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特許7061004流体管への孔部形成方法及び孔部形成方法に用いられる分岐路形成装置
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  • 特許-流体管への孔部形成方法及び孔部形成方法に用いられる分岐路形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】流体管への孔部形成方法及び孔部形成方法に用いられる分岐路形成装置
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/00 20060101AFI20220420BHJP
   F16L 41/06 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
F16L55/00 C
F16L41/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018078900
(22)【出願日】2018-04-17
(65)【公開番号】P2019184030
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】中里 謙介
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-187993(JP,A)
【文献】特開2010-281367(JP,A)
【文献】特開2012-225470(JP,A)
【文献】特開2001-239410(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0138747(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/00
F16L 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管から分岐流路へ流体を流す際に用いられる孔部を不断流状態で形成する孔部形成方法であって、
前記流体管の外周面を、前記分岐流路に連通する分岐部を有する筐体により密封状に囲繞する工程と、
エンドミルを用いて前記筐体内において前記流体管に前記分岐流路に連通する分岐孔部を切削形成する工程と、
エンドミルを用いて前記筐体内において前記流体管に弁体を挿入配置可能な弁用孔部を、前記分岐孔部から前記流体管の管軸方向に離間した位置で、且つ前記筐体の前記分岐部内にて前記分岐孔部に連通する位置に切削形成する工程と、を備えることを特徴とする孔部形成方法。
【請求項2】
前記筐体をエンドミルとともに前記流体管の管軸方向に移動させて、前記分岐孔部と前記弁用孔部とを同じエンドミルを用いて切削形成することを特徴とする請求項1に記載の孔部形成方法。
【請求項3】
流体管から分岐流路へ流体を流す際に用いられる孔部を不断流状態で形成する分岐路形成装置であって、
前記流体管の外周面を密封状に囲繞し、前記分岐流路に連通する分岐部を有する筐体を備え、
前記筐体の前記分岐部は、前記流体管に形成した弁体を挿入配置可能な弁用孔部と、前記分岐流路に連通するとともに前記弁用孔部から前記流体管の管軸方向に離間した位置に形成された分岐孔部とが連通する空間を有することを特徴とする分岐路形成装置。
【請求項4】
前記分岐部は、前記分岐流路側に向けて流体を案内するテーパ面部を有していることを特徴とする請求項に記載の分岐路形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管から分岐流路へ流体を流す際に用いられる孔部を不断流状態で形成する孔部形成方法及び孔部形成方法に用いられる分岐路形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の流体管が接続されて構成されている流体管路にあっては、既設の流体管に対して不断流状態で補修や敷設替え等の工事を行うことがある。このような場合、工事を行う所定区間を挟む両側において、流体管に孔部を形成し、この孔部と連通する分岐流路であるバイパス流路を仮設するとともに孔部同士の間に2つの弁体を設置し、それぞれ遮断することで、これら弁体同士の間を流体の浸入しない作業領域とし、この作業領域内で工事を行えるようにする方法が広く知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、流体管の外周面を筐体により密封状に囲繞し、該筐体内でホールソーを用いて流体管に略正円の孔を形成し、この孔部に弁体を挿入配置する。