(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-19
(45)【発行日】2022-04-27
(54)【発明の名称】熱可塑性材料から形成されるフィルムを伸張するための機械
(51)【国際特許分類】
B29C 55/16 20060101AFI20220420BHJP
【FI】
B29C55/16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018081773
(22)【出願日】2018-04-20
【審査請求日】2021-04-12
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518141468
【氏名又は名称】ダーレ,ジャン―ピエール
【氏名又は名称原語表記】Jean-Pierre DARLET
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ダーレ,ジャン―ピエール
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-313403(JP,A)
【文献】特開2017-109423(JP,A)
【文献】中国特許第103434128(CN,B)
【文献】中国特許第102848568(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/00-55/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性材料から形成されるフィルム(F)を伸張させるための機械(1)であって、伸張されるべき前記フィルム(F)のプラスチック材料を加熱するための加熱トンネル(2)と、前記加熱トンネル(2)内の前記フィルム(F)の経路の両側に位置されて、前記フィルム(F)の側縁を把持できるグリッパ(4)の循環のための2つの無端経路(3)であって、前記各無端経路(3)が、前記加熱トンネル(2)内で部分的に延びる内側縦方向部分(3a)と、この加熱トンネルの外側で延びる外側縦方向部分(3b)とを有し、一対のガイドレール(5i,5e)を備え、これらのガイドレールのうちの一方が「内側」と称され、すなわち、前記フィルムの縁部により近く、一方、他方のレールが「外側」と称され、すなわち、このフィルム(F)の縁部から遠い、2つの無端経路(3)と、前記内側ガイドレール(5i)に沿って走行する第1のスライダ(6)に装着される、前記フィルム(F)の側縁のための前記グリッパ(4)と、これらの第1のスライダ(6)を前記外側ガイドレール(5e)に沿って走行する第2のスライダ(8)に接続する接続ロッド(7)の対と、を備える機械(1)において、前記機械(1)が前記加熱トンネル(2)内に位置される少なくとも1つの支援アセンブリ(10)を備え、該支援アセンブリは、無端チェーン又はベルト(16)と、前記チェーン又はベルト(16)に連続的に接続されてこのチェーン又はベルト(16)から突出する複数のスラスト部材(20)と、このチェーン又はベルト(16)の駆動手段(21)を備え、前記支援サブアセンブリ(10)は、前記チェーン又はベルト(16)の一部分が前記スライダ(8)付近に位置されるように配置され、前記駆動手段(21)は、前記チェーン又はベルト(16)の前記一部分がこれらのスライダ(8)の近傍でこれらのスライダの移動方向と同じ方向に移動するように前記チェーン又はベルト(16)を駆動させ、そのようにして、前記チェーンの前記一部分により支持される幾つかの前記スラスト部材(20)が前記スライダ(8)の前記経路(3)へと至らされ、それにより、前記スラスト部材(20)のうちの少なくとも1つは、これらのスライダのうちの少なくとも1つと当接するようになるとともに、このスライダに推力を及ぼして、このスライダがその上を動く前記レール(5e)に沿うこのスライダの移動を支援することを特徴とする機械(1)。
【請求項2】
前記各スラスト部材(20)が、前記チェーン又はベルト(16)に接続されるベース部(30)に対して移動可能な自由端部(31)を備え、この移動は、前記スラスト部材(20)がスライダ(8)に対して推力を及ぼすことができる前記ベース部(30)に対する前記自由端部(31)の伸長位置と、前記自由端部(31)がスライダ(8)に対して取り外されるこのベース部(30)に対する前記自由端部(31)の収縮位置との間で有効であり、通常はこの自由端部(31)を前記伸長位置に保持するために弾性手段(32)が前記各自由端部(31)に作用することを特徴とする請求項1に記載の機械(1)。
【請求項3】
