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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸産生促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/05 20060101AFI20220420BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20220420BHJP
   A23C 9/13 20060101ALI20220420BHJP
   A23C 19/00 20060101ALI20220420BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20220420BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20220420BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220420BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220420BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
A61K38/05
A61P19/02
A61P43/00 107
A61K8/64
A23C9/13
A23C19/00
A23L2/00 F
A23L2/52
A23L33/18
A61K9/20
A61K9/48
A61Q19/00
A61Q19/08
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020139144
(22)【出願日】2020-08-20
(62)【分割の表示】P 2017216639の分割
【原出願日】2017-11-09
(65)【公開番号】P2020196738
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2020-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】500101243
【氏名又は名称】株式会社ファーマフーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 裕晃
(72)【発明者】
【氏名】中村 唱乃
(72)【発明者】
【氏名】中村 紀夫
(72)【発明者】
【氏名】坂下 真耶
(72)【発明者】
【氏名】庄屋 雄二
(72)【発明者】
【氏名】金 武祚
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/175001(WO,A1)
【文献】特表2017-501114(JP,A)
【文献】特開2001-048789(JP,A)
【文献】特開2014-040402(JP,A)
【文献】特開2010-024200(JP,A)
【文献】特開2018-39737(JP,A)
【文献】国際公開第2012/081273(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)Phe-Hyp(配列番号1)のアミノ酸配列を含み、総アミノ酸残基数が100以下であるペプチドを含有し、軟骨基質産生促進作用又は軟骨分化関連遺伝子発現増強作用を有する、関節障害の予防又は治療剤
【請求項2】
(a)Phe-Hyp(配列番号1)のアミノ酸配列を含み、総アミノ酸残基数が100以下であるペプチドを含有し、軟骨基質産生促進作用又は軟骨分化関連遺伝子発現増強作用を有する、膝の痛み改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸産生促進剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本件特許出願の出願人は、卵殻膜(特許文献1)、又は家禽の脚部又はその処理物(特許文献2)を含有するヒアルロン酸産生促進剤について特許出願している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-40402号公報
【文献】国際公開第2016/129174号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ヒアルロン酸産生促進剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々考察し、特定の5価の部分構造式を有するペプチド又はその塩、エステル若しくはアミドを着想し、鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、フェニルアラニルヒドロキシプロリン、アラニルヒドロキシプロリン等、特定の5価の部分構造式を有するペプチド又はその塩、エステル若しくはアミドが、ヒアルロン酸産生促進活性を有することを見出し、この知見に基づいてさらに研究を進め、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するために以下の各発明を包含する。
〔1〕一般式(1)
【化1】
で示される5価の部分構造式を有するペプチド又はその塩、エステル若しくはアミドを含有するヒアルロン酸産生促進剤。
〔2〕プロテオグリカン産生促進のために用いられる前記〔1〕に記載の剤。
〔3〕軟骨組織における細胞外基質の産生促進のために用いられる前記〔1〕又は〔2〕に記載の剤。
〔4〕前記ペプチドが、以下の(a)~(f)のいずれかのアミノ酸配列を含み、総アミノ酸残基数が100以下であり、ヒアルロン酸産生促進活性を有するペプチドである、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の剤。
(a)Phe-Hyp(配列番号1)
(b)Gly-Phe-Hyp(配列番号2)
(c)Phe-Hyp-Gly(配列番号3)
(d)Ala-Hyp(配列番号4)
(e)Gly-Ala-Hyp(配列番号5)
(f)Ala-Hyp-Gly(配列番号6)
〔5〕前記ペプチドの総アミノ酸残基数が3以下である、前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の剤。
〔6〕さらにN-アセチルグルコサミン若しくはグルコサミン又はそれらの薬理学的に許容される塩、又は賦形剤を含有する前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の剤。
〔7〕ヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進剤、軟骨形成促進剤、関節障害の予防若しくは治療剤、又は膝の痛み、体の痛み若しくは身体機能の改善剤である前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の剤。
