(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】バッテリ充放電試験装置及びバッテリ放電電力制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20220420BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
H02J7/00 303C
H02J7/00 Q
H02M3/155 P
H02M3/155 U
H02M3/155 B
(21)【出願番号】P 2021087271
(22)【出願日】2021-05-24
【審査請求日】2022-02-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595098011
【氏名又は名称】東洋システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨澤 豊
(72)【発明者】
【氏名】庄司 秀樹
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-220896(JP,A)
【文献】特開2011-80966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01M 10/42-10/48
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定電圧の直流電圧を2つのバスライン間に出力する直流電源部と、
複数のスイッチング素子からなりかつ2つの第1入力端子及び2つの第1出力端子を有する第1フルブリッジ回路を含み、前記2つの第1入力端子に前記2つのバスラインが各々接続され、前記2つの第1出力端子にテストバッテリの正端子及び負端子が各々接続されるメインDC/DC変換部と、
前記第1フルブリッジ回路の前記複数のスイッチング素子各々のオンオフを第1周期でデューティ比制御し、充電試験モード時に前記第1フルブリッジ回路を介して前記テストバッテリに充電電流を供給させることにより前記テストバッテリを充電させ、放電試験モード時に前記テストバッテリの蓄電電荷を前記第1フルブリッジ回路を介して放電させることにより前記2つのバスライン間に前記テストバッテリの放電電力を給電させるメイン充放電制御部と、
複数のスイッチング素子からなりかつ2つの第2入力端子及び2つの第2出力端子を有する第2フルブリッジ回路を有し、前記2つの第2入力端子に前記2つのバスラインが各々接続され、前記2つの第2出力端子に内蔵バッテリの正端子及び負端子が各々接続されるサブDC/DC変換部と、
前記第2フルブリッジ回路の前記複数のスイッチング素子各々のオンオフを第2周期でデューティ比制御して前記内蔵バッテリに対する充放電を行うサブ充放電制御部と、を備えるバッテリ充放電試験装置であって、
前記サブ充放電制御部は、
前記内蔵バッテリの出力電圧が電力供給可能電圧範囲にあるとき前記バスライン間の電圧が前記直流電圧の定電圧値より高い第1所定電圧値になるように前記第2周期のデューティ比制御により前記内蔵バッテリの放電電力を前記第2フルブリッジ回路を介して前記2つのバスライン間に供給させるサブ電力供給制御を実行し、前記サブ電力供給制御の実行中に前記バスライン間の電圧が前記直流電圧の定電圧値以下に低下すると前記サブ電力供給制御を停止し、
前記サブ電力供給制御の実行中に前記バスライン間の電圧が前記第1所定電圧値を越えたときには前記サブ電力供給制御を停止し、前記第2周期のデューティ比制御により前記2つのバスライン間に給電された前記テストバッテリの放電電力を電源として前記第2フルブリッジ回路を介して前記内蔵バッテリを充電させる定電流充電制御を実行し、前記定電流充電制御の実行中に前記バスライン間の電圧が、前記直流電圧の定電圧値より高く前記第1所定電圧値より低い第2所定電圧値以下に低下すると前記定電流充電制御を停止することを特徴とするバッテリ充放電試験装置。
【請求項2】
前記サブ充放電制御部は、前記サブ電力供給制御の実行中に前記バスライン間の電圧低下が生じたか否かを繰り返し判別し、前記バスライン間の電圧低下を判別したとき前記第1所定電圧値を段階的に低下させることを特徴とする請求項1記載のバッテリ充放電試験装置。
【請求項3】
前記サブ充放電制御部は、前記定電流充電制御の実行中に前記バスライン間の電圧低下が生じたか否かを繰り返し判別し、前記バスライン間の電圧低下を判別したとき前記内蔵バッテリへの充電電流を低下させ、前記バスライン間の電圧低下を判別しなかったとき前記内蔵バッテリへの充電電流を増加させることを特徴とする請求項1又は2記載のバッテリ充放電試験装置。
【請求項4】
前記サブ充放電制御部は、前記テストバッテリに対する充放電試験が不可能な低電圧又は過電圧に前記バスライン間の電圧があるとき前記定電流充電制御及び前記サブ電力供給制御を含む制御動作を停止することを特徴とする請求項1又は2記載のバッテリ充放電試験装置。
【請求項5】
前記第1フルブリッジ回路は、第1スイッチング素子、第2スイッチング素子、第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子からなり、
前記第1スイッチング素子の一端と前記第3スイッチング素子の一端とが前記2つの第1入力端子の一方に接続され、
前記第2スイッチング素子の一端と前記第4スイッチング素子の一端とが前記2つの第1入力端子の他方に接続され、
前記第1スイッチング素子の他端と前記第2スイッチング素子の他端とが前記2つの第1出力端子の一方に接続され、
前記第3スイッチング素子の他端と前記第4スイッチング素子の他端とが前記2つの第1出力端子の他方に接続され、
前記第1入力端子の一方が前記2つのバスラインの一方に接続され、前記第1入力端子の他方が前記2つのバスラインの他方に接続され、
前記2つの第1出力端子が第1インダクタ及び第1キャパシタを含む第1平滑回路を介して前記テストバッテリの両端子に各々接続され、
前記メイン充放電制御部は、
前記第1周期内に第1充電電流期間、前記第1充電電流期間の終了直後の第1転流電流期間、第1放電電流期間、及び前記第1放電電流期間の終了直後の第2転流電流期間を構成し、
前記第1充電電流期間において前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子をオンに制御し、前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子をオフに制御して前記テストバッテリに充電電流を供給し、
前記第1転流電流期間において前記第1乃至前記第4スイッチング素子をオフに制御して前記第1インダクタに蓄積されたエネルギーにより前記充電電流の方向に第1転流電流を前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子各々の還流ダイオードを介して流し、
前記第1放電電流期間において前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子をオフに制御し、前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子をオンに制御して前記テストバッテリから放電電流を流し出し、
前記第2転流電流期間において前記第1乃至前記第4スイッチング素子をオフに制御して前記第1インダクタに蓄積されたエネルギーにより前記放電電流の方向に第2転流電流を前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子各々の還流ダイオードを介して流し、
前記第1充電電流期間と前記第1放電電流期間との比率によって前記第1周期のデューティ比制御を行い、
前記第2フルブリッジ回路は、第5スイッチング素子、第6スイッチング素子、第7スイッチング素子及び第8スイッチング素子からなり、
前記第5スイッチング素子の一端と前記第7スイッチング素子の一端とが前記2つの第2入力端子の一方に接続され、
前記第6スイッチング素子の一端と前記第8スイッチング素子の一端とが前記2つの第2入力端子の他方に接続され、
前記第5スイッチング素子の他端と前記第6スイッチング素子の他端とが前記2つの第2出力端子の一方に接続され、
前記第7スイッチング素子の他端と前記第8スイッチング素子の他端とが前記2つの第2出力端子の他方に接続され、
前記第2入力端子の一方が前記2つのバスラインの一方に接続され、前記第2入力端子の他方が前記2つのバスラインの他方に接続され、
前記2つの第2出力端子が第2インダクタ及び第2キャパシタを含む第2平滑回路を介して前記内蔵バッテリの両端子に各々接続され、
前記サブ充放電制御部は、