この弁体は、孔を完全に塞がないよう孔の内径よりも小さい幅寸法であり、挿入配置時には孔における流体管軸方向の一方側の縁部に当接し、作業領域への流体の浸入を防止しながら、孔における流体管軸方向の他方側の縁部と弁体との間の隙間を通してバイパス流路と流体管内部とを連通させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-281367号公報(第13頁、第12図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1にあっては、1つの孔で作業領域への流体の浸入を防止しながら、バイパス流路と流体管内部とを連通させることができ、作業効率に優れる。一方で、作業領域への流体の浸入を防止するためには、所定の大きさ及び形状の弁体を用いる必要があるため、ホールソーにより形成された正円の孔と弁体との隙間における流路断面積が限定され、流体管の流下環境によっては、バイパス流路へ流れる流体が過多若しくは過少となり、適正な流量をバイパス流路へ流すことができない場合があった。また、弁体挿入の際には、1つの孔における一方側の縁部に弁体を当接させ、管路の作業領域への流体浸入を防止することになるが、この止水を確実にするためには、弁体の挿入位置に高い精度が必要であった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、作業領域への流体の浸入を防止する弁体の影響を受けずに、流体管を流れる流体の流下方向を分岐流路側へ切り替え可能とする孔部を不断流状態で形成する孔部形成方法及び孔部形成方法に用いられる分岐路形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の流体管への孔部形成方法は、
流体管から分岐流路へ流体を流す際に用いられる孔部を不断流状態で形成する孔部形成方法であって、
前記流体管の外周面を筐体により密封状に囲繞する工程と、
エンドミルを用いて前記筐体内において前記流体管に前記分岐流路に連通する分岐孔部を切削形成する工程と、
エンドミルを用いて前記筐体内において前記流体管に弁体を挿入配置可能な弁用孔部を切削形成する工程と、を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、分岐流路に連通する分岐孔部と弁体を挿入配置可能な弁用孔部とをそれぞれ形成し、弁用孔部を介し進入させた弁体によって流体管の切削面及び内周面に渡り当接させることで、弁用孔部よりも下流側の流路を閉鎖し、上流側から流下する流体は分岐孔部のみを介して筐体内を通って分岐流路に流れることになる。つまり、分岐孔部は弁体の影響を受けずに、その流路断面積を設計可能であるため、分岐流路へ適正な流量を流すことができるばかりか、弁体によって弁用孔部の切削面を止水させるため、優れた止水性を発揮することができる。
【0008】
前記筐体をエンドミルとともに前記流体管の管軸方向に移動させて、前記分岐孔部と前記弁用孔部とを同じエンドミルを用いて切削形成することを特徴としている。
この特徴によれば、筐体とエンドミルとを流体管の管軸方向に移動させることで、1つのエンドミルで分岐孔部と弁用孔部を切削形成することができ、筐体を小型化することができる。
【0009】
前記弁用孔部と前記分岐孔部とを前記流体管の管軸方向に離間した位置に切削形成することを特徴としている。
この特徴によれば、弁用孔部と分岐孔部とを別々に形成することで、弁体が分岐孔部から分岐流路への流体の流れに影響を及ぼすことなく、分岐流路へ適正な流量を流すことができる。
【0010】
本発明の流体管への孔部形成方法に用いられる分岐路形成装置は、
流体管から分岐流路へ流体を流す際に用いられる孔部を不断流状態で形成する分岐路形成装置であって、
前記流体管の外周面を密封状に囲繞し、前記分岐流路に連通する分岐部を有する筐体を備え、
前記分岐部は、前記流体管に形成した弁体を挿入配置可能な弁用孔部と、前記分岐流路に連通する分岐孔部とが共に面する空間を有することを特徴としている。