〔8〕肌のかさつき、しわ若しくは張りの改善剤又は肌の保湿剤である前記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の剤。
〔9〕前記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の剤を含有するヒアルロン酸産生促進用の食品、食品添加物、サプリメント、化粧品、医薬部外品、医薬品又は飼料。
【0007】
本発明は、さらに以下の各発明を包含する。
〔10〕ヒアルロン酸産生促進のために使用される上記一般式(1)で示される5価の部分構造式を有するペプチド又はその塩、エステル若しくはアミド。
〔11〕プロテオグリカン産生促進のために使用される前記〔10〕に記載のペプチド又はその塩、エステル若しくはアミド。
〔12〕軟骨組織における細胞外基質の産生促進のために使用される前記〔10〕又は〔11〕に記載のペプチド又はその塩、エステル若しくはアミド。
〔13〕前記ペプチドが、上記(a)~(f)のいずれかのアミノ酸配列を含み、総アミノ酸残基数が100以下であり、ヒアルロン酸産生促進活性を有するペプチドである、前記〔10〕~〔12〕のいずれかに記載のペプチド又はその塩、エステル若しくはアミド。
〔14〕前記ペプチドの総アミノ酸残基数が3以下である、前記〔10〕~〔13〕のいずれかに記載のペプチド又はその塩、エステル若しくはアミド。
〔15〕ヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進、軟骨形成促進、関節障害の予防若しくは治療、又は膝の痛み、体の痛み若しくは身体機能の改善のために使用される前記〔10〕~〔14〕のいずれかに記載のペプチド又はその塩、エステル若しくはアミド。
〔16〕肌のかさつき、しわ若しくは張りの改善又は肌の保湿のために使用される前記〔10〕~〔15〕のいずれか記載のペプチド又はその塩、エステル若しくはアミド。
〔17〕ヒアルロン酸産生促進のために使用される上記一般式(1)で示される5価の部分構造式を有するペプチド又はその塩、エステル若しくはアミド、及びN-アセチルグルコサミン若しくはグルコサミン又はそれらの薬理学的に許容される塩、又は賦形剤。
〔18〕ヒアルロン酸産生促進用の食品、食品添加物、サプリメント、化粧品、医薬部外品、医薬品又は飼料に含有される前記〔10〕~〔16〕のいずれかに記載のペプチド又はその塩、エステル若しくはアミド。
【0008】
本発明は、さらに以下の各発明を包含する。
〔19〕ヒアルロン酸産生促進剤製造のための上記一般式(1)で示される5価の部分構造式を有するペプチド又はその塩、エステル若しくはアミドの使用。
〔20〕プロテオグリカン産生促進剤製造のための使用である前記〔19〕に記載の使用。
〔21〕軟骨組織における細胞外基質の産生促進剤製造のための使用である前記〔19〕又は〔20〕に記載の使用。
〔22〕前記ペプチドが、上記(a)~(f)のいずれかのアミノ酸配列を含み、総アミノ酸残基数が100以下であり、ヒアルロン酸産生促進活性を有するペプチドである、前記〔19〕~〔21〕のいずれかに記載の使用。
〔23〕前記ペプチドの総アミノ酸残基数が3以下である、前記〔19〕~〔22〕のいずれかに記載の使用。
〔24〕ヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進剤、軟骨形成促進剤、関節障害の予防若しくは治療剤、又は膝の痛み、体の痛み若しくは身体機能の改善剤製造のための使用である前記〔19〕~〔23〕のいずれかに記載の使用。
〔25〕肌のかさつき、しわ若しくは張りの改善剤又は肌の保湿剤製造のための使用である前記〔19〕~〔24〕のいずれか記載の使用。
〔26〕ヒアルロン酸産生促進剤製造のための、上記一般式(1)で示される5価の部分構造式を有するペプチド又はその塩、エステル若しくはアミド及びN-アセチルグルコサミン若しくはグルコサミン又はそれらの薬理学的に許容される塩、又は賦形剤の使用。
〔27〕ヒアルロン酸産生促進用の食品、食品添加物、サプリメント、化粧品、医薬部外品、医薬品又は飼料の製造のための、上記一般式(1)で示される5価の部分構造式を有するペプチド又はその塩、エステル若しくはアミドの使用。
【0009】
本発明は、さらに以下の各発明を包含する。
〔28〕ヒアルロン酸産生促進のための、上記一般式(1)で示される5価の部分構造式を有するペプチド又はその塩、エステル若しくはアミドの使用。
〔29〕プロテオグリカン産生促進のための使用である前記〔28〕に記載の使用。
〔30〕軟骨組織における細胞外基質の産生促進のための使用である前記〔28〕又は〔29〕に記載の使用。
〔31〕前記ペプチドが、上記(a)~(f)のいずれかのアミノ酸配列を含み、総アミノ酸残基数が100以下であり、ヒアルロン酸産生促進活性を有するペプチドである、前記〔28〕~〔30〕のいずれかに記載の使用。
〔32〕前記ペプチドの総アミノ酸残基数が3以下である、前記〔28〕~〔31〕のいずれかに記載の使用。
〔33〕ヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進、軟骨形成促進、関節障害の予防若しくは治療、又は膝の痛み、体の痛み若しくは身体機能の改善のための使用である前記〔28〕~〔32〕のいずれかに記載の使用。
〔34〕肌のかさつき、しわ若しくは張りの改善又は肌の保湿のための使用である前記〔28〕~〔33〕のいずれか記載の使用。
〔35〕ヒアルロン酸産生促進のための、上記一般式(1)で示される5価の部分構造式を有するペプチド又はその塩、エステル若しくはアミド及びN-アセチルグルコサミン若しくはグルコサミン又はそれらの薬理学的に許容される塩、又は賦形剤の使用。
〔36〕ヒアルロン酸産生促進のための、上記一般式(1)で示される5価の部分構造式を有するペプチド又はその塩、エステル若しくはアミド含有ヒアルロン酸産生促進用食品、食品添加物、サプリメント、化粧品、医薬部外品、医薬品又は飼料の使用。
【0010】
本発明は、さらに以下の各発明を包含する。
〔37〕上記一般式(1)で示される5価の部分構造式を有するペプチド又はその塩、エステル若しくはアミドを哺乳動物に投与することを特徴とするヒアルロン酸産生促進方法。
〔38〕プロテオグリカン産生を促進することを特徴とする前記〔37〕に記載の方法。
〔39〕軟骨組織における細胞外基質の産生を促進することを特徴とする前記〔37〕又は〔38〕に記載の方法。
〔40〕前記ペプチドが、上記(a)~(f)のいずれかのアミノ酸配列を含み、総アミノ酸残基数が100以下であり、ヒアルロン酸産生促進活性を有するペプチドである、前記〔37〕~〔39〕のいずれかに記載の方法。
〔41〕前記ペプチドの総アミノ酸残基数が3以下である、前記〔37〕~〔40〕のいずれかに記載の方法。
〔42〕ヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現を促進し、軟骨形成を促進し、関節障害を予防若しくは治療し、又は膝の痛み、体の痛み若しくは身体機能を改善することを特徴とする前記〔37〕~〔41〕のいずれかに記載の方法。
