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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】樹木保護具
(51)【国際特許分類】
   A01G 13/10 20060101AFI20220420BHJP
   A01G 13/02 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
A01G13/10 Z
A01G13/02 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018028252
(22)【出願日】2018-02-20
(65)【公開番号】P2019088267
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】P 2017217207
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 清純
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-214116(JP,A)
【文献】特開2000-253759(JP,A)
【文献】特開2006-149331(JP,A)
【文献】特開2000-279039(JP,A)
【文献】特開2007-289154(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02187071(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 13/00 - 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹木を囲む様に取付けられて鹿や熊等の野生動物の食害から樹木を保護し、設置面に立設される棒状部材と、樹木を囲む筒状の保護部材と、この保護部材を前記棒状部材に取付けるクリップとを備えた樹木保護具であって、
前記棒状部材は、前記保護部材がクリップにより挟み付けられる被挟持部材と、その被挟持部材に隣設される支柱部材と、を備え、
前記クリップは保持部材を用いて支柱部材に保持される様になされている
ことを特徴とする樹木保護具。
【請求項2】
前記棒状部材は、保護部材がクリップにより挟み付けられる第一支柱と、その第一支柱に隣設される第二支柱と、を備え、
前記クリップは保持部材を用いて第二支柱に保持される様になされている
ことを特徴とする請求項1に記載の樹木保護具。
【請求項3】
前記クリップは、
前記棒状部材に挟み付けられ、かつ挟持幅が弾性的に拡大または縮小可能に構成される挟持部と、
この挟持部に一体に形成され、かつ前記挟持部の挟持幅を弾性的に拡大させるように操作される一対の摘まみ片と、
前記挟持部に一体に形成され、かつ起立姿勢から傾倒姿勢に折り曲げられて前記一対の摘まみ片の対向間に楔状に押し込まれたときに当該一対の摘まみ片を離隔させるように突っ張って前記挟持部の挟持幅を弾性的に縮小させるための板状のロック片とを有している
ことを特徴とする請求項1または2に記載の樹木保護具。
【請求項4】
前記クリップの一対の摘まみ片には貫通孔が設けられ、その貫通孔に前記保持部材が挿通されて、第二支柱にクリップが保持されると共に、前記クリップの一対の摘まみ片が第二支柱に当接される様になされている
ことを特徴とする請求項2または3に記載の樹木保護具。
【請求項5】
前記クリップの挟持部は、周方向の1ヶ所が分離された筒状部材とされ、
前記一対の摘まみ片は、板状部材となされ、かつ前記挟持部に径方向外向きに延出するように連接されることによってそれらの対向間に側面視でV字形の空間を作る様になされ、
前記ロック片は、前記筒状部材からなる挟持部の周方向の中間領域の中心軸線方向において前記一対の摘まみ片の一方側に、前記挟持部の径方向外向きに延出するように起立した姿勢で連接されている
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の樹木保護具。
【請求項6】
前記摘まみ片のV字形の空間に前記第二支柱が配置されている
ことを特徴とする請求項5に記載の樹木保護具。
【請求項7】
前記保護部材は、樹木を囲む筒状に形成された保護部材本体と、その保護部材本体に取付けられた補強部材とを備え、
前記クリップを用いて第一支柱に保護部材を取付けた時、前記補強部材が収容される収容部が前記挟持部に形成されている
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の樹木保護具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山林等において植林や造林された樹木に対して、鹿や熊等の野生動物が苗木や樹木の樹皮を剥がして食い荒らす被害から樹木を防護するために使用する樹木保護具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
