IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人金沢工業大学の特許一覧

特許7060867生体磁気計測装置及び生体磁気計測システム
<>
  • 特許-生体磁気計測装置及び生体磁気計測システム 図1
  • 特許-生体磁気計測装置及び生体磁気計測システム 図2
  • 特許-生体磁気計測装置及び生体磁気計測システム 図3
  • 特許-生体磁気計測装置及び生体磁気計測システム 図4
  • 特許-生体磁気計測装置及び生体磁気計測システム 図5
  • 特許-生体磁気計測装置及び生体磁気計測システム 図6
  • 特許-生体磁気計測装置及び生体磁気計測システム 図7
  • 特許-生体磁気計測装置及び生体磁気計測システム 図8
  • 特許-生体磁気計測装置及び生体磁気計測システム 図9
  • 特許-生体磁気計測装置及び生体磁気計測システム 図10
  • 特許-生体磁気計測装置及び生体磁気計測システム 図11
  • 特許-生体磁気計測装置及び生体磁気計測システム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】生体磁気計測装置及び生体磁気計測システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/243 20210101AFI20220420BHJP
【FI】
A61B5/243
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018021056
(22)【出願日】2018-02-08
(65)【公開番号】P2019136240
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】足立 善昭
【審査官】樋口 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-051169(JP,A)
【文献】特開平10-295662(JP,A)
【文献】特開2001-104268(JP,A)
【文献】特開2016-221184(JP,A)
【文献】特開平11-089810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体が発生する磁場を検出可能な複数の磁気センサを含む、長方形状の領域の磁気センサアレイと、
前記複数の磁気センサの各々によって検出された磁場に基づいて、前記磁気センサアレイによって観測される観測領域の磁場分布を計測する計測手段とを含み、
前記磁気センサは、前記磁場を検出可能な検出コイルを備え、
前記磁気センサアレイは、前記長方形状の長手方向に垂直に設けられた複数の領域に分割され、
前記複数の領域ごとに、当該領域に含まれる磁気センサに備わる検出コイルの径の大きさが異なり、前記長方形状の短辺側に設けられた領域に含まれる磁気センサに備わる検出コイルの径は、前記長手方向の中央部分に設けられた領域に含まれる磁気センサに備わる検出コイルの径と比べて、前記中央部分から前記短辺側に向かうにつれて段階的に大きくなることを特徴とする生体磁気計測装置。
【請求項2】
生体が発生する磁場を検出可能な複数の磁気センサを含む、円形状の磁気センサアレイと、
前記複数の磁気センサの各々によって検出された磁場に基づいて、前記磁気センサアレイによって観測される観測領域の磁場分布を計測する計測手段とを含み、
前記磁気センサは、前記磁場を検出可能な検出コイルを備え、
前記磁気センサアレイは、前記円形状において同心円状に設けられた複数の領域に分割され、
前記複数の領域ごとに、当該領域に含まれる磁気センサに備わる検出コイルの径の大きさが異なり、前記検出コイルの径は、前記円形状の中心に近づくにつれ、段階的に大きく又は小さくなることを特徴とする生体磁気計測装置。
【請求項3】
前記検出コイルは、法線方向の磁場を検出する第1コイルと、接線方向の磁場を検出する第2コイルとを含み、
前記複数の領域ごとに、前記第1コイルの径及び前記第2コイルの径の少なくとも一方の大きさが異なることを特徴とする請求項1または2に記載の生体磁気計測装置。
【請求項4】
前記検出コイルは、法線方向の磁場を検出する第1コイルと、接線方向の磁場を検出する第2コイルとを含み、
