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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/24 20060101AFI20220420BHJP
   B23Q 3/157 20060101ALI20220420BHJP
   B23Q 3/155 20060101ALI20220420BHJP
   B23B 31/00 20060101ALI20220420BHJP
   B23B 29/24 20060101ALI20220420BHJP
   B23B 31/117 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
B23B31/24
B23Q3/157 W
B23Q3/155 G
B23B31/00 B
B23B29/24 Z
B23B31/117 601A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018081559
(22)【出願日】2018-04-20
(65)【公開番号】P2019188499
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000212566
【氏名又は名称】中村留精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088133
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100210295
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 誠心
(72)【発明者】
【氏名】冨沢 卓弥
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-011009(JP,A)
【文献】特開平10-043984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 19/02,29/24,
31/00-31/42,
B23Q 3/155-3/157
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の位置に移動可能なスライドと、スライドに対して旋回可能なテーブルと、テーブルの旋回軸に直交する割出中心軸周りに旋回可能なタレットステーションとを備え、
タレットステーションに、軸心に挿通したロッドの軸方向の進退動作により先端に装着された工具の固定及び固定解除を行う工具主軸ユニットが設けられ、
この工具主軸ユニットは、その一部が外部に露出しているプッシュ部材をロッドの軸方向の後方に有しており、工具の固定解除する場合に、プッシュ部材は、外部から押されることによって、ロッドの後端に当接し、ロッドを前進させるようになっており、
スライドに、プッシュ部材を押圧して前進させるピストンを有するシリンダユニットが設けられていることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
ロッド及びプッシュ部材は、ロッドの軸方向において、後に向かって付勢されており、
プッシュ部材の付勢に逆らう方向のストロークは、ロッドの付勢に逆らう方向のストロークより大きいことを特徴とする請求項1に記載の工作機械
【請求項3】
工具主軸ユニットは、タレットステーションから放射状に突出した状態で設けられおり、かつ、工具主軸ユニットの回転軸は、タレットステーションの割出中心軸と平行となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の工作機械。
【請求項4】
シリンダユニットのピストンのストロークは、工具主軸ユニットのプッシュ部材の付勢に逆らう方向のストロークよりも大きいことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の工作機械。
【請求項5】
任意の位置に移動可能なスライドと、スライドに対して旋回可能なテーブルと、テーブルの旋回軸に直交する割出中心軸周りに旋回可能なタレットステーションとを備え、
軸心に挿通したロッドの軸方向の進退動作により先端に装着された工具の固定及び固定解除を行う工具主軸ユニットがタレットステーションに設けられ、
スライドに、ロッドを押圧して前進させるピストンを有するシリンダユニットが設けられていることを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具を装着可能な工具主軸ユニットを有する工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工具主軸ユニットは、軸心に挿通したロッドの軸方向の進退動作により先端に装着された工具の固定及び固定解除を行う。