公官庁や民間企業などにより行われている植樹において、樹木がシカやイノシシなどの野生動物に食べられないように保護する樹木保護具については、従来より種々の提案がなされており、例えば、幼齢木の周囲に所定間隔で立設される少なくとも2本の支柱と、上記支柱を介して幼齢木の周囲に筒状に起立保持される筒状ネットとを備え、上記支柱および筒状ネットが、ともに生分解性を有している幼齢木保護具である樹木保護具が開示されている(特許文献1の請求項1参照)が、樹木の周囲に前記筒状ネットを起立保持させる際、筒状ネットにコシが無く、きれいな筒状に形成して起立保持させるのが容易ではなかった。また、筒状ネットをコシのある材料で形成すると、樹木を植林している現地まで樹木保護具を運搬する際、嵩高くなり運搬が容易なものではなくなってしまうため、それを解消するために、出願人は、横材であるリング材が上下方向に複数配置され、この複数のリング材に柔軟性を備えた筒状のネット材が取付けられて形成されたネット状筒状体が、上下方向に畳まれた運搬時の状態と、上下方向に引き伸ばされた使用時の状態とが可変となされ、その上下方向に引き伸ばされた使用時の状態において、前記ネット状筒状体が支持体に支持されている樹木保護具を提案している(特許文献2の請求項1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-279039号公報
【文献】特開2017-112940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の樹木保護具においては、前記ネット状筒状体のリング材の部分が係止具を介して前記支柱に係止されたり、前記ネット材の部分が係止具を介して前記支柱に係止されたりするが、例えば、積雪地域に前記樹木保護具を設置した場合、ネット状筒状体に積雪し、その積雪荷重により、ネット状筒状体を支柱に係止している係止具ごとネット状筒状体がずれ落ちたり、樹木保護具全体が倒れてしまい、樹木が外方に露出し、野生動物に食い荒らされてしまう懸念が想定される。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、樹木保護具に積雪などによる荷重などが加わった場合でも、支柱から保護部材がずれ落ちたり、樹木保護具全体が倒れたりなどすることがなく、保護する樹木を確実に保護できる様にした樹木保護具を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわち本発明に係る樹木保護具は、樹木を囲む様に取付けられて鹿や熊等の野生動物の食害から樹木を保護し、設置面に立設される棒状部材と、樹木を囲む筒状の保護部材と、この保護部材を前記棒状部材に取付けるクリップとを備えた樹木保護具であって、前記棒状部材は、前記保護部材がクリップにより挟み付けられる被挟持部材と、その被挟持部材に隣設される支柱部材と、を備え、前記クリップは保持部材を用いて支柱部材に保持される様になされていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係る樹木保護具によれば、前記棒状部材は、前記保護部材がクリップにより挟み付けられる被挟持部材と、その被挟持部材に隣設される支柱部材と、を備え、前記クリップは保持部材を用いて支柱部材に保持される様になされているので、保護部材がクリップにより被挟持部材に挟み付けられ固定されているのに加えて、保持部材によりクリップが支柱部材に保持されて、つまりクリップが二重に被挟持部材及び支柱部材とにそれぞれ係止されており、外方から保護部材やクリップに加わる荷重などに、更に対抗することができるようになっている。
【0008】
また本発明に係る樹木保護具は、前記棒状部材は、保護部材がクリップにより挟み付けられる第一支柱と、その第一支柱に隣設される第二支柱と、を備え、前記クリップは保持部材を用いて第二支柱に保持される様になされていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る樹木保護具によれば、前記棒状部材は、前記保護部材がクリップにより挟み付けられる第一支柱と、その第一支柱に隣設される第二支柱と、を備え、前記クリップは保持部材を用いて第二支柱に保持される様になされているので、保護部材がクリップにより第一支柱に挟み付けられ固定されているのに加えて、保持部材によりクリップが第二支柱に保持されて、つまりクリップが二重に第一支柱及び第二支柱とにそれぞれ係止されており、外方から保護部材やクリップに加わる荷重などに、更に対抗することができるようになっている。
【0010】