前記複数の領域ごとに、前記第1コイルの径及び前記第2コイルの径の両方の大きさが異なることを特徴とする請求項1または2に記載の生体磁気計測装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の生体磁気計測装置と、
磁気シールドルームと、
前記磁気シールドルームの外部に設置された極低温冷凍機と、
前記磁気シールドルームの内部に設置されたクライオスタットと、
前記磁気シールドルームを貫通し、前記極低温冷凍機と前記クライオスタットとの間でヘリウムの流路を形成するトランスファチューブと、
を備え、
前記磁気センサアレイに含まれる複数の磁気センサは、前記クライオスタットに収容され前記ヘリウムで冷却される生体磁気計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は生体磁気計測装置及び生体磁気計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人間等の生体が発生する磁場を検出する技術が開発されていた。特許文献1には、複数の磁気センサを含む磁気センサアレイを用いて、心臓内に発生した電流に伴って発生する磁気を検出し、磁気センサアレイにより得られた多チャンネル心磁図の磁場波形を計測することによって、心磁図データを得る心磁図装置が開示されている。そして、特許文献1の磁気センサアレイは、同一の磁気センサ64個を8×8の格子状で等間隔に並べて構成されていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016―101264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、磁気センサは、検出コイルの径の大きさによって空間分解能及び磁場分解能が異なるところ、特許文献1に記載の磁気センサアレイのように、同一の磁気センサを等間隔に並べたのでは、単一の空間分解能及び磁場分解能でしか磁場波形を測定できず、柔軟な測定ができないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、高い空間分解能を必要とする測定と、高い磁場分解能を必要とする測定とを、1つの磁気センサアレイで可能とする生体磁気計測装置及び生体磁気計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態における生体磁気計測装置は、生体が発生する磁場を検出可能な複数の磁気センサを含む磁気センサアレイと、複数の磁気センサの各々によって検出された磁場に基づいて、磁気センサアレイによって観測される観測領域の磁場分布を計測する計測手段とを含み、磁気センサは、磁場を検出可能な検出コイルを備え、磁気センサアレイは、複数の領域に分割され、複数の領域ごとに、当該領域に含まれる磁気センサに備わる検出コイルの径の大きさが異なることを特徴とする。
【0007】
本発明の一実施形態における生体磁気計測装置において、前記磁気センサアレイは、長方形状の領域であり、複数の領域は、長方形状の長手方向に垂直に設けられた複数の領域であり、複数の領域ごとに、当該領域に含まれる磁気センサに備わる検出コイルの径の大きさが異なることを特徴としてもよい。
【0008】
本発明の一実施形態における生体磁気計測装置において、複数の領域のうち、長方形状の短辺側に設けられた領域に含まれる磁気センサに備わる検出コイルの径が、長手方向の中央部分に設けられた領域に含まれる磁気センサに備わる検出コイルの径に比べて、大きいことを特徴としてもよい。
【0009】
本発明の一実施形態における生体磁気計測装置において、検出コイルの径は、長方形状の一の短辺側に配置された領域から、他の短辺側に配置された領域に近づくにつれ、段階的に小さくなることを特徴としてもよい。
【0010】
本発明の一実施形態における生体磁気計測装置において、磁気センサアレイは、円形状の領域であり、複数の領域は、円形状において同心円状に設けられた複数の領域であり、複数の領域ごとに、当該領域に含まれる磁気センサに備わる検出コイルの径の大きさが異なることを特徴としてもよい。
【0011】
本発明の一実施形態における生体磁気計測装置において、検出コイルの径は、円形状の中心に近づくにつれ、段階的に大きく又は小さくなることを特徴としてもよい。
【0012】