【0003】
このような工具主軸ユニットとして、特許文献1に示すものがある。
【0004】
特許文献1の工具主軸ユニットは、工具主軸ユニットの後端側に工具主軸ユニットと一体的に設けられていたシリンダユニットを工具主軸ユニットから分離して工具交換装置に固定する。
【0005】
工具主軸ユニットを搭載した刃物台が工具交換位置に移動したときに、工具主軸ユニットの後端と、シリンダユニットのピストンの先端とが同一軸線上で対向して位置するようにシリンダユニットを配置する。
【0006】
この工具主軸ユニットとシリンダユニットの配置で、ピストンが工具主軸ユニットのロッドを押すことによって、工具の固定解除を行うことができる。
【0007】
このような構成とすることにより、工具主軸ユニットは、小型化と軽量化を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-24125号公報h
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の工具主軸ユニットは、ハウジングに回転自在に軸支されている。工具主軸ユニットは、軸心に貫通孔を備え、この貫通孔に先端に係止具を形成したロッドが挿通されている。ロッドは、ハウジングの前方から挿入された工具のシャンクを引き込む方向に付勢されている。ロッドの後端は、ハウジングの後端に設けた開口に臨んでいる。ロッドは工具主軸ユニットと一体となって回転することとなる。
【0010】
また、特許文献1に記載の工作機械は、ロッドを工具の固定解除方向に押すシリンダユニットが工具交換装置に設けられている。ロッドを押す反力が工具交換装置に作用することとなる。
【0011】
ロットが臨む開口からの異物の侵入を防ぐために、回転するロッドを回転シールで封止する必要があるという問題がある。
【0012】
また、工具交換装置はこのロッドを押す反力に対して、十分な剛性を確保することが難しいという問題がある。
【0013】
そこで本発明は、小型化と軽量化を実現することに加えて、シリンダユニットに押される部材が回転シールによって封止する必要がない工具主軸ユニットを提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、シリンダユニットが押す動作によって生じる反力に対して、十分な剛性を有する工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、請求項1の工作機械は、任意の位置に移動可能なスライドと、スライドに対して旋回可能なテーブルと、テーブルの旋回軸に直交する割出中心軸周りに旋回可能なタレットステーションとを備え、タレットステーションに、軸心に挿通したロッドの軸方向の進退動作により先端に装着された工具の固定及び固定解除を行う工具主軸ユニットが設けられ、この工具主軸ユニットは、その一部が外部に露出しているプッシュ部材をロッドの軸方向の後方に有しており、工具の固定解除する場合に、プッシュ部材は、外部から押されることによって、ロッドの後端に当接し、ロッドを前進させるようになっており、スライドに、プッシュ部材を押圧して前進させるピストンを有するシリンダユニットが設けられている。
【0016】
請求項1の工作機械の工具主軸ユニットは、プッシュ部材の一部が外部に露出している。これにより、例えば、工具主軸ユニットとは別体のシリンダユニットがプッシュ部材を押すことによって、工具の固定解除することができる。シリンダユニットを工具主軸ユニットとは別体とすることにより、工具主軸ユニットの小型化及び軽量化を実現することができる。
【0017】
また、請求項1の工作機械の工具主軸ユニットは、ロッドは工具を固定した状態で工具と一体となって回転するようになっている。そして、工具の回転が止まり、工具を固定解除する場合に、プッシュ部材は、外部から押されることによって、ロッド後端に当接するようになっている。つまり、プッシュ部材は、工具と一体となって回転しているロッド後端と離間しているので、回転しない。したがって、プッシュ部材は、回転シールではなく、往復運動用シールで封止することができる。
【0018】
また、請求項の工作機械は、タレットステーションの旋回及びテーブルの旋回によって、工具主軸ユニットのプッシュ部材は、スライドに設けられたシリンダユニットと対向する位置に位置決め可能となっている。
【0019】
また、シリンダユニットのピストンがプッシュ部材を押圧すると、その反力はシリンダユニットが設けられている部材に作用することとなる。シリンダユニットが設けられている部材は、プッシュ部材を押圧する反力に対しての十分な剛性を有する必要がある。
【0020】
請求項の工作機械は、シリンダユニットがスライドに設けられている。スライドは、テーブル及びタレットステーションを支持し、かつ、高い切削反力に耐えうるだけの剛性を有している。したがって、シリンダユニットが設けられているスライドは、プッシュ部材を押す反力に対して十分な剛性を有する。