〔43〕肌のかさつき、しわ若しくは張りを改善し、又は肌を保湿することを特徴とする前記〔37〕~〔42〕のいずれか記載の方法。
〔44〕上記一般式(1)で示される5価の部分構造式を有するペプチド又はその塩、エステル若しくはアミド及びN-アセチルグルコサミン若しくはグルコサミン又はそれらの薬理学的に許容される塩、又は賦形剤を哺乳動物に投与することを特徴とするヒアルロン酸産生促進方法。
〔45〕上記一般式(1)で示される5価の部分構造式を有するペプチド又はその塩、エステル若しくはアミドがヒアルロン酸産生促進用の食品、食品添加物、サプリメント、化粧品、医薬部外品、医薬品又は飼料に含有されていることを特徴とする前記〔37〕~〔43〕のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、ヒアルロン酸産生促進剤を提供することができる。本発明のヒアルロン酸産生促進剤は、日常的に摂取可能な食品、食品添加物、サプリメント、化粧品、医薬部外品、医薬品又は飼料等として、広く安全に使用され得る。本発明のヒアルロン酸産生促進剤は、好ましくは、肌のかさつき、しわ若しくは張りを改善し、又は、肌の保湿剤として使用することができる。本発明のヒアルロン酸産生促進剤は、好ましくは、膝の痛み、膝の状態、体の痛み、身体機能改善作用等を有し、関節障害の予防又は治療剤として使用することができ、膝に痛みを感じる対象に対して生活の質(QOL;quality of life)の改善に有効である。本発明のヒアルロン酸産生促進剤は、特に女性に対して顕著な効果を示し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、フェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリン又はアラニル-4-ヒドロキシプロリンの軟骨前駆細胞における軟骨基質産生を測定した結果を示す。
図2図2は、フェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリンの軟骨前駆細胞におけるSOX9のmRNA発現量を測定した結果を示す。
図3図3は、フェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリンの軟骨前駆細胞におけるAcanのmRNA発現量を測定した結果を示す。
図4図4は、フェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリンの軟骨前駆細胞におけるColXのmRNA発現量を測定した結果を示す。
図5図5は、フェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリンの軟骨前駆細胞におけるhas2のmRNA発現量を測定した結果を示す。
図6図6は、マウス膝部を用いたフェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリンのex vivoにおけるヒアルロン酸産生量を測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、2以上の連続する疎水性アミノ酸をアミノ酸配列として含むペプチド若しくはその誘導体又はその塩(以下、本発明のペプチドともいう。)を有効成分として含有するヒアルロン酸産生促進剤(以下、本発明の剤ともいう。)を提供する。本発明の剤は、本発明のペプチドを0.01~100質量%、1~100質量%、5~100質量%、10~100質量%、20~100質量%、30~100質量%、40~100質量%、50~100質量%、60~100質量%、70~100質量%、80~100質量%、90~100質量%含有していてもよい。
【0014】
〔本発明のペプチド〕
本開示は、一般式(1)
【化2】
で示される5価の部分構造式を有するペプチド又はその塩、エステル若しくはアミド(以下、本発明のペプチドとも総称することがある。)を含有するヒアルロン酸産生促進剤を包含する。
【0015】
本発明のペプチドとして、好ましくは、一般式(2)
【化3】
で示されるペプチド、又はその塩、エステル、若しくはアミド(式(2)中、A、A、及びAは、それぞれ同一又は異なっていてもよく、水素原子、水酸基(OH)、(C-C)アルキル基又はアミノ酸残基若しくはペプチド残基を示し、B及びBは、それぞれ同一又は異なっていてもよく、水素原子;例えばフェニル基等のアリール基;例えばイソプロピル基、エチル基、メチル基等の(C-C)アルキル基;例えばインドリル基等の複素環基、好ましくは縮合複素環基;又は例えばメチルチオエチル基等の(C-C)アルキルチオ(C-C)アルキル基を示す。)である。
【0016】
この場合において、(C-C)アルキル基は、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、シクロプロピルメチル基、2-メチルシクロプロピル基、シクロブチル基、ノルマルペンチル基、イソペンチル基、シクロプロピルエチル基、エチルシクロプロピル基、シクロブチルメチル基、2-メチルシクロブチル基、3-メチルシクロブチル基、シクロペンチル基、ノルマルヘキシル基、イソヘキシル基、シクロプロピルノルマルプロピル基、2-ノルマルプロピルシクロプロピル基、シクロプロピルイソプロピル基、イソプロピルシクロプロピル基、シクロブチルエチル基、2-エチルシクロブチル基、3-エチルシクロブチル基、シクロペンチルメチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数1~6のアルキル基を示す。上記場合のA、A、及びAを構成するアミノ酸残基又はペプチド残基を構成するアミノ酸は、それぞれ、同一又は異なっていてもよく、アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リシン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)及びバリン(Val)からなる群から選択される1以上(好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100以下)であることが好ましい。上記場合のA、A、及びAを構成するアミノ酸残基又はペプチド残基は、上記アミノ酸又はペプチドのN末端のアミノ基の水素原子及びC末端のカルボキシル基の水酸基のいずれか1つを除いた状態をいい、一般式(1)で示される部分構造式とペプチド結合を形成する。
【0017】
本発明のペプチドとして具体的には、下記表に示される化合物が例示される。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】
【0021】
【表4】
【0022】
【表5】
【0023】
【表6】
【0024】
【表7】
【0025】
