対向するようにした。このように、各ローラー17・18とガイドレール2の間に適量のクリアランスC1・C2を設けてあると、各ローラー17・18は、ランナー6がクリアランスC1・C2分だけ傾動した状態において、第2レール壁12あるいはレール本体10の前後壁10a・10bで受止められて、それ以上傾動することはない。つまり、ランナー6がクリアランスC1・C2を越えて3次元方向へ揺れ動くのを、第2レール壁12あるいは前後壁10a・10bで規制できる。従って、ランナー6は常に安定した走行特性を発揮しながら戸パネルPを整然と開閉移動できる。また、揺れ動きに伴うがたつき音の発生を抑止できるので、静粛性に優れた戸パネルの支持構造を提供することができる。
【0020】
ランナー本体15の前後面にローラー収容部20・21を凹み形成し、各収容部20・21に大径ローラー17と小径ローラー18を収容すると、両ローラー17・18の全体がランナー本体15の前後面に露出させてある場合に比べて、ランナー6の前後幅を小さくしてその分だけランナー6を小形化できる。また、ランナー6を小形化できる分だけガイドレール2のレール断面積を小さくして、戸パネルの支持構造をコンパクト化できる。さらに、前後のローラー収容部20・21の間の中央壁22を利用してローラー軸16を支持するので、ランナー本体15の構造に無駄がない利点もある。
【0021】
第2レール壁12の張出し寸法を第1レール壁11の張出し寸法より小さく設定して、大径ローラー17の上周面を、第2レール壁12の上面より上方に位置するようにした。こうしたランナー6によれば、ガイドレール2の内部空間において許される範囲内で、大径ローラー17の直径を大きくできるので、左右一対の大径ローラー17が第1レール壁11に沿って走行移動するときのランナー6の走行特性をさらに安定化して直進性を向上できる。
【0022】
大径ローラー17および小径ローラー18のローラー周面17a・18aのうち、対応する第1レール壁11および第2レール壁12で移行案内される側の周面を、ランナー本体15の外郭線の外に露出させるようにした。こうしたランナー6によれば、走行移動と傾動規制に関与する側のローラー周面のみが、ランナー本体15の前後面に露出させてあればよいので、各ローラー17・18の大半の部分を、側面視におけるランナー本体15の外郭線内に位置させることができる。従って、ローラー収容部20・21に大径ローラー17および小径ローラー18が収容してある場合と同様に、ランナー6の前後幅を小さくしてその分だけランナー6を小形化し、ガイドレール2のレール断面積を小さくできる。また、ランナー6が走行移動するとき、走行移動と傾動規制に関与していない側のローラー周面が、ガイドレール2の内面壁に接触するのを確実に防止して、ランナー6を軽快に開閉移動できる。
【0023】
ガイドレール2の第1・第2のレール壁11・12を、それぞれ水平に張出し形成し、大径ローラー17および小径ローラー18はそれぞれ円錐台状に形成して、テーパー面状のローラー周面17a・18aを備えるようにした。また、各ローラー17・18は、ローラー周面17a・18aの小径端側がランナー本体15を間にして背中合わせ状に隣接する状態で、ローラー軸16で支持されるようにした。こうしたランナー6によれば、傾斜中心軸回りに回転する一対の大径ローラー17・17は、第1レール壁11に対して常に均一な状態で転動しようとする自己調心作用を発揮するので、ランナー6の直進性を向上して走行特性をさらに安定化できる。
【0024】
ガイドレール2の第1・第2のレール壁11・12を、それぞれローラー軸16の傾斜角度と一致する状態で、互いに逆向きに傾斜する状態で傾斜させ、大径ローラー17および小径ローラー18は、それぞれ円形ローラー状に形成するようにした。こうしたランナー6によれば、傾斜中心軸回りに回転する一対の大径ローラー17・17は、第1レール壁11に対して常に均一な状態で転動しようとする自己調心作用を発揮するので、各ローラー17・18が円錐台状に形成してあるランナー6と同様に、ランナー6の直進性を向上して走行特性をさらに安定化できる。
