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特許7060987可撓管及びその補強コードの巻き付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】可撓管及びその補強コードの巻き付け方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/08 20060101AFI20220420BHJP
   F16L 27/10 20060101ALI20220420BHJP
   F16L 27/12 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
F16L11/08 A
F16L27/10 B
F16L27/12 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018049393
(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公開番号】P2019158107
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000201869
【氏名又は名称】倉敷化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 照博
(72)【発明者】
【氏名】村上 典孝
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 由自
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲
(72)【発明者】
【氏名】吉竹 智章
(72)【発明者】
【氏名】川原 勇
(72)【発明者】
【氏名】神社 晴夫
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-227381(JP,A)
【文献】特開昭63-249628(JP,A)
【文献】特開2005-271558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/08
F16L 27/10
F16L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層と外層とを有し、可撓性を持つ筒部材と、
上記筒部材の軸方向両端部に上記内層と上記外層との間に埋設されるようにそれぞれ配設され且つ、筒部と該筒部の軸方向外側の端部から径方向外側に延びる鍔部とを有する一対のインナー部材と、
上記内層と上記外層との間に埋設され、補強コードが上記インナー部材の筒部で構成される折返し部で折り返して該両折返し部の間を複数回往復した状態で上記内層及び上記両インナー部材の折返し部に巻き付けられてなる補強コード層と、
上記筒部材の軸方向両端部に上記各インナー部材の鍔部よりも軸方向内側に位置するようにそれぞれ配設された一対のフランジとを備え、
上記補強コードは、上記筒部材の軸に対する傾斜角度が上記両折返し部の間の部分で静止角付近の所定角度範囲に維持された状態で巻き付けられるとともに、上記各折返し部に1周よりも大きい所定周数だけ巻き付けられた後に反対側の折返し部に向かって折り返されている可撓管。
【請求項2】
内層と外層とを有し、可撓性を持つ筒部材と、
上記内層と上記外層との間に埋設され、補強コードが該内層の軸方向各端部で構成される折返し部で折り返して該両折返し部の間を複数回往復した状態で上記内層に巻き付けられてなる補強コード層とを備え、
上記補強コードは、上記筒部材の軸に対する傾斜角度が上記両折返し部の間の部分で静止角付近の所定角度範囲に維持された状態で巻き付けられるとともに、上記各折返し部に1周よりも大きい所定周数だけ巻き付けられた後に反対側の折返し部に向かって折り返されている可撓管。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記補強コード層には、接着剤が塗布されている可撓管。
【請求項4】
可撓管における補強コードの巻き付け方法であって、
上記可撓管は、
内層と外層とを有し、可撓性を持つ筒部材と、
上記筒部材の軸方向両端部に上記内層と上記外層との間に埋設されるようにそれぞれ配設され且つ、筒部と該筒部の軸方向外側の端部から径方向外側に延びる鍔部とを有する一対のインナー部材と、
上記内層と上記外層との間に埋設され、補強コードが上記インナー部材の筒部で構成される折返し部で折り返して該両折返し部の間を複数回往復した状態で上記内層及び上記両インナー部材の折返し部に巻き付けられてなる補強コード層と、
上記筒部材の軸方向両端部に上記各インナー部材の鍔部よりも軸方向内側に位置するようにそれぞれ配設された一対のフランジとを備え、
上記補強コードは、上記筒部材の軸に対する傾斜角度が上記両折返し部の間の部分で静止角付近の所定角度範囲に維持された状態で巻き付けられるとともに、上記各折返し部に1周よりも大きい所定周数だけ巻き付けられた後に反対側の折返し部に向かって折り返され、
上記内層と上記両インナー部材とを有する中間品を成形した後に、