本発明の一実施形態における生体磁気計測装置において、検出コイルは、法線方向の磁場を検出する第1コイルと、接線方向の磁場を検出する第2コイルとを含み、複数の領域ごとに、第1コイルの径及び第2コイルの径の少なくとも一方の大きさが異なることを特徴としてもよい。
【0013】
本発明の一実施形態における生体磁気計測装置において、検出コイルは、法線方向の磁場を検出する第1コイルと、接線方向の磁場を検出する第2コイルとを含み、複数の領域ごとに、第1コイルの径及び第2コイルの径の両方の大きさが異なることを特徴としてもよい。
【0014】
本発明の一実施形態における生体磁気計測システムは、磁気シールドルームと、磁気シールドルームの外部に設置された極低温冷凍機と、磁気シールドルームの内部に設置されたクライオスタットと、磁気シールドルームを貫通し、極低温冷凍機とクライオスタットとの間でヘリウムの流路を形成するトランスファチューブと、クライオスタットに収容され、ヘリウムで冷却される複数の磁気センサを含む磁気センサアレイとを備え、磁気センサは、磁場を検出可能な検出コイルを備え、磁気センサアレイは、複数の領域に分割され、複数の領域ごとに、当該領域に含まれる磁気センサに備わる検出コイルの径の大きさが異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、領域ごとに磁気を検出する検出コイルの径の大きさを異なるものとすることによって、高い空間分解能を必要とする測定と、高い磁場分解能を必要とする測定とを、1つの磁気センサアレイで可能とする生体磁気計測装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態における、生体磁気計測システムの全体構成を模式的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態における、生体磁気計測装置の機能構成を模式的に示す図である。
図3】本発明の一実施形態における、磁気センサアレイの構成例を示す図である。
図4】磁気センサの検出コイルの径と、当該検出コイルの面積と、当該検出コイルの分解能とを対応付けた表である。
図5】生体の複数の部位における、磁場分布の状況を説明するためのグラフである。
図6】本発明の一実施形態における、磁気センサアレイの他の構成例を示す図である。
図7】本発明の一実施形態における、磁気センサアレイの他の構成例を示す図である。
図8】本発明の一実施形態における、磁気センサに含まれる検出コイルの構成例を示す図である。
図9】本発明の一実施形態における、磁気センサアレイの他の構成例を示す図である。
図10】本発明の一実施形態の変形例における、磁気センサの構成例を示す図である。
図11】本発明の一実施形態の変形例における、磁気センサアレイの構成例を示す図である。
図12】本発明の一実施形態の変形例における、磁気センサアレイの他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。本発明の一実施形態における生体磁気計測システム1について説明する。
【0018】
(生体磁気計測システムの全体構成)
図1は、本発明の一実施形態における、生体磁気計測システム1の全体構成を模式的に示す図である。本発明の一実施形態における生体磁気計測システム1は、磁気シールドルーム10、極低温冷凍機20、クライオスタット30、トランスファチューブ40、ガントリ50、架台60、接続部80を含む。ここで、クライオスタット30、ガントリ50、および接続部80は、磁気シールドルーム10の内部に設置されている。また極低温冷凍機20と架台60とは磁気シールドルーム10の外部に設置されている。極低温冷凍機20は、例えば既知の4Kパルスチューブ冷凍機を用いて実現できる。
【0019】
トランスファチューブ40は磁気シールドルーム10を貫通し、極低温冷凍機20とクライオスタット30とのそれぞれに接続されている。より具体的には、トランスファチューブ40は極低温冷凍機20とは直接接続され、クライオスタット30とは接続部80を介して接続されている。
【0020】