前記第2周期内に第2充電電流期間、前記第2充電電流期間の終了直後の第3転流電流期間、第2放電電流期間、及び前記第2放電電流期間の終了直後の第4転流電流期間を構成し、
前記第2充電電流期間において前記第5スイッチング素子及び前記第8スイッチング素子をオンに制御し、前記第6スイッチング素子及び前記第7スイッチング素子をオフに制御して前記内蔵バッテリに充電電流を供給し、
前記第3転流電流期間において前記第5乃至前記第8スイッチング素子をオフに制御して前記第2インダクタに蓄積されたエネルギーにより前記内蔵バッテリへの充電電流の方向に第3転流電流を前記第6スイッチング素子及び前記第7スイッチング素子各々の還流ダイオードを介して流し、
前記第2放電電流期間において前記第5スイッチング素子及び前記第8スイッチング素子をオフに制御し、前記第6スイッチング素子及び前記第7スイッチング素子をオンに制御して前記内蔵バッテリから放電電流を流し出し、
前記第4転流電流期間において前記第5乃至前記第8スイッチング素子をオフに制御して前記第2インダクタに蓄積されたエネルギーにより前記内蔵バッテリから放電電流の方向に第2転流電流を前記第5スイッチング素子及び前記第8スイッチング素子各々の還流ダイオードを介して流し、
前記第2充電電流期間と前記第2放電電流期間との比率によって前記第2周期のデューティ比制御を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1記載のバッテリ充放電試験装置。
【請求項6】
前記2つのバスラインの一方には逆流防止素子が設けられ、逆流防止素子は前記メインDC/DC変換部及び前記サブDC/DC変換部から前記直流電源部への電流の流れを阻止することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1記載のバッテリ充放電試験装置。
【請求項7】
定電圧の直流電圧を2つのバスライン間に出力する直流電源部と、
複数のスイッチング素子からなりかつ2つの第1入力端子及び2つの第1出力端子を有する第1フルブリッジ回路を含み、前記2つの第1入力端子に前記2つのバスラインが各々接続され、前記2つの第1出力端子にテストバッテリの正端子及び負端子が各々接続されるメインDC/DC変換部と、
前記第1フルブリッジ回路の前記複数のスイッチング素子各々のオンオフを第1周期でデューティ比制御し、充電試験モード時に前記第1フルブリッジ回路を介して前記テストバッテリに充電電流を供給させることにより前記テストバッテリを充電させ、放電試験モード時に前記テストバッテリの蓄電電荷を前記第1フルブリッジ回路を介して放電させることにより前記2つのバスライン間に前記テストバッテリの放電電力を給電させるメイン充放電制御部と、
複数のスイッチング素子からなりかつ2つの第2入力端子及び2つの第2出力端子を有する第2フルブリッジ回路を有し、前記2つの第2入力端子に前記2つのバスラインが各々接続され、前記2つの第2出力端子に内蔵バッテリの正端子及び負端子が各々接続されるサブDC/DC変換部と、
前記第2フルブリッジ回路の前記複数のスイッチング素子各々のオンオフを第2周期でデューティ比制御して前記内蔵バッテリに対する充放電を行うサブ充放電制御部と、を備えるバッテリ充放電試験装置のバッテリ放電電力制御方法であって、
前記サブ充放電制御部は、
前記内蔵バッテリの出力電圧が電力供給可能電圧範囲にあるとき前記バスライン間の電圧が前記直流電圧の定電圧値より高い第1所定電圧値になるように前記第2周期のデューティ比制御により前記内蔵バッテリの放電電力を前記第2フルブリッジ回路を介して前記2つのバスライン間に供給させるサブ電力供給制御を実行し、前記サブ電力供給制御の実行中に前記バスライン間の電圧が前記直流電圧の定電圧値以下に低下すると前記サブ電力供給制御を停止するステップと、
前記サブ電力供給制御の実行中に前記バスライン間の電圧が前記第1所定電圧値を越えたときには前記サブ電力供給制御を停止し、前記第2周期のデューティ比制御により前記2つのバスライン間に給電された前記テストバッテリの放電電力を電源として前記第2フルブリッジ回路を介して前記内蔵バッテリを充電させる定電流充電制御を実行し、前記定電流充電制御の実行中に前記バスライン間の電圧が、前記直流電圧の定電圧値より高く前記第1所定電圧値より低い第2所定電圧値以下に低下すると前記定電流充電制御を停止するステップと、を含むことを特徴とするバッテリ放電電力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの特性試験のためにバッテリの充放電を制御するバッテリ充放電試験装置及びバッテリ放電電力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリ充放電試験装置は、充電動作と放電動作とを各々行って試験対象のテストバッテリの充放電特性を測定するものである。充電動作及び放電動作の各々の際にはテストバッテリの充放電特性を得るために例えば、テストバッテリの電圧と充放電電流とが時間経過と共に測定される。
【0003】
バッテリ充放電試験装置としては、特許文献1に開示されているように、双方向DC-DCコンバータが用いられているものがある。双方向DC-DCコンバータは、4つのスイッチング素子をブリッジ接続したフルブリッジ回路からなる。双方向DC-DCコンバータの一方の端子に直流電源が接続され、他方の端子にチョークコイルを介してバッテリが接続される。双方向DC-DCコンバータの各スイッチング素子のオンオフは制御部によって所定の周期でデューティ比制御される。充電動作時には直流電源から双方向DC-DCコンバータのフルブリッジ回路、そしてチョークコイルを介してバッテリに充電電流が供給され、テストバッテリを充電させる。放電動作では電力回生を自己回生方式で対応する場合には、バッテリからの放電電流がチョークコイル、そして双方向DC-DCコンバータのフルブリッジ回路を介して直流電源側の回路に供給し、その直流電源側の回路で放電電力を消費させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放電動作時に
しかしながら、近時、バッテリ充放電試験装置の高電流仕様の需要があり、自己回生方式で対応しようとした場合には、ケーブル損失、制御電源、冷却用ファンでは消費しきれない放電電力は放電回路で強制的に消費しており、無駄に電力消費するものであった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、テストバッテリの放電動作時に回生電力として生じる放電電力を効率よく利用することができるバッテリ充放電試験装置及びバッテリ放電電力制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のバッテリ充放電試験装置は、定電圧の直流電圧を2つのバスライン間に出力する直流電源部と、複数のスイッチング素子からなりかつ2つの第1入力端子及び2つの第1出力端子を有する第1フルブリッジ回路を含み、前記2つの第1入力端子に前記2つのバスラインが各々接続され、前記2つの第1出力端子にテストバッテリの正端子及び負端子が各々接続されるメインDC/DC変換部と、前記第1フルブリッジ回路の前記複数のスイッチング素子各々のオンオフを第1周期でデューティ比制御し、充電試験モード時に前記第1フルブリッジ回路を介して前記テストバッテリに充電電流を供給させることにより前記テストバッテリを充電させ、放電試験モード時に前記テストバッテリの蓄電電荷を前記第1フルブリッジ回路を介して放電させることにより前記2つのバスライン間に前記テストバッテリの放電電力を給電させるメイン充放電制御部と、複数のスイッチング素子からなりかつ2つの第2入力端子及び2つの第2出力端子を有する第2フルブリッジ回路を有し、前記2つの第2入力端子に前記2つのバスラインが各々接続され、前記2つの第2出力端子に内蔵バッテリの正端子及び負端子が各々接続されるサブDC/DC変換部と、前記第2フルブリッジ回路の前記複数のスイッチング素子各々のオンオフを第2周期でデューティ比制御して前記内蔵バッテリに対する充放電を行うサブ充放電制御部と、を備えるバッテリ充放電試験装置であって、前記サブ充放電制御部は、前記内蔵バッテリの出力電圧が電力供給可能電圧範囲にあるとき前記バスライン間の電圧が前記直流電圧の定電圧値より高い第1所定電圧値になるように前記第2周期のデューティ比制御により前記内蔵バッテリの放電電力を前記第2フルブリッジ回路を介して前記2つのバスライン間に供給させるサブ電力供給制御を実行し、前記サブ電力供給制御の実行中に前記バスライン間の電圧が前記直流電圧の定電圧値以下に低下すると前記サブ電力供給制御を停止し、前記サブ電力供給制御の実行中に前記バスライン間の電圧が前記第1所定電圧値を越えたときには前記サブ電力供給制御を停止し、前記第2周期のデューティ比制御により前記2つのバスライン間に給電された前記テストバッテリの放電電力を電源として前記第2フルブリッジ回路を介して前記内蔵バッテリを充電させる定電流充電制御を実行し、前記定電流充電制御の実行中に前記バスライン間の電圧が、前記直流電圧の定電圧値より高く前記第1所定電圧値より低い第2所定電圧値以下に低下すると前記定電流充電制御を停止することを特徴としている。