上記補強コードを、上記筒部材の軸に対する傾斜角度が上記両折返し部の間の部分で上記所定角度範囲に維持されるように上記中間品に巻き付けるとともに、上記各折返し部に上記所定周数だけ巻き付けた後に反対側の折返し部に向かって折り返す補強コードの巻き付け方法。
【請求項5】
可撓管における補強コードの巻き付け方法であって、
上記可撓管は、
内層と外層とを有し、可撓性を持つ筒部材と、
上記内層と上記外層との間に埋設され、補強コードが該内層の軸方向各端部で構成される折返し部で折り返して該両折返し部の間を複数回往復した状態で上記内層に巻き付けられてなる補強コード層とを備え、
上記補強コードは、上記筒部材の軸に対する傾斜角度が上記両折返し部の間の部分で静止角付近の所定角度範囲に維持された状態で巻き付けられるとともに、上記各折返し部に1周よりも大きい所定周数だけ巻き付けられた後に反対側の折返し部に向かって折り返され、
上記内層を有する中間品を成形した後に、
上記補強コードを、上記筒部材の軸に対する傾斜角度が上記両折返し部の間の部分で上記所定角度範囲に維持されるように上記中間品に巻き付けるとともに、上記各折返し部に上記所定周数だけ巻き付けた後に反対側の折返し部に向かって折り返す補強コードの巻き付け方法。
【請求項6】
請求項4又は5において、
接着剤を上記補強コードに直接、塗布した後に、該接着剤を塗布した補強コードを巻き付ける補強コードの巻き付け方法。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1つにおいて、
その軸周りに回転可能に構成され、上記中間品を支持する心棒と、
上記心棒と平行に延びる案内レールと、該案内レールに、上記心棒より支持された中間品の両折返し部に対応する位置の間を該中間品の近傍を通りながらスライド移動可能に係合され、上記補強コードを上記心棒より支持された中間品に案内するスライダーとを有する案内機構とを設けておき、
上記補強コードを上記スライダーより上記中間品に案内するとともに上記中間品を支持した心棒をその軸周りに回転させながら上記スライダーを上記中間品の両折返し部に対応する位置の間を往復移動させることにより、上記補強コードを、上記筒部材の軸に対する傾斜角度が上記両折返し部の間で上記所定角度範囲に維持されるように巻き付けるとともに、
上記補強コードを上記スライダーより上記中間品に案内するとともに上記中間品を支持した心棒をその軸周りに回転させながら上記スライダーを該中間品の各折返し部に対応する位置で停止させることにより、上記補強コードを上記各折返し部に上記所定周数だけ巻き付ける補強コードの巻き付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可撓管及びその補強コードの巻き付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の可撓管には、筒状の本体部と、この本体部の軸方向端部から径方向外方に延出する環状のシール部とを有する可撓性筒部と、シール部の内部に埋設され、補強布からなる環状の補強部材と、可撓性筒部の軸方向両端側に設けられるフランジとを備えた可撓継手がある(例えば、特許文献1参照)。このフランジは、本体部の軸方向端部の外周に固定される筒状の内周板部と、シール部の裏面に固定される環状の受け板部と、を少なくとも形成するように、板金が折り返されて成る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-57781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような可撓管では、簡単な構成で、耐久性を向上させたいという課題がある。
【0005】
本開示の課題は、簡単な構成で、耐久性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、内層と外層とを有し、可撓性を持つ筒部材と、上記筒部材の軸方向両端部に上記内層と上記外層との間に埋設されるようにそれぞれ配設され且つ、筒部と該筒部の軸方向外側の端部から径方向外側に延びる鍔部とを有する一対のインナー部材と、上記内層と上記外層との間に埋設され、補強コードが上記インナー部材の筒部で構成される折返し部で折り返して該両折返し部の間を複数回往復した状態で上記内層及び上記両インナー部材の折返し部に巻き付けられてなる補強コード層と、上記筒部材の軸方向両端部に上記各インナー部材の鍔部よりも軸方向内側に位置するようにそれぞれ配設された一対のフランジとを備えた可撓管である。そして、上記補強コードは、上記筒部材の軸に対する傾斜角度が上記両折返し部の間の部分で静止角付近の所定角度範囲に維持された状態で巻き付けられるとともに、上記各折返し部に1周よりも大きい所定周数だけ巻き付けられた後に反対側の折返し部に向かって折り返されている。
【0007】
これによれば、補強コードの、筒部材の軸に対する傾斜角度がインナー部材の筒部で構成される両折返し部の間の部分で静止角付近の所定角度範囲に維持されるので、筒部材がその内圧を均等に受ける。このため、内圧を受けたときにおける筒部材の軸方向の伸び量が低減する。
【0008】