本発明のペプチドは、以下の(a)~(f)のいずれかのアミノ酸配列を含み、総アミノ酸残基数が100以下であり、ヒアルロン酸産生促進活性を有するペプチドであることが、より優れた本発明の効果を示し得る点で、好ましい。
(a)Phe-Hyp(配列番号1)
(b)Gly-Phe-Hyp(配列番号2)
(c)Phe-Hyp-Gly(配列番号3)
(d)Ala-Hyp(配列番号4)
(e)Gly-Ala-Hyp(配列番号5)
(f)Ala-Hyp-Gly(配列番号6)
【0026】
ヒアルロン酸産生促進活性の有無について、例えば、試料添加の細胞のヒアルロン酸産生能が、試料無添加の対照の細胞のヒアルロン酸産生能を超えるときに、試料はヒアルロン酸産生促進作用があると判断することができる。用いる細胞として、軟骨前駆細胞、線維芽細胞等が例示される。ヒアルロン酸産生促進活性の有無の確認試験方法は、in vitro試験、in vivo試験及びex vivo試験(試験例3参照)のいずれであってもよい。
【0027】
本発明のペプチドの総アミノ酸残基数は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、100以下が好ましく、50以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、10以下がさらに好ましく、8以下がさらに好ましく、5以下がさらに好ましく、4以下がさらに好ましく、3以下がさらに好ましい。
【0028】
本発明のペプチドの総アミノ酸残基数が3の場合、本発明のペプチドは、「Gly-Phe-Hyp(配列番号2)」、「Phe-Hyp-Gly(配列番号3)」、「Gly-Ala-Hyp(配列番号5)」、「Ala-Hyp-Gly(配列番号6)」、「Ala-Phe-Hyp」、「Phe-Hyp-Ala」、「Ala-Ala-Hyp」、「Ala-Hyp-Ala」、「Val-Phe-Hyp」、「Phe-Hyp-Val」、「Val-Ala-Hyp」、「Ala-Hyp-Val」、「Leu-Phe-Hyp」、「Phe-Hyp-Leu」、「Leu-Ala-Hyp」、「Ala-Hyp-Leu」、「Ile-Phe-Hyp」、「Phe-Hyp-Ile」、「Ile-Ala-Hyp」、「Ala-Hyp-Ile」、「Pro-Phe-Hyp」、「Phe-Hyp-Pro」、「Pro-Ala-Hyp」、「Ala-Hyp-Pro」、「Met-Phe-Hyp」、「Phe-Hyp-Met」、「Met-Ala-Hyp」、「Ala-Hyp-Met」、「Phe-Phe-Hyp」、「Phe-Hyp-Phe」、「Phe-Ala-Hyp」、「Ala-Hyp-Phe」、「Trp-Phe-Hyp」、「Phe-Hyp-Trp」、「Trp-Ala-Hyp」、「Ala-Hyp-Trp」、「Hyp-Phe-Hyp」、「Phe-Hyp-Hyp」、「Hyp-Ala-Hyp」、又は「Ala-Hyp-Hyp」で示されるトリペプチドであることが、より優れた本発明の効果を奏する点で、好ましい。
【0029】
本発明のペプチドの総アミノ酸残基数が4以上(例えば4又は5)の場合、上記配列番号1又は4のアミノ酸配列又は上記トリペプチドのアミノ酸配列を含むことが好ましい。その場合、前述のいずれかのアミノ酸配列が、本発明のペプチドのC末端側、N末端側及び中央部などの非末端のいずれかに位置するものであってもよい。これらのペプチドは、より優れた本発明の効果を示し得る。
【0030】
本発明のペプチドは、そのC末端が、カルボキシル基(-COOH)、カルボキシレート(-COO)、アミド又はエステル(-COOR)のいずれであってもよい。エステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル若しくはn-ブチルなどの(C-C)アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの(C-C)シクロアルキル基、例えば、フェニル、α-ナフチルなどの(C-C12)アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル-C1-2アルキル基若しくはα-ナフチルメチルなどのα-ナフチル-(C-C)アルキル基などの(C-C14)アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが挙げられる。アミド体としては、アミド、(C-C)アルキル基の1つ又は2つで置換されたアミド、フェニル基で置換された(C-C)アルキル基の1つ又は2つで置換されたアミド、アミド基の窒素原子を含んで5から7員環のアザシクロアルカンを形成するアミド等が挙げられる。
本発明のペプチドが、C末端以外にカルボキシル基又はカルボキシレートを有している場合、それらの基がアミド化又はエステル化されているものも、本発明のペプチドに含まれる。
【0031】
本発明のペプチドには、N末端のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどの(C-C)アルカノイル基などの(C-C)アシル基など)で保護されているもの、N末端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、-OH、-SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどの(C-C)アルカノイル基などの(C-C)アシル基など)で保護されているものも含まれる。
【0032】
本発明のペプチドを構成するアミノ酸は、側鎖が任意の置換基で修飾されていてもよい。置換基は、本発明の目的が阻害されない限り特に限定されないが、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、リン酸基など通常、有機化合物に常用されるものが好ましい。また、側鎖の置換基は、保護基で保護されていてもよい。保護基は、保護される基の反応性を抑止するものであってもよく、必ずしも離脱し得るものに限らない。さらに、糖鎖が結合した糖ペプチドも上記誘導体に含まれる。
【0033】
本発明のペプチドは塩を形成していてもよく、その塩としては、生理学的に許容される塩が好ましい。生理学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、硫酸、燐酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、リンゴ酸、クエン酸、オレイン酸、パルミチン酸などの無機酸又は有機酸との塩;ナトリウム、カリウム、カルシウムなどのアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属との、又はアルミニウムの水酸化物又は炭酸塩との塩;トリエチルアミン、ベンジルアミン、ジエタノールアミン、t-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、アルギニンなどの有機塩基との塩などが挙げられる。
【0034】