【0025】
大径ローラー17がローラー軸16に装着したベアリング23で回転自在に支持されていると、大径ローラー17がローラー軸16で直接軸支してある場合に比べて、大径ローラー17の回転抵抗を小さくして回転動作をより円滑化できる。また、大径ローラー17の回転動作が円滑化されるのに伴って、ランナー6が走行移動するときの騒音の発生を低下できるので、静粛性に優れた戸パネルの支持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施例1に係る戸パネルの支持構造を示す縦断側面図である。
【
図6】ローラー支持構造を説明するための分解断面図である。
【
図7】ランナーが前後に傾動した場合の第2レール壁の規制作用を示す側面図である。
【
図8】ランナーが左右に傾動した場合の第2レール壁の規制作用を示す正面図である。
【
図9】ランナーが吊持軸の回りに回転傾動した場合の前後壁の規制作用を示す平面図である。
【
図10】本発明の実施例2に係る戸パネルの支持構造を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施例1)
図1から
図8に、本発明に係る戸パネルの支持構造をフリー折り戸に適用した実施例1を示す。本発明における前後、左右、上下とは、
図2ないし
図4に示す交差矢印と、交差矢印の近傍の前後・左右・上下の表記に従う。
図2においてフリー折り戸は、左右一対のパネル対で構成されており、各パネル対は開口枠1の上下に配置したガイドレール2・3で折畳み開閉自在に案内支持されている。各パネル対は2個の戸パネルPの隣接縁どうしをヒンジ4で連結して構成されており、戸パネルPを折畳んだ状態では、戸パネルPの殆どがガイドレール2の真下の垂直平面よりも前方へ突出する。この状態のパネル対はガイドレール2・3に沿って左右方向へ自由に移動操作できる。パネル対を全展開した状態において開口中央で隣接する戸パネルPの屈折縁の近傍には、パネル対を開閉操作する把手5が固定されている。各パネル対の両側端の上下には、
図3に示すようにガイドレール2・3で移行案内されるランナー6と振止具7が設けられている。
【0028】
図1において、上枠側のガイドレール2は下向きに開口する断面C字状のレール本体10と、レール本体10の前後壁10a・10bに対向する状態で張出される第1レール壁11および第2レール壁12を一体に備えたアルミニウム条材からなる。第1レール壁11が後述する吊持軸19の移動領域を間にして、レール本体10の前後壁10a・10bの開口面において水平に張出し形成されているのに対して、第2レール壁12は後述するランナー本体15の移動領域を間にして、レール本体10の前後壁10a・10bの中途部に水平に張出し形成されている。第2レール壁12の張出し寸法は、第1レール壁11の張出し寸法より小さく設定されている。この実施例におけるガイドレール2は、高さ寸法が20.9mm、前後寸法が20.6mmと、比較的軽量の戸パネルPを吊持するのに適した小形のガイドレールからなる。床面側のガイドレール3は、上向きに開口する浅いレール溝13を備えたアルミニウム条材からなる(
図3参照)。
【0029】
図4においてランナー6は、ランナー本体15と、ランナー本体15に隣接配置される一対のローラー軸16と、各ローラー軸16の前後軸部で回転自在に軸支される大径ローラー17・17および小径ローラー18・18と、ランナー本体15と戸パネルP1・P2を連結する吊持軸19を備えた4輪構造の吊車型のランナーからなる。ランナー本体15は左右横長のプラスチック成型品からなり、その前後面の左右に各ローラー17・18を収容する円形のローラー収容部20・21が凹み形成されている。
図1に示すように、前後のローラー収容部20・21は、ローラー軸16を支持する中央壁22で区分されており、同壁22に形成した挿通穴にローラー軸16が圧嵌固定されている。このように、ローラー収容部20・21は、ローラー軸16を支持する中央壁22を間にして、ランナー本体15の前後面に凹み形成されている。なお、この実施例では、ランナー本体15の左右寸法が47mm、高さ寸法が15mmであるとき、左右に隣接するローラー軸16の中心間距離は21mmとした。