磁気シールドルーム10の内部には、被験者70が横臥するための台90も設置されている。図1に示すように、クライオスタット30の一部は被験者70の腰椎の位置まで延在しており、台90の機能も兼ねている。図1に例示するように、クライオスタット30には磁気センサアレイ32が収容される。なお図示しないが、生体磁気計測システム1には、磁気センサによって測定されたデータを解析したり、磁気センサの動作を制御したりする計測手段も備えられている。例えば、計測手段は、複数の磁気センサの各々によって検出された磁場に基づいて、磁気センサアレイによって観測される観測領域の磁場分布を計測することができる。なお、本発明の一実施形態において、磁気センサアレイ32と、計測手段とを含めて、生体磁気計測装置とする。
【0021】
図1では、図中鉛直上方向をz軸、図中左から右に向かう方向をx軸、x軸とz軸とに垂直なy軸からなる右手座標系2が設定されている。以下本明細書で参照する他の図に示す右手座標系2も、図1に示す右手座標系2と同一である。
【0022】
(生体磁気計測システムの機能構成)
図2は、本発明の一実施形態における生体磁気計測システムの機能構成を模式的に示す図である。また、図2は、生体磁気計測システム1における計測機能を主に説明する図である。図2は、図1に示す生体磁気計測システム1を右手座標系2のyz平面に対して垂直な方向から見た図である。
【0023】
図1を参照して説明したように、磁気シールドルーム10の内部において被験者70が台90の上に横臥している。磁気センサアレイ32は、被験者70の腰椎の位置に来るようにクライオスタット30に収容されている。磁気センサアレイ32は、例えば既知のSQUID(Superconducting QUantum Interference Device)を用いて実現できる。
【0024】
情報処理部12は、生体磁気計測システム1における計測機能を統括的に制御する。情報処理部12はまた、生体磁気計測システム1が計測した生体磁気データを解析する。情報処理部12は、例えばPC(Personal Computer)やワークステーション等の計算機を用いて実現できる。磁気センサ駆動回路14は、情報処理部12の制御の下、磁気センサアレイ32の動作を制御する。アンプ/アナログフィルタ部16は、磁気センサアレイ32が計測した生体磁気データを増幅したり、ノイズを除去したりする。データ取得部18は、アンプ/アナログフィルタ部16が処理したデータをデジタルデータに変換する。データ取得部18は、例えば既知のA/D変換器を用いて実現できる。データ取得部18が取得したデータは情報処理部12に送られ、種々の解析が実行される。
【0025】
このように、本発明の一実施形態における生体磁気計測システム1は、被験者70の体内で生じる生体磁場を計測するための装置である。被験者70の性別や体格等に応じて磁気センサアレイ32を配置すべき位置が異なるため、磁気センサアレイ32はある程度位置を変えられることが好ましい。一方で、上述したように、磁気センサアレイ32は例えばSQUIDセンサを用いて実現される。SQUIDセンサは超伝導体を利用した磁気センサであるため、センサとして機能するためには極低温(例えば4K)まで冷却される必要がある。このため、磁気センサアレイ32は液体ヘリウムを貯留するクライオスタット30に収容されている。そして、磁気センサアレイ32はクライオスタット30が貯留する液体ヘリウムによって冷却される。
【0026】
(磁気センサアレイの構成)
図3は、本発明の一実施形態における、磁気センサアレイ32の構成例を示す図である。図3は、磁気センサアレイ32を上部から観察した場合の構成例を、平面図として示したものである。図3に例示するように、磁気センサアレイ32は、複数の磁気センサ320を含む。複数の磁気センサ320の各々は、生体が発生する磁場を検出可能である。具体的には、磁気センサ320は、生体の発する電気信号によって発生した磁場を検出可能である。磁気センサ320は、例えば、超電導材料が好適に用いられる。超伝導材料としては、例えば、Nb(ニオブ)を用いることができるが、Nbに限定されず、どのような超電導材料であってもよい。
【0027】