特に、内圧を受けたときにおける筒部材の軸方向の伸びは、筒部材の内層とインナー部材の筒部における軸方向内側の端部との境界部で発生しやすいが、補強コードの、筒部材の軸に対する傾斜角度がその境界部付近で静止角付近の所定角度範囲に維持されるので、内圧を受けたときにおける筒部材の軸方向の伸び量がより低減する。
【0009】
また、補強コードが、各折返し部に1周よりも大きい所定周数だけ巻き付けられた後に反対側の折返し部に向かって折り返されているので、補強コードが各折返し部で引っ掛かる。このため、補強コードを各折返し部で引っ掛ける引っ掛け部材や引っ掛け部分を別途設けることなく、補強コードが滑ったり解れたりするのを抑制できる。したがって、補強コードの、筒部材の軸に対する傾斜角度を両折返し部の間の部分で静止角付近の所定角度範囲に確実に維持できる。
【0010】
以上より、簡単な構成で、耐久性を向上できる。
【0011】
本開示は、内層と外層とを有し、可撓性を持つ筒部材と、上記内層と上記外層との間に埋設され、補強コードが該内層の軸方向各端部で構成される折返し部で折り返して該両折返し部の間を複数回往復した状態で上記内層に巻き付けられてなる補強コード層とを備えた可撓管である。そして、上記補強コードは、上記筒部材の軸に対する傾斜角度が上記両折返し部の間の部分で静止角付近の所定角度範囲に維持された状態で巻き付けられるとともに、上記各折返し部に1周よりも大きい所定周数だけ巻き付けられた後に反対側の折返し部に向かって折り返されている。
【0012】
これによれば、補強コードの、筒部材の軸に対する傾斜角度が内層の軸方向両端部で構成される両折返し部の間の部分で静止角付近の所定角度範囲に維持されるので、筒部材がその内圧を均等に受ける。このため、内圧を受けたときにおける筒部材の軸方向の伸び量が低減する。
【0013】
また、補強コードが、各折返し部に1周よりも大きい所定周数だけ巻き付けられた後に反対側の折返し部に向かって折り返されているので、補強コードが各折返し部で引っ掛かる。このため、補強コードを各折返し部で引っ掛ける引っ掛け部材や引っ掛け部分を別途設けることなく、補強コードが滑ったり解れたりするのを抑制できる。したがって、補強コードの、筒部材の軸に対する傾斜角度を両折返し部の間の部分で静止角付近の所定角度範囲に確実に維持できる。
【0014】
以上より、簡単な構成で、耐久性を向上できる。
【0015】
上記補強コード層には、接着剤が塗布されていることが好ましい。
【0016】
これによれば、補強コード層に接着剤が塗布されているので、筒部材と補強コード及び、補強コード同士が一体になり、その剛性が向上する。このため、筒部材と補強コード及び、補強コード同士が擦れ合って筒部材が薄くなったり破損したりするのを抑制できる。したがって、耐久性をより向上できる。
【0017】
本開示は、可撓管における補強コードの巻き付け方法である。上記可撓管は、内層と外層とを有し、可撓性を持つ筒部材と、上記筒部材の軸方向両端部に上記内層と上記外層との間に埋設されるようにそれぞれ配設され且つ、筒部と該筒部の軸方向外側の端部から径方向外側に延びる鍔部とを有する一対のインナー部材と、上記内層と上記外層との間に埋設され、補強コードが上記インナー部材の筒部で構成される折返し部で折り返して該両折返し部の間を複数回往復した状態で上記内層及び上記両インナー部材の折返し部に巻き付けられてなる補強コード層と、上記筒部材の軸方向両端部に上記各インナー部材の鍔部よりも軸方向内側に位置するようにそれぞれ配設された一対のフランジとを備える。上記補強コードは、上記筒部材の軸に対する傾斜角度が上記両折返し部の間の部分で静止角付近の所定角度範囲に維持された状態で巻き付けられるとともに、上記各折返し部に1周よりも大きい所定周数だけ巻き付けられた後に反対側の折返し部に向かって折り返される。そして、上記補強コードの巻き付け方法では、上記内層と上記両インナー部材とを有する中間品を成形した後に、上記補強コードを、上記筒部材の軸に対する傾斜角度が上記両折返し部の間の部分で上記所定角度範囲に維持されるように上記中間品に巻き付けるとともに、上記各折返し部に上記所定周数だけ巻き付けた後に反対側の折返し部に向かって折り返す。
【0018】
これによれば、上記と同様の理由で、簡単な構成で、耐久性を向上できる。
【0019】
本開示は、可撓管における補強コードの巻き付け方法である。上記可撓管は、内層と外層とを有し、可撓性を持つ筒部材と、上記内層と上記外層との間に埋設され、補強コードが該内層の軸方向各端部で構成される折返し部で折り返して該両折返し部の間を複数回往復した状態で上記内層に巻き付けられてなる補強コード層とを備え、上記補強コードは、上記筒部材の軸に対する傾斜角度が上記両折返し部の間の部分で静止角付近の所定角度範囲に維持された状態で巻き付けられるとともに、上記各折返し部に1周よりも大きい所定周数だけ巻き付けられた後に反対側の折返し部に向かって折り返される。そして、上記補強コードの巻き付け方法では、上記内層を有する中間品を成形した後に、上記補強コードを、上記筒部材の軸に対する傾斜角度が上記両折返し部の間の部分で上記所定角度範囲に維持されるように上記中間品に巻き付けるとともに、上記各折返し部に上記所定周数だけ巻き付けた後に反対側の折返し部に向かって折り返す。
【0020】
これによれば、上記と同様の理由で、簡単な構成で、耐久性を向上できる。
【0021】