前記機械(1)が複数の支援サブアセンブリ(10)を備え、前記各支援サブアセンブリ(10)は、前記フィルム(F)の伸張を行なえる内側縦方向部分(3a)の領域の長さ(L)よりも短い長
さを有することを特徴とする請求項1に記載の機械(1)。
【請求項4】
前記支援サブアセンブリ(10)が、前記フィルム(F)の順方向を横断する方向で互いに対向することを特徴とする請求項3に記載の機械(1)。
【請求項5】
スラスト部材(20)が推力を及ぼすようになっているスライダの部分がローラ(28)の形態を成すことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の機械(1)。
【請求項6】
前記各支援サブアセンブリ(10)が、前記駆動手段(21)によって前記チェーン又はベルト(16)に及ぼされる駆動トルクを制限するための電子手段を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の機械(1)。
【請求項7】
前記各支援サブアセンブリ(10)が、前記チェーン又はベルト(16)の一部分が当接し得る支持構造体(23)を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の機械(1)。
【請求項8】
前記各支援サブアセンブリ(10)が前記チェーン又はベルト(16)のための駆動モータ(21)を備え、
前記駆動モータ(21)が熱保護筐体(22)内に配置されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の機械(1)。
【請求項9】
前記熱保護筐体(22)が冷却されることを特徴とする請求項8に記載の機械(1)。
【請求項10】
前記各支援サブアセンブリ(10)が、前記駆動モータ(21)の速度を変えるための手段と、この支援サブアセンブリ(10)の上流側及び下流側の前記スライダ(8)の移動速度を検出するための手段(25)とを備え、これらの検出手段(25)がモータ速度を変えるための前記手段の中央制御ユニット(24)に接続されることを特徴とする請求項
8又は9に記載の機械(1)。
【請求項11】
熱可塑性フィルム(F)の伸張を行なうための方法において、請求項9に記載の機械(1)を使用するステップと、それ自体が前記中央ユニット(24)によって制御されるバリエータを用いて、前記スライダ(8)の移動速度を検出するための前記手段(25)による検出に応じて、前記駆動モータ(21)の速度を調整し、それにより、マイナス伸張の検出時に、この速度は、前記チェーン又はベルト(16)の速度がこのチェーン又はベルト(16)の前記一部分で前記チェーンの同じ部分における前記スライダ(8)の線速度よりも大きい線速度であるようになっているステップを備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性材料から形成されるフィルムを伸張させるための機械、特に、熱可塑性フィルムを縦方向及び横方向に同時に伸張させる機械に関する。また、本発明は、この機械を使用して熱可塑性フィルムの伸張を行なうための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムを縦方向及び横方向に同時に伸張させる機械を用いて合成熱可塑性材料のフィルムを伸張させることは良く知られており、一方、フィルムの材料は加熱によって可鍛性にされる。
【0003】
上から見た
図1には、そのような機械が概略的に示されて非常に簡略化されており、
図2はこの機械の一部を拡大して示し、また、
図3は、フィルムを把持して伸張させるためのアセンブリの斜視図を示す。
【0004】
図1に示されるように、機械1は本質的にはそれ自体良く知られており、伸張されるべきフィルムFのプラスチック材料の加熱を可能にする加熱トンネル2及び、トンネル2内のフィルムFの経路の両側に位置するフィルムFの側縁を把持するための2つの無端グリッパ循環経路4から成る。無端グリッパ循環経路4を成す各経路3は、トンネル2内の大部分にわたって延びる内側縦方向部分3aと、トンネル2の外側で延びる外側縦方向部分3bとを有し、それぞれが長方形断面の金属のバンドの形態を成す一対のガイドレール5i,5eを備え、これらのレールのうちの一方のレール5iが「内側」と称され、すなわち、フィルムFの縁部に最も近く、一方、他方のレール5eが「外側」と称され、すなわち、このフィルムFの縁部から遠い。
【0005】
特に
図2及び