本発明ペプチドは、元のペプチドの特性が保持される限り、L-アミノ酸を含んでもよく、D-アミノ酸を含んでもよく、さらに非天然アミノ酸を含んでもよい。また、当該誘導体は、元のペプチドの特性が保持される限り、ペプチドに他の物質を連結してもよい。ペプチドに連結可能な他の物質としては、例えば、他のペプチド、脂質、糖又は糖鎖、アセチル基含有組成物、天然又は合成のポリマー等が挙げられる。また、元のペプチドの特性が保持される限り、ペプチドに、糖鎖付加、側鎖酸化、リン酸化等の修飾を行ってもよい。
【0035】
本発明のペプチドは、例えば、公知の一般的なペプチド合成のプロトコールに従って、固相合成法又は液相合成法により容易に製造することができる。ペプチド合成法は従来当該技術分野で十分確立されているから、本発明においてもそれに従ってよい。また、天然物の成分をプロテアーゼによる酵素分解、抽出、分離、精製して得られた結果、本発明のペプチドと一致する場合、そのような酵素分解、抽出、分離、精製工程を経ることによっても本発明のペプチドを製造し得る。天然物として、魚類(例えばテラピア)の肉、皮;豚等のヒト以外の動物の皮;植物の葉、花、茎、根;鳥類(鶏を含む)の皮、胸肉、手羽先、手羽元、レバー、もも肉、卵、卵殻、脚部等が例示される。
【0036】
〔他の成分との組み合わせ〕
本発明のペプチドは、ヒアルロン酸産生促進のために使用される他の有効成分と組み合わせて使用することにより、相加的又は相乗的な効果の向上が期待できる。ヒアルロン酸産生促進のために使用される他の有効成分としては、例えば、卵黄加水分解物、卵殻膜、家禽の脚部又はその処理物、グルコサミン、コンドロイチン、コラーゲンI型、コラーゲンII型、N-アセチルグルコサミン、これらの薬理学的に許容される塩等が挙げられ、卵黄加水分解物、卵殻膜、家禽の脚部又はその処理物、N-アセチルグルコサミン、グルコサミン、これらの薬理学的に許容される塩等が特に好ましい。塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩等が挙げられる。
【0037】
本発明の剤には、賦形剤がさらに含まれていてもよい。賦形剤としては、例えば乳糖水和物、デンプン、結晶性セルロース、マンニトール、無水リン酸水素カルシウム、白糖等が好ましい例として挙げられる。賦形剤は、医薬用賦形剤であってもよい。また、賦形剤は、液状であってもよく、固体であってもよい。当該ヒアルロン酸産生促進剤中の賦形剤含有割合は、0.01~50質量%であってもよく、0.01~10質量%であってもよい。
【0038】
〔ヒアルロン酸産生促進剤〕
本発明の剤は、ヒアルロン酸産生促進作用を有しているので、(1)ヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進剤、(2)軟骨形成促進剤、(3)関節障害の予防若しくは治療剤、(4)膝の痛み、体の痛み若しくは身体機能の改善剤、(5)肌のかさつき、しわ若しくは張りの改善剤又は(6)肌の保湿剤等の有効成分として好適に用いることができる。
また、本発明の剤は、軟骨組織における細胞外基質(本開示において単に軟骨基質ともいう。)の産生促進作用を有しているので、(7)軟骨基質産生促進剤、(8)プロテオグリカン産生促進剤、(9)関節障害の予防若しくは治療剤、又は(10)膝の痛み、体の痛み若しくは身体機能の改善剤等の有効成分として好適に用いることができる。
【0039】
本発明の剤は、「ヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進」、「軟骨形成促進」等の機能を有する。ヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進作用の有無について、例えば、試料添加の有無で、細胞のヒアルロン酸合成酵素遺伝子(例えばHAS1遺伝子、HAS2遺伝子、HAS3遺伝子等)の発現量に有意差又は有意傾向が認められるときに、試料はヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進作用があると判断することができる。用いる細胞として、軟骨前駆細胞、線維芽細胞等が例示される。軟骨形成促進作用の有無について、例えば、試料添加の有無で、軟骨前駆細胞の軟骨基質産生能又は軟骨分化関連遺伝子発現量に有意差又は有意傾向が認められるとき又は軟骨欠損動物モデルの軟骨部位をアルシアンブルー染色及びサフラニンO染色して染色面積に有意差又は有意傾向が認められるときに、試料は軟骨形成促進作用があると判断することができる。そのための実験乃至評価方法は常法に従って行われる。
【0040】
関節障害の予防又は治療剤は、膝の痛み、膝の状態、体の痛み、身体機能等の改善作用等を有する。「関節障害」は「軟骨障害」と言い換えることもできる。関節障害としては、例えば変形性膝関節症、軟骨の欠損、軟骨損傷、半月板損傷などが挙げられる。
膝の痛み、膝の状態、体の痛み、身体機能等の改善作用の有無について、例えば、試料投与前と投与後とでWOMAC(Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index)評価、SF-36(MOS 36-Item Short-Form Health Survey)、JKOM(Japanese Knee Osteoarthritis Measure)評価等において、有意差又は有意傾向が認められる場合に膝の痛み、膝の状態、体の痛み、身体機能等の改善作用ありと判断することができる。そのための試験乃至評価方法は常法に従って行われる。
【0041】
肌のかさつき、しわ、若しくは張りの改善作用の有無について、例えば、試料投与前と投与後とでVASアンケートの結果、検査項目「肌のかさつき」、「肌の張り」、「目じりの小じわ」等において有意差又は有意傾向が認められる場合に肌状態の改善作用ありと判断することができる。そのための試験乃至評価方法は常法に従って行われる。
【0042】
本発明のペプチドの1日当たりの投与量は投与対象により異なるが、好ましくは例えば対象が成人ヒトの場合、通常約0.05~約2000mg/日であり、好ましくは約0.1~約1000mg/日である。もっとも、使用量は性別、年齢、症状、体重等により変化しうる。医薬品の場合には、最終的には、医師がこれらの要因を総合検討して使用量を決定する。
【0043】
〔医薬〕
本発明は、ヒアルロン酸産生促進用の医薬を提供する。本発明の医薬は、上記本発明のペプチドを含むものであればよい。本発明の医薬は、経口又は非経口のいずれかの経路で哺乳動物に投与することができる。経口剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などが挙げられる。非経口剤としては、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、外用剤(例えば、経鼻投与製剤、経皮製剤、軟膏剤)、坐剤(例えば、直腸坐剤、膣坐剤)などが挙げられる。これらの製剤は、当該分野で通常行われている手法により、薬学上許容される担体を用いて製剤化することができる。薬学上許容される担体としては、賦形剤、結合剤、希釈剤、添加剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられ、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ワックス、カカオバター等を担体として使用できる。