接着剤を上記補強コードに直接、塗布した後に、該接着剤を塗布した補強コードを巻き付けることが好ましい。
【0022】
これによれば、接着剤を補強コードに直接、塗布した後に、その接着剤を塗布した補強コードを巻き付けるので、筒部材と補強コード及び補強コード同士がより一体になり、その剛性がより向上する。このため、筒部材と補強コード及び補強コード同士が擦れ合って筒部材が薄くなったり破損したりするのをより抑制できる。したがって、耐久性をより向上できる。
【0023】
その軸周りに回転可能に構成され、上記中間品を支持する心棒と、上記心棒と平行に延びる案内レールと、該案内レールに、上記心棒より支持された中間品の両折返し部に対応する位置の間を該中間品の近傍を通りながらスライド移動可能に係合され、上記補強コードを上記心棒より支持された中間品に案内するスライダーとを有する案内機構とを設けておき、上記補強コードを上記スライダーより上記中間品に案内するとともに上記中間品を支持した心棒をその軸周りに回転させながら上記スライダーを上記中間品の両折返し部に対応する位置の間を往復移動させることにより、上記補強コードを、上記筒部材の軸に対する傾斜角度が上記両折返し部の間で上記所定角度範囲に維持されるように巻き付けるとともに、上記補強コードを上記スライダーより上記中間品に案内するとともに上記中間品を支持した心棒をその軸周りに回転させながら上記スライダーを該中間品の各折返し部に対応する位置で停止させることにより、上記補強コードを上記各折返し部に上記所定周数だけ巻き付けることが好ましい。
【0024】
これによれば、スライダーが、心棒より支持された中間品の両折返し部に対応する位置の間をその中間品の近傍を通りながらスライド移動するので、中間品の遠方を通る場合と比較して、スライダーより中間品に案内される補強コードが撓んだりするのを抑制できる。このため、補強コードを任意の方向に繰り出すことができる。したがって、本開示に係る補強コードの巻き付け方を確実に具現化できる。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、簡単な構成で、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態1に係る可撓継手を示す片側断面図である。
図2】巻付装置を用いた補強コードの巻き付け方法を説明する平面図である。
図3】実施形態2に係る可撓管を示す片側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
(実施形態1)
図1は、可撓継手(可撓管)を示す片側断面図、図2は、巻付装置を用いた補強コードの巻き付け方法を説明する平面図である。この可撓継手1は、図示しないが、例えば、ポンプ回りの水配管同士を接続し、ポンプ振動をポンプ側の配管からポンプとは反対側の配管に伝達しないようにするポンプ用防振継手である。図1及び図2に示すように、可撓継手1は、筒部材2と、一対のインナー金具3,3(インナー部材)と、補強コード層4と、一対のフランジ5,5とを備えている。
【0029】
筒部材2は、その内圧による変形を許容する部材である。筒部材2は、可撓性を持つゴムからなる。筒部材2は、円筒状に形成されている。筒部材2の軸方向中央部には、軸方向中央部が径方向外側に膨出した球状の膨出部20が形成されている。筒部材2は、内層21と、外層22とを有している。
【0030】
内層21は、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)からなる。内層21は、その軸方向長さが外層22よりも長い。内層21の軸方向両端部は、インナー金具3の後述する筒部30の内周面に沿うように軸方向に延びた後に、インナー金具3の後述する鍔部31の軸方向外側端面に沿うように径方向外側に延びている。
【0031】
外層22は、内層21とは異なるゴムからなり、例えば、天然ゴムやスチレンブタジエンゴム(SBR)からなる。外層22は、内層21の径方向外側に形成されている。外層22の軸方向両端部は、インナー金具3の筒部30の外周面に沿うように軸方向に延びている。
【0032】
インナー金具3は、筒部材2の軸方向両端部にそれぞれ配設されている。インナー金具3は、筒部30と、鍔部31とを有している。筒部30の軸方向内側の部分は、筒部材2の内層21と外層22との間に埋設されている。筒部30は、円筒状に形成されている。筒部30の軸は、筒部材2の軸と一致している。筒部30は、フランジ5の後述する内筒部51と接触している。筒部30の軸方向内側の端部には、補強コード層4の内周面に沿うように軸方向内側に行くに従って径方向外側に傾斜して延びる傾斜部30aが形成されている。この傾斜部30aは、補強コード層4がインナー金具3より抜けるのを抑制する部分である。
【0033】
鍔部31は、フランジ5の後述する環部50を受ける部分である。鍔部31は、フランジ5が可撓継手1より抜けるのを抑制する部分でもある。鍔部31は、筒部30の軸方向外側の端部より径方向外側に延びている。鍔部31は、円環状に形成されている。
【0034】