この特徴によれば、筐体には分岐孔部と弁用孔部と連通する分岐部をそれぞれ設ける必要がないため、密封性を確保できるとともに、筐体の構造を簡素化して製造コストを低減することができる。
【0011】
前記分岐部は、前記分岐流路側に向けて流体を案内するテーパ面部を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、分岐孔部から分岐流路に向けて流れる流体を分岐部にスムーズに誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例における分岐路形成装置を構成する筐体を示す一部正面断面図である。
図2】筐体に切削装置を取付け、流体管に分岐孔部を形成した状態を示す一部正面断面図である。
図3】筐体と切削装置とを流体管の管軸方向に移動させた状態を示す一部正面断面図である。
図4】第2移動装置を取付けた状態を示す一部正面断面図である。
図5】筐体と切削装置とを流体管の周方向に移動させて弁用孔部を形成する様子を示す説明図である。
図6】筐体に弁装置を取付けた状態を示す一部正面断面図である。
図7】弁体を弁用孔部に挿入配置した状態を示す一部正面断面図である。
図8】弁体を弁用孔部に挿入配置した状態を示す側断面図である。
図9】(a)は筐体に蓋体を取付けた状態を示す平面図であり、(b)は同じく一部正面断面図である。
図10】(a)は分岐孔部に防食コアを取付けた状態を示す一部正面断面図であり、(b)は弁用孔部に防食コアを取付けた状態を示す一部正面断面図である。
図11】(a)は分岐孔部にキャップを取付けた状態を示す一部正面断面図であり、(b)は弁用孔部にキャップを取付けた状態を示す一部正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る流体管への孔部形成方法及び孔部形成方法に用いられる分岐路形成装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例
【0014】
実施例に係る流体管への孔部形成方法及び孔部形成方法に用いられる分岐路形成装置につき、図1から図11を参照して説明する。尚、説明の便宜上、図1の紙面左側を流体管の上流側、右側を下流側とする。
【0015】
本実施例に係る管路構成部材は上水道として使用され、複数の流体管や弁等の接続部材が複数連設されて構成されており(図では流体管1のみ図示)、地中に埋設されている。尚、流体管路には図示しない複数の支管がそれぞれ接続されて、これらの支管は各家庭・施設等に敷設されている。
【0016】
図1に示される流体管1は、ダクタイル鋳鉄製であって、断面視略円形状に形成され、内周面がエポキシ樹脂層1aで被覆されている。尚、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール製、ポリエチレン製若しくはポリオレフィン製等であってもよい。さらに尚、流体管の内周面はエポキシ樹脂層に限らず、例えばモルタル等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。
【0017】
図2における符号2は、分岐路形成装置であり、例えば経年劣化等の不具合により、特定の管路構成部材に対して補修や取り替え等の工事を行う場合に、供給地域の利便性を考慮し不断流状態で用いられる装置である。詳しくは、工事を行う対象となる箇所を挟むように管路構成部材の軸方向両側にそれぞれ設置するものであり、流体管1に孔部をそれぞれ形成し、次いで孔部と連通する分岐流路として例えばバイパス流路を仮設し、更に孔部同士の間に2つの弁体を設置して流体管を流下する流体をバイパス流路側へ切り替え、これら弁体同士の間を流体の浸入しない作業領域とし、この作業領域内で特定の流体管の管部分の撤去やあるいは補修等の作業を可能とする装置である。本実施例では作業領域を挟む一方側の分岐路形成装置についてのみ説明し、他方側の分岐路形成装置は同様の構成であるため説明を省略する。尚、本実施例では流体管内の流体は上水であるが、本実施例の上水に限らず、例えば工業用水や農業用水、下水の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0018】