【0044】
経口用の固形剤(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等)は、有効成分を賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸等)等と混合し、常法に従って製剤化することができる。必要に応じて、コーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。
【0045】
経口用の液剤(水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤等)は、有効成分を一般的に用いられる希釈剤(精製水、エタノール又はそれらの混液等)に溶解、懸濁又は乳化して製剤化される。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、緩衝剤等を含有していてもよい。
【0046】
注射剤は、溶液、懸濁液、乳濁液、及び用時溶剤に溶解又は懸濁して用いる固形の注射剤を包含する。注射剤は、有効成分を溶剤に溶解、懸濁又は乳化して製剤化される。溶剤として、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等及びそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80(登録商標)等)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤等を含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって製造される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化又は無菌の注射用蒸留水又は他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0047】
〔サプリメント〕
本発明は、本発明の剤を含有するヒアルロン酸産生促進用サプリメントを提供する。本発明のサプリメントは、上記本発明のペプチドを含むものであればよい。本発明のサプリメントは、経口用の固形剤(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等)又は経口用の液剤(ドリンク剤)等の形態で実施することができる。これらの製剤は、上述の医薬と同様の手法により製剤化することができる。
【0048】
〔食品〕
本発明は、本発明の剤を含有するヒアルロン酸産生促進用食品を提供する。本発明の食品は、上記本発明のペプチドを含むものであればどのようなものでもよい。本発明の食品は、経口用の固形剤(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等)又は経口用の液剤(ドリンク剤)等の形態で実施することができ、錠剤、ドリンク剤等の形態で実施することが好ましい。本発明の食品には、機能性食品、機能性表示食品、栄養機能食品、特定保健用食品、病者用食品が含まれる。食品の形態は特に限定されないが、例えば茶飲料、清涼飲料(清涼飲料水)、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料、そば、うどん、中華麺、即席麺等の麺類、飴、キャンディー、ガム、チョコレート、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子及びパン類、かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品、ヨーグルト、加工乳、発酵乳(チーズ)等の乳製品、サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品、ソース、たれ等の調味料、カレー、シチュー、丼、お粥、雑炊等のレトルトパウチ食品、アイスクリーム、シャーベット、かき氷等の冷菓などを挙げることができる。
【0049】
〔食品添加物〕
本発明は、本発明の剤を含有するヒアルロン酸産生促進用食品添加物を提供する。本発明の食品添加物は、上記本発明のペプチドを含むものであればよい。本発明の食品添加物は、固形剤(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等)又は液剤(ドリンク剤)等の形態で実施することができる。本発明の食品添加剤の形態は特に限定されないが、例えば、液状、ペースト状、粉末状、フレーク状、顆粒状等が挙げられる。本発明の食品添加剤には、飲料用の添加剤も含まれる。本発明の食品添加物は、一般的な食品添加剤の製造方法に従って製造することができる。
【0050】
〔化粧品又は医薬部外品〕
本発明は、本発明の剤を含有するヒアルロン酸産生促進用化粧品又は医薬部外品を提供する。本発明の化粧品又は医薬部外品は、上記本発明のペプチドを含むものであればよい。形態は特に限定されない。好ましくは例えば、皮膚外用剤(化粧水、乳液、ファンデーション、ハンドクリーム、美容液等を含む)、シャンプー、コンディショナー、トリートメント、ヘアケア剤、スタイリング剤、パック、石けん(洗顔料を含む)、ボディーシャンプー、育毛剤、浴用剤、水溶液の形態とすることができる。本発明の化粧品又は医薬部外品は、さらに医薬部外品又は化粧品として一般に使用されている成分、例えば、安定(化)剤、界面活性剤、滑沢剤、緩衝剤、甘味剤、矯味剤、結合剤、抗酸化剤、コーティング剤、湿潤剤、着香剤・香料、着色剤、糖衣剤、等張化剤、乳化剤、粘稠(化)剤、pH調節剤、賦形剤、分散剤、崩壊剤、防腐剤、保存剤、溶解剤、溶解補助剤、油分、保湿剤、紫外線吸収剤、充填剤、金属イオン封鎖剤、日焼け止め剤、消泡剤、柔軟剤、推進剤、酸性化又は塩基性化剤、シリコーン、ビタミン、染料、顔料、ナノ顔料、アルコール等の有機溶媒、水等を目的に応じて所望により配合することができる。好ましい剤形として、固形剤、液剤、ローション剤、乳剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、エアゾール剤等の剤型が挙げられ、外用に適する剤型であればこれらに限定されるものではない。
【0051】
〔飼料〕
本発明は、本発明の剤を含有するヒアルロン酸産生促進用飼料を提供する。本発明の飼料は、上記本発明のペプチドを含むものであればよい。本発明の飼料は、固形剤(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等)又は液剤(ドリンク剤)等の形態で実施することができる。飼料としては、例えば、ウシ、ウマ、ブタ等の家畜用飼料、ニワトリ等の家禽用飼料、イヌ、ネコ等のペット用飼料などが挙げられる。本発明の飼料は、飼料中に本発明のペプチド等を添加することにより製造されるが、それ以外にも、一般的な飼料の製造方法を用いて加工製造することができる。