また本発明に係る樹木保護具は、前記クリップが、前記棒状部材に挟み付けられ、かつ挟持幅が弾性的に拡大または縮小可能に構成される挟持部と、この挟持部に一体に形成され、かつ前記挟持部の挟持幅を弾性的に拡大させるように操作される一対の摘まみ片と、前記挟持部に一体に形成され、かつ起立姿勢から傾倒姿勢に折り曲げられて前記一対の摘まみ片の対向間に楔状に押し込まれたときに当該一対の摘まみ片を離隔させるように突っ張って前記挟持部の挟持幅を弾性的に縮小させるための板状のロック片とを有していることを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係る樹木保護具によれば、前記クリップが、前記棒状部材に挟み付けられ、かつ挟持幅が弾性的に拡大または縮小可能に構成される挟持部と、この挟持部に一体に形成され、かつ前記挟持部の挟持幅を弾性的に拡大させるように操作される一対の摘まみ片と、前記挟持部に一体に形成され、かつ起立姿勢から傾倒姿勢に折り曲げられて前記一対の摘まみ片の対向間に楔状に押し込まれたときに当該一対の摘まみ片を離隔させるように突っ張って前記挟持部の挟持幅を弾性的に縮小させるための板状のロック片とを有しているので、前記板状のロック片を傾倒姿勢に折り曲げて前記一対の摘み片の対向間に押し込むと、前記板状のロック片が前記一対の摘み片の対向間で撓むこと無く突っ張る状態になるので、当該突っ張り力が弱くならずに、むしろ可及的に強くなる。これにより、前記クリップを用いて前記第一支柱に保護部材を固定する際に、固定強度が不足することが無くなって、むしろ可及的に高められ、クリップにより保護部材が第一支柱に確実に挟み付けられ、外方から保護部材やクリップに加わる荷重などが加わっても、支柱から保護部材がずれ落ちたり、樹木保護具全体が倒れたりなどしにくくなされている。
【0012】
また本発明に係る樹木保護具は、前記クリップの一対の摘まみ片には貫通孔が設けられ、その貫通孔に前記保持部材が挿通されて、第二支柱にクリップが保持されると共に、前記クリップの一対の摘まみ片が第二支柱に当接される様になされていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係る樹木保護具によれば、前記クリップの一対の摘まみ片には貫通孔が設けられ、その貫通孔に前記保持部材が挿通されて、第二支柱にクリップが保持されると共に、前記クリップの一対の摘まみ片が第二支柱に当接される様になされているので、前記クリップが第二支柱に当接されて保持部材により第二支柱にクリップが保持されることにより、クリップがずれるのを抑えることができる。
【0014】
また本発明に係る樹木保護具は、前記クリップの挟持部は、周方向の1ヶ所が分離された筒状部材とされ、前記一対の摘まみ片は、板状部材となされ、かつ前記挟持部に径方向外向きに延出するように連接されることによってそれらの対向間に側面視でV字形の空間を作る様になされ、前記ロック片は、前記筒状部材からなる挟持部の周方向の中間領域の中心軸線方向において前記一対の摘まみ片の一方側に、前記挟持部の径方向外向きに延出するように起立した姿勢で連接されていることを特徴とするものである。
【0015】
本発明に係る樹木保護具によれば、前記クリップの挟持部は、周方向の1ヶ所が分離された筒状部材とされ、前記一対の摘まみ片は、板状部材となされ、かつ前記挟持部に径方向外向きに延出するように連接されることによってそれらの対向間に側面視でV字形の空間を作る様になされ、前記ロック片は、前記筒状部材からなる挟持部の周方向の中間領域の中心軸線方向において前記一対の摘まみ片の一方側に、前記挟持部の径方向外向きに延出するように起立した姿勢で連接されているので、前記ロック片を対向する前記一対の摘み片の間に押し込んで、一対の摘まみ片が近寄らないようにし、クリップが外れたりずれたりしにくいようにすることができる。
【0016】
また本発明に係る樹木保護具は、前記摘まみ片のV字形の空間に前記第二支柱が配置されていることを特徴とするものである。
【0017】
本発明に係る樹木保護具によれば、前記摘まみ片のV字形の空間に前記第二支柱が配置されているので、前記摘まみ片が離間する方向に第二支柱が摘まみ片に押し当たり、クリップと第二支柱とがずれにくいようになされている。
【0018】
また本発明に係る樹木保護具は、前記保護部材は、樹木を囲む筒状に形成された保護部材本体と、その保護部材本体に取付けられた補強部材とを備え、前記クリップを用いて第一支柱に保護部材を取付けた時、前記補強部材が収容される収容部が前記挟持部に形成されていることを特徴とするものである。
【0019】