【0030】
上記のように、ランナー本体15の前後面にローラー収容部20・21を凹み形成し、各収容部20・21に大径ローラー17と小径ローラー18を収容すると、両ローラー17・18の全体がランナー本体15の前後面に露出させてある場合に比べて、ランナー6の前後幅を小さくしてその分だけランナー6を小形化できる。また、ランナー6を小形化できる分だけガイドレール2のレール断面積を小さくできるので、戸パネルの支持構造をコンパクト化できる。加えて、前後のローラー収容部20・21の間の中央壁22を利用してローラー軸16を支持するので、ランナー本体15の構造に無駄がない利点もある。
【0031】
図7に示すようにローラー軸16は、その傾斜上端側に形成される第1軸部16aと、傾斜下端側に形成される第2軸部16bを一体に備えたステンレス製の旋削品からなり、両軸部16a・16bがフランジで区分されている。左右のローラー軸16・16は、それぞれランナー本体15の水平の前後中心軸に対して、互いに逆向きに10度傾斜する状態で傾斜されている。詳しくは、
図4に向かって左側のローラー軸16は、その中心軸線S1が後上がり傾斜する状態でランナー本体15に固定されており(
図1参照)、
図4に向かって右側のローラー軸16は、その中心軸線S2が前上がり傾斜する状態でランナー本体15に固定されている。この状態のローラー軸16の各軸部16a・16bに、ローラー収容部20・21に収容した状態の各ローラー17・18が一対ずつかしめ固定されている。
【0032】
大径ローラー17・17は、左右のローラー軸16の第1軸部16aで支持されており、小径ローラー18・18は、ローラー軸16の第2軸部16bで支持されている。大径ローラー17・17および小径ローラー18・18は、それぞれ円錐台状に形成されるプラスチック成型品からなり、大径ローラー17・17のみがローラー軸16に装着したベアリング23で回転自在に支持されている。大径ローラー17・17および小径ローラー18・18は、それぞれテーパー状のローラー周面17a・18aと、ローラー周面17aの大径端に連続するローラー端面17b・18bを備えており、ローラー周面17a・18aの小径端側がランナー本体15の中央壁22を間にして背中合わせ状に隣接する状態でローラー軸16に装着されている。ローラー周面17a・18aとローラー端面17b・18bの間の隅部分は丸められている。ローラー周面17a・18aはローラー軸16の中心軸線S1・S2に対して10度傾けてある。従って、ランナー6をガイドレール2内に組み付けた状態では、大径ローラー17・17のローラー周面17aが第1レール壁11の上面で移行案内され、小径ローラー18・18のローラー周面18aが第2レール壁12の下面で移行案内される。
【0033】
振止具7は、筒状のケース26の内部に振止め軸27と、振止め軸27を押下げ付勢するばね28を収容し、振止め軸27の下端に回転自在な振止めローラー29を組付けて構成されている。振止めローラー29はその下周面を、ガイドレール3のレール溝13で移行案内することにより、戸パネルPの前後傾動を規制できる。
【0034】
各パネル対を折り畳んだ状態における戸パネルPの対向面の上隅部分には、パネル対を一人の作業者のみで吊持軸19に吊込むための吊込みユニット32が設けられている。吊込みユニット32は戸パネルPの上隅部分に埋設されるホルダーを備えており、その内部に吊持軸19を捕捉係合する捕捉レバーと、捻じりコイル形の捕捉ばねと、捕捉レバーをロック保持するロック構造などを備えているが、その説明は省略する。
【0035】
全閉した状態のパネル対が屈折するのを規制して、全閉状態のパネル対を隙間のない状態で面一状に保持するために、開口枠1と閉じ端に臨むランナー6の間にキャッチ構造が設けられている。