【0008】
本発明のバッテリ放電電力制御方法は、定電圧の直流電圧を2つのバスライン間に出力する直流電源部と、複数のスイッチング素子からなりかつ2つの第1入力端子及び2つの第1出力端子を有する第1フルブリッジ回路を含み、前記2つの第1入力端子に前記2つのバスラインが各々接続され、前記2つの第1出力端子にテストバッテリの正端子及び負端子が各々接続されるメインDC/DC変換部と、前記第1フルブリッジ回路の前記複数のスイッチング素子各々のオンオフを第1周期でデューティ比制御し、充電試験モード時に前記第1フルブリッジ回路を介して前記テストバッテリに充電電流を供給させることにより前記テストバッテリを充電させ、放電試験モード時に前記テストバッテリの蓄電電荷を前記第1フルブリッジ回路を介して放電させることにより前記2つのバスライン間に前記テストバッテリの放電電力を給電させるメイン充放電制御部と、複数のスイッチング素子からなりかつ2つの第2入力端子及び2つの第2出力端子を有する第2フルブリッジ回路を有し、前記2つの第2入力端子に前記2つのバスラインが各々接続され、前記2つの第2出力端子に内蔵バッテリの正端子及び負端子が各々接続されるサブDC/DC変換部と、前記第2フルブリッジ回路の前記複数のスイッチング素子各々のオンオフを第2周期でデューティ比制御して前記内蔵バッテリに対する充放電を行うサブ充放電制御部と、を備えるバッテリ充放電試験装置のバッテリ放電電力制御方法であって、前記サブ充放電制御部は、前記内蔵バッテリの出力電圧が電力供給可能電圧範囲にあるとき前記バスライン間の電圧が前記直流電圧の定電圧値より高い第1所定電圧値になるように前記第2周期のデューティ比制御により前記内蔵バッテリの放電電力を前記第2フルブリッジ回路を介して前記2つのバスライン間に供給させるサブ電力供給制御を実行し、前記サブ電力供給制御の実行中に前記バスライン間の電圧が前記直流電圧の定電圧値以下に低下すると前記サブ電力供給制御を停止するステップと、前記サブ電力供給制御の実行中に前記バスライン間の電圧が前記第1所定電圧値を越えたときには前記サブ電力供給制御を停止し、前記第2周期のデューティ比制御により前記2つのバスライン間に給電された前記テストバッテリの放電電力を電源として前記第2フルブリッジ回路を介して前記内蔵バッテリを充電させる定電流充電制御を実行し、前記定電流充電制御の実行中に前記バスライン間の電圧が、前記直流電圧の定電圧値より高く前記第1所定電圧値より低い第2所定電圧値以下に低下すると前記定電流充電制御を停止するステップと、を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のバッテリ充放電試験装置及びバッテリ放電電力制御方法によれば、放電試験モード時にメインDC/DC変換部から得られる放電電力を内蔵バッテリに蓄電し、内蔵バッテリの蓄電電力を充電試験モードにおける充電電源としてメインDC/DC変換部に供給するので、放電電力を効率良く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明が適用されたバッテリ充放電試験装置の回路構成を示す図である。
【
図2】
図1のバッテリ充放電試験装置内のメインDC/DC変換部の構成を示す回路図である。
【
図3】
図1のバッテリ充放電試験装置内のサブDC/DC変換部の構成を示す回路図である。
【
図4】
図2のメインDC/DC変換部内のスイッチング素子のオンオフ状態を示すタイムチャートである。
【
図5】
図4の充電電流期間TM1におけるメインDC/DC変換部内の充電電流経路を示す図である。
【
図6】
図4の転流電流期間TM2におけるメインDC/DC変換部内の転流電流経路を示す図である。
【
図7】
図4の放電電流期間TM3におけるメインDC/DC変換部内の放電電流経路を示す図である。
【
図8】
図4の転流電流期間TM4におけるメインDC/DC変換部内の転流電流経路を示す図である。
【
図9】
図1のバッテリ充放電試験装置内のサブ制御部の制御動作を示すフローチャートである。
【
図10】サブ制御部の制御開始時のサブスイッチ及びメインスイッチのターンオン時点、並びにサブDC/DC変換部内のスイッチング素子各々のオンオフ動作の開始時点を示すタイムチャートである。
【
図11】
図2のサブDC/DC変換部内のスイッチング素子のオンオフ状態を示すタイムチャートである。
【
図12】
図11の充電電流期間TS1におけるサブDC/DC変換部内の充電電流経路を示す図である。
【
図13】
図11の転流電流期間TS2におけるサブDC/DC変換部内の転流電流経路を示す図である。
【
図14】
図11の放電電流期間TS3におけるサブDC/DC変換部内の放電電流経路を示す図である。
【
図15】
図11の転流電流期間TS4におけるサブDC/DC変換部内の転流電流経路を示す図である。
【
図16】
図9のサブ制御部の制御動作中のDC/DC変換部のゲート制御を示すフローチャートである。
【
図17】
図16のゲート制御の続き部分を示すフローチャートである。
【
図18】
図9のサブ制御部の制御動作中の放電回路制御を示すフローチャートである。
【
図19】ゲート制御中の定電流充電制御及びサブ電力供給制御の各々が実行されるバスライン電圧の電圧範囲を示す図である。
【
図20】
図1のバッテリ充放電試験装置内の逆流防止素子としてNチャンネルのFETを用いた例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明によるバッテリ充放電試験装置を示している。このバッテリ充放電試験装置は、メイン充放電部11とサブ充放電部12を備えている。メイン充放電部11は1次電源である交流電源14の供給を受けて試験対象のテストバッテリ15に対して充放電試験を行う部分である。サブ充放電部12は内蔵バッテリ16を有し、バッテリ15の放電電力を電源として受けて内蔵バッテリ16に対して充放電を行う部分である。バッテリ15の定格電圧は例えば、6[V]であるが、AC/DC変換部21の出力電圧以下の電圧でも良い。内蔵バッテリ16の定格電圧は本実施例では12[V]であるが、内蔵バッテリ16の実際の出力電圧V
BATは内蔵バッテリ16の蓄電電荷状態によって変化する。
【0013】
メイン充放電部11は、AC/DC変換部21と、ダイオード22と、メインDC/DC変換部23と、メインスイッチ25、サブスイッチ26と、抵抗27と、ヒューズ28と、電圧検出部29、30と、メイン制御部50とを含む。
【0014】
AC/DC変換部21は、直流電源部を構成し、交流電源14に接続されている。AC/DC変換部21は、交流電源14の出力交流電圧が入力端子21A、21Bに入力されると、交流電圧を整流することにより所定の直流電圧に変換し、その直流電圧を出力端子21C、21Dから出力する。本実施例では、交流電源14の出力交流電圧は200[V]、AC/DC変換部21の出力直流電圧は24.0[V]の定電圧であるとして説明する。
【0015】
AC/DC変換部21の正電圧側の出力端子にはダイオード22のアノードが接続されている。ダイオード22のカソードはバスラインL1を介してメインDC/DC変換部23の端子23Aに接続されている。AC/DC変換部21の負電圧側の出力端子21DはバスラインL2を介してメインDC/DC変換部23の端子23Bに接続されている。ダイオード22はアノードからカソードへの一方向にのみ電流を流すためのものである。具体的にはダイオード22は、AC/DC変換部21から充電電流をメインDC/DC変換部23へ流し、メインDC/DC変換部23からの放電電流がAC/DC変換部21へ流れ込むことを阻止する。また、ダイオード22は、後述するサブDC/DC変換部51からの放電電流がAC/DC変換部21へ流れ込むことも阻止する。
【0016】
図2に示すように、メインDC/DC変換部23は、4個のIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)等の半導体スイッチング素子31~34からなるフルブリッジ回路35と、チョークコイル36、37と、コンデンサ38、39と、電流検出器40とを備えている。
【0017】
メインDC/DC変換部23は4つの外部接続用の端子23A~23Dを有する。端子23A、23B間にはコンデンサ38が接続されている。
【0018】