補強コード層4は、筒部材2の内層21及びインナー金具3を一体的に補強する部材である。補強コード層4は、内層21及び両インナー金具3,3の筒部30と外層22との間に埋設されている。補強コード層4は、円筒状に形成されている。補強コード層4の軸は、筒部材2の軸と一致している。補強コード層4の軸方向中央部は、筒部材2の膨出部20に沿うように軸方向中央部が径方向外側に膨出した球形状をなしている。補強コード層4は、補強コード40が、インナー金具3の筒部30における軸方向内側の部分で構成される折返し部30bで折り返してその両折返し部30b,30bの間を複数回(例えば、100回)往復した状態で、内層21及び両インナー金具3,3の折返し部30bに巻き付けられてなる。尚、図1では、図を見易くするため、補強コード40の図示を省略している。
【0035】
補強コード40は、例えば、ポリエステルやアラミド繊維からなる。補強コード40は、一往復毎に周方向に所定ピッチだけずらしながら配置されている。補強コード40は、筒部材2の軸Cに対する傾斜角度θが両折返し部30b,30bの間の部分全体で、具体的には、筒部材2の内層21における膨出部20に対応する部分全体で静止角付近の所定角度範囲に維持された状態で巻き付けられている。この所定角度範囲は、例えば、40~60度であり、望ましくは、45~50度である。
【0036】
補強コード40は、各折返し部30bに1周強だけ巻き付けた後に反対側の折返し部30bに向かって折り返されている。補強コード40の、筒部材2の軸Cに対する傾斜角度θは、各折返し部30bで90度である。補強コード40は、折返し毎に折返し部30bに1周強だけ巻き付けるが、この巻き付け位置は、補強コード40が折返し部30bの一箇所に集中せず、満遍なく行き渡るように折返し毎にずらされている。
【0037】
補強コード40には、後述する巻付装置6のボビン60より繰り出された後で且つ、案内機構62に到達する前に図示しない接着剤が直接、塗布される。この接着剤は、例えば、エラストマー用加硫接着剤やゴム糊からなる。
【0038】
フランジ5は、水配管が接続される部材である。フランジ5は、金属からなる。フランジ5は、筒部材2の軸方向両端部に各インナー金具3,3の鍔部31よりも軸方向内側に位置するようにそれぞれ配設されている。フランジ5は、環部50と、内筒部51と、外筒部52とを有している。環部50は、円環状に形成されている。環部50の軸は、筒部材2の軸と一致している。内筒部51は、環部50の内周縁部から軸方向内側に延びる。外筒部52は、環部50の外周縁部から軸方向外側に延びる。内筒部51及び外筒部52は、円筒状に形成されている。フランジ5(内筒部51)の内径は、鍔部31の外径よりも小さい。内筒部51は、筒部材2の外層22との間に軸方向に僅かな隙間が形成されるように配置されている。
【0039】
以下、補強コード40を巻き付ける巻付装置6を説明する。
【0040】
図2に示すように、巻付装置6は、ボビン60と、心棒61と、案内機構62とを備えている。ボビン60は、可撓継手1の後述する第1中間品1aに巻き付ける前の補強コード40を巻いた部材である。ボビン60は、円柱状に形成されている。ボビン60は、その軸周りに回転可能になっている。ボビン60に巻かれた補強コード40は、案内機構62に繰り出される。
【0041】
心棒61は、第1中間品1aを支持する部材である。心棒61は、円柱状に形成されている。心棒61の軸は、第1中間品aの軸Cと一致している。心棒61は、その軸周りに回転可能になっている。心棒61は、その軸周りに回転することにより、ボビン60より繰り出された補強コード40を心棒61より支持された第1中間品1aに巻き取る。
【0042】
案内機構62は、ボビン60より繰り出された補強コード40を心棒61より支持された第1中間品1aに案内するリニアガイドである。案内機構62は、案内レール63と、スライダー64とを有している。案内レール63は、心棒61の近傍で心棒61と平行に延びている。
【0043】
スライダー64は、本体部64aと、案内部64bとを有している。本体部64aは、直方体状に形成されている。本体部64aは、案内レール63にスライド移動可能に係合支持されている。
【0044】
案内部64bは、本体部64aより心棒61に向かってその軸方向と直交する方向に延びる棒状部材である。案内部64bの先端部は、第1中間品1aのフランジ5の径方向内側で且つ両フランジ5,5の間に位置している。案内部64bの先端部には、案内孔64cが形成されている。案内部64bは、ボビン60より繰り出された補強コード40を案内孔64cを通して第1中間品1aに繰り出す。案内部64bより第1中間品1aに繰り出される補強コード40の繰り出し方向は、スライダー64の停止時に心棒61の軸方向と直交する方向に一致するように設定されている。案内部64bは、本体部64aが案内レール63上をスライド移動することにより、第1中間品1aの両折返し部30b,30bに対応する位置の間を第1中間品1aの近傍を通りながら心棒61の軸方向に往復移動する。
【0045】
スライダー64の移動速度は、補強コード40の、筒部材2の軸Cに対する傾斜角度θが静止角付近の所定角度範囲に維持されるような所定速度に設定されている。案内部64bの、第1中間品1aの各折返し部30bに対応する位置での停止時間、及び、心棒61の回転数は、補強コード40が各折返し部30bに1周強だけ巻き付けられた後に反対側の折返し部30bに向かって折り返されるような所定時間及び所定回転数にそれぞれ設定されている。