本発明に係る樹木保護具によれば、前記保護部材は、樹木を囲む筒状に形成された保護部材本体と、その保護部材本体に取付けられた補強部材とを備え、前記クリップを用いて第一支柱に保護部材を取付けた時、前記補強部材が収容される収容部が前記挟持部に形成されているため、前記クリップで保護部材を第一支柱に取付けた時、前記補強部材が挟持部の収容部に収容されるので、前記補強部材の大きさの分だけクリップの挟持部の内周面が第一支柱の外側面から浮き上がるのを防止することができ、その結果、保護部材をクリップで強固に挟み付け、クリップがずれるのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る樹木保護具によれば、前記クリップを用いて第一支柱に保護部材をしっかり取付けることができると共に、外力が作用した場合であっても、クリップに挿通された保持部材が第二支柱に保持されているため、クリップがずれ落ちたり、樹木保護具が倒れたりするのを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る樹木保護具の一つの実施形態を示す斜視図である。
図2図1の要部を示す斜視図である。
図3図1に示す樹木保護具のうち、保護部材を除いた実施形態を示す斜視図である。
図4】(a)は図3に示す左側の棒状部材の要部を示す斜視図、(b)は図3に示す右側の棒状部材の要部を示す斜視図である。
図5図1に示す樹木保護具を構成するクリップの実施形態を示す、(a)は一方の斜視図、(b)は(a)の反対側の斜め上方から見た斜視図である。
図6図5に示すクリップの使用状態を示す説明図であって、図4(b)に示す保持部材を除いたA-A矢視の断面図である。
図7】本発明に係る樹木保護具の別の実施形態を示す斜視図である。
図8図7の要部を示す拡大の斜視図である。
図9図7,8に示す実施形態に用いられている短尺棒状体にクリップを取付ける説明図(斜視図)である。
図10図7,8に示す実施形態に用いられている短尺棒状体とクリップとで保護部材を挟み付ける模式的な説明図(平面視の断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照し、具体的に説明する。なお、本実施形態はあくまでも本発明を理解するための一例を示したに過ぎず、各部の形状、構造、材質等に関し、本実施形態以外のバリエーションが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で許容されていることは言うまでもない。
【0023】
Pは本発明に係る樹木保護具であって、樹木Tの周囲を覆うように設置され、鹿や熊等の野生動物の食害から樹木Tを保護するものである。
前記樹木保護具Pは、設置面Gに立設される棒状部材1と、樹木Tを囲む筒状の保護部材2と、この保護部材2を前記棒状部材1に取付けられるクリップ3とを備えている。そして、図1から図6に示す実施形態においては、前記棒状部材1は、設置面Gに立設されていると共に前記保護部材2がクリップ3により挟み付けられる被挟持部材である第一支柱4と、その第一支柱4に隣設され設置面Gに立設されている第二支柱5と、を備え、前記クリップ3は保持部材6を用いて第二支柱5に保持される様になされている。
【0024】
詳細には、前記クリップ3は、第一支柱4に挟み付けられかつ挟持幅が弾性的に拡大または縮小可能に構成される挟持部31と、この挟持部31に一体に形成されかつ前記挟持部31の挟持幅を弾性的に拡大させるように操作される一対の摘まみ片32と、前記挟持部31に一体に形成されかつ起立姿勢から傾倒姿勢に折り曲げられて前記一対の摘まみ片32の対向間に楔状に押し込まれたときに当該一対の摘まみ片32を離隔させるように突っ張って前記挟持部31の挟持幅を弾性的に縮小させるための板状のロック片33とを有している。
【0025】
そして、前記クリップ3の挟持部31は、周方向の1ヶ所が分離された筒状部材とされ、前記一対の摘まみ片32は板状部材とされ、かつ前記挟持部31に径方向外向きに延出するように連接されることによってそれらの対向間に側面視でV字形の空間Kを作る様になされ、前記ロック片33は、筒状部材からなる前記挟持部31の周方向の中間領域の中心軸線方向Cにおいて前記一対の摘まみ片32の一方側に、前記挟持部31の径方向外向きに延出するように起立した姿勢で連接されている。
【0026】
そして、前記摘まみ片32のV字形の空間Kに前記第二支柱5が、摘まみ片32が第二支柱5に当接される様にして配置されている。また、前記クリップ3の一対の摘まみ片32には貫通孔34が設けられ、その貫通孔34に前記保持部材6が挿通されて、第二支柱5にクリップ3が保持されている。詳細には、前記保持部材6は合成樹脂製の帯状体からなり、一対の前記摘まみ片32のそれぞれの貫通孔34に挿通され、第二支柱5に巻き付けられて取付けられて、一対の摘まみ片32が第二支柱5に当接される様にして配置されている。
【0027】
前記第一支柱4は、パイプ材の外側面に合成樹脂層が被覆され、この合成樹脂層の外側面に長手方向に間隔をおいて節状部41が形成されている。そして、前記クリップ3を用いて保護部材2を第一支柱4に取付ける際、クリップ3が節状部41の直上に配置される様に取付けると、節状部41にクリップ3の端部が引っ掛り、保護部材2をずれ落ちにくくすることができる。また、前記第一支柱4の上端部と下端部とには栓体が装着され、前記パイプ材内部が密閉されており、前記栓体の外側にも前記合成樹脂層が形成されて、上端部は平坦に、下端部は先細りのテーパー形状(円錐形状)となされている。
