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  • 特許-亀裂補修方法 図1
  • 特許-亀裂補修方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】亀裂補修方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20220420BHJP
【FI】
E04G23/02 A
E04G23/02 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018126530
(22)【出願日】2018-07-03
(65)【公開番号】P2020007713
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000227593
【氏名又は名称】日之出水道機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三井田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】金田 卓明
(72)【発明者】
【氏名】外山 直記
(72)【発明者】
【氏名】石井 謙吾
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特公昭48-23248(JP,B1)
【文献】特開平4-20839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
B23P 6/00
B23P 6/04
B23K 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の金属製部分に発生した亀裂を補修する亀裂補修方法であって、
前記亀裂の先端部分において当該亀裂に対して交差する方向に補修部材を挿入するための補修部材挿入用凹部を形成する工程と、
前記補修部材挿入用凹部の底面に表れている亀裂の先端を含むようにストップホールを形成する工程と、
前記補修部材挿入用凹部に補修部材を挿入する工程と、
を含む亀裂補修方法。
【請求項2】
前記ストップホールは、前記補修部材挿入用凹部の底面の領域内に収まるように形成する、請求項1に記載の亀裂補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の金属製部分に発生した亀裂を補修する亀裂補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる亀裂補修方法として、亀裂の先端にストップホールを形成する方法が古くから知られている(例えば特許文献1)。ストップホールは、亀裂進展の芽となる亀裂の先端を除去するため(応力集中を緩和するため)に形成するが、亀裂の先端位置は、被補修部である構造物の金属製部分の深さ方向で変化していることが多い。したがって、表面に表れている亀裂の先端位置にストップホールを形成したとしても、深さ方向では亀裂の先端を除去できていないこともある。一方、亀裂の先端を深さ方向で完全に除去するために大きなストップホールを形成することも考えられるが、ストップホールが大きいと補修後の強度が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭51-109242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、亀裂の先端を確実に除去することができる亀裂補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、構造物の金属製部分に発生した亀裂を補修する亀裂補修方法である。この亀裂補修方法は、亀裂の先端部分において当該亀裂に対して交差する方向に補修部材を挿入するための補修部材挿入用凹部を形成する工程と、補修部材挿入用凹部の底面に表れている亀裂の先端を含むようにストップホールを形成する工程と、補修部材挿入用凹部に補修部材を挿入する工程と、を含む。
【0006】
このように亀裂の先端部分に補修部材挿入用凹部を形成することで、表面からは特定できない深さ方向の亀裂の先端位置を、補修部材挿入用凹部の底面において確認することができる。そして、この補修部材挿入用凹部の底面に表れている亀裂の先端を含むようにストップホールを形成することで、亀裂の先端を確実に除去することができる。また、補修部材挿入用凹部の底面に形成するストップホールは、この補修部材挿入用凹部の底面より下の亀裂の先端を除去できる程度の大きさがあればよいので、通常のストップホールより小さくすることができる。すなわち、この亀裂補修方法によれば、通常のストップホールよりも小さい必要最小限のストップホールにより、亀裂進展の芽となる亀裂の先端を確実かつ最適に除去することができ、亀裂の先端における部分的な応力集中を除去することができる。
【0007】