図3において明らかなように、グリッパ4は、内側ガイドレール5iに沿って移動する第1のスライダ6上に装着され、この場合、これらの第1のスライダ6はロッド7の対に接続され、ロッドの対は、それら自体、外側ガイドレール5eに沿って移動する第2のスライダ8に接続される。
【0006】
グリッパ4/スライダ6,8/ロッド7のセットは経路3の全体にわたって延びるが、
図1にはそれらの一部だけが示される。経路3のレール5i,5eに沿うこれらのアセンブリの移動は、これらのアセンブリに接続されて加熱トンネル2の外側に位置される駆動ホイール11上で循環する無端チェーンによって行なわれる。
【0007】
特に
図2を参照すると、2つのレール5i,5eを互いから隔てる距離が内側縦方向部分3aに沿って一定ではなく、また、外側レール5eが、フィルムFの縦方向収縮を行なうようになっているこの部分で、レール5iから漸進的に逸らされるのが理解され、この逸脱は、スライダ6に対するスライダ8の距離を増大させることができるようにし、したがって、ロッド7を閉じることができるようにし、その際、一連のグリッパ4を互いに漸進的に近づけ、それにより、フィルムFの縦方向収縮が達成され、この収縮が一般に「マイナス伸張」と称される。
【0008】
図1を参照すると、同じレール対のレール5i,5eが、2つの内側部分3aの前部で、フィルムFのマイナス伸張を行なうために互いから逸れた後、フィルムFのプラス伸張を行なうために互いの方へ向けて収束するのが分かる。
【0009】
更に
図1を参照すると、2つの内側部分3aのレール5i,5eの対が内側部分3aの一部で同時に偏向されて互いから離れることによりフィルムFの横方向伸張を行なうのが更に分かり、この場合、これらの2つの内側部分3aの下流側部分は、互いから距離を隔てる位置にとどまってもよく、それにより、横方向伸張が維持され、或いは、これらの2つの内側部分3aの下流側部分は、
図1に示されるように、互いの方へ向けて収束してもよい。
【0010】
同じレール対の2つのレール5i,5eは、横方向に変形でき、それにより、距離の相互の変化及びそれらの前述の偏向を可能にし、この場合、レールは、フィルムFのプラス又はマイナス縦方向伸張の度合いを調整するために、一方のレールの他方のレールに対するそれぞれの距離を調整するための手段(
図1~
図3には見えない)に装着され、また、内側部分3aのレール5i,5eの対も、互いに対して関節結合される連続するベースプレート9上に装着され、また、フィルムFの横方向伸張の度合いを調整するために、フィルムFに対するベースプレートの位置がフィルムの横方向距離で調整されてもよい。
【0011】
一部のフィルムは比較的低い温度で伸張されなければならず、そのため、かなりの伸張労力を要する。一部の特別なフィルムは、横方向伸張とマイナス縦方向伸張とを同時に要し、すなわち、互いから逸れるレール5i,5eの部分でスライダ6,8の通過を伴う。その結果、ロッド7の漸進的な収束を考慮に入れると、スライダ6,8/ロッド7のアセンブリを駆動させる無端チェーン及びホイール11の系においてかなりの力が生み出される。
【0012】
これらのかなり大きな力は、フィルムの一方側又は他方側のグリッパ間の間隔の変化をもたらし、このことが、伸張されたフィルムの特性、したがって、そのようにして得られたフィルムの最終的な品質に直接的に影響を及ぼす。結果として、現在の機械は、低いレベルのマイナス伸張しか行なうことができず、時として非常に大きい場合があるマイナス伸張速度を必要とするフィルムにおける変化する市場の需要を満たすことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の主な目的は、この基本的な問題を改善することである。また、既存のシステムは、伸張されるべき異なるタイプのフィルムのために必要とされる異なるグリッパ間隔値と行なわれるべき異なる度合いの伸張とに適合するための機械的な動作を伴い、これが非常に大きな実用的制約をもたらす。また、本発明は、この欠点を克服することも目的とする。
【0014】
加えて、既存のシステムでは、一連のグリッパ間でとられ得る最小間隔が比較的制限されたままであり、その結果、実施され得る伸張の度合いが制限され、一方、この機械が行なえるよりも低い度合の伸張を行う必要性もある。
【0015】
また、本発明は、この欠点を克服すること、したがって、より幅広い範囲の可能な一連のグリッパ間の間隔を与えることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