先ず、分岐路形成装置2の構造について説明する。図2に示されるように、分岐路形成装置2は、管路構成部材としての流体管1の所定箇所に密封状に外嵌される筐体3と、図2に示される筐体3に取付けられる切削装置4や、図6に示される切削装置4と取り替えて筐体3に取付けられる弁装置5とともに構成されている。
【0019】
図1図2に示されるように、本実施例の筐体3は、第1分割筐体31と第2分割筐体32とからなる上下分割構造となっており、これらの互いに対向する分割部にはフランジが形成され、当該フランジに挿通された締結部材によって互いに接続されている。筐体3は、流体管1の外径よりも大なる内径を有する略円筒形からなっており、筐体3の前後両端部の内周面(図2では一方側のみ図示)には、環状のシール部材9が配設されており、シール部材9は、筐体3を流体管1に外嵌した際に、筐体3の内面と流体管1の外面との間で密封状に圧接されるようになっている。また分割筐体同士の分割部にも図示しないシール部材が配置され密封されている。尚、筐体3は2分割に限らず、3以上の部分に分割されてもよい。
【0020】
第1分割筐体31には、上向きに延出する分岐部31aが形成されており、分岐部31aには、筐体3内に連通する作業用開口部31bが形成されている。また、分岐部31aは、バイパス流路側に向けて管軸方向に広がるテーパ面部31dを有している。
【0021】
分岐部31aには、本実施例では作業弁6が一体に設けられており、作業用開口部31bを開閉操作可能となっている。作業弁6は、弁座部6aと弁収容部6bと、弁収容部6bから弁座部6aに嵌合することで作業用開口部31bを閉塞可能な弁体7と、この弁体7に接続されて進退操作可能な操作棒8とを備えている。また、作業用開口部31bは、後述する切削装置4のエンドミル21(図2参照)及び弁装置5の弁体27(図6参照)が挿通可能な大きさに形成されている。
【0022】
図2に示されるように、切削装置4は、先端面と外周面との両方で切削可能なエンドミル21(切削手段)と、エンドミル21より上方に接続されるロッド22と、ロッド22を上下方向に案内する案内体23と、エンドミル21を回転駆動させるための駆動部25と、ロッド22を上下方向に進退させる操作端部22aと、筐体3の分岐部31aのフランジ部31cに密封接続され、内部にロッド22を密封状に貫通させる筒状の接続体24と、を備えている。エンドミル21は、接続体24内に収容可能となっており、ロッド22は、接続体24を貫通し、案内体23、駆動部25及び操作端部22aは、接続体24の外部に配置されている。尚、ロッド22を上下方向に進退させる手段として、本実施例の操作端部22aは手動であるが、例えば、モータなどの駆動力により上下に進退可能となっていてもよい。
【0023】
次に、分岐孔部を形成する切削工程について説明する。まず、作業弁6を開状態とし、エンドミル21を回動させるとともに、図2に示されるように、作業用開口部31bを通してロッド22を下降させてエンドミル21を軸方向に進行させることで、エンドミル21の先端面で流体管1の管頂部の側壁を径方向に貫通するように切削する。この切削に伴い、流体管1内の流体が筐体3内及び作業用開口部31bを通して接続体24側に流入するが、上述のように、筐体3と接続体24とは密封されているので、分岐路形成装置2外に流体が流出することは防止される。尚、切削の際は、図示しないドレンバルブを開放して切粉を排出しながら行う。この切削工程により、流体管の側壁に分岐孔部10が切削形成される。本実施例では、流体管1の管頂部に分岐孔部10を切削しているが、これに限らず例えば管底部や管側部など、流体管1の周方向の任意の位置に分岐孔部10を切削してもよい。
【0024】
分岐孔部10の切削形成が完了した後には、操作端部22aを操作してエンドミル21を軸方向に退行させ、流体管1の外周面から離間させる。分岐孔部10の切削工程の完了前若しくは完了後に、筐体3と流体管1とに、図2に示される第1移動装置50を架設させる。
【0025】
第1移動装置50は、筐体3よりも上流側に離間した流体管1の外周面に対し固定される固定治具51と、固定治具51に接続され流体管1と平行に配設される油圧ジャッキ52と、油圧ジャッキ52の先端(下流側)に設けられ、筐体3の周方向に亘って外径側に突出する凸部3aの一部に外嵌する側断面視コ字状の嵌合部材53(図2参照)と、を備えている。具体的には、固定治具51は、本実施例では上下に分割された2部材により構成されており、固定治具51の径方向に進退可能なネジ54,54,…が周方向に複数形成されており、各ネジ54,54,…を内径方向に進出させて流体管1の外周面に食い込ませることで流体管1に対し固定に取付け可能となっている。そして、油圧ジャッキ52を伸縮させることにより、分岐路形成装置2を流体管1に対し管軸方向に移動させることができるようになっている。すなわち、第1移動装置50は、切削手段を流体管1の管軸方向に移動させる手段として機能している。