本発明の一実施形態における磁気センサ320は、磁場を検出する検出コイルを備える。そして、磁気センサアレイ32は、検出コイルの径の大きさが互いに異なる複数種類の磁気センサ320を含む。図3に例示するように、例えば、磁気センサアレイ32は、検出コイルの径が第1の大きさである磁気センサ320Aと、検出コイルの径が第2の大きさである磁気センサ320Bと、検出コイルの径が第3の大きさである磁気センサ320Cとを含む。なお、磁気センサアレイ32には、検出コイルの径の大きさが互いに異なる複数種類の磁気センサ320が含まれていればよく、図3のように3種類に限られるわけではない。また、磁気センサ320に備わる検出コイルの径の大きさは、好適には5[mm]~60[mm]であるが、これらの範囲に限られる必要はなく、どのような大きさであってもよい。
【0028】
図4は、磁気センサ320の検出コイルの径と、当該検出コイルの面積と、当該検出コイルの分解能と、を対応付けた表である。図4に示すように、磁気センサ320は、検出コイルの径が大きいほど磁場分解能が高く、小さな磁場を検出することが可能となる。例えば、径が16[mm]の検出コイルは、その磁場分解能が2.7[fT/Hz1/2]であるのに対して、径が20[mm]の検出コイルは、その磁場分解能が2.0[fT/Hz1/2]となり、径が大きい方が磁場分解能は高くなる。
【0029】
一方、検出コイルの径が小さいと、径が大きい場合に比べて、単位面積あたりに配置できる検出コイルの数(すなわち、磁気センサ320の数)が多くなる。その結果、検出コイルの径が小さい場合の方が、大きい場合に比べて、より多くの検出コイルによって空間の磁場分布を検出でき、きめ細やかな磁場分布の検出が可能である。すなわち、検出コイルの径が小さいほど空間分解能が高くなる。
【0030】
図5は、生体の複数の部位における、磁場分布の状況を説明するためのグラフである。図5に示すように、体表から磁場源までの距離が短い(浅い)“手掌”は、磁場分布の範囲が狭い。これに対して、体表から磁場源までの距離が長い(深い)“腰椎部”や“頚部”は、磁場分布の範囲が広い。すなわち、体表から磁場源までの距離が短い(浅い)ほど、径が小さい検出コイルを備える磁気センサ320を用いて、検出すべきである。
【0031】
一方、図5に示すように、体表から磁場源までの距離が長い(深い)“腰椎部”や“頚部”は、体表から磁場源までの距離が短い(浅い)“手掌”に比べて、磁場の大きさが小さい。そのため、体表から磁場源までの距離が長い(深い)ほど、径が大きい検出コイルを備える磁気センサ320を用いて、検出すべきである。
【0032】
しかしながら、従来の磁気センサアレイに含まれる複数の検出センサの各々が備える検出コイルの径の大きさは同一であって、単一の空間分解能及び磁場分解能でしか磁場波形を測定できない。そのため、1つの磁気センサアレイでは、体表から磁場源までの距離が長い(深い)部位と、体表から磁場源までの距離が短い(浅い)部位との両方を観察することが困難であった。そのため、最適な観測のためには観察する部位に応じて、適切な径の検出コイルを備える磁気センサを含む磁気センサアレイに取り換える必要があった。
【0033】
ここで、本発明の一実施形態における生体磁気計測システム1において、磁気センサアレイ32は、液体ヘリウムによって冷却しなければならない。そのため、磁気センサアレイ32が収容されるクライオスタット30は、液体ヘリウムを貯留可能なように構成されており、構造が複雑かつ重厚である。また、クライオスタット30には、通常、液体ヘリウムが貯留されている。このようなクライオスタット30に対して、磁気センサアレイ32を取り付けたり(収容したり)、取り出したりすることは容易ではない。そのため、できる限り磁気センサアレイ32を取り換える必要がないように、1つの磁気センサアレイによって、複数の部位の磁場を観察可能にすることが望ましい。
【0034】
そこで、本発明の一実施形態における生体磁気計測システム1において、磁気センサアレイは、検出コイルの径が互いに異なる複数種類の磁気センサを含む。そして、磁気センサアレイによって観察される観測領域は、複数の領域に分割され、当該複数の領域ごとに、当該領域に含まれる磁気センサに備わる検出コイルの径の大きさを異なるものとする。その結果、磁気センサアレイの一の部分は、検出コイルの径の小さい磁気センサが含まれ、他の部分には、検出コイルの径の大きい磁気センサが含まれるようになる。そのため、体表から磁場源までの距離が短い(浅い)部位を観察する場合には、磁気センサアレイのうち、検出コイルの径の小さい磁気センサが含まれる一の部分を用いることにより、空間分解能が高い磁気センサによって観察することができる。一方、体表から磁場源までの距離が長い(深い)部位を観察する場合には、磁気センサアレイのうち、検出コイルの径の大きい磁気センサが含まれる他の部分を用いることにより、磁場分解能が高い磁気センサによって観察することができる。