【0046】
以下、巻付装置6を用いた補強コード40の巻き付け方法を説明する。
【0047】
まず、心棒61に内層21を構成する未加硫の内層シート21aを巻き付ける。この内層シート21aは、その軸方向長さが可撓継手1の完成品(以下、単に完成品ともいう)の内層21よりも大きい。次に、心棒61より支持された内層シート21a上にインナー金具3及びフランジ5をそれぞれ、完成品のインナー金具3及びフランジ5に対応する位置に配置する。これにより、内層シート21aとインナー金具3とフランジ5とを有する可撓継手1の第1中間品1aが成形される。
【0048】
次に、補強コード40をボビン60より案内機構62に繰り出す。このとき、ボビン60より繰り出された後で且つ、案内機構62に到達する前に、接着剤を補強コード40に直接、塗布する。
【0049】
次に、接着剤を塗布した補強コード40をスライダー64の案内部64bより、心棒61より支持された第1中間品1aに案内するとともに、心棒61をその軸周りに回転させながら、スライダー64を案内レール63上をスライド移動させて、案内部64bを第1中間品1aの両折返し部30b,30bに対応する位置の間を心棒61の軸方向に往復移動させる。これにより、接着剤を塗布した補強コード40が、折返し部30bで折り返して両折返し部30b,30bの間を往復した状態で、第1中間品1aに、具体的には、内層シート21aにおける内層21に相当する部分及び両インナー金具3,3の折返し部30bに巻き付けられる。
【0050】
このとき、スライダー64の移動速度を、補強コード40の、筒部材2の軸Cに対する傾斜角度θが静止角付近の所定角度範囲に維持されるような所定速度に設定しているので、接着剤を塗布した補強コード40が、その傾斜角度θが両折返し部30b,30bの間の部分全体で所定角度範囲に維持されるように巻き付けられる。
【0051】
また、案内部64bを各折返し部30b対応する位置で停止させる。このとき、案内部64bの停止時間及び心棒61の回転数を、補強コード40が各折返し部30bに1周強だけ巻き付けられた後に反対側の折返し部30bに向かって折り返されるような所定時間及び所定回転数にそれぞれ設定しているので、接着剤を塗布した補強コード40が、各折返し部30bに1周強だけ巻き付けられた後に反対側の折返し部30bに向かって折り返される。
【0052】
そして、補強コード40の往復回数が複数回(例えば、100回)に到達すると、巻付装置6を用いた補強コード40の巻き付けを完了する。
【0053】
その後、内層シート21aを完成品の内層21の大きさに切断する。次に、切断した内層シート21a及び両インナー金具3,3の折返し部30bに未加硫の外層シート22を巻き付ける。これにより、内層21と外層22とインナー金具3とフランジ5とを有する可撓継手1の第2中間品が成形される。次に、第2中間品を心棒61から取り外す。そして、第2中間品を図示しない金型にセットして加硫一体成形する。これにより、可撓継手1の完成品が成形される。
【0054】
-効果-
以上より、本実施形態によれば、補強コード40の、筒部材2の軸Cに対する傾斜角度θがインナー金具3の筒部30で構成される両折返し部30b,30bの間の部分全体で静止角付近の所定角度範囲に維持されるので、筒部材2がその内圧を均等に受ける。このため、内圧を受けたときにおける筒部材2の軸方向の伸び量が低減する。
【0055】
特に、内圧を受けたときにおける筒部材2の軸方向の伸びは、筒部材2の内層21とインナー金具3の筒部30における軸方向内側の端部との境界部で発生しやすいが、補強コード40の、筒部材2の軸Cに対する傾斜角度θがその境界部付近で静止角付近の所定角度範囲に維持されるので、内圧を受けたときにおける筒部材2の軸方向の伸び量がより低減する。
【0056】
また、補強コード40が、各折返し部30bに1周強だけ巻き付けられた後に反対側の折返し部30bに向かって折り返されているので、補強コード40が各折返し部30bで引っ掛かる。このため、補強コード40を各折返し部30bで引っ掛ける引っ掛け部材や引っ掛け部分を別途設けることなく、補強コード40が滑ったり解れたりするのを抑制できる。したがって、補強コード40の、筒部材2の軸Cに対する傾斜角度θを両折返し部30b,30bの間の部分全体で静止角付近の所定角度範囲に確実に維持できる。
【0057】
以上より、簡単な構成で、耐久性を向上できる。
【0058】
また、接着剤を補強コード40に直接、塗布した後に、その接着剤を塗布した補強コード40を巻き付けるので、筒部材2と補強コード40及び補強コード40同士がより一体になり、その剛性がより向上する。このため、筒部材2と補強コード40及び補強コード40同士が擦れ合って筒部材2が薄くなったり破損したりするのをより抑制できる。したがって、耐久性をより向上できる。
【0059】
また、スライダー64が、心棒61より支持された第1中間品1aの両折返し部30b,30bに対応する位置の間をその第1中間品1aの近傍を通りながらスライド移動するので、第1中間品1aの遠方を通る場合と比較して、スライダー64より第1中間品1aに案内される補強コード40が撓んだりするのを抑制できる。このため、補強コード40を任意の方向に繰り出すことができる。したがって、本開示に係る補強コード40の巻き付け方を確実に具現化できる。