【0026】
尚、固定治具51は2分割に限らず、3以上の部材に分割されてもよい。また、ネジ54の個数は図示した数に限られず、適宜数に設定されるものである。また、本実施例では、第1移動装置50における筐体3に管軸方向への移動力を与える手段として油圧ジャッキ52を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、筐体3に管軸方向への移動力を与えることができるものであればよく、例えば、ネジにより管軸方向に伸縮する部材等であってもよい。
【0027】
次いで、図3に示されるように、前述した第1移動装置50の油圧ジャッキ52により、固定治具51と嵌合部材53とを離間させるように動作させる。これにより、筐体3と筐体3に固定された切削装置4が流体管1に対し管軸方向に移動される。このとき、筐体3は、分岐孔部10が該筐体3内に配置された状態のままで後述する弁用孔部11を切削形成する予定位置で停止される。よって、この筐体3が移動することで該筐体3内の流体が漏洩することなく、密封状態が保たれている。
【0028】
次に、図4に示されるように、第1移動装置50に代えて第2移動装置80を流体管1に取付ける。第2移動装置80は、流体管1に固定される駆動伝達部81と、筐体3の一方側端部(本実施例では筐体3の上流側端部)に固定に接続される従動スプロケット82と、から主に構成されている。
【0029】
具体的には、駆動伝達部81は、図示しない駆動モータや減速機などにより回動可能であり流体管1の管軸方向と平行に配設される回動軸83と、回動軸83に設けられた駆動スプロケット84と、従動スプロケット82と駆動スプロケット84とに巻回された無端チェーン85と、を備えており、駆動スプロケット84が回動軸83を中心として回動することに伴って、無端チェーン85を介して従動スプロケット82に回転駆動力が付与され、従動スプロケット82が流体管1の周方向に回動するようになっている。すなわち、第2移動装置80は、切削手段を流体管1の周方向に移動させる手段として機能している。
【0030】
次に、弁用孔部を形成する切削工程について説明する。エンドミル21は、分岐孔部10から管軸方向に離間した位置に配置させ、エンドミル21の先端面で流体管1の管頂部の側壁を径方向に貫通するように切削する。更に、図5に示されるように、エンドミル21をその軸周りに回転駆動させた状態で、第2移動装置80を駆動させることで筐体3を流体管1の周方向の一方に回動させ、その後、筐体3を周方向の他方に回動させる。この筐体3の回動に伴い、切削装置4のエンドミル21が流体管1の周方向に所定角度回動されることで、流体管1の側壁に周方向に延びる弁用孔部11が切削形成される。本実施例では、流体管1の管頂部に弁用孔部11を切削しているが、これに限らず例えば管底部や管側部など、流体管1の周方向の任意の位置に弁用孔部11を切削してもよい。
【0031】
分岐孔部10と弁用孔部11の切削形成が完了した後には、図6に示されるように、作業弁6を閉状態とし、切削装置4を外して、代わりに弁装置5を筐体3に取付ける。なお、作業弁6を閉状態とした後、筐体3の外部において操作棒8の先端に固定部材33を着脱可能に取付けることで、弁体7が一時的に閉状態から移動不能にすると好ましい。
【0032】
弁装置5は、筐体3に対し内部が連通状態で密封状に接続される管路部26と、この管路部26内に配置される弁体27と、弁体27を外部から管路部26内を進退操作させるための棒状の弁棒部28とから主として構成される。弁棒部28は回転のみ許容され軸方向の移動が規制された状態で配設され、弁棒部28の上端には、操作端部28aが設けられている。また、管路部26には、外部に開口するバイパス部29を備え、バイパス部29のフランジにバイパス流路を構成する管部材(符号40にて仕切弁を例示)を取り付け可能となっている。
【0033】
