(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】基板接続構造および基板接続構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/14 20060101AFI20220420BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
H05K1/14 C
H05K1/11 C
(21)【出願番号】P 2018027330
(22)【出願日】2018-02-19
【審査請求日】2020-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000230249
【氏名又は名称】日本メクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】金山 知樹
(72)【発明者】
【氏名】代田 雄人
(72)【発明者】
【氏名】久島 俊崇
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6576148(US,B1)
【文献】特公平5-35589(JP,B2)
【文献】国際公開第2012/102091(WO,A1)
【文献】実開平2-13764(JP,U)
【文献】特開平6-314866(JP,A)
【文献】特開2013-16232(JP,A)
【文献】特開2013-69366(JP,A)
【文献】特開2013-254549(JP,A)
【文献】特開2013-254550(JP,A)
【文献】特開2014-13638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B5/48
H05K1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的な絶縁性を備える樹脂を材質とし、周囲が内壁で囲まれた状態で貫通する第1開口部を備える第1被覆層と、
電気的な絶縁性を備える樹脂を材質とし、周囲が内壁で囲まれ、かつ厚み方向において前記第1開口部と位置合わせされることで前記第1開口部との間で一体的な開口部を形成する第2開口部を備える第2被覆層と、
少なくとも電気的な導電性を備えると共に、一方側の面が前記第1被覆層で覆われ、かつ他方側の面が前記第2被覆層で覆われると共に、前記第1開口部と前記第2開口部とが連通するように貫通するスリットを備える導体層と、
前記第1被覆層のうち前記導体層とは反対側に配置される金属部材と、
前記導体層のうち前記第1開口部に位置する開放導体層を前記金属部材側に変形させた状態で前記金属部材と前記導体層とを電気的に導通する状態で接合させた接合部と、
耐水性を備える樹脂を材質とすると共に、前記接合部を形成する前記開放導体層を覆う状態で前記開口部を封止する耐水封止部と、
を備
え、
前記耐水封止部は、前記第2被覆層のうち前記導体層とは反対側に位置する表面よりも隆起して設けられていて、
前記耐水封止部には、前記第2被覆層のうち前記導体層とは反対側に位置する表面に差し掛かると共に該表面との間で接着力を及ぼす封止フランジ部が設けられている、
ことを特徴とする基板接続構造。
【請求項2】
請求項1記載の基板接続構造であって、
前記開口部は矩形状に設けられていると共に、
前記スリットは、矩形状を構成する4つの辺のうち向かう合う一組の辺に沿うように一対設けられている、
ことを特徴とする基板接続構造。
【請求項3】
請求項2記載の基板接続構造であって、
前記開放導体層は、前記金属部材に対して接する底部を備え、この底部に前記接合部が形成されていると共に、
前記開放導体層のうち延伸方向の両端側には、前記導体層のうち前記第1被覆層および前記第2被覆層で覆われている内部導体層と前記底部とを接続すると共に前記底部から前記内部導体層に向かうにつれて徐々に前記金属部材から離間するテーパ部が設けられていて、
前記金属部材とテーパ部との間の空隙部が前記耐水封止部で充填されている、
ことを特徴とする基板接続構造。
【請求項4】
電気的な絶縁性を備える樹脂を材質とする第1被覆層と、少なくとも電気的な導電性を備えると共に、一方側の面が前記第1被覆層で覆われる導体層とを備える片面基板に、前記第1被覆層の一部を除去して、周囲が内壁で囲まれた状態で貫通する第1開口部を形成する第1開口形成工程と、
前記導体層のうち前記第1開口部に露出している開放導体層を貫通するスリットを形成するスリット形成工程と、
前記スリット形成工程に前後して、電気的な絶縁性を備える樹脂を材質とする第2被覆層を、前記導体層のうち前記第1被覆層とは反対側に貼り合わせる貼り合わせ工程と、
前記貼り合わせ工程に前後して、周囲が内壁で囲まれると共に厚み方向において前記第1開口部と位置合わせされることで第1開口部との間で一体的な開口部となる第2開口部を前記第2被覆層に対して形成する第2開口形成工程と、
前記スリット形成工程、前記貼り合わせ工程および前記第2開口形成工程の後に、前記第1被覆層のうち前記導体層とは反対側に金属部材を配置すると共に、前記導体層のうち前記第1開口部に位置する開放導体層を前記金属部材側に変形させた状態で前記金属部材と前記導体層とを電気的に導通する状態で接合させて接合部を形成する接合部形成工程と、
前記接合部形成工程の後に、前記開放導体層が覆われる状態で前記開口部に液状の耐水樹脂が充填される充填工程と、
前記充填工程の後に、液状の前記耐水樹脂を硬化させて、
前記第2被覆層のうち前記導体層とは反対側に位置する表面よりも隆起して設けられる耐水封止部を形成する封止工程と、
を備
え、
前記充填工程では、前記第2被覆層のうち前記導体層とは反対側に位置する表面に差し掛かるように液状の前記耐水樹脂が充填されると共に、
前記封止工程では、前記表面に差し掛かった液状の前記耐水樹脂が硬化することで、前記表面との間で接着力を及ぼす封止フランジ部が形成される、