この亀裂補修方法においてストップホールは、補修部材挿入用凹部の底面の領域内に収まるように形成することが好ましい。ストップホールは小さい方が補修後の強度低下を抑えることができるからである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、亀裂の先端を確実に除去することができる亀裂補修方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態である亀裂補修方法を示す概念図で、(a)は平面図、(b)右側面図、(c)は(a)のA-A線断面図。
図2】ストップホールのバリエーションを示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に本発明の一実施形態である亀裂補修方法を概念的に示している。
この実施形態において、被補修部である構造物の金属製部分は金属板10であり、この金属板10に亀裂20が発生している。この亀裂20は図1(b)に表れているように金属板10の深さ方向(板厚方向)に傾斜している。
【0011】
以下、この実施形態による亀裂補修方法を説明する。
まず、金属板10の表面に表れている亀裂20の先端部分において当該亀裂20に対して交差する方向に補修部材を挿入するための補修部材挿入用凹部11を形成する。この補修部材挿入用凹部11は、図1に示す形状に限定されるものではなく、例えば米国特許第5417532号明細書、米国特許第6212750号明細書、特許第5883528号公報等に開示されている公知の方法により形成することができる。なお、この実施形態では、補修部材挿入用凹部11に加え、亀裂20の途中部分において当該亀裂20に対して交差する方向に補修部材を挿入するための補修部材挿入用凹部12を形成しているが、この補修部材挿入用凹部12は形成しなくてもよい。
【0012】
次に図1(a)および(c)に示すように、補修部材挿入用凹部11の底面に表れている亀裂の先端21を含むようにストップホール13をドリル等の公知の方法により、金属板10の残厚を貫通するように形成する。その後、補修部材挿入用凹部11に補修部材を挿入する。この実施形態では補修部材挿入用凹部12にも補修部材を挿入する。なお、補修部材挿入用凹部11および補修部材挿入用凹部12に挿入する補修部材は図示を省略しているが、このような補修部材およびその挿入方法は、前掲の米国特許第5417532号明細書、米国特許第6212750号明細書、特許第5883528号公報等に開示されているように公知である。また、図1(a)および後述する図2では説明の便宜上、ストップホール13で除去された亀裂20を実線で示している。
【0013】
このようにこの実施形態では、金属板10の表面に表れている亀裂20の先端部分に補修部材挿入用凹部11を形成することで、金属板10の表面からは特定できない深さ方向(板厚方向)の亀裂の先端21を、補修部材挿入用凹部11の底面において確認することができる。そして、この補修部材挿入用凹部11の底面に表れている亀裂の先端21を含むようにストップホール13を形成することで、亀裂の先端を確実に除去することができる。また、補修部材挿入用凹部11の底面に形成するストップホール13は、この補修部材挿入用凹部21の底面より下(金属板10の残厚部分)の亀裂の先端を除去できる程度の大きさがあればよいので、通常のストップホールより小さくすることができる。すなわち、この実施形態によれば、通常のストップホールよりも小さい必要最小限のストップホールにより、亀裂進展の芽となる亀裂の先端を確実かつ最適に除去することができ、亀裂の先端における部分的な応力集中を除去することができる。
【0014】
図2に、ストップホールのバリエーションを示している。
図1の実施形態においてストップホール13は、補修部材挿入用凹部11の底面の領域内に収まるように形成したが、図2(a)に示すように補修部材挿入用凹部11の底面領域を超えて金属板10の表面を含むように形成してもよい。ただし、補修後の強度低下を抑える点からはストップホール13はなるべく小さい方がよく、また、ストップホール13の形成のしやすさを考えると、ストップホール13は補修部材挿入用凹部11の底面の領域内に収まるように形成することが好ましい。
【0015】
一方、亀裂進展を抑える点からは図2(b)に示すように、ストップホール13は補修部材挿入用凹部11の底面に表れている亀裂20の全部を除去するように形成することもできる。この場合、ストップホール13の大きさは図1に比べて大きくなるが、ストップホール13が形成された補修部材挿入用凹部11には、前述のとおり補修部材が挿入されるので、この補修部材により補修後の強度低下を抑えることができる。
【0016】
また、補修部材挿入用凹部11の底面に表れている亀裂20が複数ある場合、図2(c)に示すようにそれぞれの亀裂の先端に対応して複数のストップホール13を形成することもでき、図2(d)に示すようにそれぞれの亀裂の先端を包含するように一つのストップホール13を形成することもできる。
【0017】
なお、以上の実施形態においてストップホール13の形状は円形としたが、ストップホール13の形状は円形には限定されず、略円形や楕円形とすることもできる。
【符号の説明】
【0018】
10 金属板(構造物の金属製部分)
11,12 補修部材挿入用凹部
13 ストップホール
20 亀裂
21 亀裂の先端
図1
図2