弁体27は、流体管1の周方向に形成された弁用孔部11の内周形状と略同じ外周形状となるように、管軸方向の幅寸法が肉薄に形成されている。図6に示されるように、弁体27により弁用孔部11を閉塞する際には、まず作業弁6を開状態とする。このとき作業弁6を開状態としたことで、流体管1の上流側から流下する流体は、分岐孔部10及び弁用孔部11を通じ、更に弁装置5の管路部26を通ってバイパス流路を構成する管部材40内に流れる。
【0034】
次いで、弁棒部28を回動操作して、弁体27を弁棒部28の軸方向に進出させ、弁体27を弁用孔部11の切削面及び流体管1の内周面に当接させることで、弁用孔部11よりも下流側の流路が閉鎖される。これにより、図7図8の白矢印にて示す様に、上流側から流下する流体は、分岐孔部10から筐体3内に通じ(図7参照)、分岐部31a内の弁棒部28の周囲を通り、更に弁装置5の管路部26を通り、バイパス部29の内側29aを介してバイパス流路を構成する管部材40内に流れることになる(図8参照)。尚、分岐孔部10から流れ出た流体の流路となる分岐部31aと弁装置5は、管部材40とともにバイパス流路を構成している。ここで分岐部31aに形成されたテーパ面部31dは、バイパス流路の下流側に向けて正面視で流体管1の外周面から離間する傾斜形状であるとともに(図9(b)参照)、バイパス流路の下流側に向けて平面視で末広がり形状であり(図9(a)参照)、その末広がり形状の下流側端部が弁体27の幅寸と略同じ若しくは幅広に形成すると、バイパス流路の流通性が高まるため好ましい。ただしテーパ面部31dは、必ずしも上記した末広がり形状を有さずともよく、例えば平面視で略矩形状等に形成されてもよい。
【0035】
上記した分岐路形成装置2を管路構成部材の所定空間を挟んだ両側で利用することで、弁体27,27同士の間を流体の浸入しない作業領域とし、この作業領域内にて不断流で工事を行うことができる。
【0036】
このように、バイパス流路に連通する分岐孔部10と弁体27を挿入配置可能な弁用孔部11とをそれぞれ形成し、かつ弁用孔部11を流体管1の周方向に延びる形状とすることで、弁体27の管軸方向の移動を規制し易く、弁用孔部11と弁体27との相対位置を容易に合わせることができる。弁体27は弁用孔部11の切削面と流体管1の内周面とに渡り当接し、弁用孔部11よりも下流側の流路が閉鎖されるため、上流側から流下する流体は分岐孔部10のみを介して筐体3内を通ってバイパス流路に流れることになり、流体管1を流れる流体の流下方向をバイパス流路側へ漏れなく切り替えることができる。また、分岐孔部10は弁体27の影響を受けずに、その流路断面積を設計可能であるため、バイパス流路への適正な流量を流すことができる。
【0037】
また、弁用孔部11と分岐孔部10と流体管1の軸方向に離間した位置に別々に切削形成することで、弁体27が分岐孔部10からバイパス流路への流体の流れに影響を及ぼすことなく、バイパス流路へ適正な流量を流すことができるとともに、挿入配置された弁体27による弁用孔部11の閉塞を確実に行うことができる。
【0038】
また、第1移動装置50を用いて筐体3とエンドミル21とを流体管1の軸方向に移動させることで、1つのエンドミル21で分岐孔部10と弁用孔部11を切削形成することができ、筐体3を小型化することができるとともに、筐体3に形成されるエンドミル21等を接続する接続開口箇所を少なくでき、流体の漏れを効果的に防止できる。
【0039】
また、弁用孔部11はホールソー等に比べて小径のエンドミル21を用いて周方向に長く切削形成されるため、管軸方向の幅寸法を小さくでき、分岐孔部10と弁用孔部11との管軸方向の距離を短くできる。これによれば、分岐孔部10と弁用孔部11とが共に対向される筐体3の分岐部31aの管軸方向の寸法を小さくでき、ひいては筐体3自体の小型化が可能であり、既設の流体管1に対する作業性に優れる。
【0040】
また、分岐孔部10と弁用孔部11とは、共に筐体3の分岐部31aの管軸方向の寸法内に位置する構成であり、分岐孔部10と弁用孔部11と対向する分岐部をそれぞれ設ける必要がなく、そのため作業弁6も複数設ける必要もなく、分岐路形成装置2を形成するコストを低減できるとともに、一連の作業が簡潔となる。
【0041】
また、筐体3の分岐部31aは、弁装置5側(バイパス流路側)に向けて管軸方向に広がるテーパ面部31dを有しているため、分岐孔部10からバイパス流路に向けて流れる流体を分岐部にスムーズに誘導することができる。