ことを特徴とする基板接続構造の製造方法。
【請求項5】
請求項
4記載の基板接続構造の製造方法であって、
前記第1開口形成工程および前記第2開口形成工程では、前記第1開口部および前記第2開口部を矩形状に形成し、
前記スリット形成工程では、前記スリットは、矩形状の前記第1開口部を構成する4つの辺のうち向かう合う一組の辺に沿うように一対形成されている、
ことを特徴とする基板接続構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板接続構造および基板接続構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント基板と、異なる基板との間で電気的な接続を図る構成としては、たとえば特許文献1に示すものがある。特許文献1には、ハード基板のランドと、FPC(フレキシブルプリント基板)の接触部とを電気的に接続する構成について開示されている。上記のFPCの接触部には、スリットが隣接して設けられていて、そのスリットの存在により、押圧治具等で押圧した際に、接触部が独立して追従するように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示の構成では、ハード基板の隣り合うランドの間や、特定のランドに接続された配線部以外は、電気的に絶縁されている。また、特許文献1に開示のように、FPCの接続部と電気的に接続された配線部が延伸する向きと、ハード基板のランドと電気的に接続された配線部が延伸する向きとは異なっている。加えて、特許文献1では、接続部の間に存在するスリットは、接続部の間の高さの違いを吸収することであることが記載されている。これらを勘案すると、FPCの接続部や、その接続部に電気的に接続されている配線部は、絶縁層で覆われる必要がないと考えられる。
【0005】
一方で、フレキシブルプリント基板を用いた基板接続構造においては、フレキシブルプリント基板として、銅箔のような導体層の両面側を絶縁層で覆うと共に、導体層を金属板に対して電気的に接続するものが考えられている。このような基板接続構造では、フレキシブルプリント基板は、金属板に対して電気的に接続する部分以外は、絶縁層によって覆われた状態となっているので、フレキシブルプリント基板と金属板とを重ねることが可能である。
【0006】
ここで、上記の導体層と金属板との電気的な接続を図るためには、絶縁層をスポット的に除去して導体層を露出させ、その導体層の露出部位で金属板に対して電気的に接続させる必要がある。この場合、導体層と金属板との間では、絶縁層の分だけ高さが大きく相違している。したがって、その高さの相違分だけ、導体層を金属板に対して押圧しつつ、導体層と金属板との間の、電気的導通を伴った接合を行う必要がある。
【0007】
また、上記のように導体層を金属板に押圧する場合、導体層のうち金属板とは反対側(表面側)に絶縁層が存在していたのでは、良好な押圧が行えない。したがって、導体層の金属板側(裏面側)のみならず、導体層の表面側に存在する絶縁層も除去した状態(すなわち、導体層の表裏両面側の絶縁層を除去した状態)で、導体層を金属板に押圧しつつ、導体層と金属板との間の、電気的導通を伴った接合を行う必要がある。
【0008】
ここで、特許文献1に開示の構成では、上述のように配線部が絶縁層で覆われる必要がないと考えられるので、接続部とランドとの間の高さの相違は、さほど大きくないと考えられる。したがって、上述の基板接続構造のように、絶縁層と金属板との間で、高さが大きく相違している状態で、電気的な接合を行うのは困難と思われる。
【0009】
また、特許文献1に開示の構成では、はんだ付けにて、接続部とランドとの間の電気的な接続を行うようにしている。したがって、電気的な接続部分の機械的な強度がさほど強くない状態となっている。これに対して、上述の基板接続構造では、導体層と金属板との間で、高さが大きく相違している。このため、特許文献1に開示のように、導体層を金属板に押し付けた状態で、はんだ付けにて電気的な接続を行っても、導体層が金属板から浮き上がろうとする力(復元力)の作用により、電気的な接続部分の機械的な強度が一層弱いものとなっている。したがって、特に振動などの外力が採用する環境下では、電気的な接続部分が破壊される虞がある。
【0010】
また、上述の基板接続構造では、導体層と金属板との間で電気的導通を伴った接合部を形成した場合、その接合部が、外部環境に露出した状態となってしまう。この場合、上記の接合部に水分が到達すると電蝕が生じてしまう虞がある。
【0011】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、第1被覆層および第2被覆層(絶縁層)をスポット的に除去して金属部材と導体層との間で高さの相違が生じても、導体層と金属部材とを電気的に良好に接合可能であると共に、接合部位の電蝕を防止可能な基板接続構造および基板接続構造の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、電気的な絶縁性を備える樹脂を材質とし、周囲が内壁で囲まれた状態で貫通する第1開口部を備える第1被覆層と、電気的な絶縁性を備える樹脂を材質とし、周囲が内壁で囲まれ、かつ厚み方向において第1開口部と位置合わせされることで第1開口部との間で一体的な開口部を形成する第2開口部を備える第2被覆層と、少なくとも電気的な導電性を備えると共に、一方側の面が第1被覆層で覆われ、かつ他方側の面が第2被覆層で覆われると共に、第1開口部と第2開口部とが連通するように貫通するスリットを備える導体層と、第1被覆層のうち導体層とは反対側に配置される金属部材と、導体層のうち第1開口部に位置する開放導体層を金属部材側に変形させた状態で金属部材と導体層とを電気的に導通する状態で接合させた接合部と、耐水性を備える樹脂を材質とすると共に、接合部を形成する開放導体層を覆う状態で開口部を封止する耐水封止部と、を備えることを特徴とする基板接続構造が提供される。