【0021】
工具の固定解除を行うために、タレットステーションに設けられている工具主軸ユニットに、旋回するテーブル又はタレットステーションを通して直接作動流体を供給する場合、構造が複雑となる。しかしながら、請求項の工作機械は、シリンダユニットがスライドに設けられているので、スライドにシリンダユニットを作動させるために作動流体を供給する構成とすればよい。そのため、請求項の工作機械は、構造が複雑化せず、組立性、信頼性、及びメンテナンス性の向上、並びに、コストの抑制を実現することができる。
【0022】
また、タレットステーションに作動流体を通すことにより、作動流体の温度によってタレットステーションに設けられた工具の刃先位置の精度が悪化する可能性がある。しかしながら、請求項の工作機械は、シリンダユニットがスライドに設けられているので、作動流体の温度がタレットステーションに設けられた工具の刃先位置の精度に悪影響を及ぼすことがない。
【0023】
請求項2の工作機械は、請求項1の工作機械において、ロッド及びプッシュ部材は、ロッドの軸方向において後に向かって付勢されており、ロッドの軸方向において、プッシュ部材の付勢に逆らう方向のストロークは、ロッドの付勢に逆らう方向のストロークより大きい。
【0024】
請求項2の工作機械の工具主軸ユニットは、ロッド及びプッシュ部材がロッドの軸方向において後に向かって付勢されていることによって、工具が固定され、プッシュ部材が外部から押されていない状態では、ロッド及びプッシュ部材がそれぞれ最も後方の位置となる。
【0025】
一方、請求項2の工作機械の工具主軸ユニットは、請求項1の工具主軸ユニットと同様に作用する上に、工具の固定解除するためにプッシュ部材が押されている状態では、プッシュ部材の付勢に逆らう方向のストロークの途中でプッシュ部材がロッドに当接する。
【0026】
請求項2の工作機械の工具主軸ユニットは、請求項1の工作機械の工具主軸ユニットと同様に作用する上に、それぞれの最も後方の位置において、ロッド及びプッシュ部材が確実に離間するとともに、外部から押されたプッシュ部材が確実にロッドを押すことができるようになっている。
【0027】
請求項の工作機械は、請求項1又は2の工作機械において、工具主軸ユニットは、タレットステーションから放射状に突出した状態で設けられおり、かつ、工具主軸ユニットの回転軸は、タレットステーションの割出中心軸と平行となっている。
【0028】
例えば、工作機械は、工作機械全体の小型化のため、例えば、2つの主軸にそれぞれチャックされたワークの端面間距離が短くなるなど、ワークの端面周辺の空間を制限がある場合がある。このような場合でも、請求項の工作機械は、請求項1又は2の工作機械の工具主軸ユニットと同様に作用する上に、スライドの移動、タレットステーションの割出中心軸周りの旋回、及び、テーブルの旋回によって、タレットステーションから放射状に突出した工具主軸ユニットを、ワーク端面間の加工位置に侵入移動させることができる。
【0029】
また、請求項3の工作機械は、工具主軸ユニットとシリンダユニットを分離したことによって、工具主軸ユニットの小型化を実現することができる。工具主軸ユニットの小型化は、ワークの端面間距離を近づけることができ、ひいては、工作機械全体の小型化を実現することができる。
【0030】
請求項の工作機械は、請求項1から3のいずれかの工作機械において、シリンダユニットのピストンのストロークは、工具主軸ユニットのプッシュ部材の付勢に逆らう方向のストロークよりも大きい。
【0031】
請求項の工作機械は、請求項1から3のいずれかの工作機械と同様に作用する上に、工具の固定解除する場合に、ピストン及びプッシュ部材が離間状態から、ピストンのストロークの途中でピストンがプッシュ部材に当接して確実にプッシュ部材を押すことができる状態となる。
【0032】
請求項の工作機械は、任意の位置に移動可能なスライドと、スライドに対して旋回可能なテーブルと、テーブルの旋回軸に直交する割出中心軸周りに旋回可能なタレットステーションとを備え、軸心に挿通したロッドの軸方向の進退動作により先端に装着された工具の固定及び固定解除を行う工具主軸ユニットがタレットステーションに設けられ、スライドに、ロッドを押圧して前進させるピストンを有するシリンダユニットが設けられている。
【0033】
請求項の工作機械は、タレットステーションの旋回及びテーブルの旋回によって、工具主軸ユニットのロッドは、スライドに設けられたシリンダユニットと対向する位置に位置決め可能となっている。
【0034】
請求項の工作機械は、シリンダユニットがスライドに設けられている。スライドは、テーブル及びタレットステーションを支持し、かつ、高い切削反力に耐えうるだけの剛性を有している。したがって、シリンダユニットが設けられているスライドは、プッシュ部材を押す反力に対して十分な剛性を有する。