フルブリッジ回路35は第1フルブリッジ回路であり、半導体スイッチング素子31~34が第1~第4スイッチング素子に対応する。フルブリッジ回路35では、スイッチング素子31、33の一端(2つの第1入力端子の一方)が端子23Aに接続され、スイッチング素子32、34の一端(2つの第1入力端子の他方)が23Bに接続されている。スイッチング素子31、32の他端(2つの第1出力端子の一方)が互いに接続され、その接続点がチョークコイル36、そして電流検出部40を直列に介して端子23Cに接続されている。また、スイッチング素子33、34の他端(2つの第1出力端子の他方)が互いに接続され、その接続点がチョークコイル37を介して端子23Dに接続されている。端子23C、23D間にはコンデンサ39が接続されている。インダクタであるチョークコイル36、37とキャパシタであるコンデンサ39は第1平滑回路を構成している。
【0019】
スイッチング素子31~34は、ターンオン時の破損を防ぐ還流ダイオード(フリーホイーリングダイオード)41~44を各々有している。具体的にはスイッチング素子31~34に環流ダイオード41~44が各々並列接続されている。この還流ダイオードは、半導体スイッチング素子としてIGBTを用いた場合には、IGBTのコレクタに環流ダイオードのカソードを接続し、エミッタに環流ダイオードのアノードを接続している。
【0020】
フルブリッジ回路35は、基本的に、スイッチング素子31、34がオンであり、スイッチング素子32、33がオフである充電電流期間TM1と、スイッチング素子31~34がオフであり、ダイオード42、43がオンとなる転流電流期間TM2と、スイッチング素子31、34がオフであり、スイッチング素子32、33がオンである放電電流期間TM3と、スイッチング素子31~34がオフであり、ダイオード41、44がオンとなる転流電流期間TM4とかなる期間を1周期T1(第1周期)とし、それを繰り返す。スイッチング素子31~34のオンオフはメイン制御部50によって制御される。充電電流期間TM1と放電電流期間TM3とはデューティ比制御される。本実施例では、このメイン制御部50のデューティ比はDMで表され、充電電流期間TM1と放電電流期間TM3との合計期間に対応する充電電流期間TM1の割合である。例えば、メイン充放電部11がバッテリ15に対する充電試験モードにあるときにはデューティ比DMが50%より大きくなり、すなわち1周期T1内の充電電流期間TM1が放電電流期間TM3より長くなり、バッテリ15に流れる充電電流によってバッテリ15が充電される。メイン充放電部11がバッテリ15に対する放電試験モードにあるときにはデューティ比DMが50%より小さくなり、すなわち1周期T1内の充電電流期間TM1が放電電流期間TM3より短くなり、バッテリ15は放電電流によって放電する。
【0021】
メインDC/DC変換部23の端子23Cは、メインスイッチ25を直列に介してバッテリ15の正端子に接続されている。メインスイッチ25にはサブスイッチ26及び抵抗27の直列回路が並列に接続されている。メインDC/DC変換部23の端子23Dは、ヒューズ28を介してバッテリ15の負端子に接続されている。充放電試験開始時に、例えば、バッテリ15の充電電圧が予め定められた第1閾値電圧以下であるときには、バッテリ15に対して充電電流を供給する際にサブスイッチ26が先ずオンし、それから予め定められた一定時間が経過した後にメインスイッチ25がオンする。これは充放電試験開始時にメインDC/DC変換部23のコンデンサ39の電圧とバッテリ15の電圧差により、過剰な充電電流がバッテリ15からメインDC/DC変換部23のコンデンサ39に供給されることを防止するためである。
【0022】
電流検出部40はフルブリッジ回路35とバッテリ15との間を流れる電流値を検出する。すなわち、充電試験モードではバッテリ15を充電させる充電電流の値を検出し、放電試験モードではバッテリ15が放電する際の放電電流の値を検出する。電流検出部40は例えば、抵抗または電流センサからなる。電圧検出部29はAC/DC変換部21の出力端子21C、21D間の電圧と、メインDC/DC変換部23の端子23A、23B間の電圧VDCとを検出する。電圧VDCはバスラインL1,L2間のバスライン電圧である。電圧検出部30はバッテリ15の正負端子間の電圧を検出する。
【0023】
メイン制御部50は例えば、マイクロコンピュータから構成される。メイン制御部50には電流検出部40及び電圧検出部29、30の各々の検出出力が接続され、電流検出部40による検出電流値、及び電圧検出部29、30の各検出電圧値が供給される。メイン制御部50はメインDC/DC変換部23に接続され、メインDC/DC変換部23内の半導体スイッチング素子31~34のオンオフを制御する。メイン制御部50はメインスイッチ25及びサブスイッチ26の制御端に接続され、メインスイッチ25及びサブスイッチ26の各々のオンオフを制御する。
【0024】
また、メイン制御部50には充放電コントローラ46を介してテストPC(パーソナルコンピュータ)47が接続されている。バッテリ15の充放電試験の際にテストPC47への操作に応じてテストPC47から充放電コントローラ46を介してメイン制御部50に各種の動作指令が供給されるようにされている。
【0025】
サブ充放電部12は、上述した内蔵バッテリ16の他に、サブDC/DC変換部51と、電圧検出部52と、ヒューズ53、メインスイッチ55と、抵抗56と、サブスイッチ57と、簡易放電回路58と、ヒューズ59、温度センサ60と、電圧検出部61と、サブ制御部62とを有している。
【0026】
図3に示すように、サブDC/DC変換部51は、メインDC/DC変換部23と同様の構成を有しており、4個のIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)等の半導体スイッチング素子71~74からなるフルブリッジ回路75と、チョークコイル76、77と、コンデンサ78、79と、電流検出器80とを備えている。
【0027】
サブDC/DC変換部51は4つの外部接続用の端子51A~51Dを有する。端子51A、51B間にはコンデンサ78が接続されている。
【0028】
フルブリッジ回路75は第2フルブリッジ回路であり、半導体スイッチング素子71~74が第5~第8スイッチング素子に対応する。フルブリッジ回路75では、スイッチング素子71、73の一端(2つの第2入力端子の一方)が端子51Aに接続され、スイッチング素子72、74の一端(2つの第2入力端子の他方)が端子51Bに接続されている。スイッチング素子71、72の他端(2つの第2出力端子の一方)が互いに接続され、その接続点がチョークコイル76、そして電流検出部80を直列に介して端子51Cに接続されている。また、スイッチング素子73、74の他端(2つの第2出力端子の他方)が互いに接続され、その接続点がチョークコイル77を介して端子51Dに接続されている。端子51C、51D間にはコンデンサ79が接続されている。チョークコイル76、77及びコンデンサ79は第2平滑回路を構成している。
【0029】
スイッチング素子71~74は、スイッチング素子31~34と同様に、ターンオン時の破損を防ぐ還流ダイオード81~84を各々有している。
【0030】
フルブリッジ回路75は、基本的に、スイッチング素子71、74がオンであり、かつスイッチング素子72、73がオフである充電電流期間TS1と、スイッチング素子71~74がオフであり、ダイオード82、83がオンとなる転流電流期間TS2と、スイッチング素子71、74がオフであり、かつスイッチング素子72、73がオンである放電電流期間TS3と、スイッチング素子71~74がオフであり、ダイオード81、84がオンとなる転流電流期間TS4とを1周期T2(第2周期)とし、それを繰り返す。スイッチング素子71~74がサブ制御部62によってオンオフ制御される。また、1周期T2内の充電電流期間TS1と放電電流期間TS3とはデューティ比制御される。このサブ制御部62のデューティ比は以降、DSで表され、充電電流期間TS1と放電電流期間TS3との合計期間に対応する充電電流期間TS1の割合である。サブ充放電部12が充電モードにあるときにはデューティ比DSが50%より大きくなり、すなわち1周期T2内の充電電流期間TS1が放電電流期間TS3より長くなり、内蔵バッテリ16に流れる充電電流によって内蔵バッテリ16が充電される。サブ充放電部12が放電モードにあるときにはデューティ比DSが50%より小さくなり、すなわち1周期T2内の充電電流期間TS1が放電電流期間TS3より短くなり、内蔵バッテリ16からの放電電流によって内蔵バッテリ16が放電する。
【0031】