【0013】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、開口部は矩形状に設けられていると共に、スリットは、矩形状を構成する4つの辺のうち向かう合う一組の辺に沿うように一対設けられている、ことが好ましい。
【0014】
さらに、本発明の他の側面は、上述の発明において、開放導体層は、金属部材に対して接する底部を備え、この底部に接合部が形成されていると共に、開放導体層のうち延伸方向の両端側には、導体層のうち第1被覆層および第2被覆層で覆われている内部導体層と底部とを接続すると共に底部から内部導体層に向かうにつれて徐々に金属部材から離間するテーパ部が設けられていて、金属部材とテーパ部との間の空隙部が耐水封止部で充填されている、ことが好ましい。
【0015】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、耐水封止部は、第2被覆層のうち導体層とは反対側に位置する表面よりも隆起して設けられている、ことが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の他の側面は、上述の発明において、耐水封止部には、第2被覆層のうち導体層とは反対側に位置する表面に差し掛かると共に該表面との間で接着力を及ぼす封止フランジ部が設けられている、ことが好ましい。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の第2の観点によると、電気的な絶縁性を備える樹脂を材質とする第1被覆層と、少なくとも電気的な導電性を備えると共に、一方側の面が第1被覆層で覆われる導体層とを備える片面基板に、第1被覆層の一部を除去して、周囲が内壁で囲まれた状態で貫通する第1開口部を形成する第1開口形成工程と、導体層のうち第1開口部に露出している開放導体層を貫通するスリットを形成するスリット形成工程と、スリット形成工程に前後して、電気的な絶縁性を備える樹脂を材質とする第2被覆層を、導体層のうち第1被覆層とは反対側に貼り合わせ工程と、貼り合わせ工程に前後して、周囲が内壁で囲まれると共に厚み方向において第1開口部と位置合わせされることで第1開口部との間で一体的な開口部となる第2開口部を第2被覆層に対して形成する第2開口形成工程と、スリット形成工程、貼り合わせ工程および第2開口形成工程の後に、第1被覆層のうち導体層とは反対側に金属部材を配置すると共に、導体層のうち第1開口部に位置する開放導体層を金属部材側に変形させた状態で金属部材と導体層とを電気的に導通する状態で接合させて接合部を形成する接合部形成工程と、接合部形成工程の後に、開放導体層が覆われる状態で開口部に液状の耐水樹脂が充填される充填工程と、充填工程の後に、液状の耐水樹脂を硬化させて、耐水封止部を形成する封止工程と、を備えることを特徴とする基板接続構造の製造方法が提供される。
【0018】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、第1開口形成工程および第2開口形成工程では、第1開口部および第2開口部を矩形状に形成し、スリット形成工程では、スリットは、矩形状の第1開口部を構成する4つの辺のうち向かう合う一組の辺に沿うように一対形成されている、ことが好ましい。
【0019】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、充填工程では、第2被覆層のうち導体層とは反対側に位置する表面に差し掛かるように液状の耐水樹脂が充填されると共に、封止工程では、表面に差し掛かった液状の耐水樹脂が硬化することで、表面との間で接着力を及ぼす封止フランジ部が形成される、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、第1被覆層および第2被覆層(絶縁層)をスポット的に除去して金属部材と導体層との間で高さの相違が生じても、導体層と金属部材とを電気的に良好に接合可能となる。また、接合部位の電蝕を防止可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る基板接続構造の構成を示す平面図である。
【
図2】
図1に示す基板接続構造をI-I線に沿って切断した状態を示す断面図である。
【
図3】
図1に示す基板接続構造をII-II線に沿って切断した状態を示す断面図である。
【
図4】
図1に示す基板接続構造を製造するための片面基板を示す側断面図である。
【
図5】
図4に示す片面基板の導体層にスリットを形成した状態を示す平面図である。
【
図6】片面基板に第2被覆層が張り合わされた状態を示す側断面図である。
【
図7】貼り合わせ後の第2被覆層に上側開口部を形成した状態を示す側断面図である。
【
図8】開口部およびスリットの形成後に、金属板を導体層の下方側(Z2側)に設置した状態を示す側断面図である。
【
図9】
図9に示す金属板の設置後に、接合部を形成した状態を示す側断面図である。
【
図10】比較例に係る基板接続構造の構成を示す平面図である。
【
図11】
図10に示す比較例に係る基板接続構造をI-I線に沿って切断した状態を示す断面図である。
【
図12】本発明の変形例に係り、スリットの端部側に拡大スリット部が形成された構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態に係る基板接続構造10および基板接続構造10の製造方法について、以下に説明する。なお、以下の説明においては、フレキシブルプリント基板20の長手方向(
図1における左右方向;横方向)をX方向とし、