【0035】
工具の固定解除を行うために、タレットステーションに設けられている工具主軸ユニットに、旋回するテーブル又はタレットステーションを通して直接作動流体を供給する場合、構造が複雑となる。しかしながら、請求項の工作機械は、シリンダユニットがスライドに設けられているので、スライドにシリンダユニットを作動させるために作動流体を供給する構成とすればよい。そのため、請求項の工作機械は、構造が複雑化せず、組立性、信頼性、及びメンテナンス性の向上、並びに、コストの抑制を実現することができる。
【0036】
また、タレットステーションに作動流体を通すことにより、作動流体の温度によってタレットステーションに設けられた工具の刃先位置の精度が悪化する可能性がある。しかしながら、請求項の工作機械は、シリンダユニットがスライドに設けられているので、作動流体の温度がタレットステーションに設けられた工具の刃先位置の精度に悪影響を及ぼすことがない。
【発明の効果】
【0037】
請求項1から5の工作機械の工具主軸ユニットは、小型化と軽量化を実現することに加えて、シリンダユニットに押される部材を回転シールではなく、往復運動用シールで封止することができる。
【0038】
また、請求項1から5の工作機械は、軸心に挿通したロッドを押す反力に対して十分な剛性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明に係る一実施形態の工作機械のスライド、テーブル、タレットステーション、ワーク及び工具自動交換装置のアームの位置関係を示す正面図であって、ワークの端面の加工準備位置、ワークの側周面を加工準備位置及び工具交換位置を示す。
図2図1の工作機械のスライド、テーブル、タレットステーション及びワークの位置関係を示す側面図である。
図3図1の工作機械のスライド、テーブル、タレットステーション及びワークの位置関係を示す斜視図である。
図4】本発明に係る工具主軸ユニット、シリンダユニット及びスライドの断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の一実施形態の工作機械について説明する。
【0041】
図1に示すように、工作機械の加工空間において、ワークW1及びワークW2は、図示を省略したチャックにそれぞれ把持されている。ワークW1及びワークW2は、それぞれのチャックが設けられている主軸の回転により回転可能となっている。
【0042】
工作機械は、図1に示すように、任意の位置に移動可能なスライド1と、スライド1に対して旋回可能なテーブル2と、テーブル2の旋回軸に直交する割出中心軸周りに旋回可能なタレットステーション3とを備える。
【0043】
また、工作機械は、図1(c)に示す工具交換位置にある場合に、固定解除された工具10を交換する自動工具交換装置のアーム4が設けられている。
【0044】
スライド1は、図示を省略した機構によって、図1のX軸に平行な方向に直動可能となっている。さらに、スライド1及びX軸に平行な方向に直動可能とする機構全体が、図1のZ軸に平行な方向に直動可能となっている。つまり、スライド1は、図1のX軸に平行かつZ軸に平行な平面において任意の位置に移動することができるようになっている。テーブル2及びタレットステーション3は、スライド1と一体となって移動する。
【0045】
このスライド1の移動は、タレットステーション3の工具をワークW1及びW2に対して相対的に移動させることができるようになっている。
【0046】
スライド1には、後述する工具主軸ユニット5の工具10の固定を解除するシリンダユニット6が設けられている。
【0047】
テーブル2は、スライド1に対して旋回する軸が、図1のY軸に平行な軸である。
【0048】
タレットステーション3は、テーブル2と一体となって、スライド1に対して旋回する。
【0049】
このテーブル2のスライド1に対する旋回は、タレットステーション3の工具がワークW1及びW2に当たる角度を変えることができる。
【0050】
タレットステーション3は、割出数分の工具が取り付け可能となっている。
【0051】
タレットステーション3には、工具主軸ユニット5が設けられている。
【0052】
工具主軸ユニット5は、タレットステーション3から放射状に突出した状態で設けられている。また、工具主軸ユニット5の回転軸は、タレットステーション3の割出中心軸と平行となっている。
【0053】
工具主軸ユニット5の先端には、工具10が取り付けられている。
【0054】
工作機械は、スライド1の移動、テーブル2の旋回及びタレットステーション3の割出中心軸周りに旋回を組み合わせることによって、工具主軸ユニット5を、図1(a)に示すようなワークW1の端面の加工準備位置、図1(b)に示すようなワークW1の側周面の加工準備位置、及び、図1(c)に示すような工具交換位置に位置決めすることができる。
【0055】