サブDC/DC変換部51の端子51Cには、メインスイッチ55を介して内蔵バッテリ16の正端子に接続されている。メインスイッチ55には抵抗56及びサブスイッチ57の直列回路が並列に接続されている。メインスイッチ55及びサブスイッチ57はリレースイッチからなる。抵抗56及びサブスイッチ57は、サブDC/DC変換部51のコンデンサ79の電圧とバッテリ16の電圧差により、過剰な充電電流の内蔵バッテリ16からサブDC/DC変換部51のコンデンサ79への流れ込みを防止するために、また、電源投入の直後にコンデンサ79にプリチャージするために設けられている。
【0032】
サブDC/DC変換部51の端子51Dには、ヒューズ59を介して内蔵バッテリ16の負端子に接続されている。電流検出部80はサブDC/DC変換部51のフルブリッジ回路75と内蔵バッテリ16との間を流れる電流Isubのレベルを検出する。電流検出部80は例えば、抵抗または電流センサを用いた構成でも良い。
【0033】
簡易放電回路58は、内蔵バッテリ16の正端子と、端子51Dのヒューズ59へのバスラインとの間に接続されている。簡易放電回路58は、一例としてリレースイッチからなる放電スイッチ64及び抵抗65の直列回路を記載しているが、放電スイッチ64はFETなどの半導体スイッチなどを使用しても良い。放電スイッチ64のオン時に内蔵バッテリ16の両端子間に抵抗65が接続された回路が形成され、内蔵バッテリ16の蓄電電荷が放電される。
【0034】
温度センサ60は内蔵バッテリ16の温度を検出する。電圧検出部61は内蔵バッテリ16の正負端子間の電圧VBATを検出する。
【0035】
サブ制御部62は例えば、マイクロコンピュータから構成される。サブ制御部62には、電圧検出部52、61、電流検出部80、及び温度センサ61の各々の検出出力が接続され、電圧検出部52、61の各検出電圧値、電流検出部80による検出電流値、及び温度センサ60の検出温度値が供給される。サブ制御部62は、サブDC/DC変換部51に接続され、電圧検出部52、61の各検出電圧値、電流検出部80による検出電流値、及び温度センサ60の検出温度値に基づいて、サブDC/DC変換部51内のフルブリッジ回路75のスイッチング素子71~74のオンオフを制御する。また、サブ制御部62はメインスイッチ55、サブスイッチ57及びスイッチ64の各々の制御端に接続され、メインスイッチ55、サブスイッチ57及びスイッチ64の各々のオンオフを制御する。
【0036】
また、サブ制御部62とメイン制御部50とはバスラインL1、L2を介して接続されている。サブ制御部62において動作にエラーが生じた場合にはサブ制御部62からエラー発生信号がメイン制御部50に供給される。
【0037】
メイン制御部50及びサブ制御部62の各々の制御動作のための直流電源にはAC/DC変換部21の出力電力を用いるか、或いは別電源を用意しても良い。
【0038】
次に、このような構成を有する本発明によるバッテリ充放電試験装置の動作について説明する。
【0039】
メイン充放電部11においては、交流電源14の出力交流電圧がAC/DC変換部21に供給されると、AC/DC変換部21は直流電圧24[V]を出力する。AC/DC変換部21の出力直流電圧24[V]はダイオード22を介してメインDC/DC変換部23の端子23A、23B間に供給される。端子23Aに正電位24[V]が印加され、端子23Bに電位0[V]が印加される。
【0040】
なお、AC/DC変換部21からダイオード22を介してメインDC/DC変換部23の端子23A、23B間に供給される電圧は、正確には直流電圧24[V]からダイオード22の順方向降下電圧分だけ低下した電圧であるが、直流電圧24[V]として説明する。
【0041】
メイン制御部50は、例えば、1周期T1毎に、電流検出部40から得られる充電電流又は放電電流の電流値と、電圧検出部29、30から得られる各電圧値とに応じて、例えば、バッテリ15の電圧が所望の電圧値になるように、又は充電電流及び放電電流の各々が所望の電流値になるようにデューティ比DMを決定し、そのデューティ比DMを示す制御信号をメインDC/DC変換部23に供給する。
【0042】
メインDC/DC変換部23の端子23A、23B間に直流電圧24[V]が印加された状態で、メイン制御部50からメインDC/DC変換部23にスイッチング素子31~34の制御信号が供給されると、スイッチング素子31~34がオンオフ動作を開始する。
【0043】
図4に示すように、メインDC/DC変換部23ではスイッチング素子31~34のオンオフ制御は充電電流期間TM1、転流電流期間TM2、放電電流期間TM3、転流電流期間TM4を1周期T
1とし繰り返し行われている。充電電流期間TM1ではスイッチング素子31、34がオンであり、スイッチング素子32、33がオフであり、放電電流期間TM3ではスイッチング素子31、34がオフであり、スイッチング素子32、33がオンである。充電電流期間TM1の終了直後の転流電流期間TM2ではスイッチング素子31~34が全てオフとなる。同様に放電電流期間TM3の終了直後の転流電流期間TM4でもスイッチング素子31~34が全てオフとなる。デューティ比DMが50%である場合の制御では、充電電流期間TM1と放電電流期間TM3とは互いに等しい長さ{T
1-(TM2+TM4)}/2である。
【0044】
図5に矢印MAで示すように、充電電流期間TM1には充電電流が端子23A、スイッチング素子31、チョークコイル36、電流検出部40、端子23C、メインスイッチ25を順に介してバッテリ15の正端子からバッテリ15内に流れ込み、そして、バッテリ15の負端子からヒューズ28、端子23D、チョークコイル37、スイッチング素子34、そして端子23Bの順に流れる。この充電電流の流れによりバッテリ15は充電され、バッテリ15に電荷が蓄電される。
【0045】
図6に矢印MBで示すように、転流電流期間TM2には、充電電流期間TM1にチョークコイル36、37に蓄積されたエネルギーが充電電流の流れ方向に転流電流を流す。この転流電流期間TM2にはダイオード42、43がオンとなり、転流電流は端子23B、ダイオード42、チョークコイル36、電流検出部40、端子23C、メインスイッチ25、バッテリ15、ヒューズ28、端子23D、チョークコイル37、ダイオード43、そして端子23Aの経路を流れ、バッテリ15を充電させる。
【0046】
図7に矢印MCで示すように、放電電流期間TM3には放電電流が端子23A、スイッチング素子33、チョークコイル37、端子23D、ヒューズ28、バッテリ15の負端子に流れ込み、更にバッテリ15の正端子からメインスイッチ25、端子23C、電流検出部40、チョークコイル36、スイッチング素子32を順に介して端子23Bに至る。この放電電流はバッテリ15の蓄電電荷を放電させる電流である。
【0047】
図8に矢印MDで示すように、転流電流期間TM4には、放電電流期間TM3にチョークコイル36、37に蓄積されたエネルギーが放電電流の流れ方向に転流電流を流す。転流電流期間TM4にはダイオード41、44がオンとなり、転流電流は端子23B、ダイオード44、チョークコイル37、端子23D、ヒューズ28、バッテリ15、メインスイッチ25、端子23C、電流検出部40、チョークコイル36、ダイオード41、そして端子23Aの経路を流れ、端子23A、23B間において転流による放電電力が回生電力として得られる。端子23A、23B間には、チョークコイル36の端子間電圧、バッテリ15の端子間電圧、及びチョークコイル37の端子間電圧の合算電圧が回生電圧として生じる。この回生電圧はバッテリ15の放電によるバッテリ15の端子間電圧(出力電圧)の低下、及びチョークコイル36、37のエネルギーの放出に従って低下する。
【0048】
なお、端子23Aに繋がるラインL1にダイオード22が設けられているので、回生電圧によりラインL1、L2間の直流電圧がAC/DC変換部21の出力直流電圧24[V]より高くなってもラインL1を介してAC/DC変換部21への電流の流れ込みは阻止される。
【0049】
上記した充電電流期間TM1と放電電流期間TM3との1周期T1内の比率であるデューティ比DMに応じて1周期T1の動作が充電試験モードとなるか、逆に放電試験モードとなるかが決定される。充電試験モードのデューティ比DMの制御では、1周期T1において充電電流期間TM1が増大される一方、放電電流期間TM3が減少されるので、充電電流期間TM1の充電電流によるバッテリ15への充電電荷量が放電電流期間TM3の放電電流によるバッテリ15からの放電電荷量を越える。よって、結果的に1周期T1においてバッテリ15は充電されることとなる。
【0050】
逆に放電試験モードのデューティ比DMの制御では、1周期T1において充電電流期間TM1が減少される一方、放電電流期間TM3が増大されるので、放電電流期間TM3の放電電流によるバッテリ15からの放電電荷量が充電電流期間TM1の充電電流による充電電荷量を越える。よって、結果的に1周期T1においてバッテリ15は放電することとなる。
【0051】