図1の右側をX1側、
図1の左側をX2側とする。また、フレキシブルプリント基板20の短手方向(
図1における上下方向;縦方向)をY方向とし、
図1の上側をY1側、
図1の下側をY2側とする。また、フレキシブルプリント基板20の厚み方向(
図2における上下方向;縦方向)をZ方向とし、
図2の上側をZ1側、
図2の下側をZ2側とする。
【0023】
<基板接続構造の構成について>
図1は、本実施の形態に係る基板接続構造10の構成を示す平面図である。
図2は、
図1に示す基板接続構造10をI-I線に沿って切断した状態を示す断面図である。
図3は、
図1に示す基板接続構造10をII-II線に沿って切断した状態を示す断面図である。
【0024】
本実施の形態の基板接続構造10は、たとえば自動車に搭載されるリチウムイオンバッテリのような駆動用の二次電池のセル間(または複数のセルから構成される電池パック間)を電気的に接続してモータの駆動電流を導通させるバスバーに相当する部分と、各セルの端子電圧と制御部とを電気的に接続して各セルの充電量を推測するワイヤハーネスに相当する配線部とを備えている。
【0025】
具体的には、本実施の形態の基板接続構造10は、
図1から
図3に示すように、フレキシブルプリント基板20と、金属板30と、耐水封止部40とを主要な構成要素としている。これらのうち、金属板30は、上述したバスバーに相当する部分である。また、フレキシブルプリント基板20は、導体層21と、第1被覆層22と、第2被覆層23とを備えている。導体層21は、たとえば銅箔等のような導電性を備える金属を材質とする部分であり、上述したワイヤハーネスに相当する部分である。導体層21は、第1被覆層22と第2被覆層23との間に挟み込まれている。
【0026】
なお、基板接続構造10は、自動車に搭載されるリチウムイオンバッテリに接続されるものには限られない。たとえば、基板接続構造10は、バッテリを備える非常用の電源や、配電盤等を始めとする自動車に搭載される以外の機器に対しても用いることが可能である。
【0027】
図1から
図3に示すように、本実施の形態の基板接続構造10は、フレキシブルプリント基板20と、金属板30と、耐水封止部40とを主要な構成要素としている。フレキシブルプリント基板20は、導体層21と、第1被覆層22と、第2被覆層23とを備えている。導体層21は、たとえば銅箔等のような導電性を備える金属を材質とする部分である。この導体層21は、第1被覆層22と第2被覆層23との間に挟み込まれている。
【0028】
第1被覆層22および第2被覆層23は、電気的な絶縁性を備える樹脂を材質として形成されている。なお、第1被覆層22および第2被覆層23の材質は、たとえばポリイミド、PET(polyethylene terephthalate)、PEN(polyethylene naphthalate)、ポリエステル等を材質とするものが挙げられるが、これら以外の樹脂を材質としても良い。また、第1被覆層22と第2被覆層23とは、同じ材質から形成されても良いが、異なる材質から形成されても良い。
【0029】
なお、
図2に示すように、フレキシブルプリント基板20の下方側(Z1側)には、第1被覆層22が位置し、その上方側(Z1側)には、導体層21が接着剤(接着層;図示省略)を介して接着されている。さらに、導体層21の上方側(Z1側)には、第2被覆層23が接着剤(接着層;図示省略)を介して接着されている。
【0030】
また、
図1および
図3に示すように、フレキシブルプリント基板20には、開口部24が設けられている。開口部24は、第1被覆層22および第2被覆層23を除去した部分であり、それによって、耐水封止部40を形成する前の段階では、導体層21が上方側(Z1側)および下方側(Z2側)に露出している。なお、
図1に示す構成では、開口部24は矩形状に設けられているが、その形状は矩形状には限られない。また、開口部24は、第1被覆層22を除去した下側開口部24a(第1開口部に対応)と、第2被覆層23を除去した上側開口部24b(第2開口部に対応)とが位置合わせされて構成されている。これら下側開口部24aと上側開口部24bは正確に位置合わせされていることが好ましいが、許容誤差の範囲内で多少の位置ずれが生じていても良い。
【0031】
また、開口部24には、導体層21が位置している。以下、開口部24に位置している導体層21を開放導体層21aとすると共に、第1被覆層22と第2被覆層23とで挟み込まれている導体層21を内部導体層21bとする。上述の開放導体層21aのうち、長手方向(X方向)と直交する幅方向(Y方向)の両端側には、スリット25が設けられていて、このスリット25によって開放導体層21aが内部導体層21bから切り離されている。このため、開放導体層21aは、内部導体層21bに対し、上下方向(Z方向)への相対的な移動や変形が容易に行える構成となっている。
【0032】
なお、
図2に示すように、開口部24の長手方向の中央側に位置する開放導体層21aは、開口部24の長手方向の両端側に位置する開放導体層21aよりも下方側(Z2側)に位置して、金属板30と接触状態または近接状態で対向している。以下、この部分を、底部21a1とする。また、下方側(Z2側)に位置する開放導体層21a(底部21a1)の長手方向(X方向)の両端側には、高さの異なる内部導体層21bに対して接続を図るためのテーパ部21a2が設けられている。
【0033】
なお、後述するように、底部21a1と金属板30との間で、電気的な接続を図るための接合部50が設けられている。また、
図2に示すように、テーパ部21a2と金属板30とは直接接触していないため、これらの間には、空隙部26が設けられている。この空隙部26には、後述する耐水封止部40の一部が入り込んでいる。
【0034】