【0042】
工事が完了した後には、弁棒部28を操作して弁体27を退行させ、次いで作業弁6を閉状態とする。その後、弁装置5を筐体3から取り外し、図9(a),(b)に示されるように、弁装置5の代わりに蓋体30を筐体3の分岐部31aのフランジ部31cに固定し、作業用開口部31bの先端側を閉塞する。
【0043】
また、工事が完了した後には、分岐孔部10と弁用孔部11に切削面への錆の発生を防止する防食コアを取り付けることもできる。
【0044】
より詳しくは図10(a)に示されるように、分岐孔部10に取り付けられる防食コア45Aは、略L字形状の断面が延設された剛性を有する芯材46と、この芯材46の外周面を被覆した弾性部材47とから成り、弾性部材47が分岐孔部10の切削面の略全面に亘り当接することで防錆する。また、芯材46の後端部に形成された分岐孔部10よりも大径に張り出した係止部46bが流体管1の外周面に当接して過挿入が防止され、且つ芯材46の前端部に形成された分岐孔部10よりも大径に張り出した係合部46cが流体管1の内周面に当接して抜けが防止される構造となっている。
【0045】
また、この防食コア45Aを分岐孔部10に取り付けるための防食装置41Aは、フランジ部31cに固定される挿入基材42と、この挿入基材42に密閉状態で挿通されて、外部から進退操作可能なハンドルシャフト43と、このハンドルシャフト43の先端に防食コア45Aを着脱自在に保持可能な保持部43aとを有している。
【0046】
図10(b)に示されるように、弁用孔部11に取り付けられる防食コア45Bは、略L字形状の断面が延設された剛性を有する芯材56と、この芯材56の外周面を被覆して略L字形状の断面が延設された弾性部材57とから成り、弾性部材57が弁用孔部11の切削面に当接することで防錆する。また、弾性部材57に形成された弁用孔部11よりも大径に張り出した係止部57aが流体管1の外周面に当接して過挿入が防止される構造となっている。
【0047】
また、芯材56の後端に形成された弾性部材57よりも大径に張り出した係止部56aの下面は、内径側に向けて下方に延びるテーパ面56bを備え、このテーパ面56bが防食コア45Aの芯材46の後端に形成されたテーパ面46aに当接可能となっている。
【0048】
図10(b)に示されるように、この防食コア45Bを弁用孔部11に取り付けるための防食装置41Bは、フランジ部31cに固定される挿入基材55と、この挿入基材55に密閉状態で挿通されて、外部から進退操作可能であり、先端に防食コア45Bの芯材56に固定されるハンドルシャフト58とを有している。
【0049】
これら防食コア45A及び防食コア45Bを分岐孔部10及び弁用孔部11に取り付ける際には、図10(a)に示されるように、まず筐体3の分岐部31aのフランジ部31cに防食装置41Aを固定し、ハンドルシャフト43を操作することで、防食コア45Aを分岐孔部10に挿入配置する。次いで図10(b)に示されるように、筐体3の分岐部31aのフランジ部31cに、防食装置41Aに代えて防食装置41Bを固定し、ここでは図示しない第1移動装置50を用いて筐体3を流体管1の軸方向に移動させた後、ハンドルシャフト58を操作することで、防食コア45Bを弁用孔部11に挿入配置する。
【0050】
このとき、防食コア45Aは、筐体3の移動により、筐体3の分岐部31aのテーパ面部31dに防食コア45Aの芯材46に形成されたテーパ面46aが当接して径方向に抜け止めされる。また、防食コア45Bの芯材56の係止部56aのテーパ面56bが、防食コア45Aの芯材46に形成されたテーパ面46aに当接し、防食コア45Bが防食コア45Aの径方向の抜け止めとして機能する。また、図示しない固定手段により、防食装置41Bのハンドルシャフト58を挿入基材55に対して移動不能に固定することで、これら防食コア45Aと防食コア45Bとの径方向の抜け止めが完了する。
【0051】
また、工事が完了した後には、作業弁6の弁体7を取り外すこともできる。詳しくは、図11(a)に示されるように、まず筐体3の分岐部31aのフランジ部31cに閉塞装置61Aを密閉に固定し、ハンドルシャフト62を操作することで、ハンドルシャフト62の先端に着脱自在に保持されたキャップ63Aを分岐孔部10に挿入配置し、分岐孔部10を密閉する。次いで図11(b)に示されるように、筐体3の分岐部31aのフランジ部31cに、閉塞装置61Aに代えて閉塞装置61Bを密閉に固定し、ここでは図示しない第1移動装置50を用いて筐体3を流体管1の軸方向に移動させた後、閉塞装置61Bのハンドルシャフト64を操作することで、ハンドルシャフト64の先端に固定されたキャップ63Bを弁用孔部11に挿入配置し、弁用孔部11を密閉する。