図1(a)に示すようなワークW1の端面の加工準備位置からスライド1を適宜移動させることによって、ワークW1の端面が工具主軸ユニット5の工具10で加工されるようになっている。
【0056】
図1(b)に示すようなワークW1の側周面の加工準備位置からスライド1を適宜移動させることによって、ワークW1の側周面が工具主軸ユニット5の工具10で加工されるようになっている。
【0057】
図1(c)に示すような工具交換位置において、後で詳細に説明するシリンダユニット6によって、工具10は固定解除される。固定解除された工具10は、自動工具交換装置のアーム4の動作によって他の工具と交換できる。
【0058】
図2及び図3を参照して、工具主軸ユニット5がワークW1の側周面の加工準備位置から工具交換位置となるまでの過程を説明する。
【0059】
工具主軸ユニット5は、図2(a)及び図3(a)に示すワークW1の側周面の加工位置から、テーブル2を旋回させて、図2(b)及び図3(b)に示す状態となる。工具主軸ユニット5は、図2(b)及び図3(b)から、タレットステーション3を割出中心軸周りに旋回させて、図2(c)及び図3(c)に示す工具交換位置となる。
【0060】
工具交換位置では、工具主軸ユニット5の後端と、スライド1に設けられたシリンダユニット6が対向する。
【0061】
図4を参照して、工具主軸ユニット5及びシリンダユニット6の概略構成について説明する。
【0062】
工具主軸ユニット5は、ハウジング51と、スピンドル7と、ロッド8と、プッシュ部材9とを有する。
【0063】
工具主軸ユニット5は、軸心に挿通したロッド8の軸方向の進退動作により、先端に装着された工具10の固定及び固定解除を行うことができる。
【0064】
スピンドル7は、ベアリング71を介してハウジング51に回動自在に支持されている。
【0065】
スピンドル7は、軸心に空間が設けられている。この空間に、ロッド8は、軸方向に進退可能に設けられている。
【0066】
ロッド8は、スピンドル7と一体となって回動するようになっている。
【0067】
ロッド8の先端には係止具82が形成されている。
【0068】
ロッド8は、スピンドル7とロッド8との間に設けられた弾性体81によって、ロッド8の軸方向において、後に向かって付勢されている。
【0069】
工具10のシャンク11は、工具主軸ユニット5の先端側から挿入可能となっている。挿入された工具10のシャンク11がロッド8の係止具82によって引き込こまれることによって、工具10は、スピンドル7に固定されるようになっている。
【0070】
ロッド8の軸方向の後方には、プッシュ部材9が設けられている。
【0071】
プッシュ部材9は、ハウジング51においてスピンドル7の後方のプッシュ部材収容室に大部分が収容されている。
【0072】
プッシュ部材9の先端は、ロッド8が収容されているスピンドル7の軸心の空間に延出している。プッシュ部材9の先端は、ロッド8の後端と対向して位置する。また、プッシュ部材9は、スピンドル7とは非接触となっている。
【0073】
プッシュ部材9の後端は、ハウジング51の後端に設けた開口からハウジング51の外部へと延出している。プッシュ部材9は、ハウジング51の開口近傍で、往復運動用シール92によって封止されている。
【0074】
プッシュ部材9は、プッシュ部材9とハウジング51との間に設けられた弾性体91によって、ロッド8の軸方向において後に向かって付勢されている。
【0075】
プッシュ部材9は、ロッド8の軸方向に進退可能に設けられている。
【0076】
シリンダユニット6は、シリンダハウジング62と、シリンダハウジング62のシリンダ室63に収容されているピストン61とを有する。
【0077】
ピストン61の先端は、シリンダハウジング62の外部へと延出している。シリンダ室63の流体室には、スライド1の配管64が接続されている。スライド1の配管64は、ピストン61の後方の空間に作動流体を供給することができる。
【0078】
ピストン61の後方の空間に供給された作動流体に押されることによって、ピストン61の先端が前進するようになっている。
【0079】
ロッド8の軸方向において、プッシュ部材9の弾性体91による付勢に逆らう方向のストロークは、ロッド8の弾性体81による付勢に逆らう方向のストロークより大きくなっている。
【0080】
シリンダユニット6のピストン61のストロークは、工具主軸ユニット5のプッシュ部材9の付勢に逆らう方向のストロークよりも大きくなっている。
【0081】
このロッド8、プッシュ部材9及びピストン61のストロークの違いがあることによって、図4(a)に示すように、それぞれの最も後方の位置において、ロッド8、プッシュ部材9及びピストン61が確実に離間する。
【0082】
図4(a)の状態から、ピストン61の後方の空間に作動流体を供給すると、図4(b)に示すように、ピストン61が前進する。ピストン61が前進するストロークの途中でピストン61の先端がプッシュ部材9の後端に当接する。ピストン61の前進する方向はプッシュ部材9の付勢に逆らう方向と同一となっている。