充電試験モードでは、例えば、電圧検出部30によって検出されるバッテリ15の電圧値が設定電圧値V1に上昇するまで電流検出部40によって検出される電流値が予め定められた充電電流値になるようにデューティ比DMが制御される。放電試験モードでは、例えば、電圧検出部30によって検出されるバッテリ15の電圧値が設定電圧値V2(V2<V1)に降下するまで電流検出部40によって検出される電流値が予め定められた放電電流値になるようにデューティ比DMが制御される。
【0052】
充電電流期間TM1の充電電荷量と放電電流期間TM3の放電電荷量とが互いに等しい周期T1におけるデューティ比DMは、例えば、50%であり、1周期T1内の充電電流と放電電流とが互いに打ち消しあうため、その平均電流は0となり、バッテリ15の電荷量は結果的に変化しなかったことになる。
【0053】
一方、サブ充放電部12においては、上記したメイン制御部50の放電試験モード時に生じる回生電力(放電電力)を電源として内蔵バッテリ16の充電が行われ、また、その充電により内蔵バッテリ16に蓄電された電荷をメイン制御部50の充電試験モード時に直流電源の一部として利用することが行われる。
【0054】
図9に示すように、サブ制御部62は、交流電源14が投入されると、ALM(アラーム)が発生されたか否かを判別する(ステップS11)。ALMには、温度センサ60によって検出された内蔵バッテリ16の温度の上下限異常、電圧検出部61によって検出された内蔵バッテリ16の出力電圧V
BATの上下限異常、電流検出部80によって検出された充放電電流I
SUBの上下限異常、及び電圧検出部52によって検出されたバスライン電圧V
DCの上下限異常が含まれる。サブ制御部62はそのようなALMが発生されたならば、サブ充放電部12のメインスイッチ55及びサブスイッチ57を共にオフに制御する(ステップS12)。一方、ALMが通知されないならば、サブスイッチ57をオンに制御し(ステップS13)、図示しないタイマの計測によって、その時点から一定時間T
pchgが経過したか否かを判別する(ステップS14)。
【0055】
図10に示すように、時点t1おいてサブスイッチ57がオンすると、内蔵バッテリ16の正端子からサブスイッチ57、抵抗56、端子51C、コンデンサ79、端子51D、ヒューズ59、そして内蔵バッテリ16の負端子に至る経路が形成される。この経路に内蔵バッテリ16から電流が流れ、コンデンサ79に対する充電、すなわちプリチャージが行われる。そのプリチャージの際にコンデンサ79に流れる電流は抵抗56によって一定時間T
pchgに亘って制限される。
【0056】
サブ制御部62は、一定時間Tpchgの時間経過があったならば、サブ充放電部12のメインスイッチ55をオンに制御する(ステップS15)。これによりサブDC/DC変換部51と内蔵バッテリ16とがメインスイッチ55を介して電気的に接続された状態となり、サブ制御部62は、サブDC/DC変換部51のゲート制御(ステップS16)と、放電回路制御(ステップ17)とからなるサブルーチンを実行する。
【0057】
サブ制御部62は、ステップ16のサブDC/DC変換部51のゲート制御及びステップ17の放電回路制御の実行後、ALMが発生されたか否かを判別する(ステップS18)。サブ制御部62は、ALMが発生されないならば、ステップ16のサブDC/DCゲート制御及びステップ17の放電回路制御を再度実行する。ALMが発生されたならば、ステップS12に進んでサブ充放電部12のメインスイッチ55及びサブスイッチ57を共にオフに制御する。
【0058】
図10に示すように、時点t1から一定時間T
pchgが経過した時点t2においてメインスイッチ55がオフからオンに制御される。そして、更に時間T
onstartが経過した時点t3において、ステップS16のサブDC/DCゲート制御の実行によりサブ制御部62からフルブリッジ回路75のスイッチング素子71~74にゲート信号が供給され、スイッチング素子71~74のオンオフが開始される。
【0059】
図11に示すように、サブDC/DC変換部51では、スイッチング素子71~74のオンオフ制御は充電電流期間TS1、転流電流期間TS2、放電電流期間TS3、転流電流期間TS4を1周期T
2として繰り返し行われている。充電電流期間TS1では、スイッチング素子71、74がオンであり、スイッチング素子72、73がオフである。放電電流期間TS3ではスイッチング素子71、74がオフであり、スイッチング素子72、73がオンである。充電電流期間TS1の終了直後の転流電流期間TS2にはスイッチング素子71~74が全てオフとなる。同様に放電電流期間TS3の終了直後の転流電流期間TS4にはスイッチング素子71~74が全てオフとなる。デューティ比DSが50%であるとき制御では、充電電流期間TS1と放電電流期間TS3とは互いに等しい長さ{T
2-(TS2+TS4)}/2である。
【0060】
図12に矢印SAで示すように、充電電流期間TS1には充電電流が端子51A、スイッチング素子71、チョークコイル76、電流検出部80、端子51C、メインスイッチ55を順に介して内蔵バッテリ16の正端子から内蔵バッテリ16内に流れ込み、そして、内蔵バッテリ16の負端子からヒューズ59、端子51D、チョークコイル77、スイッチング素子74、そして端子51Bの順に流れる。この充電電流の流れにより内蔵バッテリ16は充電され、内蔵バッテリ16に電荷が蓄電される。
【0061】
図13に矢印SBで示すように、転流電流期間TS2には、充電電流期間TS1にチョークコイル76、77に蓄積されたエネルギーが充電電流の流れ方向に転流電流を流す。この転流電流期間TS2にはダイオード82、83がオンとなり、転流電流は端子51B、ダイオード82、チョークコイル76、電流検出部80、端子51C、メインスイッチ55、内蔵バッテリ16、ヒューズ59、端子51D、チョークコイル77、ダイオード83、そして端子51Aの経路を流れる。この転流電流はチョークコイル76、77のエネルギーが放出されるに従って低下する。
【0062】
図14に矢印SCで示すように、放電電流期間TS3には放電電流が端子51A、スイッチング素子73、チョークコイル77、端子51D、ヒューズ59、内蔵バッテリ16の負端子に流れ込み、更に内蔵バッテリ16の正端子からメインスイッチ55、端子51C、電流検出部80、チョークコイル76、スイッチング素子72を順に介して端子51Bに至る。この放電電流は内蔵バッテリ16の蓄電電荷を放電させる電流である。
【0063】
図15に矢印SDで示すように、転流電流期間TS4には、放電電流期間TS3にチョークコイル76、77に蓄積されたエネルギーが放電電流の流れ方向に転流電流を流す。この転流電流期間TS4にはダイオード81、84がオンとなり、転流電流は端子51B、ダイオード84、チョークコイル77、端子51D、ヒューズ59、内蔵バッテリ16、メインスイッチ55、端子51C、電流検出部80、チョークコイル76、ダイオード81、そして端子51Aの経路を流れ、端子51A、51B間において転流による放電電力が回生電力として得られる。端子51A、51B間には、チョークコイル76の端子間電圧、内蔵バッテリ16の端子間電圧、及びチョークコイル77の端子間電圧の合算電圧が回生電圧として生じる。この回生電圧はチョークコイル76、77のエネルギーが放出されるに従って低下する。
【0064】
サブDC/DC変換部51においても、メインDC/DC変換部23と同様に、充電電流期間TS1と放電電流期間TS3とについての1周期T2内の比率であるデューティ比DSに応じて1周期T2の動作が充電モードとなるか、逆に放電モードとなるかが決定される。充電モードのデューティ比DSの場合には、1周期T2における充電電流期間TS1の充電電流による内蔵バッテリ16への充電電荷量が放電電流期間TS3の放電電流による内蔵バッテリ16からの放電電荷量を越える。逆に放電モードのデューティ比DSの場合には、内蔵バッテリ16からの放電電荷量が充電電荷量を越える。充電電流期間TS1の充電電荷量と放電電流期間TS3の放電電荷量とが互いに等しい周期T2におけるデューティ比DSは例えば、50%であり、周期T2内の充電電流と放電電流とが互いに打ち消し合うので平均電流は0となり、バッテリ16の電荷量は結果的に変化しなかったことになる。動作モードを充電モード及び放電モードのいずれにするかは上述したステップS16のサブDC/DCゲート制御において設定される。
【0065】
次に、ステップS16のサブDC/DC変換部51のゲート制御の詳細について説明する。
【0066】
図16及び
図17に示すように、ステップS16のゲート制御において、サブ制御部62は、先ず、電圧検出部52から得られるバスライン電圧V
DCが21.6[V]より低いか否かを判別する(ステップS21)。V
DC≧21.6[V]であるならば、そのバスライン電圧V