【0060】
尚、本実施形態では、インナー金具3及びフランジ5を別体としたが、これに限らず、一体に形成してもよい。
【0061】
(実施形態2)
本実施形態は、インナー金具3及びフランジ5,5を備えていない可撓管である点が実施形態1と異なっているが、その他の点については、実施形態1と同様の構成である。そこで、以下の説明では、実施形態1の構成要素と同様の構成要素については、重複説明を省略する場合がある。
【0062】
図3は、可撓管を示す片側断面図である。この可撓管101は、図示しないが、例えば、振動を一方側から他方側に伝達しないようにする防振用の水配管である。図3に示すように、可撓管101は、筒部材2と、補強コード層4とを備えている。
【0063】
筒部材2の内層21は、その軸方向長さが外層22と同じ長さである。補強コード層4は、筒部材2を補強する部材である。補強コード層4は、内層21と外層22との間に埋設されている。補強コード層4は、補強コード40(図2を参照)が、内層21の軸方向各端部で構成される折返し部23で折り返してその両折返し部23,23の間を複数回(例えば、100回)往復した状態で、内層21に巻き付けられてなる。尚、図3では、図を見易くするため、補強コード40の図示を省略している。また、補強コード40は、内層21の軸方向各端からその近傍までの間の部分には巻き付けられていない。
【0064】
補強コード40は、筒部材2の軸Cに対する傾斜角度θ(図2を参照)が両折返し部23,23の間の部分全体で、具体的には、筒部材2の内層21における膨出部20に対応する部分全体で静止角付近の所定角度範囲に維持された状態で巻き付けられている。補強コード40は、各折返し部23に1周強だけ巻き付けた後に反対側の折返し部23に向かって折り返されている。
【0065】
以下、上述の如く構成された巻付装置6を用いた補強コード40の巻き付け方法を図2を参照しながら説明する。
【0066】
まず、心棒61に内層21を構成する内層シート21aを巻き付ける。これにより、内層シート21aを有する可撓管1の第1中間品が成形される。
【0067】
次に、補強コード40をボビン60より案内機構62に繰り出す。このとき、ボビン60より繰り出された後で且つ、案内機構62に到達する前に、接着剤を補強コード40に直接、塗布する。
【0068】
次に、接着剤を塗布した補強コード40をスライダー64の案内部64bより、心棒61より支持された第1中間品に案内するとともに、心棒61をその軸周りに回転させながら、スライダー64を案内レール63上をスライド移動させて、案内部64bを第1中間品の両折返し部23,23に対応する位置の間を心棒61の軸方向に往復移動させる。これにより、接着剤を塗布した補強コード40が、折返し部23で折り返して両折返し部23,23の間を往復した状態で、第1中間品に、具体的には、内層シート21aにおける、軸方向各端からその近傍までの間の部分を除く内層21に相当する部分に巻き付けられる。
【0069】
このとき、スライダー64の移動速度を、補強コード40の、筒部材2の軸Cに対する傾斜角度θが静止角付近の所定角度範囲に維持されるような所定速度に設定しているので、接着剤を塗布した補強コード40が、その傾斜角度θが両折返し部23,23の間の部分全体で所定角度範囲に維持されるように巻き付けられる。
【0070】
また、案内部64bを各折返し部23対応する位置で停止させる。このとき、案内部64bの停止時間及び心棒61の回転数を、補強コード40が各折返し部23に1周強だけ巻き付けられた後に反対側の折返し部23に向かって折り返されるような所定時間及び所定回転数にそれぞれ設定しているので、接着剤を塗布した補強コード40が、各折返し部23に1周強だけ巻き付けられた後に反対側の折返し部23に向かって折り返される。
【0071】
そして、補強コード40の往復回数が複数回(例えば、100回)に到達すると、巻付装置6を用いた補強コード40の巻き付けを完了する。
【0072】
その後、内層シート21aを完成品の内層21の大きさに切断する。次に、切断した内層シート21aに未加硫の外層シート22を巻き付ける。これにより、内層21と外層22とを有する可撓管101の第2中間品が成形される。次に、第2中間品を心棒61から取り外す。そして、第2中間品を金型にセットして加硫一体成形する。これにより、可撓管101の完成品が成形される。
【0073】
-効果-
以上より、本実施形態によれば、実施形態1と同様の作用効果が得られる。具体的には、補強コード40の、筒部材2の軸Cに対する傾斜角度θが内層21の軸方向両端部で構成される両折返し部23,23の間の部分全体で静止角付近の所定角度範囲に維持されるので、筒部材2がその内圧を均等に受ける。このため、内圧を受けたときにおける筒部材2の軸方向の伸び量が低減する。
【0074】