また、金属板30は、大きな電流を導通させる部分であり、たとえばアルミニウムや銅のような大電流の導通に適した材質から形成されている。また、金属板30は、大電流の導通に対応させた厚みも有している。なお、
図1においては、金属板30は、矩形状となるように示されている。たとえば、
図1においては、金属板30は、その一部のみが示された状態となっている。すなわち、金属板30は、二次電池のセル間(または電池パック間)の端子間を接続するために、その形態は矩形状に限られるものではなく、種々の形態を採用することが可能である。
【0035】
ここで、底部21a1と金属板30との間には、接合部50が設けられている。接合部50は、底部21a1と金属板30とを、電気的な導通を伴う状態で接合している部分である。なお、接合部50を形成する手法としては、溶接、超音波接合等が挙げられるが、その他、溶接や導電性接着剤を用いても良い。
【0036】
また、耐水封止部40は、接合部50が位置する開口部24を封止している部分である。接合部50に水分が侵入してしまうと、水の電気分解等を原因として電蝕が生じるので、上述のように耐水封止部40を形成して開口部24を封止することで、接合部50に水分が到達しないようにしている。この封止には、耐水樹脂が用いられている。この耐水樹脂としては、良好な耐水性を備えると共に未硬化の状態では適切な粘度を有する液状であることが好ましい。このような耐水樹脂としては、種々の熱硬化型樹脂が挙げられる。そのような熱硬化型樹脂としては、たとえばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、紫外線硬化型樹脂等が挙げられる。なお、また、耐水樹脂は、紫外線硬化型樹脂であっても良い。そのような紫外線硬化型樹脂としては、ウレタンアクリレート、アクリル樹脂アクリレート、エポキシアクリレート等を材質とするものが挙げられるが、これら以外であっても良い。
【0037】
なお、耐水樹脂は、上述のような熱硬化型樹脂と紫外線硬化型樹脂の2つの硬化を実現可能な2キュアタイプのものであっても良い。
【0038】
この耐水封止部40は、開口部24の内壁と、金属板30の表面とで囲まれた空間に、未硬化の耐水樹脂を充填することにより形成される。したがって、導体層21は、外部に露出しない状態となる。また、未硬化の耐水樹脂の流動により、接合部50および導体層21が耐水樹脂で覆われる。それにより、未硬化の耐水樹脂が硬化した後の耐水封止部40では、外部から水分が侵入しようとするのを阻止できる。
【0039】
<基板接続構造の製造方法について>
以上のような構成の基板接続構造10の製造方法について、以下に説明する。
(1)第1工程:片面基板60への下側開口部24aに対応する部分の形成(第1開口形成工程に対応)
まず、
図4に示すように、片面基板60を準備する。この片面基板60は、導体層21と第1被覆層22とを有している。また、第1被覆層22には、下側開口部24aが形成されている。下側開口部24aは、たとえば予め金型等で打ち抜いた第1被覆層22に対して、導体層21を貼り合わせるようにしても良い。また、導体層21と第1被覆層22とが貼り合わされた片面基板60に対して、レーザ光を照射して下側開口部24aに対応する部分を除去しても良い。
【0040】
(2)第2工程:導体層21へのスリット25の形成(スリット形成工程に対応)
次に、
図5に示すように、導体層21に対して、スリット25を形成する。この場合、スリット25は、たとえばパンチとダイスを備える金型にて打ち抜くことで形成しても良く、エッチングにより形成しても良く、レーザ加工によって形成しても良い。
【0041】
なお、スリット25の幅は、たとえば0.5mm~1.0mmとすることが好ましい。スリット25の幅が0.5mmより小さい場合には、後述する液状の耐水樹脂がスリット25を介して入り込むのが悪化する。また、スリット25の幅が1.0mmより大きい場合には、スリット25として必要とされる以上の幅のスリットとなるので、その分だけ開放導体層21aの幅が狭くなり、接合部50の寸法が小さくなったり、開放導体層21aにおける電気的な導電性が悪化する。しかしながら、接合部50の寸法を十分に確保できると共に開放導体層21aの電気的な導電性が悪化しない場合には、スリット25の幅を1.0mmよりも大きくしても良い。
【0042】
(3)第3工程:第2被覆層23の貼り合わせ(貼り合わせ工程に対応)および上側開口部24bの形成(第2開口形成工程に対応)
また、
図6に示すように、上述した導体層21へのスリット25の形成に前後して、片面基板60に対してフィルム状の第2被覆層23を貼り合わせる。この第2被覆層23には、
図6に示すように、上側開口部24bが形成されていない状態で貼り合わされる。そして、貼り合わせの後に、
図7に示すように、第2被覆層23において上側開口部24bに対応する部分を除去して、上側開口部24bを形成する。この場合、上述の貼り合わせ後に、たとえば上側開口部24bに対応する部分にレーザ光を照射して、上側開口部24bを形成しても良い。なお、片面基板60に第2被覆層23を貼り合わせる場合、その貼り合わせ後に、導体層21に対してスリット25を形成するようにしても良い。
【0043】
しかしながら、片面基板60に第2被覆層23を貼り合わせる前に、第2被覆層23から予め上側開口部24bに対応する部分を除去して、上側開口部24bを形成しても良い。この場合には、上側開口部24bに対応する部分を、たとえばパンチとダイスを備える金型にて打ち抜くことで形成しても良く、レーザ光を照射して上側開口部24bに対応する部分を除去しても良い。なお、第2被覆層23に上側開口部24bを予め形成する場合、たとえば画像検査装置や位置決め治具を用いて、下側開口部24aと上側開口部24bの位置合わせを行うことが好ましい。なお、下側開口部24aと上側開口部24bとが連通することで、開口部24が形成される。