【0035】
図3に示すように、磁気センサアレイ32は、例えば長方形状であり、当該長方形状が複数の領域に分割されている。そして、当該複数の領域は、当該長方形状の長手方向に垂直に設けられており、複数の領域ごとに、当該領域に含まれる磁気センサ320に備わる検出コイルの径の大きさが異なる。例えば、複数の領域のうち、磁気センサアレイ32の短辺側に設けられた領域(図3の例では、領域Aや領域H)に含まれる磁気センサ320Aに備わる検出コイルの径は、長手方向の中央部分に設けられた領域(図3の例では、領域Dや領域E)に含まれる磁気センサ320Cに備わる検出コイルの径に比べて、大きくなるように構成される。そのため、体表から磁場源までの距離が短い(浅い)部位を観察する場合には、磁気センサアレイ32のうち、検出コイルの径の小さい磁気センサ320Cが含まれる領域Dや領域Eを用いることにより、空間分解能が高い磁気センサによって観察可能となる。一方、体表から磁場源までの距離が長い(深い)部位を観察する場合には、磁気センサアレイ32のうち、検出コイルの径の大きい磁気センサ320Aが含まれる領域Aや領域Hを用いることにより、磁場分解能が高い磁気センサによって観察可能となる。
【0036】
図6は、本発明の一実施形態における、磁気センサアレイ32の他の構成例を示す図である。図6は、磁気センサアレイ32を上部から観察した場合の構成例を、平面図として示したものである。
【0037】
図6に示すように、磁気センサアレイ32は、例えば長方形状であり、当該長方形状が複数の領域に分割されている。そして、当該複数の領域は、当該長方形状の長手方向に垂直に設けられており、複数の領域ごとに、当該領域に含まれる磁気センサ320に備わる検出コイルの径の大きさが異なる。例えば、磁気センサ320に備わる検出コイルの径は、磁気センサアレイ32の一の短辺側(図6の例では、短辺α側)に設けられた領域(図6の例では、領域H)から、他の短辺側(図6の例では、短辺β側)に配置された領域(図6の例では、領域A)に近づくにつれ、段階的に小さくなる。そのため、体表から磁場源までの距離が短い(浅い)部位を観察する場合には、磁気センサアレイ32のうち、検出コイルの径の小さい磁気センサ320が含まれる領域Aや領域Bを用いることにより、空間分解能が高い磁気センサによって観察可能となる。一方、体表から磁場源までの距離が長い(深い)部位を観察する場合には、磁気センサアレイ32のうち、検出コイルの径の大きい磁気センサ320が含まれる領域Gや領域Hを用いることにより、磁場分解能が高い磁気センサによって観察可能となる。
【0038】
図7は、本発明の一実施形態における、磁気センサアレイ32の他の構成例を示す図である。図7は、磁気センサアレイ32を上部から観察した場合の構成例を、平面図として示したものである。
【0039】
図7に示すように、磁気センサアレイ32は、例えば円形状であり、当該円形状が複数の領域に分割されている。そして、当該複数の領域は、当該円形状において同心円状に設けられており、複数の領域ごとに、当該領域に含まれる磁気センサ320に備わる検出コイルの径の大きさが異なる。例えば、磁気センサ320に備わる検出コイルの径は、円形状の中心に近づくにつれ、段階的に小さくなる。そのため、体表から磁場源までの距離が短い(浅い)部位を観察する場合には、磁気センサアレイ32のうち、検出コイルの径の小さい磁気センサが含まれる領域Cや領域Dを用いることにより、空間分解能が高い磁気センサによって観察可能となる。一方、体表から磁場源までの距離が長い(深い)部位を観察する場合には、磁気センサアレイ32のうち、検出コイルの径の大きい磁気センサ320が含まれる領域Aを用いることにより、磁場分解能が高い磁気センサによって観察可能となる。なお、磁気センサに備わる検出コイルの径は、円形状の中心に近づくにつれ、段階的に大きくなるものであってもよい。
【0040】
図8は、本発明の一実施形態における、磁気センサに含まれる検出コイルの構成例を示す図である。図8は、磁気センサ320が、法線方向の磁場を検出する第1コイル321に加えて、接線方向の磁場を検出する第2コイル(図8の例では、検出コイル322又は検出コイル323)を含む場合の例である。