【0028】
前記パイプ材は、鉄、ステンレス、アルミニウム合金等の金属、あるいは、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ABS、AAS、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、FRP等の合成樹脂からなる管状体が用いられ、その断面形状は円形、楕円形、多角形等特に限定はされないが、本実施形態に示すように、クリップ3の挟持部31の形状に合致する様に、断面が円形状のものが好適に使用されるが、特にこれに限定されるものではない。なお、中実の柱状体が第一支柱4として用いられても良いことは言うまでもない。
【0029】
また、上記パイプ材の外側面を被覆する合成樹脂材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のα-オレフィンの重合体を用いてもよく、エチレンにα-オレフィンを共重合させたもの、或いはエチレンに、酢酸ビニル、メタクリル酸又はそのエステル、アクリル酸又はそのエステル等と共重合させたものでもよく、更にはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ABS樹脂、AAS樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂等の合成樹脂を用いることができ、或いはこれらの樹脂を適宜組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0030】
前記第二支柱5には、円筒形状のいわゆる間伐材が好適に用いられるが、特にこれに限定されるものではなく、形状は角柱状であってもよいし、第一支柱4が用いられても良いし、中実の柱状体が用いられても良い。
【0031】
前記保護部材2は、引き伸ばして使用する使用状態において円筒状に形作られると共に樹木Tを覆い囲み保護する保護部材本体21と、螺旋状に形成されて保護部材本体21の側面に取付けられている補強部材22とを備えている。そして、保護部材本体21は合成樹脂製の不織布で形成され、補強部材22は金属製の細線材で形成されている。
【0032】
また、前記クリップ3の挟持部31には、前記補強部材22を収容する収容部35が形成されている。図1~4に示す様に、この樹木保護具Pにおいては、保護する樹木Tの両脇の設置面Gに第一支柱4を2本対向させて立設し、樹木Tと2本の第一支柱4とを覆う様に、筒状の保護部材2を配置して、その保護部材2をクリップ3の挟持部31と第一支柱4の外周面とで挟み付けて保護部材2を第一支柱4に取付けるものである。前記クリップ3で保護部材2を第一支柱4に取付けた時、前記補強部材22が挟持部31の収容部35に収容されて、前記補強部材22の大きさの分だけクリップ3が第一支柱4から浮き上がるのを防止することができる。なお、保護部材2に螺旋状に補強部材22を備えている理由としては、クリップ3を用いて第一支柱4に保護部材2を取付ける際、合成樹脂製の不織布で形成されている保護部材本体21のみを第一支柱にクリップ3で取付けるよりも、強度の高い補強部材22を一緒にクリップ3で挟み付け取付ける方が、保護部材2が破損し難いためである。
【0033】
更に、前記クリップ3の挟持部31の内側には、その使用状態における上下方向に2本の突条36が形成され、その突条36の中央付近が切欠かれ突条36が欠損している欠損部37が設けられている。また、前記挟持部31の分離された先端部の中央付近も切欠かれて切欠部38が設けられている。そして、これら欠損部37と切欠部38とが、前記保護部材2の補強部材22を収容する収容部35となっている。
【0034】
図6に示す様に、前記クリップ3を第一支柱4に取付ける手順を説明する。
前記一対の摘まみ片32を摘まみ、前記挟持部31の分離された先端を拡げて、前記保護部材2を挟み付け第一支柱4に取付ける(つまり、図6(a)に示す状態)。そして、起立姿勢で挟持部31に一体に形成されている前記ロック片33を90度折り曲げて傾倒させ、一対の摘まみ片32に対向して設けられている凹み溝39内に楔状に押し込み、一対の摘まみ片32を離隔させるように突っ張る様にする(つまり、図6(b)に示す状態)。こうすることにより、前記ロック片33を一対の摘み片32の対向間に押し込んで、一対の摘まみ片32が近寄らないようにし、クリップ3が外れたりずれたりしにくいようにすることができる。
【0035】
さらに、前記摘まみ片32のV字形の空間Kに前記第二支柱5が配置され、摘まみ片32が第二支柱5の外側面に当接するようにし、加えて、ロック片33も第二支柱が当接するようにしているので、前記摘まみ片が離間する方向に第二支柱が摘まみ片に押し当たり、クリップと第二支柱とがずれにくいようになされるとともに、ロック片33が起立姿勢に戻らないようになっている。
【0036】