図4においてキャッチ構造は、ガイドレール2の閉じ端に固定されるランナー捕捉具35と、ランナー捕捉具35に対応してランナー本体15に設けられる係合構造36と、ランナー本体15を戸パネルPの開放方向へ向かって移動付勢する付勢構造37とを備えている。
【0036】
ランナー捕捉具35は、ガイドレール2と開口枠1で挟持固定される縦壁38と、縦壁38の上部から係合構造36の上面にわたって突設される捕捉腕39を備えたプラスチック成形品からなる。ランナー本体15の側端と正対する縦壁38には、付勢構造37を組むためのガイド枠40がランナー本体15に向かって突設されている。また、捕捉腕39の突端下面には、係合構造36のボール43と係合する係合溝41が凹み形成されている。捕捉腕39の基端寄りには、ガイドレール2の上壁に設けた係合穴に係合する弾性係合爪42が一体に設けられている。
【0037】
係合構造36は、金属製のボール43と、ボール43を押し上げ付勢するボールばね44を備えており、これら両者43・44はランナー本体15のセット穴45に組付けられて、セット穴45の下部にねじ込んだ止めねじ46で保持固定されている。ボール43の球面上部は、常にランナー本体15の上端面より突出しているので、戸パネルPが閉じ位置まで移動操作されると、ボール43が捕捉腕39の係合溝41に落ち込み係合して、戸パネルPが開放方向へ移動するのを規制する。
【0038】
付勢構造37は、ガイド枠40で左右スライドのみ可能に案内支持されるキャップ状の押圧体48と、縦壁38と押圧体48の間に配置される付勢ばね49を備えている。付勢構造37は、戸パネルPが閉じ位置まで移動操作された状態において、押圧体48がランナー本体15の側端面を受止めて付勢ばね49を圧縮変形させる。従って戸パネルPは開放方向へ移動付勢されるが、ボール43と係合溝41の係合関係が解除されることはなく、ユーザーが把手5を開放操作して始めてボール43が係合溝41から分離する。
【0039】
ランナー6がガイドレール2に組まれた状態における、大径ローラー17と第1レール壁11、および小径ローラー18と第2レール壁12の関係を
図1、
図4、
図5に示している。大径ローラー17および小径ローラー18は、それぞれランナー本体15の対応するローラー収容部20・21に収容されて、第1レール壁11および第2レール壁12で移行案内されるローラー周面17a・18aのうち、対応する第1レール壁11および第2レール壁12で移行案内される側の周面を、ランナー本体15の外郭線の外に露出させている。
【0040】
大径ローラー17の場合には、ローラー周面17aの下半側がランナー本体15の外郭線の外に露出させてあり、ローラー周面17aの上周面が、第2レール壁12の上面より上方に位置させてある。また、小径ローラー18の場合には、ローラー周面18aの上半側をランナー本体15の外郭線の外に露出させて、小径ローラー18の全体が、第1レール壁11と第2レール壁12の間に位置させてある。上記のように、各レール壁11・12で移行案内されるローラー周面17a・18aを、ランナー本体15の外郭線の外に露出させると、傾動規制に関与する側のローラー周面のみが、ランナー本体15の前後面に露出させてあればよい。従って、各ローラー17・18の大半の部分を、側面視におけるランナー本体15の外郭線内に位置させてランナー6の前後幅を小さくでき、その分だけランナー6を小形化し、ガイドレール2のレール断面積を小さくできる。また、ランナー6が走行移動するとき、走行移動と傾動規制に関与していない側のローラー周面が、ガイドレール2の内面壁に接触するのを確実に防止して、ランナー6を軽快に開閉移動できる。
【0041】
また、ガイドレール2に組まれたランナー6の小径ローラー18は、第1レール壁11の上面と第2レール壁12の間に位置させてあって、上半側のローラー周面18aが第2レール壁12の下面と正対している。さらに、ローラー軸16の中心軸線S1・S2が10度傾けてあるので、大径ローラー17は第2レール壁12から離れる向きに傾斜して、ローラー周面17aの上周面が第2レール壁12の上面より上方に位置している。このように、大径ローラー17の上周面を、第2レール壁12の上面より上方に位置させるために、第2レール壁12の張出し寸法を第1レール壁11の張出し寸法より小さく設定して、大径ローラー17のローラー端面17bが第2レール壁12と接当干渉するのを避けている。こうしたランナー6によれば、ガイドレール2の内部空間において許される範囲内で、大径ローラー17の直径を大きくできるので、左右一対の大径ローラー17が第1レール壁11に沿って走行移動するときのランナー6の走行特性をさらに安定化して直進性を向上できる。