対象の機械は、前述のタイプのものであり、伸張されるべきフィルムのプラスチック材料を加熱するための加熱トンネルと、加熱トンネル内のフィルムの経路の両側に位置されてフィルムの側縁を把持するためのグリッパの2つの無端循環経路から成り、前記無端循環経路を成す各経路が、加熱トンネル内で部分的に延びる内側縦方向部分と、加熱トンネルの外側で延びる外側縦方向部分とを有し、一対のガイドレールを備え、これらのガイドレールのうちの一方が「内側」と称され、すなわちフィルムの縁部により近く、一方、他方のレールが「外側」と称され、すなわち、このフィルムの縁部から遠い。フィルムの側縁のためのグリッパが内側ガイドレールに沿って走行する第1のスライダに装着され、これらの第1のスライダを外側ガイドレールに沿って走行する第2のスライダに接続する接続ロッドの対を備える。本発明によれば、機械が加熱トンネル内に位置される少なくとも1つの支援アセンブリを備え、該支援アセンブリは、無端チェーン又はベルトと、チェーン又はベルトに連続的に接続されてこのチェーン又はベルトから突出する複数のスラスト部材と、このチェーン又はベルトの駆動手段から成る。支援サブアセンブリは、チェーン又はベルトの一部分がスライダ付近に位置されるように配置され、駆動手段は、チェーンの前記一部分がこれらのスライダの近傍でこれらのスライダの移動方向と同じ方向に移動するようにチェーン又はベルトを駆動する。そのようにして、チェーンの前記一部分により支持される幾つかのスラスト部材がスライダの経路へと至らされ、それにより、スラスト部材のうちの少なくとも1つは、これらのスライダのうちの少なくとも1つと当接するようになるとともに、このスライダに推力を及ぼして、このスライダがその上を動くレールに沿うこのスライダの移動を支援する。
【0017】
本発明者は、従来技術に係る駆動チェーンで生み出される大きな力がかなりの長さを有するこれらのチェーンの変形をもたらすとともに、これらの変形がフィルムの両側で生じるグリッパの間隔の変化の根源にあるという事実を確認した。その後、本発明者は、加熱トンネル内の少なくとも1つの局所的な支援サブアセンブリを設計することができ、この支援サブアセンブリは、スライダに直接に作用して、このサブアセンブリが位置される経路の駆動チェーンを解放する。
【0018】
加えて、本発明に係る支援サブアセンブリにより、従来技術に係る機械が可能にし得る2つの連続するグリッパ間の最小間隔よりも小さい間隔を2つの連続するグリッパ間でとることができる。
【0019】
好ましくは、各スラスト部材は、チェーン又はベルトに接続されるベース部に対して移動可能な自由端部を備え、この移動は、スラスト部材がスライダに対して推力を及ぼすことができるベース部に対する自由端部の伸長位置と、自由端部がスライダに対して取り外されるこのベース部に対する自由端部の収縮位置との間で有効であり、通常はこの自由端部を伸長位置に保持するために弾性手段が各自由端部に作用する。
【0020】
確かに、行なわれるべきフィルムの伸張に応じて、ひいてはスライダが、推力を及ぼすための位置にチェーン又はベルトによりもたらされたスラスト部材に対して完全に対向する場合があり、そのような状況下でスラスト部材の収縮できる能力がスライダとスラスト部材間の衝突を防止し、それにより、スラスト部材の損傷の任意のリスクを防止することが想定できる。
【0021】
この構成を欠く場合、本発明に係る機械は、依然として有用であるが、幾つかの伸張調整を実施できない。これは、それらの伸張調整がスライダとスラスト部材との間の衝突をもたらす虞があるからである。この構成を用いると、任意の衝突は単にスラスト部材の収縮を引き起こすか、スラスト部材がスライダに推力を及ぼすのみとなる。
【0022】
スラスト部材のこの同じ収縮可能性は、負荷過多の場合にスラスト部材を除去し、支援サブアセンブリの離脱を可能にする。この離脱は、機械の損傷のリスクを回避する。
【0023】
好ましくは、本発明に係る機械が前述の複数の支援サブアセンブリを備え、各支援サブアセンブリは、フィルムの伸張を行なえる内側縦方向部分の領域よりも短い長さを有する。この長さは、特に、そのような領域の長さの1/4よりも実質的に短かくてもよく、好ましくは、この長さの1/8未満であってもよい。
【0024】
なお、支援サブアセンブリの長さは無端チェーン又はベルトにより形成される縦方向端部を隔てる距離に相当する。
【0025】
好ましくは、そのような複数の支援サブアセンブリの場合、支援サブアセンブリは、それらがスライダに及ぼす推力をフィルムの両側で釣り合わせるために、フィルムの順方向を横断する方向で互いに対向する。
【0026】
好適には、スラスト部材が推力を及ぼすようになっているスライダの部分がローラの形態を成す。
【0027】
そのようなローラは、このスライダとの衝突時又は負荷過多の場合にスライダに対する自由端部の逃げを促すことができるようにする。