【0083】
図4(b)の状態から、ピストン61の後方の空間に作動流体をさらに供給すると、ピストン61は、ピストン61の先端がプッシュ部材9の後端に当接した状態のまま前進し、プッシュ部材9は付勢に逆らう方向に前進する。プッシュ部材9の付勢に逆らう方向のストロークの途中でプッシュ部材9の先端がロッド8の後端に当接する。
【0084】
ピストン61の後方の空間に作動流体をさらに供給すると、ピストン61は、ピストン61の先端がプッシュ部材9の後端に当接し、プッシュ部材9の先端がロッド8の後端に当接した状態のまま前進し、ロッド8の付勢に逆らう方向に前進する。
【0085】
ロッド8の付勢に逆らう方向に前進すると、図4(c)に示すように、工具10のシャンク11が押し出され、工具10は、スピンドル7との固定が解除される。
【0086】
工具10が他の工具と交換された後に、ピストン61が、最も後方の位置に戻ることとなる。
【0087】
ピストン61が、最も後方の位置に戻る過程おいて、ロッド8は、他の工具のシャンクが係止具82によって引き込こまれながら、最も後方の位置に戻る。
【0088】
同様に、ピストン61が、最も後方の位置に戻る過程において、プッシュ部材9は、途中でプッシュ部材9の先端がロッド8の後端と離間して、最も後方の位置に戻る。
【0089】
同様に、ピストン61が、最も後方の位置に戻る過程において、ピストン61は、途中でピストン61の先端がプッシュ部材9の後端と離間して、最も後方の位置に戻る。
【0090】
再び、図4(a)に示すように、ロッド8、プッシュ部材9及びピストン61がそれぞれ確実に離間した状態となる。
【0091】
上記実施形態では、2個のワークW1及びワークW2が図示を省略したチャックにそれぞれ把持されている場合について説明したが、これに限定されることはない。例えば、ワークは、1個であってもよい。
【0092】
上記実施形態では、スライドが、図1のX軸に平行な方向に直動可能となっている場合について説明したが、これに限定されることはない。スライドは、図1のX軸に対して角度を有する方向に直動可能となっていてもよい。
【0093】
上記実施形態では、スライドが、図1のZ軸に平行な方向に直動可能となっている場合について説明したが、これに限定されることはない。スライドは、図1のZ軸に対して角度を有する方向に直動可能となっていてもよい。
【0094】
上記実施形態では、テーブル2の旋回軸が、図1のY軸に平行な軸である場合について説明したが、これに限定されることはない。テーブルの旋回軸は、図1のY軸に対して角度を有する旋回軸であってもよい。
【0095】
上記実施形態では、図1から図3に示すように、スライド1に一つのシリンダユニット6が設けられている場合について説明したが、これに限定されることはない。たとえば、スライドに複数のシリンダユニットが設けられていてもよい。
【0096】
例えば、工作機械が、Z軸と平行な方向に配置された2個の自動工具交換装置の間に、スライドが配置可能となっている。スライドのZ軸と平行な方向に対向する側面にそれぞれシリンダユニットが設けられている。回転主軸ユニットは、それぞれのシリンダユニットの工具交換位置で工具を交換することができる。
【0097】
上記実施形態では、スライド1の図1から図3に示した箇所に、シリンダユニット6が設けられている場合について説明したが、これに限定されることはない。例えば、スライドのX軸方向に対向する上面及び下面等、タレットステーションの旋回及びテーブルの旋回によって、工具主軸ユニットのプッシュ部材がシリンダユニットと対向する位置に位置決め可能なスライドの箇所にシリンダユニットが設けられていればよい。
【0098】
上記実施形態では、プッシュ部材9の後端は、ハウジング51の後端に設けた開口からハウジング51の外部へと延出している場合について説明したが、これに限定されることはない。プッシュ部材の後端は、外部のシリンダユニットのピストンで押圧可能となるように露出していればよい。
【0099】
上記実施形態では、図示していないが、ピストンを最も後方の位置に戻すために、例えば、シリンダユニットに弾性部材が設けられていてもよく、また、スライドにピストンの前方の空間に作動流体を供給する配管が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 スライド
2 テーブル
3 タレットステーション
4 アーム
5 工具主軸ユニット
6 シリンダユニット
7 スピンドル
8 ロッド
9 プッシュ部材
10 工具
11 シャンク
51 ハウジング
61 ピストン
62 シリンダハウジング
63 シリンダ室
64 配管
71 ベアリング
81 弾性体
82 係止具
91 弾性体
92 往復運動用シール
図1
図2
図3
図4