【0042】
上記のガイド構造においては、第2レール壁12の張出し位置が上側にあるほど、小径ローラー18の周面の直径を大きくして、ランナー6を安定した状態で走行させることができる。しかし、ローラー軸16が傾斜しているため、小径ローラー18の周面の直径が大きくなるのに比例して、大径ローラー17の周面の直径が大きくなり、ガイドレール2の内部に入りきれなくなる。こうした不具合を避けるために、この実施例では、大径ローラー17の周面の大径端側の直径寸法を、ガイドレール2の内法高さ寸法(18mm)
の約88%にしている。また、小径ローラー18の周面の大径端側の直径は、大径ローラー17の周面の大径端側の直径の約66%とした。
【0043】
図1に示すように、定常状態において走行移動しているときのランナー6は、基本的に手前側の大径ローラー17と奥側の大径ローラー17のローラー周面17aが前後の第1レール壁11の上面で支持された状態で左右移動する。ランナー6が左右移動するときの、一対の大径ローラー17・17は傾斜中心軸回りに回転するため、第1レール壁11に対して常に均一な状態で転動しようとする自己調心作用を発揮する。その結果、水平のランナー軸で支持された円形のローラーが水平のレール壁を転動する従来構造のランナーに比べて、ランナー6の直進性を向上して走行特性を安定化できる。
【0044】
左右一対の大径ローラー17が第1レール壁11に沿って走行移動するときのランナー6の移動をより軽快に行うために、前後の小径ローラー18のローラー周面18aと前後の第2レール壁12は、
図1に示すようにクリアランス(遊動隙間)C1(0.2mm)を間にして対向しており、第1レール壁11の上面からも離れているので、小径ローラー18が回転することはない。同様の理由で、大径ローラー17および小径ローラー18のローラー周面17a・18aとレール本体10の前後壁10a・10bは、僅かなクリアランス(遊動隙間)C2(0.2mm)を間にして対向している。クリアランスC1・C2は、大径ローラー17が第1レール壁11で適正に支持された状態における隙間寸法である。
【0045】
因みに、上記のようなクリアランスC1・C2が設けられていない場合には、2個の大径ローラー17と2個の小径ローラー18が同時に逆向きに異なる回転数で回転するので、ランナー6の走行抵抗が急激に増加し、走行騒音が大きくなる。走行移動するときのランナー6は、戸パネルPに作用する外力を受けて前後に揺れ動き、左右に揺れ動き、あるいは吊持軸19を中心にして揺れ動こうとする。しかし、上記のように構成したランナー6によれば、先のような3次元方向の揺れ動きを規制して、安定した走行特性を発揮できる。
【0046】
例えば、戸パネルPを折畳んだ状態では、戸パネルPの殆どがガイドレール2の真下の垂直平面よりも前方へ突出するため、ランナー6には吊持軸19の中心軸線Qが前傾する向きのモーメントが生じる。また、吊持軸19の中心軸線Qが垂直線に対して前側へ傾動し始めると、
図7(a)に示すように、手前側の大径ローラー17のローラー周面17aが後側の第1レール壁11の上面から浮き離れ、さらに手前側の小径ローラー18のローラー周面18aが前側の第2レール壁12の下面から離れる向きに傾動する。しかし、奥側の大径ローラー17のローラー周面17aは前側の第1レール壁11の上面で支持されたままであり、さらに、吊持軸19の中心軸線Qが垂直線に対して前側へ傾動し始めた直後には、奥側の小径ローラー18のローラー周面18aが、クリアランスC1の分だけ僅かに傾動して後側の第2レール壁12の下面で受止められる。そのため、ランナー本体15および吊持軸19が、先のクリアランスC1を越えて前側へ傾動することはない。このとき奥側の大径ローラー17は、奥側の小径ローラー18が傾動した分だけ前側へ傾動するが、前側の第2レール壁12に接当することはない。上記の吊持軸19の傾動角度は2度である。