DCが25.0[V]より高いか否かを判別する(ステップS22)。
【0067】
バスライン電圧VDCは、上述したようにメインDC/DC変換部23の端子23A、23B間の電圧であり、サブDC/DC変換部51の端子51A、51B間の電圧でもある。メインDC/DC変換部23において回生電力が生ずると、バスライン電圧VDCはAC/DC変換部21から端子23A、23B間への供給直流電圧24[V]よりも上昇することが起きる。
【0068】
サブ制御部62は、21.6[V]≦VDC≦25.0[V]であるならば、内蔵バッテリ16の出力電圧VBATが9.2[V]≦VBAT≦13.0[V]の電力供給可能電圧範囲以内であるか否かを判別する(ステップS23)。内蔵バッテリ16の出力電圧VBATは電圧検出部61によって検出される。9.2[V]≦VBAT≦13.0[V]であるならば、サブ制御部62はゲート信号がオフ状態であるか否かを判別する(ステップS24)。ゲート信号がオフ状態であるならば、サブ電力供給制御を開始する(ステップS25)。ゲート信号のオフ状態とはサブDC/DC変換部51のスイッチング素子71~74の全てがオフに制御されている状態である。サブ電力供給制御では、バスライン電圧VDCが定電圧24.5[V]になるように上記した放電モードでメインDC/DC変換部51がデューティ比制御される。放電モードの制御では、内蔵バッテリ16及びチョークコイル76、77の蓄電エネルギーを利用した転流電流期間TS4の転流動作によって生じる回生電力をサブDC/DC変換部51から得て、その回生電力をバスラインL1、L2を介してメインDC/DC変換部23に供給することが行われる。
【0069】
サブ制御部62は、サブ電力供給制御の開始後、バスライン電圧VDCが第1所定電圧値である24.5[V]より高いか否かを判別する(ステップS26)。VDC>24.5[V]であるならば、メイン充放電部11が放電試験モードにあってメインDC/DC変換部23から回生電力が出力されている可能性がある。そこで、サブ制御部62は、VDC>24.5[V]であるならば、サブ電力供給制御を停止し(ステップS27)、内蔵バッテリ16の出力電圧VBATが9.0[V]≦VBAT≦12.8[V]の範囲以内であるか否かを判別する(ステップS28)。サブ制御部62は、9.0[V]≦VBAT≦12.8[V]であるならば、内蔵バッテリ16への定電流充電制御を開始する(ステップS29)。定電流充電制御では上記した充電モードにおいて電流ISUBが設定された定電流値となるようにサブDC/DC変換部51がデューティ比制御される。充電モードでの制御においてサブ制御部62はメインDC/DC変換部23より得られた回生電力を電源としてデューティ比制御を開始する。デューティ比DSは周期T2内の充電電流期間TS1が予め定められた制御時間長だけ増加され、その増加分だけ放電電流期間TS3が減少される割合とされる。このような充電モードのデューティ比制御より、周期T2毎に内蔵バッテリ16に予め設定された定電流の電流Isubを流したこととなり、内蔵バッテリ16が充電される。電流Isubは周期T2内に内蔵バッテリ16を流れる電流の平均値であり、上述したように電流検出部80によって検出される電流値である。
【0070】
サブ制御部62は、ステップS29の実行後、メインDC/DC変換部23からの回生電力が消費されたことによりバスライン電圧VDCが低下したか否かを判別する(ステップS30)。ステップS30では、電圧検出部52から得たバスライン電圧VDCが観測され、バスライン電圧VDCの前回値から今回値が低下しているか否かが判別される。サブ制御部62は、バスライン電圧VDCが低下していないならば、電流Isubの増加制御を行う(ステップS31)。ステップS31ではデューティ比DSを増加させることにより、周期T2内の充電電流期間TS1が更に単位時間長だけ増加され、その増加分だけ放電電流期間TS3を減少されるので、電流Isubが増加されることになる。電流Isubを増加させた分だけメインDC/DC変換部23からの回生電力が消費され、結果としてバスライン電圧VDCは低下することになる。
【0071】
サブ制御部62は、ステップS30においてバスライン電圧VDCが低下したと判別したならば、電圧検出部52から得られるバスライン電圧VDCが第2所定電圧値である24.4[V]以下であるか否かを判別する(ステップS32)。VDC>24.4[V]であるならば、サブ制御部62は、電流Isubの減少制御を行う(ステップS33)。ステップS33ではデューティ比DSを減少させることにより、周期T2内の充電電流期間TS1が単位時間長だけ減少され、その減少分だけ放電電流期間TS3を増加されるので、電流Isubが減少されることになる。電流Isubを減少させた分だけ回生電力の消費が抑えられる。
【0072】
サブ制御部62は、ステップS32においてVDC≦24.4[V]と判別したならば、定電流充電制御によりバスライン電圧VDCが24.4[V]以下に低下したので、内蔵バッテリ16への定電流充電制御を停止する(ステップS34)。
【0073】
また、サブ制御部62は、ステップS26においてVDC≦24.5[V]であると判別したならば、内蔵バッテリ16の出力電圧VBATが10.0[V]より低いか否かを判別する(ステップS35)。VBAT<10.0[V]であるならば、バスライン電圧VDCが24.0[V]以下であるか否かを判別する(ステップS36)。VDC>24.0[V]であるならば、メインDC/DC変換部23の出力設定電圧を0.1[V]だけ低下させる(ステップS37)。すなわち、サブ電力供給制御中に内蔵バッテリ16の放電によってVBATが10.0[V]より低くなってもVDC>24.0[V]である限りメインDC/DC変換部23の出力設定電圧を0.1[V]だけ低下させつつサブ電力供給制御が継続される。一方、VDC≦24.0[V]であるならば、サブ電力供給制御を停止する(ステップS38)。
【0074】
サブ制御部62は、ステップS24においてゲート信号がオフ状態ではないと判別した場合には、内蔵バッテリ16が放電中か否か、すなわち放電モードであるか否かを判別する(ステップS39)。放電モードであるならば、サブ電力供給制御中であるので、上記したステップS26に進んでバスライン電圧VDCが24.5[V]より高いか否かを判別する。
【0075】
一方、サブ制御部62は、ステップS39において放電モードではないと判別したならば、内蔵バッテリ16が充電中か否か、すなわち充電モードであるか否かを判別する(ステップS40)。充電モードであるならば、内蔵バッテリ16への定電流充電制御中であるので、上記したステップS30に進んでバスライン電圧VDCが低下したか否かを判別する。サブ制御部62は、ステップS40において充電モードではないと判別したならば、ゲート信号の生成を停止し(ステップS41)、エラー制御を実行する(ステップS42)。ステップS41及びS42は、ステップS21においてVDC<21.6[V]が判別されたバスライン電圧VDCの低電圧の場合、ステップS22においてVDC>25.0[V]が判別されたバスライン電圧VDCの過電圧の場合、更にステップS28においてVBAT<9.0[V]の内蔵バッテリ16の低電圧の場合又はVBAT>12.8[V]の内蔵バッテリ16の過電圧の場合にも実行される。
【0076】
ステップS41のゲート信号の生成停止により上記したゲート信号のオフ状態となり、スイッチング素子71~74はオフに制御される。ステップS42のエラー制御はステップS21、S22、S28、又はS40において判別された異常状態に対処するための処理である。
【0077】
図18に示すように、ステップS17の放電回路制御において、サブ制御部62は、内蔵バッテリ16の出力電圧V
BATが13.0[V]より高いか否かを判別する(ステップS51)。V
BAT≦13.0[V]であるならば、内蔵バッテリ16は過充電状態ではないので、放電の必要はない。よって、V
BAT≦13.0[V]であるならば、サブ制御部62は放電スイッチ64をオフに制御する(ステップS52)。一方、V
BAT>13.0[V]であるならば、内蔵バッテリ16は過充電状態にあるので、放電の必要がある。よって、V
BAT>13.0[V]であるならば、サブ制御部62は放電スイッチ64をオン状態にあるか否かを判別する(ステップS53)。放電スイッチ64がオン状態にないならば、サブ制御部62は放電スイッチ64をオンに制御する(ステップS53)。放電スイッチ64のオンにより、内蔵バッテリ16からの放電電流が抵抗65及び放電スイッチ64を流れるので、内蔵バッテリ16の出力電圧V
BATは強制的に低下されることになる。
【0078】
図19は、定電流充電制御及びサブ電力供給制御の各々が実行されるバスライン電圧V
DCの電圧範囲を示している。
【0079】