本実施形態において、前記クリップ3の挟持部31は、2本の前記突条36と挟持部31の先端部とが前記保護部材本体21と当接し、保護部材2を第一支柱4に挟み付けて取付ける様になっているが、特にこれに限定されるものではなく、挟持部31の内壁面全体が保護部材本体21に当接する形状にしてもよい。すなわち、前記突条36及び挟持部31の先端部に設けられている突条部40を無くした形状にしてもよい。この場合には、前記保護部材2に備えられている螺旋状の補強部材22を収容する収容部35を、前記挟持部31の内壁面に周方向全体にわたって凹みを形成する様にして設ければよい。これにより、前記補強部材22が挟持部31の収容部35に収容されて、前記補強部材22の大きさの分だけクリップ3が第一支柱4から浮き上がるのを防止することができる。
【0037】
前記クリップ3は、例えばポリエチレン、ABS樹脂、AAS樹脂、ASA樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、エラストマー、ラバー等を素材とするものであって、成形により製作される。
【0038】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲内で適宜に変更することが可能である。
(1)上記実施形態において、一対の摘まみ片32は指で摘める大きさであれば、その形状は特に限定されないし、また、ロック片33は指で押せる大きさであれば、その形状は特に限定されない。さらに、突条36は、挟持部31の長手方向に複数設けることが可能である。
(2)上記実施形態では、ロック片33を挟持部31の中心軸線で一対の摘まみ片32に隣り合うように配置した例を挙げているが、本発明はこれのみに限定されるものではない。例えばロック片33は、図示していないが、一対の摘まみ片32の間に配置することも可能である。
【0039】
図7,8,9,10を用いて、本発明に係る別の実施形態について説明する。
図1から図6に示す実施形態では、被挟持部材である第一支柱4と、第二支柱5との2本の支柱を用いているのに対して、図7,8,9,10に示す実施形態では、被挟持部材である前記第一支柱4に替えて、短尺棒状体7を被挟持部材として用いる点で相違し、その他の構成については同一となされているので、その相違点のみを説明することとする。
【0040】
すなわち、図7,8,9,10に示す実施形態は、前記棒状部材1が、前記保護部材2がクリップ3により挟み付けられる被挟持部材である前記短尺棒状体7と、その短尺棒状体7に隣設され設置面Gに立設されている第二支柱5と、を備え、前記クリップ3は保持部材6を用いて第二支柱5に保持される様になされている。
【0041】
前記短尺棒状体7は、使用状態における平面視において蒲鉾形状となされ、湾曲した部分の2ヶ所に凹部71が連続して設けられている。そして、図9,10に示す様に、前記クリップ3と短尺棒状体7とで保護部材2を挟み付けた時、前記短尺棒状体7の凹部71にクリップ3の挟持部31の内側に形成されている突条36が対向されて配置され、前記保護部材2がクリップ3と短尺棒状体7とで強固に挟持されるようになっている。
【0042】
また、前記短尺棒状体7はその中央に透孔72が設けられ中空状(筒状)に形成されている。もっとも、この透孔72が設けられず中実状に形成されていてもよい。また本実施形態において、前記短尺棒状体7はクリップ3の高さより高く形成されているが、これに限定されるものではなく、クリップ3の高さと同等或いは低く形成されていてもよい。要は、前記短尺棒状体3とクリップ3とで保護部材2を確実に挟み付けることができれば、それらの高さ寸法について制限されるものではない。
【0043】
さらに本実施形態において、前記短尺棒状体7は使用状態における平面視において蒲鉾形状となされているが、これに限定されるものではなく、その平面視において円形状や楕円形状となされていてもよく、要は、前記短尺棒状体3とクリップ3とで保護部材2を確実に挟み付けることができれば、それらの平面視における形状について制限されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、支柱から保護部材がずれ落ちるなどすることがなく、保護する樹木を確実に保護できる様にした樹木保護具に好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 棒状部材
2 保護部材
21 保護部材本体
22 補強部材
3 クリップ
31 挟持部
32 摘まみ片
33 ロック片
34 貫通孔
35 収容部
36 突条
37 欠損部
38 切欠部
39 凹み溝
40 突条部
4 第一支柱
5 第二支柱
6 保持部材
7 短尺棒状体
71 凹部
72 透孔
P 樹木保護具
T 樹木
K V字形の空間
C 中心軸線方向
G 設置面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10