【0028】
好ましくは、各支援サブアセンブリは、駆動手段によってチェーン又はベルトに及ぼされる駆動トルクを制限するための電子手段を備える。
【0029】
これらの制限手段は、スラスト部材が対応するスライダを越えて突出する場合に支援サブアセンブリが振動することを防止できるようにする。この振動はスラスト部材のインターバル間の、スライダがチェーン又はベルトの前記一部分に沿って移動する間隔が固定されるという事実に起因し、そのような振動は、フィルムの伸張の堅実さ及び支援サブアセンブリの機械的強度の両方に関して望ましくない。そのため、支援サブアセンブリにより与えられる牽引力は最適に調整される。
【0030】
1つの可能性によれば、ローラに対するスラスト部材の磁気結合を達成するために、スラスト部材が磁石を備えてもよく、一方、ローラが磁性材料から成っていてもよく、或いは、逆もまた同様である。この結合は、各スラスト部材と対応するローラとの間の接触を高める。
【0031】
好ましくは、各支援サブアセンブリは、チェーン又はベルトの前記一部分が当接し得る支持構造体を備える。
【0032】
それにより、この構造体は、チェーン又はベルトの屈曲、すなわち、スライダと向かい合う側でのチェーン又はベルトの変形の任意のリスクを回避し、スラスト部材がそれらのスライダとの係合位置から逸れる任意のリスクを防止するのに役立つ。実際に、チェーン又はベルトにより受けられる力及びこのチェーン又はベルトの可撓性を考慮に入れると、そのような屈曲は、支持構造体が存在しない場合に生じ得るものであり、したがって、スラスト部材とスライダとの不十分な係合をもたらし得る。これは、これらのスラスト部材の損傷のリスク、或いは更には、スライダとの係合からのスラスト部材の逃げのリスクをもたらす可能性がある。
【0033】
本発明の有利な実施形態によれば、各支援サブアセンブリがチェーン又はベルトのための駆動モータを備え、このモータが熱保護筐体内に配置される。
【0034】
したがって、モータとチェーン又はベルトとの間の結びつきは、完全に直接的であり、エンジンとチェーン又はベルトとの間のトランスミッションにおける変形のリスクを排除する。この場合、そのような変形は、支援サブアセンブリにより与えられる支援を不正確又は非効率的なものにし易い。モータを熱保護筐体内に配置することにより、モータ及びこのモータの動作のために必要な周辺システムは、加熱トンネル内の温度に耐えることができる。必要に応じて、この熱保護筐体が冷却されてもよい。
【0035】
好ましくは、各支援サブアセンブリは、駆動モータの速度を変えるための手段と、この支援サブアセンブリの上流側及び下流側のスライダの移動速度を検出するための手段とを備え、これらの検出手段がモータ速度を変えるための手段の中央制御ユニットに接続される。
【0036】
2つの検出手段によって行なわれる測定により、中央ユニットは、現在の伸張がプラス伸張であるか又はマイナス伸張であるかどかを決定することができ、それに応じてモータの速度を適合させることができる。駆動モータの速度、したがって、スラスト部材の移動速度は、このようにしてリアルタイムでスライダの移動に適合される。現在の伸張がマイナス伸張であると決定されれば、中央ユニットは、スラスト部材の移動速度がチェーンの前記部分にあるスライダの移動速度よりも大きくなるようにモータ速度に作用する。
【0037】
スラスト部材のこのより高い移動速度は、少なくとも1つのスラスト部材がスライダと係合してチェーンの前記部分でスライダに推力を及ぼすようにする。
【0038】
現在の伸張がプラス伸張であると決定されれば、モータ速度が所要の支援を与えるように適合される。
【0039】
また、本発明は、熱可塑性フィルムの伸張を行なうための方法において、少なくとも1つの支援サブアセンブリを備える前述の機械を使用するステップであって、支援サブアセンブリが、この支援サブアセンブリの駆動モータの速度を変えるための手段と、この支援サブアセンブリの上流側及び下流側のスライダの移動速度を検出するための手段とを含むステップと、それ自体が中央ユニットによって制御されるバリエータを用いて、スライダの移動速度を検出するための手段による検出に応じて、駆動モータの速度を調整し、それにより、マイナス伸張の検出時にチェーン又はベルトの前記一部分の速度がチェーンの同じ部分におけるスライダの線速度よりも大きい線速度であるようにするステップとを備える方法に関する。
【0040】
このより高い速度により、チェーンの前記部分における少なくとも1つのスラスト部材は、スライダと係合して、スライダに推力を及ぼす。