【0041】
図8に示すように、磁気センサ320は、法線方向の磁場を検出する第1コイル321を含み、法線方向(Z方向)の磁場を検出可能である。また、磁気センサ320は、第2コイルとして検出コイル322を含み、接線方向(X方向)の磁場を検出可能である。また、磁気センサは、第2コイルとして検出コイル323を含み、接線方向(Y方向)の磁場を検出可能である。
【0042】
図9は、本発明の一実施形態における、磁気センサアレイ32の他の構成例を示す図である。図9は、磁気センサアレイ32を一方向から観察した場合の構成例を、模式図として示したものである。
【0043】
図9に示すように、磁気センサアレイ32は、複数の領域に分割されている。そして、当該複数の領域ごとに、当該領域に含まれる磁気センサ320に備わる第1コイル(法線方向の磁場を検出する検出コイル)の径の大きさが異なる。また、複数の領域ごとに、当該領域に含まれる磁気センサ320に備わる第2コイル(接線方向の磁場を検出する検出コイル)の径の大きさも異なる。例えば、磁気センサ320に備わる第1コイル及び第2コイルの径は、例えば、複数の領域のうち、磁気センサアレイ32の短辺側に設けられた領域(図9の例では、領域Aや領域H)では相対的に大きく構成され、磁気センサアレイ32の長手方向の中央部分に設けられた領域(図9の例では、領域Dや領域E)では相対的に小さく構成される。そのため、体表から磁場源までの距離が短い(浅い)部位を観察する場合には、磁気センサアレイ32のうち、第1コイル及び第2コイルの径の小さい磁気センサ320が含まれる領域Dや領域Eを用いることにより、空間分解能が高い磁気センサによって観察可能となる。一方、体表から磁場源までの距離が長い(深い)部位を観察する場合には、磁気センサアレイ32のうち、第1コイル及び第2コイルの径の大きい磁気センサ320が含まれる領域Aや領域Hを用いることにより、磁場分解能が高い磁気センサによって観察可能となる。
【0044】
なお、第1コイル及び第2コイルの径は、それぞれ異なるものであってもよい。また、磁気センサアレイ32において、第1コイル及び第2コイルの径のいずれか一方が、複数の領域の各々において異なるものとなるように構成してもよい。さらに、第2コイルには、X軸方向とY軸方向の2つの検出コイル(図8の例では、検出コイル322と検出コイル323の2つの検出コイル)が含まれるが、これら2つの検出コイルの径は同じものであることが望ましいものの、必ずしも同じである必要はなく、いずれか一方が複数の領域の各々において異なるものとなるように構成してもよい。
【0045】
上記のように、本発明の一実施形態における生体磁気計測システムは、磁気センサアレイに含まれる複数の磁気センサに備わる検出コイルの径の大きさが、当該磁気センサアレイを複数に分割した領域ごとに異なるものであるため、観察する部位に応じて、当該観察に用いる領域を変更することによって、1つの磁気センサアレイで、高い空間分解能を必要とする測定と、高い磁場分解能を必要とする測定とが可能となる。
【0046】
(変形例)
本発明の一実施形態の変形例は、生体磁気計測システムに含まれる磁気センサアレイが、常温で使用可能な磁気センサを含む場合の例である。
【0047】
図10は、本発明の一実施形態の変形例における、磁気センサ330の構成例を示す図である。図10の例は、磁気センサ330を一方向から観察した場合の構成例を、平面図として示したものである。図10に例示するように、磁気センサ330は、磁気ガイド331と、磁気検出部332を含む。磁気ガイド331は、高透磁率材料で構成されており、図10に例示する検出コイルと同様の機能を備える。また、磁気検出部332は、磁気を検出可能な磁気抵抗素子やホール素子などで構成され、生体の発する電気信号によって発生した磁場を検出することができる。磁気ガイドは検出コイルと同様の機能を備えるため、比較的大きな磁気ガイドは高い磁場分解能を与え、小さな磁場を検出できるが、空間分解能は犠牲になり、比較的小さな磁気ガイドは高い空間磁場分解能を与え、空間的な細かい変化を観測できるが、磁場分解能が犠牲になる。
【0048】
図11は、本発明の一実施形態の変形例における、磁気センサアレイ32の構成例を示す図である。図11は、磁気センサアレイ32を一方向から観察した場合の構成例を、平面図として示したものである。