【0047】
戸パネルPの後面側に人がもたれ掛ったような場合のランナー6には、吊持軸19の中心軸線Qが後傾する向きのモーメントが生じる。そして、
図7(b)に示すように吊持軸19の中心軸線Qが垂直線に対して後側へ傾動し始めた直後には、手前側の大径ローラー17のローラー周面17aが後側の第1レール壁11の上面で支持され、さらに、手前側の小径ローラー18のローラー周面18aが、クリアランスC1の分だけ僅かに傾動して前側の第2レール壁12の下面で受止められる。そのため、上記と同様に、ランナー本体15および吊持軸19が、先のクリアランスC1を越えて後側へ傾動することはない。このとき手前側の大径ローラー17は、手前側の小径ローラー18が傾動した分だけ後側へ傾動するが、後側の第2レール壁12に接当することはない。以上のように、ランナー6が前後いずれかへ傾動する場合には、左右いずれか一方の小径ローラー18を第2レール壁12で受け止めて、外力を受けたランナー本体15が、先のクリアランスC1を越えて前後へ揺れ動くのを第2レール壁12で規制することができる。
【0048】
戸パネルPが折畳まれた状態で左右に急開閉される場合には、
図8(a)に示すように吊持軸19の中心軸線Qが垂直線に対して右側へ傾動することがある。その場合には、左側の大径ローラー17のローラー周面17aが後側の第1レール壁11の上面から浮き離れる。しかし、左側の大径ローラー17が第1レール壁11の上面から浮き離れるのと同時に、左側の小径ローラー18aのローラー周面18aが、クリアランスC1の分だけ僅かに傾動して前側の第2レール壁12の下面で受止められる。そのため、ランナー本体15および吊持軸19がそれ以上右側へ傾動することはない。
【0049】
上記の場合とは逆に、吊持軸19の中心軸線Qが垂直線に対して右側へ傾動することがある。その場合には
図8(b)に示すように、右側の大径ローラー17のローラー周面17aが前側の第1レール壁11の上面から浮き離れる。しかし、右側の大径ローラー17が第1レール壁11の上面から浮き離れるのと同時に、右側の小径ローラー18aのローラー周面18aが、クリアランスC1の分だけ僅かに傾動して前側の第2レール壁12の下面で受止められる。そのため、ランナー本体15および吊持軸19がそれ以上左側へ傾動することはない。従って、外力を受けたランナー本体15および吊持軸19が、クリアランスC1を越えて左右へ揺れ動くのを第2レール壁12で規制することができる。
【0050】
戸パネルPが全閉状態にあるとき把手5を急に開放操作すると、
図9(a)に示すようにランナー本体15が吊持軸19を中心にして時計回転方向へ傾動することがある。その場合には、左側の大径ローラー17のローラー周面17aの大径端側の周縁が、クリアランスC2の分だけ僅かに後向きに傾動して、後側の第1レール壁11の基端隅部に臨むレール本体10の後壁10bで受止められる。同時に、右側の大径ローラー17のローラー周面17aの周縁が、クリアランスC2の分だけ僅かに前向きに傾動して、前側の第1レール壁11の基端隅部に臨むレール本体10の前壁10aで受止められる。そのため、ランナー本体15がそれ以上時計回転方向へ傾動することはない。
【0051】
上記の場合とは逆に、
図9(b)に示すようにランナー本体15が吊持軸19を中心にして反時計回転方向へ傾動した場合には、左側の小径ローラー18のローラー周面18abの大径端側の周縁が、クリアランスC2の分だけ僅かに前向きに傾動して、前側の第2レール壁12の基端隅部に臨むレール本体10の前壁10aで受止められる。同時に、右側の小径ローラー18のローラー周面18aの周縁が、クリアランスC2の分だけ僅かに後向きに傾動して、後側の第2レール壁12の基端隅部に臨むレール本体10の後壁10bで受止められる。そのため、ランナー本体15がそれ以上反時計回転方向へ傾動することはない。従って、外力を受けたランナー本体15が、吊持軸19の回りにクリアランスC2を越えて時計回転方向、あるいは反時計回転方向へ揺れ動くのを、第1レール壁11と第2レール壁12の基端隅部に臨むレール本体10の前後壁10a・10bで規制して、ランナー6が蛇行するのを解消できる。