また、補強コード40が、各折返し部23に1周強だけ巻き付けられた後に反対側の折返し部23に向かって折り返されているので、補強コード40が各折返し部23で引っ掛かる。このため、補強コード40を各折返し部23で引っ掛ける引っ掛け部材や引っ掛け部分を別途設けることなく、補強コード40が滑ったり解れたりするのを抑制できる。したがって、補強コード40の、筒部材2の軸Cに対する傾斜角度θを両折返し部23,23の間の部分全体で静止角付近の所定角度範囲に確実に維持できる。
【0075】
以上より、簡単な構成で、耐久性を向上できる。
【0076】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、補強コード40の、筒部材2の軸Cに対する傾斜角度θを筒部材2の内層21における膨出部20に対応する部分全体で静止角付近の所定角度範囲に維持したが、その膨出部20に対応する部分全体に加えて、実施形態1においては、両インナー金具3,3の筒部30でも、実施形態2においては、内層21の軸方向両端部でも所定角度範囲に維持してもよい。この場合、両インナー金具3,3の筒部30や内層21の軸方向両端部でも所定角度範囲に維持する分、折返し部30b;23の軸方向長さが短くなる。
【0077】
また、上記各実施形態では、補強コード40を各折返し部30b;23に1周強だけ巻き付けた後に反対側の折返し部30b;23に向かって折り返したがが、1周よりも大きい所定周数である限り、何周巻き付けてもよい。但し、簡易構成の点で、1周強だけ巻き付けるのが望ましい。
【0078】
また、上記各実施形態では、接着剤を補強コード40に直接、塗布した後に、接着剤を塗布した補強コード40を巻き付けたが、これに限らず、例えば、補強コード40を巻き付けた後に、接着剤を補強コード層4の表面に塗布してもよい。但し、耐久性向上の点で、接着剤を塗布した後に巻き付ける方が望ましい。
【0079】
また、上記各実施形態では、筒部材2に膨出部20を形成したが、これに限らず、例えば、筒部材2の内径及び外径をそれぞれ一定にしてもよい。
【実施例
【0080】
以下、具体的に実施した実施例を説明する。
【0081】
(試験製品)
実施例1及び2並びに比較例に係る試験製品として、上記実施形態に係る可撓継手と同様の構成のものを用意した。
【0082】
実施例1に係る試験製品では、接着剤を補強コードに直接、塗布した後に、その接着剤を塗布した補強コードを巻き付けた。また、補強コードを、筒部材の軸に対する傾斜角度が筒部材の内層における膨出部に対応する部分全体で静止角付近の所定角度範囲に維持された状態で巻き付けた。また、補強コードを、各折返し部に1周強だけ巻き付けた後に反対側の折返し部に向かって折り返した。
【0083】
実施例2に係る試験製品では、補強コードを、筒部材の軸に対する傾斜角度が筒部材の内層における膨出部に対応する部分全体で静止角付近の所定角度範囲に維持された状態で巻き付けた。また、補強コードを、各折返し部に1周強だけ巻き付けた後に反対側の折返し部に向かって折り返した。また、補強コードを巻き付けた後に、接着剤を補強コード層の表面に塗布した。
【0084】
一方、比較例に係る試験製品では、補強コードを、筒部材の軸に対する傾斜角度が筒部材の内層における膨出部に対応する部分の軸方向中央部で静止角付近の所定角度範囲に、その軸方向両端部でこの所定角度範囲の上限値よりも大きい角度に維持された状態で巻き付けた。また、補強コードを、各折返し部に4分の1周だけ巻き付けた後に反対側の折返し部に向かって折り返した。また、接着剤を補強コードに塗布しなかった。
【0085】
(試験)
実施例1及び2並びに比較例に係る試験製品に対して空気調和・衛生工学会規格のSHASE-S008-2008で規定する伸び量試験及び加圧・減圧繰返し耐久試験をそれぞれ行った。
【0086】
(試験結果)
試験結果を表1に示す。表1の伸び量試験結果では、「○」を「伸び量が小さい(合格)」と、「×」を「伸び量が大きい(不合格)」とした。また、表1の加圧・減圧繰返し耐久試験結果では、「○」を「破損するまでの加圧・減圧繰返し回数が大きい(合格)」と、「×」を「破損するまでの加圧・減圧繰返し回数が小さい(不合格)」とした。
【0087】
【表1】
【0088】
表1から分かるように、実施例1及び2に係る試験製品では、筒部材の軸方向の伸び量が比較例に係る試験製品よりも相当小さかった。また、実施例1及び2に係る試験製品では、破損するまでの加圧・減圧繰返し回数が比較例に係る試験製品よりも大きかった。また、実施例1に係る試験製品では、その加圧・減圧繰返し回数が実施例2に係る試験製品よりも相当大きかった。
【0089】
以上より、実施例1及び2に係る試験製品では、耐久性が比較例に係る試験製品よりも相当高かった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上説明したように、本開示は、可撓管等に適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 可撓継手(可撓管)
1a 第1中間品
2 筒部材
21 内層
22 外層
23 折返し部
3 インナー金具(インナー部材)
30 筒部
30b 折返し部
31 鍔部
4 補強コード層
40 補強コード
5 フランジ
6 巻付装置
61 心棒
62 案内機構
63 案内レール
64 スライダー
101 可撓管
C 筒部材(第1中間品)の軸
θ 補強コードの、筒部材の軸に対する傾斜角度
図1
図2
図3