【0052】
〔方法〕
本発明には、ヒトを含む哺乳動物に対して本発明の剤の有効量を投与することを特徴とするヒアルロン酸産生促進方法、ヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進方法、軟骨形成促進方法、関節障害の予防又は治療方法、膝の痛み、体の痛み若しくは身体機能の改善方法、肌のかさつき、しわ若しくは張りの改善方法、並びに、肌の保湿方法を提供する。
哺乳動物としては、ヒトやヒト以外の哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)が挙げられ、ヒトの中でも、特にヒトの女性が好ましい。投与形態は特に限定されず、例えば経口投与であってもよく、経皮投与(塗布)であってもよい。
【0053】
〔製造方法〕
本開示には、本発明の剤の製造方法が含まれる。本発明の剤の製造方法は、本発明のペプチドを合成する工程を含んでいることが好ましい。本発明の剤の製造方法は、好ましくは、本発明のペプチドと賦形剤等の添加剤又は他の有効成分とを混合する工程をさらに含む。
【0054】
本発明は、ヒアルロン酸産生促進のために使用する本発明の剤を包含する。
本発明は、ヒアルロン酸産生促進剤製造のための本発明の剤の使用を包含する。
本発明は、ヒアルロン酸産生促進のための本発明の剤の使用を包含する。
【実施例
【0055】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、%は、特に限定のない限り、質量%である。
【0056】
〔製造例1:サンプル(フェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリン含有溶液)の製造〕
N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-フェニルアラニンを265mg、O-(t-ブチル)-トランス-4-ヒドロキシ-L-プロリンt-ブチルエステル塩酸塩を276mg、ジメチルホルムアミドを40mL、トリエチルアミンを312μL、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩を641mg、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールを603mg混合後、4℃で4時間反応させた。反応後、エバポレーターにて溶液を全て気化させた。酢酸エチル20mLを気化残渣に添加して得られた酢酸エチル溶液を、分液漏斗に全て入れた。5%炭酸水素ナトリウム溶液、10%クエン酸溶液、飽和塩化ナトリウム溶液の順で気化残渣の洗浄を行った。洗浄後の酢酸エチル層に硫酸ナトリウムの結晶を加え脱水処理を行った。溶液にトリフルオロ酢酸/ジクロロメタンを1:1の割合で10mL添加し、4℃で4時間反応させた。窒素によって溶液を気化(エバポレーション)し、ジエチルエーテルを用いてフェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリンを抽出し、逆相液体クロマトグラフィーで精製した。得られた粉末状のフェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリンをDMEM/F-12培養液に溶解し、サンプル(フェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリン含有溶液)を得た。
【0057】
〔製造例2:サンプル(アラニル-4-ヒドロキシプロリン含有溶液)の製造〕
N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-アラニンを189mg、O-(t-ブチル)-トランス-4-ヒドロキシ-L-プロリンt-ブチルエステル塩酸塩を276mg、ジメチルホルムアミドを40mL、トリエチルアミンを312μL、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩を641mg、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールを603mg混合後、4℃で4時間反応させた。反応後、エバポレーターにて溶液を全て気化させた。酢酸エチル20mLを気化残渣に添加して得られた酢酸エチル溶液を、分液漏斗に全て入れた。5%炭酸水素ナトリウム溶液、10%クエン酸溶液、飽和塩化ナトリウム溶液の順で気化残渣の洗浄を行った。洗浄後の酢酸エチル層に硫酸ナトリウムの結晶を加え脱水処理を行った。溶液にトリフルオロ酢酸/ジクロロメタンを1:1の割合で10mL添加し、4℃で4時間反応させた。窒素によって溶液を気化(エバポレーション)し、ジエチルエーテルを用いてアラニル-4-ヒドロキシプロリンを抽出し、逆相液体クロマトグラフィーで精製した。得られた粉末状のアラニル-4-ヒドロキシプロリンをDMEM/F-12培養液に溶解し、サンプル(アラニル-4-ヒドロキシプロリン含有溶液)を得た。
【0058】
〔試験例1:軟骨前駆細胞におけるフェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリン及びアラニル-4-ヒドロキシプロリンの軟骨基質産生促進作用〕
マウス軟骨前駆細胞株ATDC5(RIKEN BRC No.RCB0565)を、5%FBS、1%Penicillin-Streptomycin solution、5μg/mL transferrin、3×10-8M sodium seleniteを含むDMEM/F-12培養液中で、37℃、5体積%CO-95体積%airの下でサブコンフルエントになるまで培養した後、トリプシン処理により細胞を集めた。集めた細胞を、上記DMEM/F-12培養液に懸濁して細胞懸濁液(50×10個/mL)を調製した。この細胞懸濁液を24穴プレートに20μLずつスポットになるように播種し、37℃、5体積%CO-95体積%airの下で前培養した。3時間後、ウェル中の培養液を、上記DMEM/F-12培養液にフェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリン(最終濃度500μM)及びインスリン(最終濃度0.1μg/mL)あるいはアラニル-4-ヒドロキシプロリン(最終濃度500μM)及びインスリン(最終濃度0.1μg/mL)を添加した培養液に交換し、更に14日間培養した。軟骨前駆細胞の軟骨基質はアルシアンブルー染色液を用いて染色し、数値化にはImage J(National Institutes of Health)を用いて評価した。サンプルの軟骨前駆細胞の軟骨基質量は、サンプル未添加の軟骨基質量を100とした時の相対値で表した。
【0059】