【0052】
キャップ63Aは、筐体3の移動により、筐体3の分岐部31aのテーパ面部31dにキャップ63Aの後端に形成されたテーパ面63aが当接して径方向に抜け止めされる。また、図示しない固定手段により、閉塞装置61Bのハンドルシャフト64を挿入基材65に対して移動不能に固定することで、これらキャップ63Bが径方向に抜け止めされる。尚、ハンドルシャフト64の先端に形成されたテーパ面64aは、キャップ63Aの後端に形成されたテーパ面63aに当接して、上流側で流体圧が大きく作用するキャップ63Aを更に強力に径方向に抜け止めすることができる。
【0053】
これらキャップ63A及びキャップ63Bにより分岐孔部10及び弁用孔部11の閉塞が完了した後、作業弁6の弁体7と操作棒8を筐体3から取り外し、更に弁収容部6bの開口に閉塞部材66を密閉に固定し、閉塞する。
【0054】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0055】
例えば、前記実施例では、切削工程において、分岐孔部10を切削形成した後に、弁用孔部11を形成する形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、弁用孔部11を形成した後に、分岐孔部10を形成してもよい。
【0056】
また、分岐孔部10を切削形成する工程においても、弁用孔部11と同様に、第2移動装置80を用いて筐体3とエンドミル21とを流体管1の周方向に回転させて、流体管1に周方向に延びる形状に切削形成してもよい。これによれば、分岐孔部10の流路断面積を容易に調整することができる。
【0057】
また、分岐孔部10と弁用孔部11とを別々に切削形成する構成に限らず、これらが連続するように切削形成してもよい。例えば、弁用孔部11が周方向に長く切削形成されて、弁体27を管軸方向両側で挟むことができるような構成であれば、例えば特に図示しないが、分岐孔部10を非円形状に形成してもよいし、或いは分岐孔部10と弁用孔部11とを連通させて形成してもよい。
【0058】
また、前記実施例において分岐孔部10と弁用孔部11とは、同一のエンドミル21により形成される例で説明したが、これに限られず、例えば筐体の管軸方向に分岐部を2つ設け、それぞれの分岐部に切削装置を取付けて、分岐孔部10と弁用孔部11とを異なるエンドミルを用いて形成してもよい。この場合、第1移動装置50のような筐体とエンドミルを流体管に沿って移動させる移動手段及び移動工程は必要ない。
【0059】
また、作業弁6は筐体3と別体に形成され、筐体3に対し着脱自在に構成されていてもよく、また弁体の進退動作のためにネジや油圧等の駆動機構を用いるようにしてもよい。
【0060】
また、分岐孔部10と弁用孔部11とは、周方向において異なる位置、例えば分岐孔部10を分岐部31aに対して周方向の対称位置に形成してもよく、この場合、筐体3にはその内周面に分岐孔部10と対向し分岐部31aに周方向で連通する空間を形成する凹溝等を形成するか、分岐孔部10と対向する分岐部を別途設け、当該分岐部にバイパス流路を構成する管部材を接続する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 流体管
2 分岐路形成装置
3 筐体
4 切削装置
5 弁装置
6 作業弁
10 分岐孔部
11 弁用孔部
21 エンドミル
26 管路部
27 弁体
28 弁棒部
29 バイパス部
30 蓋体
31a 分岐部
31b 作業用開口部
31d テーパ面部
40 管部材(バイパス流路)
41A,41B 防食装置
45A,45B 防食コア
46 芯材
46a テーパ面
47 弾性部材
50 第1移動装置
56 芯材
56b テーパ面
61A,61B 閉塞装置
63A,63B キャップ
63a テーパ面
64a テーパ面
80 第2移動装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11