【0041】
添付の概略図面を参照することにより、本発明をより良く理解できる一方で、本発明の他の特徴及び利点が明らかになり、この図面は、非限定的な一例として、関連する機構の好ましい実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】概略的に且つ非常に簡略化された態様で示される既知の機械の平面図を示す。
【
図2】この機械の一部の同様に概略的で非常に簡略化された平面図を拡大して示す。
【
図3】この既知の機械のフィルム把持・伸張アセンブリの斜視図を示す。
【
図4】
図1に類似する本発明に係る機械の図を示す。
【
図5】この機械の支援サブアセンブリのうちの1つを特に示す
図2に類似する図を示す。
【
図7】
図5の線VII-VIIに沿う断面図を示す。
【
図9】機械のスライダとのスラスト部材の異なる係合状況の図を示す。
【
図10】機械のスライダとのスラスト部材の異なる係合状況の図を示す。
【
図11】機械のスライダとのスラスト部材の異なる係合状況の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図4は本発明に係る機械1を示し、この機械1は、
図1~
図3に関連して説明された機械1と同じ基本的な一般構造を有するが、レール5i,5e上のスライダ6,8の摺動を支援するためのサブアセンブリ10と、既に説明された要素又は部分とを備え、既に説明された要素又は部分については、それらが同一であるため再び説明せず、単に同じ参照番号によって示す。
【0044】
図示の例では、機械1が8個のサブアセンブリ10を備え、各サブアセンブリは、加熱トンネル2内に位置されるとともに、外側レール5e付近のベース9上に配置される。図示のように、サブアセンブリ10は、フィルムの順方向を横断する方向で互いに対向する。各サブアセンブリは、フィルムの伸張が行なわれるようになっている内側縦方向部分3aの領域の長さLよりも十分に短い長さを有し、その場合、各サブアセンブリ10の長さは、図示の例では、この領域の長さLの1/10程度である。
【0045】
図5を参照すると分かるように、支援サブアセンブリ10は、フレーム18によって支持される2つのホイール17上で移動する無端チェーン16と、チェーン16に連続的に接続され、このチェーンからその外側で突出する複数のスラスト部材20と、熱保護筐体22内に位置される、ホイール17のうちの1つを駆動させるギア付きモータ21と、支持構造体23と、加熱トンネル2の外側に位置される、ギア付きモータ21のための中央制御ユニット24と、スライダ8の移動の速度を検出するための2つのセンサ25とを備える。
【0046】
図示のように、フレーム18は、2つの部分を成し、レール5eの方向と平行な方向で縦方向に延びる。フレーム18の部分のうちの一方がギア付きモータ21を備え、また、2つのホイール17のうちの一方は、このギア付きモータに直接に接続されてギア付きモータによって駆動され、フィルム18の他方の部分が他方のホイール17を備える。これらの2つの部分は互いに伸縮自在に接続され、これらの2つの部分間には、これらの部分を互いに離間させてチェーン16の恒久的な張力を確保するようになっている推力をこれらの2つの部分に及ぼすためにスプリング26が介挿される。
【0047】
チェーン16は、該チェーンに取り付けられるスラスト部材20を備える。サブアセンブリ10は、レール5eを越えるが該レールの直ぐ近傍に配置され、それにより、チェーンの一部分は、レール5eと平行に位置して、スライダ8付近に配置され、また、チェーン16に対する各スラスト部材20の突出によって、少なくとも1つのスラスト部材が、チェーンの前記一部分で、スライダ8を備えるローラ28と係合できることも分かる。
図6は、特にそのようなローラ28を示す。
【0048】
図5,7,8に示されるように、各スラスト部材は、チェーン16に接続されるベース部30と、ベース部30に対して伸縮自在に接続される自由端部31とを備える。各ベース部30は、支持構造体23に抗するスラスト部材20の摺動を可能にする滑らかな下部を形成する。各自由端部31は、ベース部30に摺動可能に係合されるロッドと、スライダ8の対応するローラ28に当接するように配置される形状を有する端部とを有し、図示の例では、この形状がL形状である。各スラスト部材20は、ベース部30及び自由端部31に圧力を及ぼして通常は自由端部をベース部30に対して伸長位置に保つためにベース部30と自由端部31との間に介挿されるスプリング32を更に備える。
【0049】