上記したようにメイン充放電部11が放電試験モードにあるときに、メインDC/DC変換部23の端子23A、23B間に生じる回生電圧によってバスライン電圧V
DCはAC/DC変換部21の出力直流電圧24.0[V]より高くなることが生ずる。定電流充電制御は、内蔵バッテリ16の出力電圧V
BATが9.0[V]≦V
BAT≦12.8[V]の充電可能電圧範囲にあり、かつV
DC>24.5[V]を満足すると開始される。定電流充電制御の開始後、内蔵バッテリ16が充電されることによりバスライン電圧V
DCが低下し、24.4[V]以下になると定電流充電制御は停止される。また、バスライン電圧V
DCが25.0[V]より高い場合にはバッテリ15の試験異常であるとして定電流充電制御は停止される。よって、
図19に示した領域CCが定電流充電制御の実行範囲であり、すなわちメインDC/DC変換部23からの回生電力を電源として内蔵バッテリ16が充電される領域である。
【0080】
このように定電流充電制御を実行することにより、メイン充放電部11の放電試験モードにおいてメインDC/DC変換部23に生じた回生電力を利用して内蔵バッテリ16を充電させることができ、その回生電力を熱変換して無駄に消費する必要がない。また、定電流充電制御の際には、バスライン電圧VDCを24.4<VDC≦25.0[V]の範囲になるように内蔵バッテリ16へ供給する電流Isubを設定された定電流値に制御するので、内蔵バッテリ16の充電を安定的に行うことができる。
【0081】
サブ電力供給制御は、上記したようにメイン充放電部11が充電試験モードにあり、バスライン電圧VDCが21.6[V]≦VDC≦25.0[V]の範囲にあり、内蔵バッテリ16の出力電圧VBATが9.2[V]≦VBAT≦13.0[V]の電力供給可能電圧範囲にあるときに開始される。サブ電力供給制御では、バスライン電圧VDCが24.5[V]の定電圧になるようにサブDC/DC変換部51がデューティ比制御される。なお、サブ電力供給制御においてはバスライン電圧VDCは許容値±0.1[V]を含んで24.5[V]±0.1[V]の範囲に制御されても良い。
【0082】
サブ電力供給制御の開始後、バスライン電圧VDCがVDC>24.5[V]のように高くなった場合にはメイン充放電部11が放電試験モードにあり、メインDC/DC変換部23から回生電力が生成されている可能性があるのでサブ電力供給制御が直ちに停止される。
【0083】
また、サブ電力供給制御の開始後、内蔵バッテリ16の放電により内蔵バッテリ16の出力電圧V
BATが10.0[V]より低くなると、サブDC/DC変換部51の定電圧出力は24.5[V]から0.1[V]ずつ段階的に低下され、そしてV
DC≦24.0[V]となるとサブ電力供給制御が停止される。バスライン電圧V
DCが24.5[V]より下がると直ちにサブ電力供給制御を停止しない理由は、バスライン電圧V
DCの電圧変動が大きくなり、メインDC/DC変換部23の動作に悪影響を与えることになるからである。これを回避するために、サブ電力供給制御の停止の際にはバスライン電圧V
DCを24.5[V]から24.0[V]に段階的に低下させる制御が行われる。よって、
図19に示した領域CVがサブ電力供給制御の実行範囲であり、すなわちサブDC/DC変換部51からメインDC/DC変換部23へ電力供給される領域である。
【0084】
このようにサブ電力供給制御を実行することにより、内蔵バッテリ16の蓄電電力をメイン充放電部11の充電試験モードにおける充電電源として再利用することができる。また、サブ電力供給制御ではAC/DC変換部21の出力電圧24[V]より高い24.5[V]にバスライン電圧VDCを制御するので、サブ充放電部12からメインDC/DC変換部23へ確実に電力供給をすることができる。
【0085】
なお、メイン充放電部11が放電試験モードにあるときの24.0[V]≦VDC≦24.4[V]の電圧範囲の領域A0ではサブ充放電部12は充電モード及び放電モードのいずれでもなく電流ISUBは流れない。メイン充放電部11では放電電力と内部消費電力との釣り合いがとれている状態である。
【0086】
また、メイン充放電部11が放電試験モード又は充電試験モードにあるときの21.6[V]≦VDC≦24.0[V]の電圧範囲はAC/DC変換部21の出力電圧がメインDC/DC変換部23に印加される動作領域A1、A2である。動作領域A2ではメイン充放電部11が放電試験モードにあってもメインDC/DC変換部23の端子23A、23B間が短絡される状態や放電電力が小さい場合のため内蔵バッテリ16を充電させることができない。また、動作領域A1ではメイン充放電部11が充電試験モードにあっても内蔵バッテリ16の出力電圧VBATが低く、サブ充放電部12からメインDC/DC変換部23に電力供給ができない。バスライン電圧VDCが21.6[V]より低い領域A3、A4にはメイン充放電部11が放電試験及び充電試験が不可能な使用不可領域である。
【0087】
上記した本発明の実施例においては、AC/DC変換部21とメインDC/DC変換部23との間のバスラインL1、L2に逆流防止素子としてダイオード22が設けられているが、それに代えてトランジスタを設けても良い。例えば、
図20に示したように、AC/DC変換部21とメインDC/DC変換部23との間にNチャンネルFET(電解効果トランジスタ)48を設けることができる。FET48のゲートには図示しないゲート制御部からオン/オフ信号が供給される。放電試験モード時にはFET48はオフに制御され、充電試験モード時にはFET48はオンに制御される。そのゲート制御部は放電試験モード及び充電試験モード各々における電流の流れ方向を検出してその検出結果に応じてFET48のオンオフを切り替えても良い。このようにダイオード22に代えてNチャンネルのFET48を設けることにより、ダイオード22による電圧降下及び電力損失に比べてFET48による電圧降下及び電力損失各々の値を低減させることができる。例えば、ダイオード22に電流50[A]を流した時の電圧降下は0.61[V]であり、電力損失は0.61[V]×50[A]=30.5[W]となる。これに対し、FET48のドレイン・ソース間に電流50[A]を流した時の電圧降下は、ドレイン・ソース間抵抗を1.6[mΩ]とすると、50[A]×1.6[mΩ]=0.08[V]であり、電力損失は(50[A])
2×1.6[mΩ]=4[W]となる。よって、FET48を用いれば電圧降下及び電力損失を十分に低減させることができ、これによりFET48における発熱量を抑えることができるので、FET48に対してヒートシンクや冷却ファンを設ける必要がなくなるという利点もある。
【0088】
上記した実施例におけるバッテリ15、16の各電圧値及びバスラインL1、L2間の電圧値等の具体的な数値は本発明における一例に過ぎず、本発明はそれらの数値に限定されない。本発明においてそれらの数値が、使用される各バッテリの特性や充放電条件等によって変更されても良いことは勿論である。
【符号の説明】
【0089】
11 メイン充放電部
12 サブ充放電部
14 交流電源
15 テストバッテリ
16 内蔵バッテリ
21 AC/DC変換部
22 ダイオード
23 メインDC/DC変換部
25、55 メインスイッチ
26、57 サブスイッチ
27、56、65 抵抗
28、53、59 ヒューズ
29、30、52、61 電圧検出部
31~34、71~74 半導体スイッチング素子
35、75 フルブリッジ回路
36、37、76、77 チョークコイル
38、39、78、79 コンデンサ
40、80 電流検出部
41~44、81~84 還流ダイオード
46 充放電コントローラ
47 テストPC
48 NチャンネルFET
50 メイン制御部
51 サブDC/DC変換部
58 簡易放電回路
60 温度センサ
62 サブ制御部
64 放電スイッチ
L1、L2 バスライン
【要約】 (修正有)
【課題】テストバッテリの放電動作時に生じる放電電力を効率よく利用するバッテリ充放電試験装置及びバッテリ放電電力制御方法を提供する。
【解決手段】バッテリ充放電試験装置は、メイン充放電部11とバスラインL1、L2を介して接続されたサブ充放電部12を有する。サブ充放電部の内蔵バッテリ16の出力電圧が電力供給可能電圧範囲にあるとき、バスライン間の電圧が第1所定電圧値になるようにサブDC/DC変換部のフルブリッジ回路のスイッチング素子のオンオフをデューティ比制御することにより、内蔵バッテリの放電電力をフルブリッジ回路を介してバスラインに供給させるサブ電力供給制御を実行する。サブ電力供給制御中にバスライン間の電圧が第1所定電圧値を越えたときにはサブ電力供給制御を停止し、上記スイッチング素子のオンオフをデューティ比制御して、フルブリッジ回路を介して内蔵バッテリを充電させる定電流充電制御を実行する。
【選択図】
図1