【0049】
図11に示すように、磁気センサアレイ32は、複数の領域に分割されている。そして、当該複数の領域ごとに、当該領域に含まれる磁気センサ330に備わる磁気ガイド331の大きさが異なる。例えば、磁気センサ330に備わる磁気ガイド331の径は、例えば、複数の領域のうち、磁気センサアレイ32の短辺側に設けられた領域(図11の例では、領域Aや領域B、領域I、領域J)では相対的に大きく構成され、磁気センサアレイ32の長手方向の中央部分に設けられた領域(図11の例では、領域Eや領域F)では相対的に小さく構成される。そのため、体表から磁場源までの距離が短い(浅い)部位を観察する場合には、磁気センサアレイ32のうち、磁気ガイド331の径の小さい磁気センサ330が含まれる領域Eや領域Fを用いることにより、空間分解能が高い磁気センサによって観察可能となる。一方、体表から磁場源までの距離が長い(深い)部位を観察する場合には、磁気センサアレイ32のうち、磁気ガイド331の径の大きい磁気センサ330が含まれる領域Aや領域B、領域I、領域Jを用いることにより、磁場分解能が高い磁気センサによって観察可能となる。
【0050】
図12は、本発明の一実施形態の変形例における、磁気センサアレイ32の他の構成例を示す図である。図12は、立体的な磁気センサアレイ32を、一方向から観察した場合の構成例を、平面図として示したものである。図12の磁気センサアレイ32は、例えば、ヘルメット型の磁気センサアレイ32であって、全頭型脳磁計として運用可能である。
【0051】
図12に示すように、磁気センサアレイ32は、複数の領域に分割され、当該複数の領域ごとに、当該領域に含まれる磁気センサ330に備わる磁気ガイド331の径の大きさが異なる。そのため、体表(頭表)から磁場源までの距離が短い(浅い)部位を観察したい領域(図12の例では、領域A)には、磁気ガイド331の径の小さい磁気センサを含ませることにより、空間分解能が高い磁気センサによって観察可能となる。一方、体表(頭表)から磁場源までの距離が長い(深い)部位を観察したい領域(図12の例では、領域Bなど)には、磁気センサアレイ32のうち、磁気ガイド331の径の大きい磁気センサ330を含ませることにより、磁場分解能が高い磁気センサによって観察可能となる。なお、図12に例示する磁気センサアレイ32は、室温センサに限られず、SQUIDを用いて実現できる。この場合、図12に例示する磁気センサアレイ32は、法線方向の磁場を検出する検出コイルを備える磁気センサ320であっても、図8に例示する法線方向の磁場を検出する第1コイル、及び、法線方向(Z方向)の磁場を検出する第2コイルの両方を備える磁気センサ320であってもよい。
【0052】
上記のように、本発明の一実施形態の実施例における生体磁気計測システムは、常温で使用可能な磁気センサアレイに含まれる複数の磁気センサに備わる磁気ガイドの径の大きさが、当該磁気センサアレイを複数に分割した領域ごとに異なるものであるため、観察する部位に応じて、当該観察に用いる領域を変更することによって、1つの磁気センサアレイで、高い空間分解能を必要とする測定と、高い磁場分解能を必要とする測定とが可能となる。
【0053】
以上、本発明を本発明の一実施形態をもとに説明した。本発明の一実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下そのような変形例を説明するが、上述した本発明の一実施形態における生体磁気計測システム1と共通する部分については、適宜省略または簡略化して説明する。
【符号の説明】
【0054】
1 生体磁気計測システム
2 右手座標系
10 磁気シールドルーム
12 情報処理部
14 磁気センサ駆動回路
16 アンプ/アナログフィルタ部
18 データ取得部
20 極低温冷凍機
30 クライオスタット
32 磁気センサアレイ
40 トランスファチューブ
50 ガントリ
60 架台
70 被験者
80 接続部
90 台
320、320A、320B、320C、330 磁気センサ
321 第1コイル
322、323 検出コイル(第2コイル)
331 磁気ガイド
332 磁気検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12