図8において分かるように、各自由端部31は、スライダ8のローラ28と自由端部31との間の衝突時にロッドをスプリング32の弾性力に抗してベース部30内に摺動させることによって収縮位置に至らされるように配置される。
【0050】
また、
図7は、レール5i,5eに沿うスライダ6,8の転動を可能にする様々なローラ35も示す。
【0051】
ギア付きモータ21は、それ自体良く知られた従来のタイプのものであり、したがって、詳細に説明する必要がない。ギア付きモータは速度バリエータを備える。
【0052】
熱保護筐体32は、絶縁ライニングを有し、空気入口開口及び空気出口開口を伴う換気システム(図示せず)に接続される。
【0053】
ギア付きモータ21の制御ユニット24は、センサ25によって送信される信号を処理するための電子手段、センサ25によって検出される速度に応じて速度バリエータを制御するための電子手段、及び、ギア付きモータ21によってホイール17に及ぼされるトルクを制限するための電子手段を備える。
【0054】
実際には、2つのセンサ25によって行なわれる測定により、中央ユニットは、現在の伸張がプラス伸張であるか又はマイナス伸張であるかどかを決定することができ、それに応じてギア付きモータ21の速度を適合させることができる。ギア付きモータの速度、したがって、スラスト部材20の移動速度は、このようにしてリアルタイムでスライダ8の移動に適合される。現在の伸張がマイナス伸張であると決定されれば、中央ユニット24は、チェーン16の能動部分にあるスラスト部材20の移動速度がチェーンの前記部分にあるスライダ8の移動速度よりも僅かに大きくなるようにギア付きモータ21に作用する。この僅かに高い速度により、チェーン能動部分16におけるスラスト部材20のうちの少なくとも1つが、スライダ8のローラ28と当接し、
図9に示されるようにこのローラを介してスライダに推力を及ぼす。この推力は、レール5i,5eに沿うスライダ8の移動、したがってスライダ8に接続されるスライダ6の移動も支援し、それにより、スライダアセンブリ6,8及び接続ロッド7の主駆動チェーンを解放する。この支援により、スライダ6,8は、特に、比較的低い温度でフィルムを伸張させるときに、又は、横方向伸張及びマイナス縦方向伸張を同時に実施する必要があり、したがって、逸れて外側に偏向するレール5i,5e上に沿ってスライダ6,8が移動しなければならないときに、強い力の下でレール5i,5eに沿って適切に移動できる。
【0055】
支持構造体23は、この推力の印加中にチェーン16の任意の屈曲に抗し、したがって、通常の状況で、スラスト部材20がローラ28から逃げるリスク、及び、スラスト表面が非常に小さい場合におけるこれらのスラスト部材の損傷のリスクを排除する。
【0056】
スラスト部材20がローラ28と衝突する場合には、
図10又は
図11において分かるように、スラスト部材20の自由端部31の収縮の可能性は、スラスト部材の任意の損傷を回避できるようにし、スライダがレール5eに沿って移動する際のスライダ8間の間隔の減少により、衝突に晒される部材20の前方に位置される少なくとも1つの部材20は、チェーン16の前記能動部分に沿うローラ28の推力付与の対応する状況を達成する。
【0057】
過度な力がスラスト部材20に及ぼされる場合には、これらのスラスト部材20の逃げすなわち支援サブアセンブリの離脱も可能にされ機械1に対する損傷のリスクが回避される。この離脱はローラ28の回転によって促される。
【0058】
中央ユニット24を構成する、ギア付きモータ21によりホイール17に及ぼされるトルクを制限するための電子手段は、部材20が対応するスライダ8を越えて通過するときに又はスライダ8に対するこの部材20の逃げ時に支援アセンブリ10が振動することを防止できるようにする。そのような振動は、得られる伸張の質及び支援アセンブリ10の機械的強度に悪影響をもたらす。
【0059】
現在の伸張がプラス伸張であるとセンサ25が決定する場合には、必要に応じて所要の支援を与えるべくギア付きモータ21の速度も適合される。
【0060】
このように、本発明は、グリッパの位置決めにおいて不正確さをもたらすリスクを伴うことなく、著しいマイナス伸張速度を可能にするという、従来技術に係る機械と比べて決定的な利点を有する機械を提供し、この場合、この機械は、伸張されるべき異なるタイプのフィルムにしたがって必要とされる異なるグリッパ間隔値に適合するために機械的介入を要しないという決定的な利点も有する。
【0061】
以上、一例として与えられる実施形態に関連して本発明を説明してきた。本発明がこれらの実施形態に限定されず、保護範囲が添付の特許請求の範囲によって規定されることは言うまでもない。