【0044】
(4)第4工程:接合部50の形成(接合部形成工程に対応)
図8に示すように、上述した開口部24およびスリット25の形成後に、金属板30を導体層21の下方側(Z2側)に設置する。その状態で、導体層21を金属板30に押し付ける。このとき、開放導体層21aの幅方向(Y方向)の両端側にスリット25が存在することで、開放導体層21aは金属板30側(Z2側)に容易に移動可能となっている。また、上述のような押し付け状態とした後に、
図9に示すように、接合部50を形成する。この接合部50は、上述のように溶接や超音波接合等により形成することが可能である。なお、溶接としては、たとえばレーザ溶接、ガス溶接、抵抗溶接、アーク溶接、電子ビーム溶接等、種々の溶接を用いることが可能である。なお、レーザ溶接としては、たとえばYAGレーザ、炭酸ガスレーザ、半導体レーザ等、種々の手法を用いることが可能である。
【0045】
(5)第5工程:耐水封止部40の形成(充填工程および封止工程に対応)
上述した接合部50を形成した後に、耐水封止部40を形成する。この場合、たとえば液状の耐水樹脂を供給するディスペンサのノズルを、いずれか一方のスリット25に近接させるようにする。すると、液状の耐水樹脂は、開口部24の内壁で囲まれた部位に貯留される。このとき、液状の耐水樹脂は、一方のスリット25からテーパ部21a2と金属板30との間の空隙部26に入り込むように回り込む。それにより、開口部24には液状の耐水樹脂が全体的に充填される状態となる(充填工程に対応)。そして、充填後に液状の耐水樹脂を硬化させることで、耐水封止部40を形成する(封止工程に対応)。
【0046】
ここで、液状の耐水樹脂は、開放導体層21aを確実に覆うように供給されることが好ましい。具体的には、
図2に示すように、液状の耐水樹脂が硬化した後の耐水封止部40が、第2被覆層23の上面(Z1側の面)よりも上方側(Z1側)に盛り上がるように、液状の耐水樹脂が供給されることが好ましい。このとき、
図2に示すように、耐水封止部40には、第2被覆層23の上面(Z1側の面)に差し掛かる封止フランジ部41が形成されることが好ましい。
【0047】
上記のような封止フランジ部41が形成される場合、開放導体層21aが外部に露出するのを確実に防止できる。これと共に、封止フランジ部41と第2被覆層23の上面との間は、接着力によって接着される。そのため、耐水封止部40と第2被覆層23の間では、せん断方向((開口部24の内壁と耐水封止部40の間)のみならず、引っ張り方向(第2被覆層23の上面と封止フランジ部41の間)においても接着力が作用するので、一層剥離し難い構成となっている。
【0048】
なお、液状の耐水樹脂の粘度は、上記のように空隙部26への入り込みを行える程度の流動性を備えると共に、
図2に示すような盛り上がり部分を形成するような粘度であることが好ましい。
【0049】
以上のようにすることで、
図1から
図3に示すような基板接続構造10が形成される。
【0050】
<効果について>
以上のような構成の基板接続構造10は、電気的な絶縁性を備える樹脂を材質とし、周囲が内壁で囲まれた状態で貫通する下側開口部24a(第1開口部)を備える第1被覆層22を備え、また、基板接続構造10は、電気的な絶縁性を備える樹脂を材質とし、周囲が内壁で囲まれ、かつ厚み方向(Z方向)において下側開口部24a(第1開口部)と位置合わせされることで下側開口部24a(第1開口部)との間で一体的な開口部24を形成する上側開口部24b(第2開口部)を備える第2被覆層23とを備える。また、基板接続構造10は、少なくとも電気的な導電性を備えると共に、一方側の面が第1被覆層22で覆われ、かつ他方側の面が第2被覆層23で覆われると共に、下側開口部24a(第1開口部)と上側開口部24b(第2開口部)とが連通するように貫通するスリット25を備える導体層21を備えている。また、基板接続構造10は、第1被覆層22のうち導体層21とは反対側に配置される金属板30(金属部材)を備えている。
【0051】
このため、第1被覆層22および第1被覆層22を部分的に除去して、金属板30(金属部材)との間で高さ方向(Z方向)における高さの相違が生じても、導体層と金属部材とを電気的に良好に接合可能となる。
【0052】
また、導体層21のうち下側開口部24a(第1開口部)に位置する開放導体層21aを金属板30(金属部材)側に変形させた状態で金属板30(金属部材)と導体層21とを電気的に導通する状態で接合させた接合部50と、耐水性を備える樹脂を材質とすると共に、接合部50を形成する開放導体層21aを覆う状態で開口部24を封止する耐水封止部40とを備えている。
【0053】
このため、上側開口部24b(第2開口部)側から液状の耐水樹脂を供給した場合には、下側開口部24a(第1開口部)側に液状の耐水樹脂が回り込むので、下側開口部24a(第1開口部)側に液状の耐水樹脂が回り込まない空隙が形成されるのを防止可能となる。したがって、接合部50に水分が到達してしまうのを低減可能となり、接合部50に電蝕が生じるのを抑制可能となる。
【0054】
ここで、比較例に係る基板接続構造10Aを
図10および
図11に示す。
図10は、比較例に係る基板接続構造10Aの構成を示す平面図である。
図11は、
図10に示す比較例に係る基板接続構造10AをI-I線に沿って切断した状態を示す断面図である。
図10および
図11に示すように、スリット25が導体層21に形成されていない場合、開放導体層21aは内部導体層21bと幅方向(Y方向)においても連続した状態となっているので、金属板30に向かって変形し難くなる。このため、導体層21を金属板30に向けて押し付けながら開放導体層21aと金属板30とを接合しようとしても、開放導体層21aは上方側(Z1側)に浮き上がろうとする力(復元力)が作用する。
【0055】