結果を図1に示した。アラニル-4-ヒドロキシプロリン(図中、Ala-Hyp)及びフェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリン(図中、Phe-Hyp)は軟骨前駆細胞の軟骨基質産生を促進した。**は危険率1%、***は危険率0.1%の有意水準を示す。
【0060】
〔試験例2:軟骨前駆細胞におけるフェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリンの軟骨分化関連遺伝子発現増強効果の検討〕
マウス軟骨前駆細胞株ATDC5(RIKEN BRC No.RCB0565)を、5%FBS、1%Penicillin-Streptomycin solution、5μg/mL transferrin、3×10-8M sodium seleniteを含むDMEM/F-12培養液を用いて、37℃、5体積%CO-95体積%airの下でサブコンフルエントになるまで培養した後、トリプシン処理により細胞を集めた。集めた細胞を、上記DMEM/F-12培養液に懸濁して細胞懸濁液(10×10個/mL)を調製した。この細胞懸濁液を24穴プレートに500μLずつ播種し、37℃、5体積%CO-95体積%airの下で前培養した。2日後、ウェル中の培養液を、上記DMEM/F-12培養液にフェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリン(最終濃度500μM)及びインスリン(最終濃度0.1μg/mL)を添加した培養液に交換し、更に3日間培養した。ポジティブコントロールとしてインスリン10μg/mLを用いた。培養後、全RNA抽出及びcDNA合成を行い、Real-time PCR法にてGAPDHのmRNA発現量に対する軟骨分化関連遺伝子のmRNA発現量の割合を定量し、評価した。サンプルの発現量は、サンプル未添加の発現量を1とした時の相対値で表した。また、データの棄却はグラブス・スミルノフの検定を用いて行った。
【0061】
結果を図2図3図4及び図5に示した。フェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリン(図中、Phe-Hyp)は軟骨分化関連遺伝子であるSOX9、Acan、ColX、has2の発現を増強した。*は危険率5%、**は危険率1%、***は危険率0.1%の有意水準を示す。
【0062】
〔試験例3:マウス膝部を用いたフェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリンのex vivoにおけるヒアルロン酸産生促進の検討〕
1mg/mL フェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリン、5%FBS、1%Penicillin-Streptomycin solution、5μg/mL transferrin、3×10-8M sodium seleniteを含むDMEM/F-12培養液を24穴プレートに1mLずつ添加した。ddYマウス(雌性、リタイア)の左右後肢より大腿骨及び脛骨を取り出し、滑膜に切れ目を入れ軟骨が露出するようにした後、関節のみが培養液に浸かるように設置し、37℃、5体積%CO-95体積%airの下で1日間培養した。培養後、培養上清を回収し1500×g、4℃、30分の条件下で遠心分離を行った。その後、上清を回収しELISAを用いてヒアルロン酸量を測定し、評価した。サンプルのヒアルロン酸量は、サンプル未添加のヒアルロン酸量を100とした時の相対値で表した。
【0063】
結果を図6に示した。フェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリン(図中、Phe-Hyp)はex vivoにおいてヒアルロン酸産生を促進した。**は危険率1%の有意水準を示す。
【0064】
〔製造例3:清涼飲料水〕
製造例1で製造したフェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリンを含有する清涼飲料水を調製した。すなわち、組成が混合異性化糖15.0%、果汁10%、フェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリン2.0%、香料0.1%、カルシウム0.1%、水72.8%である原料を混合し、プレート殺菌機を用いて90℃、15秒間殺菌し、清涼飲料水を製造した。
【0065】
〔製造例4:ヨーグルト〕
製造例1で製造したフェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリンを含有するヨーグルトを調製した。すなわち、組成がフェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリン3.0%、蔗糖7%、香料0.1%、ヨーグルト89.9%である原料を混合し容器に充填して、ヨーグルトを製造した。
【0066】
〔製造例5:チーズ〕
製造例1で製造したフェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリンを含有するプロセスチーズを調製した。すなわち、ゴーダチーズ35%、チェダーチーズ35%、パルメザンチーズ20%、フェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリン2.0%、リン酸カルシウム1.0%、水7.0%を含むように各原料を混合後、乳化温度85℃で乳化して、プロセスチーズを製造した。
【0067】
〔製造例6:カプセル剤〕
製造例1で製造したフェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリン60%、コーンスターチ30%、乳糖10%を含むように各原料を配合して、ゼラチンカプセルに充填(カプセル1個当たり200mg)し、カプセル剤を製造した。
【0068】
〔製造例7:錠剤〕
製造例1で製造したフェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリン60%、還元麦芽糖18%、結晶セルロース18%、ショ糖エステル4%を含むように各原料を配合後打錠(1錠当たり300mg)して、錠剤を製造した。
【0069】
〔製造例8~12〕
製造例3~7における、フェニルアラニル-4-ヒドロキシプロリンを、液相合成法で製造したアラニル-4-ヒドロキシプロリンに置換えたこと以外は、製造例3~7の方法と同様の方法で、アラニル-4-ヒドロキシプロリンを含有する、清涼飲料水(製造例8)、ヨーグルト(製造例9)、チーズ(製造例10)、カプセル剤(製造例11)、及び錠剤(実施例12)を製造した。
【0070】
なお本発明は上述した各実施形態及び実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、ヒアルロン酸産生促進剤、より具体的には食品、食品添加物、サプリメント、化粧品、医薬部外品、医薬品又は飼料として有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6