【0052】
以上説明したように、ランナー6は適正な姿勢で走行移動する場合はもちろん、ランナー本体15が3次元方向へ傾動した状態で走行移動しようとした場合でも、4個のローラー17・18のうち必ず2個のローラーを第1・第2のレール壁11・12で移行案内して、ランナー6がクリアランスC1・C2を越えて揺れ動くのを規制できる。従って、戸パネルPを開閉し、あるいは折畳んだ状態のまま左右移動する場合でも、ランナー6は常に安定した走行特性を発揮して戸パネルPを整然と開閉し、整然と左右移動できる。また、揺れ動きに伴うがたつき音の発生を抑止できるので、静粛性に優れた戸パネルの支持構造を提供することができる。
【0053】
(実施例2)
図10に本発明に係る戸パネルの支持構造の実施例2を示す。そこでは、ガイドレール2の前後の第1レール壁11および前後の第2レール壁12を、それぞれローラー軸16の傾斜角度と一致する状態で、互いに逆向きに傾斜する状態で傾斜させるようにした。また、大径ローラー17および小径ローラー18は、それぞれ円形ローラー状に形成して、円弧面からなるローラー周面17a・18aを備えるようにした。大径ローラー17と小径ローラー18は、ランナー本体15を間にして背中合わせ状に隣接する状態でローラー軸16に支持されるようにした。他は実施例1と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
【0054】
実施例2の戸パネルの支持構造によれば、傾斜中心軸回りに回転する一対の大径ローラー17・17が、第1レール壁11に対して常に均一な状態で転動しようとする自己調心作用を発揮できる。その結果、実施例1のランナー6と同様に、水平のランナー軸で支持された円形のローラーが水平のレール壁を転動する従来構造のランナーに比べて、ランナー6の直進性を向上して走行特性を安定化できる。なお、実施例2において、ガイドレール2の前後の第1レール壁11および前後の第2レール壁12が、それぞれ水平に形成してある場合にも、一対の大径ローラー17・17は自己調心作用を発揮する。しかし、その場合には、大径ローラー17と第1レール壁11が点接触状に接触するため、ランナー6が前後にふらつきやすくなる。
【0055】
上記以外に、本発明に係る戸パネルの支持構造は、折り戸以外に引戸や回転ドアなどに適用することができる。また、吊持対象の戸パネルPの重量が大きくなる場合には、ガイドレール2およびランナー6も大きく形成する必要があるが、そうした場合には、小径ローラー18が大径ローラー17と同様に、ローラー軸16に装着したベアリング23で回転自在に支持してあってもよい。必要があれば、ランナー6は引戸や回転ドアの戸車として使用することができ、その場合にも、ランナー6は常に安定した走行特性を発揮して戸パネルPを整然と開閉し、整然と左右移動できる。
【0056】
戸パネルPをガイドレール2に吊込んだ状態において、隣接する戸パネルPどうしが前後あるいは上下に位置ずれしていることがある。こうした戸パネルPの前後あるいは上下の位置ずれを調整するために、ランナー本体15と吊持軸19の間に前後調整構造や、上下調整構造を設けておくことができる。
【符号の説明】
【0057】
2 ガイドレール
6 ランナー
10 レール本体
10a レール本体の前壁
10b レール本体の後壁
11 第1レール壁
12 第2レール壁
15 ランナー本体
16 ローラー軸
17 大径ローラー
17a (17の)ローラー周面
18 小径ローラー
18a (18の)ローラー周面
19 吊持軸
20 (17用の)収容部
21 (18用の)収容部
22 中央壁
P 戸パネル
C1 クリアランス
C2 クリアランス