したがって、接合部50を形成する作業に困難性が伴う。また、接合部50の大きさが不十分となったり、基板接続構造10に長期に亘って振動等の外力が作用する場合には、接合部50が破壊される虞がある。また、たとえば上側開口部24b側から液状の耐水樹脂を供給しても、下側開口部24a側には液状の耐水樹脂が回り込まないので、下側開口部24a側に比較的大きな空隙が形成される虞があり、耐水封止部40による封止が不十分となる虞がある。したがって、接合部50に水分が到達してしまう虞があり、接合部50に電蝕が生じてしまう虞がある。
【0056】
これに対して、本実施の形態では、導体層21の開放導体層21aには、スリット25が設けられている。このため、開放導体層21aを金属板30に向けて変形させることが容易に行えるので、接合部50を形成する作業が容易となる。また、開放導体層21aを金属板30に向けて容易に変形させることができるので、接合部50の大きさを十分に確保することができ、接合部50の機械的強度を十分に確保することが可能となる。したがって、基板接続構造10に長期に亘って振動等の外力が作用しても、接合部50が破壊され難い構成とすることができる。また、上側開口部24b側から液状の耐水樹脂を供給した場合でも、下側開口部24a側に液状の耐水樹脂が回り込むので、下側開口部24a側に液状の耐水樹脂が回り込まない空隙が形成されるのを防止可能となる。したがって、接合部50に水分が到達してしまうのを低減可能となり、接合部50に電蝕が生じるのを抑制可能となる。
【0057】
また、本実施の形態では、開口部24は矩形状に設けられていると共に、スリット25は、矩形状の開口部24を構成する4つの辺のうち向かう合う一組の辺に沿うように一対設けられている。
【0058】
たとえば、
図1に示すように、スリット25を開口部24の長手方向(X方向)の辺に沿うように形成する場合、そのスリット25は、開口部24の幅方向(Y方向)の両端側に形成される状態となる。このように、スリット25が開口部24を構成する4つの辺のうち向かう合う一組の辺に沿うように形成される場合、開放導体層21aの変形が容易となり、接合部50を形成し易くなる。このため、接合部50を形成する作業が一層容易となる。また、開放導体層21aを金属板30に向けて容易に変形させることができるので、接合部50の大きさを十分に確保することができ、接合部50の機械的強度を十分に確保することが可能となる。したがって、基板接続構造10に長期に亘って振動等の外力が作用しても、接合部50が破壊され難い構成とすることができる。
【0059】
さらに、本実施の形態では、開放導体層21aは、金属板30(金属部材)に対して接する底部21a1を備え、この底部21a1に接合部50が形成されている。これと共に、開放導体層21aのうち延伸方向の両端側には、テーパ部21a2が設けられていて、そのテーパ部21a2は、導体層21のうち第1被覆層22および第2被覆層23で覆われている内部導体層21bと底部21a1とを接続すると共に底部21a1から内部導体層21bに向かうにつれて徐々に金属板30(金属部材)から離間している。そして、金属板30(金属部材)とテーパ部21a2の間の空隙部26も耐水封止部40で充填されている。
【0060】
このため、
図10および
図11に示すような、比較例に係る構成では液状の耐水樹脂が充填されずに空隙が生じているが、本実施の形態では、上記の空隙部26にも液状の耐水樹脂の充填によって、耐水封止部40が形成可能となる。したがって、基板接続構造10の防水性を一層高めることが可能となる。
【0061】
また、本実施の形態では、耐水封止部40は、第2被覆層23のうち導体層21とは反対側に位置する表面(Z1側の面)よりも隆起して設けられている。このため、接合部50を覆う十分な体積の耐水封止部40を形成することができる。また、十分な体積の耐水封止部40が設けられることで、液状の樹脂の硬化収縮に際しても、接合部50が外部に露出するのを防止可能となる。
【0062】
さらに、本実施の形態では、耐水封止部40には、第2被覆層23のうち導体層21とは反対側に位置する表面に差し掛かると共に該表面との間で接着力を及ぼす封止フランジ部41が設けられている。
【0063】
このため、封止フランジ部41と第2被覆層23の上面との間は、接着力によって接着される。そのため、耐水封止部40と第2被覆層23の間では、せん断方向((開口部24の内壁と耐水封止部40の間)のみならず、引っ張り方向(第2被覆層23の上面と封止フランジ部41の間)においても接着力が作用するので、耐水封止部40が一層剥離し難い構成となり、接合部50に対する防水性を一層高めることが可能となる。
【0064】
また、本実施の形態に係る基板接続構造10の製造方法では、電気的な絶縁性を備える樹脂を材質とする第1被覆層22と、少なくとも電気的な導電性を備えると共に、一方側の面が第1被覆層22で覆われる導体層21とを備える片面基板60に、第1被覆層22の一部を除去して、周囲が内壁で囲まれた状態で貫通する下側開口部24a(第1開口部)を形成する第1開口形成工程を備える。また、導体層21のうち下側開口部24a(第1開口部)に露出している開放導体層21aを貫通するスリット25を形成するスリット形成工程を備え、さらに、スリット形成工程に前後して、電気的な絶縁性を備える樹脂を材質とする第2被覆層23を、導体層21のうち第1被覆層22とは反対側に貼り合わせる貼り合わせ工程とを備える。また、貼り合わせ工程に前後して、周囲が内壁で囲まれると共に厚み方向において下側開口部24a(第1開口部)と位置合わせされることで下側開口部24a(第1開口部)との間で一体的な開口部24となる上側開口部24b(第2開口部)を第2被覆層23に対して形成する第2開口形成工程を備える。また、スリット形成工程、貼り合わせ工程および第2開口形成工程の後に、第1被覆層22のうち導体層21とは反対側に金属板30(金属部材)を配置すると共に、導体層21のうち下側開口部24a(第1開口部)に位置する開放導体層21aを金属板30(金属部材)側に変形させた状態で金属板30(金属部材)と導体層21とを電気的に導通する状態で接合させて接合部50を形成する接合部形成工程を備える。また、接合部形成工程の後に、開放導体層21aが覆われる状態で開口部24に液状の耐水樹脂が充填される充填工程を備え、さらに充填工程の後に、液状の耐水樹脂を硬化させて、耐水封止部40を形成する封止工程と、を備えている。
【0065】
このように、スリット形成工程で開放導体層21aにスリット25を形成することにより、第1被覆層22および第1被覆層22を、部分的に除去して、金属板30(金属部材)との間で高さ方向(Z方向)における高さの相違が生じても、導体層と金属部材とを電気的に良好に接合可能となる。
【0066】
また、接合部形成工程の後に、充填工程において上側開口部24b(第2開口部)側から液状の耐水樹脂を供給した場合には、下側開口部24a(第1開口部)側に液状の耐水樹脂が回り込むので、下側開口部24a(第1開口部)側に液状の耐水樹脂が回り込まない空隙が形成されるのを防止可能となる。したがって、接合部50に水分が到達してしまうのを低減可能となり、接合部50に電蝕が生じるのを抑制可能となる。
【0067】
また、本実施の形態では、第1開口形成工程および第2開口形成工程では、下側開口部24a(第1開口部)および上側開口部24b(第2開口部)を矩形状に形成する。また、スリット形成工程では、スリット25は、矩形状の下側開口部24a(第1開口部)を構成する4つの辺のうち向かう合う一組の辺に沿うように一対形成されている。
【0068】
この場合、たとえば、
図1に示すように、スリット25を開口部24の長手方向(X方向)の辺に沿うように形成する場合、そのスリット25は、開口部24の幅方向(Y方向)の両端側に形成される状態となる。このように、スリット25が開口部24を構成する4つの辺のうち向かう合う一組の辺に沿うように形成される場合、開放導体層21aの変形が容易となり、接合部50を形成し易くなる。このため、接合部50を形成する作業が一層容易となる。また、開放導体層21aを金属板30に向けて容易に変形させることができるので、接合部50の大きさを十分に確保することができ、接合部50の機械的強度を十分に確保することが可能となる。したがって、基板接続構造10に長期に亘って振動等の外力が作用しても、接合部50が破壊され難い構成とすることができる。
【0069】
また、本実施の形態では、充填工程では、第2被覆層23のうち導体層21とは反対側に位置する表面に差し掛かるように液状の耐水樹脂が充填されると共に、封止工程では、表面に差し掛かった液状の耐水樹脂が硬化することで、表面との間で接着力を及ぼす封止フランジ部41が形成される。
【0070】
このため、封止工程では封止フランジ部41が形成され、その封止フランジ部41と第2被覆層23の上面との間は、接着力によって接着される。そのため、耐水封止部40と第2被覆層23の間では、せん断方向(開口部24の内壁と耐水封止部40の間)のみならず、引っ張り方向(第2被覆層23の上面と封止フランジ部41の間)においても接着力が作用するので、耐水封止部40が一層剥離し難い構成となり、接合部50に対する防水性を一層高めることが可能となる。
【0071】
<変形例>
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0072】
上述の実施の形態においては、スリット25は、開口部24の幅方向(Y方向)の両端側において直線状に設けられている。しかしながら、スリットは、このような形状には限られない。たとえば、スリットは、開口部24の幅方向(Y方向)のいずれか一方のみに設けられていても良い。また、開放導体層21aを幅方向(Y方向)において2つ以上に分割するようなスリットを設けても良い。さらに、スリットは直線状のみならず、たとえばL字形状に設けられていても良く、コ字状に設けられていても良い。
【0073】
また、上述の実施の形態では、金属部材として、金属板30について説明している。しかしながら、金属部材は金属板30以外のものであっても良い。たとえば、金属棒、金属箔、導電性を備えるワイヤ等を金属部材としても良い。
【0074】
また、上述の実施の形態では、フレキシブルプリント基板20は、導体層21と第1被覆層22と第2被覆層23とを備えている。しかしながら、フレキシブルプリント基板20は、これら以外の層を備えていても良い。
【0075】
また、上述の実施の形態においては、たとえば
図12に示すように、スリット25の端部側に、該スリット25の他の部分よりも大きく開口した拡大スリット部25aを形成しても良い。このような拡大スリット部25aが存在する場合、空隙部26への液状の耐水樹脂の入り込みを一層良好にすることが可能となる。なお、拡大スリット部25aは、第1被覆層22や第2被覆層23の幅を減少させずに開放導体層21aの幅を減少させるように形成しても良く、開放導体層21aの幅を減少させずに第1被覆層22や第2被覆層23の幅を減少させるように形成しても良く、開放導体層21aの幅、および第1被覆層22や第2被覆層23の幅のいずれをも減少させるように形成しても良い。
【符号の説明】
【0076】
10,10A…基板接続構造、20…フレキシブルプリント基板、21…導体層、21a…開放導体層、21a1…底部、21a2…テーパ部、21b…内部導体層、22…第1被覆層、23…第2被覆層、24…開口部、24a…下側開口部(第1開口部に対応)、24b…上側開口部(第2開口部に対応)、25…スリット、25a…拡大スリット部、26…空隙部、30…金属板(金属部材に対応)、40…耐水封止部、41…封止フランジ部、50…接合部、60…片面基板